弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件控訴を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担
とする。
理由
本件控訴の趣意は,主任弁護人村松弘康,弁護人房川樹芳,
同末神裕昭,同山下史生,同清水智,同小林由紀及び同大鹿祐
太郎連名作成の控訴趣意書,主任弁護人村松弘康作成の補充書
2通(平成16年2月6日付け及び同月19日付け)に,これ
に対する答弁は,検察官慶徳榮喜作成の答弁書に,それぞれ記
載されているとおりであるから,これらを引用する。
(以下においては,札幌市立札幌病院を「市立病院」,同病院
救命救急センターを「救命救急センター」,A,B及びCら3
名の研修歯科医師をまとめて「本件歯科医師ら」,別紙一覧表
<原判決の別紙一覧表に加筆訂正を加えたもの>番号1ないし11
の各医行為を「本件各行為」という。なお,医師法31条1項
1号とあるのは,平成13年法律第87号による改正前の医師
法31条1項1号を意味する。)
第1刑訴法378条2号の控訴趣意(公訴権濫用を理由とす
る公訴棄却の主張)について
論旨は,要するに,本件公訴提起は,可罰的違法性を欠
くという点からも刑事政策的見地からも起訴猶予とすべき
であった本件をあえて起訴した点で検察官の訴追裁量の逸
脱・濫用があり,しかも,全国の多数の病院において,歯
科医師による救命救急研修が行われている実態を無視し,
ことさらに被告人の行為のみを訴追の対象とした点で憲法
14条に違反してなされたものであって,まさに意図的か
つ恣意的な悪意の訴追で,検察官による公訴権の濫用が認
められるから,原審裁判所は,刑訴法338条4号により
公訴棄却の判決をすべきであったのに,これをしなかった
点で同法378条2号の不法に公訴を受理した違法がある,
というのである。
しかし,本件は,後述のとおり可罰的違法性が認められ
るものであり,また,医師の資格を持たない歯科医師が救
命救急臨床研修として歯科及び歯科口腔外科疾患以外の症
例に関する医行為を行ったというのであるから,刑事政策
的見地から起訴猶予が相当であったなどとは到底いえない。
さらに,本件は,研修歯科医師が救命救急センターで医療
行為を行っている旨の新聞報道を契機に札幌市が立入検査
等した結果,札幌市保健福祉局保健所長名で被告人らを北
海道札幌方面中央警察署長に告発したという経緯を踏まえ,
検察官が公訴提起したことに照らせば,検察官がことさら
悪意をもって恣意的に被告人のみを選別して起訴したとも
いえず,本件公訴提起は憲法14条に違反しない。したが
って,本件公訴提起に検察官の職務犯罪を構成するような
訴追裁量権の逸脱は全く認められず,検察官の公訴権濫用
はないから,結局,論旨は理由がない。
第2理由不備等の控訴趣意について
論旨は,要するに,原判決は,「本件各行為が医師法1
7条の禁止する行為であることは明らかであって,何ら不
明確な点はないから,同条の規定が憲法31条に違反しな
いことも明らかである。また,本件各行為を処罰すること
が,憲法22条に違反しないことも明らかである。」と判
示したが,その理由については,ほとんどあるいは全く述
べておらず,理由不備ないし審理不尽の違法がある,とい
うのである。しかし,刑訴法378条4号にいう理由不備
は,判決自体において,同法44条1項,335条1項に
より要求されている判決理由が全く又は重要部分において
欠如している場合をいうのであって,原判決がこれに当た
らないことは明らかである。そして,原審の審理に審理不
尽も認められない。結局,論旨は理由がない。
第3事実誤認等の控訴趣意について
1序論
論旨は,要するに,本件各行為は,医師法17条の構成
要件に該当しないし,違法性もないから,被告人は無罪で
あるのに,無免許医業罪の成立を認めた原判決は事実の誤
認ないし法令の解釈適用を誤っており,その誤りが判決に
影響を及ぼすことは明らかである,というのである。
そこで,検討するに,関係各証拠によれば,被告人に無
免許医業罪の成立を認めた原判決の結論は正当であり,当
審における事実取調べの結果を併せて検討しても原判決に
事実の誤認ないし法令適用の誤りはない。以下,所論に鑑
み,補足して説明する(なお,法令適用の誤りの控訴趣意
については,後述の「第4」で改めて論じることとし,こ
こでは,医師法17条の構成要件該当性の有無を検討する
のに必要な限度で論じるにとどめる。)。
2医師法17条の構成要件該当性について
論旨は,要するに,本件歯科医師らが行った本件各行為
は,いずれも実質的には背後で指揮をとっている指導医ら
の行為そのものと評価できるから,医師法17条の構成要
件に該当しない,というのである。しかし,本件各行為は,
医師の資格を持たない本件歯科医師らが自ら行った医行為
であって,指導医らの行為と評価することはできない。す
なわち,医師法17条は,「医師でなければ,医業をなし
てはならない。」と規定しているが,同条にいう「医業」
とは「医行為を業とすること」であり,「医行為」とは
「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれ
のある行為」,「業とする」とは「反覆継続の意思で医行
為を行うこと」と解すべきところ,本件各行為は,気管挿
管及び抜管,大腿静脈路確保及びカテーテルの抜去,腹部
触診,手術の説明及び同意の取付け,大腿動脈血栓除去等
手術における筋鉤使用等による手術補助等であり,いずれ
も医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれ
のある行為といえる。そして,歯科医師の研修が,医師の
行う医行為の純然たる見学にとどまるときは,歯科医師が
医行為をしたとは認められないから医師法17条の構成要
件該当性を欠くといえるが,歯科医師が自ら患者に対する
医療行為に関与する場合,それが医行為と判断される以上,
関与の程度を問わず,歯科医師自身が医師法17条の医行
為を行ったとみるべきである。このことは,例えば,外科
手術の実施主体は術者(執刀医)であり,第一助手は術者
を補助する立場にあるから第一助手の行為は手術全体から
みれば補助行為といえても,被告人も外科手術における第
一助手の重要性を認めるとおり,手術における第一助手の
役割の重要性及びその手技が患者に向けられていることに
鑑みると,医師法上,第一助手の行為は術者の医行為(執
刀行為)とは別個独立に評価されるべきであって,まさに
それ自体が医行為というべきであることからも明らかであ
る。所論は,歯科口腔外科に属する診療行為は,悪性腫瘍
等の外科手術やこれに伴う全身麻酔等の全身管理に及んで
おり,本件各行為も歯科口腔外科医である本件歯科医師ら
が,研修として歯科口腔外科に属する診療行為を行ったま
でである,そして,歯科口腔外科医が,歯科口腔外科領域
に必要不可欠な研修を行うことは,研修場所が歯科である
か医科であるかを問わず,歯科医学の進歩と国民に対する
安全な歯科医療の提供という観点から,社会的に認められ
ている行為であって,目的・範囲・方法において相当な研
修と認められる歯科口腔外科医による本件各行為は,医師
法17条の医業には該当しない,という。しかし,本件各
行為は,歯科口腔外科に属する診療行為ではなく,医科に
属する診療行為であったことは明らかであるから,所論は
前提において採用できない。また,そもそも,歯科口腔外
科医による歯科口腔外科領域に属する行為の研修は,本来,
歯科口腔外科や歯科大学・歯学部の付属病院等における歯
科及び歯科口腔外科疾患の患者に対する診療行為の中で行
われるべきものであり,歯科医師が,医科の病院等におい
て,歯科及び歯科口腔外科疾患以外の患者に医療行為を行
うことは,それが歯科口腔外科で日常的に行われている手
技であり,かつ,研修を目的として行われたものであった
としても,医師法17条の構成要件該当性を阻却すること
にはならない。
以上によれば,本件各行為は,医師法17条の医業に当
たり,同条及びその違反行為の処罰規定である同法31条
1項1号の構成要件に該当することは明らかである。医師
法17条の構成要件該当性を認めた原判決に事実の誤認及
び法令の解釈適用の誤りはなく,論旨は理由がない。
3違法性阻却事由について
(1)序論
論旨は,要するに,本件歯科医師らによる本件各行為
は,研修としての必要性があり,その目的が正当で,手
段も相当なものであったから,社会的相当性が認められ,
刑法35条により違法性が阻却される,というのである。
そこで,検討するに,確かに,後述のとおり歯科医師
に対する医科救命救急部門における研修は,一定の要件
を満たせば,社会的相当性が認められ,正当行為として
刑法35条により違法性が阻却される場合があるといえ
るが,本件各行為は,いずれも社会的相当行為とはいえ
ず,違法性は阻却されない。所論に鑑み,以下,補足し
て説明する。
(2)歯科医師の医科救命救急部門における研修の要否,可
否等について
ア救命救急研修の必要性と目的
所論は,歯科医師は,中枢神経系疾患等の有病者及
び寝たきり患者等のハイリスク患者に対する歯科治療
の場合や日常診療における患者の予期せぬ事態が発生
した場合に備えて,急変患者の重症度及び緊急度の評
価並びに救急処置を含む緊急対応を行う必要があり,
ことに歯科口腔外科医にとっては,一般の歯科以上に
その必要性は高いといえるが,その習得には医科にお
ける研修が必須である,また,歯科口腔外科医が,医
科の領域と重複する口腔外科領域の外科的治療を安全
に行うためには,救急病態の理解,気道確保等の応急
処置,全身管理の技術が必要であるが,歯科口腔外科
領域においては,その研修に必要な症例数を確保でき
ないから,これらの技術の習得のためには,医科の救
命救急の分野における臨床研修が不可欠である,そし
て,歯科医師の救命救急部門における研修は,これら
の必要性から歯科医療の安全性及び質の向上を図ると
いう目的に基づき,適切な研修方法の下で行われてお
り,現に本件でも医療事故は全く発生しておらず,患
者の治療に何らの支障も不利益も生じていないから,
本件歯科医師らによる本件各行為はその目的及び手段
が正当なものであって,社会的相当性が認められる,
という。なるほど,歯肉疾患の治療等外科的手術等を
行う歯科口腔外科はもとよりいわゆる一般の歯科であ
っても,日常の歯科診療において患者が急変し,生命
や機能的予後に係わる緊急を要する事態に至る可能性
があり,高齢化社会を迎え,高齢者や有病者等に対す
る歯科診療の必要性がますます高まっている現状に鑑
みると,歯科医師がそのような緊急事態に直面する可
能性は今後ますます増加すると思われるが,より安全
な歯科医療を国民に提供するためには,歯科医師(歯
科口腔外科医を含む。)が上記のような緊急事態に適
切に対処できる判断力や技術力を身に付ける必要があ
り,そのための研修を受ける必要性が認められる。も
っとも,その研修は,歯科医師が歯科医行為を行うに
当たって直面する患者の急変等の緊急事態に適切に対
処できるようにするためのものであるから,本来,歯
科口腔外科や歯科大学・歯学部の付属病院等における
歯科及び歯科口腔外科疾患の患者に対する症例の中で
なされるべきであるが,所論もいうように歯科(歯科
口腔外科を含む。)における緊急事態の症例数に鑑み
ると,医科において救命救急研修を受けることにも相
応の理由があり,①研修施設は,研修を実施できる人
的・物的規模の整った医療機関であること,②当該医
療機関には相応の臨床経験等を有する医師が指導に当
たることを内容とする指導体制が整っていること,③
当該医療機関によって歯科医師が研修を受けるにふさ
わしい資質及び能力を有すると認められた者であるこ
と,などの条件を満たせば,歯科医師が医科救命救急
部門において救命救急研修を受けることも許容される
というべきである。
とはいえ,歯科医師に無制限の研修が許されるわけ
ではなく,その研修が社会的相当行為として違法性が
阻却されるためには,研修の必要性が認められるほか,
研修の目的が正当であり,かつ,研修の内容や方法が
その目的を達成する手段として相当なものでなければ
ならない。そして,ここでいう研修の目的とは,歯科
医師(歯科口腔外科医を含む。)が歯科医行為を行う
過程で患者が急変し,生命や機能的予後に係わるよう
な緊急事態に直面した際,専門医に引き継ぐまでの間
になされる救命救急処置を習得させ,もって,歯科医
療の安全性及び質の向上を図ることにある。そうする
と,研修の内容や方法は,このような研修目的を達成
するのに相当といえる範囲内にあることを要する。所
論は,歯科口腔外科医が歯科口腔外科領域に属する技
術を習得することも研修の目的に含まれる,という。
しかし,本来,歯科口腔外科領域に属する技術の習得
のための研修は,歯科口腔外科や歯科大学・歯学部の
付属病院等で行われるべきである。医科救命救急部門
における救命救急研修は,通常,歯科及び歯科口腔外
科疾患以外の患者に対する医行為に関与する形でなさ
れるものであり,しかも,その医行為の対象者の多く
は,緊急の対応を要する重篤患者で,生命の危機に瀕
した者も含まれるから,このような場でかかる患者を
対象に,救命救急処置の習得とは何ら関係のない歯科
口腔外科領域に属する技術の習得のみを目的に歯科医
師が医行為を行うことは,たとえ,それが研修として
であったとしても許されないというべきである。もっ
とも,所論もいうように歯科口腔外科領域に属する歯
科医行為は,医科救命救急部門においてなされる医行
為と手技としては共通ないし類似のものがあるのも事
実であり,患者の急変による緊急事態に対応するため
の救命救急処置を習得するという正当な目的に基づい
て現に医科救命救急部門で研修を受けている歯科医師
(歯科口腔外科医を含む。)については,歯科(歯科
口腔外科を含む。)診療の現場で歯科医行為として行
うであろう行為が現に研修先の医科救命救急部門で実
施されているのに,その行為に研修として関与するこ
とは目的外研修として一切許されないとすることは硬
直に過ぎ,むしろ,例外的にこのような研修を許容す
ることが歯科医療の安全性及び質の向上につながると
もいえる。したがって,一定の範囲内でこれらの研修
も許容される場合もあるというべきであるが,これは,
あくまで救命救急研修の例外として認められるもので
あり,その要件を厳格に画さないとなし崩し的に際限
のない研修に至ることが懸念され,患者の権利保護の
観点からも問題があることなどに照らすと,その研修
の内容及び方法は,侵襲度,難易度,歯科診療の現場
で歯科医行為として実施される頻度,歯科医師に当該
技術を習得させる重要度,患者の権利等を総合考慮し
た上で認められる合理的な範囲に限られるべきであっ
て,例えば,そのような観点から策定された後述のガ
イドラインに従ってなされたような場合,研修として
許容されるというべきである。所論は,原判決は,研
修歯科医師に医師の資格を持つ者と全く同様の研修を
行わせるという方法をとることは許されないと判示す
るが,歯科口腔外科医が日常的に行っている歯科口腔
外科の手技は,医科の現場で外科医が行っている医行
為でもあり,歯科医師が歯科口腔外科領域における医
行為を保健衛生上の基準を逸脱することなく安全に行
いうるためには,歯科医師の歯学的判断及び技術だけ
では足りず,医師の医学的判断及び技術が必要である
から,歯科口腔外科領域を担当する歯科医師は,医師
と同一の判断力,技術力を身につけなければならず,
そのためには,医師と同じ内容・方法で研修する以外
に方法がない以上,歯科口腔外科医に医師の資格を持
つ者と同様の研修を行わせることは社会的相当性が認
められる,という。しかし,この所論は,歯科口腔外
科医は無条件に医科での研修が許容されるというに等
しく,医師と歯科医師の資格を峻別する法体系からし
て到底容認できない。加えて,すでに説示したとおり,
歯科医師の医科救命救急部門における救命救急研修が,
歯科及び歯科口腔外科疾患以外の患者に対する医行為
として行われる行為に係わるもので,かつ,生命の危
機に瀕する重篤患者等を対象としたものであること,
歯科医師が緊急事態への対応方法を習得するために例
外的に許容されるものであることからしても所論は採
用できない。
イ救命救急研修の内容及び方法
研修の内容や方法が研修目的を達成する手段として
相当なものといえるかを検討するに,一般に,医科救
命救急部門における歯科医師の研修は,すでに述べた
とおり患者が急変し,生命や機能的予後に係わる緊急
事態に適切に対処できる判断力や技術力を習得させる
ことを目的になされるものであるから,視診・触診等
の診察,気管挿管等の気道確保,人工呼吸や呼吸管理,
除細動・静脈路確保等の循環補助等通常救命救急処置
ないしこれに類する行為としてなされる行為を内容と
し,これを後述のガイドラインの研修水準にあるよう
に,医行為の侵襲度及び難易度,歯科医師の実施可能
性,患者の権利保護等を総合考慮して決せられる①指
導医の指導・監督があれば,研修歯科医師が実施する
ことが許される行為,②指導医が介助する場合に限り,
研修歯科医師が実施することが許される行為,③指導
医が行う行為をその指示に従って補助する行為,④指
導医が行う行為を見学するにとどめる行為,に分けて
検討することが可能である。④の見学にとどめる行為
が医師法17条の構成要件に該当しないこと,研修歯
科医師が実施主体となる①(指導・監督)及び②(介
助)はもとより,指導医が実施主体となって行う行為
を補助する③の場合であっても研修歯科医師が自ら患
者に対し医療行為を行う場合にはその行為は指導医の
行為とは別個独立に医行為と判断されることはすでに
述べたとおりである。そして,研修の目的を達成する
ためには,見学にとどまらず,研修歯科医師自身の手
で研修の内容となる行為を行う必要が認められるから,
一定の行為については,研修歯科医師が自ら医行為を
行うことも許されるというべきである。もっとも,そ
の場合には,慎重な上にも慎重な取扱いを期すべきで
あって,患者の権利保護の観点からいっても,それは,
医科救命救急部門の医師による診療が行われているの
と同視できる状況になければならない。そのためには,
②(介助)の場合はもとより①(指導・監督)の場合
であっても,指導医は,研修歯科医師が当該医行為を
実施していることを現に認識し,かつ,必要があれば,
当該医行為を直ちに制止し,あるいはこれに介入でき
る状況にあることを要するというべきである。所論は,
医療現場で役立つ知識や技術は,医療現場を見学した
だけでは身に付かない,医学生や医師の研修が実際に
医行為を行わせる参加型とされているように,歯科医
師の救命救急研修もまた参加型でなければならず,指
導医の現認と制止・介入を要件としたのでは研修の目
的を達せられない,という。また,後述のガイドライ
ンの作成に係わった県立D病院救命救急センター医師
Eも,意見書において,①の指導・監督の程度につき,
少なくとも救急救命士と同程度のメディカルコントロ
ール体制の下で研修が行われるならば,必要に応じて
直ちに研修の制止や介入ができる範囲内に常時指導医
がいることまでは要求されない旨述べている。しかし,
所論やE医師の見解は,研修の必要性を強調する余り,
歯科医師の医科救命救急部門における研修が医師の資
格を持たない歯科医師による歯科及び歯科口腔外科疾
患以外の患者に対する医行為としてなされることを看
過するものといわざるを得ない。また,所論は,救急
救命士は気管挿管や一定の薬剤投与等が認められ,看
護師は静脈注射を打てるなど,医師でない者であって
も一定の条件の下で行うならば医師法17条の違法性
が阻却されるとの行政解釈がとられていることに照ら
すと,歯科医師の医科救命救急部門における研修もこ
れと同程度の独立性をもって行うことが許容される,
という。しかし,救急救命士は,救急救命士法,省令
等によって一定の限度で薬剤を用いた静脈路確保のた
めの輸液や気管挿管等の救急救命処置を行うことが認
められており(同法43条,44条),また,看護師
についても保健師助産師看護師法等により医師の診療
の補助ができるほか,医師の指示があれば医行為(救
命救急医行為を含む。)をすることが認められている
(同法5条,37条)。このように,救急救命士も看
護師も一定の限度で医科の現場における救命救急医行
為を行うことが法令によって許容されており,そのた
めの法律上の資格を与えられているのであって,この
点が医科の現場において,医行為を行う資格を持たな
い歯科医師と大きく異なる。したがって,一定の限度
で,救急救命士が気管挿管等を,看護師が静脈注射等
を,それぞれ自ら行えるからといって,医科救命救急
部門における歯科医師の研修行為をこれと同列に論じ
ることはできない。
ところで,研修方法が研修目的を達成する手段とし
て相当なものといえるためには,以上の点に加えて,
患者の権利・利益を害しないことが不可欠である。そ
して,この観点からは,インフォームド・コンセント
に代表される医療機関による説明と患者の同意が重要
であって,この趣旨からすると,少なくとも当該医療
機関は,研修歯科医師が歯科及び歯科口腔外科疾患以
外の症例に関する医療行為に関与する場合には,研修
歯科医師の身分等を患者,その家族,代諾者等(以下
「患者等」という。)に説明し,原則として,自由な
意思に基づく承諾を得ることを要するというべきであ
る。所論は,国民に研修の意味や重要性,安全性等に
ついての理解が十分にない現状で患者に歯科医師であ
ることを告げたならば,多くの場合拒否されることが
予想され,研修自体が成り立たない可能性が高いから,
患者等に十分な説明を行わず,明確な承諾を得たとは
いえないまま歯科医師が研修として医行為を行ったと
しても,それが,指導医の適切な指導・監督下におい
て安全性が十分に確保された中で行われた場合には,
必ずしも違法とはいえない,という。しかし,医科救
命救急部門に搬送される患者やその家族は,誰もが資
格を有する医師による救命救急処置を受けられるもの
と信じているのであり,いかに研修の必要性を強調し
ても,この信頼を医師・歯科医師側の一方的都合によ
り裏切ることは許されない。そもそも研修は,医師と
患者の相互の理解と信頼の上に成り立たねばならず,
そのためには,当該医療機関が,患者等に対し,研修
歯科医師が医療行為に関与する旨を説明し,原則とし
てその承諾を得なければならないのは当然のこととい
える。仮に,承諾を拒否されたなら研修を断念すべき
であって,拒否されることが予想されるから,患者等
に十分な説明をせず,承諾を求めないことも許される
というのは,患者の権利を否定するに等しい本末転倒
の論理であり,「医師(中略)は,医療を提供するに
当たり,適切な説明を行い,医療を受ける者の理解を
得るよう努めなければならない。」という医療法1条
の4第2項の趣旨にもとるものである。
(3)本件各行為について
本件各行為は,いずれも医師の資格を持たない本件歯
科医師らが,救命救急センターにおいて,研修として歯
科及び歯科口腔外科疾患以外の患者に対し,医行為を行
ったものである。本件歯科医師らが救命救急センターに
おいて救命救急研修を受ける必要性が認められること,
市立病院は医師法に基づく臨床研修指定病院であり同病
院副院長を長とするレジデント教育委員会の設置及び臨
床経験豊富な指導医による指導体制等研修を実施できる
人的・物的規模が整っていること,本件歯科医師らは研
修を受けるにふさわしい資質と能力を有する者らである
と市立病院において判断されていたことが認められるか
ら,本件歯科医師らが,救命救急センターにおいて救命
救急研修を受けること自体は正当な理由があるといえる。
しかしながら,本件歯科医師らが行った研修の内容や方
法をみると,本件歯科医師らは,突発的な事態に緊急に
対応することが強く要請される救命救急センターにおい
て,歯科及び歯科口腔外科疾患以外の患者に対し,医師
の資格を持つ研修医と何ら区別されることなく,これと
同様の立場で医行為を行っていたものであって,このこ
と自体,三次救急医療機関である救命救急センターにお
ける歯科医師の研修方法としては極めてずさんであり,
研修の体をなしていないといわざるを得ない。その意味
で,本件各行為の実質的危険性の有無及び程度を検討す
るまでもなく社会的に見て許容される範囲を逸脱してお
り,正当行為と評価できないとした原判決の認定・説示
は首肯しうるものである。もっとも,所論は,本件各行
為を個別に見れば,まさに研修といえるものであり,研
修の目的を達するために必要不可欠なものである上,実
質的危険性もなかったというので,念のため検討するに,
本件各行為は,いずれも本件歯科医師らが自ら実施主体
となって医行為を行った場合であるが,例えば,大腿動
脈血栓除去等手術の補助(別紙番号4),チューブ抜管
(同6)及びカテーテル抜去(同5,7)は,そもそも
研修の目的を逸脱しており,手術内容等の説明や同意の
取付け(同3,8,9)は,患者の権利保護の観点から
研修歯科医師が自ら行うことができず,見学にとどめる
べき行為であり,気管挿管,静脈路確保及び腹部触診
(同1,2,10,11)は,指導医が必要に応じて本件歯
科医師らによる医行為を直ちに制止し,あるいはこれに
介入できる状況の下でなされていなかったことに加え,
本件各行為のほとんどは患者等に対する歯科医師である
ことの説明及び承諾がなされていなかったものである。
したがって,本件各行為は,いずれも社会的相当行為と
いうことはできず,違法性は阻却されない。
なお,所論は,仮に違法性が認められるとしても軽微
であって,目的及び手段の正当性を勘案すれば到底処罰
に値せず,可罰的違法性がない,という。しかし,本件
各行為は,医師の資格を持たない本件歯科医師らが救命
救急の現場で歯科及び歯科口腔外科疾患以外の患者に医
行為をなしたものであり,3人の歯科医師により長期間
にわたって反覆継続的に行われていた行為の一環である
ことに鑑みると処罰に値しないとは到底いえず,可罰的
違法性が認められる。
(4)ガイドラインからの検討
原判決後,厚生労働省医政局医事課長及び同局歯科保
健課長連名の平成15年9月19日付け「歯科医師の救
命救急研修ガイドライン」(以下「ガイドライン」とい
う。)が都道府県衛生主管部(局)長宛てに発出され,
歯科医師の救命救急研修の在り方が示された。
所論は,ガイドラインは,そこに示された基準を一応
の目安として研修を行っていれば行為の違法性が阻却さ
れると思われる標準的なものを示した目安と解すべきで
あり,本件各行為は,そのような性格を有するガイドラ
インに照らしてみてもその基準を実質的に充足しており,
社会的相当行為として違法性が阻却される,という。し
かし,医師法と歯科医師法によって医師と歯科医師の資
格を厳格に峻別している現行の法体系がいわば行政指導
ともいうべきガイドラインによって変容されることはあ
り得ず,ガイドラインが歯科医師に医行為を行う資格を
与えたものでないことも当然であって,このことは,ガ
イドライン自体に「研修といえども医療行為を伴う場合
には,法令を遵守しながら適切に実施する必要がある。
特に歯科及び歯科口腔外科疾患以外の患者に対する行為
では,慎重な取扱いを期すべきである。」と規定されて
いることからも明らかである。そうすると,本件各行為
は,すでに認定・説示したとおり社会的相当性が認めら
れず,違法性が阻却されないからガイドラインの策定に
よってこの結論が左右されることはない。もっとも,弁
護人及び検察官は,控訴趣意書(補充書を含む。)及び
答弁書並びに各弁論要旨において,本件各行為がガイド
ラインの基準に適合するか否かを積極的に論じているの
で,念のため,ガイドラインに照らしてみても本件各行
為がその基準を逸脱した違法なものであることを補足し
て説明しておく。
ア気管挿管,静脈路確保(別紙番号1,2,11)
Aは,Fに対し,救急自動車内等において,気管挿
管,左大腿静脈路確保等(別紙番号1)を,Gに対し,
同人方等において,気管挿管,静脈路確保等(同2)
を,CはHに対し,救急自動車内等において,右大腿
静脈路確保等(同11)の各医行為を行ったが,ガイド
ラインの研修水準はいずれも「B」(研修指導医又は
研修指導補助医師が介助する場合,実施が許容される
もの)とされている(なお,Gに対する静脈路確保は,
証拠上,どの部位で静脈路を確保したか明らかでない
ため,ガイドラインの研修水準上,最も被告人に有利
となる大腿静脈路確保であったとして論を進める。)。
所論は,①ガイドラインの研修水準AないしDは,
研修の進行による手技の習熟度の向上に応じて,指導
医の判断により,補助の度合い,介助の度合いは緩め
られることが可能かつ必要であり,例えば,Bの「介
助」を要する手技を習熟度に応じてAの「指導・監
督」に移行するようなステップアップも許される,A
もCも市立病院麻酔科研修での気管挿管及び中心静脈
路確保の研修を十分に受けており,その経験と技量を
有する両名については,心肺停止の患者を処置するに
際し,指導医は,その責任と判断において,介助
(B)ではなく,指導・監督(A)を選択することも
許されたものである,②気管挿管及び中心静脈路確保
は,世界標準マニュアルとされる2000年ACLS
ガイドラインによって,心肺停止患者に対する定型的
な処置とされており,習得した者にとっては機械的手
技であり,A及びCは,これらの手技を単独で行える
までに達していたし,救急自動車内では携帯電話や救
急隊の無線を通して,二重の方法で市立病院の指導医
と連絡を取れたことなどに照らすと,指導医は,A及
びCの本件各行為を実質的に機械的な作業とみなしう
る程度まで管理・支配を及ぼしていたと評価できるの
であって,まさに介助(B)に該当し,ガイドライン
の基準に合致する,という。しかし,①については,
ガイドラインの研修水準は,研修の必要性や患者の権
利,医療行為の侵襲度及び難易度,歯科医師が医科救
命救急部門で研修を受けている実態及び研修内容等を
総合考慮し,厚生労働省が守るべき最低限の基準とし
て合理的に定めたものであって,このことは,ガイド
ラインに「研修実施に当たっては,(中略)必要に応
じて別紙1に定める基準よりも厳格な指導・監督を行
うなど,患者の安全に万全を期すこと」と規定し,よ
り厳格な水準に変更することはできても,より緩やか
な水準に変更することはできない旨定めていることか
らも明らかである。しかも,厚生労働省は,当裁判所
からの照会に対し「指導水準は,各手技について,侵
襲度,難易度,歯科医師の実施可能性等に基づいて定
められたものであるので,研修指導医等の裁量で,指
導・監督の程度を弱める方向に変更することはできな
い。」と回答している。したがって,指導医の判断で
研修水準を緩やかな方向に変更することは許されない
から,所論はそもそも採用できない。また,②につい
ては,いかに救急自動車内に携帯電話機や無線機があ
ったとしても,AやCが救急自動車内や患者方で医行
為を行った際,そこに医師は1人もいなかったのであ
って,研修水準「B」の指導医の介助という要件を満
たさないのは明らかである。ちなみに,仮に所論のい
う研修水準「A」の指導・監督でよいとの見解に立っ
たとしても,指導医が必要に応じてAやCの行う医行
為を直ちに制止し,あるいはこれに介入できる状況に
はなかったからその要件を満たさないことは明らかで
ある。この点からも所論は採用できない。
イ手術の補助(別紙番号4)
Aは,Iに対し,市立病院において,右大腿動脈血
栓除去等手術の第一助手として筋鉤を用いるなどする
ことによる手術の補助の医行為を行ったが,この行為
はガイドラインの研修項目に規定されていない。
所論は,本件行為は,ガイドラインの「その他の処
置2」の「創洗浄,創縫合(歯科口腔外科以外で単純
なもの)」に当たり,研修水準は介助(B)である,
本件行為は,筋鉤を用いた術野の確保,ガーゼやピン
セットでの血液の除去等全くの補助的行為であり,到
底危険を伴うものでなく,Aは,指導補助医であるJ
医師の面前で,同医師が執刀する手術の助手として本
件行為を行ったのであり,同医師はAの行為を実質的
に機械的な作業とみなしうる程度まで管理・支配を及
ぼしていたから,介助(B)の要件を満たしていた,
という。しかし,本件行為は,ガイドラインを持ち出
すまでもなく,歯科医師(歯科口腔外科医を含む。)
が歯科医行為を行う際,突発的に生じうる患者の緊急
事態に適切に対処し,専門医に引き継ぐまでの救命救
急処置を習得させるという研修の目的とは全く無関係
であって,研修の必要性も研修目的の正当性も認めら
れない。ガイドラインに規定されていないのはこのよ
うな趣旨によるものと認められるのであり,現に厚生
労働省も本件行為はガイドラインに規定がなく研修と
して想定されていないとの見解を示している。もとよ
り本件行為が「創洗浄,創縫合」と同視できないこと
は明らかである。所論は採用できない。
ウカテーテル抜去及びチューブ抜管(別紙番号5ない
し7)
Bは,Kに対し,市立病院において,右大腿静脈
(別紙番号5)及び左橈骨動脈(同7)からの各カテ
ーテル抜去並びに気管挿管したチューブの抜管(同
6)の各医行為を行ったが,これらの行為はガイドラ
インの研修項目に規定されていない。
所論は,カテーテル抜去及びチューブ抜管は大腿静
脈路確保及び気管挿管に付随する行為であり,いずれ
もすでに刺入部に挿入されたカテーテルを抜くだけ,
あるいは,すでに気管に挿入されたチューブを抜くだ
けの行為であって,大腿静脈路確保や気管挿管よりも
格段に容易な手技であるから,研修水準としては,こ
れらの研修水準として定められている介助(B)とな
るが,Bの経験・技量を考慮すると指導・監督(A)
で足りると解すべきである,また,左橈骨動脈からの
カテーテル抜去はその手技が基本的に大腿静脈からの
カテーテル抜去と同様であるから,これに準じて指導
・監督(A)で足りると解すべきである,そして,い
ずれの行為も指導医の指導・監督の下に行われたもの
であるからガイドラインの要件を満たしている,とい
う。しかし,歯科医師に医科救命救急部門における救
命救急研修が許されるのは,歯科医行為を行うに当た
って,患者の急変による緊急事態に対応するための救
命救急処置を習得させる必要があるからであり,かつ,
原則としてそれに必要な限度で研修が許されることは
すでに述べたとおりである。大腿静脈路確保や気管挿
管は救命救急処置として歯科医師に習得させる必要の
ある行為といえても,カテーテル抜去及びチューブ抜
管は医科救命救急部門において,あえて研修をさせる
必要性までは認められない。歯科医師が医科救命救急
部門で研修として医行為を行えるのは例外的措置であ
ることや患者の権利を考えると,ガイドラインは歯科
医師が救命救急研修として行える行為を限定的に列挙
したものと解すべきであり,カテーテル抜去及びチュ
ーブ抜管は静脈路確保や気管挿管に付随する行為とし
て当然に許されるというような類推解釈や拡張解釈は
許されないというべきである。現に,厚生労働省もカ
テーテル抜去及びチューブ抜管はガイドラインに規定
がなく研修として想定されていないとの見解を示して
いる。所論は採用できない。
エ腹部触診(別紙番号10)
Cは,Lに対し,市立病院で腹部触診の医行為を行
ったが,ガイドラインの研修水準は「A」(研修指導
医又は研修指導補助医師指導・監督下での実施が許容
されるもの)とされている。
所論は,Cは,指導医であるM医師の指示に従って
Lの腹部を触診し,温度板を見て4日間便が出ていな
いことを確認し,M医師に浣腸することを提案し,同
医師も自ら触診して浣腸の実施を看護婦に命じるよう
にCに指示したのであって,こららの事情によれば,
本件医行為は,指導医の指導・監督下において適切に
行われたものである,という。しかし,Cは,Lの主
治医として,これまで腹部触診をほぼ毎日行ってきた
ところ,本件行為もその一環としての行為であって,
M医師の指示があったとはいえ,それは包括的な指示
に過ぎず,本件時に腹部触診を行うか否か,どのよう
にして行うかは,Cが自ら判断して決めていたもので
ある。現に,本件行為の際,M医師をはじめ指導医は,
その場におらず,Cが本件行為を実施していることを
認識していたとは認められず,かつ,指導医は,必要
があれば,Cの当該医行為を直ちに制止し,あるいは
これに介入できる状況にもなかったから,結局,本件
行為は,指導・監督(A)の要件を満たしていない。
厚生労働省も本件行為に関して同旨の見解に立ってい
る。所論は採用できない。
オ手術の説明及び同意の取付け(別紙番号3,8,
9)
市立病院において,AはIの親族に対し,下大静脈
フィルター挿入手術等の説明及び同意の取付けの医行
為(別紙番号3)を,BはNの親族に対し,脳圧セン
サー設置術等(同8)及び気管切開術(同9)の説明
及び同意の取付けの各医行為をそれぞれ行ったが,ガ
イドラインの研修水準はいずれも「D」(見学にとど
めるもの)とされている。
所論は,①歯科口腔外科領域以外の説明と同意は,
研修水準「D」として見学にとどめることになってい
るが,輸血と気管切開は歯科口腔外科において当然実
施されているものであり,ガイドラインには歯科口腔
外科領域のものに関する説明と同意の規定はないもの
の,この点,E医師は意見書において,指導・監督
(A)で足りると述べ,かつ,当審において,「歯科
口腔外科領域のものであれば言わずもがなであるよと
いう意味です。」と供述しているのであって,AやB
は,指導医の監督の下,指示を得て行っており,適切
な指導・監督下になされた行為といえる,②下大静脈
フィルター挿入手術や脳圧センサー設置術は,歯科口
腔外科においてなされておらず,歯科口腔外科領域以
外の説明と同意として見学(D)に当たるようにもみ
えるが,説明及び同意は,究極的には患者の生命身体
の安全を確保することにあるから,手術を行う者,行
いうる者以外の者が説明をした場合であっても,患者
の生命身体の安全が確保されていれば,本件行為時に
おいては適法であったというべきであり,AやBは,
作成した同意書を事前に指導医に確認してもらい,指
示を受けたことをそのまま患者の家族に伝えただけで
あり,説明とはいってもその実態は,指導医のメッセ
ンジャー(伝達者),代読ともいうべきものであって
AやBの主観的判断が混入する余地は全くなかったし,
指導医は,当時救命救急センター内におり,必要があ
れば1分以内にかけつけることができる場所にいたた
め患者の家族から予定外の質問が出てもAやBはただ
ちに指導医に確認することが可能であり,患者の安全
は担保されていたから違法性は阻却される,という。
しかし,手術は,一般に侵襲度も危険性も高いから,
患者及びその家族は,その必要性と危険性を十分に理
解した上でなければ同意するか否かを決することはで
きない。したがって,手術の説明及び同意の取付けは,
主治医ないし執刀医である医師自らが行うべきであっ
て,このことは,歯科口腔外科領域の内外を問わない
というべきである。手術の説明及び同意の重要性に鑑
みると患者やその家族は,主治医又は執刀医である医
師から直接説明を受け,これらの医師に直接質問する
権利を有するのであって,所論のいうようなメッセン
ジャー論は患者の権利保護の観点に照らし到底認めら
れない。そうすると,研修歯科医師に手術の説明及び
同意の取付けをさせることはできないというべきであ
って,その研修は,手術が歯科口腔外科の領域内か領
域外かを問わず見学(D)にとどめるべきものである。
所論は,歯科口腔外科領域の説明と同意はガイドライ
ンに規定されていないというが,ガイドラインの「文
書の記載・作成4」の研修項目をみると「説明と同意
の実施」には「*歯科口腔外科領域以外のもの」との
限定が付されていないから,ガイドラインは「説明と
同意の実施」については他の*印の付されていない研
修項目と同様に歯科口腔外科領域の内外を問わず,研
修水準「D」(見学)として扱う趣旨であることは明
らかである。厚生労働省も輸血及び手術の説明と同意
の取付けは,見学(D)であり,A及びBの本件各行
為はその要件を満たしていないとの見解に立っている。
なお,Iに関する手術同意書及び輸血同意書,Nに関
する脳圧センサー設置術及び気管切開術の各手術同意
書の主治医氏名欄や担当医師氏名欄にはそれぞれAや
Bの氏名が記載されているが,これをもって,両名が
手術等の説明及び同意の取付けを適法になしうる主治
医であったと評されないことはもちろんである。
カ歯科医師であることの説明と患者等の承諾
以上のとおり,本件各行為は,いずれもガイドライ
ンの研修項目及び研修水準の要件を満たしておらず,
患者等に歯科医師であることを伝えること及び原則と
してその同意を得ることというガイドラインの要件の
充足の有無を検討するまでもなく,ガイドラインに適
合しないことは明らかである。所論に鑑み,なお,念
のため,歯科医師であることの説明及び患者等の承諾
の要件につき検討するに,ガイドラインは,「①当該
医療機関による歯科医師が救命救急研修を受けている
ことの明示,②当該医療機関による歯科医師であるこ
との患者,患者家族,代諾者等への伝達と原則として
その同意」が必要であるとしているが,これは,ガイ
ドラインが上記(2)で述べたとおり患者の権利・利益
保護の観点から社会的相当行為として違法性が阻却さ
れるために必要と考えられるところを要件化したもの
と考えられる。本件では救命救急センターにおいて①
の「明示」も②の「伝達」もなされておらず,当然
「同意」も認められない。所論は,被告人の当審公判
供述に依拠して,本件歯科医師らは,胸に「口腔外
科」の表示のあるプレートを装着するか,縫い取りの
ある上衣を着用していたから,歯科医師であることを
「明示」し,「伝達」していたといえる,という。し
かし,I(別紙番号3,4)及びその妻Oは,Aがネ
ームプレートを付けていたかどうか覚えていないが,
「口腔外科」は歯科のことだということを当時から分
かっていたので,仮にそのプレートに気付けば歯科医
師だと分かったはずだと述べており,また,K(別紙
番号5ないし7)の孫Pは,当時看護婦であったこと
からKの容態についてBに医学的な質問をし,そのと
きに感じたBの医師としての能力や印象について警察
官調書で詳細に供述しているが,そのPでさえも,当
時,Bを医師だと思い込んでいたことからすると所論
のいうネームプレートや縫い取りによる「口腔外科」
の表示が確実になされていたかは相当に疑わしい。仮
にそのような事実があったことを前提にしても,それ
だけでガイドラインの「明示」と「伝達」があったと
いうのは困難である。すなわち,上記のI夫妻及びP
に加え,F(別紙番号1)の父Q,L(別紙番号10)
の子R及びHの妻Sは,いずれも本件当時,本件歯科
医師らが歯科医師だと気付かなかったものであり,歯
科口腔外科の診療科名が歯科医業の標榜科名となった
のが平成8年8月であったことを併せ考慮すると,仮
に所論のいう「口腔外科」の表示があったとしても医
療関係者でない一般人にとって,医科救命救急部門で
研修医と区別されることなく研修を受けていた本件歯
科医師らを歯科医師と判断できなかったとしても無理
からぬものがある(なお,Bは,原審公判廷において,
平成11年10月5日,N<別紙番号8,9>の父Tか
ら専門を問われて口腔外科だと答えた旨供述するが,
仮にそのような事実があったとしても,その前の別紙
番号8<犯行日平成11年10月3日>についてはその
ような質問を受けていないから,Nの家族はBを医師
であると誤解していたといえるし,別紙番号9<犯行
日平成11年10月6日>はその誤解がなかったとし
ても,それは,B自身が,それを聞いたNの父は薬剤
師なので歯科医師だというのは分かっていたと思うと
述べているように,Tが医療関係者であったという特
殊事情によるものと考えられるから,このことをもっ
て医療関係者でない一般人の場合についての上記認定
が左右されるものではない。)。そもそも,歯科医師
である旨の説明と患者等の承諾は患者側の重要な権利
であることはすでに述べたとおりであるが,この権利
を実効あらしめるためには,患者側が当該医療機関か
らあらかじめ適切な説明を受けることが前提となるの
であって,医療機関側も患者や家族に誤解を与えない
ような説明をする義務がある。したがって,単に,研
修歯科医師が「口腔外科」という文字を胸に付けてい
ただけでよしとすることは到底できず,所論は採用で
きない。
また,所論は,①別紙番号1のような交通事故の現
場では,患者は心肺停止状態であり,家族と連絡をと
ることも困難であるから,承諾を得ることは不可能で
あるし,同2及び11のように家族がいた場合でも心肺
停止患者に対する処置においては,一,二分を争うの
であって,承諾を得ている時間的余裕はなく,ガイド
ラインが定める例外に当たる,②カテーテル抜去(別
紙番号5,7)やチューブ抜管(同6),腹部触診
(同10)は,心肺停止患者と異なり,承諾を得ること
は可能であったものの,ガイドラインが制定されてい
なかった本件当時は,医療行為を行う者の専門分野,
資格,経験年数,症例数等を患者に告げることはまれ
であり,歯科医師であることを告げなかったことが違
法性を左右するものではない,③別紙番号3,8及び
9のような手術等の説明及び同意の取付けについては,
研修歯科医師は指導医のメッセンジャーであり伝達機
関であるから,その行為は指導医自身の行為であって,
歯科医師である旨を告げ,患者等の同意を得る必要は
なかった,という。しかし,①については,救急自動
車で現場に向かう場合,患者が心肺停止状態にあるこ
とも十分に見込まれるのに,医療機関が,歯科医師で
あることを説明し,承諾を得るという手続を踏まなけ
ればならない研修歯科医師のみを救急自動車に乗車さ
せて現場に向かわせておきながら,患者が心肺停止状
態であるとか承諾を得ている時間的余裕がなかったな
どという理由を付けて承諾を得なかったことを正当化
することは本末転倒である。そもそも初めから承諾を
得られない可能性が高いことが分かっているのに,そ
のような場に研修歯科医師のみを行かせること自体が
問題なのであって,救急自動車に研修歯科医師のみを
乗せて現場に向かわせること自体が研修の方法として
誤っているというべきである。②については,本件当
時,ガイドラインが制定されていなかったとしても,
救命救急センターに搬送される患者やその家族は,当
然に医師による診療を受けられるものと思っているこ
とは誰の目から見ても明らかであるから,その診療行
為に歯科医師が関与すること,ましてカテーテル抜去
やチューブ抜管,腹部触診という医行為を行うことが
その期待に反することは被告人ら医療関係者は容易に
推察できたはずである。所論のいうように,仮に本件
当時,医師の専門分野,資格,経験年数,症例数等を
患者に告げることがまれであったとしても,その場合,
患者やその家族の医師による診療を受けられるという
期待は裏切られていないのに対し,研修歯科医師であ
ることを説明しないことは医師による診療を受けられ
るという根本的な期待を裏切るものであり,全く次元
の異なる問題といえる。いうまでもなく,患者やその
家族にとって,診療行為を行う者が医師か研修歯科医
師かは極めて重要なことであって,歯科医師である旨
の説明と承諾を求めないことは医師と患者の信頼関係
によって成り立つ医療行為の根本を揺るがすものであ
り,医療法1条の4第2項の趣旨からしても,このこ
とはガイドラインの制定の有無に関わらず,当時の医
療機関が当然認識していたはずである。③については,
すでに認定・説示したとおり手術の説明及び同意の取
付けは主治医又は執刀医自らが行うべき医行為であっ
て,本件では,それをA(別紙番号3)及びB(同8,
9)が行ったのであるから,当該医行為を行ったのは,
ほかならぬ研修歯科医師であるA及びBであって指導
医ではない。手術の説明及び同意の取付けは見学のみ
が許される研修項目であることもすでに認定・説示し
たとおりである。したがって,所論はそもそも前提を
欠くもので採用できない。
(5)結論
以上のとおり,本件各行為は,ガイドラインに照らし
てみても,その要件を満たしておらず,結局,社会的相
当行為ということはできないのであって,違法性は阻却
されない。その他弁護人がるる主張する点を考慮検討し
ても原判決に事実の誤認はなく,論旨は理由がない。
第4法令適用の誤りの控訴趣意について
1憲法違反の主張について
論旨は,要するに,①医師法17条の構成要件である
「医業」の概念は不明確であり,同条及び同条に違反する
行為を処罰する同法31条1項1号は,憲法31条の要請
する刑罰法規の明確性の原則に反する,②本件各行為が国
民衛生上の安全を損なうことのない研修であり,研修によ
って歯科医師(歯科口腔外科医を含む。)の技量が高まる
ことは国民の幸福追求にも適うのに,かかる行為を処罰の
対象とすることは憲法22条1項(職業選択の自由)及び
同法13条(国民の幸福追求権)に反するのに,医師法1
7条及び同法31条1項1号は,憲法31条,22条1項,
13条に違反しないとした原判決には法令の解釈適用を誤
った違法があり,その違法が判決に影響を及ぼすことは明
らかである,というのである。しかし,医師法17条の
「医業」の概念はすでに認定・説示したとおりであって,
明確性の原則に反するものではなく,本件各行為が研修と
してなされたものであっても違法性が阻却されないことも
すでに認定・説示したとおりであって,かかる行為を処罰
することが職業選択の自由や幸福追求権を害するものでな
いことも明らかである。結局,論旨は理由がない。
2共謀共同正犯が成立しないとの主張について
論旨は,要するに,原判決は,被告人と本件歯科医師ら
及び同人らを直接指導監督する立場にあった上級医らに無
免許医業罪の共謀の事実があったとして被告人に同罪の共
同正犯(刑法60条)の成立を認めたが,①被告人と本件
歯科医師らとの間には,同人らが本件各行為を行うことに
つき,明示の意思の合致も合意もなかったから「共謀」の
事実は認められず,共謀共同正犯は成立しない,②仮に被
告人が救命救急センターにおける歯科医師の研修制度を作
ったとしても,本件各行為の数年も前の話であり,被告人
は,原判決も認定しているように本件歯科医師らが行った
本件各行為について個別に認識していたわけではなく,本
件各行為の共同正犯とはなり得ないから,原判決には刑法
60条の解釈適用を誤った違法があり,この違法が判決に
影響を及ぼすことは明らかである,というのである。確か
に被告人は,本件歯科医師らが行った本件各行為について
個別に認識していたとは認められない。しかし,原判決が
「補足説明」3で認定・説示するように,被告人は,平成
6年4月には救命救急センターの前身である市立病院救急
医療部の医長となったが,同部には実質的に被告人以上の
地位の者がいなかったため,そのころから同部の実質的な
責任者となり,被告人は,同部の責任者という立場で市立
病院院長の諮問機関であるレジデント教育委員会の委員に
も就任していた。平成9年4月の組織改編により市立病院
救急医療部が救命救急センターに名称変更され,被告人は,
同センター副部長に,平成11年4月には同センター部長
に就任したが,これまでと同様に被告人は同センターにお
ける実質的な責任者として同センターで行われる歯科医師
の研修の内容,方法等を決定するとともに,診断書等を作
成する場合は医師との連名にするとの注意をした以外は特
段の留保を付けず,医師の資格を持つ研修医と区別せずに
取り扱う旨の指示をし,その決定・指示に従って研修が行
われてきたものであり,もとより,救命救急センターにお
いては,被告人の決定・指示に反するような研修を行うこ
とはできなかった。現に,被告人は,平成12年7月ころ,
Bが担当していた患者の遺族から説明や承諾なく内視鏡検
査を実施したことなどに対する抗議を受けた際,U副院長
(名目上,救命救急センター長を兼務)から歯科医師の資
格しかないレジデントが,前面に出て患者の治療に当たる
のはまずいのではないかなどと注意されたことを契機に,
同年8月から救命救急センターで研修を受けることになっ
ていたCについて,従前のAやBと異なり,当直医のファ
ーストの割当てから外すこととしたが,それ以外では従前
どおり研修させることとし,救命救急センターのいわゆる
管理職会議において,Cをファーストから外す指示をする
とともに,併せて,C先生が書いてある当直表を病院に出
さないでやるなどと指示し,市立病院庶務課提出用のCを
当直医に組み込まない名目上の当直割当表と同人を当直医
に組み込んだ真実の当直割当表を作らせ,救命救急センタ
ーの当直は,後者の真実の当直割当表に基づいて行わせて
いたものである。このように,歯科医師の研修の内容,方
法等の決定及びその監督は事実上被告人が掌握しており,
歯科医師の個々の研修ももちろん,被告人の指示ないし意
思に背くような内容,方法等で行うことは不可能であった。
したがって,被告人は,本件歯科医師らが行った本件各行
為について,個別に指示を与えたり,個別に認識していた
とは認められないが,救命救急センターの責任者として研
修の内容,方法等を決め,診断書等を作成する場合は医師
と連名にするようにとの注意をしたり,Cをファーストの
割当てから外すなどした以外,特段の留保を付することな
く医師の資格を持つ研修医と区別せずに取り扱うように救
命救急センターの上級医に指示し,被告人の定めた研修の
内容,方法,更には上記のような指示に従って歯科医師の
研修が行われ,その結果,本件歯科医師らによる本件各行
為がなされたことに照らすと,被告人は,本件歯科医師ら
が研修歯科医師として本件各行為を行うに当たって不可欠
の決定的な役割を果たしたものというべきである。そうす
ると,被告人は,本件歯科医師らが医行為である本件各行
為を業として行ったことにつき,単にその機会を与え,こ
れを容易にしたというにとどまらず,同人らを直接指導監
督する立場にあった上級医らと共に刑法60条の共同正犯
としての責任を負うというべきである。結局,論旨は理由
がない。
3刑法65条1項の身分犯であるとの主張について
論旨は,要するに,本件各行為が医師法31条1項1号,
17条に該当するとしても,行政犯においては,法定の義
務者のみが犯罪の主体たり得るのだから医師の免許を受け
ている被告人は義務者ではなく,これに加功しても共犯は
成立しない,仮に,この見解を採用しないとしても,無免
許医業罪は,犯罪の主体が医師でない者に限定されており,
刑法65条1項の身分犯であると解すべきであるから,刑
法60条を適用した原判決は,法令の適用を誤っている,
という。しかし,医師の免許は,免許のある者が自ら医業
を行うことを許容するに過ぎないから,医師が医師免許の
ない者と共謀の上,免許のない者が医業を行ったときは,
医師も医師法31条1項1号にいう無免許医業罪の共同正
犯になるというべきである。また,医師法31条1項1号,
17条における医師の資格がないことは刑法65条1項に
いう身分には当たらないから,被告人に刑法60条を適用
した原判決に誤りはない。結局,論旨はいずれも理由がな
い。
よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし,
当審における訴訟費用を被告人に負担させることにつき刑訴法
181条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。
平成20年3月6日
札幌高等裁判所刑事部
裁判長裁判官矢村宏
裁判官市川太志
裁判官二宮信吾

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛