弁護士法人ITJ法律事務所

最高裁判例


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主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2(第1事件)
(1)被控訴人東京都千代田都税事務所長が控訴人に対し平成15年7月10
日付けでした原判決別紙物件目録記載の各不動産に係る平成15年度固定
資産税及び都市計画税の賦課処分(ただし,平成15年8月18日付けで
減免された金額に係る部分を除く)を取り消す。。
(2)被控訴人東京都千代田都税事務所長が控訴人に対し平成15年8月18
日付けでした原判決別紙物件目録記載の各不動産に係る平成15年度固定
資産税の減免許可決定処分のうち減免不許可とした部分を取り消す。
(第2事件)
被控訴人東京都千代田都税事務所長が控訴人に対し平成16年6月1日付け
でした原判決別紙物件目録記載の各不動産に係る平成16年度固定資産税及び
都市計画税の賦課処分(ただし,平成16年11月9日付けで減免された金額
に係る部分を除く)を取り消す。。
(第3事件)
被控訴人東京都千代田都税事務所長が控訴人に対し平成16年11月9日付
けでした原判決別紙物件目録記載の各不動産に係る平成16年度固定資産税の
減免許可決定処分のうち減免不許可とした部分を取り消す。
(第4事件)
(1)東京都千代田都税事務所長は,控訴人に対し,控訴人が平成15年7月
25日付けでした原判決別紙物件目録記載の各不動産に係る平成15年度
固定資産税の減免申請について,平成15年8月18日付けの減免許可決
定処分により減免した部分を除き,全額減免の許可決定処分をせよ。
(2)東京都千代田都税事務所長は,控訴人に対し,控訴人が平成16年6月
25日付けでした原判決別紙物件目録記載の各不動産に係る平成16年度
固定資産税の減免申請について,平成16年11月9日付けの減免許可決
定処分により減免した部分を除き,全額減免の許可決定処分をせよ。
(第5事件)
(1)東京都千代田都税事務所長が控訴人に対し平成17年6月1日付けでし
た原判決別紙物件目録記載の各不動産に係る平成17年度固定資産税及び
都市計画税の賦課処分(ただし,平成17年7月28日付けで減免された
金額に係る部分を除く)を取り消す。。
(2)東京都千代田都税事務所長が控訴人に対し平成17年7月28日付けで
した原判決別紙物件目録記載の各不動産に係る平成17年度固定資産税の
減免許可決定処分のうち減免不許可とした部分を取り消す。
(3)東京都千代田都税事務所長は,控訴人に対し,控訴人が平成17年6月
13日付けでした原判決別紙物件目録記載の各不動産に係る平成17年度
固定資産税の減免申請について,平成17年7月28日付けの減免許可決
定処分により減免した部分を除き,全額減免の許可決定処分をせよ。
3訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
第2事案の概要(略語等は,原則として,原判決に従う)。
1本件は,Aが中央本部の事務所等として使用する原判決別紙物件目録記載の
各不動産(以下「本件各不動産」という)につき,平成15年度,平成16。
年度及び平成17年度の固定資産税及び都市計画税の賦課期日における所有名
義人であった控訴人が,被控訴人らに対し,本件各不動産については過去長年
にわたり固定資産税及び都市計画税の全額減免が行われていたものであって,
被控訴人東京都千代田都税事務所長がした本件各不動産に係る上記各年度の固
定資産税及び都市計画税の賦課決定処分及び固定資産税の減免申請に対して一
部の金額の減免のみを許可し,その余の減免を不許可とする処分は,固定資産
税の減免の要件を定める東京都都税条例(昭和25年東京都条例第56号。た
だし,平成18年東京都条例第27号による改正前のもの。以下「都税条例」
という)の解釈適用を誤った違法があり,信義則及び平等原則にも違反する。
などと主張して,これらの各処分(ただし減免許可に係る部分を除く)の取。
消し及び減免申請に対する全額減免の許可決定処分の義務付けを求めた事案で
ある。
原審は,控訴人の訴えのうち固定資産税の全額減免の許可処分の義務付けを
,,求める訴えをいずれも却下し控訴人のその余の請求をいずれも棄却したため
控訴人が控訴した。
2関係法令等の定め,争いのない事実,本案前の主張,争点及び当事者の主張
は,原判決の「事実及び理由」第2の1ないし4に摘示されたとおりであるか
ら,これを引用する。
第3当裁判所の判断
1憲法30条は納税義務に法律の根拠を求め,地方税法は,地方団体の課税権
を認め(同法2条,課税客体,課税標準,税率その他賦課徴収について条例)
で定めることとしているから(同法3条,地方税である固定資産税の賦課処)
分については厳密な租税条例主義が妥当する。また,地方税は地方団体の財政
の基礎を形成するものであるから,賦課処分を前提とし,これにより生じた地
方債権を放棄することで徴収を行わないこととする減免処分については,減免
の要件を満たさない場合に減免を許すべきではなく,減免の要件の判断に課税
主体の裁量の余地がある場合でも,その判断は厳格に行うべきであるという意
味で租税条例主義の趣旨が及ぶものと解すべきである(同法367条の文言に
よれば,減免が許される者の拡張解釈は予定されていない。。)
2固定資産税は,固定資産に対し,賦課期日における所有者に課されるもので
あり,非課税の範囲は法定されているが(同法348条,控訴人は,これら)
の賦課要件の違法又は本件各不動産が非課税の対象に含まれることを主張する
ものではない。また,課税標準は賦課期日における価格であるが,これに対す
る不服は固定資産評価審査委員会の決定に対する抗告訴訟によるべきものであ
り(同法432条,434条,また,控訴人は,本件不動産が免税点(同法)
351条)以下であると主張するものでもない。そうすると,本件各賦課処分
(固定資産税,都市計画税)に違法はないというべきである。
3固定資産税の減免事由については,その要件が課税庁の判断,評価に係る場
合であっても,既に述べたとおり租税条例主義の趣旨が及ぶものと解すべきで
あるから,減免事由に該当する要件はそれに関する規定の文言に即して理解さ
れるべきであり,要件該当性の判断の前提となった事情が事実的基礎を有し,
その判断が社会通念に照らして,当該要件に該当するとき(要件判断の裁量に
合理性があるとき)に限り,減免処分が許されるものと解すべきである。
これを本件についてみると,本件各減免処分は適法と認められ,本件各減免
不許可処分については,上記減免事由の存在を認めるに足りる証拠はなく,本
件各減免不許可処分に違法はないから,その取消請求には理由がなく,この違
法があることを前提とする固定資産税の全額減免の許可処分の義務付けを求め
る訴えはいずれも不適法であると判断する。その理由は,次項のとおり,原判
決を訂正するほか,原判決の「事実及び理由」第3の1ないし4に説示された
とおりであるから,これを引用する。
4原判決の訂正
(1)24頁17行目の「供されている」を「供され,その利益を増進する」
に,20行目の「使用されているようなもの」を「使用され,あるいは広く
住民の利用に供されることが予定れていないもの」に改め,21行目末尾に
改行して,次のとおり加える。
「控訴人は,学校関連施設,寄宿舎,幼稚園や認証保育所などの資産が都
税条例134条1項2号に規定する固定資産とされていることから,同号
の公益の概念に不特定多数の者の使用又は利用の増進を加えることを不当
であるとし,公益的活動を保護するという固定資産税の減免の趣旨及び被
控訴人における現実の運用にかんがみれば「公益のために直接専用する,
固定資産(都税条例134条1項2号)とは,直接的にもっぱら不特定」
多数の者の使用又は利用に供されている場合に限定すべきではなく,そこ
で営まれている事業が,社会福祉,教育,医療等の公益に係る事業のため
に直接使用されているか否かという観点から判断すべきである旨主張す
る。
しかしながら,不特定多数の者の使用又は利用の増進とは,施設の利用
がこれを必要とする不特定多数の者に開かれていることを意味するのであ
って,一定時点での施設の利用者が不特定多数であることを意味するもの
ではないから,この点において,上記諸施設の固定資産を本件各不動産と
類比すべきものではない。また,都税条例134条1項2号は,減免され
るべき者を「公益のために『直接専用する』固定資産」を所有する者と明
記しており,当該所有者が有料で使用させるものは除外されているのであ
るから,同号は,無償で直接的に不特定多数の者の使用又は利用に供され
ている固定資産について,不特定多数の者の利益を増進させていることに
かんがみ固定資産税を減免する趣旨であると解され,この文言を拡張して
解釈すべきものではないから,控訴人の上記主張を採用することはできな
い」。
(2)25頁16行目末尾に改行して,次のとおり加える。
「控訴人は,本件各不動産は,在外公館的な会館としてあるいは在日朝鮮
人の権利擁護団体の活動拠点として広く外国籍を含む一般住民に開放され
ているし,また,在日朝鮮人の権利擁護は本来日本政府が国際法上負って
いる義務の履行を補完するものとして公益性を有するものであるところ,
Aは在外公館的な組織として,あるいは在日朝鮮人の権利擁護団体として
公益的活動を行っているから,本件各不動産は「公益のために直接専用す
る固定資産(都税条例134条1項2号)に当たる旨主張する。」
しかしながら,本件各不動産が広く不特定多数の住民の使用又は利用に
開かれているものと認めるに足りる証拠はなく,本件各不動産のうち旅券
発給業務の用に直接供している部分以外の部分については,在日朝鮮人の
権利擁護団体としての活動のために使用されているものであって,本件各
不動産は「公益のために直接専用する固定資産(都税条例134条1項」
2号)に当たらないことについては前示のとおりである」。
(3)26頁18行目の「考慮すれば」の次に「減免を受けるべき者を限定し,
た趣旨に反しない限り」を加え,同頁23行目の「課税庁の裁量処分であ,
り」を「課税庁の合理的裁量による判断において,減免の要件に該当する,
限り減免し,減免の要件に該当しないときは減免をすることができないもの
というべきであり,この」と改める。
(4)31頁11行目末尾に改行して,次のとおり加える。
「控訴人は,①課税庁は,約40年にわたって「特別な事情があると認め
られる固定資産(本件規則31条1項)に該当するとの判断を維持した」
のであるから,本件各不動産の使用実態に変化がない以上,同様の判断が
されるべきである,②Aは,日本と国交のない朝鮮民主主義人民共和国の
事実上の在外公館としての活動を行っている機関であり,国交が正常に回
復した場合には直ちに外交使節団の公館として位置付けられる性格のもの
であるから,本件基準(ア)に該当し,③仮に旅券発給業務のみが本件基準
(イ)の公益性が認められるとしても,旅券発給業務はA中央本部のほとん
どすべての部局が係わっているのであるから,本件各不動産の全部につい
て固定資産税が減免されなければならない,④本件処分は,実質的には朝
鮮民主主義人民共和国に対する制裁としての意味合いをもってされたもの
であって,課税処分において本来考慮すべきでないことを考慮している点
において裁量権の逸脱濫用があるなどと主張する。
しかしながら,①前記第3の1の(3)(原判決16頁)のとおり,被控
訴人は,昭和63年に実地調査を行って以降は実地調査を行わず,平成元
年以降は年度ごとの実地調査と再検討を行う必要がないとの取扱いに基づ
き,平成14年度まで減免措置を継続してきたというのであるから,平成
15年に実地調査を経た上で,減免措置を見直し「特別な事情があると,
認められる固定資産(本件規則31条1項)に該当しないとの判断をし」
,。,たことが直ちに裁量権の逸脱濫用に当たるということはできないまた
②Aは,本国である北朝鮮民主主義共和国から正規の権限を与えられた機
関ではない上,日本国政府と当該外国政府との間の条約等による相互課税
免除の取決めが存する場合とこのような取決めのない国交のない国とを同
様に扱うことができないことについては,前示のとおりであるし,③旅券
発給にはAのほとんどすべての局が関与している旨の供述(証人B,甲5
8)は存在するものの具体性を欠く上,実地調査の結果等(乙12)に照
らしても,本件各不動産の全体が旅券発給業務の用に直接供されているも
のと認めるに足りず,他に本件各不動産のうち旅券発給業務の用に直接供
されている部分(同胞生活局,責任副議長室及び責任副議長室前室の半分
の面積,乙12)以外の部分が旅券発給業務の用に直接供されているもの
と認めるに足りる的確な証拠はなく,④控訴人が指摘する証拠関係(甲3
1,58,77,89)によっても,本件各処分時において,本件各不動
産に対する減免措置の見直しが朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁とし
ての意味合いをもってされたものであるものと認めるに足りず,他に控訴
人の上記④の主張を認めるに足りる的確な証拠はない」。
(5)31頁25行目の「むしろ」から32頁1行目の「あるから」までを,,
「,減免の対象とされている固定資産の利用形態は随時変化し得るものであり
減免事由該当性の解釈,適用の見直しがされることもあり得るものであるか
ら」に改め,32頁18行目の「仮に」から21行目の「考えられる」,。
までを「固定資産の使用形態等が都の行政に著しく寄与するか否か,減免措
置に対して都民の合意が容易に得られるか否かという減免事由該当性につ
き,これを厳格に解釈すべきであるとの原則に従って改めてその解釈,適用
が見直されることもあり得るというべきである」に改める。。
(6)33頁4行目冒頭ないし9行目末尾までを,次のとおり改める。
「控訴人は,C及びD中央本部事務所が使用する固定資産については,そ
れぞれ都税条例134条1項4号を根拠として固定資産税が減免されてい
るところ,Cは日本と国交がない国の民間の機構であるという点において
Aと異ならず,Dは在日朝鮮・韓国人の利益擁護団体であるという点にお
いてAと異ならないから,Aが使用する本件各不動産についても固定資産
税が減免されるべきであり,これに反する本件各処分は平等原則に反し違
法である旨主張する。
しかしながら,本来,都条例134条1項4号所定の固定資産税の減免
事由の有無は,各固定資産ごとにその使用実態等を調査した上で個別に判
断されるべきものであって,その所有する固定資産について固定資産税の
減免を受けている団体と団体の性質が類似することをもって,直ちに当該
団体の使用する固定資産についても同様に固定資産税の減免がされるべき
であるということはできない。
控訴人の主張は,C及びD中央本部事務所が使用する固定資産と本件各
不動産とが減免要件の前提事実において全く同じであること,すなわち,
既にした判断によれば,上記固定資産も減免要件を欠くことを前提とする
ことになるが,このような前提が本件不動産についての減免事由を基礎付
けることにはならない。また,Cは,従前中華民国の正規の大使館であっ
たものが,日中国交正常化に伴い形式的に民間の機構とされたものであっ
,()て中華民国政府が自らの駐在代表機構であることを認めている乙33
のに対し,Aは,在日朝鮮人の権利擁護等を目的として設立された民間の
団体であって,朝鮮民主主義人民共和国の組織でもなく,両者はその組織
の成立の経緯や本国政府との関係という点において性質を異にするもので
あり,また,Dは日本と国交がある大韓民国の民間の機構であるという点
においてAとは性質を異にするものであるから,CやDが使用する固定資
産について固定資産税の減免措置が採られていることから,直ちにAが使
用する固定資産について同様の減免措置を採らなければ平等原則に反する
ということはできない」。
(7)34頁2行目の「開示決定の」を削る。
5控訴人のその余の主張も,上記認定,判断を左右するものではない。
6よって,控訴人の訴えのうち固定資産税の全額減免の許可処分の義務付けを
求める訴えをいずれも却下し,控訴人のその余の請求をいずれも棄却した原判
決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり
判決する。
東京高等裁判所第11民事部
裁判長裁判官富越和厚
裁判官岩井伸晃及び裁判官横田典子は,転補のため署名押印することができ
ない。
裁判長裁判官富越和厚

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