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平成15年(行ケ)第524号審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成16年9月7日
判決
原        告   日立化成工業株式会社
同訴訟代理人弁護士 村田哲哉
同訴訟代理人弁理士 長谷川芳樹
同 寺崎史朗
同 清水義憲
同訴訟復代理人弁護士 尾関孝彰
被        告   特許庁長官 小川洋
同指定代理人    秋月美紀子
同一色由美子
同涌井幸一
同山口由木
同宮下正之
主文
     1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
 特許庁が不服2002―21511号事件について平成15年10月20日に
した審決を取り消す。
第2 争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
 原告は,特許庁に対し,発明の名称を「感光性樹脂組成物及びこれを用いた
感光性エレメント」とする発明につき,平成13年10月19日,平成6年12月
12日にされた特許出願(以下「原出願」という。)の一部を新たな特許出願とし
た(特願2001―322638号。以下「本願」という。)ところ,特許庁は,
平成14年10月1日,拒絶査定をした。
 そこで,原告は,同年11月6日,拒絶査定不服審判の請求をした(不服2
002―21511号)ところ,特許庁は,平成15年10月20日,「本件審判
の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)を行い,その
謄本は,同月29日,原告に送達された。
2 特許請求の範囲
 平成14年6月17日付け手続補正書により補正された明細書(以下「本願
明細書」という。)の請求項1の記載は次のとおりである(以下,この発明を「本
願発明」という。)。
【請求項1】(A)カルボキシル基を有するポリマー40~80重量部,
(B)ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート,ビスフェノー
ルAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート又はビスフェノールAデカオキシ
エチレンジ(メタ)アクリレートを含む,少なくとも1つの不飽和結合を有し,重
合可能な化合物20~60重量部((A)と(B)との総量が100重量部となるよう
にする),及び(C)ヘキサアリールビイミダゾール0.1~3.0重量部(前記
(A)と(B)との総量100重量部に対して)を含有する感光性樹脂組成物。
3 本件審決の理由の要旨
 本件審決は,次のとおり,「本願発明は,原出願の願書に最初に添付した明
細書(以下「原出願当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内でないものを含
んでいるから,本願は,分割出願の要件を満たしていないので,その出願日は,原
出願の出願時に遡及せず,本願の願書を提出した平成13年10月19日となると
ころ,本願発明は,本願出願前に国内で頒布された特開平8-157744号公報
(原出願の公開公報。以下「刊行物1」という。)に記載された発明であるから,
特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができない。」とした。
(1) 出願日の認定
ア 本願発明は原出願当初明細書に記載した事項の範囲内でないものを含ん
でい るから,本願は分割出願としての要件を満たしていないので,原出願の一部
を新たな特許出願としたものとは認められず,出願日の遡及は認められない。した
がって,本願は,原出願の出願の時にしたものとすることはできず,願書を提出し
た平成13年10月19日がその出願日とされるものである。
 すなわち,本願発明は,原出願当初明細書における請求項1では,一般
式(I)
    
(式中,R1
は炭素原子数6~12のアルキレン基を示す)
で表される光開始剤(原出願当初明細書では(C)成分。以下,「光開始
剤(I)」という。)及びヘキサアリールビイミダゾール(原出願当初明細書では
(D)成分。以下,「ビイミダゾール類」という。)をそれぞれ所定重量部含有す
ると規定されていた(以下,原出願当初明細書の請求項1に係るこの発明を「原出
願発明」という。)ものが,ビイミダゾール類(本願明細書では(C)成分)のみ
について所定重量部含有すると規定されたものである。したがって,本願発明に
は,光開始剤(I)を含有せず,ビイミダゾール類を所定重量部含有するものも包
含されることになる。
 しかしながら,原出願当初明細書の記載は,光開始剤(I)及びビイミ
ダゾール類をともに含有することを前提として,それぞれを所定重量部(すなわ
ち,光開始剤(I)を0.05~1重量部,ビイミダゾール類を0.1~3.0重
量部)含有するものについて記載されているが,ビイミダゾール類を0.1~3.
0重量部含有するが光開始剤(I)を含有しないものについての記載はされていな
い。なお,比較例2は,光開始剤(I)を含有しないが,ビイミダゾール類を5.
0g(5重量部に相当)含有するから,ビイミダゾール類を0.1~3.0重量部
含有するが光開始剤(I)を含有しないものではない。
 すなわち,原出願当初明細書は,光開始剤(I)及びビイミダゾール類
をともに所定重量部含有することが記載されるのみであって,光開始剤(I)を含
有しなくとも,ビイミダゾール類を所定重量部含有しさえすれば良いということま
では,記載されていない。
 したがって,本願発明は原出願当初明細書に記載した事項の範囲内でな
いものを含んでいる。
イ これに対し,請求人は,概ね以下のように主張している。
『本願発明は,実質的に,原出願発明の(D)成分を(C)成分とし,
(C)成分を削除した構成を有しています。一方,本願と原出願とでは,「発明が
解決しようとする課題」は同一です。
 したがって,原出願において,原出願の(C)成分を除いた構成であっ
ても,「レジストの線幅が太らず光感度が高く,しかも光開始剤のめっき液への溶
出がほとんどないため,めっき液の汚染が少ない」という課題が解決されているよ
うであれば,本願発明が原出願に記載されていたと言うことができ,また,本願
が,原出願に記載されていた発明を抜き出した出願であると言うことができます。
 原出願の実施例及び比較例における(C)成分〔光開始剤(I)〕は本
願の実施例及び比較例における(C)成分以外の光開始剤に該当し,原出願の実施
例及び比較例における(D)成分〔ビイミダゾール類〕は本出願の実施例及び比較
例における(C)成分に該当します。したがって,原出願の実施例及び比較例と本
出願の実施例及び比較例とは同一です。
 原出願(本願も同様)における表3と表4を組み合わせて対比すると,
以下に示す事項(i)~(viii)が一義的に導き出すことができます。
(i)合金比率は,実施例1,実施例2及び比較例2において1.00に近い
ため,実施例1,実施例2及び比較例2において,光開始剤のめっき液への溶出防
止性が優れている。
(ii)実施例1,実施例2及び比較例2における組成の共通点は,これらが
いずれも〔ビイミダゾール類〕が含まれていることである。したがって,光開始剤
のめっき液への溶出を防止するためには,感光性樹脂組成物は,〔ビイミダゾール
類〕を含有している必要がある。
(iii)光開始剤のめっき液への溶出の防止は,〔光開始剤(I)〕のみの添
加では困難であり(比較例1),〔光開始剤(I)〕及び〔ビイミダゾール類〕以
外の成分の添加でも困難である(比較例3)。
(iv)比較例2は,合金比率において良好な値を示しているが,線幅の差が
+10μmであることから,〔ビイミダゾール類〕の添加量が多い場合は,レジス
トの線幅が太る。すなわち,〔ビイミダゾール類〕の含有量には上限がある。
(v)本願及び原出願の【0019】欄には,「本発明における〔ビイミダゾ
ール類〕の配合量は,0.1~3.0重量部(前記(A)成分と(B)成分との総量1
00重量部に対して)とされ,0.5~2.5重量部とされることが好ましい。こ
の配合量が0.1重量部未満では,充分な光感度が得られず,3.0重量部を超え
ると,レジストの線幅が太くなる。」旨記載がされていることから,原出願の出願
当初には,既に「〔ビイミダゾール類〕の上限は3.0重量部であり,下限は0.
1であること」が明白に認識されている。
(vi)実施例1及び実施例2の光感度及び合金比率と,比較例2の光感度及
び合金比率を比較すると,実施例1,2及び比較例2は全て同等に優れた光感度及
び合金比率を発揮している。すなわち,光感度と合金比率の両立には〔光開始剤
(I)〕の含有は必要でない。
(vii)以上より,光開始剤のめっき液への溶出を防止するためには〔ビイミ
ダゾール類〕が必須であり(上記(ii)からの帰結),レジストの線幅の太りを考慮
すると,当該成分の上限は3.0重量部であり下限は0.1である(上記(iv)及
び(v)からの帰結)。また,光感度と合金比率の両立には〔光開始剤(I)〕の含有
は必要でない(上記(vi)からの帰結)。
(viii)したがって,「レジストの線幅が太らず光感度が高く,しかも光開
始剤のめっき液への溶出がほとんどないため,めっき液の汚染が少ない感光性樹脂
組成物及び感光性エレメントを提供する」という課題の達成のためには,本出願に
おける(A)成分,(B)成分及び(C)成分〔ビイミダゾール類〕(但し所定
量)の構成を備えていればよい。
 以上説明したことから,原出願において,既に本出願の請求項1の構成
が課題を解決可能であることが明白に示されており(本願発明が原出願に存在して
おり,データ上それが明白に示されている),本出願はそのような発明を原出願か
ら抜き出したものであることは明らかです。
 そして,原出願に記載された事実(特に実施例に記載された事実)は,
当業者にとって,「光開始剤のめっき液への溶出を防止するためには本出願におけ
る〔ビイミダゾール類〕が必須であり,レジストの線幅の太りを考慮すると,当該
成分の上限は3.0重量部であり下限は0.1であり,光感度と合金比率の両立に
は〔光開始剤(I)〕の含有は必要でない。すなわち,本出願における(A)成
分,(B)成分及び所定量の〔ビイミダゾール類〕の構成を備えることにより,レ
ジストの線幅が太らず光感度が高く,しかも光開始剤のめっき液への溶出がほとん
どないため,めっき液の汚染が少ない感光性樹脂組成物及び感光性エレメントを提
供するという課題の達成が可能になる。」という事項を意味していることが明らか
であり,かつそれ以外の事項を意味していないことが明らかです。
 したがって,本出願の請求項1は,原出願の明細書の全体を参酌して一
義的に導き出すことのできる事項であり,審査基準によれば,「出願当初の明細書
又は図面に記載した事項の範囲内」に該当します。』
ウ しかしながら,上記請求人の議論においては,原出願当初明細書の記載
は, 光開始剤(I)及びビイミダゾール類をともに含有することを前提として,
それぞれを所定重量部含有するものについて記載されたものであることについて,
考慮がされていない。
 一例として,ビイミダゾール類の配合量について,以下検討する。
 原出願当初明細書では,ビイミダゾール類について,「配合量は,0.
1~3.0重量部…とされ,…この配合量が0.1重量部未満では,充分な光感度
が得られず…」との記載は,光開始剤(I)をともに含有することを前提として記
載されている。また,光開始剤(I)についても,「配合量は,0.05~1重量
部…とされ,…この配合量が0.05重量部未満では,充分な光感度が得られず,
…」との記載は,ビイミダゾール類をともに含有することを前提として記載されて
いる。
 そして,原出願当初明細書では,ビイミダゾール類,光開始剤(I)双
方が,光感度に貢献している。実際,例えば,実施例1及び実施例2では,ビイミ
ダゾール類2.0g(2.0重量部に相当),光開始剤(I)0.2g(0.2重
量部に相当)が配合されて,ともに光感度8.0であるが,光開始剤(I)を含有
しない比較例2では,同等の光感度8.0を得るのに,ビイミダゾール類は5.0
g(5.0重量部に相当)配合することが必要となっている。(この場合,光開始
剤(I)0.2gがビイミダゾール類3.0gに相当するとして単純に計算する
と,光開始剤(I)は同じ重量部でも,ビイミダゾール類の15倍光感度に貢献し
ている。)
 したがって,原出願当初明細書が,充分な光感度が得られるためには,
ビイミダゾール類の配合量が少なくとも0.1重量部,光開始剤(I)の配合量が
少なくとも0.05重量部,必要であることを記載している場合に,光開始剤
(I)を含有しなくとも,ビイミダゾール類だけ0.1重量部含有しさえすれば充
分な光感度が得られるとすることはできない。
 すなわち,原出願当初明細書には,「本願発明の(C)成分:ビイミダゾ
ール類の上限は3.0重量部であり,下限は0.1重量部であること」が明白に認
識されていたということはできない。また,ビイミダゾール類の配合量について,
光開始剤(I)を含有しなくとも,「0.1~3.0重量部とされ」,「この配合
量が0.1重量部未満では,充分な光感度が得られず,」とする本願明細書の記載
は,原出願当初明細書の記載の範囲内であるとすることはできない。
 したがって,「レジストの線幅が太らず光感度が高く,しかも光開始剤
のめっき液への溶出がほとんどないため,めっき液の汚染が少ない感光性樹脂組成
物及び感光性エレメントを提供する」という課題の達成のためには,本願における
(A)成分,(B)成分及び(C)成分〔ビイミダゾール類〕(但し所定量)の構
成を備えていればよいということはいえないから,原出願において,既に本願発明
の構成が課題を解決可能であることが明白に示されており,本願発明はそのような
発明を原出願から抜き出したものであるとする,請求人の主張は採用しない。
 また,本願明細書の記載は,原出願当初明細書の範囲内であるとするこ
ともできないから,本出願の請求項1は,原出願の明細書の全体を参酌して一義的
に導き出すことのできる事項であり,原出願当初明細書に記載した事項の範囲内で
ある旨の請求人の主張も採用しない。
(2) 対比・判断
 本願発明と,本願出願前に国内で頒布された刊行物1(原出願の公開公
報)に記載された発明とは,
「(A)カルボキシル基を有するポリマー40~80重量部,(B)ビスフ
ェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート,ビスフェノールAトリオキ
シエチレンジ(メタ)アクリレート又はビスフェノールAデカオキシエチレンジ
(メタ)アクリレートを含む,少なくとも1つの不飽和結合を有し,重合可能な化
合物20~60重量部((A)と(B)との総量が100重量部となるようにする),
及び(C)ヘキサアリールビイミダゾール0.1~3.0重量部(前記(A)と(B)
との総量100重量部に対して)を含有する感光性樹脂組成物。」
である点で一致する。
 したがって,本願発明は,本願出願前に国内で頒布された刊行物1に記載
された発明であるから,特許法29条1項3号に該当し,特許を受けることができ
ない。
第3 原告主張に係る本件審決の取消事由の要点
 本件審決は,本願が分割出願の要件を満たしていないと誤って判断した結果,
本願を原出願の出願時にしたものとみなすことができないとして,刊行物1を本願
出願前に国内で頒布されたものであると誤認したものであり,その誤りは本件審決
の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから,違法として取り消されるべきであ
る。
1 本願発明は,原出願発明の(C)成分(光開始剤(I)0.05~1重量
部)を削除し,原出願発明の(D)成分(ビイミダゾール類0.1~3.0重量
部)を(C)成分とした構成を有している。
 そして,本願と原出願において,「レジストの線幅が太らず光感度が高く,
しかも光開始剤のめっき液への溶出がほとんどないため,めっき液の汚染が少ない
感光性樹脂組成物及び感光性エレメントを提供する」という課題は,同一である。
 しかるところ,原出願当初明細書(特に,表3,表4,段落【0019】等
の記載)においては,以下のとおり,「ビイミダゾール類を所定重量部含有するの
みで,光開始剤(I)を含有しない」という本願発明の構成も,上記課題を解決す
ることができるものとして記載されているから,本願は,原出願当初明細書に記載
されていた発明を抜き出した出願であるということができる。
(原出願当初明細書の表3,表4を合わせた表)
商品名配合量商品名配合量光感度線幅の差合金比率
(g)(g)(段)(μm)
実施例1B-CIM2.0N-17170.28.000.95
実施例2B-CIM2.0N-17110.28.000.97
比較例1--N-17170.510.000.70
比較例2B-CIM5.0--8.0+100.95
比較例3----8.000.60
ビイミダゾール類光開始剤(Ⅰ)
2(1) 実施例1,2及び比較例2は,合金比率が0.95~0.97と1.00
に近く,合金比率が良い(光開始剤のめっき液への溶出防止性が優れている。)。
一方,比較例1,3は,合金比率がそれぞれ0.7,0.6と合金比率が良くな
い。比較例1,3は,実施例1,2及び比較例2と異なり,ビイミダゾール類が含
有されていない。したがって,合金比率を良くするためには,ビイミダゾール類を
含有する必要があることが示される。
 また,比較例1には,光開始剤(Ⅰ)が添加されているが,合金比率は良
くないから,合金比率の向上は光開始剤(Ⅰ)のみの添加では困難であることが示
される。さらに,比較例3から,合金比率の向上は,ビイミダゾール類及び光開始
剤(Ⅰ)以外の成分の添加でも困難であることが示される。
(2) 比較例2は,合金比率は0.95と良好であるが,線幅の差は+10μm
と,線幅が太ってしまっている。比較例2は,実施例1,2に比べ,ビイミダゾー
ル類の添加量が多くなっている(5.0g)。したがって,ビイミダゾール類の添
加量が多すぎるとレジストの線幅が太るため,ビイミダゾール類の含有量には上限
があることが示される。
 そして,原出願当初明細書の段落【0019】には,原出願発明における
ビイミダゾール類の配合量は,0.1~3.0重量部とされ,0.5~2.5重量
部とされることが好ましく,配合量が0.1重量部未満では,充分な光感度が得ら
れず,3.0重量部を超えると,レジストの線幅が太くなる旨の記載があるから,
原出願の出願当初,既に,ビイミダゾール類の上限は3.0重量部で,下限は0.
1重量部であることが明白に認識されている。
3 実施例1,2及び比較例2はいずれも,光感度が8.0段で,合金比率も
0.95~0.97であり,光感度及び合金比率とも良好である。そして,比較例
2は,実施例1,2と異なり,光開始剤(Ⅰ)が含まれていない。したがって,光
感度と合金比率を両立させるためには,光開始剤(Ⅰ)の含有は不要であることが
示される。
 なお,実施例1,2,比較例1~3に含有される光開始剤の組合せは多様で
あるところ,いずれも光感度は8.0~10.0段と良好であるから,光感度とい
う点だけに着眼すれば,どのような光開始剤を用いるかは,当業者であれば適宜設
計可能な事項である。
4 原出願当初明細書には,ビイミダゾール類の含有量について,(A)成分と
(B)成分との総量100重量部に対して0.1~3.0重量部含有するとの記載
があるが,光開始剤(Ⅰ)との関係については特に規定されていない。このような
記載からすれば,原出願当初明細書には,(A)成分,(B)成分及びビイミダゾ
ール類が必須である旨の記載はあるが,光開始剤(Ⅰ)をも必須の構成要素とする
旨の記載があるとはいえない。
5 以上のとおり,原出願当初明細書の表3及び表4,【0019】欄等の記載
から,①合金比率をよくするためにはビイミダゾール類が必須であること,②レジ
ストの線幅の太りを考慮すると,ビイミダゾール類の上限は3.0重量部であり,
下限は0.1重量部であること,③光感度と合金比率を両立させるためには,光開
始剤(Ⅰ)の含有は必要でないことがわかる。
 したがって,①ないし③を総合すると,ビイミダゾール類を所定重量部含有
するのみで,光開始剤(I)を含有しないという本願発明の構成も,「レジストの
線幅が太らず光感度が高く,しかも光開始剤のめっき液への溶出がほとんどないた
め,めっき液の汚染が少ない感光性樹脂組成物及び感光性エレメントを提供する」
という課題を達成可能であることが明白に示されている。
6 本件審決は,原出願発明の課題には,光感度,合金比率,線幅の差がすべて
含まれるにもかかわらず,たとえば,「原出願当初明細書では,ビイミダゾール
類,光開始剤(I)双方が,光感度に貢献している。実際,例えば,実施例1及び
実施例2では,ビイミダゾール類2.0g(2.0重量部に相当),光開始剤
(I)0.2g(0.2重量部に相当)が配合されて,ともに光感度8.0である
が,光開始剤(I)を含有しない比較例2では,同等の光感度8.0を得るのに,
ビイミダゾール類は5.0g(5.0重量部に相当)配合することが必要となって
いる。」(8頁)と,光感度のみに着目し,レジストの線幅,合金比率に関する記
載を無視したことにより,誤った判断を導いている。
 また,本件審決は,「原出願当初明細書が,充分な光感度が得られるために
は,ビイミダゾール類の配合量が少なくとも0.1重量部,光開始剤(I)の配合
量が少なくとも0.05重量部,必要であることを記載している場合に,光開始剤
(I)を含有しなくとも,ビイミダゾール類だけ0.1重量部含有しさえすれば充
分な光感度が得られるとすることはできない。」(8~9頁)と,光開始剤(Ⅰ)
を含有しないと「充分な光感度」が得られないことをことさらに強調している。し
かしながら,このような判断は,原出願発明における「充分な光感度」の意義を誤
解したものである。すなわち,従来技術は,めっき浴中へ溶出する光開始剤の量を
少なくする(合金比率を向上させる)ために光開始剤の量を減らしていたため,光
感度の低下を招いていた(段落【0005】)ところ,原出願発明は,このような
従来技術を改良するための発明であるから,原出願当初明細書における「光感度が
優れる」とは,合金比率等を向上させるために「光感度の低下をもたらさない」と
いうことを意味する。つまり,原出願当初明細書における光感度は,「実用に供し
うる感度」であれば十分であるのである。
第4 被告の反論の要点
 本件審決の判断に誤りはなく,原告の主張する本件審決の取消事由には理由が
ない。
1 原出願当初明細書における発明の詳細な説明は,あくまでも光開始剤(I)
及びビイミダゾール類をそれぞれ所定重量部含有するという原出願発明の構成を前
提として記載されている。原告が主張するような,ビイミダゾール類を0.1~
3.0重量部含有するが光開始剤(I)を含有しない構成であっても,同明細書記
載の課題が解決され,同明細書記載の効果が奏される旨の記載は存在しない。
2 比較例2は,ビイミダゾール類を所定量より多量(5.0重量部)に含有さ
せたことで光感度を良好としているのであるから,ビイミダゾール類の含有量に上
限があることを示すものではなく,ビイミダゾール類のみでは,光開始剤(Ⅰ)と
比べて光感度が低いため,実施例1,2と同程度の光感度が得られる量を含有させ
ると線幅が太ってしまうことを示しているというべきである。
 また,原出願当初明細書の【0019】欄の記載は,あくまでも光開始剤
(I)及びビイミダゾール類をそれぞれ所定重量部含有するという原出願発明の構
成を前提として記載されており,原告が主張するような,光開始剤(I)を含有し
ないという構成を前提とした記載ではない。むしろ,原出願当初明細書の【001
7】欄には,本発明における光開始剤(I)の配合量は,0.05~1重量部(前
記(A)成分と(B)成分との総量100重量部に対して)とされ,0.1~0.
5重量部とすることが好ましく,この配合量が0.05重量部未満では,充分な光
感度が得られず,1重量部を超えると,それ以上感度は向上しないばかりか,めっ
き浴に対する溶解量が増大し,めっき浴の汚染が著しくなる旨の記載がある。すな
わち,同記載によれば,光開始剤(I)の含有量には下限があることになるから,
光開始剤(I)を含まないでもよいという原告の主張は失当である。
3 実施例1,2は,良好な光感度を得るために,ビイミダゾール類2.0重量
部だけでなく,光開始剤(I)を0.2重量部含有しているのであるから,光感度
と合金比率を両立させるために,実施例1,2では,所定量の光開始剤(I)の含
有が必要とされていることが明らかである。比較例2では,光感度を実施例1,2
と同じ程度に良好とするために,ビイミダゾール類を所定量より多量(5.0重量
部)に含有させており,また,レジストの線幅の差は,+10μmとなって,レジ
ストの線幅が太ってしまっており,発明の課題(光感度,合金比率,線幅の差)を
達成できていないことから,課題をすべて達成するためには,所定量の光開始剤
(I)の含有が必要とされることが明らかである。
 したがって,この線幅の差を無視して,「実施例1,2と比較例2は,同じ
程度に光感度と合金比率が優れているから,光感度と合金比率を両立させるために
は,光開始剤(I)の含有は不要である」ということはできない。
4 本件審決は,光感度,線幅の差,合金比率の3つの課題のうち,「一例とし
て」(8頁)光感度に着目して,原告の議論が成り立たないことを説明したもので
ある。すなわち,充分な光感度が得られるとすることができない以上,本願発明の
課題がすべて達成されたとはいえないので,原告(請求人)の主張は採用できない
ことを述べたものである。原告の主張するように,線幅の差,合金比率に関する記
載を無視したわけではない。
 また,本件審決は,原告の主張するように,光開始剤(I)を含有しないと
「充分な光感度」が得られないことをことさらに強調しているわけではない。原出
願当初明細書には,充分な光感度を得るには,光開始剤(I)及びビイミダゾール
類をそれぞれ所定重量部含有することが必要である旨記載されていることを指摘し
たにすぎない。
第5 当裁判所の判断
1 本願発明は,「(A)カルボキシル基を有するポリマー40~80重量部,
(B)ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート,ビスフェノー
ルAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート又はビスフェノールAデカオキシ
エチレンジ(メタ)アクリレートを含む,少なくとも1つの不飽和結合を有し,重
合可能な化合物20~60重量部((A)と(B)との総量が100重量部となるよう
にする),及び(C)ヘキサアリールビイミダゾール0.1~3.0重量部(前記
(A)と(B)との総量100重量部に対して)を含有する感光性樹脂組成物。」とい
うものである。
 一方,原出願発明は,「(A)カルボキシル基を有するポリマー40~80
重量部,(B)少なくとも1つの不飽和結合を有し,重合可能な化合物20~60
重量部((A)と(B)との総量が100重量部となるようにする),(C)一般式
(I)…で表される光開始剤を0.05~1重量部(前記(A)と(B)との総量10
0重量部に対して)及び(D)ヘキサアリールビイミダゾールを0.1~3.0重
量部(前記(A)と(B)との総量100重量部に対して)を含有する感光性樹脂組成
物。」というものである(甲4)。
 したがって,本願発明は,原出願発明のうち,光開始剤(I)に関する
(C)の構成を削除した上,ビイミダゾール類に関する(D)の構成を(C)に繰
り上げたものである。
 そして,本願明細書及び原出願当初明細書においては,本願発明,原出願発
明とも,課題及び効果に関して,「【0007】【発明が解決しようとする課題】
本発明は,前記した従来の技術の問題点を解決し,レジストの線幅が太らず光感度
が高く,しかも光開始剤のめっき液への溶出がほとんどないため,めっき液の汚染
が少ない感光性樹脂組成物及び感光性エレメントを提供するものである。」,
「【0035】【発明の効果】本発明の感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性
エレメントは,レジストの線幅が太らず,めっき浴汚染がほとんどなく,光感度が
高い優れたものである。」とされる。なお,めっき浴汚染性の指標としては,合金
比率が用いられ,その値が1に近いほどめっき浴汚染性が小さい(段落【003
2】)。
2 原告は,「原出願当初明細書の表3,表4,段落【0019】等の記載か
ら,①合金比率をよくするためにはビイミダゾール類が必須であること,②レジス
トの線幅の太りを考慮すると(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対し
てビイミダゾール類の上限は3.0重量部であり,下限は0.1重量部であるこ
と,③光感度と合金比率を両立させるためには,光開始剤(Ⅰ)の含有は必要がな
いことがわかる。したがって,①ないし③を総合すると,原出願当初明細書には,
ビイミダゾール類を所定重量部含有するのみで,光開始剤(I)を含有しないとい
う本願発明の構成も,良好な光感度,合金比率,線幅の差という課題を解決できる
ものとして記載されている。」旨主張する。
 しかしながら,以下のとおり,上記②,③の点は認められないから,原告の
上記主張は,その前提を欠き,理由がない。そして,原出願当初明細書の記載を精
査しても,「ビイミダゾール類を所定重量部含有するのみで,光開始剤(I)を含
有しない」という本願発明の構成が,良好な光感度,合金比率,線幅の差という課
題を解決できるものとして記載されているということはできないから,本願が分割
出願の要件を満たしていないとした本件審決の判断に誤りはない。
(1) 上記②について,原告は,「比較例2から,ビイミダゾール類の添加量が
多すぎるとレジストの線幅が太るため,ビイミダゾール類の含有量には上限がある
ことがわかる。そして,原出願当初明細書の段落【0019】の記載から,ビイミ
ダゾール類の上限は3.0重量部で,下限は0.1重量部であることが明らかであ
る。」旨主張する。
ア 原出願当初明細書(甲4)の段落【0019】には,「本発明における
(D)成分の配合量は,0.1~3.0重量部(前記(A)成分と(B)成分との総量
100重量部に対して)とされ,0.5~2.5重量部とされることが好ましい。
この配合量が0.1重量部未満では,充分な光感度が得られず,3.0重量部を超
えると,レジストの線幅が太くなる。」とあり,十分な光感度を得るためにビイミ
ダゾール類の配合量の下限が0.1重量部であり,レジストの線幅の太りを防ぐた
めに配合量の上限が3.0重量部であることの記載がある。
 しかるところ,原出願発明は,所定量のビイミダゾール類と光開始剤
(Ⅰ)を併用する発明であり,原出願当初明細書における発明の詳細な説明も,専
らその発明を説明するために記載されているものである以上,上記のビイミダゾー
ル類の上・下限値の記載も,両者を併用している場合について記載されているもの
と解すべきことは明らかである。
イ もっとも,仮に,光開始剤(I)の配合の有無が上記のビイミダゾール
類の上・下限値に影響を与えないのであれば,原告の主張するように,上記のビイ
ミダゾール類の上・下限値を,光開始剤(I)が配合されていない場合にも適用す
ることができることになるので,この趣旨の記載が原出願当初明細書にあるか否か
について検討する。
 上記段落【0019】の記載から,ビイミダゾール類が光感度にも関与
するものであることが認められる。
 一方,同段落【0017】には,「本発明における(C)成分の配合量
は,0.05~1重量部(前記(A)成分と(B)成分との総量100重量部に対し
て)とされ,0.1~0.5重量部とすることが好ましい。この配合量が0.05
重量部未満では,充分な光感度が得られず,1重量部を超えると,それ以上感度は
向上しないばかりか,めっき浴に対する溶解量が増大し,めっき浴の汚染が著しく
なる。」とあり,光開始剤(Ⅰ)の配合量が0.05重量部未満では,充分な光感
度が得られないことが記載されているから,光開始剤(I)も,ビイミダゾール類
と同様に,光感度にも関与するものであることが認められる。
 このように,ビイミダゾール類,光開始剤(I)とも光感度に関与する
ものである以上,段落【0019】におけるビイミダゾール類の上・下限値のう
ち,少なくとも,光感度の観点から規定されている下限値に関しては,光開始剤
(Ⅰ)の配合の有無により影響を受けることは明らかである。(なお,原告は,
「原出願当初明細書には,ビイミダゾール類の含有量と,光開始剤(Ⅰ)との関係
については,特に規定されていない。」旨主張する。しかしながら,上記のとお
り,段落【0017】【0019】の記載から,ビイミダゾール類及び光開始剤
(Ⅰ)の両者とも光感度に関係するものである以上,ビイミダゾール類の含有量
が,光開始剤(I)の配合の有無により影響を受けることは明らかである。)
 したがって,原出願当初明細書において,段落【0019】に規定され
たビイミダゾール類の上・下限値を,光開始剤(I)が配合されていない場合にも
適用することはできる旨の記載があるとはいえない。
ウ 以上のとおり,原告の上記主張は理由がない。
(2) 上記③について,原告は,「実施例1,2及び比較例2はいずれも,光感
度及び合金比率とも良好である。そして,比較例2は,実施例1,2と異なり,光
開始剤(Ⅰ)が含まれていない。したがって,光感度と合金比率を両立させるため
には,光開始剤(Ⅰ)の含有は不要であることがわかる。」旨主張する。
ア しかしながら,実施例及び比較例が記載された表3,4には,光感度が
良好である例しか開示されていないので,どのような場合に光感度が良好でなくな
るのか不明であり,結局,実施例1,2及び比較例2からは,光開始剤(I)と光
感度との関係は明らかにならない。
イ 次に,光開始剤(I)と合金比率の関係についてみると,比較例2は,
(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対してビイミダゾール類が5.0
重量部であり,本願発明に規定された量を超えてビイミダゾール類を配合している
例である(実施例及び比較例で使用されている(A)成分は固形分が合計60g,
(B)成分は固形分が合計40g(NK-4GとBPE-10の合計)であるか
ら,(A)成分と(B)成分の合計量は100gとなるところ,比較例2における
ビイミダゾール類の配合量は5.0gである。)。
 そうである以上,比較例2からは,ビイミダゾール類を所定重量部含有
し,光開始剤(I)を含有しない構成のものについて合金比率が良好であることが
開示されているとはいえない。
 なお,実施例1,2は,所定重量部の光開始剤(Ⅰ)及びビイミダゾー
ル類を併用している例であるから,これらの例からは,ビイミダゾール類を所定重
量部含有するのみで,光開始剤(I)を含有しない構成のものについて合金比率が
良好であることが開示されているとはいえない。
 したがって,実施例1,2及び比較例2により,良好な合金比率のため
に光開始剤(Ⅰ)の含有は必要ではないことが開示されたとはいえない。
ウ 以上のとおり,原告の上記主張は理由がない。
3 また,原告は,「本件審決は,①原出願発明の課題には,光感度,合金比
率,線幅の差がすべて含まれるにもかかわらず,光感度のみに着目し,レジストの
線幅,合金比率に関する記載を無視したことにより,誤った判断を導いており,ま
た,②原出願当初明細書における光感度は,実用に供しうる感度であれば十分であ
るのに,その意義を誤解して,光開始剤(Ⅰ)を含有しないと「充分な光感度」が
得られないことをことさらに強調している。」旨主張する。
(1) しかしながら,前記のとおり,本願が分割出願の要件を満たしていないと
した本件審決の判断に誤りはないから,原告の上記主張に係る点は,本件審決の結
論に何ら影響を及ぼすものでない。
(2) また,本件審決は,次のように説示して,原告(請求人)の主張を排斥し
ている。
 「原出願当初明細書では,ビイミダゾール類について,「配合量は,0.
1~3.0重量部…とされ,…この配合量が0.1重量部未満では,充分な光感度
が得られず…」との記載は,光開始剤(I)をともに含有することを前提として記
載されている。また,光開始剤(I)についても,「配合量は,0.05~1重量
部…とされ,…この配合量が0.05重量部未満では,充分な光感度が得られず,
…」との記載は,ビイミダゾール類をともに含有することを前提として記載されて
いる。
 そして,原出願当初明細書では,ビイミダゾール類,光開始剤(I)双方
が,光感度に貢献している。実際,例えば,実施例1及び実施例2では,ビイミダ
ゾール類2.0g(2.0重量部に相当),光開始剤(I)0.2g(0.2重量
部に相当)が配合されて,ともに光感度8.0であるが,光開始剤(I)を含有し
ない比較例2では,同等の光感度8.0を得るのに,ビイミダゾール類は5.0g
(5.0重量部に相当)配合することが必要となっている。…
 したがって,原出願当初明細書が,充分な光感度が得られるためには,ビ
イミダゾール類の配合量が少なくとも0.1重量部,光開始剤(I)の配合量が少
なくとも0.05重量部,必要であることを記載している場合に,光開始剤(I)
を含有しなくとも,ビイミダゾール類だけ0.1重量部含有しさえすれば充分な光
感度が得られるとすることはできない。
 すなわち,原出願当初明細書には,「本願発明の(C)成分:ビイミダゾー
ル類の上限は3.0重量部であり,下限は0.1重量部であること」が明白に認識
されていたということはできない。また,ビイミダゾール類の配合量について,光
開始剤(I)を含有しなくとも,「0.1~3.0重量部とされ」,「この配合量
が0.1重量部未満では,充分な光感度が得られず,」とする本願明細書の記載
は,原出願当初明細書の記載の範囲内であるとすることはできない。」
ア 上記説示は,原告の主張するように,光感度の点に着目して行われたも
のということができる。しかしながら,本件においては,「原出願当初明細書にお
いて,ビイミダゾール類を所定重量部含有するのみで,光開始剤(I)を含有しな
いという本願発明の構成が,良好な光感度,合金比率,線幅の差という課題を解決
できるものとして記載されているか否か」が問題とされているところ,上記構成に
より,良好な光感度,合金比率,線幅の差というすべての課題を解決できなけれ
ば,結局,上記記載がないこととなるから,上記構成により充分な光感度が得られ
ない以上,合金比率,線幅の差の点について検討するまでもなく,上記記載がない
ことになる筋合いである。したがって,本件審決が光感度の点に着目して上記説示
を行ったことは,相当なことというべきである。
イ また,上記説示において,「原出願当初明細書が,充分な光感度が得ら
れるためには,ビイミダゾール類の配合量が少なくとも0.1重量部,光開始剤
(I)の配合量が少なくとも0.05重量部,必要であることを記載している場合
に,光開始剤(I)を含有しなくとも,ビイミダゾール類だけ0.1重量部含有し
さえすれば充分な光感度が得られるとすることはできない。」とされているとこ
ろ,ここにいう「充分な光感度」とは,原出願当初明細書の段落【0017】【0
019】において,ビイミダゾール類の「配合量が0.1重量部未満では,充分な
光感度が得られず」,光開始剤(I)の「配合量が0.05重量部未満では,充分
な光感度が得られず」と記載されていることを受けたものにすぎない。したがっ
て,本件審決が,「充分な光感度」の意義を誤解して,この点をことさらに強調し
ているということはできない。
4 結論
 以上のとおり,原告の取消事由の主張は理由がなく,他に本件審決を取り消
すべき瑕疵は見当たらない。
 よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文
のとおり判決する。
  東京高等裁判所知的財産第1部
    裁判長裁判官   北  山  元  章
   裁判官     青  柳     馨
         裁判官  沖  中  康  人

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