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平成30年10月29日判決言渡
平成29年(行ケ)第10142号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成30年7月9日
判決
原告澁谷工業株式会社
同訴訟代理人弁護士永島孝明
安國忠彦
同訴訟代理人弁理士磯田志郎
被告日本協同企画株式会社
同訴訟代理人弁護士鮫島正洋
小栗久典
同訴訟代理人弁理士小林正治
小林正英
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が無効2013-800103号事件について平成29年5月30日にし
た審決を取り消す。
第2事案の概要
本件は,特許無効審判請求につき,特許請求の範囲の訂正を認めた上,特許無効
審判請求の一部を却下し,残部を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は,①
訂正要件の適合性,②進歩性の有無である。
1手続の経緯
被告は,平成22年12月29日,特願2008-151101号の一部を新た
な特許出願として,発明の名称を「果菜自動選別送り出し方法及び果菜自動選別送
り出し装置」とする発明につき,特許出願(特願2010-294421号)をし,
平成25年4月26日,設定登録(特許第5255047号)を受けた(請求項の
数5。甲13。以下「本件特許」という。)。
原告は,平成25年6月10日,本件特許の請求項1~5に係る発明について特
許無効審判請求をした(無効2013-800103号。甲14)。被告は,平成2
5年9月13日,特許請求の範囲請求項5を削除する訂正請求をした(以下「第1
次訂正」という。甲16)。
特許庁は,平成26年3月26日,第1次訂正を認めた上,「本件審判の請求は,
成り立たない。」との審決をした(甲18)が,知的財産高等裁判所は,平成26年
12月24日,上記審決を取り消す判決をし(甲19),上記判決は確定した(甲2
0)。
被告は,平成28年8月19日,同日付け訂正請求書(以下「本件訂正請求書」
という。甲24)により,特許請求の範囲につき訂正請求をした(訂正後の請求項
の数4。以下「本件訂正」という。)。
被告は,平成28年11月22日付け職権審理結果通知書により,本件訂正を拒
絶すべきものである旨の通知を受け(甲26),同年12月26日,同日付け手続補
正書(甲28)により,本件訂正請求書を補正した(以下「本件補正」という。)。
特許庁は,平成29年5月30日,本件訂正を認め,本件特許の特許請求の範囲
請求項1~4に係る発明についての特許無効審判請求を不成立とし,同5に係る発
明についての特許無効審判請求を却下するとの審決(以下「本件審決」という。)を
し,その謄本は,同年6月8日,原告に送達された。
2本件発明の要旨
(1)本件訂正前
本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲請求項1~4は,次のとおりである(甲
13。以下,これらの発明を「本件訂正前発明1~4」といい,これらの発明を併
せて「本件訂正前発明」という。本件特許の明細書及び図面〔甲13〕を併せて「本
件明細書」という。)。
【請求項1】(本件訂正前発明1)
「果菜キャリアが多数設けられた果菜搬送ラインの果菜供給部において,果菜搬
送ラインの幅方向側方から作業員が果菜を載せ,前記果菜搬送ラインの等階級計測
部において,果菜キャリアで搬送される果菜を計測して果菜の等階級を判別し,前
記果菜搬送ラインの仕分排出部において,果菜搬送中の前記果菜キャリアを回動さ
せてその上の果菜を前記等階級計測部での判別結果に応じて果菜搬送方向側方に送
り出す,果菜自動選別送り出し方法において,
前記果菜キャリアは無端搬送体にその走行方向に多数取付けられ,
前記果菜キャリアの夫々は無端搬送体に取付けるフレームと,フレームに往復回
動可能に設けられた搬送ベルトを備えた往復回動式のベルトコンベアであり,
夫々の果菜キャリアの搬送ベルトの上側の一部に果菜を載せ置く果菜載置部が設
けられ,
果菜搬送ラインの前記仕分け部の側方に,ベルトコンベア式の果菜引受け体が,
果菜搬送方向に作業間隔をあけて二以上配置され,
前記多数の果菜キャリアを,その果菜載置部を一列又は略一列に並べて,無端搬
送体の走行によりその走行方向に移動させ,
前記移動中の果菜キャリアの果菜載置部の上に,前記果菜供給部において,作業
員が,果菜搬送ラインの搬送方向側方から前記果菜を一つずつ載せて搬送方向に一
列又は略一列に並べて搬送し,
前記果菜キャリアの移動により,前記果菜載置部に載せた果菜を搬送方向に一列
又は略一列に並べて搬送して等階級計測部を通過させてその通過中に果菜の少なく
とも果菜の大きさと形状を計測し,
前記仕分排出部において,前記計測に基づく等階級判別に応じて,果菜キャリア
の搬送ベルトを果菜搬送ラインの側方に往回動させて,当該搬送ベルトの果菜載置
部の上の果菜を,果菜搬送方向側方に配置された前記果菜引受け体に送り出し,
前記果菜引受け体を,果菜が送り込まれるときに間欠運転させて果菜を引継ぎ,
果菜送り込み時の間欠運転の繰り返しにより,前記果菜キャリアの果菜載置部から
送り込まれる果菜を前記果菜引受け体の上に二以上プールし,
前記往回動させた果菜キャリアの搬送ベルトを,前記果菜送り出し後の移動中に
前記往回動と反対側に復回動させて,当該搬送ベルトの果菜載置部を元の位置に復
帰させることにより,前記多数の果菜キャリアの果菜載置部を搬送方向に一列又は
略一列に並べ,
それら復帰した果菜キャリアの果菜載置部に,前記果菜供給部において,作業員
が,果菜搬送ラインの搬送方向側方から果菜を一つずつ載せることができるように
した,
ことを特徴とする果菜自動選別送り出し方法。」
【請求項2】(本件訂正前発明2)
「請求項1記載の果菜自動選別送り出し方法において,
果菜引受け体は,果菜キャリアから果菜が送り出されるときに間欠移動して,果
菜載置部から送り出される果菜を引き継いで二以上の果菜をプールする,
ことを特徴とする果菜自動選別における果菜自動選別送り出し方法。」
【請求項3】(本件訂正前発明3)
「無端搬送体に果菜キャリアが多数設けられた果菜搬送ラインに,その幅方向側
方から,作業員が,果菜キャリアに果菜を載せる果菜供給部が設けられ,果菜供給
部で果菜キャリアに載せた果菜の等階級を判別する等階級計測部が果菜搬送ライン
における果菜供給部の先方に設けられ,等階級計測部で計測された果菜をその計測
に基づく等階級判別結果に応じて果菜キャリアによって果菜搬送方向側方に送り出
す仕分排出部が等階級計測部の先方に設けられた果菜自動選別送り出し装置におい
て,
前記果菜キャリアは無端搬送体にその走行方向に多数取付けられ,
前記果菜キャリアは無端搬送体に取付けるフレームと,フレームに往復回動可能
に設けられた搬送ベルトを備えた往復回動式のベルトコンベアであり,
夫々の果菜キャリアの搬送ベルトの上側の一部に果菜を載せ置く果菜載置部が設
けられ,
果菜搬送ラインの前記仕分け部の側方に,果菜引受け体が,果菜搬送方向に作業
間隔をあけて二以上配置され,各々の果菜引受け体は果菜載置部から送り出される
果菜を引継いで二以上の果菜をプールできる長さのベルトコンベアであり,
前記多数の果菜キャリアは,その果菜載置部が一列又は略一列に並んで無端搬送
体に配置されて,無端搬送体の走行により,夫々の果菜載置部に載せた果菜が等階
級計測部を一列又は略一列に並んで通過することができ,
前記果菜載置部は,前記果菜供給部において,作業員が,果菜搬送ラインの搬送
方向側方から果菜を一つずつ載せることができ,
前記等階級計測部は,果菜載置部に載せられて一列又は略一列に並んで搬送され
る果菜の少なくとも大きさと形状を計測でき,
各々の果菜キャリアの搬送ベルトは,前記仕分排出部において果菜搬送ラインの
側方に往回動して,果菜載置部に載せてある果菜を,前記計測に基づく等階級判別
結果に応じて前記果菜引受け体に送り出し可能であり,
前記果菜引受け体は果菜が送り込まれるときに間欠運転して果菜を引継ぎ,果菜
送り込み時の間欠運転の繰り返しにより,前記果菜キャリアの果菜載置部から送り
込まれる果菜を前記果菜引受け体の上に二以上プールすることができる長さのベル
トコンベアであり,
前記果菜送り出し後の搬送ベルトは,前記往回動方向と逆方向に復回動して,果
菜載置部が元の位置に復帰して,前記多数の果菜キャリアの果菜載置部を搬送方向
に一列又は略一列に並べることができる,
ことを特徴とする果菜自動選別送り出し装置。」
【請求項4】(本件訂正前発明4)
「請求項3記載の果菜自動選別送り出し装置において,
果菜引受け体は,果菜キャリアから果菜が送り出されるときに果菜1個分の距離
だけ間欠移動して,果菜キャリアのベルトの往回動により果菜載置部から送り出さ
れる果菜を二以上プールできる,
ことを特徴とする果菜自動選別における果菜自動選別送り出し装置。」
(2)本件訂正後及び本件補正後
本件訂正及び本件補正後の本件特許の特許請求の範囲請求項1~4は,次のとお
りである(甲24,28。以下,これらの発明を「本件訂正後発明1~4」といい,
これらの発明を併せて「本件訂正後発明」という。下線部が訂正部分であり,本件
補正後の訂正事項は別紙本件補正後の訂正事項のとおりである。以下別紙本件補正
後の訂正事項の記載に従い「訂正事項1」などという。)。
【請求項1】(本件訂正後発明1)
「果菜キャリアが多数設けられた果菜搬送ラインの果菜供給部において,果菜搬
送ラインの幅方向側方から作業員がトマト,桃,梨,メロンのいずれかの果菜を前
記果菜キャリアに載せ,前記果菜搬送ラインの等階級計測部において,果菜キャリ
アで搬送される果菜を計測して果菜の等階級を判別し,前記果菜搬送ラインの仕分
排出部において,果菜搬送中の前記果菜キャリアを回動させてその上の果菜を前記
等階級計測部での判別結果に応じて果菜搬送方向側方に送り出す,果菜自動選別送
り出し方法において,
前記果菜キャリアは果菜送り出し方向先方側と後方側に間隔をあけて平行に配置
された二本のドライブチェーンにその走行方向に多数取付けられて,果菜搬送ライ
ンの搬送方向に一列に並んでおり,
前記果菜キャリアの夫々は前記ドライブチェーンに取付けるフレームと,フレー
ムに往復回動可能に設けられた搬送ベルトと,搬送ベルトに連結されたスライドピ
ンを備えた往復回動式のベルトコンベアであり,
前記フレームは,果菜送り出し方向先方側と後方側に取付け部を備え,先方側の
取付け部は前記先方側のドライブチェーンに,後方側の取付け部は前記後方側のド
ライブチェーンに取り付けられており,
前記フレームは,その底面に,果菜送り出し方向に細長の開口を備え,
前記フレームの果菜送り出し方向先方側と後方側に回転ローラが回転可能に取り
付けられ,先方側の回転ローラの少なくとも一部は前記フレームの果菜引受け体側
の端部よりも果菜引受け体側に突出し,かつ前記先方側のドライブチェーンよりも
果菜引受け体側に突出しており,
前記搬送ベルトは,フレームの果菜送り出し方向先方側に設けられた先方側の回
転ローラと,果菜送り出し方向後方側に設けられた後方側の回転ローラの外周に,
平坦に一周巻かれて,その上側部分が平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移
動するように往復回動可能であり,前記往復回動のうち往回動は搬送ベルトの上面
側が果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体方向に移動する回動で
あり,復回動は搬送ベルトの上面側が当該往回動と反対方向へ移動する回動であり,
夫々の果菜キャリアの搬送ベルトの上側部分の一部に,トマト,桃,梨,メロン
のいずれかの果菜を載せ置くことのできる果菜載置部が設けられ,
前記スライドピンはその下端側が前記開口を貫通してフレームの底面下方に突出
しており,
果菜搬送ラインの前記仕分排出部の一側方のみに,平ベルトが回転するベルトコ
ンベア式の果菜引受け体が,果菜搬送方向に作業間隔をあけて二以上配置され,平
ベルトは,その上面が果菜を受ける窪みのない平面状であり,その上面が果菜キャ
リアの搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高さで水平又は略水平に配置され,果菜
が果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り込まれるときに間欠運転
して,当該果菜を前記平面状の上面に水平又は略水平に引き継いでプールすること
ができ,
前記多数の果菜キャリアを,その果菜載置部を果菜搬送ラインの搬送方向に一列
又は略一列に並べて,前記ドライブチェーンの走行によりその走行方向に移動させ,
前記移動中の果菜キャリアの果菜載置部の上に,前記果菜供給部において,作業
員が,果菜搬送ラインの搬送方向側方から前記果菜を一つずつ載せて搬送方向に一
列又は略一列に並べて搬送し,
前記果菜キャリアの移動により,前記果菜載置部に載せた果菜を搬送方向に一列
又は略一列に並べて搬送して,画像処理による計測装置を備えた等階級計測部を通
過させてその通過中に果菜の少なくとも大きさと形状を画像処理により計測し,
前記仕分排出部において,前記計測に基づく等階級判別に応じて,果菜キャリア
の搬送ベルトを果菜搬送ラインの側方に往回動させて,当該搬送ベルトの果菜載置
部の上の果菜を水平又は略水平に移動させることにより,果菜搬送方向側方に配置
された前記果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り出し,
前記搬送ベルトの往回動は,前記ドライブチェーンの走行により移動される果菜
キャリアのスライドピンが,果菜搬送ラインの下方に設けられた往ガイドに案内さ
れてフレームの前記開口内を移動することにより行われ,
前記果菜引受け体の平ベルトを,果菜が水平又は略水平に送り込まれるときに,
果菜搬送ラインの搬送方向側方であって前記果菜が送り込まれる方向に果菜約1個
分の距離だけ間欠運転させてその間欠運転による前記平ベルトの回転により,当該
平ベルトの平面状の上面に水平又は略水平に送り込まれる果菜を水平又は略水平に
引継ぎ,果菜送り込み時の前記間欠運転の繰り返しにより,前記果菜キャリアの果
菜載置部から送り込まれる果菜を前記果菜引受け体の平ベルトの前記平面状の上面
に水平又は略水平に二以上プールし,
前記往回動させた果菜キャリアの搬送ベルトを,前記果菜送り出し後の移動中に
前記往回動と反対側に復回動させて,当該搬送ベルトの果菜載置部を元の位置に復
帰させることにより,前記多数の果菜キャリアの果菜載置部を搬送方向に一列又は
略一列に並べ,
前記搬送ベルトの復回動は,果菜送り出し後に,前記ドライブチェーンの走行に
より移動される果菜キャリアのスライドピンが,前記果菜搬送ラインの下方に設け
られた戻りガイドに案内されてフレームの前記開口内を移動することにより行われ,
それら復帰した果菜キャリアの果菜載置部に,前記果菜供給部において,作業員
が,果菜搬送ラインの搬送方向側方から果菜を一つずつ載せることができるように
した,
ことを特徴とする果菜自動選別送り出し方法。」
【請求項2】(本件訂正後発明2)
「請求項1記載の果菜自動選別送り出し方法において,
果菜引受け体の平ベルトは,果菜キャリアから果菜が送り出されるときに間欠移
動して,果菜載置部から送り出される果菜を引き継いで二以上の果菜をプールする,
ことを特徴とする果菜自動選別における果菜自動選別送り出し方法。」
【請求項3】(本件訂正後発明3)
「ドライブチェーンに果菜キャリアが多数設けられた果菜搬送ラインに,その幅
方向側方から,作業員が,果菜キャリアに果菜を載せる果菜供給部が設けられ,果
菜供給部で果菜キャリアに載せた果菜の等階級を判別する等階級計測部が果菜搬送
ラインにおける果菜供給部の先方に設けられ,等階級計測部で計測された果菜をそ
の計測に基づく等階級判別結果に応じて果菜キャリアによって果菜搬送方向の一側
方のみに配置された果菜引受け体に送り出す仕分排出部が等階級計測部の先方に設
けられた果菜自動選別送り出し装置において,
前記ドライブチェーンは果菜キャリアの果菜送り出し方向先方側のドライブチェ
ーンと,果菜送り出し方向後方側のドライブチェーンの少なくとも二本であり,そ
れら両ドライブチェーンは果菜送り出し方向に間隔をあけて平行に配置されており,
前記果菜キャリアは間隔をあけて平行に配置された前記二本のドライブチェーン
にその走行方向に多数取付けられ,
前記果菜キャリアの夫々は前記ドライブチェーンに取付けるフレームと,フレー
ムに往復回動可能に設けられた搬送ベルトと,搬送ベルトに連結されたスライドピ
ンを備えた往復回動式のベルトコンベアであり,
前記フレームは,前記ドライブチェーンに取付ける取付け部を備え,取付け部は
果菜送り出し方向先方側と後方側に設けられており,
前記フレームの果菜送り出し方向先方側と後方側に回転ローラが回転可能に取り
付けられ,先方側の回転ローラの少なくとも一部は前記フレームの前記果菜引受け
体側の端部よりも当該果菜引受け体側に突出し,かつ前記先方側のドライブチェー
ンよりも当該果菜引受け体側に突出しており,
前記フレームはその底面に,果菜送り出し方向に細長の開口を備え,
前記搬送ベルトは,前記先方側の回転ローラと,前記後方側の回転ローラの外周
に平坦に一周巻かれて,その上側部分が平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に
移動するように往復回動可能であり,前記往復回動のうち往回動は搬送ベルトの上
面が果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体方向へ移動する回動で
あり,復回動は搬送ベルトの上面が当該往回動と反対方向に移動する回動であり,
夫々の果菜キャリアの搬送ベルトの上側部分の一部に,トマト,桃,梨,メロン
のいずれかの果菜を載せ置くことのできる果菜載置部が設けられ,
前記スライドピンはその下端側が前記開口を貫通してフレームの底面下方に突出
しており,
果菜搬送ラインの前記仕分排出部の側方に,上面に果菜を受ける窪みがない平面
状の平ベルトが回転する果菜引受け体が,果菜搬送方向に作業間隔をあけて二以上
配置され,各々の果菜引受け体は果菜載置部から送り出される果菜を引継いで二以
上の果菜をプールできる長さのベルトコンベアであり,
前記果菜引受け体は,その平ベルトの上面が前記果菜キャリアの搬送ベルトの上
面と同じ又は略同じ高さで水平又は略水平に配置されており,
前記多数の果菜キャリアは,その果菜載置部が果菜搬送ラインの搬送方向に一列
又は略一列に並んで水平に搬送されるように,先方側の取付け部が前記先方側のド
ライブチェーンに,後方側の取付け部が前記後方側のドライブチェーンに取り付け
られて配置されており,そのドライブチェーンの走行により夫々の果菜載置部に載
せた果菜が等階級計測部を一列又は略一列に並んで通過することができ,
前記果菜載置部は,前記果菜供給部において,作業員が,果菜搬送ラインの搬送
方向側方から果菜を一つずつ載せることができ,
前記等階級計測部は画像処理による計測装置を備え,果菜載置部に載せられて一
列又は略一列に並んで搬送されるトマト,桃,梨,メロンのいずれかの果菜の少な
くとも大きさと形状を画像処理により計測でき,
各々の果菜キャリアの搬送ベルトは,前記仕分排出部において果菜搬送ラインの
側方の果菜引受け体側に往回動して,果菜載置部に載せてある果菜を,前記計測に
基づく等階級判別結果に応じて前記果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水
平に送り出し可能であり,
前記搬送ベルトの往回動は,前記ドライブチェーンの走行により移動される果菜
キャリアのスライドピンが,果菜搬送ラインの下方に設けられた往ガイドに案内さ
れてフレームの前記開口内を移動することにより行われ,
前記果菜引受け体の平ベルトは果菜が水平又は略水平に送り込まれるときに,果
菜搬送ラインの搬送方向側方であって前記送り込み方向に間欠運転して,その間欠
運転による前記平ベルトの回転により当該平ベルトの上面に果菜を水平又は略水平
に引継ぎ,果菜送り込み時の間欠運転の繰り返しにより,前記果菜キャリアの果菜
載置部から送り込まれる果菜を前記果菜引受け体の平ベルトの上面に二以上プール
することができる長さのベルトコンベアであり,
前記果菜送り出し後の搬送ベルトは,前記往回動方向と逆方向に復回動して,果
菜載置部が元の位置に復帰して,前記多数の果菜キャリアの果菜載置部を搬送方向
に一列又は略一列に並べることができ,
前記搬送ベルトの復回動は,果菜送り出し後に,前記ドライブチェーンの走行に
より移動される果菜キャリアのスライドピンが,前記果菜搬送ラインの下方に設け
られた戻りガイドに案内されてフレームの前記開口内を移動することにより行われ
る,
ことを特徴とする果菜自動選別送り出し装置。」
【請求項4】(本件訂正後発明4)
「請求項3記載の果菜自動選別送り出し装置において,
果菜引受け体の平ベルトは,果菜キャリアから果菜が送り出されるときに果菜1
個分の距離だけ間欠移動して,果菜キャリアの搬送ベルトの往回動により果菜載置
部から送り出される果菜を,二以上プールできる,
ことを特徴とする果菜自動選別における果菜自動選別送り出し装置。」
3審判における請求人(原告)の主張の骨子
(1)訂正要件について
本件訂正の訂正事項7,8,14,20,32,34,40,41及び45は,
①願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」ということ
がある。)に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,②特許法134条の
2第1項ただし書で規定する事項を目的とするものではないから,本件訂正は,訂
正要件を満たさない。
(2)進歩性について
本件訂正後発明1~4は,甲1(特開平3-256814号公報)に記載された
発明(以下「甲1発明」という。),甲2(特開平11-286328号公報)に記
載された発明(以下「甲2発明」という。),甲3(米国特許第3231068号明
細書)に記載された発明(以下「甲3発明」という。)及び周知技術に基づいて,当
業者が容易に発明をすることができたものである。
4審決の理由の要点
(1)訂正要件について
訂正事項1~8,10,11,13~17,19~35,37,38,40~5
0は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,明細書等に記載した範囲
内でしたものであり,訂正事項9,12,18,36,39及び51は,誤記又は
誤訳の訂正を目的とするものであって,本件特許出願当初の明細書等に記載した事
項の範囲内においてしたものであり,いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し又は
変更するものではない。
(2)進歩性について
ア引用発明等
(ア)甲1発明
甲1には,次の発明(以下の発明を総称して「甲1発明」という。)が記載されて
いると認められる。
a甲1発明1
「受け台8が多数設けられた振分けコンベア2の供給部9において,果菜物である
キューイKを前記受け台8に載せ,前記振分けコンベア2の判定部3において,受
け台8で搬送される果菜物であるキューイKを計測して果菜物であるキューイKの
等階級を判別し,前記振分けコンベア2の振分け部4において,果菜物であるキュ
ーイKを搬送中の前記受け台8を傾動させてその上の果菜物であるキューイKを前
記判定部3での判別結果に応じて果菜物であるキューイKの搬送方向側方に送り出
す,果菜物自動振り分け方法において,
前記受け台8はガイドチェーン7にその走行方向に多数取付けられて,振分けコ
ンベア2の搬送方向に一列に並んでおり,
前記受け台8の夫々は前記ガイドチェーン7に取り付ける傾動式の台であり,
夫々の受け台8の上側の一部に果菜物であるキューイKを載せ置くことのできる
果菜物を載置する部分が設けられ,
振分けコンベア2の前記振分け部4の側方に,受けベルト15が回転するベルト
コンベア式の整列コンベア5が,果菜物であるキューイKの搬送方向に作業間隔を
あけて二以上配置され,受けベルト15は,その上面が果菜物であるキューイKを
受ける凹状の受け部15aを所定等間隔に隔てて形成した形状であり,その上面が
受け台8の果菜物を載置する部分より下位の高さで水平又は略水平に配置され,果
菜物であるキューイKが整列コンベア5の受けベルト15の上面に形成された凹状
の受け部15aにシュートを介して移載されると,光電センサ20による検知に基
づいて間欠的な回転駆動して,当該果菜物であるキューイKを前記受けベルト15
の上面に引き継いでプールすることができ,
前記多数の受け台8を,その果菜物を載置する部分を振分けコンベア2の搬送方
向に一列又は略一列に並べて,前記ガイドチェーン7の走行によりその走行方向に
移動させ,
前記移動中の受け台8の果菜物を載置する部分の上に,前記供給部9において,
前記果菜物であるキューイKを一つずつ載せて搬送方向に一列又は略一列に並べて
搬送し,
前記受け台8の移動により,前記果菜物を載置する部分に載せた果菜物であるキ
ューイKを搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して,サイズを読取るサイズセ
ンサ11と,品質を読取る品質センサ12と,重量を計量する重量センサ13を備
えた判定部3を通過させてその通過中に果菜物であるキューイKの少なくともサイ
ズ・品質・重量を計測し,
前記振分け部4において,前記計測に基づく等階級判別に応じて,受け台8を振
分けコンベア2の側方に往傾動させて,当該受け台8の果菜物を載置する部分の上
の果菜物であるキューイKを移動させることにより,果菜物であるキューイKの搬
送方向側方に配置された前記整列コンベア5の受けベルト15の上面に送り出し,
前記整列コンベア5の受けベルト15を,果菜物であるキューイKが前記凹状の
受け部15aにシュートを介して移載されると,振分けコンベア2の搬送方向側方
であって前記果菜物であるキューイKが移載される方向に1搬送ピッチ分だけ間欠
的な回転駆動させてその間欠的な回転駆動による前記受けベルト15の回転により,
当該記受けベルト15の上面に移載される果菜物であるキューイKを引継ぎ,果菜
物であるキューイKの移載時の間欠的な回転駆動の繰り返しにより,前記受け台8
の果菜物を載置する部分から移載される果菜物であるキューイKを前記整列コンベ
ア5の受けベルト15の前記果菜物であるキューイKを受ける凹状の受け部15a
を所定等間隔に隔てて形成した形状の上面に水平又は略水平に二以上プールする,
果菜物自動振り分け方法。」
b甲1発明3
「ガイドチェーン7に受け台8が多数設けられた振分けコンベア2に,受け台8に
果菜物であるキューイKを載せる供給部9が設けられ,供給部9で受け台8に載せ
た果菜物であるキューイKの等階級を判別する判定部3が振分けコンベア2におけ
る供給部9の先方に設けられ,判定部3で計測された果菜物であるキューイKをそ
の計測に基づく等階級判別結果に応じて受け台8によって果菜物であるキューイK
の搬送方向側方に配置された整列コンベア5に送り出す振分け部4が判定部3の先
方に設けられた果菜物自動振分け装置において,
前記受け台8はガイドチェーン7にその走行方向に多数取付けられ,
前記受け台8の夫々は前記ガイドチェーン7に取り付ける傾動式の台であり,
夫々の受け台8の上側の一部に果菜物であるキューイKを載せ置くことのできる
果菜物を載置する部分が設けられ,
振分けコンベア2の前記振分け部4の側方に,上面に果菜物であるキューイKを
受ける凹状の受け部15aを所定等間隔に隔てて形成した形状の受けベルト15が
回転する整列コンベア5が,果菜物であるキューイKの搬送方向に作業間隔をあけ
て二以上配置され,各々の整列コンベア5は果菜物を載置する部分から送り出され
る果菜物であるキューイKを引継いで二以上の果菜物であるキューイKをプールで
きる長さのベルトコンベアであり,
前記整列コンベア5は,その受けベルト15の上面が受け台8の果菜物を載置す
る部分より下位の高さで水平又は略水平に配置されており,
前記多数の受け台8は,その果菜物を載置する部分が振分けコンベア2の搬送方
向に一列又は略一列に並んで配送されるように,ガイドチェーン7に取り付けられ
て配置されており,そのガイドチェーン7の走行により夫々の果菜物を載置する部
分に載せた果菜物であるキューイKが判定部3を一列又は略一列に並んで通過する
ことができ,
前記果菜物を載置する部分は,前記供給部9において,果菜物であるキューイK
を一つずつ載せることができ,
前記判定部3はサイズを読取るサイズセンサ11と,品質を読取る品質センサ1
2と,重量を計量する重量センサ13を備え,果菜物を載置する部分に載せられて
一列又は略一列に並んで搬送される果菜物であるキューイKの少なくともサイズ・
品質・重量を計測でき,
各々の受け台8は,前記振分け部4において振分けコンベア2の側方に往傾動し
て,果菜物を載置する部分に載せてある果菜物であるキューイKを,前記計測に基
づく等階級判別結果に応じて前記整列コンベア5の受けベルト15の上面に送り出
し可能であり,
前記整列コンベア5の受けベルト15は果菜物であるキューイKが前記凹状の受
け部15aにシュート介して移載されると,振分けコンベア2の搬送方向側方であ
って前記果菜物であるキューイKが移載される方向に間欠的な回転駆動して,その
間欠的な回転駆動による前記受けベルト15の回転により当該受けベルト15の上
面に果菜物であるキューイKを引継ぎ,果菜物であるキューイKの移載時の間欠的
な回転駆動の繰り返しにより,前記受け台8の果菜物を載置する部分から移載され
る果菜物であるキューイKを前記整列コンベア5の受けベルト15の上面に二以上
プールすることができる長さのベルトコンベアである,
果菜物自動振り分け装置。」
(イ)甲2に記載された技術
甲2には,次の技術(以下の技術を総称して「甲2技術」という。)が記載されて
いると認められる。
a甲2技術1
「搬送ユニット1が多数設けられた搬送路Aの投入路Bから薄物や不定形品など
の小物類である搬送物Pが移送される領域において,搬送物Pを前記搬送ユニット
1に載せ,前記搬送路Aの仕分けシュートCの領域において,搬送物P搬送中の前
記搬送ユニット1を回動させてその上の搬送物Pを仕分けコード番号に応じて搬送
物P搬送方向側方に送り出す,搬送物Pを自動的に仕分ける方法において,
前記搬送ユニット1の夫々はユニットフレーム21と,ユニットフレーム21に
往復回動可能に設けられた移送シート49と,移送シート49に左右一対のバー4
8a,48b,チェーンベルト42及び枠部材37を介して連結されたガイドロー
ラ51及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイドローラ52と,
を備えた往復回動式のベルトコンベアであり,
前記ユニットフレーム21の左右方向一方側と他方側にそれぞれ搬送物P搬送方
向にみて一対の上位の固定チェーンホイール40が回転可能に取り付けられ,
前記移送シート49は,ユニットフレーム21の左右方向一方側に設けられた一
方側の上位の固定チェーンホイール40と左右方向他方側に設けられた他方側の上
位の固定チェーンホイール40の間に張架され,両側をそれぞれ可動チェーンホイ
ール32,32に巻回されて折り返されたのち,下位の固定チェーンホイール41,
41に巻回されて再び折り返されたのち,両端部を移動フレーム31の枠部材37
の両端部にそれぞれ固着した一対のチェーンベルト42,42に,左右方向で対向
する上位の固定チェーンホイール40,40の間隔とほぼ等しい間隔をもって軸止
した一対のバー48に両側縁が結着されて,上側部分が略平坦な状態で略水平に移
動するように往復回動可能であり,前記往復回動のうち往回動は移送シート49の
上面側が搬送路Aの側方に配置された仕分けシュートC方向に移動する回動であり,
復回動は移送シート49の上面側が当該往回動と反対方向へ移動する回動であり,
夫々の搬送ユニット1の移送シート49の上側部分の一部に,搬送物Pを載せ置
くことのできる中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受
板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移
動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を
省いた領域である載置領域が設けられ,
前記ガイドローラ51及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイ
ドローラ52はユニットフレーム21の底板26より下方に突出しており,
前記仕分けシュートCの領域において,前記仕分けコード番号に応じて,搬送ユ
ニット1の移送シート49を搬送路Aの側方に往回動させて,当該移送シート49
の載置領域の上の搬送物Pを略水平に移動させることにより,搬送物P搬送方向側
方に配置された前記仕分けシュートCに送り出し,
前記移送シート49の往回動は,移動される搬送ユニット1のガイドローラ51
及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイドローラ52が,搬送路
Aの下方に設けられた可動切換ガイド部片55,固定切換ガイド部片59及び側方
ガイド板60,61に案内されて移動することにより行われ,
前記往回動させた搬送ユニット1の移送シート49を,前記搬送物P送り出し後
の移動中に前記往回動と反対側に復回動させて,当該移送シート49の搬送物Pを
載せる載置領域を元の位置に復帰させることにより,前記多数の搬送ユニット1の
載置領域を搬送方向に一列又は略一列に並べ,
前記移送シート49の復回動は,搬送物P送り出し後に,移動される搬送ユニッ
ト1のガイドローラ51及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイ
ドローラ52が,前記搬送路Aの下方に設けられた復元用ガイド板に案内されて移
動することにより行われ,
それら復帰した搬送ユニット1の載置領域に,前記投入路Bから搬送物Pが移送
される領域において,搬送物Pを一つずつ載せることができるようにした技術。」
b甲2技術2
「搬送ユニット1が多数設けられた搬送路Aに,搬送ユニット1に薄物や不定形
品などの小物類である搬送物Pを載せる投入路Bから搬送物Pが移送される領域が
設けられ,搬送物Pを仕分けコード番号に応じて搬送ユニット1によって搬送物P
搬送方向の側方に配置された仕分けシュートCに送り出す仕分けシュートCの領域
が設けられた搬送物Pを自動的に仕分ける装置において,
前記搬送ユニット1の夫々はユニットフレーム21と,ユニットフレーム21に
往復回動可能に設けられた移送シート49と,移送シート49に左右一対のバー4
8a,48b,チェーンベルト42及び枠部材37を介して連結されたガイドロー
ラ51及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイドローラ52と,
を備えた往復回動式のベルトコンベアであり,
前記ユニットフレーム21の左右方向一方側と他方側にそれぞれ搬送物P搬送方
向にみて一対の上位の固定チェーンホイール40が回転可能に取り付けられ,
前記移送シート49は,前記一方側の上位の固定チェーンホイール40と前記他
方側の上位の固定チェーンホイール40の間に張架され,両側をそれぞれ可動チェ
ーンホイール32,32に巻回されて折り返されたのち,下位の固定チェーンホイ
ール41,41に巻回されて再び折り返されたのち,両端部を移動フレーム31の
枠部材37の両端部にそれぞれ固着した一対のチェーンベルト42,42に,左右
方向で対向する上位の固定チェーンホイール40,40の間隔とほぼ等しい間隔を
もって軸止した一対のバー48に両側縁が結着されて,上側部分が略平坦な状態で
略水平に移動するように往復回動可能であり,前記往復回動のうち往回動は移送シ
ート49の上面側が搬送路Aの側方に配置された仕分けシュートC方向に移動する
回動であり,復回動は移送シート49の上面側が当該往回動と反対方向へ移動する
回動であり,
夫々の搬送ユニット1の移送シート49の上側部分の一部に,搬送物Pを載せ置
くことのできる中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受
板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移
動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を
省いた領域である載置領域が設けられ,
前記ガイドローラ51及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイ
ドローラ52はユニットフレーム21の底板26より下方に突出しており,
各々の搬送ユニット1の移送シート49は,前記仕分けシュートCの領域におい
て搬送路Aの側方に往回動して,載置領域に載せてある搬送物Pを,前記仕分けコ
ード番号に応じて仕分けシュートCに送り出し可能であり,
前記移送シート49の往回動は,移動される搬送ユニット1のガイドローラ51
及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイドローラ52が,搬送路
Aの下方に設けられた可動切換ガイド部片55,固定切換ガイド部片59及び側方
ガイド板60,61に案内されて移動することにより行われ,
前記搬送物P送り出し後の移送シート49は,前記往回動と逆方向に復回動して,
載置領域が元の位置に復帰して,前記多数の搬送ユニット1の載置領域を搬送方向
に一列又は略一列に並べることができ,
前記移送シート49の復回動は,搬送物P送り出し後に,移動される搬送ユニッ
ト1のガイドローラ51及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイ
ドローラ52が,前記搬送路Aの下方に設けられた復元用ガイド板に案内されて移
動することにより行われるようにした技術。」
(ウ)甲3に記載された技術
甲3には,次の技術(以下の技術を総称して「甲3技術」という。)が記載されて
いると認められる。
a甲3技術1
「プラットホーム60,160が多数設けられた移動経路の供給部において,物
品を前記プラットホーム60,160に載せ,前記移動経路のステーションの領域
において,物品搬送中の前記プラットホーム60,160を回動させてその上の物
品を符号に応じて物品搬送方向側方に送り出す,物品を自動的に所定のステーショ
ンに配送する方法において,
前記プラットホーム60,160は駆動チェーン21にその走行方向に多数取付
けられて,移動経路の移動方向に一列に並んでおり,
前記プラットホーム60,160の夫々は前記駆動チェーン21に取付ける水平
フレーム部材64,162と,水平フレーム部材64,162に往復回動可能に設
けられたウェブ66,168を備えた往復回動式のベルトコンベアであり,
前記水平フレーム部材64,162は,シャフト36の拡張部50を備え,シャ
フト36の拡張部50は前記駆動チェーン21に取り付けられており,
前記水平フレーム部材64,162のプラットホーム60,160の移動方向と
垂直方向一方側と他方側にロール68,166が回転可能に取り付けられ,
前記ウェブ66,168は,水平フレーム部材64,162のプラットホーム6
0,160の移動方向と垂直方向一方側に設けられた一方側のロール68,166
と,プラットホーム60,160の移動方向と垂直方向他方側に設けられた他方側
のロール68,166の外周に,平坦に一周巻かれて,その上側部分が平坦又は略
平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回動可能であり,前記往復回動
のうち往回動はウェブ66,168の上面側が移動経路の側方に配置されたステー
ション方向に移動する回動であり,復回動はウェブ66,168の上面側が当該往
回動と反対方向へ移動する回動であり,
夫々のプラットホーム60,160のウェブ66,168の上側部分の一部に,
物品を載せ置くことのできる上面部が設けられ,
前記ステーションの領域において,符号に応じて,プラットホーム60,160
のウェブ66,168を移動経路の側方に往回動させて,当該ウェブ66,168
の上面部の上の物品を水平又は略水平に移動させることにより,物品搬送方向側方
に配置された前記ステーションに送り出し,
前記往回動させたプラットホーム60,160のウェブ66,168を,前記物
品送り出し後の移動中に前記往回動と反対側に復回動させて,当該ウェブ66,1
68の上面部を元の位置に復帰させることにより,前記多数のプラットホーム60,
160のウェブ66,168の上面部を搬送方向に一列又は略一列に並べることが
できるようにした技術。」
b甲3技術2
「駆動チェーン21にプラットホーム60,160が多数設けられた移動経路に,
プラットホーム60,160に物品を載せる供給部が設けられ,物品を符号に応じ
てプラットホーム60,160によって物品搬送方向側方に送り出すステーション
の領域が設けられた物品を自動的に所定のステーションに配送する装置において,
前記プラットホーム60,160は前記駆動チェーン21にその走行方向に多数
取付けられ,
前記プラットホーム60,160の夫々は前記駆動チェーン21に取付ける水平
フレーム部材64,162と,水平フレーム部材64,162に往復回動可能に設
けられたウェブ66,168を備えた往復回動式のベルトコンベアであり,
前記水平フレーム部材64,162は,前記駆動チェーン21に取付けるシャフ
ト36の拡張部50を備え,
前記水平フレーム部材64,162のプラットホーム60,160の移動方向と
垂直方向一方側と他方側にロール68,166が回転可能に取り付けられ,
前記ウェブ66,168は,前記一方側のロール68,166と,前記他方側の
ロール68,166の外周に,平坦に一周巻かれて,その上側部分が平坦又は略平
坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回動可能であり,前記往復回動の
うち往回動はウェブ66,168の上面側が移動経路の側方に配置されたステーシ
ョン方向に移動する回動であり,復回動はウェブ66,168の上面が当該往回動
と反対方向へ移動する回動であり,
夫々のプラットホーム60,160のウェブ66,168の上側部分の一部に,
物品を載せ置くことのできる上面部が設けられ,
各々のプラットホーム60,160のウェブ66,168は,前記ステーション
の領域において移動経路の側方のステーション側に往回動して,上面部に載せてあ
る物品を,符号に応じて前記ステーションに送り出し可能であり,
前記物品送り出し後のウェブ66,168は,前記往回動方向と逆方向に復回動
して,上面部が元の位置に復帰して,前記多数のプラットホーム60,160のウ
ェブ66,168の上面部を搬送方向に一列又は略一列に並べることができるよう
にした技術。」
イ本件訂正後発明1について
(ア)対比
本件訂正後発明1と甲1発明1との相違点は,次のとおりである。
〔相違点1-1〕
「果菜キャリア」に関し,本件訂正後発明1においては,「前記果菜キャリアは果
菜送り出し方向先方側と後方側に間隔をあけて平行に配置された二本のドライブチ
ェーンにその走行方向に多数取付けられ」,「前記果菜キャリアの夫々は前記ドライ
ブチェーンに取付けるフレームと,フレームに往復回動可能に設けられた搬送ベル
トと,搬送ベルトに連結されたスライドピンを備えた往復回動式のベルトコンベア
であり,前記フレームは,果菜送り出し方向先方側と後方側に取付け部を備え,先
方側の取付け部は前記先方側のドライブチェーンに,後方側の取付け部は前記後方
側のドライブチェーンに取り付けられており,前記フレームは,その底面に,果菜
送り出し方向に細長の開口を備え,前記フレームの果菜送り出し方向先方側と後方
側に回転ローラが回転可能に取り付けられ,先方側の回転ローラの少なくとも一部
は前記フレームの果菜引受け体側の端部よりも果菜引受け体側に突出し,かつ前記
先方側のドライブチェーンよりも果菜引受け体側に突出しており,前記搬送ベルト
は,フレームの果菜送り出し方向先方側に設けられた先方側の回転ローラと,果菜
送り出し方向後方側に設けられた後方側の回転ローラの外周に,平坦に一周巻かれ
て,その上側部分が平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復
回動可能であり,前記往復回動のうち往回動は搬送ベルトの上面側が果菜搬送ライ
ンの一側方のみに配置された果菜引受け体方向に移動する回動であり,復回動は搬
送ベルトの上面側が当該往回動と反対方向へ移動する回動であり」,「前記スライド
ピンはその下端側が前記開口を貫通してフレームの底面下方に突出しており」,「前
記搬送ベルトの往回動は,前記ドライブチェーンの走行により移動される果菜キャ
リアのスライドピンが,果菜搬送ラインの下方に設けられた往ガイドに案内されて
フレームの前記開口内を移動することにより行われ」,「前記往回動させた果菜キャ
リアの搬送ベルトを,前記果菜送り出し後の移動中に前記往回動と反対側に復回動
させて,当該搬送ベルトの果菜載置部を元の位置に復帰させることにより,前記多
数の果菜キャリアの果菜載置部を搬送方向に一列又は略一列に並べ,前記搬送ベル
トの復回動は,果菜送り出し後に,前記ドライブチェーンの走行により移動される
果菜キャリアのスライドピンが,前記果菜搬送ラインの下方に設けられた戻りガイ
ドに案内されてフレームの前記開口内を移動することにより行われ」るようにした
ものであるのに対して,甲1発明1においては,「前記受け台8はガイドチェーン7
にその走行方向に多数取付けられ,前記受け台8の夫々は前記ガイドチェーン7に
取り付ける傾動式の台であ」る点。
〔相違点1-2〕
「果菜搬送ラインの仕分排出部において,果菜搬送中の前記果菜キャリアを駆動さ
せてその上の果菜を前記等階級計測部での判別結果に応じて果菜搬送方向側方に送
り出す」のに,「果菜キャリアを果菜搬送ラインの側方に往駆動させて,当該果菜キ
ャリアの果菜載置部の上の果菜を移動させることにより,果菜搬送方向側方に配置
された前記果菜引受け体の平ベルトの上面に送り出し」することに関し,本件訂正
後発明1においては,「果菜搬送ラインの仕分排出部において,果菜搬送中の前記果
菜キャリアを回動させてその上の果菜を前記等階級計測部での判別結果に応じて果
菜搬送方向側方に送り出す」のに,「果菜キャリアの搬送ベルトを果菜搬送ラインの
側方に往回動させて,当該搬送ベルトの果菜載置部の上の果菜を水平又は略水平に
移動させることにより,果菜搬送方向側方に配置された前記果菜引受け体の平ベル
トの上面に水平又は略水平に送り出し」するのに対して,甲1発明1においては,
「振分けコンベア2の振分け部4において,果菜物であるキューイKを搬送中の前
記受け台8を傾動させてその上の果菜物であるキューイKを前記判定部3での判別
結果に応じて果菜物であるキューイKの搬送方向側方に送り出す」のに,「受け台8
を振分けコンベア2の側方に往傾動させて,当該受け台8の果菜物を載置する部分
の上の果菜物であるキューイKを移動させることにより,果菜物であるキューイK
の搬送方向側方に配置された前記整列コンベア5の受けベルト15の上面に送り出
し」する点。
〔相違点1-3〕
「夫々の果菜キャリアの上側の一部に果菜を載せ置くことのできる果菜載置部が設
けられ」ることに関し,本件訂正後発明1においては,「夫々の果菜キャリアの搬送
ベルトの上側部分の一部に,トマト,桃,梨,メロンのいずれかの果菜を載せ置く
ことのできる果菜載置部が設けられ」るのに対して,甲1発明1においては,「夫々
の受け台8の上側の一部に果菜物であるキューイKを載せ置くことのできる果菜物
を載置する部分が設けられ」る点。
〔相違点1-4〕
「果菜を前記果菜キャリアに載せ」るのに,「前記移動中の果菜キャリアの果菜載置
部の上に,前記果菜供給部において,前記果菜を一つずつ載せ」ることに関し,本
件訂正後発明1においては,「果菜搬送ラインの幅方向側方から作業員がトマト,桃,
梨,メロンのいずれかの果菜を前記果菜キャリアに載せ」るのに,「前記移動中の果
菜キャリアの果菜載置部の上に,前記果菜供給部において,作業員が,果菜搬送ラ
インの搬送方向側方から前記果菜を一つずつ載せ」るものであって,「果菜送り出し
後に」,「それら復帰した果菜キャリアの果菜載置部に,前記果菜供給部において,
作業員が,果菜搬送ラインの搬送方向側方から果菜を一つずつ載せることができる
ようにした」のに対して,甲1発明1においては,「果菜物であるキューイKを前記
受け台8に載せ」るのに,「前記移動中の受け台8の果菜物を載置する部分の上に,
前記供給部9において,前記果菜物であるキューイKを一つずつ載せ」るようにし
た点。
〔相違点1-5〕
「果菜搬送ラインの前記仕分排出部の側方に,果菜引受け体が,果菜搬送方向に作
業間隔をあけて二以上配置され」ることに関し,本件訂正後発明1においては,「果
菜搬送ラインの前記仕分排出部の一側方のみに,平ベルトが回転するベルトコンベ
ア式の果菜引受け体が,果菜搬送方向に作業間隔をあけて二以上配置され」るのに
対して,甲1発明1においては,「振分けコンベア2の前記振分け部4の側方に,受
けベルト15が回転するベルトコンベア式の整列コンベア5が,果菜物であるキュ
ーイKの搬送方向に作業間隔をあけて二以上配置され」る点。
〔相違点1-6〕
「平ベルトは,その上面が所定の形状であり,その上面が果菜キャリアの搬送ベル
トの上面と所定の高さで水平又は略水平に配置され,果菜が果菜引受け体の平ベル
トの上面に所定の状態に送り込まれる際に間欠運転して,当該果菜を前記所定の形
状の上面に引き継いでプールすることができ」,「前記果菜引受け体の平ベルトを,
果菜が送り込まれる際に,果菜搬送ラインの搬送方向側方であって前記果菜が送り
込まれる方向に所定の距離だけ間欠運転させてその間欠運転による前記平ベルトの
回転により,当該平ベルトの上面に送り込まれる果菜を引継ぎ,果菜送り込みの際
の前記間欠運転の繰り返しにより,前記果菜キャリアの果菜載置部から送り込まれ
る果菜を前記果菜引受け体の平ベルトの前記所定の形状の上面に水平又は略水平に
二以上プール」することに関し,本件訂正後発明1においては,「平ベルトは,その
上面が果菜を受ける窪みのない平面状であり,その上面が果菜キャリアの搬送ベル
トの上面と同じ又は略同じ高さで水平又は略水平に配置され,果菜が果菜引受け体
の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り込まれるときに間欠運転して,当該果菜
を前記平面状の上面に水平又は略水平に引き継いでプールすることができ」,「前記
果菜引受け体の平ベルトを,果菜が水平又は略水平に送り込まれるときに,果菜搬
送ラインの搬送方向側方であって前記果菜が送り込まれる方向に果菜約1個分の距
離だけ間欠運転させてその間欠運転による前記平ベルトの回転により,当該平ベル
トの平面状の上面に水平又は略水平に送り込まれる果菜を水平又は略水平に引継ぎ,
果菜送り込み時の前記間欠運転の繰り返しにより,前記果菜キャリアの果菜載置部
から送り込まれる果菜を前記果菜引受け体の平ベルトの前記平面状の上面に水平又
は略水平に二以上プール」するのに対して,甲1発明1においては,「受けベルト1
5は,その上面が果菜物であるキューイKを受ける凹状の受け部15aを所定等間
隔に隔てて形成した形状であり,その上面が受け台8の果菜物を載置する部分より
下位の高さで水平又は略水平に配置され,果菜物であるキューイKが整列コンベア
5の受けベルト15の上面に形成された凹状の受け部15aにシュートを介して移
載されると,光電センサ20による検知に基づいて間欠的な回転駆動して,当該果
菜物であるキューイKを前記受けベルト15の上面に引き継いでプールすることが
でき」,「前記整列コンベア5の受けベルト15を,果菜物であるキューイKが前記
凹状の受け部15aにシュートを介して移載されると,振分けコンベア2の搬送方
向側方であって前記果菜物であるキューイKが移載される方向に1搬送ピッチ分だ
け間欠的な回転駆動させてその間欠的な回転駆動による前記受けベルト15の回転
により,当該記受けベルト15の上面に移載される果菜物であるキューイKを引継
ぎ,果菜物であるキューイKの移載時の間欠的な回転駆動の繰り返しにより,前記
受け台8の果菜物を載置する部分から移載される果菜物であるキューイKを前記整
列コンベア5の受けベルト15の前記果菜物であるキューイKを受ける凹状の受け
部15aを所定等間隔に隔てて形成した形状の上面に水平又は略水平に二以上プー
ルする」点。
〔相違点1-7〕
「所定の計測装置を備えた等階級計測部を通過させてその通過中に果菜の少なくと
も果菜の大きさを計測」することに関し,本件訂正後発明1においては,「画像処理
による計測装置を備えた等階級計測部を通過させてその通過中に果菜の少なくとも
大きさと形状を画像処理により計測」するのに対して,甲1発明1においては,「サ
イズを読取るサイズセンサ11と,品質を読取る品質センサ12と,重量を計量す
る重量センサ13を備えた判定部3を通過させてその通過中に果菜物であるキュー
イKの少なくともサイズ・品質・重量を計測」する点。
(イ)甲1発明1に甲2技術1を適用することについて
a相違点1-1について
(a)甲1発明1に甲2技術1を適用する動機付けはあるところ,甲
1発明1に甲2技術1を適用しても,次の事項を備えたものとはならない。
〔特定事項1-ア-A〕
果菜キャリアは果菜送り出し方向先方側と後方側に間隔をあけて平行に配置され
た二本のドライブチェーンにその走行方向に多数取付けられ,フレームは,果菜送
り出し方向先方側と後方側に取付け部を備え,先方側の取付け部は前記先方側のド
ライブチェーンに,後方側の取付け部は前記後方側のドライブチェーンに取り付け
られていること。
〔特定事項1-ア-B〕
フレームはその底面に,果菜送り出し方向に細長の開口を備え,搬送ベルトに連
結されたスライドピンはその下端側が前記開口を貫通し,前記スライドピンが前記
開口内を移動すること。
〔特定事項1-ア-C〕
フレームの果菜送り出し方向先方側と後方側に回転ローラが回転可能に取り付け
られること。
〔特定事項1-ア-D〕
先方側の回転ローラの少なくとも一部はフレームの果菜引受け体側の端部よりも
当該果菜引受け体側に突出し,かつ先方側のドライブチェーンよりも当該果菜引受
け体側に突出していること。
〔特定事項1-ア-E〕
搬送ベルトは,フレームの果菜送り出し方向先方側に設けられた先方側の回転ロ
ーラと,果菜送り出し方向後方側に設けられた後方側の回転ローラの外周に,平坦
に一周巻かれていること。
〔特定事項1-ア-F〕
果菜引受け体を果菜搬送ラインの一側方のみに配置すること。
(b)①〔特定事項1-ア-F〕について
果菜引受け体を果菜搬送方法の一側のみに設けるか,両側に設けるかは,果菜自
動選別送り出し装置の設置スペース,選別する果菜の処理量,作業者における作業
の容易性,果菜選別の前後の作業も含めた作業全体の効率等の作業場所の環境を考
慮して,当事者が適宜選択する事項である(甲1,甲4〔特開平2-4488号公
報〕,甲5〔実願平4-39182号・実開平6-23936号のCD-ROM〕)。
そうすると,甲1発明1において,整列コンベア5(本件訂正後発明1の「果菜
引受け体」に相当。)を振分けコンベア2(果菜搬送ライン)の一側方のみに配置し,
特定事項1-ア-Fを備えることは,当業者が適宜なし得たことである。
②〔特定事項1-ア-B〕について
「物品キャリアが多数設けられた物品搬送ラインの物品供給部において,物品を
載せ,前記物品搬送ラインの仕分排出部において,物品搬送中の前記物品キャリア
を回動させてその上の物品を物品搬送方向側方に送り出す,物品を選別・搬送する
方法に用いられる物品キャリアであって,フレームと,フレームに往復回動可能に
設けられた搬送ベルトと,搬送ベルトに連結されたスライドピンを備えた往復回動
式のベルトコンベアであり,前記搬送ベルトは,その上側部分が平坦又は略平坦な
状態で水平又は略水平に移動するように往復回動可能であり,前記搬送ベルトの往
回動は,移動される物品キャリアのスライドピンが,物品搬送ラインの下方に設け
られた往ガイドに案内されて移動することにより行われ,前記搬送ベルトの復回動
は,物品送り出し後に,移動される物品キャリアのスライドピンが,前記物品搬送
ラインの下方に設けられた復元用ガイドに案内されて移動することにより行われる
物品キャリアにおいて,フレームは,その底面に,物品送り出し方向に細長の開口
を備え,前記スライドピンはその下端側が前記開口を貫通してフレームの底面下方
に突出しており,スライドピンが,フレームの前記開口内を移動するようにするこ
と」は,本件特許の原出願(特願2008-151101号,出願日平成14年9
月11日。以下「原出願」という。)の出願前において周知の技術(以下「周知技術
1A」という。)である(甲9〔特開平1-242316号公報〕,甲10〔特公平
6-10044号公報〕,甲11〔特公平7-61810号公報〕)。
そして,周知技術1Aが,フレームの底面に,物品送り出し方向に細長の開口を
備えることにより,スライドピンの下端側をフレームの底面下方に突出させても,
フレームの底面の面積を極力大きくすることができ,それによって,物品キャリア
から落下する残滓が減少し,物品キャリア下方の清掃等のメンテナンスの頻度を少
なくすることができ,また,フレームの強度が低価するのを防止できることは,当
業者が容易に認識し得ることであるから,甲1発明1において,甲2技術1ととも
に周知技術1Aを適用し,特定事項1-ア-Bを備えることは,当業者が容易に想
到できたことである。
③〔特定事項1-ア-A〕について
「物品キャリア」を「間隔をあけて平行に配置されたドライブチェーンにその走
行方向に多数取付け」ることは,原出願の出願前において周知の技術(以下「周知
技術2」という。)である(甲5,9)。
そして,果菜引受け体を果菜搬送ラインの一側方のみに配置した甲1発明1にお
いて,甲2技術1とともに周知技術2を適用することにより,特定事項1-ア-A
を備えることは,当業者が容易に想到できたことである。
④〔特定事項1-ア-C~E〕について
ベルトコンベアにおいて,回転体の一部がフレームの物品搬送方向側の端部より
も物品搬送方向側に突出するようにしたものは,原出願の出願前にごく普通に知ら
れている(甲5)。
そして,果菜引受け体を果菜搬送ラインの一側方のみに配置した甲1発明1に甲
2技術1を適用したものにおいて,果菜キャリアから果菜引受け体に果菜を送り出
す際に,円滑な果菜の引継ぎを行うために,果菜キャリアのベルトコンベアの果菜
を送り出す側の端部と果菜引受け体の果菜を受ける側の端部とを連続的に設けるこ
とは通常の設計手法であって,そのような設計手法を採用した場合に,果菜引受け
体の果菜を受ける側の端部(整列コンベア5に付設されたシュートの果菜を受ける
側の端部)や先方側のドライブチェーンとの位置関係に応じて,先方側の回転体の
少なくとも一部はフレームの果菜引受け体側の端部よりも当該果菜引受け体側に突
出し,かつ先方側のドライブチェーンよりも当該果菜引受け体側に突出したものと
することは,当業者が適宜なし得る設計的事項である。
また,ベルトコンベアにおいて,搬送ベルトを,フレームの物品搬送方向側方の
一方側に設けられた一方側の回転ローラと,物品搬送方向側方の他方側に設けられ
た他方側の回転ローラの外周に,平坦に一周巻いたものは,原出願の出願前に技術
常識として知られていた。
しかし,甲1発明1において,受け台8を,甲2技術1に基づいて,移送シート
49を常態で中間部で窪んだ常態とし,搬送物を安定した保持するようにした往復
回動式のベルトコンベアに置換したものを,さらに,技術常識として知られたベル
トコンベアに置換することには,積極的な動機付けがない。
むしろ,甲2【0005】の記載によると,甲2技術1による往復回動式のベル
トコンベアを,技術常識として知られたベルトコンベアに置換することは阻害要因
があるともいえる。
そうすると,甲1発明1において,特定事項1-ア-C~Eを備えることは,当
業者が容易に想到できたことではない。
(c)したがって,甲1発明1において,甲2技術1,周知技術1A及
び周知技術2を考慮したとしても,相違点1-1に係る本件訂正後発明1の発明特
定事項とすることは,当業者が容易に想到できたことではない。
b相違点1-2について
甲1発明1に甲2技術1を適用しても,〔特定事項1-ア-G〕「搬送ベルトの果
菜載置部の上の果菜を果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り出し
すること。」を備えたものとはならない。
甲1発明1において,受け台8を甲2技術1による往復回動式のベルトコンベア
に置換したとしても,果菜は,上位に位置する往復回動式のベルトコンベアから下
位に位置する果菜引き受け体である整列コンベア5の受けベルト15の上面にシュ
ートを介して移動することになるところ,複数のコンベア間で,物品を水平又は略
水平に移載することが一般常識であるとしても,甲1発明1において,果菜物であ
るキューイKが整列コンベア5の受けベルト15の上面に形成された凹状の受け部
15aにシュートを介して移載されるようにしたのは,果菜物であるキューイKを
吸着ユニット35による吸着に適した所定間隔に離間して保持するために設けられ
た整列コンベア5の受けベルト15の上面に形成された凹状の受け部15aに対し
て,果菜物であるキューイKを確実に移載するためといえるから,これに代えて一
般常識を採用するのは困難である。
そうすると,甲1発明1において,特定事項1-ア-Gを備えることはできない
から,相違点1-2に係る本件訂正後発明1の発明特定事項とすることは,当業者
が容易に想到できたことではない。
c相違点1-3について
甲1発明1に甲2技術1を適用しても,〔特定事項1-ア-H〕「トマト,桃,梨,
メロンのいずれかの果菜を載せ置くことのできる果菜載置部。」を備えたものとは
ならない。
甲1発明1に甲2技術1を適用したものにおいて,夫々の果菜キャリアの搬送ベ
ルトの上側部分の一部に,キューイKを載せ置くことのできる果菜載置部が設けら
れたものとなるところ,キューイは転がりやすく,衝突等により傷みやすい果菜で
あり,同様の果菜として,トマト,桃,梨,メロンが存在することは,原出願の出
願前によく知られていたから,果菜物を載置する部分(果菜載置部)に載置するこ
とができる果菜を,キューイに代えて,トマト,桃,梨,メロンのいずれかの果菜
とし,特定事項1-ア-Hを備えることは,当業者が適宜なし得る設計的事項にす
ぎない。
そうすると,甲1発明1において,相違点1-3に係る本件訂正後発明1の発明
特定事項とすることは,当業者が適宜なし得たことである。
d相違点1-4について
甲1発明1に甲2技術1を適用しても,〔特定事項1-ア-I〕「果菜キャリアの
果菜載置部の上に,果菜供給部において,作業員が,果菜搬送ラインの搬送方向側
方から果菜を一つずつ載せることができるようにしたこと。」を備えたものとはな
らない。
甲4には,果菜自動選別送り出し方法及び装置において,果菜供給部における果
菜を載せる手段として,果菜搬送ラインの搬送方向側方から作業員が果菜を載せる
技術が記載されており,当該技術は原出願の出願前に周知の技術(以下「周知技術
3」という。)である。
また,甲1発明1に甲2技術1を適用したものにおいては,果菜送り出し後に,
復帰した果菜キャリアの果菜載置部に,果菜供給部において,果菜を一つずつ載せ
ることができるようにされたものとなる。
そして,甲1発明1において,甲2技術1を適用するとともに,供給部9(果菜
供給部)における果菜を載せる手段として,周知技術3を採用することにより,特
定事項1-ア-Iを備えることになる。
そうすると,甲1発明1において,甲2技術1を適用するとともに,周知技術3
を採用することにより,相違点1-4に係る本件訂正後発明1の発明特定事項とす
ることは,当業者が容易に想到できたことである。
e相違点1-5について
前記a(b)①における特定事項1-ア-Fと同様の理由により,甲1発明1にお
いて,振分けコンベア2(果菜搬送ライン)の振分け部4(仕分け排出部)の一側
方のみに,受けベルト15(平ベルト)が回転するベルトコンベア式の整列コンベ
ア5(果菜引受け体)が,果菜物であるキューイK(果菜)搬送方向に作業間隔を
あけて二以上配置されるようにし,相違点1-5に係る本件訂正後発明1の発明特
定事項とすることは,当業者が適宜なし得たことである。
f相違点1-6について
甲1発明1においては,果菜物であるキューイKが受け台8の果菜物を載置する
部分からその下位に位置する整列コンベア5の受けベルト15の上面に形成された
凹状の受け部15aにシュートを介して移載されると,光電センサ20による検知
に基づいて受けベルト15を1搬送ピッチ分だけ間欠的な回転駆動して,果菜物で
あるキューイKを受けベルト15の上面に引き継いでプールするものであり,果菜
が果菜キャリアの果菜載置部からその下位に位置する果菜引受け体の平ベルトの上
面に送り込まれた後に,平ベルトを1搬送ピッチ分だけ間欠運転して,果菜を平ベ
ルトの上面に引き継いでプールするものといえ,本件訂正後発明1のように果菜が
果菜キャリアの搬送ベルトの果菜載置部から搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高
さの果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り込まれるときに平ベル
トを果菜約1個分の距離だけ間欠運転して,果菜を平ベルトの上面に水平又は略水
平に引き継いでプールするものではないところ,相違点1-2についての検討を踏
まえると,甲1発明1において,果菜を果菜キャリアの果菜載置部から平ベルトの
上面に水平又は略水平に引き継ぐものとすることはできず,また,果菜が果菜キャ
リアの搬送ベルトの果菜載置部から搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高さの果菜
引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り込まれるときに平ベルトを果菜
約1個分の距離だけ間欠運転して,果菜を平ベルトの上面に水平又は略水平に引き
継いでプールすることについては,各甲号証には記載も示唆もされていない。
ところで,甲1発明1において,受けベルト15を1搬送ピッチ分だけ間欠的な
回転駆動するところ,果菜物であるキューイKを吸着ユニット35による吸着に適
した所定間隔に離間させるものであり,所定間隔が,果菜物であるキューイKの箱
詰めをするための間隔であることを考慮すると,受けベルト15を果菜約1個分の
距離だけ間欠な回転駆動するように構成することは,当業者が適宜なし得ることで
ある。
そうすると,甲1発明1において,果菜が果菜キャリアの搬送ベルトの果菜載置
部から搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高さの果菜引受け体の平ベルトの上面に
水平又は略水平に送り込まれるときに平ベルトを果菜約1個分の距離だけ間欠運転
して,果菜を平ベルトの上面に水平又は略水平に引き継いでプールすることは,当
業者が容易に想到できたことではない。
また,甲1発明1における整列コンベア5の受けベルト15の上面は,果菜物で
あるキューイKを吸着ユニット35による吸着に適した所定間隔に離間して保持す
るために,凹状の受け部15aが形成されているところ,受けベルト15の上面に
形成された凹状の受け部15aを取り除き,受けベルト15の上面を平面状とする
と,吸着ユニット35による果菜物であるキューイKの吸着が適切に行えなくなる
ことから,甲1発明1において,整列コンベア5の受けベルト15の上面を果菜を
受ける窪みのない平面状とすることは,当業者が容易に想到できたことではない。
したがって,甲1発明1において,相違点1-6に係る本件訂正後発明1の発明
特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたことではない。
g相違点1-7について
果菜自動選別送り出し方法及び装置において,果菜の選別事項に果菜の大きさに
加えて形状も入れる技術は,原出願の出願前に周知の技術(以下「周知技術4」と
いう。)である(甲5)。
そうすると,甲1発明1において,判定部3(等階級計測部)の計測事項として,
周知技術4を採用し,相違点1-7に係る本件訂正後発明1の発明特定事項とする
ことは,当業者が容易に想到できたことである。
h効果について
本件訂正後発明1は,果菜の転倒を防止することができ,転がり等をほぼ防止で
きる安全な仕分けが可能となり,痛みが生じやすい,桃や梨などの選果にも利用す
ることができるという効果や,平ベルト上に間隔を詰めて果菜3をプールすること
ができるという効果を奏するものである。
i小括
以上のとおり,甲1発明1において,相違点1-1,1-2及び1-6に係る本
件訂正後発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたことでは
ない。
したがって,本件訂正後発明1は,甲1発明1,甲2技術1,周知技術1A及び
周知技術2~4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)甲1発明1に甲3技術1を適用することについて
a相違点1-1について
(a)甲1発明1に甲3技術1を適用する動機付けはあるところ,甲
1発明1に甲3技術1を適用しても,次の事項を備えたものとはならない。
〔特定事項1-イ-A〕
果菜キャリアは果菜送り出し方向先方側と後方側に間隔をあけて平行に配置され
た二本のドライブチェーンにその走行方向に多数取付けられ,フレームは,果菜送
り出し方向先方側と後方側に取付け部を備え,先方側の取付け部は前記先方側のド
ライブチェーンに,後方側の取付け部は前記後方側のドライブチェーンに取り付け
られていること。
〔特定事項1-イ-B〕
果菜キャリアの夫々は,搬送ベルトに連結されたスライドピンを備え,フレーム
は,その底面に,果菜送り出し方向に細長の開口を備え,前記スライドピンはその
下端側が前記開口を貫通してフレームの底面下方に突出しており,前記搬送ベルト
の往回動は,ドライブチェーンの走行により移動される果菜キャリアのスライドピ
ンが,果菜搬送ラインの下方に設けられた往ガイドに案内されてフレームの前記開
口内を移動することにより行われ,前記搬送ベルトの復回動は,果菜送り出し後に,
前記ドライブチェーンの走行により移動される果菜キャリアのスライドピンが,前
記果菜搬送ラインの下方に設けられた戻りガイドに案内されてフレームの前記開口
内を移動することにより行われること。
〔特定事項1-イ-C〕
フレームの果菜送り出し方向先方側と後方側に回転ローラが回転可能に取り付け
られること。
〔特定事項1-イ-D〕
先方側の回転ローラの少なくとも一部はフレームの果菜引受け体側の端部よりも
果菜引受け体側に突出し,かつ先方側のドライブチェーンよりも果菜引受け体側に
突出していること。
〔特定事項1-イ-E〕
搬送ベルトは,フレームの果菜送り出し方向先方側に設けられた先方側の回転ロ
ーラと,果菜送り出し方向後方側に設けられた後方側の回転ローラの外周に,平坦
に一周巻かれていること。
〔特定事項1-イ-F〕
果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体。
(b)①〔特定事項1-イ-F〕について
特定事項1-ア-Fについての検討と同様の理由により,甲1発明1において,
整列コンベア5(果菜引受け体)を振分けコンベア2(果菜搬送ライン)の一側方
のみに配置し,特定事項1-イ-Fを備えることは,当業者が適宜なし得たことで
ある。
②〔特定事項1-イ-A〕について
特定事項1-ア-Aについての検討を踏まえると,果菜引受け体を果菜搬送ライ
ンの一側方のみに配置した甲1発明1において,甲3技術1とともに周知技術2を
適用することにより,特定事項1-イ-Aを備えることは,当業者が容易に想到で
きたことである。
③〔特定事項1-イ-B〕について
「物品キャリアが多数設けられた物品搬送ラインの物品供給部において,物品を
載せ,前記物品搬送ラインの仕分排出部において,物品搬送中の前記物品キャリア
を回動させてその上の物品を物品搬送方向側方に送り出す,物品を選別・搬送する
方法に用いられる物品キャリアであって,フレームと,フレームに往復回動可能に
設けられた搬送ベルトを備えた往復回動式のベルトコンベアであり,前記搬送ベル
トは,その上側部分が平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往
復回動可能である物品キャリアにおいて,前記搬送ベルトに連結されたスライドピ
ンを備え,前記フレームは,その底面に,物品送り出し方向に細長の開口を備え,
前記スライドピンはその下端側が前記開口を貫通してフレームの底面下方に突出し
ており,前記搬送ベルトの往回動は,移動される物品キャリアのスライドピンが,
物品搬送ラインの下方に設けられた往ガイドに案内されてフレームの前記開口内を
移動することにより行われ,前記搬送ベルトの復回動は,物品送り出し後に,移動
される物品キャリアのスライドピンが,前記物品搬送ラインの下方に設けられた戻
りガイドに案内されてフレームの前記開口内を移動することにより行われるように
すること」は,原出願の出願前において周知の技術(以下「周知技術1B」という。)
である(甲9~11)。
そして,周知技術1Bによると,物品搬送ラインの下方には,搬送ベルトの駆動
部材として往ガイド及び戻りガイドを設けるのみであり,物品搬送ラインの敷設が
容易となり,また,メンテナンスも主に物品キャリアについて行うことになるため,
メンテナンスの容易化も図れるから,甲1発明1において,甲3技術1とともに周
知技術1Bを適用し,特定事項1-イ-Bを備えることは,当業者が容易に想到で
きたことである。
④〔特定事項1-イ-C~E〕について
甲1発明1において,甲3技術1を適用するとともに,特定事項1-イ-Fを備
えることに伴い,特定事項1-イ-C及び特定事項1-イ-Eを備えるものとなる。
また,ベルトコンベアにおいて,回転ローラの一部がフレームの物品搬送方向側
の端部よりも物品搬送方向側に突出するようにしたものは,原出願の出願前にごく
普通に知られている(甲5)。
そして,甲1発明1において,特定事項1-イ-Cを備えたもの(フレームの果
菜送り出し方向先方側と後方側に回転ローラが回転可能に取り付けられたもの)と
することができるところ,果菜キャリアから果菜引受け体に果菜を送り出す際に,
円滑な果菜の引継ぎを行うために,果菜キャリアのベルトコンベアの果菜を送り出
す側の端部と果菜引受け体の果菜を受ける側の端部(整列コンベア5に付設された
シュートの果菜を受ける側の端部)とを連続的に設けることは通常の設計手法であ
って,そのような設計手法を採用した場合に,果菜引受け体の果菜を受ける側の端
部や先方側のドライブチェーンとの位置関係に応じて,先方側の回転体の少なくと
も一部はフレームの果菜引受け体側の端部よりも当該果菜引受け体側に突出し,か
つ先方側のドライブチェーンよりも当該果菜引受け体側に突出したものとし,甲1
発明1において,特定事項1-イ-Dを備えることは,当業者が適宜なし得る設計
的事項である。
(c)したがって,甲1発明1において,甲3技術1,周知技術1B及
び周知技術2に基づき,相違点1-1に係る本件訂正後発明1の発明特定事項とす
ることは,当業者が容易に想到できたことである。
b相違点1-2について
甲1発明1に甲3技術1を適用しても,〔特定事項1-イ-G〕「搬送ベルトの果
菜載置部の上の果菜を果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り出し
すること。」を備えたものとはならない。
前記(イ)bにおける相違点1-2についての検討を踏まえると,甲1発明1にお
いて,特定事項1-イ-Gを備えることはできず,相違点1-2に係る本件訂正後
発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたことではない。
c相違点1-3について
甲1発明1に甲3技術1を適用しても,〔特定事項1-イ-H〕「トマト,桃,梨,
メロンのいずれかの果菜を載せ置くことのできる果菜載置部。」を備えたものとは
ならない。
前記(イ)cにおける相違点1-3についての検討を踏まえると,甲1発明1にお
いて,特定事項1-イ-Hを備えることは,当業者が適宜なし得る設計的事項にす
ぎず,甲1発明1において,相違点1-3に係る本件訂正後発明1の発明特定事項
とすることは,当業者が適宜なし得たことである。
d相違点1-4について
果菜自動選別送り出し方法及び装置において,果菜供給部における果菜を載せる
手段として,果菜搬送ラインの搬送方向側方から作業員が果菜を載せる技術は,周
知の技術(周知技術3)である。
また,甲1発明1に甲3技術1を適用したものにおいて,果菜載置部に載置する
ことができる果菜を,キューイに代えて,トマト,桃,梨,メロンのいずれかの果
菜とすることは,当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
さらに,甲1発明1に甲3技術1を適用したものにおいては,果菜送り出し後に,
復帰した果菜キャリアの果菜載置部に,果菜供給部において,果菜を一つずつ載せ
ることができるようにされたものとなる。
そうすると,甲1発明1において,甲3技術1を適用するとともに,果菜供給部
における果菜を載せる手段として,周知技術3を採用することにより,相違点1-
4に係る本件訂正後発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到でき
たことである。
e相違点1-5について
前記a(b)①における特定事項1-イ-Fについての検討と同様の理由により,
甲1発明1において,振分けコンベア2(果菜搬送ライン)の振分け部4(仕分け
排出部)の一側方のみに,受けベルト15(平ベルト)が回転するベルトコンベア
式の整列コンベア5(果菜引受け体)が,果菜物であるキューイK(果菜)搬送方
向に作業間隔を空けて二以上配置されるようにし,相違点1-5に係る本件訂正後
発明1の発明特定事項とすることは,当業者が適宜なし得たことである。
f相違点1-6について
前記(イ)fにおける相違点1-6についての検討を踏まえると,甲1発明1にお
いて,相違点1-6に係る本件訂正後発明1の発明特定事項とすることは,当業者
が容易に想到できたことではない。
g相違点1-7について
前記(イ)gにおける相違点1-7についての検討を踏まえると,甲1発明1にお
いて,判定部3(等階級計測部)の計測事項として,周知技術4を採用し,相違点
1-7に係る本件訂正後発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到
できたことである。
h効果について
前記(イ)hと同じ。
i小括
以上のとおり,甲1発明1において,相違点1-2及び1-6に係る本件訂正後
発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたことではない。
したがって,本件訂正後発明1は,甲1発明1,甲3技術1,周知技術1B及び
周知技術2~4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ本件訂正後発明2について
本件訂正後発明2は,本件訂正後発明1をさらに減縮したものであり,本件訂正
後発明1の検討を踏まえると,甲1発明2,甲2技術1,周知技術1A及び2~4
に基づいて,又は,甲1発明2,甲3技術1,周知技術1B及び2~4に基づいて,
当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ本件訂正後発明3について
(ア)対比
本件訂正後発明3と甲1発明3との相違点は,次のとおりである。
〔相違点3-1〕
「果菜キャリア」に関し,本件訂正後発明3においては,「前記ドライブチェーン
は果菜キャリアの果菜送り出し方向先方側のドライブチェーンと,果菜送り出し方
向後方側のドライブチェーンの少なくとも二本であり,それら両ドライブチェーン
は果菜送り出し方向に間隔をあけて平行に配置されており,前記果菜キャリアは間
隔をあけて平行に配置された前記二本のドライブチェーンにその走行方向に多数取
付けられ,前記果菜キャリアの夫々は前記ドライブチェーンに取付けるフレームと,
フレームに往復回動可能に設けられた搬送ベルトと,搬送ベルトに連結されたスラ
イドピンを備えた往復回動式のベルトコンベアであり,前記フレームは,前記ドラ
イブチェーンに取付ける取付け部を備え,取付け部は果菜送り出し方向先方側と後
方側に設けられており,前記フレームの果菜送り出し方向先方側と後方側に回転ロ
ーラが回転可能に取り付けられ,先方側の回転ローラの少なくとも一部は前記フレ
ームの前記果菜引受け体側の端部よりも当該果菜引受け体側に突出し,かつ前記先
方側のドライブチェーンよりも当該果菜引受け体側に突出しており,前記フレーム
はその底面に,果菜送り出し方向に細長の開口を備え,前記搬送ベルトは,前記先
方側の回転ローラと,前記後方側の回転ローラの外周に平坦に一周巻かれて,その
上側部分が平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回動可能
であり,前記往復回動のうち往回動は搬送ベルトの上面が果菜搬送ラインの一側方
のみに配置された果菜引受け体方向へ移動する回動であり,復回動は搬送ベルトの
上面が当該往回動と反対方向に移動する回動であり」,「前記スライドピンはその下
端側が前記開口を貫通してフレームの底面下方に突出しており」,「前記多数の果菜
キャリアは,その果菜載置部が果菜搬送ラインの搬送方向に一列又は略一列に並ん
で水平に搬送されるように,先方側の取付け部が前記先方側のドライブチェーンに,
後方側の取付け部が前記後方側のドライブチェーンに取り付けられて配置されてお
り,そのドライブチェーンの走行により夫々の果菜載置部に載せた果菜が等階級計
測部を一列又は略一列に並んで通過することができ」,「前記搬送ベルトの往回動は,
前記ドライブチェーンの走行により移動される果菜キャリアのスライドピンが,果
菜搬送ラインの下方に設けられた往ガイドに案内されてフレームの前記開口内を移
動することにより行われ」,「前記果菜送り出し後の搬送ベルトは,前記往回動方向
と逆方向に復回動して,果菜載置部が元の位置に復帰して,前記多数の果菜キャリ
アの果菜載置部を搬送方向に一列又は略一列に並べることができ,前記搬送ベルト
の復回動は,果菜送り出し後に,前記ドライブチェーンの走行により移動される果
菜キャリアのスライドピンが,前記果菜搬送ラインの下方に設けられた戻りガイド
に案内されてフレームの前記開口内を移動することにより行われる」ようにしたも
のであるのに対して,甲1発明3においては,「前記受け台8はガイドチェーン7に
その走行方向に多数取付けられ」,「前記受け台8の夫々は前記ガイドチェーン7に
取り付ける傾動式の台であり」,「前記多数の受け台8は,その果菜物を載置する部
分が振分けコンベア2の搬送方向に一列又は略一列に並んで搬送されるように,ガ
イドチェーン7に取り付けられて配置されており,そのガイドチェーン7の走行に
より夫々の果菜物を載置する部分に載せた果菜物であるキューイKが判定部3を一
列又は略一列に並んで通過することができ」る点。
〔相違点3-2〕
「各々の果菜キャリアは,前記仕分排出部において果菜搬送ラインの側方に往駆
動して,果菜載置部に載せてある果菜を,前記計測に基づく等階級判別結果に応じ
て前記果菜引受け体の平ベルトの上面に送り出し可能であ」ることに関して,本件
訂正後発明3においては,「各々の果菜キャリアの搬送ベルトは,前記仕分排出部に
おいて果菜搬送ラインの側方の果菜引受け体側に往回動して,果菜載置部に載せて
ある果菜を,前記計測に基づく等階級判別結果に応じて前記果菜引受け体の平ベル
トの上面に水平又は略水平に送り出し可能であ」るのに対して,甲1発明3におい
ては,「各々の受け台8は,前記振分け部4において振分けコンベア2の側方に往傾
動して,果菜物を載置する部分に載せてある果菜物であるキューイKを,前記計測
に基づく等階級判別結果に応じて前記整列コンベア5の受けベルト15の上面に送
り出し可能であ」る点。
〔相違点3-3〕
「夫々の果菜キャリアの上側の一部に果菜を載せ置くことのできる果菜載置部が
設けられ」ることに関して,本件訂正後発明3においては,「夫々の果菜キャリアの
搬送ベルトの上側部分の一部に,トマト,桃,梨,メロンのいずれかの果菜を載せ
置くことのできる果菜載置部が設けられ」るのに対して,甲1発明3においては,
「夫々の受け台8の上側の一部に果菜物であるキューイKを載せ置くことのできる
果菜物を載置する部分が設けられ」る点。
〔相違点3-4〕
「果菜搬送ラインに,果菜キャリアに果菜を載せる果菜供給部が設けられ」,「前
記果菜載置部は,前記果菜供給部において,果菜を一つずつ載せることができ」る
ことに関して,本件訂正後発明3においては,「果菜搬送ラインに,その幅方向側方
から,作業員が,果菜キャリアに果菜を載せる果菜供給部が設けられ」,「前記果菜
載置部は,前記果菜供給部において,作業員が,果菜搬送ラインの搬送方向側方か
ら果菜を一つずつ載せることができ」るのに対して,甲1発明3においては,「振分
けコンベア2に,受け台8に果菜物であるキューイKを載せる供給部9が設けられ」,
「前記果菜物を載置する部分は,前記供給部9において,果菜物であるキューイK
を一つずつ載せることができ」る点。
〔相違点3-5〕
「果菜搬送方向側方に配置された果菜引受け体」に関して,本件訂正後発明3に
おいては,「果菜搬送方向の一側方のみに配置された果菜引受け体」であるのに対し
て,甲1発明3においては,「果菜物であるキューイKの搬送方向側方に配置された
整列コンベア5」である点。
〔相違点3-6〕
「上面が所定の形状の平ベルトが回転する果菜引受け体」であって,「前記果菜引
受け体は,その平ベルトの上面が前記果菜キャリアの搬送ベルトの上面と所定の高
さで水平又は略水平に配置されており」,「前記果菜引受け体の平ベルトは果菜が水
平又は略水平に送り込まれる際に,果菜搬送ラインの搬送方向側方であって前記送
り込み方向に間欠運転して,その間欠運転による前記平ベルトの回転により当該平
ベルトの上面に果菜を引継ぎ,果菜送り込み時の間欠運転の繰り返しにより,前記
果菜キャリアの果菜載置部から送り込まれる果菜を前記果菜引受け体の平ベルトの
上面に二以上プールすることができる長さのベルトコンベアである」ことに関して,
本件訂正後発明3においては,「上面に果菜を受ける窪みがない平面状の平ベルト
が回転する果菜引受け体」であって,「前記果菜引受け体は,その平ベルトの上面が
前記果菜キャリアの搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高さで水平又は略水平に配
置されており」,「前記果菜引受け体の平ベルトは果菜が水平又は略水平に送り込ま
れるときに,果菜搬送ラインの搬送方向側方であって前記送り込み方向に間欠運転
して,その間欠運転による前記平ベルトの回転により当該平ベルトの上面に果菜を
水平又は略水平に引継ぎ,果菜送り込み時の間欠運転の繰り返しにより,前記果菜
キャリアの果菜載置部から送り込まれる果菜を前記果菜引受け体の平ベルトの上面
に二以上プールすることができる長さのベルトコンベアであ」るのに対して,甲1
発明3においては,「上面に果菜物であるキューイKを受ける凹状の受け部15a
を所定等間隔に隔てて形成した形状の受けベルト15が回転する整列コンベア5」
であって,「前記整列コンベア5は,その受けベルト15の上面が受け台8の果菜物
を載置する部分より下位の高さで水平又は略水平に配置されており」,「前記整列コ
ンベア5の受けベルト15は果菜物であるキューイKが前記凹状の受け部15aに
シュートを介して移載されると,振分けコンベア2の搬送方向側方であって前記果
菜物であるキューイKが移載される方向に間欠的な回転駆動して,その間欠的な回
転駆動による前記受けベルト15の回転により当該受けベルト15の上面に果菜物
であるキューイKを引継ぎ,果菜物であるキューイKの移載時の間欠的な回転駆動
の繰り返しにより,前記受け台8の果菜物を載置する部分から移載される果菜物で
あるキューイKを前記整列コンベア5の受けベルト15の上に二以上プールするこ
とができる長さのベルトコンベアである」点。
〔相違点3-7〕
「前記等階級計測部は所定の計測装置を備え,果菜載置部に載せられて一列又は
略一列に並んで搬送される果菜の少なくとも大きさを計測でき」ることに関して,
本件訂正後発明3においては,「前記等階級計測部は画像処理による計測装置を備
え,果菜載置部に載せられて一列又は略一列に並んで搬送されるトマト,桃,梨,
メロンのいずれかの果菜の少なくとも大きさと形状を画像処理により計測でき」る
のに対して,甲1発明3においては,「前記判定部3はサイズを読取るサイズセンサ
11と,品質を読取る品質センサ12と,重量を計量する重量センサ13を備え,
果菜物を載置する部分に載せられて一列又は略一列に並んで搬送される果菜物であ
るキューイKの少なくともサイズ・品質・重量を計測でき」る点。
(イ)甲1発明3に甲2技術2を適用することについて
a相違点3-1について
(a)甲1発明3に甲2技術2を適用する動機付けはあるところ,甲1
発明3に甲2技術2を適用しても,次の事項を備えたものとはならない。
〔特定事項3-ア-A〕
ドライブチェーンは果菜キャリアの果菜送り出し方向先方側のドライブチェーン
と,果菜送り出し方向後方側のドライブチェーンの少なくとも二本であり,それら
両ドライブチェーンは果菜送り出し方向に間隔をあけて平行に配置されており,果
菜キャリアは間隔をあけて平行に配置された前記二本のドライブチェーンにその走
行方向に多数取付けられ,フレームは,前記ドライブチェーンに取付ける取付け部
を備え,取付け部は果菜送り出し方向先方側と後方側に設けられており,前記多数
の果菜キャリアは,その果菜載置部が果菜搬送ラインの搬送方向に一列又は略一列
に並んで水平に搬送されるように,先方側の取付け部が前記先方側のドライブチェ
ーンに,後方側の取付け部が前記後方側のドライブチェーンに取り付けられて配置
されていること。
〔特定事項3-ア-B〕
フレームの果菜送り出し方向先方側と後方側に回転ローラが回転可能に取り付け
られること。
〔特定事項3-ア-C〕
先方側の回転ローラの少なくとも一部は前記フレームの果菜引受け体側の端部よ
りも果菜引受け体側に突出し,かつ先方側のドライブチェーンよりも果菜引受け体
側に突出していること。
〔特定事項3-ア-D〕
フレームは,その底面に,果菜送り出し方向に細長の開口を備え,スライドピン
はその下端側が前記開口を貫通してフレームの底面下方に突出しており,前記スラ
イドピンが前記開口内を移動すること。
〔特定事項3-ア-E〕
搬送ベルトは,フレームの果菜送り出し方向先方側に設けられた先方側の回転ロ
ーラと,果菜送り出し方向後方側に設けられた後方側の回転ローラの外周に,平坦
に一周巻かれていること。
〔特定事項3-ア-F〕
果菜引受け体を果菜搬送ラインの一側方のみに配置すること。
(b)①〔特定事項3-ア-F〕について
前記イ(イ)a(b)①における特定事項1-ア-Fについての検討と同様の理由によ
り,甲1発明3において,整列コンベア5(果菜引受け体)を振分けコンベア2(果
菜搬送ライン)の一側方のみに配置し,特定事項3-ア-Fを備えることは,当業
者が適宜なし得たことである。
②〔特定事項3-ア-D〕について
「物品キャリアが多数設けられた物品搬送ラインに,物品キャリアに物品を載せ
る物品供給部が設けられ,物品キャリアによって物品搬送方向側方に送り出す仕分
排出部が設けられた物品自動選別送り出し装置に用いられる物品キャリアであって,
フレームと,フレームに往復回動可能に設けられた搬送ベルトと,搬送ベルトに連
結されたスライドピンを備えた往復回動式のベルトコンベアであり,前記搬送ベル
トは,その上側部分が平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往
復回動可能であり,前記搬送ベルトの往回動は,移動される物品キャリアのスライ
ドピンが,物品搬送ラインの下方に設けられた往ガイドに案内されて移動すること
により行われ,前記搬送ベルトの復回動は,物品送り出し後に,移動される物品キ
ャリアのスライドピンが,前記物品搬送ラインの下方に設けられた戻りガイドに案
内されて移動することにより行われる物品キャリアにおいて,フレームは,その底
面に,物品送り出し方向に細長の開口を備え,前記スライドピンはその下端側が前
記開口を貫通してフレームの底面下方に突出しており,スライドピンが,フレーム
の前記開口内を移動するようにすること」は,原出願の出願前において周知の技術
(以下「周知技術1C」という。)である(甲9~11)。
そして,周知技術1Cが,フレームの底面に,物品送り出し方向に細長の開口を
備えることにより,スライドピンの下端側をフレームの底面下方に突出させても,
フレームの底面の面積を極力大きくすることができ,それによって,物品キャリア
から落下する残滓が減少し,物品キャリア下方の清掃等のメンテナンスの頻度を少
なくすることができ,また,フレームの強度が低下するのを防止できることは,当
業者が容易に認識できることであるから,甲1発明3において,甲2技術2ととも
に周知技術1Cを適用し,特定事項3-ア-Dを備えることは,当業者が容易に想
到できたことである。
③〔特定事項3-ア-A〕について
「物品キャリア」を「間隔をあけて平行に配置されたドライブチェーンにその走
行方向に多数取付け」ることは,原出願の出願前において周知の技術(周知技術2)
である(甲5,9)。
そして,甲1発明3に甲2技術2を適用したものにおいて,スライドピンによる
搬送ベルトの動作を妨げないように,果菜キャリア(受け台8)のフレームはドラ
イブチェーン(ガイドチェーン7)に取り付けられるところ,その取り付け状態に
よっては果菜キャリアの走行が不安定となるため,果菜キャリアの安定した走行を
可能とすべく,果菜キャリアをドライブチェーンに取り付けることは当然に考慮さ
れることであるから,果菜引受け体を果菜搬送ラインの一側方のみに配置した甲1
発明3において,甲2技術2とともに周知技術2を適用することは,当業者が容易
に着想し得ることである。
また,甲1発明3において,多数の受け台8(果菜キャリア)は,その果菜物を
載置する部分(果菜載置部)が振分けコンベア2(果菜搬送ライン)の搬送方向に
一列又は略一列に並んで搬送されるところ,果菜物(果菜)の搬送中に,果菜物を
載置する部分(果菜載置部)から落下するのを防止するために,果菜物を載置する
部分(果菜載置部)を水平に搬送することは,当業者が当然に考慮することである。
そうすると,甲1発明3において,甲2技術2及び周知技術2を適用することに
より,特定事項3-ア-Aを備えることは,当業者が容易に想到できたことである。
④〔特定事項3-ア-B,C及びE〕について
ベルトコンベアにおいて,回転ローラ(回転体)の一部がフレームの物品搬送方
向側の端部よりも物品搬送方向側に突出するようにしたものは,原出願の出願前に
ごく普通に知られている(甲5)。
そして,果菜引受け体を果菜搬送ラインの一側方のみに配置した甲1発明3に甲
2技術2を適用したものにおいて,果菜キャリアから果菜引受け体に果菜を送り出
す際に,円滑な果菜の引継ぎを行うために,果菜キャリアのベルトコンベアの果菜
を送り出す側の端部と果菜引受け体の果菜を受ける側の端部(整列コンベア5に付
設されたシュートの果菜を受ける側の端部)とを連続的に設けることは通常の設計
手法であって,そのような設計手法を採用した場合に,果菜引受け体の果菜を受け
る側の端部や先方側のドライブチェーンとの位置関係に応じて,先方側の回転体の
少なくとも一部はフレームの果菜引受け体側の端部よりも当該果菜引受け体側に突
出し,かつ先方側のドライブチェーンよりも当該果菜引受け体側に突出したものと
することは,当業者が適宜なし得る設計的事項である。
また,ベルトコンベアにおいて,搬送ベルトを,フレームの物品搬送方向側方の
一方側に設けられた一方側の回転ローラと,物品搬送方向側方の他方側に設けられ
た他方側の回転ローラの外周に,平坦に一周巻いたものは,原出願の出願前に技術
常識として知られている。
しかし,甲1発明3において,受け台8を,甲2技術2に基づいて,移送シート
49を常態で中間部で窪んだ常態とし,搬送物を安定した保持するようにした往復
回動式のベルトコンベアに置換したものを,さらに,技術常識として知られたベル
トコンベアに置換することには,積極的な動機付けがない。
むしろ,甲2の【0005】の記載によると,甲2技術1による往復回動式のベ
ルトコンベアを,技術常識として知られたベルトコンベアに置換することは阻害要
因があるともいえる。
そうすると,甲1発明3において,特定事項3-ア-B,C及びEを備えること
は,当業者が容易に想到できたことではない。
(c)したがって,甲1発明3において,甲2技術2,周知技術1C及
び2を考慮したとしても,相違点3-1に係る本件訂正後発明3の発明特定事項と
することは,当業者が容易に想到できたことではない。
b相違点3-2について
甲1発明3に甲2技術2を適用しても,〔特定事項3-ア-G〕「搬送ベルトの果
菜載置部に載せてある果菜を,果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に
送り出しすること。」を備えたものとはならない。
甲1発明3において,受け台8を甲2技術2による往復回動式のベルトコンベア
に置換したとしても,果菜は,上位に位置する往復回動式のベルトコンベアから下
位に位置する果菜引き受け体である整列コンベア5の受けベルト15の上面にシュ
ートを介して移動することになるところ,原出願の出願前に,複数のコンベア間で,
物品を水平又は略水平に移載することが一般常識であるとしても,甲1発明3にお
いて,果菜物であるキューイKが整列コンベア5の受けベルト15の上面に形成さ
れた凹状の受け部15aにシュートを介して移載されるようにしたのは,果菜物で
あるキューイKを吸着ユニット35による吸着に適した所定間隔に離間して保持す
るために設けられた整列コンベア5の受けベルト15の上面に形成された凹状の受
け部15aに対して,果菜物であるキューイKを確実に移載するためといえる(甲
1)から,これに代えて一般常識を採用するのは困難である。
そうすると,甲1発明3において,特定事項3-ア-Gを備えることはできない
から,相違点3-2に係る本件訂正後発明3の発明特定事項とすることは,当業者
が容易に想到できたことではない。
c相違点3-3について
甲1発明3に甲2技術2を適用しても,〔特定事項3-ア-H〕「トマト,桃,梨,
メロンのいずれかの果菜を載せ置くことのできる果菜載置部。」を備えたものとは
ならない。
前記イ(イ)cにおける相違点1-3についての検討と同様の理由により,果菜物
を載置する部分(果菜載置部)に載置することができる果菜を,キューイに代えて,
トマト,桃,梨,メロンのいずれかの果菜とし,特定事項3-ア-Hを備えること
は,当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
そうすると,甲1発明3において,相違点3-3に係る本件訂正後発明3の発明
特定事項とすることは,当業者が適宜なし得たことである。
d相違点3-4について
果菜自動選別送り出し方法及び装置において,果菜供給部における果菜を載せる
手段として,果菜搬送ラインの搬送方向側方から作業員が果菜を載せる技術は,原
出願の出願前に周知の技術(周知技術3)である。
そうすると,甲1発明3において,甲2技術2を適用するとともに,周知技術3
を採用することにより,相違点3-4に係る本件訂正後発明3の発明特定事項とす
ることは,当業者が容易に想到できたことである。
e相違点3-5について
前記a(b)①における特定事項3-ア-Fについての検討と同様の理由により,
甲1発明3において,果菜物であるキューイK(果菜)搬送方向の一側方のみに配
置された整列コンベア5(果菜引受け体)を備えたものとし,相違点3-5に係る
本件訂正後発明3の発明特定事項とすることは,当業者が適宜なし得たことである。
f相違点3-6について
甲1発明3においては,果菜物であるキューイKが受け台8の果菜物を載置する
部分からその下位に位置する整列コンベア5の受けベルト15の上面に形成された
凹状の受け部15aにシュートを介して移載されると,受けベルト15を間欠的な
回転駆動して,果菜物であるキューイKを受けベルト15の上面に引き継いでプー
ルするものであり,果菜が果菜キャリアの果菜載置部からその下位に位置する果菜
引受け体の平ベルトの上面に送り込まれた後に,平ベルトを間欠運転して,果菜を
平ベルトの上面に引き継いでプールするものといえ,本件訂正後発明1のように果
菜が果菜キャリアの搬送ベルトの果菜載置部から搬送ベルトの上面と同じ又は略同
じ高さの果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り込まれるときに平
ベルトを間欠運転して,果菜を平ベルトの上面に水平又は略水平に引き継いでプー
ルするものではないところ,前記イ(イ)bにおける相違点1-2についての検討を
踏まえると,甲1発明1において,果菜を果菜キャリアの果菜載置部から平ベルト
の上面に水平又は略水平に引き継ぐものとすることはできず,また,果菜が果菜キ
ャリアの搬送ベルトの果菜載置部から搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高さの果
菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り込まれるときに平ベルトを間
欠運転して,果菜を平ベルトの上面に水平又は略水平に引き継いでプールすること
については,各甲号証には記載も示唆もされていない。
そうすると,甲1発明3において,果菜が果菜キャリアの搬送ベルトの果菜載置
部から搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高さの果菜引受け体の平ベルトの上面に
水平又は略水平に送り込まれるときに平ベルトを間欠運転して,果菜を平ベルトの
上面に水平又は略水平に引き継いでプールすることは,当業者が容易に想到できた
ものではない。
また,甲1発明3における整列コンベア5の受けベルト15の上面は,果菜物で
あるキューイKを吸着ユニット35による吸着に適した所定間隔に離間して保持す
るために,凹状の受け部15aが形成されているところ,受けベルト15の上面に
形成された凹状の受け部15aを取り除き,受けベルト15の上面を平面状とする
と,吸着ユニット35による果菜物であるキューイKの吸着が適切に行えなくなる
ことから,甲1発明3において,整列コンベア5の受けベルト15の上面を果菜を
受ける窪みのない平面状とすることは,当業者が容易に想到できたことではない。
したがって,甲1発明3において,相違点3-6に係る本件訂正後発明3の発明
特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたことではない。
g相違点3-7について
果菜自動選別送り出し方法及び装置において,果菜の選別事項に果菜の大きさに
加えて形状も入れる技術は,周知の技術(周知技術4)である。
また,トマト,桃,梨,メロンのいずれかの果菜を果菜載置部に載せることにつ
いては,前記cにおける相違点3-3についての検討を踏まえると,当業者が適宜
なし得る設計的事項にすぎない。
そうすると,甲1発明3において,判定部3(等階級計測部)の計測事項として,
周知技術4を採用し,相違点3-7に係る本件訂正後発明3の発明特定事項とする
ことは,当業者が容易に想到できたことである。
h効果について
本件訂正後発明3は,本件訂正後発明1と同じ効果を奏する。
i小括
以上のとおり,甲1発明3において,相違点3-1,3-2及び3-6に係る本
件訂正後発明3の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたことでは
ない。
したがって,本件訂正後発明3は,甲1発明3,甲2技術2,周知技術1C及び
2~4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない
(ウ)甲1発明3に甲3技術2を適用することについて
a相違点3-1について
(a)甲1発明3に甲3技術2を適用する動機付けはあるが,甲1発明
3に甲3技術2を適用しても,次の事項を備えたものとはならない。
〔特定事項3-イ-A〕
ドライブチェーンは果菜キャリアの果菜送り出し方向先方側のドライブチェーン
と,果菜送り出し方向後方側のドライブチェーンの少なくとも二本であり,それら
両ドライブチェーンは果菜送り出し方向に間隔をあけて平行に配置されており,果
菜キャリアは間隔をあけて平行に配置された前記二本のドライブチェーンにその走
行方向に多数取付けられ,フレームは,前記ドライブチェーンに取付ける取付け部
を備え,取付け部は果菜送り出し方向先方側と後方側に設けられており,前記多数
の果菜キャリアは,その果菜載置部が果菜搬送ラインの搬送方向に一列又は略一列
に並んで水平に搬送されるように,先方側の取付け部が前記先方側のドライブチェ
ーンに,後方側の取付け部が前記後方側のドライブチェーンに取り付けられて配置
されていること。
〔特定事項3-イ-B〕
果菜キャリアの夫々は,搬送ベルトに連結されたスライドピンを備え,フレーム
は,その底面に,果菜送り出し方向に細長の開口を備え,前記スライドピンはその
下端側が前記開口を貫通してフレームの底面下方に突出しており,搬送ベルトの往
回動は,ドライブチェーンの走行により移動される果菜キャリアのスライドピンが,
果菜搬送ラインの下方に設けられた往ガイドに案内されてフレームの前記開口内を
移動することにより行われ,前記搬送ベルトの復回動は,果菜送り出し後に,前記
ドライブチェーンの走行により移動される果菜キャリアのスライドピンが,前記果
菜搬送ラインの下方に設けられた戻りガイドに案内されてフレームの前記開口内を
移動することにより行われること。
〔特定事項3-イ-C〕
フレームの果菜送り出し方向先方側と後方側に回転ローラが回転可能に取り付け
られること。
〔特定事項3-イ-D〕
先方側の回転ローラの少なくとも一部は前記フレームの前記果菜引受け体側の端
部よりも当該果菜引受け体側に突出し,かつ前記先方側のドライブチェーンよりも
当該果菜引受け体側に突出していること。
〔特定事項3-イ-E〕
搬送ベルトは,フレームの果菜送り出し方向先方側に設けられた先方側の回転ロ
ーラと,果菜送り出し方向後方側に設けられた後方側の回転ローラの外周に,平坦
に一周巻かれていること。
〔特定事項3-イ-F〕
果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体。
(b)①〔特定事項3-イ-F〕について
前記イ(イ)a(b)①における特定事項1-ア-Fについての検討と同様の理由によ
り,甲1発明3において,整列コンベア5(果菜引受け体)を振分けコンベア2(果
菜搬送ライン)の一側方のみに配置し,特定事項3-イ-Fを備えることは,当業
者が適宜なし得たことである。
②〔特定事項3-イ-A〕について
前記(イ)a(b)③における特定事項3-ア-Aについての検討を踏まえると,果菜引
受け体を果菜搬送ラインの一側方のみに配置した甲1発明3において,甲3技術2
とともに周知技術2を適用することにより,特定事項3-イ-Aを備えることは,
当業者が容易に想到できたことである。
③〔特定事項3-イ-B〕について
「物品キャリアが多数設けられた物品搬送ラインに,物品キャリアに物品を載せ
る物品供給部が設けられ,物品を仕分け情報に応じて物品キャリアによって物品搬
送方向側方に送り出す仕分排出部が設けられた物品自動選別送り出し装置に用いら
れる物品キャリアであって,フレームと,フレームに往復回動可能に設けられた搬
送ベルトを備えた往復回動式のベルトコンベアであり,前記搬送ベルトは,その上
側部分が平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回動可能で
ある物品キャリアにおいて,前記搬送ベルトに連結されたスライドピンを備え,前
記フレームは,その底面に,物品送り出し方向に細長の開口を備え,前記スライド
ピンはその下端側が前記開口を貫通してフレームの底面下方に突出しており,前記
搬送ベルトの往回動は,移動される物品キャリアのスライドピンが,物品搬送ライ
ンの下方に設けられた往ガイドに案内されてフレームの前記開口内を移動すること
により行われ,前記搬送ベルトの復回動は,物品送り出し後に,移動される物品キ
ャリアのスライドピンが,前記物品搬送ラインの下方に設けられた戻りガイドに案
内されてフレームの前記開口内を移動することにより行われるようにすること」は,
原出願の出願前において周知の技術(以下「周知技術1D」という。)である(甲9
~11)。
そして,周知技術1Dによると,物品搬送ラインの下方には,搬送ベルトの駆動
部材として往ガイド及び戻りガイドを設けるのみであり,物品搬送ラインの敷設が
容易となり,また,メンテナンスも主に物品キャリアについて行うことになるため,
メンテナンスの容易化も図れるから,甲1発明3において,甲3技術2とともに周
知技術1Dを適用し,特定事項3-イ-Bを備えることは,当業者が適宜なし得た
ことである。
④〔特定事項3-イ-C~E〕について
甲1発明3において,甲3技術2を適用するとともに,特定事項3-イ-Fを備
えることに伴い,特定事項3-イ-C及び特定事項3-イ-Eを備えるものとなる。
また,ベルトコンベアにおいて,回転ローラの一部がフレームの物品搬送方向側
の端部よりも物品搬送方向側に突出するようにしたものは,原出願の出願前にごく
普通に知られている(甲5)。
そして,甲1発明3において,特定事項3-イ-Cを備えたもの(フレームの果
菜送り出し方向先方側と後方側に回転ローラが回転可能に取り付けられたもの)と
することができるところ,果菜キャリアから果菜引受け体に果菜を送り出す際に,
円滑な果菜の引継ぎを行うために,果菜キャリアのベルトコンベアの果菜を送り出
す側の端部と果菜引受け体の果菜を受ける側の端部(整列コンベア5に付設された
シュートの果菜を受ける側の端部)とを連続的に設けることは通常の設計手法であ
って,そのような設計手法を採用した場合に,果菜引受け体の果菜を受ける側の端
部や先方側のドライブチェーンとの位置関係に応じて,先方側の回転体の少なくと
も一部はフレームの果菜引受け体側の端部よりも当該果菜引受け体側に突出し,か
つ先方側のドライブチェーンよりも当該果菜引受け体側に突出したものとし,甲1
発明3において,特定事項3-イ-Dを備えることは,当業者が適宜なし得る設計
的事項である。
(c)したがって,甲1発明3において,甲3技術2,周知技術1D及
び2に基づき,相違点3-1に係る本件訂正後発明3の発明特定事項とすることは,
当業者が容易に想到できたことである。
b相違点3-2について
甲1発明3に甲3技術2を適用しても,〔特定事項3-イ-G〕「搬送ベルトの果
菜載置部に載せてある果菜を果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送
り出しすること。」を備えたものとはならない。
前記(イ)bにおける相違点3-2についての検討を踏まえると,甲1発明3にお
いて,特定事項3-イ-Gを備えることはできず,相違点3-2に係る本件訂正後
発明3の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたことではない。
c相違点3-3について
甲1発明3に甲3技術3を適用しても,〔特定事項3-イ-H〕「トマト,桃,梨,
メロンのいずれかの果菜を載せ置くことのできる果菜載置部。」を備えたものとは
ならない。
前記(イ)cにおける相違点3-3についての検討を踏まえると,甲1発明3にお
いて,特定事項3-イ-Hを備え,相違点3-3に係る本件訂正後発明3の発明特
定事項とすることは,当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
d相違点3-4について
前記(イ)dにおける相違点3-4についての検討を踏まえると,甲1発明3にお
いて,甲2技術2を適用するとともに,周知技術3を採用することにより,振分け
コンベア2(果菜搬送ライン)に,その幅方向側方から,作業員が,果菜キャリア
に果菜を載せる供給部9(果菜供給部)が設けられ,前記果菜物を載置する部分(果
菜載置部)は,前記供給部9(果菜供給部)において,果菜を一つずつ載せること
ができるようにし,相違点3-4に係る本件訂正後発明3の発明特定事項とするこ
とは,当業者が容易に想到できたことである。
e相違点3-5について
前記イ(イ)a(b)①における特定事項1-ア-Fについての検討と同様の理由によ
り,甲1発明3において,果菜物であるキューイK(果菜)搬送方向の一側方のみ
に配置された整列コンベア5(果菜引受け体)を備えたものとし,相違点3-5に
係る本件訂正後発明3の発明特定事項とすることは,当業者が適宜なし得たことで
ある。
f相違点3-6について
前記(イ)fにおける相違点3-6についての検討を踏まえると,甲1発明3にお
いて,相違点3-6に係る本件訂正後発明3の発明特定事項とすることは,当業者
が容易に想到できたことではない。
g相違点3-7について
前記(イ)gにおける相違点3-7についての検討を踏まえると,甲1発明3にお
いて,判定部3(等階級計測部)の計測事項として,周知技術4を採用し,相違点
3-7に係る本件訂正後発明3の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到
できたことである。
h効果について
本件訂正後発明3は,本件訂正後発明1と同じ効果を奏する。
i小括
以上のとおり,甲1発明3において,相違点3-2及び3-6に係る本件訂正後
発明3の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたことではない。
したがって,本件訂正後発明3は,甲1発明3,甲3技術2,周知技術1D及び
2~4に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ本件訂正後発明4について
本件訂正後発明4は,本件訂正後発明3をさらに減縮したものであり,本件訂正
後発明3の検討を踏まえると,甲1発明4,甲2技術2,周知技術1C及び2~4
に基づいて,又は,甲1発明4,甲3技術2,周知技術1D及び2~4に基づいて,
当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第3原告主張の審決取消事由
1訂正要件の認定判断の誤り(取消事由1)
(1)請求項1及び2からなる一群の請求項に係る訂正(以下「本件訂正1」と
いう。)について
ア特許請求の範囲の変更
(ア)本件訂正1に係る訂正事項4,6,11,21及び24は,本件訂正
前発明1の「果菜キャリア」に,「スライドピン」,「往ガイド」及び「戻りガイド」
を追加し,果菜キャリアの「スライドピン」と「往ガイド」及び「戻りガイド」と
の間で実現される搬送ベルトの機械的な回転機構を追加することで,本件訂正前発
明1に「搬送ベルトの回転機構」に関する発明を新たに追加するものであるから,
本件訂正前発明1の発明の目的及び効果を実質的に変更している。
また,前記各訂正事項は,本件訂正前発明1に係る請求項1の範囲を変更するも
のであるから,特許法134条の2第1項ただし書で規定する事項を目的とするも
のではない。
(イ)本件審決は,本件訂正が,本件訂正前発明1に対して「搬送ベルトの
回転機構」に関する事項を付加するものであるとしても,本件訂正前発明1の発明
特定事項を実質的にすべて包含し,本件訂正後の請求項1の末尾の記載が「果菜自
動選別送り出し方法。」となっていることを考慮すると,「果菜自動選別送り出し方
法」の発明が「搬送ベルトの回転機構」の発明に変更されたということはできない
旨判断する。
しかし,本件訂正により新たに追加した訂正事項によって,請求項1に係る発明
の範囲が変更されれば訂正要件違反となる。また,請求項1の末尾の記載が「果菜
自動選別送り出し方法」であることは,発明のカテゴリーが形式的に変更されてい
ないことを意味するだけで,実質上特許請求の範囲が変更されていないことの根拠
とはならない。
(ウ)被告は,本件訂正により追加された「スライドピン」,「往ガイド」及
び「戻りガイド」は,本件訂正前発明1では特定されていなかった「果菜キャリア」
の「搬送ベルト」の往回動及び復回動を,具体的にどのような機構によって実現す
るかを特定するために付加したものであり,果菜を傷つけることなく果菜引受け体
に送り出すという本件訂正前発明1の目的及び効果が変更されるものではない旨主
張する。
しかし,本件訂正前発明1には,往回動及び復回動の機構は記載されておらず,
訂正事項4,6,11,21及び24は,新たな構成を追加することで,本件訂正
前発明1の目的及び効果を「ドライブチェーンの走行による果菜キャリアの移動を
利用して搬送ベルトを機械的に往回動及び復回動させる」という目的及び効果に変
更するものであるから,請求項1の範囲を変更するものである。
イ新たな技術的事項の追加
(ア)訂正事項7
a訂正事項7は,「前記フレームの果菜送り出し方向先方側と後方側に
回転ローラが回転可能に取り付けられ,先方側の回転ローラの少なくとも一部は前
記フレームの果菜引受け体側の端部よりも果菜引受け体側に突出し,かつ前記先方
側のドライブチェーンよりも果菜引受け体側に突出しており,」というものである。
しかし,本件明細書からは,前方側の回転ローラ11aの一部が突出しているこ
とが図面から看取できるだけであり,「回転ローラの全部」が突出した構成は,本件
明細書に開示されていない。
また,本件明細書には,前方側の回転ローラ11aの一部が突出していることの
技術的意義についての記載も示唆もないから,当業者は,本件明細書から図面の開
示を超えて「回転ローラの全部」が突出した構成を把握することができない。
したがって,訂正事項7は,明細書等に記載した事項の範囲においてしたもので
はなく,特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当せず,特許法134条の
2第1項ただし書で規定する事項を目的とするものに該当しない。
b被告は,本件訂正前発明1は,果菜を傷つけることのないよう,果
菜キャリア2の上の果菜が果菜引受け体4に水平又は略水平に送り出されることが
必要であるところ,当該目的を達成する上で,ドライブチェーン1へのフレーム1
0の取り付け箇所が【図2】(a)(b),【図5】に示された箇所に限定されなければな
らない技術的理由はないと主張する。
しかし,被告が主張する「果菜を傷つけることのないよう,果菜キャリア2の上
の果菜が果菜引受け体4に水平又は略水平に送り出される」ことを目的として前方
側の回転ローラ11aの一部を突出させたことは,本件明細書から把握することは
できない。しかも,本件明細書において,果菜キャリア2の上の果菜は,果菜引受
け体4ではなく,斜め引き出しコンベア6へと移送されるのであり,この点におい
ても,上記の目的を論拠とする被告の主張には理由がない。
また,被告が主張するように,ドライブチェーン1をフレーム10のどの箇所に
取り付けるかは,フレームの形状などに応じて適宜選択可能なものであれば,ドラ
イブチェーン1をフレーム10の外側(【図2】(a),【図5】の右側)に取り付けて,
先方側の回転ローラ11aが前方側のドライブチェーン1よりも果菜引受け体4側
に突出しない位置とすることも可能であって,本件明細書に「回転ローラの少なく
とも一部は・・・突出しており」という記載が開示されているわけではない。
(イ)訂正事項8
a訂正事項8は,「前記搬送ベルトは,・・・その上側部分が平坦又は略
平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回動可能・・・」というものであ
る。
しかし,本件明細書には,搬送ベルト12の上側には,突条19の上端が長手方
向に長い楕円のすり鉢状にカットされた受け部材13が設けられていること(【0
023】,【図2】(a)),搬送ベルトの上側部分の一部に設けられた果菜載置部がベ
ルトの表面よりも窪んだ形状であること(【0007】,【0012】)は開示されて
いるが,搬送ベルトの上側部分を「平坦又は略平坦な状態」としたことは開示され
ていない。
また,本件明細書を参酌しても「略」がどの程度の範囲を含むのか不明であるか
ら,訂正事項8は,本件明細書から把握できない「略平坦な状態」,「略水平に移動
する」という概念を新たに追加するものである。
したがって,訂正事項8は,明細書等に記載した事項の範囲内においてしたもの
でなく,特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当せず,特許法134条の
2第1項ただし書で規定する事項を目的とするものに該当しない。
b被告は,「本件訂正前発明1の『搬送ベルトの上側部分が平坦・・・な
状態で・・・移動するように往復回動可能』とは,搬送ベルトの上側部分が,果菜キャ
リアの前後のローラの間において,たわむことなく移動することを規定するもの」
であり,「搬送ベルトの表面が平らであることを規定しているものではない」と主張
する。
しかし,本件訂正後発明1の「搬送ベルトの上側部分」とは,本件訂正前発明1
の「搬送ベルトの上側」と同義であり,搬送ベルトの上表面を意味する。この点,
本件訂正前発明1では,「夫々の果菜キャリアの搬送ベルトの上側の一部に果菜を
載せ置く果菜載置部が設けられ」と記載されており,果菜載置部が搬送ベルトの上
表面に設けられていることを規定していた。この記載は訂正事項9によって訂正さ
れているが,明瞭でない記載の釈明であり,その実質が変更されるものではないの
で,訂正事項8における「搬送ベルトの上側部分が平坦又は略平坦な状態」とは,
搬送ベルトの上表面が平坦又は略平坦な状態を意味しているのであり,被告の主張
は請求項の記載と整合しない。
また,被告は,「略平坦」という記載は,一定の柔軟性を有するものの上に果菜の
ように重量を有するものを載せた場合の僅かなたわみが生じた状態であると主張し
ているが,本件明細書にこのような主張の根拠となる記載はない上,そもそも「僅
かなたわみ」という記載がどの程度の範囲を含むのか不明である。
(ウ)訂正事項13,14,20及び22
a上記各訂正事項は,「果菜搬送ラインの前記仕分排出部の一側方のみ
に,平ベルトが回転するベルトコンベア式の果菜引受け体が,果菜搬送方向に作業
間隔をあけて二以上配置され」,「平ベルトは,その上面が果菜を受ける窪みのない
平面状であり,その上面が果菜キャリアの搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高さ
で水平又は略水平に配置され,果菜が果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略
水平に送り込まれるときに間欠運転して,当該果菜を前記平面状の上面に水平又は
略水平に引き継いでプールすることができ」,「当該搬送ベルトの果菜載置部の上の
果菜を水平又は略水平に移動させることにより,果菜搬送方向側方に配置された前
記果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り出し」,「前記果菜引受け
体の平ベルトを,果菜が水平又は略水平に送り込まれるときに,果菜搬送ラインの
搬送方向側方であって前記果菜が送り込まれる方向に果菜約1個分の距離だけ間欠
運転させてその間欠運転による前記平ベルトの回転により,当該平ベルトの平面状
の上面に水平又は略水平に送り込まれる果菜を水平又は略水平に引継ぎ」というも
のである。
これらの上記各訂正事項の記載からは,本件訂正後発明1は,果菜キャリアの搬
送ベルトから果菜引受け体の平ベルトに直接果菜を水平又は略水平に送り出す構成
を包含する。
しかし,本件明細書の【0002】,【0003】,【0016】~【0019】の
記載によると,「斜め引出しコンベア6」は,果菜キャリア2の進行方向への運動が
急に規制されて,果菜3が果菜引受け体4上を斜め横方向に勢い良く転がって進む
ことによって傷みの発生を生じさせるという課題を解決するために,「斜め引出し
コンベア6」によって果菜引受け体4に移るまでに,一旦斜めに搬送させることに
より,果菜3の運動方向の変化を少なくし,転がりを低減するものであり,果菜キ
ャリア2と果菜引受け体4との間に果菜3を安全に仕分けるために必須の構成とさ
れている。そして,本件明細書には,「斜め引出しコンベア6」を設けずに,果菜を
「果菜キャリアの搬送ベルト」から「果菜引受け体の平ベルト」に直接送り出させ
る構成は開示されていない。
したがって,本件各訂正事項は,明細書等に記載した事項の範囲内においてした
ものでなく,特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当せず,特許法134
条の2第1項ただし書で規定する事項を目的とするものに該当しない。
b訂正事項14,20及び22の「水平又は略水平に移動させる」,訂
正事項14の「同じ又は略同じ高さ」における「略」は,どの程度の範囲を含むの
か不明であり,これらの訂正事項をもって本件訂正後発明1をどのように限定しよ
うとするものであるかも不明であるから,これらの訂正事項は,明細書等に記載し
た事項の範囲内においてしたものではなく,特許請求の範囲の減縮を目的とするも
のには該当せず,特許法134条の2第1項ただし書で規定する事項を目的とする
ものに該当しない。
c被告は,「本件特許において,果菜キャリアから果菜引受け体に果菜
を送り出すという構成は設定登録時のままであり,訂正事項13,14,20及び
22によって追加したり,拡張したりしたものではない。」と主張するが,本件訂正
により,上記構成について,上記変更があったのであるから,設定登録時のままで
あることを根拠とする被告の主張は失当である。また,設定登録時の請求項に記載
されていたからといって,明細書等に記載した事項の範囲内であることの論拠とな
るものではない。
(2)請求項3及び4からなる一群の請求項に係る訂正(以下「本件訂正2」と
いう。)について
ア特許請求の範囲の変更
訂正事項30,33,38,46及び49は,訂正事項4,6,11,21及び
24と同様に,本件訂正前発明3に「搬送ベルトの回転機構」に関する発明を追加
するものであり,本件訂正前発明3の発明の目的及び効果を実質的に変更し,請求
項3の範囲を変更するものであって,特許法134条の2第1項ただし書で規定す
る事項を目的とするものではない。
イ新たな技術的事項の追加
訂正事項32は訂正事項7,訂正事項34は訂正事項8,訂正事項40,41,
45及び47は,訂正事項13,14,20及び22とそれぞれ同様に,明細書等
に記載した事項の範囲内においてしたものではなく,特許法134条の2第1項た
だし書で規定する事項を目的とするものではない。
(3)小括
したがって,本件訂正1及び2は,いずれも訂正要件を満たさない。
そして,本件訂正前発明は,甲1及び2に基づいて,当業者が容易に想到し得た
ものであるから,本件審決には,結論に直接影響を及ぼす重大な認定判断の誤りが
ある。
2容易想到性の判断の誤り(取消事由2)
(1)相違点1-1及び3-1の容易想到性の判断の誤り
ア甲1発明の傾動方式の受け台8を往復回動式のベルトコンベアに置換す
る動機付けの有無
(ア)甲1発明1に甲2技術1を適用した場合,甲3及び甲5の記載を参
酌すると,甲1発明1において,甲2技術1の移送シート49に代えて甲3及び甲
5に記載された構成を採用し,特定事項1-ア-C~Eを備えることは,以下のと
おり,当業者が容易に想到し得る事項である。
(イ)a「フレームの果菜送り出し方向先方側と後方側に回転ローラが回
転可能に取り付けられること」(特定事項1-ア-C)及び「搬送ベルトは,フレー
ムの果菜送り出し方向先方側に設けられた先方側の回転ローラと,果菜送り出し方
向後方側に設けられた後方側の回転ローラの外周に,平坦に一周巻かれていること」
(特定事項1-ア-E)は,甲3及び5に開示されている。
甲3に記載された発明は,複数の傾斜可能なトレイを備えたコンベア・システム
では,装置が大型であるため,設置に大きな空間を要するという課題を解決するも
のであり,傾動方式の受け台8を採用した甲1発明に適用する動機付けが存在する。
甲5には,「果菜」について,従来技術の秤量バケットEを可倒させて,果菜Bを
転がして落とす自動選別装置(甲1発明と同様の装置)において傷が付いたり,つ
ぶれたりするという問題が開示されており(【0006】),傾動方式の受け台8を採
用した甲1発明に甲5に開示されたベルト23が一対のローラー24の外周に平坦
に一周巻かれた構成を適用する動機付けが存在する。
b甲2技術並びに甲3及び甲5に記載された発明は,いずれも,甲1
発明のような傾動方式の受け台8を備えたものを従来技術とし,傾動方式の受け台
8における問題点を解決することを課題としており,傾動方式ではなく,シートや
ベルト等を搬送方向に対して直交する方向に移動させて搬送物を送り出す点で解決
手段も共通する。
甲1発明1に甲2技術1を適用した場合であっても,甲3及び甲5の技術事項を
参酌することは当業者にとって格別困難ではない。
イ阻害要因の有無
(ア)甲2には,従来技術として,「搬送の過程でビンや缶などの円筒物が
転動して落下する惧れ」,「仕分け時に重心の不安定な搬送物は慣性により仕分け方
向と反対方向に転動する惧れ」及び「仕分けの確実性が劣る」などの不都合がある
ものの,「搬送路に沿って多数配設され,搬送方向と直交する方向に水平回転するタ
ーンテーブルを所定位置に至ったとき水平回転してターンテーブル上の小物類を側
方に移送する方式」が存在したことが明記されている(【0002】,【0005】)。
したがって,当業者は,甲2の記載から,移送ベルトを水平回転させる方式を実
現可能な構成として把握するのであり,甲1発明1に移送ベルトを水平回転させる
方式を適用することに阻害要因はない。
(イ)被告は,甲2技術が採用した「常態で中間部で窪んだ移送シート49」
は,甲2発明の課題の解決に不可欠な構成であり,弛みのないベルトを備えた従来
のベルトコンベアに置換したのでは,甲2技術が本来解決しようとする課題を解決
できなくなるから,弛ませた移送シートに代えて弛みのないベルトを備えた従来技
術のベルトコンベアを適用することには阻害要因があると主張する。
しかし,被告の主張は,甲2技術1を主引例とした場合の議論である。問題にな
るのは,甲1発明1において,甲2技術1の弛ませた移送シートに代えて弛みのな
いベルトを備えたベルトコンベアを適用することが容易かどうか,阻害要因が存在
するかどうかである。
甲1発明1の受け台8を備えたものに対し,甲2技術の弛ませた移送シートに代
えて弛みのないベルトを備えたベルトコンベアを適用することは,当業者は容易に
想到できる。
(2)相違点1-2及び3-2の容易想到性の判断の誤り
ア(ア)甲1発明の「受け台8」は,振分けコンベア2に所定等間隔に隔てて
多数配列され,振分け側に向けて傾動可能に取付けられており,甲1発明の「整列
コンベア5」は,振分けコンベア2の搬送経路上の一側部に振分けコンベア2と直
交して配置され,搬送側始端部及び終端部に軸支したローラ14,14間に合成ゴ
ム製の受けベルト15を張架し,始端側下部に配設した第1モータ16によりスプ
ロケット17,18及び起動チェーン19を介して受けベルト15を搬送方向bに
回転させ,振分けコンベア2から移載されるキューイKを終端部に向けて搬送する
とともに,始端部及び終端部に配設した光電センサ20,21により回転を制御す
るものである。「整列コンベア5」の受けベルト15の搬送面上には,1個のキュー
イKと対応する大きさである凹状の受け部15aが所定等間隔に隔てて多数形成さ
れている。
また,甲1の第1図及び第2図には,「振分けコンベア2」と「整列コンベア5」
との間に部材(本件審決の「シュート」)が図示されているが,甲1の明細書中には
その部材(シュート)について一切言及がない。甲1には,「受け台8を振分け側に
傾動して整列コンベア5の受けベルト15上にキューイKを移載する。」と記載さ
れており,第1図には矢印で果菜物の移動方向が示されている。
さらに,整列コンベア5は,始端部及び終端部に光電センサ20,21を配設し,
受けベルト15の始端部にキューイKが移載されると光電センサ20が検知し,キ
ューイKが移載される毎に1搬送ピッチ分だけ受けベルト15を回転し,終端部に
キューイKが到達するまで受けベルト15を間欠的に回転駆動し,終端部にキュー
イKが搬送されると光電センサ21が検知し,受けベルト15の回転を停止し,吸
着位置Ⅱに4個のキューイKを整列させている。
本件訂正後発明1は,「果菜キャリアの搬送ベルトを果菜搬送ラインの側方に往
回動させて,当該搬送ベルトの果菜載置部の上の果菜を水平又は略水平に移動させ
ることにより,果菜搬送方向側方に配置された前記果菜引受け体の平ベルトの上面
に水平又は略水平に送り出」すものであるが,本件明細書には「略水平」という記
載はなく,「略水平」の定義も技術的意義も開示されていない。
甲1発明は,受け台8の上に載置されたキューイKをシュートの受け台側の端部
の上面に略水平に送り出しており,シュートの受けベルト側の端部においても,シ
ュートの上面のキューイKを受けベルト15の表面に略水平に送り出している(第
1図)。甲1の第1図には,受け台8から受けベルト15へ果菜が移動する横方向の
矢印が開示されているところ,本件訂正後発明1の「略水平」と区別できないから,
甲1発明は,本件訂正後発明1と,受け台8から受けベルト15へ果菜を略水平に
送り出している点で一致する。
さらに,本件訂正後発明1において,果菜を果菜キャリア2から果菜引受け体4
の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り出すことについて,特別な技術的意義も,
顕著な効果も認められない。
そうすると,甲1発明1に甲2技術1又は甲3技術1を適用した場合,果菜は,
往復回動式のベルトコンベアから果菜引き受け体である整列コンベア5の受けベル
ト15の上面に略水平に移動することになるから,特定事項1-ア-G及び1-イ
-Gを備えたものとなる。
(イ)また,甲1発明において上記矢印が「水平又は略水平」に該当するか
否かという点を措くとしても,甲1発明1に甲2技術1又は甲3技術1を適用した
場合,往復回動式のベルトコンベアから果菜引き受け体である整列コンベア5の受
けベルト15の上面に移動することになり,ベルトコンベア等によって物品を搬送
する際に搬送面を同じ又は略同じ高さで水平又は略水平に配置して高さを揃え,物
品を水平又は略水平に送り出すことは一般常識にすぎない(甲32)ので,特定事
項1-ア-G及び1-イ-Gを備えることは,当業者にとって容易に想到できる事
項である。
(ウ)したがって,相違点1-2に係る本件訂正後発明1の発明特定事項
とすることは,甲1発明,甲2技術,甲3技術及び周知技術に基づいて,当業者が
適宜なし得たことである。
イ本件審決は,往復回動式のベルトコンベアから受けベルト15の上面へ
の果菜の移送に関し,上位から下位にシュートを介して移動することが果菜物であ
るキューイKを確実に移載するためであり,水平又は略水平に移載する一般常識を
採用しないと認定判断した。
しかし,甲1には,受け台8が上位に位置することも,受けベルト15の上面が
下位に位置することも記載されていないし,甲1発明1に甲2技術1を適用した場
合に往復回動式のベルトコンベアが上位に位置し,果菜引き受け体である整列コン
ベア5の受けベルト15の上面が下位に位置するものでもない。本件訂正後発明1
において「略水平」には何らの定義も技術的意義も開示されておらず,本件訂正後
発明1は,甲1の第1図に開示された受け台8から受けベルト15への横方向の矢
印を除外するものでもない。
また,甲1の第1図及び第2図に図示される振分けコンベア2と整列コンベア5
との間の部材(本件審決の「シュート」)について,本件明細書中には一切言及され
ておらず,その技術的意義についても記載されていない。
甲1によると,受けベルト15の始端部及び終端部に配設した光電センサ20,
21によって受けベルト15を間欠的に回転駆動することでキューイKを整列させ
ているのであり,上位から下位にシュートを介して移動することは必要不可欠な構
成ではなく,水平又は略水平に移載する一般常識を採用できないことの理由となる
ものではない。
ウ(ア)被告は,甲1発明について,「キューイKを落下させる」ものである
と強調しているが,甲1には,「受け台8を振分け側に傾動して整列コンベア5の受
けベルト15上にキューイKを移載する。」と記載されており,「キューイKを落下
させる」ものではない。
(イ)被告は,「甲1発明が,キューイKを吸着ユニット35による吸着に
適した所定間隔に離間して保持するようにすることを目的として,受けベルト15
の上面に凹状の受け部15aを多数設け,当該受け部にキューイKを載置するもの
であることからすれば,受けベルト15の凹状の受け部15a側に下り傾斜のシュ
ートを設けることで受け台8からキューイKを凹状の受け部15a上に落下させる
という構成は,甲1発明にとって課題解決に不可欠な構成である」と主張し,「傾倒
式の受け台8(送り出し側)と受けベルト15(受取り側)の高さを同じ高さにし
て,送り出し側から受取り側に水平又は略水平にキューイKを送り出す構成(落下
させない構成)を採用することには阻害要因がある」と主張する。
しかし,甲1によると,受けベルト15の始端部及び終端部に配設した光電セン
サ20,21によって受けベルト15を間欠的に回転駆動することでキューイKを
整列させているのであり,シュートは,甲1発明において課題解決に不可欠な構成
ではない。
また,甲1発明の傾倒式の受け台8について,甲2技術1又は甲3技術1に基づ
いて,往復回動可能に設けられた搬送ベルトを備えた往復回動式のベルトコンベア
とすることは当業者にとって容易に想到できる事項であるから,被告が主張する阻
害要因は存在しない。
(3)相違点1-6及び3-6の容易想到性の判断の誤り
ア本件審決は,①「甲1発明1において,果菜が果菜キャリアの搬送ベル
トの果菜載置部から搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高さの果菜引受け体の平ベ
ルトの上面に水平又は略水平に送り込まれるときに平ベルトを果菜約1個分の距離
だけ間欠運転して,果菜を平ベルトの上面に水平又は略水平に引き継いでプールす
ることは,当業者が容易に想到できたことではない。」,②「甲1発明1における整
列コンベア5の受けベルト15の上面は,果菜物であるキューイKを吸着ユニット
35による吸着に適した所定間隔に離間して保持するために,凹状の受け部15a
が形成されているところ,受けベルト15の上面に形成された凹状の受け部15a
を取り除き,受けベルト15の上面を平面状とすると,吸着ユニット35による果
菜物であるキューイKの吸着が適切に行えなくなることから,甲1発明1において,
整列コンベア5の受けベルト15の上面を果菜を受ける窪みのない平面状とするこ
とは,当業者が容易に想到できたことではない。」と判断した。
①の点について,本件審決は,甲1発明1について,上位から下位にシュートを
介して移動することが果菜物であるキューイKを確実に移載するためであり,水平
又は略水平に移載する一般常識を採用しないという相違点1-2における認定判断
を前提としているところ,前記のとおり,この認定判断は誤りである。
また,②の点について,上面が果菜を受ける窪みのない平面状の平ベルト自体は,
周知技術であり(甲33),甲1発明において,受けベルト15の上面に果菜を受け
る窪みのない平面上とすることは,この周知技術を適用することにより当業者にと
って容易に想到し得る。
甲1には,「凹状の受け部15a」は,キューイKを受けベルト15で吸着位置Ⅱ
まで搬送する際に,所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送することに寄与するこ
とが開示されている。しかし,甲1には,「果菜物の判定結果に基づいて品質及びサ
イズ別に振り分ける果菜物選別装置」に関する発明が開示されており,また,「受け
ベルト15の始端部及び終端部(第2図)に光電センサ20,21を配設し,受け
ベルト15の始端部にキューイKが移載されると光電センサ20が検知し,キュー
イKが移載される毎に1搬送ピッチ分だけ受けベルト15を回転し,終端部にキュ
ーイKが到達するまで受けベルト15を間欠的に回転駆動し,終端部にキューイK
が搬送されると光電センサ21が検知し,受けベルト15の回転を停止し,吸着位
置Ⅱに4個のキューイKを整列させる」という発明も開示されており,このような
発明は「凹状の受け部15a」を取り除き,受けベルト15の上面を果菜を受ける
窪みのない平面状としても実現可能であるから,本件訂正後発明1との関係におい
て,「凹状の受け部15a」を取り除くことに阻害要因はない。
また,本件明細書には,平ベルトの上面を果菜を受ける窪みのない平面状とした
ことについて特別な技術的意義も,顕著な効果も開示されていない。
さらに,甲1発明において,甲2の搬送ユニット1又は甲3のプラットホーム6
0,160を適用すれば,受けベルト15の上面が甲2発明の搬送ユニット1の移
送シート49又は甲3発明のプラットホーム60,160のウェブ66,168の
上面と同じ又は略同じ高さで水平又は略水平に配置される。甲5の図1においても,
果菜選別籠11の上面がベルトコンベア3のベルト23の上面と同じ又は略同じ高
さで水平又は略水平に配置されており,また,ベルトコンベア等によって物品を搬
送する際に搬送面を同じ又は略同じ高さで水平又は略水平に配置して高さを揃える
ことは技術常識にすぎない(甲32)。
したがって,本件訂正後発明1の上記構成は,甲1発明,甲2技術,甲3技術及
び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得る事項にすぎない。
イ本件審決は,甲1発明について,「果菜引受け体の平ベルトの上面に送り
込まれた後に,平ベルトを1搬送ピッチ分だけ間欠運転して,果菜を平ベルトの上
面に引き継いでプールするもの」として,「果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又
は略水平に送り込まれるときに平ベルトを果菜約1個分の距離だけ間欠運転して,
果菜を平ベルトの上面に水平又は略水平に引き継いでプールするものではない」と
述べているが,この認定は誤りである。
甲1の「・・・対応するサイズ振分け部Fまで受け台8が移動すると,第2図に示す
ように,受け台8を振分け側に傾動して整列コンベア5の受けベルト15上にキュ
ーイKを移載する。同時に,移載されるキューイKを光電センサ20が検知し,こ
の光電センサ20による検知に基づいて,キューイKが移載される毎に1搬送ピッ
チ分だけ受けベルト15を間欠的に回転させ」との記載から,甲1発明は,整列コ
ンベア5の受けベルト15上にキューイKを移載すると同時に1搬送ピッチ分だけ
受けベルト15を間欠的に回転させていることは明らかである。しかも,果菜が送
り込まれるときに選別コンベアを間欠駆動させる構成は,周知技術である(甲34)。
したがって,本件訂正後発明1の上記構成は,甲1発明,甲2技術,甲3技術及
び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得る事項にすぎない。
ウ被告は,「甲1発明の受けベルト15はキューイKが移載される際は停
止しており,移載完了後(凹状の受け部15aへキューイKが落下し,受け部15
aにキューイKが載った後)にはじめて間欠回転する」と主張する。
しかし,甲1には,整列コンベア5の受けベルト15上にキューイKを移載する
と同時に1搬送ピッチ分だけ受けベルト15を間欠的に回転させることが開示され
ているのであって,キューイKが移載される際は受けベルト15が停止し,移載完
了後にはじめて間欠回転するということは開示されていない。
エ(ア)本件明細書の【0027】~【0029】には,果菜キャリア2から
トマト3を斜め引出しコンベア6に排出する時の動作について,「区間Bの計測装
置8の判別信号」を受けて動作することが記載されているものの,連続運転される
斜め引出しコンベア6で斜め方向に搬送されたトマト3が平ベルトコンベア4に送
り込まれる時の動作については,「トマト3が送り込まれる時」をどのように判定す
るのか,また,自動運転の動作をどの時点から開始するのか,いずれも不明である。
本件明細書では,平ベルトコンベア4を間欠運転させて平ベルトコンベア4上に間
隔を詰めてトマト3をプールしているが,これはトマト3が送り込まれない場合に
は運転させずに停止させ,トマト3が送り込まれた場合には運転させることによっ
て実現している。
以上から,本件訂正後発明1の「果菜が水平又は略水平に送り込まれるとき」と
は,果菜が平ベルトに供給される際の特定の一点を意味するものではなく,果菜が
平ベルトに送り込まれない場合は平ベルトを運転させず,果菜が平ベルトに送り込
まれた場合に平ベルトを運転させることを意味しているにすぎない。
この点,被告は,果菜が果菜キャリアから果菜引受け体に送り込まれるときに間
欠運転して引き継ぐと説明している(乙2)が,本件明細書では,果菜は,果菜キ
ャリアから斜め引出しコンベア6に送り出され,斜め引出しコンベア6から果菜引
受け体に送り込まれるのであるから,上記説明は,本件明細書に基づくものではな
い。
(イ)甲1発明では,受け台8を振分け側に傾動して整列コンベア5の受
けベルト15上にキューイKを移載すると同時に,移載されるキューイKを光電セ
ンサ20が検知し,この光電センサ20による検知に基づいて,キューイKが移載
される毎に1搬送ピッチ分だけ受けベルト15を間欠的に回転させ,キューイKを
整列コンベア5の受けベルトの上面に二以上プールしたことが開示されている(甲
1)。
この点,第2図の右側の2列の整列コンベア5は搬送側始端部にキューイKが移
載された状態であるが,左側の2列は搬送側始端部にキューイKが移載されていな
い状態であり,搬送側始端部に配置されたシュートによって受け部15aの一部が
覆われている(下記参考図(a))。
このような状態で受け部8からキューイKが移載されても,下記参考図(b)に示
すように,シュートによって受けベルト15の受け部15aの一部が覆われている
ため,受け部15aにキューイKを載置することができない。
このため,甲1発明では,下記参考図(c)及び(d)に示すように,受け部8
からキューイKが移載されると同時に移載されるキューイKを光電センサ20が検
知し,受けベルト15を間欠的に回転させて受け部15aに位置を移動させ,受け
部15aにキューイKを載置できるようにしている。
被告は,甲1発明では果菜が受けベルト15の凹部に入った後に受けベルト15
が1搬送ピッチ分回転すると説明している(乙2)。
しかし,甲1の第2図の左側の2列の整列コンベア5から,搬送側始端部にキュ
ーイKが移載されていない状態ではシュートによって受け部15aの一部が覆われ
ているのに対し,乙2では,受け部15aがシュートの端部よりも先に配置されて
おり,甲1の構造と異なる。
(ウ)したがって,本件訂正後発明1の「果菜が送り込まれるとき」につい
ては,甲1発明に開示されている。
(4)本件訂正後発明1及び3の効果について
本件審決は,本件訂正後発明1の効果について,本件明細書の【0017】,【0
029】を引用して,「果菜の転倒を防止することができ,転がり等をほぼ防止でき
る安全な仕分けが可能となり,痛みが生じやすい,桃や梨などの選果にも利用する
ことができるという効果や,平ベルト上に間隔を詰めて果菜3をプールすることが
できるという効果を奏する」と認定した。
しかし,本件明細書の【0017】における「転倒式の果菜キャリア2に比べて
大幅に果菜3の転倒を防止することができ,転がり等をほぼ防止できる安全な仕分
けが可能となる」という効果は,傾動式ではなく,ベルトやシートによって横方向
に移動させる方式を採用することにより当然得られる効果にすぎない(甲2,3,
5)。また,本件明細書の【0029】における「果菜キャリア2から斜め引出しコ
ンベア6を経てトマト3が送り込まれる時にだけ,トマト約1個分の距離だけ(ト
マト3が1個通過するに必要な時間)自動運転され,平ベルトコンベア4上に間隔
を詰めてトマト3をプールすることができる」という効果は,甲1に開示されたキ
ューイKが移載される毎に1搬送ピッチ分だけ受けベルト15を間欠的に回転させ,
複数のキューイKを整列させた効果と同じである。
したがって,本件訂正後発明1は顕著な効果を奏するものではない。
(5)本件訂正後発明2及び4について
本件審決は,本件訂正後発明2及び4については,実質的な進歩性の判断を示す
ことなく,本件訂正後発明1及び3と同様の理由により,当業者が容易に発明をす
ることができたものではないと判断した。
しかし,前記のとおり,相違点1-1,1-2及び1-6に係る本件訂正後発明
1の発明特定事項とすることは,甲1発明,甲2技術,甲3技術及び周知技術に基
づいて,当業者が適宜なし得たことであり,本件訂正後発明3においても同様であ
る。
さらに,本件訂正後発明2及び4の「果菜引受け体の平ベルトは,果菜キャリア
から果菜が送り出されるときに間欠移動して,果菜載置部から送り出される果菜を
引き継いで二以上の果菜をプールする」という構成は,甲1発明における「整列コ
ンベア5は,始端部及び終端部(第2図)に光電センサ20,21を配設し,受け
ベルト15の始端部にキューイKが移載されると光電センサ20が検知し,キュー
イKが移載される毎に1搬送ピッチ分だけ受けベルト15を回転し,終端部にキュ
ーイKが到達するまで受けベルト15を間欠的に回転駆動し,終端部にキューイK
が搬送されると光電センサ21が検知し,受けベルト15の回転を停止し,吸着位
置Ⅱに4個のキューイKを整列させる」構成と実質的に変わるものではない。
したがって,本件訂正後発明2及び4は,甲1発明,甲2技術,甲3技術及び周
知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4被告の主張
1取消事由1について
(1)本件訂正1について
ア特許請求の範囲の変更について
本件訂正後発明1は本件訂正前発明1と同じ「果菜自動選別送り出し方法」の発
明である。本件訂正前発明1と本件訂正後発明1は,いずれも「果菜キャリア」を
使用するものである。本件訂正後発明1の「スライドピン」,「往ガイド」及び「戻
りガイド」は,本件訂正前発明1では特定されていなかった「果菜キャリア」の「搬
送ベルト」の往回動及び復回動を,具体的にどのような機構によって実現するかを
特定するための付加であるから,果菜送り出し方法を特定するものであって,「搬送
ベルトの回転機構」という新たな発明を追加したものではなく,実質的に特許請求
の範囲を変更するものでもなければ,本件訂正前発明1のカテゴリーの変更をもた
らすものでもない。
また,「スライドピン」,「往ガイド」及び「戻りガイド」を付加しても,果菜を傷
つけることなく果菜引受け体に送り出すという本件訂正前発明1の目的及び効果が
変更されるものでもない。そして,特許請求の範囲は,前記構成により拡張される
ことはない。
したがって,訂正事項4,6,11,21及び24は,特許請求の範囲の減縮を
目的とするものである。
イ新たな技術的事項の追加について
(ア)訂正事項7について
本件明細書の【図2】(a)(b)及び【図5】には,先方側の回転ローラ11aの一
部がフレーム10の果菜引受け体4側の端部よりも果菜引受け体4側に突出し,か
つドライブチェーン1よりも果菜引受け体4側に突出している構成が明示されてい
る。そして,その取付けは一実施例にすぎない。
本件訂正前発明1においては,果菜を傷つけることのないよう,果菜キャリア2
の上の果菜が果菜引受け体4に水平又は略水平に送り出されることが必要であると
ころ,当該目的を達成する上で,ドライブチェーン1へのフレーム10の取付箇所
が【図2】(a)(b),【図5】に示された箇所に限定されなければならない技術的理由は
ない。ドライブチェーン1をフレーム10のどの箇所に取り付けるかは,フレーム
の形状などに応じて適宜選択可能であり,本件明細書の実施例において,ドライブ
チェーン1を【図2】(a)(b)及び【図5】の場合よりもフレーム10の内側(【図2】
(a),【図5】の左側)に取り付けて,先方側の回転ローラ11aの全部が前方側のド
ライブチェーン1よりも果菜引受け体4側に突出する位置とすることが可能である
ことは,当業者にとって自明といえる。
したがって,当業者は,本件明細書から図面の開示を超えて,「回転ローラの全部」
が突出した構成を把握することは可能であり,訂正事項7は,本件明細書に記載し
た事項の範囲内においてしたものである。
そして,訂正事項7は,果菜キャリアの構成を限定するものであるから,特許請
求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(イ)訂正事項8について
a当業者が本件明細書の【図2】(a)及び【図5】を見れば,搬送ベル
トが果菜キャリアの前後のローラの間において,たわむことなく回動するものであ
ることを理解する。本件訂正後発明1の「搬送ベルトの上側部分が平坦…な状態で
…移動するように往復回動可能」とは,搬送ベルトの上側部分が,このように果菜
キャリアの前後のローラの間において,たわむことなく移動することを規定するも
のである。搬送ベルトの表面が平らであることを規定しているものではない。
また,上記の各図を当業者が見れば,そこに開示されている搬送ベルトのような
一定の柔軟性を有するものの上に果菜のように重量を有するものを載せた場合,実
際上,僅かにはたわみ得ることは容易に理解できる。本件訂正後発明1において,
「平坦又は略平坦な状態で…移動するように往復回動可能」として「略平坦」とし
たのは,そのような状態が含まれることを示している。
b同様に,当業者は,本件明細書の【図2】(a)及び【図5】から,搬
送ベルトの上側部分が動く方向が水平方向であることを明確に理解する。そして,
本件訂正後発明1に用いられる機械に関し,実際上「水平方向」が寸分の誤差もな
い水平ではなく,若干のブレを許容することも理解する。本件訂正後発明1の「略
水平」とは,このような誤差が許容されることを示すものである。
cしたがって,訂正事項8は,明細書等に記載した事項の範囲内にお
いてしたものであり,本件訂正前発明1に,搬送ベルトがフレームにどのように設
けられているかを特定する事項,及び,搬送ベルトの往回転及び復回転がどの方向
への回転であるかを特定する事項を付加することによって,特許請求の範囲を減縮
するものであって,実質的に拡張又は変更するものではないから,特許法134条
の2第1項1号に規定する要件を満たすものである。
(ウ)訂正事項13,14,20及び22について
a本件特許において,果菜キャリアから果菜引受け体に果菜を送り出
すという構成は設定登録時のままであり,訂正事項13,14,20及び22によ
って追加したり,拡張したりしたものではない。
本件訂正前発明1も本件訂正後発明1も,本件明細書に開示されている様々な構
成の中から,果菜キャリアから果菜を果菜引受け体に向けて送り出す部分に関する
構成(果菜キャリアの動作に関する構成)と,果菜引受け体が,送り込まれてきた
果菜を引き受ける構成(果菜引受け体の動作に関する構成)に関する部分を取り出
し,果菜の選別・送り出し方法に関する技術的思想として把握したものである。当
業者であれば,本件明細書の開示内容から,果菜キャリアと果菜引受け体の構成に
関するこのような把握が可能であることは容易に理解できる。そして,この場合に,
果菜キャリアと果菜引受け体とは独立した別の構成要素である斜め引出しコンベア
6を,原告が主張するような必須不可欠なものと考えなければならない理由は存し
ない。
b訂正事項14,20及び22の「略水平」は,当業者であれば,本
件明細書の記載から,厳密な意味での水平ではなく,若干のぶれを許容するもので
あると理解する。
訂正事項14の「略同じ高さ」も同様であり,本件訂正後発明1が,甲1におけ
る傾斜板Z(シュート)や,甲2及び3におけるシュートのように,意図的に高低
差をもたせたり傾斜させたりしたものを含まないことは,本件明細書の【図5】の
構成,及び「略」の語義から明らかである。
(2)本件訂正2について
ア特許請求の範囲の変更について
原告の主張は,前記(1)アと同様の理由により,失当である。
イ新たな技術的事項の追加についいて
原告の主張は,前記(1)イ(ア)~(ウ)と同様の理由により,失当である。
2取消事由2について
(1)相違点1-1及び3-1の容易想到性の判断の誤りについて
ア甲1発明1に甲2技術1を適用したうえで,さらに当該適用技術を他の
周知技術又は技術常識に置換するためには,当該置換技術が単に周知技術又は技術
常識であるというだけでは足りず,甲1発明1に甲2技術1を適用したものに対し
て更に当該置換技術を適用することの積極的な動機付けが必要である。
原告の主張は,甲3や甲5に記載の周知技術が示す具体的な解決課題及び解決方
法との関係で,甲1発明1に甲2技術1を適用したものに更に当該周知技術を適用
できるかということにつき具体的な検討を行っていないから,失当である。
イ原告は「当業者は,甲2の記載から,移送ベルトを水平回転させる方式
を実現可能な構成として把握するのであり,甲1発明1に移送ベルトを水平回転さ
せる方式を適用することに阻害要因は存在しない」と主張する。
しかし,甲2の【0005】には課題が開示されており,甲2技術はその課題を
解決する手段として,「常態で中間部で窪んだ移送シート49」という構成を採用し
たのであり,この構成は甲2技術の課題の解決に不可欠な構成である。このような
不可欠な構成を,弛みのないベルトを備えた従来のベルトコンベアに置換したので
は,甲2技術が本来解決しようとする課題を解決できなくなる。
したがって,弛ませた移送シートに代えて弛みのないベルトを備えた従来技術の
ベルトコンベアを適用することには阻害要因がある。
(2)相違点1-2及び3-2の容易想到性の判断の誤りについて
ア「略水平」は,厳密な意味での水平ではないものの,当業者が果菜搬送
ラインのような装置類を設置するに際して,「水平」と認識できる程度を意味する。
甲1発明1は,受け台8から排出された果菜物を,受けベルト15の凹状の受け部
15a側に下り傾斜のシュートを介して当該受け部15aに移載するものであり,
積極的に果菜を転がすような傾斜,段差を設けたものであって,傾倒式の受け台8
から送り出される果菜物を整列コンベア5の受けベルト15の上に水平又は略水平
に移動するものでない(甲1の第1図及び第2図)。
イ甲1の受け台8は,キューイKを落下させるために,意図的に,凹状の
受け部15a側に下り傾斜にしてある。本件訂正後発明における「略水平」には果
菜が転がることを意図するような傾斜は含まれず,水平又はそれに近い状態にした
ものであるから,傾倒式の受け台8から送り出される果菜物を,受けベルト15の
凹状の受け部15aに落とし込む甲1のシュートとは異なる。
ウ果菜キャリアから果菜引受け体に直接果菜を送り出す構成は,設定登録
時からの構成である。また,果菜を果菜キャリア2から果菜引受け体4の平ベルト
の上面に水平又は略水平に送り出すことの技術的意義は,果菜を傷つけないように
送り出すことにあり,本件明細書の記載から当業者が認識できる事項である。
エベルトコンベア等によって物品を搬送する際に搬送面を同じ又は略同じ
高さで水平又は略水平に配置して高さを揃え,物品を水平又は略水平に送り出すこ
とが一般常識(甲32)であるとしても,甲1発明に甲2技術を適用したものや甲
1発明に甲3技術を適用したものに当然に適用できることにならず,組合せの阻害
要因を阻却することにならない。
オ甲1発明が,キューイKを吸着ユニット35による吸着に適した所定間
隔に離間して保持するようにすることを目的として,受けベルト15の上面に凹状
の受け部15aを多数設け,当該受け部にキューイKを載置するようにするもので
あることからすると,凹状の受け部15aを所定の間隔(吸着ユニット35による
吸着に適した所定間隔)で多数設けた受けベルト15と,当該凹状の受け部15a
上に,キューイKを移載するために,受け台8を受けベルト15よりも高い位置に
配置し,凹状の受け部15a側に下り傾斜のシュートを設けることにより,受け台
8からキューイKを凹状の受け部15a上に落下させるという構成は,甲1発明に
とって,本質的な技術的思想であり,課題解決に不可欠な構成である。この構成に
代えて,送り出し側と受け取り側の落差がなく,キューイKを受け台8から水平又
は略水平に送り出す構成を採用したのでは,キューイKを凹状の受け部15aに正
しく移載することができなくなるため,甲1発明は課題を解決することができない。
したがって,傾倒式の受け台8(送り出し側)と受けベルト15(受取り側)の
高さを同じ高さにして,送り出し側から受取り側に水平又は略水平にキューイKを
送り出す構成(落下させない構成)を採用することには阻害要因がある。
カ甲1発明においては,光電センサ20は受けベルト15の凹状の受け部
15aの真横にあるため,キューイKが受け部15a内に落とし込まれないと検知
することはできない。
したがって,甲1発明では,キューイKが受けベルト15に移載される際は停止
しており,移載完了後(凹状の受け部15aへキューイKが落下し,受け部15a
にキューイKが載った後)に初めてキューイが検知され,受けベルト15が間欠回
転するものである。
(3)相違点1-6及び3-6の容易想到性の判断の誤りについて
ア(ア)相違点1-2についての本件審決の認定判断に誤りはないから,誤
りがあることを前提とする相違点1-6に係る原告の主張は,失当である。
(イ)甲1発明は,キューイKを吸着ユニット35による吸着に適した所
定間隔に離間して保持することを解決課題とし,受けベルト15の上面に凹状の受
け部15aを所定間隔で多数設け,当該受け部にキューイKを載置するようにする
ことで課題の解決を達成するものであるから,受けベルト15の上面に所定間隔で
多数設けられた凹状の受け部15aは,甲1発明の課題解決のために不可欠の構成
である。甲1発明において,受けベルト15の上面を平面とした場合,キューイK
を吸着ユニット35による吸着に適した所定間隔に離間して保持する手段が消滅す
るため,キューイKの間隔を適切に保持することができず,甲1発明の目的とする
課題の解決が不可能となる。
したがって,上面が果菜を受ける窪みのない平面状の平ベルト自体が周知技術で
あり技術常識であるとしても,甲1発明の整列コンベア5において上面が平坦なベ
ルトを採用することには阻害要因がある。
(ウ)甲5の果菜選別籠11は下り傾斜であり,ベルトコンベア3のベルト
23の上面と同じ又は略同じ高さで水平又は略水平に配置されていない。また,甲
1発明において,傾倒式の受け台8(送り出し側)と受けベルト15(受取り側)
の高さを同じ高さにして,送り出し側から受取り側に水平又は略水平にキューイK
を送り出す構成(落下させない構成)を採用することには阻害要因があるから,仮
に甲5の【図1】に原告主張の構成が示されていたとしても,当該構成を適用する
ことはできない。
イ(ア)甲1には,「始端部にキューイKが移載されると光電センサ20が検
知し,この光電センサ20による検知に基づいて,キューイKが移載される毎に1
搬送ピッチ分だけ受けベルト15を回転し,」と記載されているから,受けベルト1
5はキューイKが移載される際は停止しており,移載完了後(凹状の受け部15a
へキューイKが落下し,受け部15aにキューイKが載った後)にはじめて間欠回
転するものである。
したがって,甲1に,整列コンベア5の受けベルト15にキューイKが送り込ま
れるときに当該受けベルト15を回転させて,キューイKを引き継いでプールする
ことは開示も示唆もされていない。
(イ)被告は,果菜が送り込まれる際,果菜引受け体の平ベルトが,果菜が
平ベルトに達する(触れる)前には回転を始めていることを要する旨を主張してい
る。「果菜が水平又は略水平に送り込まれるとき」が特定の一点のタイミングを意味
しているとの主張をしているわけではない。
平ベルトがそのような動作をしなければ(平ベルトに果菜が到達してから平ベル
トが動作するようなことになれば),水平に送り込まれた果菜が,停止している平ベ
ルトに引っかかることになり,果菜を平ベルト上に引き継ぐことができなくなる。
甲1には受けベルト15の始端部にキューイKが移載されてから光電センサ20
の検知により受けベルト15が回転する旨の記載がある。また,甲1の「…受けベ
ルト15上にキューイKを移載する。同時に,移載されるキューイKを光電センサ
20が検知し,この光電センサ20による検知に基づいて,キューイKが移載され
る毎に1搬送ピッチ分だけ受けベルト15を間欠的に回転させ」という記載は,キ
ューイKが受けベルト15に移載され,それと同時,すなわち,キューイKが受け
ベルト15に接地すると同時に,換言すれば,接地してから,光電センサで検知し,
その検知に基づいて受けベルト15を回転させる,と自然に読むことが可能な記載
である。さらに,甲1の第2図では,下記図Aに示すとおり,右側2列の整列コン
ベア(下図の青色点線で囲まれたもの)の搬送側端部において,シュートに一部が
載った状態のキューイKが,原告の主張によると,シュートによって一部が覆われ
ており,そのままでは,キューイKを移載できないはずの受け部15aに一部移載
されている状況が開示されている(赤色点線で囲まれたもの)。
【図A】
原告が主張するように,キューイKが受けベルト15に接地する前に受けベルト
15の回転が始まるのであれば,この状況下では,受けベルト15の回転が既に始
まっていなければならないはずである。しかし,受け部15aの位置は,右側2列
の受けベルト15上に並んだキューイKの位置と,左側2列の受けベルト15上に
並んだキューイKの位置が一致していることから明らかなように,キューイKがシ
ュート上に来る前の待機状態のもの(左側2列の受けベルトにおける,一部シュー
トに隠されている受け部15a)と何ら変わっていない。
また,下記【図B】に示すように,受け部15aがシュートによって一部が覆わ
れている状態であってもキューイKが受け部15a上に載ることは可能であり,こ
のような状態となってから,受けベルト15が回転すれば,キューイKの受け部1
5aへの載置は何ら問題なく完了する。第2図の右側2列の整列コンベアの状況は,
まさにこのような状態を示したものであると考えるのが妥当である。
【図B】
以上のとおり,甲1の記載(発明の詳細な説明及び図面)を見ると,甲1におい
ては,キューイKが受けベルト15に接地してから,すなわち,キューイKが受け
ベルト15に載ってから,受けベルト15が回転するのであり,本件訂正後発明1
の果菜引受け体とは,ベルトの動作が異なる。
また,原告の主張を前提としたとしても,甲1発明が,従前の平ベルト式のベル
トコンベア57(甲1)から,凹状の受け部15aを所定等間隔に多数形成した受
けベルト15に変更し,当該凹状の受け部15aにキューイKを載置するために,
受けベルト15の上方からシュートの上を転がして受け部15aにキューイKを入
れる(転がし入れる)という構成をとるものである以上,甲1発明から,①果菜引
き受け体の平ベルトの上面を,果菜を受ける窪みのない平面のものとする,②果菜
引き受け体の平ベルトを,その上面が果菜キャリアの搬送ベルトの上面と同じ又は
略同じ高さになるように配置する,③搬送ベルトの上の果菜を果菜引き受け体の平
ベルトの上面に水平又は略水平に送り出すという構成とすることを当業者が容易に
想到することはできないから,いずれにしても本件訂正後発明1は進歩性を有する
ことになる。
(4)本件訂正後発明1及び3の効果について
甲1発明の整列コンベア5は受け台8よりも低い位置にあり,受け台8から排出
される果菜物は転動しながらシュートを介して受けベルト15の受け部15aに移
載されるのであって,ベルトやシートによって横方向に移動させる方式を採用した
だけでは,本件明細書の【0017】に記載の効果は得られない。
また,甲1には,整列コンベア5の受けベルト15にキューイKが送り込まれる
ときに受けベルト15を回転させることは開示も示唆もされておらず,当業者であ
っても本件訂正後発明の構成に容易に想到できないから,本件明細書【0029】
に記載の効果は得られない。
(5)本件訂正後発明2及び4について
本件審決は,本件訂正後発明1及び3の進歩性について適切に判断しているから,
これらに従属する本件訂正後発明2及び4についての進歩性の判断も適切である。
第5当裁判所の判断
1本件訂正前発明及び本件訂正後発明について
(1)本件訂正前発明及び本件訂正後発明(以下,併せて「本件発明」という。)
は,前記第2の2記載のとおりであるところ,本件明細書(甲13)には,本件発
明について,次のとおりの記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本願発明は,各種果菜をサイズ別,形状別,糖度別など規格(等階級)別に選別
するための自動選別装置に関するものであり,特にトマト,桃,梨,茄子,メロン,
小玉西瓜などの果菜の選別に適したものである。
【背景技術】
【0002】
トマトなどの果菜を選別する装置として,図7に示すものがある。これはチェー
ン(無端搬送帯)1に多数の果菜キャリア2が連結されており,各キャリア2の上
面が可倒式の受皿となり,果菜3をこの受皿の上においてキャリア2に供給すると,
搬送途中に計測部で等階級が判別され,その判別信号に基づいて,所定の仕分け用
の果菜引受け体(ベルトコンベアやテーブル)4のところで受皿が横転され,果菜
3が転がりながら果菜引受け体4上にプールされ,仕分けされるというものである。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図7の選別装置では,走行中の果菜キャリア2から受皿を横転させて果菜3を排
出するために,第1に,受皿横転倒時の落下と転がりで果菜3が傷み,第2に,果
菜引受け体4が果菜キャリア2の進行方向に対して真横に引出すもの或いは単なる
テーブルであるために,果菜キャリア2の進行方向への運動が急に規制されて,果
菜3は果菜引受け体4上を斜め横方向に勢い良く転がって進むこととなり,さらな
る傷みの発生を生じさせる。果菜3がトマトの場合,熟す前の青くかたい状態で出
荷することも多いため,この選果機も広く使われてきたが,しかしながら傷みを問
題視する場合には,高価で維持コストの高いパン方式の選果機を選択するしかなか
った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明の果菜自動選別送り出し方法は,果菜キャリアが多数設けられた果菜搬
送ラインの果菜供給部において果菜を載せ,前記果菜搬送ラインの等階級計測部に
おいて,果菜キャリアで搬送される果菜の等階級を判別し,前記果菜搬送ラインの
仕分排出部において,果菜搬送中の前記果菜キャリアを回動させてその上の果菜を
前記等階級計測部での判別結果に応じて果菜搬送方向側方に送り出す,果菜自動選
別送り出し方法において,前記果菜キャリアは果菜搬送ラインの側方に往復回動す
るベルトコンベア式であり,その果菜キャリアに果菜を載せ置く果菜載置部が設け
られ,多数の果菜キャリアの前記果菜載置部を搬送方向に一列又は略一列に並べて
移動させ,前記果菜キャリアの移動により前記果菜載置部に載せた果菜を搬送方向
に一列又は略一列に並べて搬送し,前記等階級計測部において,一列又は略一列に
並べて搬送される果菜載置部の果菜を等階級判別し,前記仕分排出部において,果
菜キャリアのベルトを前記往回動させて,前記果菜載置部の上の果菜を前記判別結
果に基づいて,前記果菜搬送方向側方に送り出し,前記往回動させた果菜キャリア
のベルトを,前記送り出し後の移動中に復回動させて前記果菜載置部を元の位置に
復帰させて,前記多数の果菜キャリアの果菜載置部を搬送方向に一列又は略一列に
並べる方法である。
【0009】
本願発明の果菜自動選別送り出し方法は,果菜引受け体は,果菜キャリアから果
菜が送り出されるときに間欠移動して,果菜載置部から送り出される果菜を引き継
いで二以上の果菜をプールする方法である。
【発明の効果】
【0016】
本願発明は,仕分排出部5の果菜キャリア2と果菜引受け体4との間に,果菜キ
ャリア2から排出される果菜3を同果菜キャリア2の進行方向から20度乃至70
度の範囲内の斜方向に引出して果菜引受け体4へと送り出す斜め引出しコンベア6
を備えており,果菜引受け体4に移るまでに,一旦斜めに運ばれるため,果菜3の
運動方向の変化が少なく,果菜3の転がりを低減することができ,安全な仕分けが
可能となる。
【0017】
本願発明は,果菜キャリア2が,ベルトコンベア式のキャリアであるため,果菜
の排出が水平に横移動されて斜め引出しコンベア6に送り出されるため,転倒式の
果菜キャリア2に比べて大幅に果菜3の転倒を防止することができ,転がり等をほ
ぼ防止できる安全な仕分けが可能となる。痛みが生じやすい,桃や梨などの選果に
も利用することができる。
【0018】
本願発明は,斜め引出しコンベア6が,その引出し方向に駆動される細身の搬送
ベルト30を,果菜キャリア2の進行方向に沿って複数本並べて構成したものであ
るため,構造が安価で簡潔となる。
【0019】
本願発明で,斜め引出しコンベア6が,その引出し方向に回転される搬送ローラ
を多数本敷き詰めて構成したものとすると,ベルトの場合と同様に,果菜を斜め先
方に運ぶことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施の形態1)
図1,3は本願発明の果菜自動選別送り出し装置の実施形態を示した平面図であ
り,トマト用の選別装置として構成したものである。この装置は,大きさ的にオー
バーラップする桃や梨,さらには長さ20cmまでの茄子の選別にも兼用すること
ができる。図1,3の1は図示されていない駆動機構により図中の矢印a方向に進
行される無端搬送帯(ドライブチェーン)であり,30m長の長尺なフレーム9に
沿って2本設けられている。図1,3の2はトマト3を載せて搬送する果菜キャリ
アであり,ドライブチェーン1に連結されて図中の矢印a方向に走行される。
【0021】
図1,3の果菜キャリア2は,詳細を図2(a)~(c)示すように,長さ360mm,
幅140mm,高さ50mmのステンレス製フレーム10と,同フレーム10の長
手方向両端(軸間距離330mm)に回転自在に取り付けられた回転ローラ11a,
11bと,これら回転ローラ11a,11b間に掛け渡された幅130mmの搬送
ベルト12とを備えたベルトコンベア式のキャリアである。
【0022】
図2のフレーム10は,底面中央に,フレームの長手方向に沿って長さ170m
m,幅10mmの長穴14が開口されている。この長穴14には,同長穴14に沿
って図中の矢印e-f方向にのみ150mmの距離を移動可能なスライドピン15
が取り付けられている。このスライドピン15の上端15aは,搬送ベルト12に
固定された金具16と連結されており,またスライドピン15の下端15bはフレ
ーム10の下側に20mmほど突き出されている。同ピン15の下部にはベアリン
グ17が取り付けられており,これを矢印e-f方向にスライドすると,上部に連
結された搬送ベルト12を最大で150mm往復移動することができる。フレーム
10の上部には,搬送ベルト12を受けて支持するための支持板18が取り付けら
れている(図2(a)にのみ図示)。
【0023】
図2の搬送ベルト12は,詳細を図4に示すように,その上側部分のベルト表面
のトマト3を載せ置く部分に,長さ200mm,幅130mmのシート状の受け部
材13が貼付けられている。この受け部材13は,表面に最大高さ3mmの突条1
9が複数本形成されており,これら突条19の上端は,トマト3を載せる部分がす
り鉢状に凹まされるよう,且つ細長い茄子を縦向きに載せることができるように長
手方向に長い楕円のすり鉢状にカットされている。この受け部材13は,可撓性に
富むエラストマなどの素材で作成されており,回転ローラ11aを曲がる際に,搬
送ベルト12から浮き上がったり,しわが出たりすることなく,滑らかに曲がるよ
うになっている。
【0024】
図3に示す長大な果菜キャリア2の走行ラインは,搬送方向手前の区間A(約6
~7m)が,果菜キャリア2にトマト3を載せるためのトマト供給部であり,続く
区間B(約1~2m)がトマト3の等階級を計測する計測部であり,以降の区間C
は仕分け部となっている。
【0025】
図3の区間Aには,ライン脇に数人の作業員が立ち並び,収穫されたトマト3を
一つずつ果菜キャリア2に載せ置いて供給する。
【0026】
図3の区間Bの計測部には,画像処理による計測装置8が設けられており,トマ
トの大きさ及び形状,傷や色などから,あらかじめ指定された条件に基づいて等階
級を判別することができるようになっている。この計測装置からは等階級を代表す
る判別信号が出力されるようになっている。・・・
【0027】
図3の区間Cの各仕分排出部5には,果菜キャリア2の底のスライドピン15(正
確にはベアリング17)を操作して搬送ベルト12を図中の矢印b方向に動かすた
めのスライド手段が設けられている。各スライド手段は,図5に示すような,スラ
イドピン15及びそのベアリング17が差し込まれて走行可能な直進及び斜めのガ
イド溝20(20a,20b)が形成されたナイロンプレート21と,分岐部22
に設けられた切替えバー23と,同バー23の下側に設けられたロータリーソレノ
イド24とからなる。ロータリーソレノイド24は,区間Bの計測装置8の判別信
号を受けて動作するようになっており,例えば,排出すべきトマト3を載せた果菜
キャリア2が分岐部22を通過しようとすると,平常時直進状態S1にある切替え
バー23を斜め進行状態S2に切り替え,直進ガイド溝20aを進行する果菜キャ
リア2のスライドピン15を斜めガイド溝20b(直進ガイド溝20aに対して3
0度の傾き)側に案内し,これによりスライドピン15を矢印g方向に横移動させ
て,搬送ベルト12を矢印b方向に回動させ,その上に載せられているトマト3を
排出する。なお,この区間Cの搬送方向先端部には,斜めガイド溝20bにより,
横スライドされたスライドピン15を元の位置に復帰させ,搬送ベルト12を戻す
ためのガイド25(図3)も設けられている。
【0028】
図3の各区間Cの各仕分排出部5の側方には,果菜キャリア2から送出されるト
マト3を,果菜キャリア2の進行方向から斜め50度の方向に引き出して搬送する
斜め引出しコンベア6が設けられている。同斜め引出しコンベア6は,図5に示す
ように,斜め50度に傾けて配置した細身のベルト30を複数本並列させて構成し
た構造のベルトコンベアである。各ベルト(この場合,丸ベルト)は,両端に設け
られた2個の従動プーリー31a,31bと,下側に設けられた駆動シャフト32
とに掛け渡されており,駆動シャフト32とは斜に接触している。駆動シャフト3
2は図示されていないモーターにより回転されるようになっており,丸ベルト30
は若干捻られながらも駆動されて,コンベア上面では,図中の矢印c方向に進行し,
その上に送り出されたトマト3を,果菜キャリア2の進行方向から横50度の方向
に搬送することが出来るようになっている。丸ベルト30の配列間隔は10mm前
後に設定してあり,小粒のトマト3でも,隙間に落ち込むことなく確実に搬送する
ことが出来るようになっている。この斜め引出しコンベア6は,連続運転されるよ
うになっている。
【0029】
図3の各区間Cの斜め引出しコンベア6の先には,図1,3,5に示すように果
菜引受け体(この場合は平ベルトコンベア)4を設けてある。この平ベルトコンベ
ア4は,間欠運転されるコンベアであり,果菜キャリア2から斜め引出しコンベア
6を経てトマト3が送り込まれる時にだけ,トマト約1個分の距離だけ(トマト3
が1個通過するに必要な時間)自動運転され,平ベルトコンベア4上に間隔を詰め
てトマト3をプールすることができるようになっている。
【0030】
(実施の形態2)
本件発明の果菜自動選別送り出し装置において,斜め引出しコンベア6は,各種
の構造のコンベアを用いることができる。図6は,ローラーコンベアで構成する場
合の例であり,直径6~8mm程度の小径の駆動ローラ30を斜めに傾けて多数配
置してなるものである。駆動ローラ30は1本1本中央部分が指示具31で回転自
在に保持されていると共に,中央部分に回転駆動用のロープ32がかけられており,
同ロープ32によって回転駆動される構造となっている。」
(2)前記第2の2の認定事実及び前記(1)の本件明細書の記載によると,本件
発明について,次のとおり認められる。
ア本件発明は,各種果菜をサイズ別,形状別,糖度別など規格(等階級)
別に選別するための自動選別装置に関し,トマト,桃,梨,茄子,メロン,小玉西
瓜などの果菜の選別に適したものである。(【0001】)
イトマトなどの果菜を選別する装置として,チェーン(無端搬送帯)に多
数の果菜キャリアが連結され,各キャリアの上面が可倒式の受皿となり,果菜をこ
の受皿の上においてキャリアに供給すると,搬送途中に計測部で等階級が判別され,
その判別信号に基づいて,所定の仕分け用の果菜引受け体(ベルトコンベアやテー
ブル)のところで受皿が横転され,果菜が転がりながら果菜引受け体上にプールさ
れ,仕分けされるというものがある。(【0002】)
ウこの選別装置では,走行中の果菜キャリアから受皿を横転させて果菜を
排出するために,第1に,受皿横転倒時の落下と転がりで果菜が傷み,第2に,果
菜引受け体が果菜キャリアの進行方向に対して真横に引き出すもの又は単なるテー
ブルであるため,果菜キャリアの進行方向への運動が急に規制されて,果菜は果菜
引受け体上を斜め横方向に勢い良く転がって進むこととなり,さらなる傷みの発生
を生じさせるという課題がある。(【0003】)
エ本件発明の果菜自動選別送り出し方法は,果菜キャリアは果菜搬送ライ
ンの側方に往復回動するベルトコンベア式を採用し,等階級計測部において,一列
又は略一列に並べて搬送される果菜載置部の果菜を等階級判別した後,仕分排出部
において,果菜キャリアのベルトを往回動させて,果菜載置部の上の果菜を前記判
別結果に基づいて,前記果菜搬送方向側方に送り出し,前記往回動させた果菜キャ
リアのベルトを,前記送り出し後の移動中に復回動させて前記果菜載置部を元の位
置に復帰させて,前記多数の果菜キャリアの果菜載置部を搬送方向に一列又は略一
列に並べるようにしている。また,果菜引受け体は,果菜キャリアから果菜が送り
出されるときに間欠移動して,果菜載置部から送り出される果菜を引き継いで二以
上の果菜をプールする。(【0004】,【0009】)
2引用発明等の認定
(1)甲1発明
ア甲1の記載内容
甲1(特開平3-256814号公報)には,次の記載がある
「(イ)産業上の利用分野
この発明は,例えば,キューイや茄子等の楕円形状を有する果菜物の箱詰に最適
な果菜物整列箱詰装置に関する。
(ロ)従来の技術
従来,上述例のキューイを箱詰する果菜物箱詰装置としては,例えば,第4図に
示すように,ベルトコンベア57を搬送方向に回転して,斜設した受けボックス5
8内にキューイKを連続的に供給し,この受けボックス58の下流側吸着位置Ⅱに
所定箱詰数のキューイKを整列した後,吸着位置Ⅱの上方に待機する吸着ユニット
59を垂直降下して,この吸着ユニット59に垂設した各吸着子60・・・を整列し
たキューイKに密着して吸着保持した後,この吸着ユニット59を垂直上昇して箱
詰位置Ⅲの上方に水平移動させ,再び,吸着ユニット59を垂直降下して,箱詰位
置Ⅲに装填された箱体JにキューイKを箱詰めする装置がある。
(ハ)発明が解決しようとする問題点
しかし,上述のキューイKを転動させて受けボックス58内に整列させると,受
けボックス58の下流側内壁面にキューイKが当接したり,或いは,整列されるキ
ューイKの相互接触により,キューイKの外周面に打ち傷や擦り傷が付くことがあ
り,キューイKの商品価値が損なわれるという問題点を有している。
また,キューイKを相互接触させて整列するので,左右又は前後に隣接するキュ
ーイKの相互接触抵抗により,次列のキューイKの整列が妨げられ,吸着ユニット
59に垂設した吸着子60とキューイKとの吸着位置がずれると,キューイKの吸
着保持に充分な負圧が得られず,キューイKの吸着保持が困難であったり,移動中
にキューイKが落下する等,箱詰ミスが生じるという問題点も有している。
(ニ)問題点を解決するための手段
この発明の第1発明は,コンベアの搬送面上に果菜物を所定間隔に離間した姿勢
に保持する受け部を多数形成した果菜物整列箱詰装置であることを特徴とする。
第2発明は,コンベアの搬送面上に果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持する
受け部を多数形成し,上記コンベアの搬送面上方に,該コンベアにより搬送される
果菜物を吸着保持して箱詰する吸着ユニットを対設した果菜物整列箱詰装置である
ことを特徴とする。
第3発明は,コンベアの搬送途中に設けた判定部の後位に,該判定部の読取りデ
ータと対応して果菜物を振分ける振分け部を複数配設し,上記振分け部の上方に,
該振分け部に振分けられる果菜物を吸着保持して箱詰する一つの吸着ユニットを対
設すると共に,上記吸着ユニットを各振分け部の上方に移動する移動手段を設けた
果菜物整列箱詰装置であることを特徴とする。
(ホ)作用
この発明の第1発明は,コンベアの搬送面上に形成した受け部に果菜物を個々に
載置し,果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送することで,搬送中に於
ける果菜物の接触及び衝突が防止される。
第2発明は,コンベアの搬送面上に形成した受け部に果菜物を個々に載置し,果
菜物を所定間隔に離間した姿勢のまま搬送することで,吸着ユニットの吸着間隔と
対応した位置及び間隔に果菜物が整列され,果菜物の吸着保持が正確に行える。
第3発明は,移動手段を駆動して,果菜物が集中して振分けられる一つの振分け
部に吸着ユニットを移動させ,この振分け部に向けて振分けられる大量の果菜物を
吸着ユニットにより吸着保持して箱詰する。
(へ)発明の効果
この発明の第1発明は,果菜物を所定間隔に離間した姿勢に保持して搬送するの
で,搬送中に於ける果菜物の接触及び衝突を確実に防止することができ,果菜物の
商品価値を損ねること無く搬送することができる。
第2発明は,上述の第1発明の効果に加えて,果菜物を所定間隔に離間した姿勢
のまま搬送するので,吸着ユニットの吸着間隔と対応した位置及び間隔に果菜物を
整列させることができ,整列時に於ける果菜物の接触及び衝突を確実に防止され,
整列された所定箱詰数の果菜物を吸着ユニットにより正確に吸着保持することがで
きると共に,果菜物の箱詰作業が容易に行える。
第3発明は,第1及び第2発明の効果に加えて,果菜物が集中して振分けられる
振分け部に吸着ユニットを移動して,この振分け部に振分けられる果菜物を吸着ユ
ニットにより吸着保持して機械的に箱詰するので,搬送経路上に果菜物を停滞させ
ること無く,振分け量に対応した速度で箱詰めすることができ,箱詰め作業の能率
アップが図れると共に,一つの吸着ユニットを各振分け部に移動して箱詰するので,
装置全体の構成が簡素化され,製作コストの低減を図ることができる。
(ト)発明の実施例
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は果菜物の一例としてキューイを撰別及び箱詰めする果菜物整列箱詰装置を
示し,第1図及び第2図に於いて,この果菜物整列箱詰装置1は,未撰別のキュー
イKを連続的に搬送する振分けコンベア2と,搬送されるキューイKのサイズ・品
質・重量を読取る判定部3と,判定部3の読取りデータに基づいて品質及びサイズ
別にキューイKを振分ける振分け部4と,振分けられるキューイKを所定間隔に離
間した姿勢に保持して搬送する整列コンベア5と,整列コンベア5により整列搬送
される4個のキューイKを3列箱詰めする箱詰装置6とから構成される。
上述の振分けコンベア2は,搬送方向aに張架したガイドチェーン7の長さ方向
に受け台8を所定等間隔に隔てて多数配列し,この受け台8を後述する振分け側に
向けて傾動可能に取付けると共に,駆動モータ(図示省略)によりガイドチェーン
7を搬送方向aに回転して,受け台8に載置されたキューイKを搬送側始端部から
終端部に向けて搬送する。
この振分けコンベア2の搬送経路上には,キューイKを供給する供給部9と,キ
ューイKのサイズ・品質・重量を読取る判定部3と,判定部3の読取りデータに基
づいてキューイKを品質及びサイズ別に振分ける振分け部4とを搬送方向aに設定
している。
上述の判定部3は,キューイKが載置された受け台8の番地を読取る番地リーダ
10と,この番地リーダ10による番地読取りと対応して,キューイKのサイズを
読取るサイズセンサ11と,キューイKの品質を読取る品質センサ12と,キュー
イKの重量を計量する重量センサ13とから構成される。
前述の振分け部4は,例えば,振分けコンベア2の搬送経路上を秀・優・良・並
の品質別に分割して品質振分け部A,B,C,Dを設定し,これら品質振分け部A,
B,C,Dを,S・M・L・LLのサイズ別に分割してサイズ振分け部E,F,G,
Hを設定すると共に,これらサイズ振分け部E,F,G,Hの一側部には,前述の
振分けコンベア2と直交して整列コンベア5を夫々張架している。
・・・
上述の整列コンベア5は,搬送側始端部及び終端部に軸支したローラ14,14
間に合成ゴム製の受けベルト15を張架し,始端側下部に配設した第1モータ16
によりスプロケット17,18及び起動チェーン19を介して受けベルト15を搬
送方向bに回転させ,前述の振分けコンベア2から移載されるキューイKを終端部
に向けて搬送すると共に,始端部及び終端部に配設した光電センサ20,21によ
り回転を制御する。
すなわち,始端部にキューイKが移載されると光電センサ20が検知し,この光
電センサ20による検知に基づいて,キューイKが移載される毎に1搬送ピッチ分
だけ受けベルト15を回転し,終端部にキューイKが到達するまで受けベルト15
を間欠的に回転駆動する。
一方,終端部にキューイKが搬送されると光電センサ21が検知し,この光電セ
ンサ21による検知に基づいて受けベルト15の回転を停止し,吸着位置Ⅱに4個
のキューイKを整列させる。
上述の受けベルト15の搬送面上には,第3図にも示すように,1個のキューイ
Kと対応する大きさであって,凹状の受け部15aを所定等間隔に隔てて多数形威
し,これら各受け部15a…に載置されたキューイKを所定間隔に離間した姿勢に
保持して搬送する。
一方,終端側下部に立設したエアシリンダ22のシリンダロッド端部を,同側の
ローラ14の軸端部に嵌合したベアリング23に連結固定して,このエアシリンダ
22の作動により,受けベルト15を水平姿勢と傾斜姿勢とに上下動する。
・・・
先ず,第1図に示すように,供給部9に於いて,搬送方向aに移動する振分けコ
ンベア2の各受け台8…に未撰別のキューイKを順次載置し,判定部3に於いて,
番地リーダ10による番地読取りと対応して受け台8に載置されたキューイKのサ
イズ・品質・重量を読取り,振分け部4に於いて,判定部3の読取りデータに基づ
いて品質及びサイズ別にキューイKを振分け処理する。
例えば,受け台8上のキューイKが「秀」品質で「M」サイズであると判定され
た場合,判定データと対応する品質振分け部Aのサイズ振分け部Fに受け台8が移
動するまでの通過台数をカウンタFaで計数し,対応するサイズ振分け部Fまで受
け台8が移動すると,第2図に示すように,受け台8を振分け側に傾動して整列コ
ンベア5の受けベルト15上にキューイKを移載する。
同時に,移載されるキューイKを光電センサ20が検知し,この光電センサ20
による検知に基づいて,キューイKが移載される毎に1搬送ピッチ分だけ受けベル
ト15を間欠的に回転させ,この受けベルト15に形成した各受け部15a…にキ
ューイKを個々に載置して,キューイKを所定間隔に離間した姿勢に保持して吸着
位置Ⅱまで搬送し,吸着位置ⅡにキューイKが搬送されると光電センサ21が検知
し,この光電センサ21による検知に基づいて受けベルト15の回転を停止し,吸
着位置Ⅱに4個のキューイKを整列させる。
次に,箱詰装置6のエアシリンダ40を作動して,吸着位置Ⅱの上方に待機する
吸着ユニット35を垂直降下させ,吸着位置Ⅱに整列された4個のキューイKに吸
着子42を密着させて吸着保持した後,再び,エアシリンダ40を作動して,吸着
位置Ⅱの上方に吸着ユニット35を垂直上昇させて停止する。
この時,吸着位置ⅡからキューイKを取り除くと,整列コンベア5が回転駆動し
て,キューイKが移載される毎に1搬送ピッチ分だけ受けベルト15を間欠的に回
転させ,吸着位置ⅡまでキューイKを自動供給する。
次に,エアシリンダ39を作動して,吸着ユニット35を吸着位置Ⅱの上方から
箱詰位置Ⅲの上方に水平移動させた後,エアシリンダ40を作動して,箱詰位置Ⅲ
の上方に移動した吸着ユニット35を垂直降下させ,箱詰位置Ⅲに装填された箱体
Jに4個のキューイKを収納した後,吸着子42による吸着を解除してキューイK
を分離し,再び,エアシリンダ39,40を作動して,吸着ユニット35を吸着位
置Ⅱの上方に復帰移動させ,吸着位置Ⅱに自動供給される4個のキューイKを吸着
保持すると共に,第2図に示すように,吸着ユニット35を左右方向に若干移動し
て,箱詰位置Ⅲに装填された箱体JにキューイKを千鳥状に箱詰することで箱詰作
業が完了する。
この後,箱供給装置43のエアシリンダ54を作動して,昇降台53を垂直降下
させ,キューイKが12個詰された箱体Jを搬送ベルト47上に移載し,この搬送
ベルト47を搬送方向dに回転して,箱詰作業の完了した箱体Jを次の封函作業等
に移送する。
同時に,次に待機する空の箱体Jを昇降台53上に移載し,再び,エアシリンダ
54を作動して,箱詰位置Ⅲに箱体Jを装填すると共に,箱詰作業を継続して行う。
このように整列コンベア5によりキューイKを所定間隔に離間した姿勢に保持し
て搬送するので,搬送時及び整列時に於けるキューイKの接触及び衝突が確実に防
止され,キューイKの商品価値を損ねること無く搬送することができる。
しかも,吸着ユニット35に垂設した各吸着子42…の吸着間隔と対応した位置
及び間隔にキューイKを整列させることができ,吸着位置Ⅱに整列された所定箱詰
数のキューイKを吸着ユニット35の各吸着子42…により正確に吸着保持するこ
とができ,キューイKの箱詰作業が容易に行える。」
イ甲1発明の認定
上記アによると,甲1には,本件審決の認定のとおり,次の発明が記載されてい
ると認められる。なお,後記シュートとは,甲1の第1図及び第2図の振り分けコ
ンベア2と整列コンベア5との間に図示された上部が広く下部が狭い台形形状を有
する板状の部材であって,振り分けコンベア2側が高く,整列コンベア5側が低く
なるように配置されたものをいい,傾斜した状態の受け台8の上面の端部から,振
り分けコンベア2の側方に排出された果菜物を,受けベルト15の上面まで案内す
るものである。
(ア)甲1発明1
「受け台8が多数設けられた振分けコンベア2の供給部9において,果菜物である
キューイKを前記受け台8に載せ,前記振分けコンベア2の判定部3において,受
け台8で搬送される果菜物であるキューイKを計測して果菜物であるキューイKの
等階級を判別し,前記振分けコンベア2の振分け部4において,果菜物であるキュ
ーイKを搬送中の前記受け台8を傾動させてその上の果菜物であるキューイKを前
記判定部3での判別結果に応じて果菜物であるキューイKの搬送方向側方に送り出
す,果菜物自動振り分け方法において,
前記受け台8はガイドチェーン7にその走行方向に多数取付けられて,振分けコ
ンベア2の搬送方向に一列に並んでおり,
前記受け台8の夫々は前記ガイドチェーン7に取り付ける傾動式の台であり,
夫々の受け台8の上側の一部に果菜物であるキューイKを載せ置くことのできる
果菜物を載置する部分が設けられ,
振分けコンベア2の前記振分け部4の側方に,受けベルト15が回転するベルト
コンベア式の整列コンベア5が,果菜物であるキューイKの搬送方向に作業間隔を
あけて二以上配置され,受けベルト15は,その上面が果菜物であるキューイKを
受ける凹状の受け部15aを所定等間隔に隔てて形成した形状であり,その上面が
受け台8の果菜物を載置する部分より下位の高さで水平又は略水平に配置され,果
菜物であるキューイKが整列コンベア5の受けベルト15の上面に形成された凹状
の受け部15aにシュートを介して移載されると,光電センサ20による検知に基
づいて間欠的な回転駆動して,当該果菜物であるキューイKを前記受けベルト15
の上面に引き継いでプールすることができ,
前記多数の受け台8を,その果菜物を載置する部分を振分けコンベア2の搬送方
向に一列又は略一列に並べて,前記ガイドチェーン7の走行によりその走行方向に
移動させ,
前記移動中の受け台8の果菜物を載置する部分の上に,前記供給部9において,
前記果菜物であるキューイKを一つずつ載せて搬送方向に一列又は略一列に並べて
搬送し,
前記受け台8の移動により,前記果菜物を載置する部分に載せた果菜物であるキ
ューイKを搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して,サイズを読取るサイズセ
ンサ11と,品質を読取る品質センサ12と,重量を計量する重量センサ13を備
えた判定部3を通過させてその通過中に果菜物であるキューイKの少なくともサイ
ズ・品質・重量を計測し,
前記振分け部4において,前記計測に基づく等階級判別に応じて,受け台8を振
分けコンベア2の側方に往傾動させて,当該受け台8の果菜物を載置する部分の上
の果菜物であるキューイKを移動させることにより,果菜物であるキューイKの搬
送方向側方に配置された前記整列コンベア5の受けベルト15の上面に送り出し,
前記整列コンベア5の受けベルト15を,果菜物であるキューイKが前記凹状の
受け部15aにシュートを介して移載されると,振分けコンベア2の搬送方向側方
であって前記果菜物であるキューイKが移載される方向に1搬送ピッチ分だけ間欠
的な回転駆動させてその間欠的な回転駆動による前記受けベルト15の回転により,
当該記(判決注:「当該」の誤記と認める。)受けベルト15の上面に移載される果
菜物であるキューイKを引継ぎ,果菜物であるキューイKの移載時の間欠的な回転
駆動の繰り返しにより,前記受け台8の果菜物を載置する部分から移載される果菜
物であるキューイKを前記整列コンベア5の受けベルト15の前記果菜物であるキ
ューイKを受ける凹状の受け部15aを所定等間隔に隔てて形成した形状の上面に
水平又は略水平に二以上プールする,
果菜物自動振り分け方法。」
(イ)甲1発明3
「ガイドチェーン7に受け台8が多数設けられた振分けコンベア2に,受け台8に
果菜物であるキューイKを載せる供給部9が設けられ,供給部9で受け台8に載せ
た果菜物であるキューイKの等階級を判別する判定部3が振分けコンベア2におけ
る供給部9の先方に設けられ,判定部3で計測された果菜物であるキューイKをそ
の計測に基づく等階級判別結果に応じて受け台8によって果菜物であるキューイK
の搬送方向側方に配置された整列コンベア5に送り出す振分け部4が判定部3の先
方に設けられた果菜物自動振分け装置において,
前記受け台8はガイドチェーン7にその走行方向に多数取付けられ,
前記受け台8の夫々は前記ガイドチェーン7に取り付ける傾動式の台であり,
夫々の受け台8の上側の一部に果菜物であるキューイKを載せ置くことのできる
果菜物を載置する部分が設けられ,
振分けコンベア2の前記振分け部4の側方に,上面に果菜物であるキューイKを
受ける凹状の受け部15aを所定等間隔に隔てて形成した形状の受けベルト15が
回転する整列コンベア5が,果菜物であるキューイKの搬送方向に作業間隔をあけ
て二以上配置され,各々の整列コンベア5は果菜物を載置する部分から送り出され
る果菜物であるキューイKを引継いで二以上の果菜物であるキューイKをプールで
きる長さのベルトコンベアであり,
前記整列コンベア5は,その受けベルト15の上面が受け台8の果菜物を載置す
る部分より下位の高さで水平又は略水平に配置されており,
前記多数の受け台8は,その果菜物を載置する部分が振分けコンベア2の搬送方
向に一列又は略一列に並んで配送されるように,ガイドチェーン7に取り付けられ
て配置されており,そのガイドチェーン7の走行により夫々の果菜物を載置する部
分に載せた果菜物であるキューイKが判定部3を一列又は略一列に並んで通過する
ことができ,
前記果菜物を載置する部分は,前記供給部9において,果菜物であるキューイK
を一つずつ載せることができ,
前記判定部3はサイズを読取るサイズセンサ11と,品質を読取る品質センサ1
2と,重量を計量する重量センサ13を備え,果菜物を載置する部分に載せられて
一列又は略一列に並んで搬送される果菜物であるキューイKの少なくともサイズ・
品質・重量を計測でき,
各々の受け台8は,前記振分け部4において振分けコンベア2の側方に往傾動し
て,果菜物を載置する部分に載せてある果菜物であるキューイKを,前記計測に基
づく等階級判別結果に応じて前記整列コンベア5の受けベルト15の上面に送り出
し可能であり,
前記整列コンベア5の受けベルト15は果菜物であるキューイKが前記凹状の受
け部15aにシュート介して(判決注:「シュートを介して」の誤記と認める。)移
載されると,振分けコンベア2の搬送方向側方であって前記果菜物であるキューイ
Kが移載される方向に間欠的な回転駆動して,その間欠的な回転駆動による前記受
けベルト15の回転により当該受けベルト15の上面に果菜物であるキューイKを
引継ぎ,果菜物であるキューイKの移載時の間欠的な回転駆動の繰り返しにより,
前記受け台8の果菜物を載置する部分から移載される果菜物であるキューイKを前
記整列コンベア5の受けベルト15の上面に二以上プールすることができる長さの
ベルトコンベアである,
果菜物自動振り分け装置。」
(2)甲2技術
ア甲2の記載内容
甲2(特開平11-286328号公報)には,次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本願は,薄物や不定形品などの小物類を自動的に仕分け
る装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来,小物類を自動的に仕分ける装置として,搬送コンベアにより
移送されてきた小物類を,指定された所定位置に備えたスクレーパをコンベア面上
で水平回動することにより側方に押出す方式のもの,或いは搬送路に沿って多数配
設され,搬送方向と直交する方向に傾動可能なトレイを指定された所定位置におい
て傾動してトレイ上の小物類を自由落下により側方に移送する方式のもの,或いは
搬送路に沿って多数配設され,搬送方向と直交する方向で水平回転するターンテー
ブルを指定された所定位置に至ったとき該ターンテーブルを水平回転してターンテ
ーブル上の小物類を側方に移送する方式のものなどが存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0004】また傾動可能なトレイを備えた方式の場合は,トレイを傾動して搬送
物を自由落下する構成であるから,落下する搬送物にスピードがついて仕分け受け
口で搬送物同士の衝合による損傷や破損の生じる惧れがあり,従って破損し易い搬
送物の搬送には不向きであると共に,底面の摩擦係数が大きい搬送物の場合,自由
落下が円滑に行われないという不都合を有する。
【0005】さらにまた,移送ベルトを水平回転させる方式の場合,移送ベルトの
表面が水平面であることにより搬送の過程でビンや缶などの円筒物が転動して落下
する惧れがあり,また仕分け時に移送ベルトが静止状態から急回転するので,重心
の不安定な搬送物は慣性により仕分け方向と反対方向に転動する惧れがあって仕分
けの確実性が劣るなどの不都合があった。
・・・
【0011】
【発明の実施の形態】・・・図1は,本願装置の総体を示す概略平面図であって,横
長楕円状の搬送路Aには,その搬送路Aに沿って多数の搬送ユニット1が密接状態
にかつ走行可能に配置されており,また搬送路Aの途中には斜状に延びて仕分けし
ようとする搬送物の投入路Bと,搬送方向と直交する位置に配置されて例えば配送
先別に搬送物を仕分ける複数の仕分けシュートCとが配置されている。
・・・
【0013】しかして,投入路Bに搬入された搬送物Pは,コンベア2による走行
中に読取り器3により当該搬送物Pに付された仕分けコード番号が読み取られると
共に,任意の搬送ユニット1に移送され,搬送物Pを受け取った搬送ユニット1は
搬送路Aに沿って搬送される。次いで,搬送物Pを載置した搬送ユニット1が仕分
けコード番号の読み取り信号に対応する特定の仕分けシュートCの位置に至ったと
き,搬送ユニット1に備えた移動機構が作動して搬送物Pは特定の仕分けシュート
Cに搬出される。このようにして投入路Bに投入された搬送物Pは,仕分けコード
番号により特定位置の仕分けシュートCに自動的に仕分けられる。
【0014】図2は総体の縦断面図,図3は搬送ユニット1の総体平面図,図4は
搬送ユニット1の縦断した正面図を示している。
【0015】搬送ユニット1は,搬送路Aを形成する断面H型の装置機台10に設
けた基盤11上に走行可能に配置されている。即ち基盤11上には,搬送ユニット
1を搬送方向に走行するための搬送レール12と後述する作動機構15を構成する
ガイド板53などが配置されていると共に,載置機台10の側壁上面にはリニアモ
ータ14がそれぞれ敷設されている。
【0016】搬送ユニット1は,下面に前記搬送レール12上を転動する車輪20
を備えたユニットフレーム21と,このユニットフレーム21に設けられて搬送方
向を直交する左右方向に走行自在の移動機構22と,前記移動機構22に連動機構
23を介して搬送物Pを仕分けシュートCに搬出する搬出機構24とから構成され
ており,前記搬送ユニット1と前記基盤11との間には搬送ユニット1の走行に伴
って移動機構22を左右方向に作動する作動機構15が設けてある。
【0017】前記ユニットフレーム21は,搬送方向で対峙する前後壁板25,2
5を有し,その下縁の左右位置に渡架されて前後方向に延び,かつ下面に前記走行
レール12上を転動する車輪20を有した底板26と,前記左右位置の底板26の
中央位置に渡架されて左右方向に延びる支持板27とが設けてある。
【0018】前記移動機構22は,前記支持板27上に案内手段30を介して左右
方向に走行する移動フレーム31を有し,この移動フレーム31は前後方向に長く,
その両端面に左右1対の可動チェーンホイール32,32がそれぞれ並設してある。
【0019】前記案内手段30は,移動フレーム31の中央下面に設けたガイドベ
アリング35と前記支持板27上に設けられて前記ガイドベアリング35を摺動案
内する長尺のガイドレール36とから成り,この案内手段30は,支持板23と共
に筒状の枠部材37内に介入されている。
【0020】前記連動機構23は,前記可動チェーンホイール32,32と,前記
前後壁板25の内面にそれぞれ支承した複数の固定チェーンホイール40,41と
各チェーンホイール32及び40,41に巻回されて両端が前記枠部材37に固着
されたチェーンベルト42とから構成されている。
【0021】即ち図2で明らかなように,並列する左右1対の可動チェーンホイー
ル32,32を中間にしてその上方左右位置と下方左右位置とに,それぞれ上位の
固定チェーンホイール40,40と下位の固定チェーンホイール41,41とが対
設してあると共に,上位の固定チェーンホイール40,40間に張架したチェーン
ベルト42の両側をそれぞれ可動チェーンホイール32,32に巻回して折り返し
たのち,下位の固定チェーンホイール41,41に巻回して再び折り返したのち,
その両端部を移動フレーム31の両端部にそれぞれ固着する。
【0022】しかして,後述する作動機構15により連動機構23が連動し,これ
によって移動フレーム31は,案内手段30により案内されながら支持板27に沿
って左右方向に往復作動する。
【0023】前記搬出機構24は,前後壁板25の上部間のほぼ全平面を覆う大き
さを有し,かつ上面に左右位置で傾斜して中央位置で窪む窪み面45を有すると共
に,左右側面を円弧状に形成した受板46と,この受板46に重合されるゴム乃至
スポンジなどから成る緩衝シート47と,左右で対向する上位の固定チェーンホイ
ール40,40の間隔とほぼ等しい間隔をもって,両端がチェーンベルト42に軸
止された左右1対のバー48a,48bに両側縁が結着された移送シート49とか
ら成り,前記左右1対のバー48a,48bは,枠部材37が搬送ユニット1の左
右幅の中央に位置する中立位置において前記緩衝シート47の面上よりもHに相当
する高い位置で支持されており,この状態で移送シート49は,その中間部に前記
緩衝シート47の面上に重合するように弛みを保有している。
【0024】前記移動フレーム31を左右方向に作動する作動機構15は,前記枠
部材37の下面に設けたガイドローラ51と,その下段に設けた小径の補助ガイド
ローラ52とを含み,図5で示すように基盤11の左右幅の中間位置に設けられて
前記ガイドローラ51の移動を案内する搬送方向に延びた左右1対の中央ガイド板
53,53と,一端が前記中央ガイド板53,53の前端部間に臨んで搬送方向に
延び,かつ中心長手方向に前記補助ガイドローラ52を案内する案内溝54を有し
た可動切換ガイド部片55と,この可動切換ガイド部片55の可動切換により,前
記案内溝54と選択的に連通して,枠部材37の移送方向を中立位置及び左右の搬
出位置の三方に方向切換する案内溝56,57,58を並設した固定切換ガイド部
片59と,前記中央ガイド板53,53の後端に一端が連設されて側方に傾斜し,
次いで直線状に延びて前記固定切換ガイド部片59の左右案内溝57及び58と補
助ガイドローラ52との係合を介して方向切換されたガイドローラ51を案内する
ための左右1対の側方ガイド板60,61と,前記基盤11の左右側縁に設けられ
て前記側方ガイド板60,61の直線部分との間でガイドローラ51の移動を案内
する補助ガイド板62とから成り,前記可動切換ガイド部片55は,一端が回動自
在に枢着63された切換プレート64に設けてあり,この切換プレート64は,仕
分けコード番号によって作動する例えばエアシリンダ65により回動操作される。
【0025】このように構成された作動機構15における中央ガイド板53,53,
可動切換ガイド部片55,固定切換ガイド部片59及び側方ガイド板60,61は,
仕分けシュートCに対応する各位置に設けられる。
【0026】しかして,搬送路Aに密接状態に配置された搬送ユニット1は,リニ
アモータ14により搬送レール12上を走行する。従って投入路Bから投入された
搬送物Pは,走行中の搬送ユニット1における移送シート49上に移送されると共
に,当該搬送物Pに付された仕分けコード番号が読取り器3により読取られ,この
読取り信号により指定された指定位置の搬出シートCに対応する作動機構15のエ
アシリンダ62が作動して可動切換ガイド部片55が切換えられる。
【0027】他方搬送ユニット1に設けた枠部材37は,常態で図2で示すように
その前後幅の中央の中立位置にあり,この状態でガイドローラ51は,中央ガイド
板53に案内されて直進する。
【0028】今図5において切換プレート64が仕分けコード信号により仮想線で
示すように回動して案内溝54が搬出用の案内溝57と連通するように切換えられ
たとすると,中央ガイド板53に案内されたガイドローラ51と同軸の補助ガイド
ローラ52が案内溝54から案内溝57に導かれ,これによって枠部材37は側方
に移動しながら前進すると共に,ガイドローラ51は側方ガイド板61の傾斜部に
よりさらに側方に誘導され,枠部材37が基盤11の一方の側部に充分移動したの
ち,ガイドローラ51は側方ガイド板51の直線部と補助ガイド板62との間を走
行する。
【0029】このようにして枠部材37が中立位置から側方に充分移動したとき,
移動シート49は走行して,移送シート49上の搬送物Pは仕分けシュートCに搬
出されて搬送物Pの仕分けが行われる。そして搬送物Pの仕分けが終了したのち枠
部材37は,搬送物の投入路Bに至る以前に図示しないが基盤11上に設けた復元
用ガイド板とガイドローラ51との作用により,搬送ユニット1は再び中立位置に
導かれ,以上の動作が繰り返される。
【0030】図6,7は移送シート49上の搬送物Pを仕分けシュートCに搬出す
る場合の態様を示している。即ち搬送物Pが移送シート49を介して緩衝シート4
7上の窪んだ中央部に位置し,かつ枠部材37も亦搬送ユニット1の中立位置にあ
る図6仮想線の状態から,すでに述べたように,作動機構15により枠部材37が
中立位置から図中右方向に移動すると,その移動に伴って移送シート49を支持し
ている一方のバー48aがチェーンベルト42と共に上位の一方の固定チェーンホ
イール40の周りに沿って図中反時計方向に回転すると共に,他方のバー48bは
高い位置Hを保持しながら図中左方向に移動する。
【0031】次いで,一方のバー48aがチェーンベルト42と共にさらに移動す
ると,移送シート49は受板46の丸味を帯びた側面に摺接しながら可動チェーン
ホイール32の方向に走行すると共に,他方のバー48bは高い位置Hを保持した
状態でさらに左方向に移動する。
【0032】そして枠部材37が図7で示すように最も右側位置に至ったとき,他
方のバー48bは図中最も左位置に達するので,移送シート49上に載置された搬
送物Pは最終的には高い位置Hを保持した他方のバー48bに支持されて立ち上が
る走行シート49の端部により押圧されながら,受板46の図中左側面から仕分け
シュートCに移行する。
・・・
【0035】
【発明の効果】以上のように本願発明によれば,搬送ユニットに設けた移送シート
を搬送方向と直交する方向に走行してその走行方向の端部位置で,搬送物を仕分け
シュートに搬出する構成であるので,搬送物は移送シートの走行によって強制的に
搬出でき,特に常態で中間部が窪んでいるので,その窪み部に搬送物が安定した状
態で保持されると共に,移送シートの走行により,搬送物を円滑でかつ確実に搬出
させることができる。」
イ甲2技術の認定
上記アによると,甲2には,本件審決の認定のとおり,次の技術が記載されてい
ると認められる。
(ア)甲2技術1
「搬送ユニット1が多数設けられた搬送路Aの投入路Bから薄物や不定形品など
の小物類である搬送物Pが移送される領域において,搬送物Pを前記搬送ユニット
1に載せ,前記搬送路Aの仕分けシュートCの領域において,搬送物P搬送中の前
記搬送ユニット1を回動させてその上の搬送物Pを仕分けコード番号に応じて搬送
物P搬送方向側方に送り出す,搬送物Pを自動的に仕分ける方法において,
前記搬送ユニット1の夫々はユニットフレーム21と,ユニットフレーム21に
往復回動可能に設けられた移送シート49と,移送シート49に左右一対のバー4
8a,48b,チェーンベルト42及び枠部材37を介して連結されたガイドロー
ラ51及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイドローラ52と,
を備えた往復回動式のベルトコンベアであり,
前記ユニットフレーム21の左右方向一方側と他方側にそれぞれ搬送物P搬送方
向にみて一対の上位の固定チェーンホイール40が回転可能に取り付けられ,
前記移送シート49は,ユニットフレーム21の左右方向一方側に設けられた一
方側の上位の固定チェーンホイール40と左右方向他方側に設けられた他方側の上
位の固定チェーンホイール40の間に張架され,両側をそれぞれ可動チェーンホイ
ール32,32に巻回されて折り返されたのち,下位の固定チェーンホイール41,
41に巻回されて再び折り返されたのち,両端部を移動フレーム31の枠部材37
の両端部にそれぞれ固着した一対のチェーンベルト42,42に,左右方向で対向
する上位の固定チェーンホイール40,40の間隔とほぼ等しい間隔をもって軸止
した一対のバー48に両側縁が結着されて,上側部分が略平坦な状態で略水平に移
動するように往復回動可能であり,前記往復回動のうち往回動は移送シート49の
上面側が搬送路Aの側方に配置された仕分けシュートC方向に移動する回動であり,
復回動は移送シート49の上面側が当該往回動と反対方向へ移動する回動であり,
夫々の搬送ユニット1の移送シート49の上側部分の一部に,搬送物Pを載せ置
くことのできる中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受
板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移
動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を
省いた領域である載置領域が設けられ,
前記ガイドローラ51及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイ
ドローラ52はユニットフレーム21の底板26より下方に突出しており,
前記仕分けシュートCの領域において,前記仕分けコード番号に応じて,搬送ユ
ニット1の移送シート49を搬送路Aの側方に往回動させて,当該移送シート49
の載置領域の上の搬送物Pを略水平に移動させることにより,搬送物P搬送方向側
方に配置された前記仕分けシュートCに送り出し,
前記移送シート49の往回動は,移動される搬送ユニット1のガイドローラ51
及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイドローラ52が,搬送路
Aの下方に設けられた可動切換ガイド部片55,固定切換ガイド部片59及び側方
ガイド板60,61に案内されて移動することにより行われ,
前記往回動させた搬送ユニット1の移送シート49を,前記搬送物P送り出し後
の移動中に前記往回動と反対側に復回動させて,当該移送シート49の搬送物Pを
載せる載置領域を元の位置に復帰させることにより,前記多数の搬送ユニット1の
載置領域を搬送方向に一列又は略一列に並べ,
前記移送シート49の復回動は,搬送物P送り出し後に,移動される搬送ユニッ
ト1のガイドローラ51及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイ
ドローラ52が,前記搬送路Aの下方に設けられた復元用ガイド板に案内されて移
動することにより行われ,
それら復帰した搬送ユニット1の載置領域に,前記投入路Bから搬送物Pが移送
される領域において,搬送物Pを一つずつ載せることができるようにした技術。」
(イ)甲2技術2
「搬送ユニット1が多数設けられた搬送路Aに,搬送ユニット1に薄物や不定形
品などの小物類である搬送物Pを載せる投入路Bから搬送物Pが移送される領域が
設けられ,搬送物Pを仕分けコード番号に応じて搬送ユニット1によって搬送物P
搬送方向の側方に配置された仕分けシュートCに送り出す仕分けシュートCの領域
が設けられた搬送物Pを自動的に仕分ける装置において,
前記搬送ユニット1の夫々はユニットフレーム21と,ユニットフレーム21に
往復回動可能に設けられた移送シート49と,移送シート49に左右一対のバー4
8a,48b,チェーンベルト42及び枠部材37を介して連結されたガイドロー
ラ51及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイドローラ52と,
を備えた往復回動式のベルトコンベアであり,
前記ユニットフレーム21の左右方向一方側と他方側にそれぞれ搬送物P搬送方
向にみて一対の上位の固定チェーンホイール40が回転可能に取り付けられ,
前記移送シート49は,前記一方側の上位の固定チェーンホイール40と前記他
方側の上位の固定チェーンホイール40の間に張架され,両側をそれぞれ可動チェ
ーンホイール32,32に巻回されて折り返されたのち,下位の固定チェーンホイ
ール41,41に巻回されて再び折り返されたのち,両端部を移動フレーム31の
枠部材37の両端部にそれぞれ固着した一対のチェーンベルト42,42に,左右
方向で対向する上位の固定チェーンホイール40,40の間隔とほぼ等しい間隔を
もって軸止した一対のバー48に両側縁が結着されて,上側部分が略平坦な状態で
略水平に移動するように往復回動可能であり,前記往復回動のうち往回動は移送シ
ート49の上面側が搬送路Aの側方に配置された仕分けシュートC方向に移動する
回動であり,復回動は移送シート49の上面側が当該往回動と反対方向へ移動する
回動であり,
夫々の搬送ユニット1の移送シート49の上側部分の一部に,搬送物Pを載せ置
くことのできる中央位置で窪む窪み面45を有する左右方向を円弧状に形成した受
板46とこの受板46に重合される緩衝シート47の面上に重合して左右方向に移
動する移送シート49の上面領域からバー48a,48bと結着した両側縁領域を
省いた領域である載置領域が設けられ,
前記ガイドローラ51及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイ
ドローラ52はユニットフレーム21の底板26より下方に突出しており,
各々の搬送ユニット1の移送シート49は,前記仕分けシュートCの領域におい
て搬送路Aの側方に往回動して,載置領域に載せてある搬送物Pを,前記仕分けコ
ード番号に応じて仕分けシュートCに送り出し可能であり,
前記移送シート49の往回動は,移動される搬送ユニット1のガイドローラ51
及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイドローラ52が,搬送路
Aの下方に設けられた可動切換ガイド部片55,固定切換ガイド部片59及び側方
ガイド板60,61に案内されて移動することにより行われ,
前記搬送物P送り出し後の移送シート49は,前記往回動と逆方向に復回動して,
載置領域が元の位置に復帰して,前記多数の搬送ユニット1の載置領域を搬送方向
に一列又は略一列に並べることができ,
前記移送シート49の復回動は,搬送物P送り出し後に,移動される搬送ユニッ
ト1のガイドローラ51及びガイドローラ51の下段に設けられた小径の補助ガイ
ドローラ52が,前記搬送路Aの下方に設けられた復元用ガイド板に案内されて移
動することにより行われるようにした技術。」
(3)甲3技術
ア甲3の記載内容
甲3(米国特許第3231068号明細書)には,次の記載がある。
「本発明は,物品を独特の手法で配送するように適応されたコンベア機構に関す
る。・・・
AとBによる「AutomaticSortationSystem」と題する同時係属出願(1961
年1月10日に出願された出願番号81,754号,1965年1月26日に登録
され,現在は特許第3,167,192号)には,先行技術で遭遇した問題の多くを
克服する構造が記載されている。この構造では,複数の傾斜可能なトレイが,コン
ベア経路に沿って移動可能に位置決めされている。コンベア経路の側部に複数のス
テーションが位置決めされ,トレイは,トレイ上の物品を特定のステーションに移
したいときに傾くように適応される。コンベア経路に沿った幾つかのステーション
のそれぞれには,トレイの傾斜運動を引き起こすように適応された手段が配置され
る。コンベア・システムと符号化操作が組み合わされることが好ましく,それによ
り,作動手段は,トレイが所望のステーションまで移動したときにトレイを自動的
に傾ける。符号化手段は,各トレイ上に配置された各物品の符号を様々な作動装置
に転送し,それによりトレイが適切な時間に傾斜されるように適応される。
・・・
本発明のより特定の目的は,上記の目的を達成することができ,かつきわめて効
率的に動作する機構並びに理想的に小型の構造を特徴とする装置を提供することで
ある。
・・・
本発明の装置は,物品を受け取ってその物品をステーションに移すように適応さ
れた複数の相互接続されたプラットホームを含み,ステーションは,プラットホー
ムの移動経路に沿って配置される。本発明の改良点は,特に,移動可能なコンベア
手段を含み,それにより物品をプラットホームから取り出すことができる,物品搬
送装置内のプラットホームの提供を対象とする。各プラットホームは,連結された
コンベアを移動させることができる駆動手段を含む。プラットホームの移動経路に
沿って,駆動手段を作動させ,それによりプラットホーム・コンベアが物品を放出
する働きをするように適応された手段が配置される。
本発明の概念にしたがって設計されたプラットホームは,特に,プラットホーム
の移動経路のどちらかの側に物品を移すのに適する。したがって,本発明の構造は,
理想的には,プラットホームの移動経路に沿って両側に対で配置されたステーショ
ンを含む設備に適する。駆動手段は,プラットホーム上にある物品をどのステーシ
ョンが受け取るかにより,それぞれのプラットホームのコンベアをどちらかの方向
に移動させるように適応される。
・・・
プラットホームのホイール18は,トラック12上に乗って装置による物品の搬
送を実現するように適応される。プラットホームを相互接続し,それによりプラッ
トホームがトラック12に沿って一体で移動するように,エンドレス・チェーンや
他の適切な手段21を利用することができる。
・・・
シャフト36にはピニオン46もキー結合され,ピニオン46と同じ平面内に1
対のラック48が相補的に取り付けられる。シャフト36の拡張部50は,駆動チ
ェーン21を接続する手段を提供する。
・・・
図7,図8及び図9は,ホイール62を備え,それによりプラットホームがトラ
ック12に乗ることができるプラットホーム構造60の実施形態を示す。ホイール
62は,プラットホームの水平フレーム部材64にジャーナル接続される。
フレーム部材64に垂直に延在するように配置された1対のロール68のまわり
にエンドレス・ウェブ66が延在する。ウェブ66は,その表面の2分の1を横切
って水平方向に延在するリブ70を備え,それによりウェブの把持操作が改善され
る。ウェブの反対側は,板71によって支持され,それによりウェブの弛みを防ぐ
ことができる。
フレーム部材64の間に取付板72が固定され,シャフト74は,この板内でジ
ャーナル接続される。このシャフトにレバー手段76が結合され,1対のアーム7
8もシャフトに結合され,それにより,シャフトの動きによりこれらのアームが揺
れる。アーム78は,板71の下側に固定されたピン82を収容するように適応さ
れたスロット80を画定する。
プラットホーム60の移動経路に,1対の相補的に取り付けられた作動ピン84
が配置される。これらのピン84のうちの1つが上昇すると,レバー76の側面の
一方が,上昇したピンと係合し,したがって,プラットホームが動き続けるときに
レバーが回る。レバー76のこの動きは,アーム78に伝わり,これらのアームが
今度は,ウェブに固定されたピン82の係合によってウェブ66の動きを提供する。
ウェブ82の動きは,ウェブの上面に配置された物品の放出を達成する。レバー
76とピン84の係合は,プラットホームが移動し,レバーがピン84を越えたと
きに終わる。このレバーには復元スプリング86が接続され,それにより,レバー
は,ピン84が外れた状態のときの定常位置に戻り,ウェブ66も,アーム78と
ピン82の操作により戻される。どのピン84が作動するかにより,ウェブ66を
どちらの方向にも移動できることを理解されよう。
・・・
図15と図16に更に他の実施形態を示す。図示されたプラットホーム160は,
水平フレーム部材162と関連ホイール164を有する。ウェブ168を支持する
ために,フレーム162にジャーナル接続されたロール166が提供される。ウェ
ブ168の両端に1対のバー170が形成され,これらのバーは,ウェブ上に配置
された物品と係合するように構成される。
チェーン172が,ロール166とキー結合されたスプロケット174と係合す
る。前述のタイプの駆動手段を含む任意の適切な駆動手段を使用して,スプロケッ
ト174に回転運動を与え,それにより,ウェブ168が,上に配置された物品を
放出するのに十分に動くことができる。ウェブ上のリブ又はクリートに代えたバー
170の使用は,梱包をプラットホーム・コンベヤのどちらかの末端まで確実に移
動させる満足な実施形態を提供する。
・・・ラック200及び202を移動させる手段と,前述の様々な他の作動手段を
移動させる手段は,符号化機構と相互接続されることが好ましい。具体的には,物
品が装置のプラットホームの1つの上に最初に配置されたときに物品を符号化でき
る機構を提供することが望ましい。
・・・
以上述べたプラットホーム構造は,特に,種々様々なあまり複雑でない駆動機構
によって操作できるので有利である。プラットホーム構造の更に重要な特徴は,構
造が本質的に比較的小型であり,したがってこれらの構造の設置に大きい空間が必
要ないことである。したがって,プラットホームと操作手段は,実質的に常に同じ
平面内で動作し,したがって,構造物が広範囲で垂直運動することが不要である。
更に,プラットホーム構造自体は,その移動経路から外方に延在する機構を使用す
る必要がない。」
イ甲3技術の認定
上記アによると,甲3には,本件審決の認定のとおり,次の技術が記載されてい
ると認められる。
(ア)甲3技術1
「プラットホーム60,160が多数設けられた移動経路の供給部において,物
品を前記プラットホーム60,160に載せ,前記移動経路のステーションの領域
において,物品搬送中の前記プラットホーム60,160を回動させてその上の物
品を符号に応じて物品搬送方向側方に送り出す,物品を自動的に所定のステーショ
ンに配送する方法において,
前記プラットホーム60,160は駆動チェーン21にその走行方向に多数取付
けられて,移動経路の移動方向に一列に並んでおり,
前記プラットホーム60,160の夫々は前記駆動チェーン21に取付ける水平
フレーム部材64,162と,水平フレーム部材64,162に往復回動可能に設
けられたウェブ66,168を備えた往復回動式のベルトコンベアであり,
前記水平フレーム部材64,162は,シャフト36の拡張部50を備え,シャ
フト36の拡張部50は前記駆動チェーン21に取り付けられており,
前記水平フレーム部材64,162のプラットホーム60,160の移動方向と
垂直方向一方側と他方側にロール68,166が回転可能に取り付けられ,
前記ウェブ66,168は,水平フレーム部材64,162のプラットホーム6
0,160の移動方向と垂直方向一方側に設けられた一方側のロール68,166
と,プラットホーム60,160の移動方向と垂直方向他方側に設けられた他方側
のロール68,166の外周に,平坦に一周巻かれて,その上側部分が平坦又は略
平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回動可能であり,前記往復回動
のうち往回動はウェブ66,168の上面側が移動経路の側方に配置されたステー
ション方向に移動する回動であり,復回動はウェブ66,168の上面側が当該往
回動と反対方向へ移動する回動であり,
夫々のプラットホーム60,160のウェブ66,168の上側部分の一部に,
物品を載せ置くことのできる上面部が設けられ,
前記ステーションの領域において,符号に応じて,プラットホーム60,160
のウェブ66,168を移動経路の側方に往回動させて,当該ウェブ66,168
の上面部の上の物品を水平又は略水平に移動させることにより,物品搬送方向側方
に配置された前記ステーションに送り出し,
前記往回動させたプラットホーム60,160のウェブ66,168を,前記物
品送り出し後の移動中に前記往回動と反対側に復回動させて,当該ウェブ66,1
68の上面部を元の位置に復帰させることにより,前記多数のプラットホーム60,
160のウェブ66,168の上面部を搬送方向に一列又は略一列に並べることが
できるようにした技術。」
(イ)甲3技術2
「駆動チェーン21にプラットホーム60,160が多数設けられた移動経路に,
プラットホーム60,160に物品を載せる供給部が設けられ,物品を符号に応じ
てプラットホーム60,160によって物品搬送方向側方に送り出すステーション
の領域が設けられた物品を自動的に所定のステーションに配送する装置において,
前記プラットホーム60,160は前記駆動チェーン21にその走行方向に多数
取付けられ,
前記プラットホーム60,160の夫々は前記駆動チェーン21に取付ける水平
フレーム部材64,162と,水平フレーム部材64,162に往復回動可能に設
けられたウェブ66,168を備えた往復回動式のベルトコンベアであり,
前記水平フレーム部材64,162は,前記駆動チェーン21に取付けるシャフ
ト36の拡張部50を備え,
前記水平フレーム部材64,162のプラットホーム60,160の移動方向と
垂直方向一方側と他方側にロール68,166が回転可能に取り付けられ,
前記ウェブ66,168は,前記一方側のロール68,166と,前記他方側の
ロール68,166の外周に,平坦に一周巻かれて,その上側部分が平坦又は略平
坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回動可能であり,前記往復回動の
うち往回動はウェブ66,168の上面側が移動経路の側方に配置されたステーシ
ョン方向に移動する回動であり,復回動はウェブ66,168の上面が当該往回動
と反対方向へ移動する回動であり,
夫々のプラットホーム60,160のウェブ66,168の上側部分の一部に,
物品を載せ置くことのできる上面部が設けられ,
各々のプラットホーム60,160のウェブ66,168は,前記ステーション
の領域において移動経路の側方のステーション側に往回動して,上面部に載せてあ
る物品を,符号に応じて前記ステーションに送り出し可能であり,
前記物品送り出し後のウェブ66,168は,前記往回動方向と逆方向に復回動
して,上面部が元の位置に復帰して,前記多数のプラットホーム60,160のウ
ェブ66,168の上面部を搬送方向に一列又は略一列に並べることができるよう
にした技術。」
3取消事由1について
(1)本件訂正1について
ア特許請求の範囲の変更について
(ア)本件訂正前発明1は,「果菜キャリアの搬送ベルトを果菜搬送ライン
の側方に往回動させて,当該搬送ベルトの果菜載置部の上の果菜を,果菜搬送方向
側方に配置された前記果菜引受け体に送り出し,」「前記往回動させた果菜キャリア
の搬送ベルトを,前記果菜送り出し後の移動中に前記往回動と反対側に復回動させ
て,当該搬送ベルトの果菜載置部を元の位置に復帰させる」という構成を備える「果
菜自動選別送り出し方法」の発明であり,訂正事項4,6,11,21及び24に
係る訂正は,当該「果菜自動選別送り出し方法」の発明において,「果菜キャリアの
搬送ベルト」の「往回動」及び「復回動」を実現するための機構を具体化するもの
と評価できるのであって,本件訂正前発明1の目的及び効果に変更を生じさせるも
のではない。
したがって,上記訂正事項は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,
実質上特許請求の範囲を変更するものではない。
(イ)原告は,本件訂正前発明1には,往回動及び復回動の機構は記載され
ておらず,訂正事項4,6,11,21及び24は,本件訂正前発明1の「果菜キ
ャリア」に「スライドピン」,「往ガイド」及び「戻りガイド」という新たな構成を
追加することで,本件訂正前発明1の目的及び効果を「ドライブチェーンの走行に
よる果菜キャリアの移動を利用して搬送ベルトを機械的に往回動及び復回動させる」
という目的及び効果に変更するものである旨主張する。
しかし,本件訂正の前後で発明の目的及び効果に変更が生じたか否かは,発明全
体に着目すべきところ,原告が主張する「ドライブチェーンの走行による果菜キャ
リアの移動を利用して搬送ベルトを機械的に往回動及び復回動させる」という目的
及び効果は,本件訂正により追加した「搬送ベルトの回転機構」にのみ着目したも
のであって,発明全体に着目すると,果菜キャリアの搬送ベルトを往復回動により,
果菜キャリアの上の果菜を果菜引受け体に送り出すという点は,本件訂正前発明1
と本件訂正後発明1において,変更はない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
イ新たな技術的事項の追加について
(ア)訂正事項7について
a本件明細書の【図2】(a)(b),【図5】(a)(b)には,先方側の回転ロ
ーラ11aの一部が,フレーム10の果菜引受け体4側の端部よりも果菜引受け体
4側に突出し,かつ,ドライブチェーン1よりも果菜引受け体4側に突出している
構成が図示されているところ,果菜キャリア2の上の果菜を果菜引受け体4に水平
又は略水平に送り出すという機能に照らすと,先方側の回転ローラ11aの位置が
上記各図に示された箇所に限られる理由はなく,上記機能の発揮に資する範囲で適
宜選択可能であると認められるから,先方側の回転ローラ11aの全部が,フレー
ム10の果菜引受け体4側の端部よりも果菜引受け体4の側に突出し,かつ,前方
側のドライブチェーン1よりも果菜引受け体4側に突出する位置としてもよいこと
は,当業者にとって自明であるといえる。なお,本件明細書には,果菜キャリア2
の上の果菜が斜め引出しコンベア6へと移動される旨の記載があるが,本件訂正後
発明1がこのようなものに限られることはないことは,後記(ウ)のとおりである。
したがって,当業者は,本件明細書の記載から,回転ローラの「全部」が突出し
た構成を把握することができるから,訂正事項7は,本件明細書に記載した事項の
範囲内においてしたものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b原告は,①本件明細書からは,先方側の回転ローラ11aの一部が
突出していることが図面から看取できるだけであり,その技術的意義について記載
も示唆もないから,「回転ローラの全部」が突出する構成は,当業者が本件明細書か
ら把握することができない,②ドライブチェーン1の取付位置がフレームの形状な
どに応じて適宜選択可能なものであれば,先方側の回転ローラ11aが前方側のド
ライブチェーン1よりも果菜引受け体4側に突出しない位置とすることも可能であ
って,本件明細書に回転ローラの少なくとも一部が突出する記載が開示されている
わけではない旨主張する。
しかし,前記aのとおりであって,当業者は,本件明細書の記載から,回転ロー
ラの全部が突出した構成を把握することができるといえるから,原告の上記主張に
は理由がない。
(イ)訂正事項8について
a本件明細書の【図2】(a)及び【図5】(a)には,搬送ベルト12が
果菜キャリア2の前後の回転ローラ11a,bの間においてその上側部分にたわみ
が生じていない状態が記載されていること,訂正事項8の「水平・・・に移動するよう
に」との文言からすると,当業者は,訂正事項8の「前記搬送ベルトは・・・その上側
部分が平坦・・・な状態で水平・・・に移動するように往復回動可能」とは,搬送ベルト
12が果菜キャリア2の前後の回転ローラ11a,bの間でその上側部分がたわむ
ことなく水平に移動することを規定していると理解するものと認められる。
また,本件明細書の【図2】(a),【図5】(a),【0021】及び【0022】に
は,搬送ベルト12が果菜キャリア2の前後の回転ローラ11a,bに掛け渡され,
回転ローラ11a,bに沿って往復移動することが記載されており,当業者は,搬
送ベルト12は,回転ローラ11a,bに沿った往復移動に伴い曲がり得る柔軟性
を有する素材であること,そのため,果菜の重量次第でたわみ得ることを理解する
ものと認められる。したがって,当業者は,訂正事項8の「前記搬送ベルトは・・・そ
の上側部分が・・・略平坦な状態で…略水平に移動するように往復回動可能」は,搬送
ベルトの上側部分にたわみが生じる場合が含まれること,搬送ベルトの上側部分が
水平方向に移動する際,若干の上下方向のぶれが生じる場合が含まれることを規定
したものと理解するものと認められる。
そうすると,当業者は,本件明細書の記載から,搬送ベルトは「その上側部分が・・・
平坦又は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回動可能」である構
成を把握することができるから,訂正事項8は,本件明細書に記載した事項の範囲
内においてしたものであり,特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
b原告は,訂正事項8について,①本件明細書には,搬送ベルトの上
側12には長い楕円のすり鉢状にカットされた受け部材13が設けられていること,
搬送ベルト上側部分の一部に設けられた果菜載置部がベルトの表面よりも窪んだ形
状であることは開示されているが,搬送ベルトの上側部分を「平坦又は略平坦な状
態」としたことは開示されていない,②本件明細書を参酌しても「略」の含む範囲
が不明瞭であって,本件明細書から把握できない「略平坦な状態」,同様に「略水平
に移動する」という概念を新たに追加するものであるから,本件明細書に記載した
事項の範囲内においてしたものではない旨主張する。
しかし,①について,本件明細書に,搬送ベルトの上側部分の全体形状について,
「平坦又は略平坦な状態」とすることが開示されていることは,前記aのとおりで
あり,このことは,搬送ベルトの表面形状について,原告の主張するように,本件
明細書に,搬送ベルトの上側部分の一部に設けられた果菜載置部が搬送ベルトの表
面よりも窪んだ形状であるという開示がされていることと矛盾するものではない。
また,「略」については,前記aのとおり理解できるのであって,これをもって本
件明細書から把握できない新たな概念を追加したものとはいえない。
したがって,原告の上記主張には理由がない。
(ウ)訂正事項13,14,20及び22について
a本件明細書【0016】~【0019】には,「斜め引出しコンベア
6」は,果菜を果菜キャリアから果菜引受け体に移すに際し,その間に斜め引出し
コンベアを介することにより,果菜の運動方向の変化を少なくし,転がり等を防止
して,果菜の傷みを防ぐという機能を有することが記載されている。
本件明細書【0021】には,果菜キャリアがベルトコンベア式であること,本
件明細書【0029】には,果菜引受け体が平ベルトコンベアであることが記載さ
れているところ,本件明細書【0028】及び【0030】には,斜め引出しコン
ベアは,ベルトコンベアを含む各種の構造のコンベアを用いることができることが
記載されている。斜め引出しコンベアの機能は,上記のとおり,果菜の運動方向の
変化を少なくする点にあり,複数のベルトコンベア間でベルトコンベア上の物品を
移動させるという点では,ベルトコンベアである果菜キャリアからベルトコンベア
である果菜引受け体に果菜キャリア上の果菜を移動させる場合と,ベルトコンベア
である果菜キャリアからベルトコンベアである斜め引出しコンベアに果菜キャリア
上の果菜を移動させる場合とで,変わりがあるものではない。
そうすると,当業者は,いずれもベルトコンベアである果菜キャリア2と果菜引
受け体4の間に「斜め引出しコンベア6」を必ずしも介在させる必要はないと理解
する。このように,ベルトコンベアである果菜キャリアからベルトコンベアである
果菜引受け体の平ベルトコンベアに果菜キャリア上の果菜を移動させることができ
ることが当業者にとって自明である以上,当業者は,本件明細書の記載から,果菜
キャリアの搬送ベルトから果菜引受け体の平ベルトに果菜を直接移動させる構成も
把握できると解される。
bまた,訂正事項14,20及び22の「水平又は略水平」,訂正事項
14の「同じ又は略同じ高さ」における「略」については,本件訂正後発明1にお
いて,果菜引受け体の平ベルトの上面と果菜キャリアの搬送ベルトの上面が「同じ
又は略同じ高さ」で「水平又は略水平」に配置され,果菜が果菜引受け体の平ベル
トの上面に「水平又は略水平」に送り込まれるときに,当該果菜を前記平面状の上
面に「水平又は略水平」に引き継ぐ,送り出す,又は,送り込むものとされている
こと,及び,本件発明は,各種果菜を選別するための果菜自動選別送り出し方法に
関する発明であって,果菜が受皿横転時の落下と転がりや,果菜引受け体上を転が
ることにより傷むという課題を解決するものであることからすると,果菜引受け体
の平ベルトの上面と果菜キャリアの搬送ベルトの上面が,正確に同じ高さで段差が
ない場合と,正確に同じ高さでなくとも,果菜が各ベルトの間の段差の分移動する
ことにより傷みが生じる可能性が,各ベルトの間の段差が全くない場合と同程度に
とどまる段差がある場合を特定したものと理解できる。
そうすると,当業者は,本件明細書の【図5】(a)から,果菜引受け体の平ベルト
の上面と果菜キャリアの搬送ベルトの上面が「同じ又は略同じ高さ」で「水平又は
略水平」に配置され,果菜が果菜引受け体の平ベルトの上面に「水平又は略水平」
に送り込まれるときに,当該果菜を前記平面状の上面に「水平又は略水平」に引き
継ぐ,送り出す,又は,送り込む構成を把握することができる。
なお,前記(イ)aのとおり,ベルトコンベアのベルトにたわみが生じる場合があり,
そのことによって,当該ベルトの上側部分が水平方向に移動する際,若干の上下方
向のぶれが生じる場合があり得るから,このような場合も,訂正事項20の「水平
又は略水平に移動させる」の「略水平」に含まれると解される。
cしたがって,訂正事項13,14,20及び22は,本件明細書に
記載した事項の範囲内においてしたものであり,特許請求の範囲の減縮を目的とす
るものである。
(2)本件訂正2について
ア特許請求の範囲の変更について
前記(1)アと同様の理由により,訂正事項30,33,38,46及び49は,特
許請求の範囲の減縮を目的とするものであって,特許請求の範囲を変更するもので
はない。
イ新たな技術的事項の追加について
前記(1)イと同様の理由により,訂正事項32,34,40,41,45及び47
は,本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであって,特許請求の範
囲の減縮を目的とするものである。
(3)小括
以上によると,原告の主張する取消事由1には,理由がない。
4取消事由2について
(1)本件訂正後発明1を甲1発明1と対比すると,相違点1-2及び1-6
があり,本件訂正後発明3を甲1発明3と対比すると,相違点3-2及び3-6が
あるところ,相違点1-2及び3-2並びに相違点1-6及び3-6は,いずれも,
果菜を搬送するラインに設けられた送り出し側の台から果菜搬送方向側方に配置さ
れたコンベアに果菜を移載させる際に,本件補正後発明が,送り出し側の台(果菜
キャリア)をベルトコンベアとして当該ベルトを往回動させて果菜を移載させるの
に対し,甲1発明が送り出し側の台(受け台8)を傾動式の受け台として当該受け台
を往傾動させて果菜を移載させることによる相違点である。事案に鑑み,先ずこれ
らの点をまとめて検討する。
(2)ア甲1の第1図には,振分けコンベア上の受け台8とキューイKが,受け
台8が水平な状態にある場合と受け台8が整列コンベア5の受けベルト15方向に
傾斜した状態にある場合とが記載されており,受け台8の受けベルト側15には,
傾斜した状態の受け台8の上面の端部に近い位置から受けベルト15の上面につな
がる位置まで傾斜した板状の部材(シュート)が記載されており,その上方に当該
部材の傾斜とほぼ平行に受けベルト15方向に向けて矢印が記載されている。また,
その左側の受けベルト15の上面は,概ね水平で,その上にキューイKが等間隔で
載置されている状態が記載されており,当該複数のキューイKの上方に,受けベル
ト15の上面と概ね平行に,左側に向けて,矢印bが記載されている。同第2図に
も,受け台8と受けベルト15の間には,シュートが,台形形状を有する部材とし
て,記載されており,光電センサ20は,シュートではなく,受けベルト15の端
部の左横に記載されている。そして,甲1によると,キューイKが受けベルト15
の始端部に移載されると,光電センサ20が検知し,この検知に基づいて,キュー
イKが移載される毎に1搬送ピッチ分だけ受けベルト15を回転し,終端部にキュ
ーイKが到達するまで受けベルト15を間欠的に回転駆動するものとされている。
そうすると,甲1発明において,受けベルト15は,キューイKが受けベルト1
5に載ったときにはじめて間欠回転するのであって,キューイKが受け台8の傾動
により傾き始めた時点から,受け台8を離れてシュート上に至り,シュートを経て,
受けベルト15の始端部に至るまでの時点においては,受けベルト15は停止して
いると解される。
イ他方,相違点1-6に係る本件訂正後発明1の「平ベルトは,・・・果菜が
果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り込まれるときに間欠運転し
て,」という構成は,本件訂正後発明1に係る本件訂正後の請求項1の文言,本件明
細書の【0029】において,果菜引受け体である平ベルトコンベアは,果菜キャ
リア2からトマト3が送り込まれる時にだけ,トマト約1個分の距離だけ(トマト
3が1個通過するに必要な時間)自動運転される旨記載されていることからしても,
果菜キャリアから果菜引受け体に果菜を移載するに当たり,移載を円滑に行うため
に,果菜引受け体の平ベルトを運転するものと解される。
ウこれらのことからすると,本件訂正後発明1は,「搬送ベルトの果菜載置
部の上の果菜を果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り出す」(特
定事項1-ア-G,特定事項1-イ-G)ものであり,その移載に当たり,移載を
円滑に行うために,果菜引受け体の平ベルトを間欠運転するものである(以下,こ
の構成を「本件発明移載構成」という。)のに対し,甲1発明は,キューイKを受け
台の傾動によって振分けコンベアから受けベルト上に載置するものであって,受け
ベルトにキューイKが載ったときにはじめて受けベルトが間欠運転されるものであ
るから,これらの間には技術思想に大きな違いがある。そして,甲1発明1に甲2
技術1や甲3技術1を適用しても,上記特定事項1-ア-G(1-イ-G)の構成
を備えないことはもとより,およそ本件発明移載構成に至るものではない。また,
ベルトコンベア等によって物品を搬送する際に搬送物を同じ又は略同じ高さで水平
又は略水平に配置して高さを揃え,物品を水平又は略水平に送り出すことが一般常
識であるとしても,その一般常識を適用したのみでは,本件発明移載構成に至るも
のではなく,上記のとおり大きな技術思想の違いがあるにもかかわらず,甲1発明
に基づいて本件発明移載構成に至ることが容易であるとする事情は認められない。
なお,原告は,甲34を提出し,果菜が送り込まれるときに選別コンベアを間欠
駆動させる構成は周知技術であると主張する。しかし,甲34には,「前記受入中は
…果実ピッチごとに間隔駆動することもできる」(5頁6行~7行)との記載はある
ものの,当該「間隔駆動」が,どのような目的,タイミングでされるのかが明らか
でない。しかも,甲34の「間隔駆動」は,送り込む側のベルトコンベア上の受皿
に載置した果菜を,当該コンベアを一方向に回動させることで連続的に果菜を受皿
ごと受け取る側のベルトコンベアに供給する際のものであり(4頁17行~5頁7
行),本件訂正後発明1の「間欠駆動」のように,往復回動可能なコンベアを往回動
させて,果菜を受皿に載置することなく当該コンベアから1個だけ受け取る側のベ
ルトコンベアに送り込む際のものではない。そうすると,甲34の「間隔駆動」は,
本件訂正後発明1にいう「間欠駆動」とは異なるものであるから,前記認定が左右
されるものではない。
以上によると,甲1発明1に甲2技術1又は甲3技術1を適用して,相違点1-
2における特定事項1-ア-G及び1-イ-G(搬送ベルトの果菜載置部の上の果
菜を果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り出しすること)並びに
相違点1-6における「果菜が果菜キャリアの搬送ベルトの果菜載置部から搬送ベ
ルトの上面と同じ又は略同じ高さの果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水
平に送り込まれるときに平ベルトを果菜約1個分の距離だけ間欠運転して,果菜を
平ベルトの上面に水平又は略水平に引き継いでプールする」という構成に至ること
はできないから,甲1発明1において,相違点1-2及び相違点1-6に係る本件
訂正後発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到できたことではな
い。
エまた,同様の理由により,甲1発明3において,相違点3-2及び相違
点3-6に係る本件訂正後発明3の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想
到できたことではない。
オそうすると,その余の点を判断するまでもなく,本件訂正後発明1及び
3は,進歩性を有することになる。
また,本件訂正後発明2は本件訂正後発明1を,本件訂正後発明4は本件訂正後
発明3を,それぞれ包含するものであるから,本件訂正後発明2及び4も,進歩性
を有することになる。
(3)アこの点,原告は,甲1発明1において,果菜物は,受け台8の上から果
菜引受け体である整列コンベア5の受けベルト15の上面に略水平に移動しており
(第1図),本件訂正後発明1の「略水平」と区別できないから,甲1発明1と本件
訂正後発明1とは,受け台8から受けベルト15へ果菜を略水平に送り出している
点で一致するのであって,本件訂正後発明1において,果菜を果菜キャリア2から
果菜引受け体4の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り出すことについて,特別
な技術的意義も,顕著な効果も認められないから,甲1発明1に甲2技術1又は甲
3技術1を適用した場合,特定事項1-ア-G及び1-イ-Gを備えたものとなる
と主張する。
しかし,甲1発明1は,受け台が傾動した場合に受け台上の果菜がシュートを介
して受けベルト上の凹状の受け部15aに転がり落ちるものであって,受け台8と
整列コンベア5の受けベルト15の上面との間には,果菜が転がり落ちるだけの下
り傾斜が生じる落差がある。本件訂正後発明1における「略水平」は,前記3(1)イ
(ウ)bのとおり,果菜引受け体の平ベルトの上面と果菜キャリアの搬送ベルトの上
面が,正確に同じ高さでなくとも,果菜が各ベルトの間の段差の分移動することに
より傷みが生じる可能性が,各ベルトの間の段差が全くない場合と同程度にとどま
る段差がある場合を特定したものと理解できるのであって,上記の甲1発明1の落
差を「略水平」ということはできないし,このような落差を伴う移動を「略水平」
と表現することもできない。
したがって,原告の上記主張は,前提を欠き,採用することができない。
イまた,原告は,甲1発明1において,果菜物が受け台8の上から果菜引
受け体である整列コンベア5の受けベルト15の上面に略水平に移動していないと
しても,甲1発明1に甲2技術1又は甲3技術1を適用した場合,果菜は,往復回
動式のベルトコンベアから果菜引受け体である整列コンベア5の受けベルト15の
上面に移動することになり,ベルトコンベア等によって物品を搬送する際に搬送面
と同じ又は略同じ高さで水平又は略水平に配置して高さを揃え,物品を水平又は略
水平に送り出すことは,一般常識であるから,特定事項1-ア-G及び1-イ-G
を備えることは,当業者にとって容易に想到できる旨主張する。
しかし,前記(2)ウのとおりであって,甲1発明1に甲2技術1又は甲3技術1を
適用しても,相違点1-2における特定事項1-ア-G及び1-イ-G(搬送ベル
トの果菜載置部の上の果菜を果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送
り出しすること)並びに相違点1-6における「果菜が果菜キャリアの搬送ベルト
の果菜載置部から搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高さの果菜引受け体の平ベル
トの上面に水平又は略水平に送り込まれるときに平ベルトを果菜約1個分の距離だ
け間欠運転して,果菜を平ベルトの上面に水平又は略水平に引き継いでプールする」
という構成に至ることはないから,甲1発明1において,相違点1-2及び相違点
1-6に係る本件訂正後発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到
できたことではない。
ウさらに,原告は,甲1発明において「シュート」は課題解決に不可欠の
構成ではないと主張するが,甲1においては,「シュート」を用いた構成しか記載さ
れていないから,それを除いた発明を甲1発明と認定することはできない。
(4)以上によると,原告の主張する取消事由2には,理由がない。
第6結論
よって,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官
森義之
裁判官
森岡礼子
裁判官
古庄研
(別紙)
本件補正後の訂正事項
1本件訂正1
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「果菜搬送ラインの幅方向側方から作業員が果菜
を載せ,」とあるのを「果菜搬送ラインの幅方向側方から作業員がトマト,桃,梨,
メロンのいずれかの果菜を前記果菜キャリアに載せ,」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記果菜キャリアは無端搬送体にその走行方向
に多数取付けられ,」とあるのを「前記果菜キャリアは果菜送り出し方向先方側と
後方側に間隔をあけて平行に配置された二本のドライブチェーンにその走行方向
に多数取付けられて,果菜搬送ラインの搬送方向に一列に並んでおり,」と訂正す
る。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「無端搬送体」とあるのを「前記ドライブチェー
ン」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「フレームに往復回動可能に設けられた搬送ベル
トを備えた往復回動式のベルトコンベアであり,」とあるのを「フレームに往復回
動可能に設けられた搬送ベルトと,搬送ベルトに連結されたスライドピンを備え
た往復回動式のベルトコンベアであり,」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「前記フレームは,果菜送り出し方向先方側と後
方側に取付け部を備え,先方側の取付け部は前記先方側のドライブチェーンに,
後方側の取付け部は前記後方側のドライブチェーンに取り付けられており,」と
の事項を付加する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1に「前記フレームは,その底面に,果菜送り出し方
向に細長の開口を備え,」との事項を付加する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項1に「前記フレームの果菜送り出し方向先方側と後方
側に回転ローラが回転可能に取り付けられ,先方側の回転ローラの少なくとも一
部は前記フレームの果菜引受け体側の端部よりも果菜引受け体側に突出し,かつ
前記先方側のドライブチェーンよりも果菜引受け体側に突出しており,」との事
項を付加する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項1に「前記搬送ベルトは,フレームの果菜送り出し方
向先方側に設けられた先方側の回転ローラと,果菜送り出し方向後方側に設けら
れた後方側の回転ローラの外周に,平坦に一周巻かれて,その上側部分が平坦又
は略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回動可能であり,前記往
復回動のうち往回動は搬送ベルトの上面側が果菜搬送ラインの一側方のみに配置
された果菜引受け体方向に移動する回動であり,復回動は搬送ベルトの上面側が
当該往回動と反対方向へ移動する回動であり,」との事項を付加する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項1に「搬送ベルトの上側の一部に」とあるのを「搬送
ベルトの上側部分の一部に」と訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項1に「果菜を載せ置く果菜載置部が設けられ,」とある
のを「,トマト,桃,梨,メロンのいずれかの果菜を載せ置くことのできる果菜
載置部が設けられ,」と訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項1に「前記スライドピンはその下端側が前記開口を貫
通してフレームの底面下方に突出しており,」との事項を付加する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項1に「前記仕分け部」とあるのを「前記仕分排出部」
と訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項1に「側方に,ベルトコンベア式の果菜引受け体が,
果菜搬送方向に作業間隔をあけて二以上配置され,」とあるのを「一側方のみに,
平ベルトが回転するベルトコンベア式の果菜引受け体が,果菜搬送方向に作業間
隔をあけて二以上配置され,」と訂正する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項1に「平ベルトは,その上面が果菜を受ける窪みのな
い平面状であり,その上面が果菜キャリアの搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ
高さで水平又は略水平に配置され,果菜が果菜引受け体の平ベルトの上面に水平
又は略水平に送り込まれるときに間欠運転して,当該果菜を前記平面状の上面に
水平又は略水平に引き継いでプールすることができ,」との事項を付加する。
(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項1に「その果菜載置部を一列又は略一列に並べて,」と
あるのを「その果菜載置部を果菜搬送ラインの搬送方向に一列又は略一列に並べ
て,」と訂正する。
(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項1に「無端搬送体の走行により」とあるのを「前記ド
ライブチェーンの走行により」と訂正する。
(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項1に「前記果菜載置部に載せた果菜を搬送方向に一列
又は略一列に並べて搬送して等階級計測部を通過させて」とあるのを「前記果菜
載置部に載せた果菜を搬送方向に一列又は略一列に並べて搬送して,画像処理に
よる計測装置を備えた等階級計測部を通過させて」と訂正する。
(18)訂正事項18
特許請求の範囲の請求項1に「果菜の少なくとも果菜の大きさと形状を」とあ
るのを「果菜の少なくとも大きさと形状を」と訂正する。
(19)訂正事項19
特許請求の範囲の請求項1に「計測し,」とあるのを「画像処理により計測し,」
と訂正する。
(20)訂正事項20
特許請求の範囲の請求項1に「当該搬送ベルトの果菜載置部の上の果菜を,果菜
搬送方向側方に配置された前記果菜引受け体に送り出し,」とあるのを「当該搬送ベ
ルトの果菜載置部の上の果菜を水平又は略水平に移動させることにより,果菜搬送
方向側方に配置された前記果菜引受け体の平ベルトの上面に水平又は略水平に送り
出し,」と訂正する。
(21)訂正事項21
特許請求の範囲の請求項1に「前記搬送ベルトの往回動は,前記ドライブチェー
ンの走行により移動される果菜キャリアのスライドピンが,果菜搬送ラインの下方
に設けられた往ガイドに案内されてフレームの前記開口内を移動することにより行
われ,」との事項を付加する。
(22)訂正事項22
特許請求の範囲の請求項1に「前記果菜引受け体を,果菜が送り込まれるときに
間欠運転させて果菜を引継ぎ,」とあるのを「前記果菜引受け体の平ベルトを,果菜
が水平又は略水平に送り込まれるときに,果菜搬送ラインの搬送方向側方であって
前記果菜が送り込まれる方向に果菜約1個分の距離だけ間欠運転させてその間欠運
転による前記平ベルトの回転により,当該平ベルトの平面状の上面に水平又は略水
平に送り込まれる果菜を水平又は略水平に引継ぎ,」と訂正する。
(23)訂正事項23
特許請求の範囲の請求項1に「果菜送り込み時の間欠運転の繰り返しにより,
前記果菜キャリアの果菜載置部から送り込まれる果菜を前記果菜引受け体の上に
二以上プールし,」とあるのを「果菜送り込み時の前記間欠運転の繰り返しにより,
前記果菜キャリアの果菜載置部から送り込まれる果菜を前記果菜引受け体の平ベ
ルトの前記平面状の上面に水平又は略水平に二以上プールし,」と訂正する。
(24)訂正事項24
特許請求の範囲の請求項1に「前記搬送ベルトの復回動は,果菜送り出し後に,
前記ドライブチェーンの走行により移動される果菜キャリアのスライドピンが,
前記果菜搬送ラインの下方に設けられた戻りガイドに案内されてフレームの前記
開口内を移動することにより行われ,」との事項を付加する。
(25)訂正事項25
特許請求の範囲の請求項2に「果菜引受け体は,果菜キャリアから果菜が送り
出されるときに間欠移動して,」とあるのを「果菜引受け体の平ベルトは,果菜キ
ャリアから果菜が送り出されるときに間欠移動して,」と訂正する。
2本件訂正2
(1)訂正事項26
特許請求の範囲の請求項3に「無端搬送体」とあるのを「ドライブチェーン」
と訂正する。
(2)訂正事項27
特許請求の範囲の請求項3に「等階級計測部で計測された果菜をその計測に基
づく等階級判別結果に応じて果菜キャリアによって果菜搬送方向側方に送り出す
仕分排出部が等階級計測部の先方に設けられた果菜自動選別送り出し装置におい
て,」とあるのを「等階級計測部で計測された果菜をその計測に基づく等階級判別
結果に応じて果菜キャリアによって果菜搬送方向の一側方のみに配置された果菜
引受け体に送り出す仕分排出部が等階級計測部の先方に設けられた果菜自動選別
送り出し装置において,」と訂正する。
(3)訂正事項28
特許請求の範囲の請求項3に「前記ドライブチェーンは果菜キャリアの果菜送
り出し方向先方側のドライブチェーンと,果菜送り出し方向後方側のドライブチ
ェーンの少なくとも二本であり,それら両ドライブチェーンは果菜送り出し方向
に間隔をあけて平行に配置されており,」との事項を付加する。
(4)訂正事項29
特許請求の範囲の請求項3に「前記果菜キャリアは無端搬送体にその走行方向
に多数取付けられ,」とあるのを「前記果菜キャリアは間隔をあけて平行に配置さ
れた前記二本のドライブチェーンにその走行方向に多数取付けられ,」と訂正す
る。
(5)訂正事項30
特許請求の範囲の請求項3に「前記果菜キャリアは無端搬送体に取付けるフレ
ームと,フレームに往復回動可能に設けられた搬送ベルトを備えた往復回動式の
ベルトコンベアであり,」とあるのを「前記果菜キャリアの夫々は前記ドライブチ
ェーンに取付けるフレームと,フレームに往復回動可能に設けられた搬送ベルト
と,搬送ベルトに連結されたスライドピンを備えた往復回動式のベルトコンベア
であり,」と訂正する。
(6)訂正事項31
特許請求の範囲の請求項3に「前記フレームは,前記ドライブチェーンに取付
ける取付け部を備え,取付け部は果菜送り出し方向先方側と後方側に設けられて
おり,」との事項を付加する。
(7)訂正事項32
特許請求の範囲の請求項3に「前記フレームの果菜送り出し方向先方側と後方
側に回転ローラが回転可能に取り付けられ,先方側の回転ローラの少なくとも一
部は前記フレームの前記果菜引受け体側の端部よりも当該果菜引受け体側に突出
し,かつ前記先方側のドライブチェーンよりも当該果菜引受け体側に突出してお
り,」との事項を付加する。
(8)訂正事項33
特許請求の範囲の請求項3に「前記フレームはその底面に,果菜送り出し方向
に細長の開口を備え,」との事項を付加する。
(9)訂正事項34
特許請求の範囲の請求項3に「前記搬送ベルトは,前記先方側の回転ローラと,
前記後方側の回転ローラの外周に平坦に一周巻かれて,その上側部分が平坦又は
略平坦な状態で水平又は略水平に移動するように往復回動可能であり,」との事
項を付加する。
(10)訂正事項35
特許請求の範囲の請求項3に「前記往復回動のうち往回動は搬送ベルトの上面
が果菜搬送ラインの一側方のみに配置された果菜引受け体方向へ移動する回動で
あり,復回動は搬送ベルトの上面が当該往回動と反対方向に移動する回動であり,」
との事項を付加する。
(11)訂正事項36
特許請求の範囲の請求項3に「搬送ベルトの上側の一部に」とあるのを「搬送
ベルトの上側部分の一部に」と訂正する。
(12)訂正事項37
特許請求の範囲の請求項3に「果菜を載せ置く果菜載置部が設けられ,」とある
のを「,トマト,桃,梨,メロンのいずれかの果菜を載せ置くことのできる果菜
載置部が設けられ,」と訂正する。
(13)訂正事項38
特許請求の範囲の請求項3に「前記スライドピンはその下端側が前記開口を貫
通してフレームの底面下方に突出しており,」との事項を付加する。
(14)訂正事項39
特許請求の範囲の請求項3に「前記仕分け部」とあるのを「前記仕分排出部」
と訂正する。
(15)訂正事項40
特許請求の範囲の請求項3に「側方に,果菜引受け体が,果菜搬送方向に作業
間隔をあけて二以上配置され,」とあるのを,「側方に,上面に果菜を受ける窪み
がない平面状の平ベルトが回転する果菜引受け体が,果菜搬送方向に作業間隔を
あけて二以上配置され,」と訂正する。
(16)訂正事項41
特許請求の範囲の請求項3に「前記果菜引受け体は,その平ベルトの上面が前
記果菜キャリアの搬送ベルトの上面と同じ又は略同じ高さで水平又は略水平に配
置されており,」との事項を付加する。
(17)訂正事項42
特許請求の範囲の請求項3に「前記多数の果菜キャリアは,その果菜載置部が
一列又は略一列に並んで無端搬送体に配置されて,無端搬送体の走行により,」と
あるのを,「前記多数の果菜キャリアは,その果菜載置部が果菜搬送ラインの搬送
方向に一列又は略一列に並んで水平に搬送されるように,先方側の取付け部が前
記先方側のドライブチェーンに,後方側の取付け部が前記後方側のドライブチェ
ーンに取り付けられて配置されており,そのドライブチェーンの走行により」と
訂正する。
(18)訂正事項43
特許請求の範囲の請求項3に「前記等階級計測部は,」とあるのを「前記等階級
計測部は画像処理による計測装置を備え,」と訂正する。
(19)訂正事項44
特許請求の範囲の請求項3に「搬送される果菜の少なくとも大きさと形状を計
測でき,」とあるのを「搬送されるトマト,桃,梨,メロンのいずれかの果菜の少
なくとも大きさと形状を画像処理により計測でき,」と訂正する。
(20)訂正事項45
特許請求の範囲の請求項3に「各々の果菜キャリアの搬送ベルトは,前記仕分
排出部において果菜搬送ラインの側方に往回動して,果菜載置部に載せてある果
菜を,前記計測に基づく等階級判別結果に応じて前記果菜引受け体に送り出し可
能であり,」とあるのを「各々の果菜キャリアの搬送ベルトは,前記仕分排出部に
おいて果菜搬送ラインの側方の果菜引受け体側に往回動して,果菜載置部に載せ
てある果菜を,前記計測に基づく等階級判別結果に応じて前記果菜引受け体の平
ベルトの上面に水平又は略水平に送り出し可能であり,」と訂正する。
(21)訂正事項46
特許請求の範囲の請求項3に「前記搬送ベルトの往回動は,前記ドライブチェ
ーンの走行により移動される果菜キャリアのスライドピンが,果菜搬送ラインの
下方に設けられた往ガイドに案内されてフレームの前記開口内を移動することに
より行われ,」との事項を付加する。
(22)訂正事項47
特許請求の範囲の請求項3に「前記果菜引受け体は果菜が送り込まれるときに
間欠運転して果菜を引継ぎ,」とあるのを「前記果菜引受け体の平ベルトは果菜が
水平又は略水平に送り込まれるときに,果菜搬送ラインの搬送方向側方であって
前記送り込み方向に間欠運転して,その間欠運転による前記平ベルトの回転によ
り当該平ベルトの上面に果菜を水平又は略水平に引継ぎ,」と訂正する。
(23)訂正事項48
特許請求の範囲の請求項3に「前記果菜引受け体の上に」とあるのを「前記果
菜引受け体の平ベルトの上面に」と訂正する。
(24)訂正事項49
特許請求の範囲の請求項3に「き,前記搬送ベルトの復回動は,果菜送り出し
後に,前記ドライブチェーンの走行により移動される果菜キャリアのスライドピ
ンが,前記果菜搬送ラインの下方に設けられた戻りガイドに案内されてフレーム
の前記開口内を移動することにより行われる,」との事項を付加する。
(25)訂正事項50
特許請求の範囲の請求項4に「果菜引受け体は,」とあるのを「果菜引受け体の
平ベルトは,」と訂正する。
(26)訂正事項51
特許請求の範囲の請求項4に「果菜キャリアのベルト」とあるのを「果菜キャ
リアの搬送ベルト」と訂正する。

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