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平成30年10月22日判決言渡
平成30年(行ケ)第10017号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成30年9月26日
判決
原告ヴェーエムエフグループゲゼルシャフ
トミトベシュレンクテルハフツング
同訴訟代理人弁理士前田弘
竹内宏
竹内祐二
日野貴美
被告特許庁長官
同指定代理人佐々木正章
紀本孝
宮崎賢司
関口哲生
板谷玲子
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
日と定める。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2016-2269号事件について平成29年9月26日にした審
決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,特許出願拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟
である。争点は,進歩性判断の誤り(相違点の認定の誤り)の有無である。
1特許庁における手続の経緯
原告は,名称を「コーヒーメーカ及びその操作方法」とする発明につき,平成2
5年1月9日を国際出願日とする特許出願(特願2014-555985号。パリ
条約による優先権主張平成24年2月8日,スイス。以下「本願」という。)をし,
平成25年12月4日付け及び平成27年11月12日付け手続補正書により特許
請求の範囲及び明細書を補正する手続補正をした(甲5,32)が,平成27年1
2月2日付けで拒絶査定を受けた(甲6)。
原告は,平成28年2月15日,拒絶査定不服審判を請求し(不服2016-2
269号,甲7),平成29年5月30日付け手続補正書により特許請求の範囲及び
明細書を補正する手続補正(以下「本件補正」といい,本件補正後の明細書及び図
面を併せて「本願明細書」という。甲11)をしたが,特許庁は,同年9月26
日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)を
し,本件審決の謄本は,同年10月10日,原告に送達された。
2本願発明の要旨
本件補正後の本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,以下の
とおりである(甲11)。
「抽出を行うために,この用途に提供されたコーヒーメーカ(10)のホルダ(1
2)に嵌め込み可能で,少なくとも1つの脱着可能なポータフィルタ(11)と,
加圧下で熱水を生成し供給する第1手段(28,・・・,31)と,
少なくとも1つのコーヒーミル(19)と,
前記ホルダ(12)に嵌め込まれた前記ポータフィルタ(11)に対して密封及
び開放を繰り返すように設けられた第2手段(33;33a-e;41)と,
前記コーヒーミル(19)から,前記ホルダ(12)に嵌め込まれ開放状態の前
記ポータフィルタ(11)にコーヒー粉(16)を導入するように設けられた第3
手段(23)とを備え,
前記第2手段(33;33a-e;41)は,分配フィルタエレメント(33;
33a-e)を有し,前記ポータフィルタ(11)が開放状態にあってコーヒー粉
を充填できる第1の位置と,前記分配フィルタエレメント(33;33a-e)が
前記ポータフィルタを気密に閉鎖した第2の位置とを行ったり来たりすることがで
き,抽出ごとに前記ポータフィルタ(11)が手動で取り外されてその内部を空に
される半自動のコーヒーメーカであって,
前記第2手段(33;33a-e;41)は,前記ポータフィルタ(11)内に
配されたコーヒー粉(16)にタンパリングを行い,
電気的又は液圧応用的に操作する駆動ユニット(32)は,前記第1の位置と前
記第2の位置との間で前記分配フィルタエレメント(33;33a-d)が動くよ
うに設けられており,
前記分配フィルタエレメント(33;33a-e)は,前記ポータフィルタ(1
1)内の分配フィルタ(34)によって抽出チャンバ(15)を規制し,
中央制御器(24)は,前記コーヒーミル(19),前記第1手段(28,・・・,
31),及び前記第2手段(33;33a-d)のうち少なくとも前記コーヒーミ
ル(19)及び前記第1手段(28,・・・,31)を制御するように設けられて
いることを特徴とするコーヒーメーカ。」
3本件審決の理由の要点
(1)引用発明の認定
本願の優先日前に頒布された刊行物である中国実用新案第201578093号
公報(甲1。以下「引用文献」という。)には,以下の発明(以下「引用発明」とい
う。)が記載されているものと認められる。
「自動で豆を挽き,挽いた粉を自動で投入し,コーヒー粉を手動でプレスし,自
動でエスプレッソを作り,手動でコーヒーかすを排出する半自動コーヒーメーカー
であって,
半自動コーヒーメーカーは,コーヒー豆を挽くシステムとコーヒーを抽出するシ
ステム,ポンプ及びヒーターからなり,
コーヒー豆を挽くシステムが挽いたコーヒー粉は,粉出口(11)と粉受け(13)
を通ってドリッパー(20)に入り,
コーヒーを抽出するシステムは,左支柱(15),右支柱(29),ピストンバー連
結装置(39),固定装置(16),ドリッパーセット(40),左スライド溝連結器(1
7),右スライド溝連結器(31),バックシャフト(18),粉漏れ防止ふた(19)か
らなり,
ドリッパーセット(40)は,ドリッパー(20)とドリッパーシャフト(21)から
なるとともに,左右支柱の底部のスライド溝の中に水平に置かれ,粉漏れ防止ふた
(19)の真下に位置し,投入し取り出すことができ,
ピストンバー連結装置(39)は,プレスハンドル(22),回転支柱(23),ピス
トン連結器(24),ピストン連結器シャフト(25),ピストン(26),密封リング
(27),テフロンチューブ(28),ピストンネット(35)からなり,左右の支柱の
頂部の回転軸穴とスライド溝の中に取り付けられ,上下にスライドでき,
密封リング(27)とピストンネット(35)は,ピストン(26)の上に取り付けら
れ,
ドリッパーセット(40)がコーヒーを抽出するシステムの固定支柱スライド溝の
中に差し込まれ,ドリッパースイッチ(33)にスイッチが投入されると,この時コ
ーヒー豆を挽く状態になり,ピストンバー連結装置(39)がグラインダーの位置ま
で上に向かってスライドし,ピストンバー連結装置(39)のピストン(26)の楕円
形の支柱上が動いてグラインダースイッチが入ることで,グラインダーの粉を挽く
動作が可能になり,ピストンバー連結装置(39)がドリッパーセット(40)のドリ
ップ(20)内までスライドしてコーヒー粉をプレスし,ピストンバー連結装置(3
9)上のピストン(26)の楕円形の支柱上が動いてコーヒー抽出スイッチ(32)が
入った時に,コーヒーを抽出する操作が行える,
半自動コーヒーメーカー。」
(2)本願発明と引用発明との対比
ア一致点
「抽出を行うために,この用途に提供されたコーヒーメーカのホルダに嵌め込み
可能で,少なくとも1つの脱着可能なポータフィルタと,
加圧下で熱水を生成し供給する第1手段と,
少なくとも1つのコーヒーミルと,
前記ホルダに嵌め込まれた前記ポータフィルタに対して密封及び開放を繰り返す
ように設けられた第2手段と,
前記コーヒーミルから,前記ホルダに嵌め込まれ開放状態の前記ポータフィルタ
にコーヒー粉を導入するように設けられた第3手段とを備え,
前記第2手段は,分配フィルタエレメントを有し,前記ポータフィルタが開放状
態にあってコーヒー粉を充填できる第1の位置と,前記分配フィルタエレメントが
前記ポータフィルタを気密に閉鎖した第2の位置とを行ったり来たりすることがで
き,抽出ごとに前記ポータフィルタが手動で取り外されてその内部を空にされる半
自動のコーヒーメーカであって,
前記第2手段は,前記ポータフィルタ内に配されたコーヒー粉にタンパリングを
行い,
駆動ユニットは,前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記分配フィルタエ
レメントが動くように設けられており,
前記分配フィルタエレメントは,前記ポータフィルタ内の分配フィルタによって
抽出チャンバを規制するコーヒーメーカ。」
イ相違点
(相違点1)
「分配フィルタユニットを第1の位置と第2の位置との間で動かすにあたって,本
願発明では,駆動ユニット(32)を,電気的又は液圧応用的に操作するのに対し
て,引用発明では,プレスハンドル(22)等を人手で操作する点。」
(相違点2)
「本願発明では,中央制御器(24)を備え,当該中央制御器(24)が,コーヒ
ーミル(19),第1手段(28,・・・,31),及び第2手段(33;33a-d)
のうち少なくともコーヒーミル(19)及び第1手段(28,・・・,31)を制御
するのに対して,引用発明では,そのような中央制御器を備えない点。」
(3)相違点の判断
ア相違点1について
コーヒーメーカの技術分野において,分配フィルタエレメントの駆動ユニットを,
電気的又は液圧応用的に操作することは,従来周知の技術である。
そして,コーヒーメーカーは,半自動から全自動まですでに様々な内部機器の自
動化が知られており,所望の内部機器の駆動について自動化を図ることは,当業者
の通常の創作能力の発揮にすぎず,また,引用発明において,ピストン(26)を第
1の位置と第2の位置との間で動かすにあたって,電気的又は液圧応用的に操作す
る駆動ユニットを用いることに特段の阻害要因は見出せない。
したがって,引用発明に上記周知技術を適用し,相違点1に係る本願発明の構成
とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
イ相違点2について
コーヒーメーカの技術分野において,コーヒーミル及び加圧下で熱水を生成し供
給する第1手段を制御する中央制御器を設けることは,従来周知の技術である。
そして,前記アで述べたように,コーヒーメーカの自動化は一般的な課題であっ
て,引用発明においても当該課題は内在しており,また,引用発明に上記中央制御
器を設けることに特段の阻害要因は見いだせない。
したがって,引用発明に上記周知技術を適用し,相違点2に係る本願発明の構成
とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
ウ効果について
本願発明の奏する作用効果についてみても,引用発明及び前記周知技術の奏する
作用効果から予測し得る範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはでき
ない。
(4)結論
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び前記周知技術に基いて当業者が容易に
発明をすることができたものであり,特許法29条2項により特許を受けることが
できないものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本
願は拒絶すべきものである。
第3原告主張の審決取消事由(相違点の認定の誤り)
本件審決は,以下のとおり,本願発明と引用発明との相違点の認定を誤って進歩
性の判断を誤ったものである。
1本願発明の分配フィルタ34について
(1)分配フィルタ34の熱水の分配・通過機能について
本願の当初明細書(甲5)の【0035】,【0036】の記載からすると,本願
発明の分配フィルタ34は,分配チャンバ35に導入された熱水が,抽出チャンバ
15に配されたコーヒー粉16の全体に均一に浸透するように,コーヒー粉の表面
全体にむらなく分配しつつ通過させる,いわば熱水の分配・通過機能を有する部材
といえる。
(2)分配フィルタ34のタンパリング機能について
タンパリングとは,熱水が均等にコーヒー粉を通過するように,すなわち,コー
ヒー粉に不均一な固まりが形成されないように,挽かれた材料をポータフィルタ内
に均一に押し詰めること(本願の当初明細書の【0003】,甲12~14)である。
エスプレッソの品質は,コーヒーの挽き具合とタンパリングとの調節に負うところ
が大きく,タンパリングはエスプレッソの抽出工程において,極めて重要な工程で
ある(甲12~甲14)。
本願発明のコーヒーメーカ10では,第2手段33;33a-e;41(以下,
単に「第2手段」ともいう。)によりコーヒー粉16へのタンパリングが行われると
ころ,当初明細書(甲5)の【0041】の記載等からすると,実質的には,第2
手段33;33a-e;41における分配フィルタエレメント33(以下,単に「分
配フィルタエレメント」ともいう。)のうち分配フィルタ34がタンパリングを行っ
ている。
そして,「フィルタ」の通常の意味も踏まえると(甲15,16),本願発明にお
ける分配フィルタ34とは,上記熱水の分配・通過機能を有する部材であることに
加え,液体を通す一方,固体は通さない,例えば不織布や,濾紙等といった部材(た
だし,不織布や,濾紙に限られるものではない。)といえる。
以上のとおり,本願発明では,コーヒー粉に対して,当該コーヒー粉を通さない
部材である分配フィルタ34を用いてタンパリングを行い,コーヒー粉に不均一な
固まりが形成されないように,コーヒー粉をポータフィルタ内に均一に押し詰めて
いる。
(3)小括
以上のように,本願発明の分配フィルタ34は,液体を通す一方,固体は通さな
い,不織布等の部材であって,かつコーヒー粉のタンパリング機能及び熱水の分配・
通過機能とを有する部材ということができる。
2引用発明のピストンネット35について
(1)ピストンネット35について
引用文献からすると,ピストンネット35は,ピストン26の下側の先端面に取
り付けられていて(請求項6,【0006】),ピストンネット35は,ピストン26
に取り付けられたネットのような部材と解することができる。
そして,ネットは,英語の「net(網)」であって,「網」は,広辞苑(第5版)
によると,「鳥獣や魚などをとるために,糸や針金を編んで造った道具。また一般に,
糸や針金を編んで造ったもの。」である(甲17,18)。また,明鏡国語辞典(初
版)によっても,「ネット」は「網。網状のもの。」(甲24),「網」は「糸・縄・針
金・竹などで目を粗く編んだもの」(甲25)と解釈できる。
そうすると,ピストンネット35とは,ピストン26に取り付けられた部材であ
って,一般的な糸状の部材を編んで造ったもの及びそれに準ずるもの,網の目とし
ての多数の開口を有する部材と解釈することができる。そして,目の粗いネットや
網のような部材によっては,液体を通す一方,固体は通さない本願発明の分配フィ
ルタ34を構成することは困難である。
(2)引用発明におけるコーヒー粉のプレスについて
引用文献の【0029】の記載からすると,引用発明では,ピストン26のピス
トンネット35が設けられた部分がドリップ20(以下「ドリッパー20」という
こともある。)内に入って,ピストン26のピストンネット35が設けられた部分が
ドリップ20内のコーヒー粉をプレスすると考えられる。
ここに,「プレス」が,「押すこと。押しつけること。」を意味することを踏まえる
と(甲19),引用発明における「ピストンバー連結装置(39)がドリッパーセット
(40)のドリップ(20)内までスライドしてコーヒー粉をプレスし」(【0029】)
との文言は,ピストン26のピストンネット35が設けられた部分をコーヒー粉に
押し付けることと解釈することができる。
しかし,上記のようにピストンネット35は,一般的な糸状の部材を編んで造っ
たもの及びそれに準ずるものであり,網の目としての多数の開口を有する部材であ
る。そして,このような網の目を有する部材をコーヒー粉に押し付けると,コーヒ
ー粉がピストンネット35の網の目を通過してピストン26のピストンネット35
側の先端面まで到達してしまう。そうすると,引用発明においては,ピストンネッ
ト35は,コーヒー粉をプレスする機能を果たしておらず,コーヒー粉の均一性を
向上させるため,ピストン26のピストンネット35側の先端面によりコーヒー豆
がドリッパー20内に詰め込まれる前に,コーヒー粉の上面を平らにならすという,
コーヒー粉上面のならし機能を有しているにすぎず,コーヒー粉をプレスする機能
は実質的にはピストン26のピストンネット35側によって担われている。
(3)引用発明における抽出の工程について
引用発明における抽出の工程は,ピストンバー連結装置39がドリッパー20内
に入り,ピストン26のピストンネット35側の先端面によりコーヒー粉がプレス
された状態で,テフロンチューブ28及びピストン26の孔を通じてコーヒー粉に
熱水が供給され,コーヒーの抽出が行われるというものである。
そうすると,熱水は,ピストン26に形成された孔を通じて供給されるときに,
ピストン26のピストンネット35側の先端面にまで到達しているコーヒー粉に直
接供給される。そうして,孔からコーヒー粉に供給された熱水は,直下のコーヒー
粉を部分的に通過し,ドリッパー20内のコーヒー粉に行き渡らずに,コーヒーの
抽出が行われると考えられる。
3本願発明と引用発明の対比
(1)前記のとおり,引用発明のピストンネット35は,コーヒー粉上面のなら
し機能を有するものの,本願発明の分配フィルタ34が有するコーヒー粉のタンパ
リング機能及び熱水の分配・通過機能はいずれも有していないから,引用発明のピ
ストンネット35は,本願発明の分配フィルタ34に相当しない。
(2)引用発明のピストンネット35は,熱水の分配・通過機能を有しておらず,
引用発明において,テフロンチューブ28を通じて供給された熱水は,ピストン2
6に形成された孔を通じて直下のコーヒー粉に部分的に直接供給されると考えられ
るから,引用発明のピストン26は,本願発明の分配フィルタ34が有する熱水の
分配・通過機能を備えた構成を有しない。したがって,引用発明のピストン26は,
本願発明の第2手段(33;33a-e;41)及び分配フィルタエレメント(3
3;33a-e)のいずれにも相当しない。
(3)引用発明の「プレス」は,「押すこと。押しつけること。」という意味であ
り(甲19),引用文献の「ピストンバー連結装置(39)がドリッパーセット(40)
のドリップ(20)内までスライドしてコーヒー粉をプレスし」という事項は,ピス
トン26のピストンネット35が設けられた部分をコーヒー粉に押し付けることと
解釈することができる。
一方,本願発明の「タンパリング」は,熱水が均等にコーヒー粉を通過するよう
に,すなわちコーヒー粉に不均一な固まりが形成されないように,挽かれた材料で
あるコーヒー粉をポータフィルタ内に均一に押し詰めることである。
したがって,引用発明の「プレス」は,本願発明の「タンパリング」に相当せず,
引用発明の「ピストンバー連結装置(39)がドリッパーセット(40)のドリップ(2
0)内までスライドしてコーヒー粉をプレスし」という事項は,本願発明の「前記第
2手段(33;33a-e;41)は,前記ポータフィルタ(11)内に配された
コーヒー粉(16)にタンパリングを行い」に相当しない。
(4)以上の検討からすると,本願発明と引用発明との間には,本件審決が認定
した相違点1,2に加え,以下の相違点3~5があるが,本件審決は相違点3~5
を看過したまま進歩性の判断を行っており,その判断の誤りは本件審決の結論に影
響を及ぼすことが明らかなものといえる。
(相違点3)
「本願発明は,分配フィルタ34を備えているのに対して,引用発明は相当する構
成を備えていない点。」
(相違点4)
「本願発明は,分配フィルタ34を備えた分配フィルタエレメント33;33a-
e(第2手段33;33a-e;41)を備えているのに対して,引用発明は相当
する構成を備えていない点。」
(相違点5)
「本願発明は,第2手段33;33a-e;41の分配フィルタ34が,コーヒー
粉16にタンパリングを行うのに対して,引用発明は,ピストン26のピストンネ
ット35が設けられた部分がコーヒー粉をプレスする構成であり,タンパリングを
行っていない点。」
4被告の主張に対する反論
被告は,エスプレッソの技術常識を前提として,引用文献を解釈して引用発明の
認定を行っているが,それについては以下のとおり誤りがある。
(1)前提としての引用発明の認定の誤り
ア本件審決は,引用文献の【0001】の「浓缩咖啡」を「エスプレッソ」
と訳している。しかし,日本語の「エスプレッソ」は,中国語で「意大利浓咖啡」
で,中国語の「浓缩」及び「咖啡」は,それぞれ日本語の「濃縮」,「コーヒー」の
意味である(甲20~22)。加えて,「エスプレッソ」は,「ごく細かく挽いた深炒
りのコーヒー豆に圧搾蒸気を通して一気に入れた濃いコーヒー」であって(甲23),
濃いコーヒーの一種であるから,引用文献にいう「浓缩咖啡」は,「エスプレッソ」
以外の濃縮された又は濃いコーヒーも含むものと考えられる。
したがって,本件審決が,引用発明を「自動でエスプレッソを作り,手動でコー
ヒーかすを排出する半自動コーヒーメーカー」の発明であると認定したことは,誤
りであり,引用発明は「自動で濃縮コーヒーを作り,手動でコーヒーかすを排出す
る半自動コーヒーメーカー」の発明と認定されるべきである。
イ上記のとおり,引用発明は,「エスプレッソ」以外の濃縮されたコーヒーを
抽出するコーヒーメーカーを含むものであるから,引用発明を理解するに当たり,
エスプレッソの技術常識を前提とすることは妥当性を欠く。すなわち,引用発明を
被告が主張するように,エスプレッソを抽出する際の手順を実行する装置に限定さ
れるものと理解することはできず,本願発明におけるタンパリングを行うことによ
り圧力やお湯をコーヒー粉全体に均等に行き渡らせるように動作する装置に限定さ
れるものであると理解することはできない。
また,そもそも引用文献にピストンネット35の具体的な構成等は開示されてい
ない。
(2)引用文献の「浓缩咖啡」が「エスプレッソ」を意味するものであることを
前提とした反論
仮に,引用文献の「浓缩咖啡」が「エスプレッソ」を意味するものであるとして
も,以下のとおり,被告の主張は成り立たない。
アエスプレッソの技術常識の認定について
エスプレッソは,「ごく細かく挽いた深炒りのコーヒー豆に圧搾蒸気を通して一
気に入れた濃いコーヒー」(甲23)であって,加圧された熱水を用いていれば,タ
ンパリングを行っていないコーヒー粉で抽出されたものもエスプレッソである。す
なわち,タンパリングは,品質の高いエスプレッソを抽出するために極めて重要な
工程であるものの,エスプレッソの抽出に必須の構成ではなく,タンパリングを行
うことがエスプレッソの技術常識ではないから,エスプレッソの技術常識を踏まえ
て,引用発明が,タンパリングを行うことにより圧力やお湯をコーヒー粉全体に均
等に行き渡らせるように動作する装置に限定されるものであると解釈することは無
理がある。
実際,甲26に示すように,エスプレッソコーヒー等のコーヒー粉の表面に穴明
け要素22を突き刺した状態でコーヒーを抽出する構成が開示されている(甲26
の【0030】,【0035】,【0076】,【0078】,【図6】,【図9】)。甲26
によると,上側の穴明け要素22が壁手段8に突き刺さった状態であり,壁手段8
により定義されるコーヒー粉の上面は平らではない。
イ引用発明における「プレス」の意味について
上記のように,タンパリングは,エスプレッソにおいて必須の構成ではない。そ
して,引用文献にある「プレス」は,単に「押すこと。押し付けること。」であり,
タンパリングにおける「平らに隙間なく詰まるように」とか,「均一に」といった限
定は,上記「プレス」の定義には含まれておらず,コーヒー粉をプレスするとは,
コーヒー粉を押し詰めていればそれで足り,コーヒー粉が平らに隙間なく均一に詰
まっていない場合も含むものである。
そうすると,引用発明の「ピストンバー連結装置(39)がドリッパーセット(4
0)のドリップ(20)内までスライドしてコーヒー粉をプレスし」という事項にい
う「プレス」を,「タンパリング」のことだけを意味すると解釈することはできない。
ウ引用発明におけるコーヒー抽出時の水の通過態様について
上記のとおり,加圧された熱水を用いて抽出されたものがエスプレッソであり,
加圧された熱水を用いてさえいれば,抽出の際に,熱水が,直下のコーヒー粉を部
分的に通過するだけで,ドリッパー20内のコーヒー粉に行き渡らない場合であっ
ても,抽出物はエスプレッソといえる。言い換えると,抽出の際に,熱水が,直下
のコーヒー粉の全体を通過し,ドリッパー20内のコーヒー粉に行き渡ることは,
品質の高いエスプレッソを抽出するために効果的であるのであって,エスプレッソ
において必須の構成ではない。
現に,甲27,28に示すように,抽出ピストン8の端部(又は端面)8aに接
触するようにコーヒー粉が配置され,当該端部8aに形成された水の出口開口17
を通じて出口開口17直下のコーヒー粉に水が供給されるように構成されたエスプ
レッソマシンも存在する(甲28の【0001】,【0028】,【0031】,【図1】
参照)。
したがって,引用発明において,コーヒー粉がピストンネット35の網の目を通
過してピストン26のピストンネット35側の先端面まで到達すると解釈してもよ
く,そのように解釈したからといって,エスプレッソの技術常識に反することには
ない。
エ引用発明のピストンネット35について
前記のように引用文献にピストンネット35の具体的な構成等が開示されていな
いこと,タンパリングが,エスプレッソにおける必須の構成ではなく,かつ引用文
献の「プレス」がタンパリングとは異なるものであることからすると,たとえエス
プレッソの技術常識を考慮したとしても,引用発明において,「ピストンバー連結装
置(39)がドリッパーセット(40)のドリップ(20)内までスライドしてコーヒー
粉をプレスし」という記載のみから,ピストンネット35が,コーヒー粉をプレス
すると断定して解釈することはできないはずである。また,ピストンネット35自
体がコーヒー粉をプレスすると断定できないのであるから,引用発明のピストンネ
ット35は,目が細かく,コーヒー粉を通さないものでなければならないと限定し
て解釈することもできないし,コーヒーを抽出する際には,ピストン26の先端面
とピストンネット35の間に存在する空間によって,お湯が,コーヒー粉全体に均
等に行き渡るものであると限定して解釈することもできない。
第4被告の主張
1引用発明について
(1)エスプレッソにおける技術常識
エスプレッソは,圧力を加えて抽出することにより,コクと香りを高濃度に引き
出すコーヒーである(乙1)。エスプレッソを抽出する主な手順は,①バスケット(金
属フィルター)にコーヒー粉を投入し,②コーヒー粉の表面をならし,③コーヒー
粉をプレスし(これを「タンピング」という。なお,本願発明では「タンパリング」
と呼ばれている。),④抽出する,というものである(乙1~3)。
上記手順③の「タンピング」とは,バスケットの中にコーヒー粉が平らに隙間な
く詰まるように,コーヒー粉を均一に押し詰める作業のことであるが,同作業は,
圧力やお湯をコーヒー粉全体に均等に行き渡らせるためのもので,エスプレッソの
抽出には不可欠である(乙1~3)。
(2)技術常識を踏まえた引用発明の解釈・認定
ア前記のようなエスプレッソの技術常識を踏まえると,引用発明も,エス
プレッソの抽出には不可欠なタンパリングを行うことにより,圧力やお湯をコーヒ
ー粉全体に均等に行き渡らせるように動作するエスプレッソを抽出する際の手順を
実行する装置であると理解すべきであり,原告の主張するようにタンパリングを実
行しないとか,お湯が均一に行き渡らないような装置であるとか理解すべきではな
い。
前記技術常識を踏まえると,引用発明の「ピストンバー連結装置(39)がドリッパ
ーセット(40)のドリップ(20)内までスライドしてコーヒー粉をプレスし」という
事項にいう「プレス」とは,エスプレッソを抽出する上で必要な上記「タンパリン
グ」のことを意味しており,コーヒーを抽出する際には,引用発明の,ピストン2
6の先端面とピストンネット35の間に存在する空間によって,お湯がコーヒー粉
全体に均等に行き渡るものと解される。具体的には,引用発明は,以下のように動
作する。
①コーヒー粉の投入
ドリッパー20にコーヒー粉が投入される。
②タンパリング
ピストンネット35を取り付けたピストン26を備えたピストンバー
連結装置39がドリッパー20内までスライドしてコーヒー粉をプレス
(タンパリング)する。このとき,コーヒー粉はピストンネット35に
よりプレスされる。
③抽出
抽出工程において,テフロンチューブ28及びピストン26の孔を通
じて供給される熱水は,ピストン26の先端面とピストンネット35と
の間の空間を通じて,コーヒー粉全体に均等に行き渡り,抽出が行われ
る。
イ前記の技術常識及び引用発明の動作を踏まえると,コーヒー粉をプレ
スし,抽出時には,ピストン26の先端面との間に空間を確保する引用発明のピス
トンネット35は,コーヒー粉を通過しない程度に目の細かいものでなければなら
ないと認められる。仮に,引用発明において「ピストンバー連結装置(39)がドリッ
パーセット(40)のドリップ(20)内までスライドしてコーヒー粉をプレス」する
際に,ピストンネット35がコーヒー粉を通すとすれば,コーヒー粉は,ピストン先
端面にまで達し,さらには,ピストン26に形成された孔(熱湯が通る孔)にまで入
り込んでしまう。そうすると,原告が主張するように,ピストン26の孔を通じて供
給される熱水は,直下のコーヒー粉を部分的に通過するだけで,ドリッパー20内
のコーヒー粉に行き渡らないこととなるが,エスプレッソの前記技術常識を踏まえ
ると,そのような理解をすべきでないことは明らかである。
原告は,ピストンネット35は,コーヒー粉上面のならし機能を有す
るにすぎないと主張するが,ピストンネット35が,コーヒー粉を通すほど目の粗
いものだとすれば,コーヒー粉上面を十分にならすこともできない。むしろ,上記で
述べたとおり,ピストンネット35は,コーヒー粉をプレスして,抽出時には,ピス
トン26の先端面との間に空間を確保する機能を有すると解釈するのが合理的であ
る。
また,原告は,「ネット」あるいは「網」の辞書的な意味に基づいて,コーヒー
粉がピストンネット35の網の目を通過する旨を主張する。しかし,「ネット」あ
るいは「網」とは,例えば,マグローヒル科学技術用語大辞典改訂第3版(乙4)
の説明からしても,目の粗いものに限られるものではなく,目の細かいネットある
いは網であれば,コーヒー粉は通過しない。また,コーヒーメーカの技術分野にお
いて,コーヒー粉が通過しない部材を,ネットあるいは網と呼ぶこともたびたびあ
るから(乙5~7),引用発明のピストンネット35を,コーヒー粉が通過しない
部材であると解釈することに何ら不自然な点はない。
2本願発明と引用発明の対比について
(1)当業者は,引用発明を前記1のとおりのものと理解する。
そうすると,引用発明のピストンネット35は,コーヒー粉を通さない程度に目
が細かく,抽出工程において供給される熱水は,ピストン26の先端面とピストン
ネット35との間の空間を通じて,コーヒー粉全体に均等に行き渡るから,熱水を
分配する機能を有するといえる。
したがって,引用発明のピストンネット35は,本願発明の分配フィルタ34に
相当し,本件審決の認定に誤りはない。
(2)引用発明は,「ピストンネット(35)は,ピストン(26)の上に取り付けら
れ」ているものであるから,引用発明のピストン26は,ピストンネット35を備
えたものである。そして,前記のとおり,引用発明のピストンネット35は,本願
発明の分配フィルタ34に相当するから,引用発明のピストン26は,本願発明の
分配フィルタ34に相当する構成を有しているといえ,本件審決の「引用発明の「ピ
ストン(26)」は,本願発明の第2手段(33;33a-e;41),分配フィルタ
エレメント(33;33a-e)のそれぞれに相当する。」との認定に誤りはない。
(3)本願発明の「タンパリング」とは,エスプレッソの技術常識における「タ
ンピング」を意味すると解されるところ,本願発明は,タンパリングについて,「前
記第2手段(33;33a-e;41)は,前記ポータフィルタ(11)内に配さ
れたコーヒー粉(16)にタンパリングを行い」と特定するのみで,それ以上に具
体的な動作まで特定するものではない。一方,前記のように,引用発明の「ピスト
ンバー連結装置(39)がドリッパーセット(40)のドリップ(20)内までスライドし
てコーヒー粉をプレスし」という動作は,ピストンネット35により,コーヒー粉
をプレスして押し詰める作業であり,前記技術常識における「タンパリング」を行
う動作である。
以上からすると,本件審決の「引用発明の「ピストンバー連結装置(39)がドリッ
パーセット(40)のドリップ(20)内までスライドしてコーヒー粉をプレスし」とい
う事項が,本願発明の「前記第2手段(33;33a-e;41)は,前記ポータ
フィルタ(11)内に配されたコーヒー粉(16)にタンパリングを行い」に相当
する。」との認定に誤りはない。
(4)原告は,本願発明と引用発明は,相違点3~5でも相違する旨を主張する
が,前記で述べたところからすると,原告の主張する相違点3~5はいずれも相違
点ではなく,一致点であり,本件審決の相違点の認定に誤りはない。
第5当裁判所の判断
1本願発明について
(1)本願明細書(甲5,8,11,32)には,以下の記載がある。なお,本
願明細書中の図面のうち,【図4a】及び【図8】以外の図面は,別紙1本願図面
記載のとおりである。
ア技術分野
【0001】
本発明は,コーヒーメーカの分野に関する。請求項1の前文によるコーヒーメー
カに関する。さらに,そのコーヒーメーカの操作方法に関する。
イ背景技術
【0002】
市場には,実質的に2つタイプのコーヒーメーカが見受けられる。
【0003】
1.いわゆる「半自動マシン」又は「ポータフィルタマシン」の場合,コーヒー
粉は,コーヒーメーカと並んで配置されたミル(挽き器)によって計量され,ポー
タフィルタに入れられる(ここで,抽出用金属皿は,抽出フィルタ及び吐出開口部
を備える。)。その後,ポータフィルタは,コーヒーメーカに固定される(例えば,
特許文献1を参照。)。抽出チャンバは,その上部が,コーヒーメーカの内部に固定
して取り付けられた分配フィルタによって気密に封止される。続いて,コーヒーメ
ーカは,圧力下でこのポータフィルタによって熱水を計量し,その後,抽出された
コーヒーをカップに直接に注ぐ。コーヒーの質は,実質的に操作者によって調整さ
れる。すなわち,コーヒーの質は,用意されたミルでのコーヒー豆の挽き具合の調
節によって,また,いわゆるタンパリング(挽かれた材料をポータフィルタ内に押
し詰めること)に応じて行使された力によって調整される。理想的な状態の下では,
抽出結果(アロマ(香り)及びクレマ(泡))は,卓越した質である。多くの消費者
は,理想的なコーヒーの質をコーヒーメーカのこの設計に関係付ける。しかしなが
ら,この設計は,訓練された人員を要求する。これらの人員は,コーヒーの挽き具
合とタンパリングとの調節に熟達しており,そうでなければ,コーヒーの質は極度
にふらつくことが予期される。ポータフィルタマシンは,ある程度採算性を考慮し
て製造され得る。なぜなら,それらは,技術的な複雑さが低いからである。
【0004】
2.原則として,「全自動マシン」には,プランジャ式抽出器と組込式ミルとが備
え付けられている(例えば,特許文献2,3及び4を参照。)。組込式ミルは,コーヒ
ー粉をプランジャ式シリンダ配置に計量して入れる。原則的に,プランジャ式シリ
ンダ配置は,1つのシリンダと,上部と下部とのプランジャとから構成される(し
かしながら,各々において,該プランジャは,複数のフィルタ表面を含んでおり,
それぞれ,抽出(下部)フィルタと,分配(上部)フィルタとして機能する。)。続
いて,シリンダはプランジャによって閉じられ,熱水がフィルタの全体にコーヒー
粉中を流れ,吐出管を介して吐出口からカップに流れる。このようなマシンにおけ
るコーヒーの質は,理想的な設計及び理想的な条件設定であっても,半自動マシン
の場合よりも良くない。この主な理由は,自動プランジャ式シリンダ配置は,コー
ヒー豆の非常に細かい挽き具合の調節に関して,敏感であるからである。なぜなら,
摩擦比の値によってプランジャの接触圧力が,半自動マシンの場合のように手動で
行えるようには,繊細に調整できないからである。原則として,生成されたクレマ
を再度部分的に壊し,且つコーヒーを冷ましてしまう配管及び吐出口システムは,
抽出装置から下流に続く。しかしながら,得られるコーヒーの質は,全自動の産物
及びプロセスパラメータの調整と,カップごとの差異の生じにくさとによって,極
めて安定する。すなわち,コーヒーの質は,操作者に依らない。このタイプの装置
は,半自動マシンと比べて著しく高価である。なぜなら,該抽出装置は,比較的に
複雑な構造であるからである。
ウ課題を解決するための手段
【0008】
従って,本発明は,半自動マシンの簡易化及びコーヒーの可能な限りの高い質と,
全自動マシンにおける成果の安定性との両方の設計の利点を組み合わせたコーヒー
メーカを創作することを目的とする。また,可能であれば,操作者の仕事量を半自
動マシンの場合と比べて減らすことも目的とする。
【0011】
本発明に係るコーヒーメーカは,抽出を行うために,この用途に提供されたコー
ヒーメーカのホルダに嵌め込み可能で,少なくとも1つの脱着可能なポータフィル
タと,加圧下で熱水を生成し供給する第1手段と,少なくとも1つのコーヒーミル
とを備えている。第2手段は,ホルダに嵌め込まれたポータフィルタに対して密封
及び開放を繰り返し,適用可能であれば,ポータフィルタ内に配されたコーヒー粉
のタンパリングを行うように設けられており,第3手段は,コーヒーミルから,ホ
ルダに嵌め込まれ開放状態のポータフィルタにコーヒー粉を導入するように設けら
れていることを特徴とする。
【0012】
このように,半自動マシンのようなコーヒーメーカは,脱着可能なポータフィル
タが備え付けられている。一方,同時にまた,本装置は,組込式ミルが備え付けら
れている。組込式ミルは,全自動マシンのように,コーヒー粉を,取り付けられた
ポータフィルタにマシンの内部の上部から詰め込む。続いて,ポータフィルタは,
マシンの内部で(例えば,ふた又はプランジャによって)閉じられる。ポータフィ
ルタに詰め込まれたコーヒー粉は,半自動マシンと同様に,圧縮(タンパリング)
と抽出とが実行される。その後,再び,手動でポータフィルタが空にされる。使用
済みのコーヒー粉(コーヒーかす)を排出し且つ収集するための大規模な機構は,
人が操作するという重大な努力を払うことなく先行され得る。代わりに,コーヒー
かすの収集容器からの定期的な排出及び清掃が不要となる。第2手段は,分配フィ
ルタエレメントを備え,ポータフィルタが開放状態にあってコーヒー粉を充填でき
る第1の位置と,分配フィルタエレメントがポータフィルタを気密に閉鎖した第2
の位置とを行ったり来たりすることができる。分配フィルタエレメントが,第1の
位置と第2の位置との間で動くように,電気的又は液圧応用的に操作する駆動ユニ
ットが設けられている。
【0014】
本発明に係るコーヒーメーカの他の形態は,第2手段がポータフィルタ内に配さ
れたコーヒー粉にタンパリングを行うことを特徴とする。
【0015】
特に,第2手段は,分配フィルタエレメントを備えており,該分配フィルタエレ
メントは,ポータフィルタ内の分配フィルタによって抽出チャンバを規制すると共
に,加圧された熱水を抽出チャンバに分配フィルタを通して導入する。
【0020】
本発明に係るコーヒーメーカのさらなる形態は,中央制御器が,コーヒーミル,
第1手段,及び適用可能であれば第2手段を制御するように設けられていることを
特徴とする。飲料の準備プロセスは,特定の又は特定可能なパラメータによって,
一貫した成果を得るように,制御器によって自動的に制御することができる。
エ図面の簡単な説明
【0026】
本発明は,図面と関連付けた例示的実施形態によって,以下に詳細に説明される。
【図1】図1はポータフィルタを閉鎖する前の嵌め込まれたポータフィルタを備え
た本発明の例示的実施形態に係るコーヒーメーカを示す高度に単純化された構成図
である。
【図2】図2は図1のポータフィルタを閉鎖した後のコーヒーメーカを示す構成図
である。
【図3】図3は軸方向に動くシール部材を備えたふた式の分配フィルタエレメント
によって閉鎖された図1のポータフィルタを示す拡大した詳細断面図である。
【図4】図4は径方向に動くシール部材を備えたプランジャ式の分配フィルタエレ
メントによって閉鎖された図1のポータフィルタを示す拡大した詳細断面図である。
【図5】図5は分配フィルタエレメントによって閉鎖された図1のポータフィルタ
を示し,シール部材が軸方向の力によって径方向に拡げられた様子を示す拡大した
詳細断面図である。
【図6】図6は分配フィルタエレメントによる閉鎖を示し,シール部材が,内側に
配された円錐面(円錐断面)により径方向に外側に圧縮される様子を示す,図5と
比較可能な断面図である。
【図7】図7は手動操作式レバー機構(本発明に含まず)により閉鎖され,且つ,
手動操作式プランジャにより加圧された熱水が加えられた図1のポータフィルタを
示す拡大した詳細断面図である。
オ発明を実施するための形態
【0027】
本発明の主題は,半自動マシンのように,脱着可能なポータフィルタが備え付け
られたコーヒーメーカである。一方,同時に,本装置は,組込式ミルが備え付けら
れており,全自動マシンのように,取り付けられたポータフィルタにコーヒー粉を
マシンの内部の上部から詰め込む。続いて,ポータフィルタは,マシンの内部で,
ふた又はプランジャによって閉じられ,コーヒーの抽出が半自動マシンと同様に実
行される。ポータフィルタは手動で空にする。従って,この機構により,本コーヒ
ーメーカは,半自動マシンと全自動マシンとの中心位置を仮定し,コーヒーメーカ
の新たなクラスである,3/4マシンとして認識できる。
【0029】
図1において,ホルダ12に嵌め込まれたポータフィルタ11は,上部が開口さ
れ,実質的に筒状の抽出チャンバ15を有している。抽出チャンバ15は,図3~
図6に示され,元来知られるように,抽出フィルタ17によって,ある程度,底部
の近くに限定される。抽出フィルタ17は,底部の近くの吐出開口部14からなる
吐出口と隣接する。外側においては,ポータフィルタ11は,ホルダ12と相互作
用し,該ポータフィルタ11を,例えばバヨネット締結器のような,ホルダ12に
嵌め込み可能とし,そこで保持される。取り扱いが簡単なように,ポータフィルタ
11は,知られている方法で横方向に突き出すハンドル13が備え付けられている。
【0032】
図1の例示において,プランジャ式の分配フィルタエレメント33は,ホルダ1
2に嵌め込まれたポータフィルタ11の真上に配置される。該分配フィルタエレメ
ント33は,図1に示す引き込み位置と図2に示す閉鎖位置との間で駆動ユニット
32によって,垂直方向に移動可能である。閉鎖位置において,分配フィルタエレ
メント33は,嵌め込まれたポータフィルタ11内の抽出チャンバ15を閉鎖し,
最初,ポータフィルタ11内に緩く入れられたコーヒー粉16を封止する(押し固
める)。さらに,分配フィルタ(図3~6の符号34)を介して加圧された水を供給
する。ここで,分配フィルタ34は,分配フィルタエレメント33の底部側に配置
される。このため,分配チャンバ35は,分配フィルタエレメント33における分
配フィルタ34の上方に配置される。熱水は,マシン内に組み込まれたボイラ28,
及び熱水継ぎ手38から掘り抜き注入口37を介して分配チャンバ35に導入する
ことができる。
【0033】
図1及び図2の例示において,ボイラ(湯沸かし器)28は,分配フィルタエレ
メント33に対して液圧応用的に接続され,ポンプ31を介して冷水継ぎ手29と
接続されている。ボイラ28内の水は,取り付けられた加熱装置(図示せず)(例え
ば,抵抗加熱)によって加熱され,その後,抽出プロセス中に,分配フィルタエレ
メント33に加圧(抽出圧)下で搬送される。熱水は,分配フィルタ34を通して
その表面の全体にむらなく分配されるように抽出チャンバ15に入り込み,そこに
あるコーヒー粉16を通して流れ,抽出フィルタ17を通して再度下方に流出し,
吐出開口部14を介して外部に分配される。所望の抽出圧は,ポンプ31により冷
水をポンピング(吸水)することによって生み出される。ボイラ28の熱水吐出口
は,分配フィルタエレメント33に対して,その後の垂直方向の自由な動きを得ら
れるように,柔軟なホースを介して接続されることが好ましい。これに関連して,
ボイラ28の使用に代えて,分配フィルタエレメント33の途中で水を直接に加熱
する流水ヒータも用いることができることはいうまでもない。
【0034】
コーヒー粉の準備を含む全抽出プロセスが,ポータフィルタ11を嵌め込んだ後
に,自動的に且つ一定の状態で進行するように,コーヒーメーカ10において,中
央制御器24が,表示/操作ユニット25と接続されるように設けられている。該
表示/操作ユニット25は,複数のボタン26を含み,例えば,抽出プロセスの開
始及び停止を指示でき,且つ/又はパラメータ(水量,カップの大きさ及び飲料の
種類等)の入力を指示でき,且つ/又は光学表示部を制御できる。さらに,光学表
示部27は,信号ランプ且つ/又は英数字を表示するように設けられており,該光
学表示部27は,マシンの状態に関する情報を与え,操作ガイドとなり,且つ/又
は制御器24のメモリに蓄えられた操作数(分配するカップの数等)を表示する。
個々の抽出プログラムは,また,必要に応じて,表示/操作ユニット25を介して
入力でき,制御器24のメモリに蓄えられ,読み出すことができるのはいうまでも
ない。
【0036】
図2は,分配フィルタエレメント33がポータフィルタ11に押し込まれ,同時
に,シュート23が旋回した後の図1に係る装置を示している。押し詰められた(押
し固められた)コーヒー粉16は,分配フィルタエレメント33の分配フィルタ3
4とポータフィルタ11の抽出フィルタ17との間に直接に置かれる。この状態で,
加圧された熱水は,分配フィルタ34を介してコーヒー粉16に押し通され得る。
その後,コーヒー飲料として,ポータフィルタ11の吐出開口部14において,抽
出フィルタ17を介して下方に移動することができる。
【0037】
抽出プロセスが良好な結果に終われるように,フィルタ17及び34の間に配
置され,コーヒー粉16がその中に含まれる抽出チャンバ15は,外部に対して気
密に閉鎖されなければならない。このため,種々の可能性を適用でき,以下の図3
~図6を通して説明する。
【0038】
図3は図1のポータフィルタ11を拡大した詳細図である。ふた式の分配フィル
タエレメント33aは,コーヒー粉16が詰められるポータフィルタ11の閉鎖に
使われる。ふた式の分配フィルタエレメント33aは,軸方向に動くシール部材3
6が備え付けられており,鍔部(フランジ)で封止するように,上側からポータフ
ィルタ11の環状の上面に取り付けられる。分配フィルタエレメント33aの基本
的な設計は,取り付けた際に封止を形成し,分配フィルタ34を,それぞれポータ
フィルタ11又は抽出チャンバ15に同時に押し込み,さらに,抽出チャンバ15
に入れられたコーヒー粉16をある程度まで圧縮するように設計される。これによ
り,この圧縮の程度は,詰められるコーヒー粉16の量に依存する。もし,コーヒ
ー粉16が同量のままであれば,圧縮力は変わらない。なぜなら,コーヒー粉16
が毎回同量のままであれば,分配フィルタ34の端部の位置が特定されるからであ
る。
【0039】
タンパリングに応じたある柔軟性は,図5及び図6に示されるように,封止の形
状によって得ることができる。図5における分配フィルタエレメント33cの場合
は,シール部材36が,軸方向に圧縮(押しつぶ)される。その結果,シール部材
36は,径方向の横壁に対して封止が形成されるように押される。シール部材の弾
性を得られることにより,分配フィルタ34は,端部の位置が異なることになり,
このため,種々異なる程度にコーヒー粉16を押し付けることができる。
【0040】
図6による封止の形状の場合には,分配フィルタエレメント33dは,2要素の
設計であり,分配フィルタ34を含む分配チャンバ35を囲む内側部47aと,閉
鎖方向において内側部47aに対して相対的に可動な外側部47bとから構成され
る。内側部47aは,円錐部40の形成により上方に傾斜しており,これにより,
シール部材36は,円錐部40の外側面上に載る。外側部47bは,内側部47a
のテーパ部の上に鐘のように被せられ,また,外側部47bは内側部47aの下方
に相対的に移動された場合に,その下端部がシール部材36を圧縮する。その結果,
シール部材36は,閉鎖に応じて封止を形成するように拡がる。
【0041】
図4に示されるように,分配フィルタエレメントの形状により,タンパリングに
応じた極めて大きな柔軟性を得ることができる。分配フィルタエレメント33bは,
自由に変位可能なプランジャのように,ポータフィルタ11の閉鎖により該ポータ
フィルタ11の中に押し込まれる。これにより,径方向に動くシール部材36によ
って封止を得ることができる。この場合,コーヒー粉16は,付随するプランジャ
ロッド39により,幾何学的な制限なく必要な力が付与される。この場合に同時の
大きな封止効果によりプランジャにおける摩損がない押し込みを得るように,シー
ル部材48は,図4aの通りに使用することができる。すなわち,シール部材48
は,プランジャの端部の位置が決まった後にのみ膨張し,これにより,完全な封止
効果に達する。
【0042】
図1及び図2の例示的な実施形態において,電動式又は液圧応用的な駆動ユニッ
ト32は,分配フィルタエレメント33又は33a~33dとそれぞれ置換が可能
なように設けられている。一方,分配フィルタエレメントの取り外しに,手動操作
のレバー機構(本発明に含まず)も使用可能である。この一例を図7に示す。分配
フィルタエレメント33eは,プランジャロッド42を介して第2プランジャ41
と共に封止を形成するように,ポータフィルタ11内に移動可能である。ここで,
第2プランジャ41は,分配フィルタエレメント33e内に変位可能に付加的に配
置されている。また,プランジャロッド42は,図7に示されるように,ガイド4
3によって導かれる。プランジャロッド42は,操作レバー45を介して垂直方向
に該操作レバー45を旋回することにより,上下方向に移動可能である。操作レバ
ー45は,ピボットベアリング44によって旋回可能に支持されており,ヒンジ接
続部46を介してプランジャロッド42と機械的に結合されている。ヒンジ接続部
46には,下方の動きに応じてタンパリングに必要な力が付与される。
【0043】
封止を形成するようにシール部材49によって分配フィルタエレメント33e内
に滑動可能な第2プランジャ41は,圧力下の熱水を操作レバー45によって,抽
出チャンバ35内の分配フィルタ34に押し通すことができる。コーヒー粉16を
詰めた後に,分配フィルタエレメント33eは,最初,手動操作により,コーヒー
粉16を押し固めるようにポータフィルタ11内に移動される。その後,第2プラ
ンジャ41は,広くなった分配チャンバ35に,掘り抜き注入口37を介して(圧
力を掛けることなく)導入できる量だけ,熱水を分配フィルタエレメント33eか
ら引き出すことができる。続いて,導入された熱水は,分配チャンバ35に押し付
けられると共に,第2プランジャ41を分配フィルタエレメント33eに挿入する
ことにより,分配チャンバ35内にあるコーヒー粉16に押し通される。この機構
(メカニズム)は,このように単純であり,操作者は,その自由裁量によるタンパ
リングに応じて適用する圧力を選択し且つ変更することができる。
【0044】
図8に,全プロセスシーケンスの主要工程を再掲する。すなわち,空のポータフ
ィルタ11をこの用途に提供されたコーヒーメーカのホルダ12に嵌め込むことに
より,操作方法が開始される。ポータフィルタ11を嵌め込んだ後,必要とする所
定量のコーヒーが挽かれ,その後,嵌め込まれたポータフィルタ11に詰められる。
続いて,ポータフィルタ11はそれに詰められたコーヒー粉と共に気密に閉鎖され
る。このプロセスは,コーヒー粉のタンパリングと共に進行することができる。続
いて,実際の抽出プロセスが,加圧下のポータフィルタ11内のコーヒー粉に熱水
が押し通されて実行される。一旦,抽出プロセスが終了すると,ポータフィルタ1
1は,ホルダ12から外され,コーヒーかすをたたいて空にされ,必要であれば,
清掃することができる。加えて,オプションとして,機械内部洗浄プロセスは,分
配フィルタエレメントを洗浄するようになっている。これにより,分配フィルタは,
付着しやすいコーヒー粉のかすに悩まされなくなる。
【0045】
概略として,新しいコーヒーメーカ(3/4マシン)は,本発明により創作され,
以下の効果によって特徴付けられる。
【0046】
飲料の特定が可能で一定の質が,ポータフィルタの閉鎖且つ抽出に応じた,コー
ヒーを挽き且つ充填する期間及びタンパリングする期間の自動作業によって,操作
者によるほとんど問題とならないポータフィルタを空にする作業のみによって達成
される。
【0047】
コーヒーかすの排出機構を省くことによって,コーヒーメーカの装置に関連する
努力(骨折り)が著しく低減される。
【0048】
マシンの清掃が,脱着可能なポータフィルタによって著しく簡易化される。
【0049】
マシン内にあるコーヒーかすの収集容器を空にする手間が省かれる。
(2)本願発明の特徴
ア技術分野
本願発明は,コーヒーメーカの分野に関するものである(【0001】)。
イ課題
従来,市場には,コーヒーメーカとして,「半自動マシン」と「全自動マシン」の
二つのタイプがあったところ,「半自動マシン」の場合,コーヒーの挽き具合とタン
パリングとの調節に熟達した人員を要し,理想的な状態の下では,コーヒーの質(ア
ロマ(香り)及びクレマ(泡))は,卓越したものとなるが,そうでなければ,コー
ヒーの質は極度に不安定になる可能性があった。他方,「全自動マシン」におけるコ
ーヒーの質は,理想的な設計及び理想的な条件設定であっても,半自動マシンの場
合よりも良くないものの,得られるコーヒーの質は,操作者に依存せず,極めて安
定する。しかし,このタイプのマシンは,半自動マシンと比べて抽出装置が複雑な
構造で著しく高価となる。(【0002】~【0004】)
本願発明は,半自動マシンの簡易化及びコーヒーの可能な限りの高い質の確保と,
全自動マシンにおける成果の安定性という,半自動マシンと自動マシンの両方の設
計の利点を組み合わせたコーヒーメーカを創作することを目的とするものであり,
可能であれば,操作者の仕事量を半自動マシンの場合と比べて減らすことも目的と
する(【0008】)。
ウ課題解決手段
本願発明に係るコーヒーメーカは,①抽出を行うための,コーヒーメーカのホル
ダに嵌め込み可能で,抽出ごとに手動で取り外されてその内部を空にされる,少な
くとも一つの脱着可能なポータフィルタ,②加圧下で熱水を生成し供給する第1手
段,③ポータフィルタに対して密封及び開放を繰り返し,タンパリングを行うとと
もに,電気的又は液圧応用的に操作する駆動ユニットによって,ポータフィルタが
開放状態にあってコーヒー粉を充填できる第1の位置と,分配フィルタエレメント
がポータフィルタを気密に閉鎖した第2の位置とを移動する第2手段,④ポータフ
ィルタ内の分配フィルタによって抽出チャンバを規制する,第2手段の構成要素で
ある分配フィルタエレメント,⑤少なくとも一つのコーヒーミル,⑥そのコーヒー
ミルから上記ホルダに嵌め込まれたポータフィルタにコーヒー粉を導入する第3手
段,⑦コーヒーミル,第1手段及び第2手段のうち少なくともコーヒーミル及び第
1手段を制御するように設けられている中央制御器を備えている(請求項1,【0
011】,【0012】,【0015】,【0020】,【0027】,【002
9】)。
エ効果
ポータフィルタを閉鎖してコーヒーを抽出するに当たり,コーヒーを挽きかつ充
填する工程及びタンパリングする工程を自動的に行うことによって,飲料に一定の
質が達成され,操作者が行うべき作業はポータフィルタを空にする作業のみである
(【0046】)。
コーヒーかすの排出機構を省くことによって,コーヒーメーカの装置に関連する
努力が著しく低減される(【0047】)。
マシンの清掃が,脱着可能なポータフィルタによって著しく簡易化される(【00
48】)。
マシン内にあるコーヒーかすの収集容器を空にする手間が省かれる(【0049】)。
2引用発明について
(1)本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献(甲1)には,以下の
ような記載がある。なお,引用文献中の図面は,別紙2引用文献図面(抜粋)記載
のとおりである。
請求項1
1.半自動コーヒーメーカーは,コーヒー豆を挽くシステムとコーヒーを抽出す
るシステム,ポンプ及びヒーターからなり,その特徴は以下である。すなわち,コ
ーヒーを抽出するシステムは垂直に前に置かれ,コーヒー豆を挽くシステムは垂直
に後ろに置かれ,コーヒー豆を挽くシステムが挽いたコーヒー粉は粉出口(11)と
粉受け(13)を通ってドリッパー(20)に入り,ピストン(26)はテフロンチューブ
(28)によってヒーターと連結している。
請求項3
3.請求項1に述べる半自動コーヒーメーカーの特徴は以下である。すなわち,
コーヒーを抽出するシステムは左支柱(15),右支柱(29),ピストンバー連結装置
(39),固定装置(16),ドリッパーセット(40),左スライド溝連結器(17),右ス
ライド溝連結器(31),バックシャフト(18),粉漏れ防止ふた(19)からなる。
請求項5
5.請求項3に述べる半自動コーヒーメーカーの特徴は以下である。すなわち,
コーヒーを抽出するシステムの組み立ては,左支柱(15)と右支柱(29)の2つの部
分が1つの固定支柱を構成し,垂直に置かれ,固定支柱の上,中,下の位置にピス
トンバー連結装置(39),バックシャフト(18),粉漏れ防止ふた(19)がそれぞれ
取り付けられ,ピストンバー連結装置(39)は左右の支柱の頂部の回転軸穴とスラ
イド溝の中に取り付けられ,上下にスライドできる。ドリッパーセット(40)は左右
支柱の底部のスライド溝の中に水平に置かれ,粉漏れ防止ふた(19)の真下に位置
し,投入し取り出すことができる。左支柱(15)の外側には2組の固定装置(16)と
左スライド溝連結器(17)がそれぞれ取り付けられ,左スライド溝連結器(17)は左
支柱の上の連結部の回転軸に沿って回転し,左スライド溝連結器(17)は同時にピ
ストン(26)の楕円形の支柱上にはまり,右支柱(29)には2組の固定装置(16)と
右スライド溝連結器(31)がそれぞれ組み込まれ,右スライド溝連結器(31)は右支
柱の上の連結部の回転軸の周りを回転し,右スライド溝連結器(31)は同時にピス
トン(26)の楕円形の支柱上にはまる。
請求項6
6.請求項3に述べる半自動コーヒーメーカーの特徴は以下である。すなわち,
コーヒーを抽出するシステムのピストンバー連結装置(39)は,プレスハンドル(2
2),回転支柱(23),ピストン連結器(24),ピストン連結器シャフト(25),ピス
トン(26),密封リング(27),テフロンチューブ(28),ピストンネット(35)から
なり,回転支柱(23)はプレスハンドル(22)と固く連結され,回転支柱(23)はピ
ストン連結器(24)とピストン連結器シャフト(25)によりヒンジ機構連結を構成
し,密封リング(27)とピストンネット(35)はピストン(26)の上に取り付けられ
ている。
請求項10
10.請求項3に述べる半自動コーヒーメーカーの特徴は以下である。すなわち,
コーヒーを抽出するシステムのドリッパーセット(40)はドリッパー(20)とドリ
ッパーシャフト(21)からなる。
【0001】本実用新案はコーヒー豆を挽いてからコーヒーを抽出するまでの半自
動化を実現する機械装置に関するものであり,半自動コーヒーメーカーが自動で豆
を挽き,挽いた粉を自動で投入し,コーヒー粉を手動でプレスし,自動でエスプレ
ッソを作り,手動でコーヒーかすを排出することが実現できる。
【0006】2.本実用新案のコーヒーを抽出するシステムに採用される技術設計
は以下のとおりである。すなわち,コーヒーを抽出するシステムは左支柱15,右
支柱29,ピストンバー連結装置39,固定装置16,ドリッパーセット40,左
スライド溝連結器17,右スライド溝連結器31,バックシャフト18,粉漏れ防
止ふた19からなり,その組み立ては以下のとおりである。すなわち,左支柱15
と右支柱29の2つの部分が1つの固定支柱を構成し,垂直に置かれ,固定支柱の
上,中,下にピストンバー連結装置39,バックシャフト18,粉漏れ防止ふた1
9がそれぞれ取り付けられ,ピストンバー連結装置39のピストン26はテフロン
チューブ28でヒーターと連結され,バックシャフト18はコーヒーを抽出するピ
ストンバー連結装置39から伝わる圧力を支え,粉漏れ防止ふた19が粉を受ける
時,コーヒーを完全にドリッパー20内に入れてコーヒー粉の飛散を防ぎ,ピスト
ンバー連結装置39は左右の支柱の頂部の回転軸穴とスライド溝の中に取り付けら
れ,上下にスライドできる。ドリッパーセット40は左右支柱の底部のスライド溝
の中に水平に置かれ,粉漏れ防止ふた19の真下に位置し,投入と取り出しができ
る。ピストンバー連結装置39は上に向かって豆を挽く位置までスライドし,豆を
挽き,下に向かってスライドし,ドリッパー20内に入れてプレスと抽出を行い,
左支柱15の外側には2組の固定装置16と左スライド溝連結器17がそれぞれネ
ジで取り付けられ,左スライド溝連結器17は左支柱の上の連結部の回転軸の周り
を回転し,左スライド溝連結器17は同時にピストン26の楕円形の支柱上にはま
り,右支柱29は2組の固定装置16と右スライド溝連結器31にそれぞれネジで
組み込まれ,右スライド溝連結器31は右支柱の上の連結部の回転軸の周りを回転
し,右スライド溝連結器31は同時にピストン26の楕円形の支柱上にはまり,ピ
ストンバー連結装置39は上下にスライドし,左右のスライド溝連結器が同時に前
または後ろに向けて回転するのを促し,左右の支柱の上の1組の固定装置16はピ
ストンバー連結装置39が作動していない時に勝手に滑り落ちるのを防ぎ,左右の
支柱の上のもう1組の固定装置16はドリッパーセット40がコーヒー粉を受ける
位置に来るのを正確に確定する。コーヒーを抽出するシステムの概略図は,図5,
図6,図7,図8,図9,図10に示すとおりである。ピストンバー連結装置39
は,プレスハンドル22,回転支柱23,ピストン連結器24,ピストン連結器シ
ャフト25,ピストン26,密封リング27,テフロンチューブ28,ピストンネ
ット35からなり,回転支柱23はプレスハンドル22と固く連結し,回転支柱2
3はピストン連結器24とピストン連結器シャフト25によりヒンジ機構連結を構
成し,密封リング27とピストンネット35はピストン26の上に取り付けられて
いる。固定装置16はパッキン押さえ36,固定ばね37,ガイド38からなる。
組み立ては図8のとおりである。ドリッパーセット40はドリッパー20とドリッ
パーシャフト21からなる。
【0007】3.本実用新案のコーヒー豆を挽くシステムとコーヒーを抽出するシ
ステムの組み立ては,コーヒー豆を挽くシステムとコーヒーを抽出するシステムは
それぞれ垂直に置かれ,コーヒーを抽出するシステムは垂直に前に置かれ,コーヒ
ー豆を挽くシステムは垂直に後ろに置かれ,コーヒー豆を挽くシステムが挽いたコ
ーヒー粉は粉出口11と粉受け13を通ってドリッパー20に入り,ピストン26
はテフロンチューブ28によってヒーターと連結している。コーヒーを抽出するシ
ステムの左スライド溝連結器17と右スライド溝連結器31はコーヒー豆を挽くシ
ステムの粉受け13と摺動可能に連結し,ピストンバー連結装置39が上下移動す
るように駆動されると,左右のスライド溝連結器がピストンバー連結装置39のピ
ストン26の動きにより同時に前または後ろに向けて回転し,ピストン26が上下
にスライドする時,コーヒー豆を挽くシステムの粉受け13を粉出口11に沿って
上下に伸縮させ,コーヒー豆を挽くシステムの粉受け13が下に向けてコーヒーを
抽出するシステムのドリッパーセット40の真上にスライドした時,コーヒー豆を
挽くシステムが挽いたコーヒー粉は粉出口11,粉受け13を通って直接にドリッ
パーセット40のドリッパー20に入る。コーヒー豆を挽くシステムとコーヒーを
抽出するシステムの組み立ては図11,図12,図13に示すとおりである。
【0028】左支柱15と右支柱29の2つの部分が1つの固定支柱を構成し,垂
直に置かれ,固定支柱の上,中,下の位置にピストンバー連結装置39,バックシ
ャフト18,粉漏れ防止ふた19がそれぞれ取り付けられ,ピストンバー連結装置
39のピストン26はテフロンチューブ28によってヒーターと連結しており,バ
ックシャフト18はコーヒーを抽出するピストンバー連結装置39から伝わる圧力
を支え,粉漏れ防止ふた19が粉を受ける時,コーヒーを完全にドリッパー20内
に入れてコーヒー粉の飛散を防ぎ,ピストンバー連結装置39は左右の支柱の頂部
の回転軸穴とスライド溝の中に取り付けられ,上下にスライドできる。ドリッパー
セット40は左右支柱のスライド溝の中に水平に置かれ,粉漏れ防止ふた19の真
下に位置し,投入と取り出しができる。ピストンバー連結装置39は上に向かって
豆を挽く位置までスライドし,豆を挽き,下に向かってスライドし,ドリッパー2
0内に入ってプレスと抽出を行い,左支柱15の外側には2組の固定装置16と左
スライド溝連結器17がそれぞれネジで取り付けられ,左スライド溝連結器17は
左支柱の上の連結部の回転軸の周りを回転し,左スライド溝連結器17は同時にピ
ストン26の楕円形の支柱上にはまり,右支柱29には,2組の固定装置16と右
スライド溝連結器31がそれぞれネジで取り付けられ,右スライド溝連結器31は
右支柱の上の連結部の回転軸の周りを回転し,右スライド溝連結器31は同時にピ
ストン26の楕円形の支柱上にはまり,ピストンバー連結装置39は上下にスライ
ドし,左右のスライド溝連結器が同時に前または後ろに向けて回転するのを促し,
左右の支柱の上の1組の固定装置16はピストンバー連結装置39が作動していな
い時に勝手に滑り落ちるのを防ぎ,左右の支柱の上のもう1組の固定装置16はド
リッパーセット40をコーヒー粉を受ける位置に正確に位置決めする。コーヒーを
抽出するシステムの概略図は,図5,図6,図7,図8,図9,図10に示すとお
りである。
【0029】本実用新案の手動の位置センサー機能は,以下のようにして実現する。
すなわち,右支柱29上に,グラインダースイッチ30,コーヒー抽出スイッチ3
2及びドリッパースイッチ33がそれぞれ取り付けられ,ドリッパーセット40が
コーヒーを抽出するシステムの固定支柱スライド溝の中に差し込まれ,ドリッパー
スイッチ33にスイッチが投入されると,この時コーヒー豆を挽く状態になり,ピ
ストンバー連結装置39がグラインダーの位置まで上に向かってスライドし,ピス
トンバー連結装置39のピストン26の楕円形の支柱上が動いてグラインダースイ
ッチが入ることで,グラインダーの粉を挽く動作が可能になる。この時,コーヒー
抽出スイッチにはスイッチが入らないため,コーヒーを抽出する操作が行えない。
ピストンバー連結装置39がドリッパーセット40のドリップ20内までスライド
してコーヒー粉をプレスし,ピストンバー連結装置39上のピストン26の楕円形
の支柱上が動いてコーヒー抽出スイッチ32が入った時に,コーヒーを抽出する操
作が行える。この時,グラインダースイッチ30はスイッチが入っていないため,コ
ーヒー豆を挽く操作はできない。豆を挽く操作とコーヒーを抽出する操作は同時に
行えず,一意性がある。これは図6,図13に示すとおりである。
(2)引用発明の認定
前記(1)の記載によると,引用文献(甲1)には前記第2の3(1)記載の本件審決
が認定したとおりの引用発明が記載されているものと認められる。
なお,原告は,この点について,日本語の「エスプレッソ」は中国語で「意大利
浓咖啡」であって,引用文献にいう「浓缩咖啡」は,「エスプレッソ」以外の濃縮さ
れた又は濃いコーヒーも含むから,引用発明は「濃縮コーヒー」を作る半自動コー
ヒーメーカーの発明と認定されるべきである旨主張する。
しかし,株式会社小学館発行の日中辞典第3版(乙8)には「エスプレッソ」が
「浓(缩)珈琲」であるとの記載があり,スターバックスコーヒーのウェブページ
(乙9の1・2)には,「Espresso」に対応するものとして「浓缩咖啡」の
表記が使用されている。また,同一の特許出願において,英語で「ESPRESS
OCOFFEEMACHINE」とされているものが中国語では「浓缩咖啡机」
とされていること(乙10の1・2),同様に,同一の国際特許出願において中国語
で「浓缩咖啡机」及び「浓缩咖啡」とされているものが日本語ではそれぞれ「エス
プレッソコーヒーマシン」及び「エスプレッソ」とされていること(乙11の1・
2,乙12の1・2)が認められる。これらからすると,確かに甲20にあるよう
に,「エスプレッソ」を中国語で「意大利浓咖啡」と表記する場合があるものの,「エ
スプレッソ」を「浓缩咖啡」と表記することも中国において一般的に行われている
ものと認められる。
また,引用発明のコーヒーメーカーがその構成においていわゆるエスプレッソマ
シンであることと矛盾する点があるとも認められない。
以上からすると,引用文献の「浓缩咖啡」は「エスプレッソ」であると認められ,
本件審決の引用発明の認定に誤りはなく,引用発明がエスプレッソマシンではない
ことを前提とする原告のその余の主張も採用の限りではない。
3取消事由について
(1)本願発明と引用発明を対比すると,前記第2の3(2)ア,イの一致点及び相
違点が認められ,本件審決の一致点及び相違点の認定に誤りはない。
この点について,原告は,引用発明が,分配フィルタ34,分配フィルタ34を
備えた分配フィルタエレメント及び第2手段を備えておらず(相違点3,4),引用
発明ではピストン26のピストンネット35が設けられた部分がコーヒー粉をプレ
スする構成であり,タンパリングを行っていない(相違点5)として,本件審決が
三つの相違点を看過した旨主張するが,以下の(2)~(4)のとおり,その主張は採用で
きない。
(2)本願発明における「第2手段」,「分配フィルタエレメント」及び「分
配フィルタ」の機能について
ア第2手段の機能について
第2手段について,本願の請求項1によると,「前記ポータフィルタ(11)に対
して密封及び開放を繰り返すように設けられた第2手段(33;33a-e;41)」,
「前記第2手段(33;33a-e;41)は,分配フィルタエレメント(33;
33a-e;41)を有し,前記ポータフィルタ(11)が開放状態にあってコー
ヒー粉を充填できる第1の位置と,前記分配フィルタエレメント(33;33a-
e)が前記ポータフィルタを気密に閉鎖した第2の位置とを行ったり来たりするこ
とができ」及び「前記第2手段(33;33a-e;41)は,前記ポータフィル
タ(11)内に配されたコーヒー粉(16)にタンパリングを行い」との記載があ
る。
これらの記載に照らすと,本願発明の第2手段は,「ポータフィルタ(11)が開
放状態にあってコーヒー粉を充填できる第1の位置」と「分配フィルタエレメント
(33;33a-e)がポータフィルタを気密に閉鎖した第2の位置」とを移動す
るものであって,①ポータフィルタを気密に閉鎖(密封)する機能(以下「①ポー
タフィルタ閉鎖機能」という。)と②ポータフィルタ内のコーヒー粉をタンパリング
する機能(以下「②タンパリング機能」という。)を有するものと認めることができ
る。
イ分配フィルタエレメントの機能について
次に,分配フィルタエレメントの機能について検討する。
まず,本願の請求項1には,「前記分配フィルタエレメント(33;3
3a-e)は,前記ポータフィルタ(11)内の分配フィルタ(34)によって抽
出チャンバ(15)を規制し」と記載されている。また,本願明細書にも,「分配フ
ィルタエレメント33は,嵌め込まれたポータフィルタ11内の抽出チャンバ15
を閉鎖し,・・・,分配フィルタ34は,分配フィルタエレメント33の底部側に配
置される。」(【0032】)との記載があり,「規制」と「閉鎖」という用語に違いは
あるものの,本件明細書の【0032】は,請求項1と同趣旨のことを記載したも
のと認められるから,分配フィルタエレメントの機能として,③抽出チャンバを規
制する機能(以下「③抽出チャンバ規制機能」という。)があることが認められる。
また,本願明細書には,「分配フィルタエレメント33は,・・・分配
フィルタ(図3~6の符号34)を介して加圧された水を供給する。・・・熱水は,
マシン内に組み込まれたボイラ28,及び熱水継ぎ手38から掘り抜き注入口37
を介して分配チャンバ35に導入することができる。」(【0032】)及び「ボイラ
28内の水は,取り付けられた加熱装置(図示せず)(例えば,抵抗加熱)によって
加熱され,その後,抽出プロセス中に,分配フィルタエレメント33に加圧(抽出
圧)下で搬送される。熱水は,分配フィルタ34を通してその表面の全体にむらな
く分配されるように抽出チャンバ15に入り込み」(【0033】)との記載がある。
これらの記載からすると,分配フィルタエレメントは,加圧された熱水を単に抽出
チャンバに供給するだけにとどまらず,④熱水を抽出チャンバ内のコーヒー粉の表
面の全体に分配する機能(以下「④熱水分配機能」という。)をも持つものであると
認められる。
さらに,本願の請求項1に「前記第2手段(33;33a-e;41)
は,分配フィルタエレメント(33;33a-e)を有し」,「電気的又は液圧応用
的に操作する駆動ユニット(32)は,前記第1の位置と前記第2の位置との間で
前記分配フィルタエレメント(33;33a-d)が動くように設けられており」
との記載があることからすると,分配フィルタエレメントは第2手段の構成要素で
あり,「前記ポータフィルタ(11)が開放状態にあってコーヒー粉を充填できる第
1の位置」と「前記分配フィルタエレメント(33;33a-e)が前記ポータフ
ィルタ11を気密に閉鎖した第2の位置」との間を移動するものであることが理解
できる。
また,本願明細書には,「閉鎖位置において,分配フィルタエレメント33は,嵌
め込まれたポータフィルタ11内の抽出チャンバ15を閉鎖し,最初,ポータフィ
ルタ11内に緩く入れられたコーヒー粉16を封止する(押し固める)。」(【003
2】)との記載があり,同記載の「押し固める」は,「押し詰める」と同義と認めら
れ(【0036】),コーヒー粉を押し詰めることは「タンパリング」と同義であると
認められる(【0003】)から,分配フィルタエレメントの機能として,②タンパ
リング機能があることも認められる。
小括
以上からすると,本願発明の分配フィルタエレメントは,②タンパリング機能,
③抽出チャンバ規制機能及び④熱水分配機能を備えているものと認められる。
ウ分配フィルタ34の機能について
分配フィルタ34に関して,本願の請求項1には,「前記分配フィルタ
エレメント(33;33a-e)は,前記ポータフィルタ(11)内の分配フィル
タエレメント(34)によって抽出チャンバ(15)を規制し」との記載がある。
また,本願明細書には,「分配フィルタ34」に関して,「閉鎖位置において,分
配フィルタエレメント33は,嵌め込まれたポータフィルタ11内の抽出チャンバ
15を閉鎖し,最初,ポータフィルタ11内に緩く入れられたコーヒー粉16を封
止する(押し固める)。さらに,分配フィルタ(図3~6の符号34)を介して加圧
された水を供給する。ここで,分配フィルタ34は,分配フィルタエレメント33
の底部側に配置される。このため,分配チャンバ35は,分配フィルタエレメント
33における分配フィルタ34の上方に配置される。熱水は,マシン内に組み込ま
れたボイラ28,及び熱水継ぎ手38から掘り抜き注入口37を介して分配チャン
バ35に導入することができる。」(【0032】),「ボイラ28内の水は,取り付け
られた加熱装置(図示せず)(例えば,抵抗加熱)によって加熱され,その後,抽出
プロセス中に,分配フィルタエレメント33に加圧(抽出圧)下で搬送される。熱
水は,分配フィルタ34を通してその表面の全体にむらなく分配されるように抽出
チャンバ15に入り込み」(【0033】),「分配フィルタエレメント33aの基本的
な設計は,・・・分配フィルタ34を,それぞれポータフィルタ11又は抽出チャン
バ15に同時に押し込み,さらに,抽出チャンバ15に入れられたコーヒー粉16
をある程度まで圧縮するように設計される。」(【0038】)との記載がある。
以上の特許請求の範囲及び本願明細書の記載並びに図3~6からする
と,本願発明の分配フィルタ34は,②タンパリング機能,③抽出チャンバ規制機
能及び④熱水分配機能を奏しているものと認められる。
(3)引用発明との対比について
ア本願発明の抽出チャンバに相当する引用発明の部材について
引用発明におけるドリッパーセット40が,「ドリッパー(20)とド
リッパーシャフト(21)からなるとともに,左右支柱の底部のスライド溝の中に水
平に置かれ,粉漏れ防止ふた(19)の真下に位置し,投入し取り出すことができ」
るものであること(引用文献の請求項5,請求項10)からすると,引用発明にお
けるドリッパーセット40は,本願発明のポータフィルタ11に相当するものと認
められる。
次に,本願発明の抽出チャンバ15については,本願明細書の「ポー
タフィルタ11は,上部が開口され,実質的に筒状の抽出チャンバ15を有してい
る。」(【0029】)及び「ボイラ28内の水は,・・・加熱され,その後,抽出プロ
セス中に,分配フィルタエレメント33に加圧(抽出圧)下で搬送される。熱水は,
分配フィルタ34を通して・・・抽出チャンバ15に入り込み,そこにあるコーヒ
ー粉16を通して流れ,抽出フィルタ17を通して再度下方に流出し,吐出開口部
14を介して外部に分配される。」(【0033】)との記載からすると,抽出チャン
バ15とは,ポータフィルタ11の構成要素であり,コーヒーの抽出が行われる場
所であると認められる。
他方,引用発明のドリッパー20は,引用文献に「コーヒー粉は粉出口11,粉
受け13を通って直接にドリッパーセット40のドリッパー20に入る。」(【00
07】)とあるように,ドリッパーセット40の構成要素であり,かつ「ピストンバ
ー連結装置39は・・・ドリッパー20内に入ってプレスと抽出を行い」(【002
8】)とあるように,コーヒーの抽出が行われる場所である。
したがって,引用発明のドリッパー20は,本願発明の「抽出チャンバ15」に
相当する(なお,引用文献の「ピストンバー連結装置39がドリッパーセット40
のドリップ20内までスライドしてコーヒー粉をプレスし,・・・コーヒーを抽出す
る操作が行える。」(【0020】)という記載からすると,ドリップ20は上記ドリ
ッパー20と同じものであると認められる。)。
イ引用発明が②タンパリング機能を有しているのか等について
本願発明においてタンパリングとは,「挽かれた材料をポータフィル
タ内に押し詰めること」(【0003】)と説明されているところ,これは,エスプレ
ッソマシンからの熱水が均等に貫流するコーヒーペレットを作るために,コーヒー
粉を容器に押し込める「タンピング」(甲12~14,乙1~3)を意味するものと
認められる。
そして、証拠(甲12~14,乙2,3)によると,タンパリングはエスプレッ
ソの品質を高める上で極めて重要な工程であると認められるところ,引用発明は,
前記認定のとおり半自動のエスプレッソマシンであるから,その品質を高めるため
にタンパリングを行うことは自然なことということができる。
さらに,引用文献には,「ピストンバー連結装置(39)は,プレスハンドル(22),
回転支柱(23),ピストン連結器(24),ピストン連結器シャフト(25),ピストン
(26),密封リング(27),テフロンチューブ(28),ピストンネット(35)からなり,」
(請求項6),「ピストンバー連結装置(39)がドリッパーセット(40)のドリップ
(20)内までスライドしてコーヒー粉をプレスし・・・コーヒーを抽出する」(【00
29】)という記載がある。また,引用文献の図6,10によると,密封リング27
がピストン26の外周に取り付けられ,ドリッパー20との間の気密を維持してい
て,かつ円柱形のピストン26及びピストンネット35の直径が,ドリッパー20
(前記認定のとおり,コーヒー粉を収容して抽出が行われる場所)の直径とほぼ等
しいものであることが認められる。このような記載及び図面からすると,引用発明
においては,ピストン26及びピストンネット35が,ドリッパー20内に収容さ
れたコーヒー粉に対して全体的に圧力を加えていることが理解できる(なお,引用
発明において,ピストン26のみならずピストンネット35も圧力を加える機能を
営むと理解されることについてはで後述する。)。そして,そのような圧力を加え
る態様は,甲12,13,乙1~3に示されているタンピング(本願発明でいうタ
ンパリング)の態様と極めて類似している。
以上を考え併せると,引用発明においては,ピストンバー連結装置39が,ドリ
ッパー内のコーヒー粉をプレスして,本願発明でいうところのタンピングを行って
おり,ピストンバー連結装置39並びにピストン26及びピストンネット35は,
本願発明の第2手段,分配フィルタエレメント及び分配フィルタ34が奏する②タ
ンパリング機能と同様の機能を備えているものと認められる。
原告は,この点について,引用発明がエスプレッソマシンであるとし
ても,①引用文献にある「プレス」の語の持つ意味は,単に「押すこと。押し付け
ること。」であり,タンパリングにおける「平らに隙間なく詰まるように」とか,「均
一に」といった限定がその定義には含まれていない上,現にエスプレッソにおいて
タンパリングが必須の工程ではなく,タンパリングを行わないエスプレッソマシン
があること(甲26)ことからすると,引用発明においてタンパリングが行われて
いるとは認められない,②ピストンネット35は「ネット」という表現からして,
多数の開口を有する部材であると解され,コーヒー粉をプレスする機能は有してい
ないと主張している。
しかし,上記①について,引用発明の「プレス」が単に辞書どおりの意味のもの
ではなく,タンパリングと認定できることは前したとおりである。また,
原告がその論拠とする甲26に記載された技術は,「硬い封入体を有するカプセル
として知られる単一用量容器」(【0003】)であって,従来のカプセルにおいては
「多穴性の若しくは穴の明いた壁が,大気中の酸素および周囲環境の湿度に対する
バリアとして作用し得ない」(【0006】)という問題を解決するため,「バリア材
料から全体的に作られている,硬い単一用量容器(カプセル)」(【0029】)であ
り,かつ,「穴明け手段が設けられているカプセル」(【0030】)としたものであ
る。そして,甲26に記載されたカプセルの使用態様は,「例えばモカコーヒーメー
カーの濾過用漏斗にカプセルを挿入して,収集タンクおよび湯沸かし器を一体に締
め付けることによって・・・モカコーヒーメーカーを閉じると,両方の穴明け要素
は隣接する壁の方向に押圧され,穴明け要素によって隣接する壁に穴が明けられる。」
(【0030】),「このようにして,抽出のためのお湯がカプセルに入ることができ
るようにしかつ抽出された飲料がカプセルから出ることができるようにするために
必要な開口が,カプセルに作り出される。」(【0031】)というものである。原告
は,上記使用態様について「上側の穴明け要素22が壁手段8に突き刺さった状態
であり,壁手段8により定義されるコーヒー粉の上面は平らではない。」ことを根拠
に,甲26においてコーヒー粉がタンピングされていないと主張するが,上記使用
態様のとおり,穴明け要素はカプセルの壁に穴を開けるためのものであって,タン
ピングとは関係がないものである。むしろ,エスプレッソ用のカプセルであるなら,
カプセル内のコーヒー粉は,乙3に記載されているような,あらかじめ粉が封入さ
れたようなカフェポッドと呼ばれる使い捨てカートリッジのように,封入時点でタ
ンピングされた状態であったと解するのが自然であり,甲26
右するものではない。
また,上記②についても,「ネット」は「網」と同義である(甲17,24)とこ
ろ,「網」は,「鳥獣や魚などをとるために,糸や針金を編んで造った道具。また一
般に,糸や針金を編んで造ったもの」(広辞苑第5版(甲18)),「規則正しい間隔
で糸を結合し,メッシュ状にしたもの。」(マグローヒル科学技術用語辞典改訂第3
版(乙4))であって,必ずしも目の粗い多数の開口を有するものに限られないもの
と解される。なお,甲25には,「網」について「糸,縄,針金,竹などで目を粗く
編んだもの。」との定義が記載されているが,この定義は,上記の他の辞書や辞典の
定義に照らして必ずしも一般的なものとは考えられないから,上記認定を左右する
ものではない。また,仮に原告が主張するようにピストンネット35が多数の開口
を有する部材であって,コーヒー粉をプレス(タンパリング)する機能を有しない
と仮定すると,引用発明において,ピストン26の底面部にテフロンチューブ28
の孔が設けられていること及び後述するとおり,ピストン26の底面部にくぼみが
あることからすると,ピストン26のみでコーヒー粉に均一に圧力を加えることが
できず,適切なタンパリングを行えなくなり,ひいては後述するとおり,熱水が上
記テフロンチューブの孔の直下のコーヒー粉を部分的に通過するだけとなって熱水
が通過しない部分のコーヒー粉が無駄になるなど,適切な抽出も行えなくなって,
エスプレッソマシンとしては余りに非合理的なものとなってしまう。これらのこと
からすると,引用発明のピストンネット35は,多数の開口を有する部材とは考え
られず,コーヒー粉を通さない程度の網目を持ち,コーヒー粉に圧力を加える機能
を有するものと推認できるのであり,原告の上記②の主張は採用できない。
ウ引用発明が,①ポータフィルタ閉鎖機能及び③抽出チャンバ規制機能を
有しているのか等について
前記のとおり,引用発明の「ピストンバー連結装置(39)」は,「プレ
スハンドル(22),回転支柱(23),ピストン連結器(24),ピストン連結器シャフ
ト(25),ピストン(26),密封リング(27),テフロンチューブ(28),ピストンネ
ット(35)からな」るものである(引用文献の請求項6)。そして,引用発明がエス
プレッソマシンであること,前記のとおり引用発明においてもタンパリングが行わ
れると認められること,ピストン26はテフロンチューブ28によってヒーターと
連結していること(引用文献1の請求項1,【0007】,【0028】)及び弁論の
全趣旨からすると,引用発明のコーヒーの抽出においては,コーヒー粉がプレスさ
れた状態で,テフロンチューブ28及び当該テフロンチューブ28が接続されたピ
ストン26の孔を通じてコーヒー粉に加圧された熱水が供給されると認められるが,
ドリッパー20とピストン26との間に隙間が存在すると,圧力が逃げたり熱水が
漏れたりするという不具合が生じると認められる(乙1)。そうすると,引用発明で
は,そのような不具合が生じるのを防ぐため,「密封リング(27)・・・は,ピスト
ン(26)の上に取り付けられ」た構成を採用しているものと解される。したがって,
引用発明のピストンバー連結装置39は,その密封リング27により,ドリッパー
セット40のドリッパー20を密封しているという点で,本願発明の第2手段が持
つ①ポータフィルタ閉鎖機能と同様の機能を備えるものと認められる。
39が,①ポータフィルタ閉鎖
機能を備えていること,引用発明の構成に照らすと,ピストンバー連結装置39の
ピストン26,ピストンネット35及び密封リング27以外の部分が,ドリッパー
20の密封に寄与しているとは考えられないこと及び前記のとおり,引用発明にお
いて,ピストンネット35はピストン26の底面部に取り付けられたもので,かつ
コーヒー粉を通さない程度の細かさの網目を持ち,タンパリング機能を有するもの
と認められることを考え併せると,引用発明のピストン26,ピストンネット35
及び密封リング27についても,本願発明にいう①ポータフィルタ閉鎖機能と同様
の機能を備えていることは明らかである。また,ピストン26,ピストンネット3
5及び密封リング27がドリッパー20を密封する際,ピストン26及びピストン
ネット35がドリッパー20内のコーヒー粉を閉鎖していることもまた明らかであ
るから,引用発明のピストン26及びピストンネット35は,本願発明の分配フィ
ルタ34が持つ③抽出チャンバ規制機能と同様の機能を備えているものと認められ
る。
エ引用発明が④熱水分配機能を有しているのか等について
タンパリングは,加圧された熱水がコーヒー粉全体に均等に貫流する
ためにされる工程である(甲12~14,乙1,2)から,前記認定のとおり,タ
ンパリングを行っている引用発明においても,加圧された熱水がコーヒー粉全体に
均等に貫流する設計になっているものと考えられる。そして,引用文献の図10を
参照すると,引用発明のピストン26は,下端において,中央部分がくぼんでいて,
ピストン26とピストンネット35との間には空間が存在し,その空間は,上方の
テフロンチューブ28に連通する孔に連通することが見て取れる。引用発明がコー
ヒーを抽出する際には,ドリッパー20内のコーヒー粉がタンピングされて固く圧
縮されているのであるから,テフロンチューブ28から供給された熱水は,コーヒ
ー粉を通るよりもピストン26とピストンネット35との間の空間を通る方が流通
抵抗(甲14参照)が小さいはずであり,そのため,熱水は上記ピストン26とピ
ストンネット35との間の空間を満たしてからコーヒー粉に浸透するように流れる
ものと認められる。そうすると,熱水は,ピストンネット35とコーヒー粉が接す
る部分の全域から浸透することになるので,コーヒー粉の表面の全体に均等に分配
されると認められる。
したがって,引用発明のピストン26及びピストンネット35は,本願発明にい
う④熱水分配機能を有していると認められる。
この点について,原告は,加圧された熱水を用いて抽出さえされてい
ればエスプレッソといえるから,引用発明についても,熱水がコーヒー粉の全体に
行き渡ると解釈することはできず,熱水がテフロンチューブ28の孔の直下のコー
ヒー粉を部分的に通過するにすぎないと解釈すべきであり,実際に甲27,28に
示すように,抽出ピストン8の端部8aに接触するようにコーヒー粉が配置され,
当該端部8aに形成された水の出口開口17を通じて出口開口17直下のコーヒー
粉に水が供給されるように構成されたエスプレッソマシンも存在する旨主張してい
る。
しかし,仮に,抽出の際に熱水が直下のコーヒー粉を部分的に通過するだけであ
るのならば,熱水が通過しない箇所のコーヒー粉はエスプレッソの抽出に不要なも
のとなり,コーヒー粉が無駄になることが明らかであるから,引用発明において抽
出の際に熱水が直下のコーヒー粉を部分的に通過するだけであると解釈するのは不
自然であり,引用発明のドリッパー20内のコーヒー粉に熱水が行きわたると考え
るのが自然である。
また,甲27,28に示されるエスプレッソマシンに関する発明の目的は,粉砕
コーヒー(コーヒー粉末)の粒子サイズ分布又は粉砕程度を確定することにあり(甲
28の【0006】),粉砕体積V及び粉砕質量mを確定した後,その比m/Vを計
算し(甲28の【0046】),m/Vに基づいて表Zから粒子サイズ分布又は粉砕
程度を計算する(甲28の【0048】)ものである。そして,同発明において,粉
砕体積Vは,乾燥状態のコーヒー粉末を第1の加圧力で加圧したときの体積Vとし
て確定される(甲28の【0033】)のに対し,粉砕質量mは,温水が供給されて
膨張したコーヒーの粒子を十分に大きい力で圧縮した場合における,その体積に比
例し,乾燥したコーヒーの粒子サイズ分布に無関係であることを利用して確定され
(甲28の【0040】),そのような測定処理は,コーヒーを抽出している間に実
施できるとされている(甲28の【0054】)。以上のような上記発明の内容から
すると,上記エスプレッソマシンにおいても,その抽出処理中にコーヒー粉全体に
熱水が行きわたっているものと認められ,抽出ピストン8の端部8aに接触するよ
うにコーヒー粉が配置されているからといって,原告の主張するように出口開口1
7直下のコーヒー粉にしか温水が供給されないと解すべきではない。したがって,
甲27,28は,引用発明の抽出過程ひいては熱水分配機能についての前記認
定を左右するものではない。
オ小括
以上を総合すると,引用発明のうち,ピストンバー連結装置39は,
①ポータフィルタ閉鎖機能及び②タンパリング機能を奏するものである。
また,ピストンバー連結装置39は,「上に向かって豆を挽く位置」までスライド
するもの(引用文献の【0028】)であり,この位置においてドリッパー20は開
放されているのであるから,引用発明の同位置は本願発明にいう「ポータフィルタ
(11)が開放状態にあってコーヒー粉を充填できる第1の位置」に相当する。
さらに,引用文献の【0029】からすると,引用発明のピストンバー連結装置
39は,下方に向かってスライドし,ドリッパー20内に入ってプレスと抽出を行
うものであり,このとき,前記のとおり,ドリッパー20はピストンバー連結装置
39のピストン26,ピストンネット35及び密封リング27によって密封されて
いるから,下方に向かってスライドしたときのピストンバー連結装置39の位置は,
本願発明の「前記ポータフィルタを気密に閉鎖した第2の位置」に相当する。
上記のとおり,引用発明中のピストンバー連結装置39は,機能及び移動範囲の
点からして本願発明の第2手段に相当するものといえる。
次に,引用発明のピストン26及びピストンネット35は,前記のと
おり,いずれも②抽出チャンバ規制機能,③タンパリング機能及び④熱水分配機能
を有するものであり,かつピストン26ピスト
ンバー連結装置39の構成要素という関係に立っている。そうすると,引用発明の
ピストン26が本願発明の分配フィルタエレメントに,引用発明のピストンネット
35が本願発明の分配フィルタ34にそれぞれ相当するものといえる。
(4)以上からすると,本願発明と引用発明との間で,原告が主張するような相
違点3~5が存在するとは認められないから,本件審決の判断は誤りがない。
第6結論
よって,原告の請求には理由がないからこれを棄却することとして,主文のとお
り判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
森義之
裁判官
佐野信
裁判官
熊谷大輔
別紙1本願図面
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
別紙2引用文献図面(抜粋)
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図12】

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