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平成16年9月17日宣告
平成15年(わ)第769号,第859号,第934号,第1207号,平成16年(わ)第102号,
第339号
住居侵入,強姦,強盗致傷,強盗強姦,窃盗
判        決
主        文
1 被告人を懲役18年に処する。
2 未決勾留日数中280日をその刑に算入する。
理        由
(犯罪事実)
被告人は,
第1 平成15年4月初旬ころの午前4時ころ,北九州市a区bc番地所在の社会福祉法
人A内コテージにおいて,同社会福祉法人理事B管理にかかるテレビ1台(時価約
1万円相当)を窃取し,
第2 金員を強取しようと企て,平成15年5月15日午前4時30分ころ,北九州市d区ef
丁目g番h号付近路上において,C(当時33歳)に対し,その顔面及び両腕部等を
手拳で多数回殴打するなどの暴行を加え,その反抗を抑圧して,CからC所有にか
かる現金約1万5000円在中の財布1個(時価約3000円相当)を強取し,その際,
上記暴行により,Cに加療20日間を要する顔面打撲等の傷害を負わせ,
第3 平成15年7月13日午前3時ころ,北九州市i区jk番l号所在のD407号室のE方
において,E所有にかかる現金約4万5000円を窃取し,
第4 平成15年7月20日午前2時ころ,北九州市m区no番所在の月極有料駐車場に
おいて,同所で仮眠中のFが,その横に置いていた手提げバッグ内の財布からF所
有にかかる現金10万8000円を窃取し,
第5 女性の居宅に侵入した上,金員を強取し,かつ,居住女性を強いて姦淫しようと企
て,平成15年7月28日午後1時ころ,北九州市p区qr丁目s番t号所在のG301号
のH方に,無施錠の窓から侵入し,そのころから同日午後2時10分ころまでの間,
同所において,H(当時57歳)に対し,頸部を絞め付けた上,「騒ぐな。殺すぞ。」,
「金はどこに置いとるんか。」旨申し向け,さらに,左胸部を押さえ付けるなどの暴
行・脅迫を加え,その反抗を抑圧して,HからH所有にかかる現金約2万5000円及
びキャッシュカード1枚を強取した上,上記暴行・脅迫によって抗拒不能の状態にあ
るHを強いて姦淫し,その際,上記暴行により,Hに加療約5日間を要する頸部挫
傷等の傷害を負わせ,
第6 女性の居室に侵入した上,居住女性を強いて姦淫しようと企て,平成15年8月14
日午前3時30分ころ,北九州市u区vw丁目x番y号所在のI101号室の当時のJ方
に,無施錠の窓から侵入し,そのころから同日午前5時ころまでの間,同所におい
て,J(当時20歳)に対し,その顔面を手拳で数回殴打し,「目を開けたら殺す。」旨
申し向けるなどの暴行・脅迫を加え,その反抗を抑圧して強いて同女を姦淫し,
第7 平成15年8月16日午後5時35分ころ,北九州市z区a町b丁目c番d号所在のK
荘6号室のL方に開放中の玄関から侵入し,同所において,L所有にかかる現金7
000円及び財布在中のショルダーバッグ1個(時価合計約2000円相当)を窃取
し,
第8 金員を強取しようと企て,平成15年8月17日午後7時30分ころ,北九州市e区fg
番h号所在のM1階エントランスホール及びエレべーター内において,N(当時30
歳)に対し,背後からNにのし掛かり,押し倒して両腕でNを締めつけるなどしたほ
か,Nの腕を引いてエレベーター内に引きずり込むなどし,その前後にわたってその
顔面及び頭部等を手拳で多数回殴打し,腕部を多数回足蹴にするなどの暴行を加
え,その反抗を抑圧して,NからN所有にかかる現金約3万円及びクレジットカード
等4点在中の財布1個(時価合計約1100円相当)を強取し,その際,上記暴行に
より,Nに全治27日間を要する左側頭部・顔面・頸部打撲等の傷害を負わせ
たものである。
(証拠)(略)
(累犯前科)
1 事実
(1) 平成5年2月24日山口地方裁判所宣告
住居侵入,強姦致傷,窃盗,強姦の各罪により懲役9年
平成13年11月15日刑の執行終了
(2) 平成14年5月9日大牟田簡易裁判所宣告
(1)の刑執行終了後に犯した住居侵入罪により懲役10月
平成15年3月8日刑の執行終了
2 証拠
(略)
(法令の適用)
1 罰条
第1,第3,第4の各所為
いずれも刑法235条
第2,第8の各所為
いずれも刑法240条前段
第5の所為
住居侵入の点 刑法130条前段
強盗強姦の点 刑法241条前段
第6の所為
住居侵入の点 刑法130条前段
強姦の点   刑法177条前段
第7の所為
住居侵入の点 刑法130条前段
窃盗の点   刑法235条
2 科刑上一罪の処理(第5ないし第7)
いずれも刑法54条1項後段,10条(第5については重い強盗強姦罪の刑で,第6
については重い強姦罪の刑で,第7については重い窃盗罪の刑でそれぞれ処断)
3 刑種の選択(第2,第5,第8)
いずれも有期懲役刑を選択
4 3犯の加重(判示各罪の刑についてそれぞれ加重)
刑法59条,56条1項,57条(第2,第5,第6,第8については刑法14条の制限
内)
5 併合罪の処理
刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も重い第5の罪の刑に同法1
4条の制限内で法定の加重)
6 未決勾留日数の算入
刑法21条
7 訴訟費用の不負担
刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
1 本件は,判示のとおりの,窃盗3件(第1,第3,第4),強盗致傷2件(第2,第8),住居
侵入・強盗強姦(第5),住居侵入・強姦(第6),住居侵入・窃盗(第7)各1件の事案であ
るが,被告人は,平成15年3月9日に刑務所を出所した後,仕事で訪れた老人ホー
ムで目にした大画面テレビを欲しいと思い,上記出所後わずか1か月ほどにして,同
所を早朝に訪れそのテレビを盗もうとしたが人がいたため諦め,代わりに売却目的で
別のテレビを盗んだ(第1)ほか,第2ないし第8の各犯行については,いずれも,収入
(月計十数万円)相応の生活をしようとせず,毎日のように酒を購入したり居酒屋等に
飲みに行くなどし,所持金が不足し,あるいは足りないと感じると,侵入盗やひったく
り,強盗により金品を奪取し,また,状況等によって自己の性欲を満たすなどのため
に被害女性を強姦する意思も大抵の場合に持ち合わせながら,そのときどきの状況
等に応じて刹那的に,また,時には事前に目を付けていた女性を対象にもして計画的
にも行われた(第5)ものであり,とりわけ,第3ないし第8の各犯行は約1か月の短期
間に敢行されたものであって,各犯行に至る経緯や動機に全く酌量の余地がないとと
もに,本件事案全体の概要のみをとっても,犯情は悪質極まりないものである。
 各犯行を個別にみても,第2の犯行では,ひったくりをしようとした被害女性のCから
顔を見られたために強盗を決意し,Cに対しいきなり手拳で何度も殴りかかり,倒れた
Cに対しなおも暴行を加え,転倒の前後にわたって三,四十回も執ように殴る蹴るして
判示財物を強取したもので,Cは目の周り等顔面各所に腫脹ないし皮下出血が生じ
るなどして4日間の入院を伴う判示重傷を負い,また,第8の犯行でも,被害女性のN
から肩にかけたバッグをひったくるのは難しいと考えて強盗を決意し,やはり何十回
にもわたり極めて執ようにNを殴る蹴るして判示財物を強取し,Nは目の周り等顔面
や頸部に腫脹ないし皮下出血が生じただけでなく両腕の広範囲にわたり皮下出血が
生じて3日間の入院を伴う全治27日間を要する判示重傷を負ったもので,各犯行態
様はいずれも何ら落ち度もない各被害女性を全く人間扱いしない粗暴,悪質なもので
ある。いずれの傷害結果も重大であり,共に30歳代前半の若い女性で,接客業をし
ていて特に顔の外傷は仕事にも影響があったことや精神的被害も看過できないところ
であって,両名が被告人の厳罰を望むのも至極当然である。
 また,第5の犯行では,被告人は前から目を付けていた女性宅に侵入して強盗と強
姦をしようと考え,H宅にその狙っていた女性がいると思い込んでベランダの窓が開
いている白昼に同窓から侵入した上,Hに対し,人違いに気付きながらも,とりあえず
は強盗をしようと考えて首を強く締め付け,騒ぐと殺すなどと申し向けて脅迫し,息苦
しい状況下のHに,騒ぐと本当に殺されるかもしれないとの恐怖心を植え付けさせて
その反抗を抑圧し,判示金品を強取したにとどまらず,当初狙っていた女性と違うの
に,劣情を催すなどして強姦行為にまで及んだものであり,誠に卑劣で悪質な犯行で
あって,自宅がマンションの3階で安全だと考えていたHが受けた衝撃や抱いた恐怖
心,屈辱感がいずれも大きいことは容易に想像し得,本件犯行によりHが判示傷害も
負ったことや事後に精神的被害を引きずっていることも看過できない。第6の犯行で
は,深夜たまたま通りかかかったマンションのベランダに看護師の制服様のものや下
着が干してあるのを見つけ,以前のように無施錠の窓から侵入して,強盗か若い女
性であれば強姦をしようという気持ちになり,無施錠の窓を見つけてその窓から侵入
した上,被害女性のJを認めるといきなり殴りかかってわいせつ行為に及び,目を開
けると殺す旨申し向けて脅迫したほか,同行為中に首を締め付けたり自分は2人殺し
ているなどと申し向けて,更にJを脅し,Jの恐怖心を更にあおるなどして反抗を完全
に抑圧し,Jが被告人に殺されないように従順にしているのをいいことに,1時間以上
にわたりわいせつ行為や強姦に及んだ挙げ句に,膣内に射精したものであり,また,
その後も太々しくもJの携帯電話番号を聞いて直ちに架電したりドライブに誘うなども
したものであって,これまた誠に大胆不敵な下劣で悪質な犯行である。各被害女性
は,以上のとおりいずれもその人格を軽んじられた屈辱的な行為を受けたものであ
り,共に被告人の厳罰を望むのも全く当然である。
 さらに,窃盗(第1,第3,第4)ないし侵入窃盗(第7)の各犯行についてみても,第3の
犯行は以前から姿態を覗き見していた被害女性宅の無施錠の窓から物干し竿を使っ
てバッグを手繰り寄せ在中の財布内から判示現金を窃取した大胆,悪質なものであ
り,第4の犯行は被害女性が泥酔しているのに乗じた卑怯なもので被害金額も10万
8000円と多額である。そして,第7の犯行は被害老女が読経に熱中している隙に乗
じて夕刻に堂々と同女宅に侵入した上敢行したもので,また,第1の犯行も,侵入行
為については起訴はないものの,早朝判示コテージに立ち入って犯した,共に悪質な
ものである。そして,いずれの犯行についてもやはり処罰感情は厳しい。
 このように,本件各犯行はいずれも悪質で,とりわけ各強盗致傷,強盗強姦,強姦
の各犯行の犯情は甚だ芳しくないが,各被害に対しては全く慰謝の措置等が講じられ
ていない。
2 被告人は,少年時から度々窃盗を繰り返し,昭和55年に窃盗等の各罪で懲役1年,
3年間執行猶予(後に猶予取消し)の判決を受けた上に,昭和58年に住居侵入,強盗
強姦,窃盗等の各罪で懲役6年,平成5年には住居侵入,強姦致傷,窃盗,強姦の各
罪で懲役9年の各判決を受け,いずれも服役をしながら,その後も住居侵入罪で懲役
10月の判決を受けて服役をし,なおも前記のとおり出所後わずか1か月ほどで第1
の犯行に及んで以降,またもや強盗致傷,強盗強姦等の重大犯罪を含めて次々と第
2ないし第8の各犯行を重ねたものであり,さらに,本件各犯行以外にも窃盗等の余
罪が数十件あることにもかんがみると,被告人のこの種犯罪の常習性,規範意識と
更生意欲の欠如並びに犯罪性向はいずれも顕著であるとともに,再犯のおそれも相
当に大きく,以上によれば,被告人の刑責は極めて重い。
3 他方,被告人は,本件各犯行をいずれも素直に認めているほか,逮捕後相当数の
余罪を自供するなど,被告人なりに反省の情を示していること,第7の犯行につき,被
告人は判示バッグと財布については玄関に戻って返していること,前刑出所後正業に
就き逮捕されるまで継続的に働いており,金銭の取得を犯罪のみによっていたわけで
はなかったことなど被告人に有利に斟酌することのできる情状も認められる。
4 そこで,以上の事情を総合考慮した上,主文のとおり量刑した。
(求刑 懲役20年)
 平成16年9月17日
福岡地方裁判所小倉支部第1刑事部
裁判長裁判官   野  島   秀  夫
裁判官   西  森   英  司
裁判官   大  庭   和  久

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