弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
関東財務局長が原告に対して平成19年3月29日付けでしたたばこ小売販
売業の不許可処分を取り消す。
第2事案の概要
本件は,製造たばこ小売販売業の許可申請をしたところ,いわゆる適正配置
規制によることを理由として関東財務局長からこれを不許可とされた原告が,
その不許可処分について,①上記規制に係る要件が存在しないにもかかわらず
されたこと,②上記規制が違憲であり無効であるにもかかわらずされたことを
主張して,上記不許可処分の取消しを求める事案である。
1前提事実
本件の前提となる事実は,次のとおりである。いずれも当事者間に争いのな
い事実であるか,証拠等により容易に認めることのできる事実であるが,括弧
内に認定根拠を付記している。
(1)原告について
原告は,コンビニエンスストアの経営及び酒類販売等を目的とする株式会
社である。
(2)製造たばこ小売販売業の許可申請等について
ア原告は,平成19年1月10日,A株式会社(以下「A」という。)B
支店に対し,たばこ事業法(昭和59年法律第68号。以下「事業法」と
いう。)22条1項の規定に基づき,営業所の所在地を「さいたま市α×
××−×」,販売形態を「特定小売販売業以外の小売販売業」とする関東
財務局長あての小売販売業許可申請書を提出し,もって製造たばこ小売販
売業の許可申請(以下「本件許可申請」という。)をした。(甲1の1及
び2,乙6の1及び2)
イなお,事業法22条1項は,「製造たばこの小売販売(消費者に対する
販売をいう。以下同じ。)を業として行おうとする者は,当分の間,その
製造たばこに係る営業所(以下第37条まで及び第49条において『営業
所』という。)ごとに財務大臣の許可を受けなければならない。会社又は
特定販売業者が小売販売を業として行おうとするときも,同様とする。」
と規定しているところ,事業法44条及びたばこ事業法施行令(昭和60
年政令第21号。以下「施行令」という。)8条によれば,財務大臣の上
記権限は財務局長に委任されている。
(3)小売販売業許可調査の結果等について
アAB支店は,事業法43条,施行令7条及びたばこ事業法施行規則(昭
和60年大蔵省令第5号。以下「施行規則」という。)37条1項1号に
よる委任に基づき,本件許可申請に係る予定営業所(以下「本件予定営業
所」という。)付近の現地調査を実施し,製造たばこ小売販売業許可等取
扱要領(平成12年蔵理第4621号。以下「取扱要領」という。)第2
章第一の2「距離の測定方法」の定めに基づき測定した結果,小売販売業
者であるCの営業所(以下「本件既設営業所」という。)と本件予定営業
所の距離が73mであると認めた。そして,その結果が記載された小売販
売業許可調査書が,関東財務局に提出された。(乙7)
イCは,昭和59年法律第68号による廃止前のたばこ専売法(昭和24
年法律第111号)が施行されていた昭和40年ころ,同法に基づき,D
から製造たばこの小売人の指定を受けた者であり,同60年4月1日,同
法が廃止され,事業法が施行されたことに伴い,事業法附則10条1項に
より,同日において事業法22条1項の規定による許可を受けた者(小売
販売業者)とみなされることとなった。
その許可に係る営業所(すなわち本件既設営業所)の所在地は,さいた
ま市α×××番地(ただし,現在の市名及び地番の表示による。)であり,
Cは,昭和40年ころから平成17年12月20日ころまでの間,同所に
おいて継続して店舗(以下「本件店舗」という。)における対面販売(昭
和40年ころから同47年4月10日までの間の店舗名は「E」,同月1
1日から平成9年3月31日までの間の店舗名は「F」,同年4月1日か
ら同17年12月20日ころまでの間の店舗名は「G」)及び自動販売機
2台による販売を併用して製造たばこの小売販売をしていた。なお,この
間,自動販売機の入替えが数回行われたものの,台数の増設は行われなか
った。
Cは,平成17年12月20日ころ,上記店舗の営業を停止したが,そ
の後も,引き続き自動販売機2台による製造たばこの小売販売を継続して
いる(以下,本件店舗の営業が停止された後に引き続き設置されている自
動販売機を総称して「本件自動販売機」という。)。
(甲3の1ないし3,8の1ないし3,乙8ないし10,12,37)
(4)本件許可申請の不許可等について
ア関東財務局長は,事業法23条3号,施行規則20条2号及びたばこ事
業法施行規則に基づき財務大臣が定める事項(平成10年大蔵省告示第7
4号。以下「大蔵省告示」という。)によれば予定営業所と既設営業所の
距離が100m以上でなければならないとされているにもかかわらず,本
件予定営業所と本件既設営業所の距離は73mであり,大蔵省告示の定め
る距離基準に達しないことを理由として,平成19年3月29日付けで本
件許可申請を不許可とする旨の処分(以下「本件不許可処分」という。)
をした。(甲2)
イなお,事業法23条柱書きは,「財務大臣は,前条第1項の許可の申請
があつた場合において,次の各号のいずれかに該当するときは,許可をし
ないことができる。」と規定し,その3号において,「営業所の位置が製
造たばこの小売販売を業として行うのに不適当である場合として財務省令
で定める場合であるとき。」と規定している。
上記の「財務省令」として,施行規則20条は,「法第23条第3号に
規定する営業所の位置が製造たばこの小売販売を業として行うのに不適当
である場合として財務省令で定める場合は,次に掲げる場合とする。」と
規定し,その2号において,「予定営業所と最寄りの小売販売業者の営業
所との距離が,特定小売販売業(劇場,旅館,飲食店,大規模な小売店舗
(1の店舗であって,その店舗内の売場面積の合計が400平方メートル
以上の店舗をいう。以下同じ。)その他の閉鎖性があり,かつ,消費者の
滞留性の強い施設内の場所を営業所として製造たばこの小売販売を業とし
て行うことをいう。)を営もうとする場合その他財務大臣の定める場合を
除き,予定営業所の所在地の区分ごとに,25メートルから300メート
ルまでの範囲内で財務大臣が定める距離に達しない場合」と規定している。
そして,上記の「予定営業所の所在地の区分」として,大蔵省告示は,
別表1で地域の区分を,別表2で環境の区分を定めているところ,本件予
定営業所の所在地の地域の区分は「指定都市」,環境の区分は「市街地」
に該当する。さらに,上記の「財務大臣が定める距離」として,大蔵省告
示1は,本件予定営業所の所在地の上記区分におけるその距離が100m
であることを定めている。
(5)本件訴えの提起について
原告は,平成19年7月13日,本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著
な事実)
2争点
(1)本件店舗の営業が停止された後,本件自動販売機を設置している本件既設
営業所が,施行規則20条2号所定の最寄りの小売販売業者の「営業所」に
該当するか否か。
(2)事業法23条3号及び施行規則20条2号等による製造たばこの小売販売
業に対する適正配置規制が憲法22条1項に違反するか否か。
3争点に関する当事者の主張の要旨
(1)争点(1)(施行規則20条2号の「営業所」の意義)について
(原告の主張)
ア取扱要領第1章第一の5は,「『営業所』とは,製造たばこの小売販売
を反復継続して行う施設又は設備をいう。」,「ただし,出張販売場所,
仮移転場所,一時的な移転場所及び営業所に隣接して設置する自動販売機
については,独立した営業所とはみなさない。」と定めているところ,C
は,本件店舗を営業所として製造たばこ小売販売業の許可を受けていたも
のであり,これに隣接して設置された自動販売機については,「独立した
営業所」に該当しない。
本件店舗は,平成17年12月20日に営業を停止したところ,本件自
動販売機が設置されているだけでは「営業所」に当たらないのであるから,
関東財務局長がこれを既設営業所と認めて本件不許可処分をしたことは違
法である。
イ仮に本件自動販売機が「営業所」に該当するとすれば,事業法22条1
項は,営業所ごとに財務大臣の許可を受けなければならないと規定してい
るところ,Cが製造たばこ小売販売業の許可を受けていたのは本件店舗に
ついてであるから,本来は,その許可とは別に自動販売機を営業所とする
許可も受けておかなければならないはずである。本件店舗の営業が停止さ
れる前までは,取扱要領第1章第一の5ただし書の定めにより,本件店舗
に「隣接して設置された自動販売機」については「独立した営業所」とは
みなさないとされていたため,便宜的に許可が不要とされてきたにすぎな
い。
ところが,本件店舗は,平成17年12月20日に営業を停止したので
あるから,上記の便宜的な措置を執ることができなくなり,Cは改めて本
件自動販売機について製造たばこ小売販売業の許可を受けなければ適法に
製造たばこを小売販売することができないはずであるところ,その許可は
されていない。
施行規則20条2号所定の最寄りの小売販売業者の「営業所」とは,製
造たばこ小売販売業の許可を受けた営業所を指すところ,やはり本件自動
販売機は既設営業所に当たらない。
(被告の主張)
ア製造たばこ小売販売業の許可申請に係る許可基準を定めた事業法23条
は,申請者の属性(同条1号,2号,5号,6号及び7号)並びに営業所
の属性(同条3号及び4号)に係る各許可基準を規定したものであり,後
者は,具体的には営業所の位置によって判断される。
このように,上記の許可は,申請者という人と,営業所の所在地という
場所について審査した上,申請者が申請した場所で製造たばこを販売する
ことにつき明示してされるものである。
したがって,上記のように製造たばこ小売販売業の許可を受けた者は,
新たな許可を要することなく,従前営業所としている店舗(場合によって
は,既設の営業所が自動販売機であることもあり得る。)に隣接して自動
販売機を設置することができ,新たに設置された自動販売機は,既設の営
業所と一体として「営業所」を構成することになる。
その意味で,取扱要領第1章第一の5ただし書が,「営業所に隣接して
設置する自動販売機については,独立した営業所とみなさない。」と定め
るのも,法令の規定から当然に導かれる解釈を誤解のないように明示した
ものということができる。このことは,その定めが事業法や施行規則等で
はなく,取扱要領で取り扱われていることからもうかがえる。
イそして,本件自動販売機は,製造たばこの小売販売を反復継続して行う
施設又は設備であるから「営業所」に該当するところ,Cは,昭和60年
4月1日に受けたものとみなされる許可に基づき,これを営業しているの
であるから,本件自動販売機による製造たばこの小売販売が無許可営業に
なることはない。
ウなお,平成元年7月以降に製造たばこ小売販売業の許可を受けようとす
る者は,当該許可を受けるに当たり,「自動販売機を設置する場合には,
店舗に併設すること。」という条件を付されるが(取扱要領第2章第四の
2(1)①参照),これは,このころ,未成年者喫煙防止の観点より,施行規
則20条3号が新設されたことに対応するものであり,これより前の時期
に許可を受けた者とみなされるCに係る本件既設営業所については関係が
ない。
(2)争点(2)(適正配置規制の違憲性)について
(原告の主張)
ア事業法23条3号は,職業選択の自由を保障する憲法22条1項に違反
し,無効である。
そもそも製造たばこ小売販売業の許可制の規制目的として挙げられるよ
うな①零細経営者保護目的,②財政安定目的,③消費者購買利便性確保目
的,並びに④未成年者喫煙防止目的及び定価外販売防止目的は,少なくと
も現在ではいずれも合理性を欠き,また,互いに整合性に欠けるものであ
る。
仮に,これらの規制目的に合理性があるとしても,それを達成するため
に距離制限という規制手段を採用することは著しく合理性に欠け,憲法2
2条1項が保障する職業選択の自由を侵害する。
イこの点について,最高裁平成3年(行ツ)第148号同5年6月25日
第二小法廷判決・裁判集民事169号175頁は,製造たばこ小売販売業
に係る適正配置規制を違憲ではないと判断しているが,その時から本件不
許可処分がされた時までに約14年が経過しており,現在では,製造たば
こ小売販売業の主な業態は自動販売機又はコンビニエンスストアとなって
いるところ,たばこ専売法の下において指定を受けた製造たばこの小売人
のうち零細経営者又は身体障害者等の保護を図るという前掲最高裁判決が
判示した許可制の目的は,もはやその役割を終えたものと考えるべきであ
る。
(被告の主張)
ア製造たばこ小売販売業の許可制は,公共の福祉に適合する目的のため必
要かつ合理的な措置であり,事業法23条3号,施行規則20条2号及び
これを受けた大蔵省告示による距離制限も,上記目的を達成するために必
要かつ合理的なものであるから,これによる規制は,何ら憲法22条1項
に違反するものではない。
イこの点,前掲最高裁判決も,製造たばこ小売販売業に対する適正配置規
制が憲法22条1項に違反しないことを明言しており,このことが現在で
も妥当することは,財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会が,製造
たばこ小売販売業の許可制について同大臣に提出した平成14年10月1
0日付け「喫煙と健康の問題等に関する中間報告」において,「許可制,
定価制については,…現時点で規制緩和の観点から議論を進める状況には
至っていないと考える。」旨答申していることなどからも明らかである。
ウなお、前掲最高裁判決以降も,適正配置規制について憲法22条1項に
違反しないと判断した仙台高等裁判所平成13年7月25日判決及び福岡
高等裁判所宮崎支部平成15年11月20日判決に対しそれぞれ上告がさ
れたところ,前者につき最高裁平成13年(行ツ)第311号同14年1
月31日第一小法廷決定が,後者につき最高裁平成15年(あ)第264
8号同16年3月23日第二小法廷決定が,それぞれ上告を棄却している。
第3争点に対する判断
1争点(1)(施行規則20条2号の「営業所」の意義)について
(1)施行規則20条2号所定の「営業所」の意義について,事業法22条1項
は,「製造たばこの小売販売(消費者に対する販売をいう。以下同じ。)を
業として行おうとする者は,当分の間,その製造たばこに係る営業所(以下
第37条まで及び第49条において『営業所』という。)ごとに財務大臣の
許可を受けなければならない。会社又は特定販売業者が小売販売を業として
行おうとするときも,同様とする。」と規定するが,外に事業法,施行令及
び施行規則において「営業所」について定義した規定はない。
一方において,申請に対する処分について行政庁の定めた審査基準である
取扱要領第1章第一の5は,「『営業所』とは,製造たばこの小売販売を反
復継続して行う施設又は設備をいう。」,「ただし,出張販売場所,仮移転
場所,一時的な移転場所及び営業所に隣接して設置する自動販売機について
は,独立した営業所とはみなさない。」と定めているところ,事業法22条
1項及び23条3号がそれぞれ製造たばこの小売販売を「業として」行うこ
とを規制した規定であること並びに「営業所」という文言の通常の用語例に
照らし,施行規則20条2号所定の「営業所」とは,上記の取扱要領のとお
り,製造たばこの小売販売を反復継続して行う施設又は設備をいうものと解
するのが相当である。
(2)これを本件既設営業所についてみるに,前記前提事実(3)イによれば,C
は,昭和60年4月1日に事業法22条1項の規定による許可を受けた者と
みなされ,その許可に係る営業所の所在地をさいたま市α×××番地として,
同日から平成17年12月20日ころまで,同地において本件店舗における
対面販売及び自動販売機による販売の態様又は方法により製造たばこの小売
販売を反復継続していたこと(更にさかのぼると,昭和40年ころからたば
こ専売法に基づく小売人として上記態様又は方法による製造たばこの小売販
売を反復継続していたこと)が認められるところ,本件店舗は製造たばこの
小売販売を反復継続して行う施設に該当し,また,上記自動販売機は製造た
ばこの小売販売を反復継続して行う設備に該当し,更にこれらを併せたもの
が製造たばこの小売販売を反復継続して行う施設又は設備に該当することが
明らかである。
そして,Cは,平成17年12月20日ころに本件店舗の営業を停止した
というのであるが,同日以降,本件店舗における対面販売が停止されたとし
ても,本件自動販売機により製造たばこの小売販売は反復継続して行われて
おり,これが製造たばこの小売販売を反復継続して行う設備に該当すること
は上記のとおりであるから,結局のところ,同日以降も,Cは製造たばこの
小売販売に係る「営業所」における営業を休止していないと認めることがで
きるのであって,本件店舗の営業の停止は,いわば上記の「営業所」におけ
る製造たばこ小売販売の態様又は方法の縮小又は変更にすぎないものといえ
る。
したがって,本件既設営業所は,施行規則20条2号所定の最寄りの小売
販売業者の「営業所」に該当すると認めることができる。
なお,施行規則20条3号は,「自動販売機の設置場所が,店舗に併設さ
れていない場所等製造たばこの販売について未成年者喫煙防止の観点から十
分な管理,監督が期し難いと認められる場所である場合」に,事業法23条
3号の「営業所の位置が製造たばこの小売販売を業として行うのに不適当で
ある場合として財務省令で定める場合であるとき」に該当する旨規定してい
るところ,施行規則20条3号は,製造たばこの自動販売機の設置台数が著
しく増加する一方,店舗等に併設されておらず,管理が十分にされていない
一部の自動販売機が未成年者による製造たばこの購入を容易にしているとの
批判があったことから,このような事態に対処するため,平成元年大蔵省令
第57号により新設された規定であり(乙11,18,26),これは自動
販売機が「営業所」に該当することを前提とする規定であるといえる(ただ
し,弁論の全趣旨によれば,本件既設営業所に係る製造たばこ小売販売業の
許可に関しては,その許可がされたとみなされる時期が上記規定が新設され
るよりも前の時期であったことなどから,自動販売機の店舗併設条件は付さ
れていないものと認めることができる。)。
(3)これに対し,原告は,取扱要領第1章第一の5ただし書が,「営業所に隣
接して設置する自動販売機については,独立した営業所とはみなさない」と
定めていることをもって,本件自動販売機が「営業所」に当たらない旨主張
するが,これは,前記(2)のとおり,自動販売機がそれのみで「営業所」に該
当し得ることから,既に製造たばこの小売販売業の許可を受けた営業所に追
加して自動販売機を設置しようとする場合,その自動販売機が仮に「独立し
た営業所」として取り扱われるとすると,従前の営業所の所在地に係る許可
の外に改めてその自動販売機の設置に係る許可が必要とされるのではないか
などという疑問を解消するために定められた確認的な審査基準であると解す
ることができるから,原告の上記主張は採用することができない。
(4)次に,原告は,本件自動販売機が営業所に当たるとしても,Cが本件自動
販売機を「営業所」とする製造たばこの小売販売業について許可を受けてい
ない旨主張するが,前提事実(3)イのとおり,Cに係る製造たばこ小売販売業
の許可は,「さいたま市α×××番地」を所在地とする営業所についてされ
たものとみなされているところ,前記(2)のとおり,Cは,その所在地上で,
平成17年12月20日ころまでは本件店舗及び自動販売機2台から成る
「営業所」において,これより後は,本件自動販売機という「営業所」にお
いて製造たばこ小売販売業を営んでいるのであるから,Cが本件自動販売機
を「営業所」とする製造たばこの小売販売業について許可を受けていないと
いう原告の上記主張は採用することができない。
(5)したがって,本件不許可処分が本件既設営業所を施行規則20条2号所定
の最寄りの小売販売業者の「営業所」に該当すると認めてされたことに違法
はないということができる。
2争点(2)(適正配置規制の違憲性)について
(1)事業法22条は,たばこ専売法の下において指定を受けた製造たばこの小
売人には零細経営者が多いことや身体障害者福祉法等の趣旨に従って身体障
害者等についてはその指定に際して特別の配慮が加えられてきたことなどに
かんがみ,たばこ専売制度の廃止に伴う激変を回避することによって,事業
法附則10条1項に基づき製造たばこの小売販売業を行うことの許可を受け
た者とみなされる上記小売人の保護を図るため,当分の間に限り,製造たば
この小売販売業について許可制を採用することとしたものであり,上記許可
制の採用は,公共の福祉に適合する目的のために必要かつ合理的な範囲にと
どまる措置ということができる。そして,事業法23条3号,施行規則20
条2号及びこれを受けた大蔵省告示による製造たばこの小売販売業に対する
適正配置規制は,上記目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまるもので
あって,これが著しく不合理であることが明白であるとは認め難い。したが
って,製造たばこの小売販売業に対する上記規制が,憲法22条1項に違反
するということはできない(最高裁平成3年(行ツ)第148号同5年6月
25日第二小法廷判決・裁判集民事169号175頁参照)。
(2)これに対し,原告は,前掲最高裁判決以降,製造たばこ小売販売業の主な
業態がコンビニエンスストア等に移行するなどの社会経済情勢の変化が生じ
ていることなどからすれば,現在では,前掲最高裁判決の判示するところは
妥当しない旨主張するところ,確かに,証拠(甲4,5)によれば,平成1
8年度において,①財務省近畿財務局が取り扱ったたばこ小売販売業許可件
数1413件のうち,業種としてコンビニエンスストアが432件,飲食料
品小売業が251件,スーパーマーケットが202件であるのに対し,たば
こ専業は74件にすぎず,また,②同省四国財務局が同じく取り扱った許可
件数343件のうち,コンビニエンスストアが132件,スーパーマーケッ
トが47件であるのに対し,たばこ専業は18件にすぎないことを認めるこ
とができる。
しかしながら,上記各件数は,一定地域の平成18年度における単年度の
許可件数の内訳を示すものにすぎないところ,他方において,財務省理財局
総務課たばこ塩事業室たばこ塩第2係が5年に1度の割合で実施しているた
ばこ小売販売業経営実態調査結果(乙28)によると,①たばこ小売販売業
の許可がされた時期が昭和20年以前である店舗数について,平成5年度は
1036店,同10年度は1038店,同15年度は1005店であり,ま
た,昭和21年から同59年までの時期に許可がされた店舗数は,平成5年
度が合計1528店,同10年度が合計1557店(ただし,昭和58年ま
での数),平成15年度が合計1565店であって,その数にはほとんど変
動がないこと,②総従業者数が零である店舗数について,平成5年度は14
63店(回答数3346件中の43.7%),同10年度は2231店(回
答数3762件中の59.3%),同15年度は1919店(回答数516
5件中の37.2%)であり,引き続き相当の数と割合であること,③店舗
の経営者の平均年齢について,同5年度は62歳,同10年度は63.3歳,
同15年度は63.9歳であり,ほとんど変動がないこと,④営業形態がた
ばこ専業である店舗数について,同5年度は805店(回答数3289件中
の24.5%),同10年度は1052店(回答数3688件中の28.5
%),同15年度は1461店(回答数5165件中の28.3%)と引き
続き相当の数と割合であること,なお,コンビニエンスストアのチェーン加
盟店及び非チェーン加盟店の各店舗数については,同5年度は114店(回
答数3289件中の3.5%)及び40店(同1.2%),同10年度は8
8店(回答数3688件中の2.4%)及び79店(同2.1%),同15
年度は759店(回答数5165件中の14.7%)及び68店(同1.3
%)と大きく伸びてきていること,⑤たばこの年間粗利益が50万円未満及
び50万円以上100万円未満の各店舗数について,同5年度は744店
(回答数2893件中の25.7%)及び755店(同26.1%),同1
0年度は907店(回答数3125件中の29.0%)及び867店(同2
7.7%),同15年度は1381店(回答数5165件中の26.7%)
及び1044店(同20.2%)であって,引き続き相当の数と割合である
ことなどを認めることができる。
上記の実態調査結果によれば,確かにコンビニエンスストアが営業形態に
占める割合は増加傾向にあると認めることができるものの,その一方におい
て,たばこ専売法の下で製造たばこの小売人の指定を受け,事業法附則10
条1項に基づき製造たばこの小売販売業を行うことの許可を受けた者とみな
される者の数,店舗の営業規模,経営者の平均年齢,営業形態がたばこ専業
である店舗の数又は割合,店舗全体の粗利益の金額等の上記各数値に照らす
と,前掲最高裁判決以降,本件不許可処分がされた時までにおいて,適正配
置規制の立法の基礎を成す事実が著しく又は明白に変化したものと認めるこ
とはできない。
したがって,原告の上記主張は採用することができない。
3結論
よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の
負担につき行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決
する。
東京地方裁判所民事第38部
杉原則彦裁判長裁判官
品田幸男裁判官
島村典男裁判官

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また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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