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平成15年(ワ)第16294号 不正競争行為差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成16年6月1日
判決
原       告      株式会社アネビー
同訴訟代理人弁護士      北村行夫
同              中島龍生
同              大井法子
同              吉田朋
同              雪丸真吾
同              芹澤繁
同              亀井弘泰
同補佐人弁理士        樋口盛之助
被     告        株式会社ジャクエツ
同訴訟代理人弁護士      上野進
同              片山一光
同              三村藤明
同              榎本久也
同              粟田口太郎
同補佐人弁理士        西出眞吾
主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告は,別紙被告製品目録1ないし5記載の屋内遊具及び別紙被告部品目録
1ないし13記載の部品を付した屋内遊具を製造し,販売してはならない。
2 被告は,その本店,支店,営業所,工場及び倉庫に保有する別紙被告製品目
録1ないし5記載の屋内遊具(半製品及び部品単体を含む。)及び別紙被告部品目
録1ないし13記載の部品を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,金1397万5500円及びこれに対する平成15年
7月29日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 原告は被告に対し,主位的に,①原告の販売する幼児用屋内遊具及びその製
品の構成部品の形態が,原告の商品表示として需要者の間に広く認識されているも
のであり,被告の製品及び製品の構成部品の形態がそれらに類似し,原告の製品と
の混同のおそれがある旨主張して,不正競争防止法2条1項1号,3条に基づい
て,被告の製品等の製造及び販売の差止及び廃棄並びに損害賠償を求め,予備的
に,②原告の製品等と類似する形態の製品等を販売する被告の行為は不法行為を構
成する旨主張して,民法709条に基づいて損害賠償を求めた。
1 前提となる事実等(争いがない事実以外は証拠を末尾に記載する。)
(1) 当事者
 原告は,遊技器具,家具の販売を主たる業務としている株式会社であり,
後記のとおり,輸入した屋内遊具等を販売している。
 被告は,教育用品の製造,販売を主たる業務としている株式会社である。
(2) 原告製品等
 別紙原告製品目録1ないし5記載の屋内遊具(以下,順に「原告製品
1」,「原告製品2」という。これらを併せて「原告各製品」という。)は,「G
EMINO」というシリーズ名(以下「ゲミノシリーズ」という。)で販売される
幼児用屋内遊具に含まれるものである。
 別紙原告部品目録1ないし13記載の部品(以下,順に「原告部品1」,
「原告部品2」という。これらを併せて「原告各部品」という。)は,ゲミノシリ
ーズの屋内遊具を構成する部品である(以下,原告各製品及び原告各部品を併せて
「原告各製品等」という。)。
 ゲミノシリーズの屋内遊具は,支柱,枠組,パネルという3種類の規格化
された部品から構成されており,需要者の希望に応じて,多様な組合せができるよ
うになっている(甲1,2,20)。
 ゲミノシリーズの屋内遊具及びその構成部品は,ドイツ連邦共和国(以下
「ドイツ」という。)のハーベルマース社が製造,販売,輸出するものである。原
告は,平成9年ころから,ゲミノシリーズの屋内遊具等の輸入を開始し,日本国内
で,原告製品3ないし5及び原告各製品等の販売を開始した。そして,原告は,平
成10年に,ハーベルマース社から,原告の名で,原告独自の製品名を付けるなど
して,日本国内で販売する地位を与えられ,以降,ゲミノシリーズの屋内遊具等を
輸入し,日本国内で販売している。平成12年ころからは,原告製品1及び2につ
いても販売を開始した(甲4の3,弁論の全趣旨)。
(3) 被告製品等
 被告は,別紙被告製品目録1ないし5記載の屋内遊具(以下,順に「被告
製品1」,「被告製品2」という。これらを併せて「本件被告製品」という。)を
含む,「ミニプレイ・イン」とのシリーズ名で,幼児用屋内遊具を販売している。
 別紙被告部品目録1ないし13記載の部品(以下,順に「被告部品1」,
「被告部品2」という。これらを併せて「被告各部品」という場合がある。)は,
ミニプレイ・インシリーズの屋内遊具を構成する部品である(以下,本件被告製品
及び被告各部品を併せて「被告各製品等」という。)。
2 争点
(1) 原告各製品等の形態は,周知な商品等表示といえるか。
(2) 被告各製品等の形態は,原告各製品等に類似するか。
(3) 原告各製品等との混同を生じるおそれがあるか。
(4) 不法行為の成否
(5) 原告の損害
3 争点についての当事者の主張
(1) 争点(1)(原告各製品等の周知商品表示性)について
(原告の主張)
ア 原告各製品等の形態の特徴と商品等表示性
 原告各部品は,以下のような特徴的形態を備え,従来の屋内遊具の部品
としては類を見なかったもので,原告各部品の特徴的な形態により,原告の製品で
あることを識別することができる。
 原告各製品は,以下のような形態的特徴を備えた原告各部品の組合せに
よって構成されるものであり,これらの組合せにより生ずる特徴的な形態により,
原告の製品であることを識別することができる。
 (ア) 原告各部品の特徴的な形態
原告各部品は,それぞれ,aないしm記載のとおりの特徴的な形態を
有している。
 原告各部品は,木材の自然色を基調としているが,このうち,原告部
品1,2,5ないし8,10及び11の枠材(縁取り)部分,原告部品3の格子部
分,原告部品4並びに原告部品9のドア部分については,自然色を含めて8色のカ
ラーバリエーションでの着色が可能であり,原告部品1,2,5,6及び8につい
ては,パネル平面に,一定間隔で,細い溝が目地のように設けられ,細い板材を貼
り合わせたような形状である。
a 原告部品1(窓(長方形)付き屋根形パネル)
 原告部品1は,ホームベース形の5角形のパネルであり,屋根形の
上部の2辺は,棒材によって縁取りされている。同パネルには窓が2つ付いてお
り,それらの窓は,いずれも大きさ及び形状が同じであり,下から約5分の2の高
さのところを底辺とする縦長の長方形で,棒材による窓枠及び窓の中途部分の仕切
が設けられている。
b 原告部品2(窓(逆U字形)付き屋根形パネル)
 原告部品2は,ホームベース形の5角形のパネルであり,屋根形の
上部2辺は,棒材によって縁取りされている。同パネルには,下から約2分の1の
高さのところを底辺とする逆U字形の窓が1つ設けられ,その窓の周囲は棒材によ
る枠が施されている。
c 原告部品3(円筒状の棒材からなる格子付きパネル)
 原告部品3は,円筒状の棒材複数本からなるパネルであり,いずれ
も等間隔で規則正しく設けられた格子を内部に備えている。
d 原告部品4(支柱上部のかまぼこ形部品)
 原告部品4は,支柱上部に装着された部品であり,上部が丸みを帯
びたかまぼこ形をしている。
e 原告部品5(窓付きパネル)
 原告部品5は,やや縦長の長方形のパネルであり,下から約2分の
1の高さのところを底辺とする縦長の長方形の窓が設けられている。その窓には,
観音開きの扉が備えられ,扉には,棒材により,窓枠及び窓の中途部分の仕切が設
けられている。
f 原告部品6(カウンターパネル)
 原告部品6は,下から約5分の2の高さのところにカウンターが備
えられているパネルである。
g 原告部品7(カウンターパネル)
 原告部品7は,下から約5分の2の高さのところにカウンターが備
えられているパネルであり,カウンターは,凹形の曲線状で,棒材による縁取りが
設けられている。
h 原告部品8(ドア付きパネル)
 原告部品8は,縦長の長方形のドアが設けられたパネルであり,ド
アには,4本の棒材により,縦長の長方形の枠が,上下に2つ設けられており,上
方の枠は下方の枠よりも縦長である。また,上記長方形の枠の中間には,ドアノブ
が設けられている。
i 原告部品9(ドア付きパネル)
 原告部品9は,縦長の逆U字形のドアが設けられたパネルであり,
ドアの上部中央に円形の窓が設けられ,窓の下に,両端が半円状になった縦に細長
い板が装着されている。
j 原告部品10(レンズ形プラスチック製窓付きパネル)
 原告部品10は,着色された円形の枠で囲まれた,半球体状の透明
プラスチック製窓が備えられたパネルである。
k 原告部品11(透明プラスチック製窓付きパネル)
 原告部品11は,着色された円形の枠で囲まれた,円形の透明プラ
スチック製窓が備えられたパネルである。
l 原告部品12(連続模様付きパネル)
 原告部品12は,鮮やかな色で彩色が施された同一の菱形の模様が
縦方向に複数連続して付されているパネルである。
m 原告部品13(アーチ形バルコニー)
 原告部品13は,半円筒状又は4分の1円筒状の着色された鋼材か
らなるアーチ形バルコニーであり,上下左右の辺が棒材によって固定されている。
(イ) 原告各製品の特徴的な形態
原告各製品は,それぞれ,aないしe記載のとおりの特徴的な形態を
有している。
a 原告製品1
 原告製品1は,2階建ての家形の屋内遊具であり,原告部品1ない
し5及び8並びに全体の高さの約2分の1の高さのカウンターが備えられたパネル
から構成されている。
b 原告製品2
 原告製品2は,2階建ての家形の屋内遊具であり,原告部品1,3
ないし6及び8から構成されている。
c 原告製品3
 原告製品3は,2階建ての家形の屋内遊具であり,原告部品1,3
ないし5及び8から構成されている。
d 原告製品4
 原告製品4は,2階建ての家形の屋内遊具であり,原告部品1,3
ないし6及び8から構成されている。
e 原告製品5
 原告製品5は,2階建ての家形の屋内遊具であり,原告部品1,3
ないし6及び8から構成されている。
イ 周知性
(ア) 販売実績
 原告各製品等の販売実績は,以下のとおりである。
① 年間販売数  20~30台
② 累積販売総数   110台
(イ) 宣伝・広告状況
 原告やその販売代理店は,原告各製品等に関し,雑誌,専門誌などに
広告を掲載するとともに,全国約4万か所の保育園すべてに,毎年,パンフレット
を持参するなどして営業活動を行った。
 また,原告各製品等の形態は,原告各製品等の主な需要者である保育
園,幼稚園などに向けて教材,遊具等を販売する業者の取扱品カタログに掲載され
て,それらの業者の営業活動を通じて広告,宣伝され,遅くとも平成14年ころま
でには需要者の間で広く認識されるようになっていた。すなわち,原告各製品等
は,平成12年から,前記業者のうち,特に,全国を網羅する大手業者である株式
会社チャイルド本社(以下「チャイルド社」という。)のカタログ(隔年で3万5
000部余発行されて全国の保育園,幼稚園に配布される。)に掲載されるように
なり,平成14年からは,「大型室内遊具」という独立の項目で4ページにわたっ
て掲載され,同種商品の中で主要商品として広告,宣伝された。このほかにも,各
商品コンセプトに応じたチャイルド社の種々のカタログにも掲載され,全国の需要
者に配布された。チャイルド社は,全国に直営店及び販売代理店を有するが,これ
らにより全国の保育園,幼稚園に対し,原告のカタログ,パンフレットも持参した
上での原告各製品等の営業活動がされている。
 さらに,原告は,1年間に全国の主要都市において30から40回
(1回当たり2日間)行われる製品展示会に参加しており,各回,30から60の
保育園,幼稚園などが来場している。
ウ 小括
 以上からすれば,原告各製品等の形態は,平成14年ころまでには,原
告の商品等表示として需要者の間で周知となっていたといえる。
(被告の反論)
ア 原告各製品等の形態の特徴
 原告各製品等には,他の商品と識別し得る特別顕著性ないし特異性はな
い。
(ア) 原告各製品等と同様に家屋や店舗を模した幼児用の2階建て組合せ
式木製屋内遊具は,原告以外の業者も販売している。現に被告は,平成3年に,グ
ループ会社である株式会社ジャクエツ環境事業あるいは被告の製造した,家屋や店
舗を模した幼児用の2階建て組合せ式木製屋内遊具である「わんぱくユニット」及
び同様の商品を販売した実績がある。これらの製品は,木目調又は彩色された木製
パネルを組み合わせ,自由に出入りして遊べる2階建ての幼児遊具であり,出入
口,階段,格子,カウンター窓,店舗用ショーケースや軒先テント等を備えたもの
である。このほか,家屋や店舗の形態をかたどった同種の幼児用2階建て屋内遊具
は,海外の4社が製造又は販売しており,うち1社の製品は,国内における販売も
行われている。
 また,原告各製品等の配色は極めて単純であり,色彩,配色などの点
で特徴はない。原告各製品等は,いずれも木目を基調とし,窓枠,屋根枠等につい
て赤色で着色するなど,単色による統一的な塗装を施している。これは,幼児用の
遊具としての教育的・情操的配慮から,色彩上,奇抜な配色は困難であること,自
然な木目を活かしつつ,赤,青,黄色等の原色を用いるのが適切であることなどに
依拠していると解される。このように,色彩の多様性,配色の独自性などの特色は
みられない。
(イ) 原告各部品の形態
 原告各部品について,以下のとおり,特徴的な形態は存在しない。
 すなわち,屋根の形状として3角形(原告部品1,2),窓枠の形状
として4角形(原告製品1,5,6)や逆U字形(原告製品2),ドアの形状とし
て縦長の長方形(原告部品8)を用いること,屋上等に格子を設けること(原告部
品3)などは,現実の家屋や店舗においてよくみられ,これを模した他の幼児用屋
内遊具にもよくみられるところであるから,何ら独特の形態ということはできな
い。
 また,格子(原告部品3)の形態は,死角をなくすために幼児用の遊
具で多用されるものであるし,格子を構成する棒を,けがを防ぐために角棒ではな
く丸棒とすること,各丸棒の幅を,幼児の落下防止のために幼児の足が通らない幅
で整列させること,丸棒の組み方を,幼児がよじ登れないよう横列ではなく縦列と
することは,いずれも機能的な理由から選択される形態である。
 支柱のキャップ(原告部品4)の形態も,けがを防ぐために採用され
る形態である。
 さらに,原告部品1,2,5,6,7,9,10,11などの窓等の
形態も,外を覗きたがるという幼児の習性を考慮すると,幼児用の遊具の本質的な
目的を満たすための形状であり,特異な形状とはいえない。
(ウ) 原告各製品の形態
 原告各製品形状について,以下のとおり,特徴的な形態は存在しな
い。
 原告製品1は,別荘及び店舗を,原告製品2は,都会風の家を模した
ものであり,その形状は,いずれも,一般の家屋や店舗のデザインにすぎず,特別
顕著なものではない。原告製品1の店舗用ショーケースや軒先テント,原告製品2
の時計パネルは,被告の先行商品や他社製品にも存在する。5角形のパネルも,他
の屋内遊具に実例がある。
 原告製品3は,縁台や折れ階段の踊り場が目をひくが,かかる縁台の
ような一定の広さをもつ遊び台は,幼児遊具としてはありふれた形態であるし,折
れ階段や踊り場は,他の屋内遊具に同種の実例が存する。
 原告製品4は,正面パネルをV字形に組んだ点に工夫がみられるが,
幼児遊具として格別奇抜な形態とまでは考えられないし,他の屋内遊具に実例が存
する。
 原告製品5は,ありふれた家屋の模造である。
イ 原告各製品等の形態の使用態様等
 以下のとおり,原告各製品等の商品形態は,長期間継続的かつ独占的に
使用されたものではないし,強力な宣伝,広告がされたともいえない。
(ア) 原告各製品等の商品形態は独占的に使用されたものではない。
 原告各製品は,幼児用の2階建て組合せ式木製屋内遊具であり,原告
各部品は,これを構成するための部品であるところ,被告は,既に,平成3年よ
り,幼児用の2階建て組合せ式木製屋内遊具を販売している。これらの製品は,木
目調又は着色された木製パネルを組み合わせた屋内遊具である点,幼児が自由に出
入りして遊べる点,出入口,階段,格子,カウンター窓,店舗用ショーケースや軒
先テント等を備えている点において,原告各製品等と共通している。
 その他にも,原告各製品等の本格的な販売開始時期である平成12年
に先立って,幼児用2階建て組合せ式木製屋内遊具は複数存在している。
 したがって,原告各製品等の商品形態が,原告によって独占的に使用
されたことはない。
(イ) 原告各製品等の商品形態の使用は,非常に短期間である。原告が,
原告各製品等の販売を本格的に開始したのは,平成12年からであり,以降,現在
まで,3年余程度しか経過していない。
(ウ) 原告各製品等について原告が行った広告や宣伝についても,原告各
製品等を見た需要者が,その形態から出所を直ちに識別できる程度に強力にされた
とはいえない。
ウ 周知性
 原告各製品の年間販売台数は,わずか20ないし30台,累積販売総数
が約110台にすぎない。全国の認可保育所数及び認可幼稚園数の合計(3万65
43件)の約0.003パーセントにすぎないのであり,原告各製品が高額であっ
て販売台数が限られることを最大限考慮しても,原告各製品の形態が周知になるこ
とは考え難い。また,原告各製品等についての原告の広告や宣伝は,その質・量に
おいて,小規模である。さらに,原告各製品等は,前述のとおり,形態上の特異性
が存在せず,一見して出所を需要者に識別させるに足りるだけの訴求力を有しな
い。
 以上から,原告各製品等の形態が原告の出所を示すものとして,需要者
の間に広く認識されているとはいえない。
(2) 争点(2)(類似性)について
(原告の主張)
ア 被告各部品と原告各部品との類似性
 被告各部品と原告各部品とは,以下のとおり類似する。
 被告各部品は,屋根及び窓の縁取り部分,ドアの飾り縁部分,支柱飾り
部分について,彩色を施している点において,原告各部品と同一である。
 また,被告各部品は,パネル平面に一定間隔で細い溝が目地のように設
けられている点において,原告各部品の形態と同一である。被告各部品では,溝が
横方向であるのに対して,原告各部品では,溝が縦方向である点で異なるが,遊具
全体を眺めた際に,目地様の溝が設けられていることに特徴があり,溝の方向は些
細な違いにすぎない。
(ア) 被告部品1の形態及び原告部品1との類似性
 被告部品1は,ホームベース形の5角形のパネルであり,屋根形の上
部2辺は,棒材によって縁取りされている。同パネルには窓が2つ付いており,そ
れらの窓は,いずれも大きさ及び形状が同じであり,下から約5分の2の高さのと
ころを底辺とする縦長の長方形で,棒材による窓枠及び窓の中途部分の仕切が設け
られている。これらの形態は,原告部品1の形態と同じであり,両者の形態は同一
又は類似である。
(イ) 被告部品2の形態及び原告部品2との類似性
 被告部品2は,ホームベース形の5角形のパネルであり,屋根形の上
部の2辺は,棒材によって縁取りされている。同パネルには,下から約2分の1の
高さのところを底辺とする逆U字形の窓が1つ設けられ,その窓の周囲は棒材によ
る枠が施されている。これらの形態は,原告部品2の形態と同じであり,両者の形
態は同一又は類似である。
(ウ) 被告部品3の形態及び原告部品3との類似性
 被告部品3は,円筒状の棒材複数本からなるパネルであり,いずれも
等間隔で規則正しく設けられた格子を内部に備えている。この形態は,原告部品3
と同じである。両者の形態は同一又は類似である。
(エ) 被告部品4の形態及び原告部品4との類似性
 被告部品4は,支柱上部に装着された部品であり,上部に丸みのない
直方体をしている。原告部品4は,上部が丸みを帯びているが,同様の形状であ
り,支柱に置かれている状態において,被告部品4の形態は原告部品4の形態と類
似している。
(オ) 被告部品5の形態及び原告部品5との類似性
 被告部品5は,やや縦長の長方形で,下から約2分の1の高さのとこ
ろを底辺とする縦長の長方形の窓が設けられたパネルである。その窓には,観音開
きの扉が備えられ,扉には棒材による窓枠及び窓の中途部分の仕切が設けられてい
る。これらの形態は,原告部品5と同じであり,両者の形態は同一又は類似であ
る。
(カ) 被告部品6の形態及び原告部品6との類似性
 被告部品6は,下から約5分の2の高さのところにカウンターが備え
られているパネルであり,原告部品6と同じである。両者の形態は同一又は類似で
ある。
(キ) 被告部品7の形態及び原告部品7との類似性
 被告部品7は,下から約5分の2の高さのところにカウンターが備え
られているパネルであり,カウンターは,凹形の曲線状で,棒材による縁取りが設
けられている。これらの形態は,原告部品7と同じであり,両者の形態は同一又は
類似である。
(ク) 被告部品8の形態及び原告部品8との類似性
 被告部品8は,縦長の長方形のドアが設けられたパネルであり,ドア
には,4本の棒材により,縦長の長方形の枠が,上下に2つ設けられており,上方
の枠は,下方の枠よりも縦長である。また,上記長方形の枠の間には,ドアノブが
設けられている。これらの形態は,原告部品8と同じであり,両者の形態は同一又
は類似である。
(ケ) 被告部品9の形態及び原告部品9との類似性
 被告部品9は,縦長の逆U字形のドアが設けられたパネルであり,ド
アの上部中央に円形の窓が設けられ,窓の下に,上端が半円状になった縦に細長い
板が装着されている。原告部品9とは,ドアの窓の下に施された細長い板の形状が
異なるのみで,その他は同じである。両者の形態は同一又は類似である。
(コ) 被告部品10の形態及び原告部品10との類似性
 被告部品10は,着色された円形の枠で囲まれた半球体状の透明プラ
スチック製窓が備えられたパネルであり,原告部品10と同じである。両者の形態
は同一又は類似である。
(サ) 被告部品11の形態及び原告部品11との類似性
 被告部品11は,着色された円形の枠で囲まれた,円形の透明プラス
チック製窓が備えられたパネルであり,原告部品11と同じである。両者の形態は
同一又は類似である。
(シ) 被告部品12の形態及び原告部品12との類似性
 被告部品12は,鮮やかな色で彩色が施された同一の形状の模様が縦
方向に複数連続して付されているパネルである。原告部品12とは,模様の形状が
異なるが,鮮やかな色で彩色が施された同一の形状の模様が縦方向に複数連続して
付されているという点において,共通している。両者は類似している。
(ス) 被告部品13の形態及び原告部品13との類似性
 被告部品13は,半円筒状又は4分の1円筒状の着色された鋼材から
なるアーチ形バルコニーであり,上下左右の辺が棒材によって固定されている。原
告部品13と同じであり,両者の形態は同一又は類似である。
イ 被告各製品と原告各製品との類似性
 被告各製品と原告各製品とは,以下のとおり,類似する。
(ア) 被告製品1の形態及び原告製品1ないし5との類似性
 被告製品1は,2階建ての家形の屋内遊具であり,被告部品1ないし
6及び8から構成されている。
 被告部品1ないし6及び8は,原告部品1ないし6及び8と順次類似
するものであること,原告部品については,枠材(縁取り)部分,格子等について
着色することも可能であることから,前記の部品で構成される被告製品1は,原告
部品1ないし6及び8のいずれかの組合せで構成される原告製品1ないし5と類似
する。
(イ) 被告製品2の形態及び原告製品1ないし5との類似性
 被告製品2は,2階建ての家形の屋内遊具であり,被告部品1及び3
ないし6から構成される。
 被告部品1及び3ないし6は,原告部品1及び3ないし6と順次類似
するものであること,原告部品については,枠材(縁取り)部分,格子等について
着色することも可能であることから,前記の部品で構成される被告製品2は,原告
部品1及び3ないし6のいずれか並びにその他の部品の組合せで構成される原告製
品1ないし5と類似する。
(ウ) 被告製品3ないし5の形態及び原告製品1ないし5との類似性
 被告製品3ないし5は,被告部品の組合せで構成され,原告製品1な
いし5と類似する。
 被告製品3は,被告部品3,4,7,9及び11で構成されている。
 被告製品4は,被告部品3,4,10ないし13で構成されている。
 被告製品5は,被告部品3,4,6,7,9及び11で構成されてい
る。
(被告の反論)
ア 被告各部品と原告各部品の非類似性
(ア) 被告部品1と原告部品1の非類似性
 被告部品1は,①窓に透明なポリカ板が入っている点,②窓枠の仕切
が中央に設けられている点,③窓の縦横の比率,④パネルの目地様の溝が横方向に
入っている点,⑤屋根枠が支柱部分と交差している点,⑥屋根枠の太さの各点にお
いて,原告部品1と相違する。被告部品1と原告部品1の共通点は,一般的な家屋
における通常の形態に由来するもので特徴的な形態とはいえない。両者は類似しな
い。
(イ) 被告部品2と原告部品2の非類似性
 被告部品2は,小窓が1つだけ,中部中央に付されているのみである
のに対し,原告部品2は,小窓が3つ付されている点,それぞれ位置,形状,大き
さ,木枠の有無,開閉ドアの有無,配色等の点,パネルの目地様の溝の方向,窓の
ポリカ板の有無の点において,原告部品2と相違する。また,そもそも,原告部品
2は,「Burggiebel」と題するパネルの右半分であって,左半分の四角
い木枠で囲まれた窪んだ壁面をも含めて1つのパネルを形成しているので,被告部
品2とは,全体の形状において異なる。両者は類似しない。
(ウ) 被告部品3と原告部品3の非類似性
 原告部品3は,格子を囲む四角い木枠が二重構造になっている点,四
角い木枠の下に縦方向の目地様の溝が見える点において,被告部品3と相違する。
両者は,一般的な屋上等の格子の形状を模した点で共通するが,全体として類似し
ない。
(エ) 被告部品4と原告部品4の非類似性
 被告部品4は,上面が平面で全体として四角い形状であるのに対し
て,原告部品4は,上面が凸状に隆起し,丸い形状をしている点で相違する。両者
は類似しない。
(オ) 被告部品5と原告部品5の非類似性
 被告部品5は,①目地様の溝が横方向に入っている点,②窓枠の仕切
がほぼ中央に入っている点,③窓の蝶番が壁面の内側に設けられ,窓を閉めた状態
で蝶番が外側から見えない点において,原告部品5と相違する。両者は類似しな
い。
(カ) 被告部品6と原告部品6の非類似性
 被告部品6は,①窓の形が逆U字形である点,②全体に占める窓の大
きさが半分に満たない点,③窓の上部にカーテンなどの細工がない点,④窓の下部
は木枠だけでなくウィンドウテーブルが施されている点,⑤目地様の溝が横方向に
入っている点において,原告部品6と相違する。
 両者は,カウンターの高さにおいてほぼ一致するが,平均的な対象児
童の胸の高さを想定したもので,カウンターパネル(又は窓パネル)としての機能
に由来するものである。両者は類似しない。
(キ) 被告部品7と原告部品7の非類似性
 被告部品7は,支柱部分に配色されていない点,目地様の溝が5,6
列しかない点において,原告部品7と相違する。両者は類似しない。
(ク) 被告部品8と原告部品8の非類似性
 被告部品8は,ドアが左開きである点,ドア中央部の郵便受け及び外
側に付されたドアノブを覆う赤色の鍵や開閉用部品が付されていない点において,
原告部品8と相違する。両者は類似しない。
(ケ) 被告部品9と原告部品9の非類似性
 被告部品9は,ドアが左開きである点,ドア中央部を除いて木目調で
着色されていない点,ドアの模様は片方だけ半円形をしたものであり,ビス止めさ
れていない点において,原告部品9と相違する。両者は類似しない。
(コ) 被告部品10と原告部品10の非類似性
 被告部品10は,窓枠がビス止めされていない点において,原告部品
10と相違する。両者は類似しない。
(サ) 被告部品11と原告部品11の非類似性
 被告部品11は,窓枠がビス止めされていない点において,原告部品
11と相違する。両者は類似しない。
(シ) 被告部品12と原告部品12の非類似性
 被告部品12は,模様の形状,模様の個数,配色,模様の位置の点に
おいて,原告部品12と相違する。両者は類似しない。
(ス) 被告部品13と原告部品13の非類似性
 被告部品13は,メタル部分の形状が丸穴である点,バルコニー部分
の床が木製である点において,原告部品13と相違する。両者は類似しない。
イ 被告製品1ないし5と原告各製品の非類似性
 被告製品1ないし5は,原告製品1ないし5と,全体の形状,大きさ及
びパネル数,階段の位置,背面パネルの有無,パネル形状等の点で,相違する。両
者は類似しない。
(3) 争点(3)(混同のおそれの有無)について
(原告の主張)
 原告各製品等と被告各製品等との前記類似性に照らすならば,原告各製品
等と被告各製品等とは,商品の出所について,混同を生じるおそれがある。
(被告の反論)
 原告各製品等と被告各製品等とは,商品形態が類似しないこと,販売形
態,販売対象が異なること,両者とも幼児用遊具であり,高価品であって,需要者
は慎重に選別すると考えられることから,商品の出所について,混同のおそれは生
じない。
(4) 争点(4)(不法行為の成否)について
(原告の主張)
 原告各製品等と全体ないし部分的に酷似する形態の商品を,原告の販売地
域と競合する地域において販売する被告の行為は,公正かつ自由な競争原理によっ
て成り立つ取引社会において,著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値す
る営業活動上の利益を侵害するものとして,不法行為を構成する。
(被告の反論)
 被告には,前記のとおり,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為が
存在しない以上,同一の行為が,違法な行為と評価されることはない。したがっ
て,不法行為は成立しない。
(5) 争点(5)(原告の損害)について
(原告の主張)
 被告は,平成15年1月ころから,被告各製品等を含む,被告各部品の付
された製品を販売しており,その販売単価は平均で266万2000円である。
 被告による被告各製品等の販売数は,本件訴訟提起時である同年6月まで
の6か月間で少なくとも15台あると推認され,被告における被告各製品等の利益
率は販売価格の35パーセントであると推認される。
 したがって,以下の計算式で求められる被告の利益1397万5500円
が原告の損害と推定される(不正競争防止法5条2項)。
    266万2000円×15台×35パーセント
(被告の反論)
 原告の主張は,否認ないし争う。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)(原告各製品等の商品等表示性及び周知性)について
(1) 事実認定
 前記前提となる事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告各製品等
の形状及び販売,広告の状況について,以下の事実が認められ,これを覆すに足り
る証拠はない。
ア 原告各製品等の形状(甲1~3)
 原告各製品の各部分の形状は,第2,3,(1)(原告の主張)アの(ア)a
ないしm及び(イ)aないしe記載のとおりである。
イ 販売,広告の状況(甲4の3,6~20,弁論の全趣旨)
 原告は,平成9年ころから,ゲミノシリーズの屋内遊具等の輸入を開始
し,平成10年から,ハーベルマース社の許諾を受け,ゲミノシリーズの屋内遊具
等を,原告の名で,原告独自の製品名を付して販売を開始した。
 原告は,ゲミノシリーズの屋内遊具等について,全国の保育園等に対す
る営業活動を行うとともに,平成11年10月からは,チャイルド社が開催する幼
児用品等の展示会に出展するなどしている。
 そして,ゲミノシリーズの屋内遊具等は,平成12年から,チャイルド
社の総合カタログに掲載されるようになった。チャイルド社のカタログは,隔年で
毎回3万5000部余発行され,全国の保育園及び幼稚園のほとんどすべてに配布
されている。平成14年に発行されたチャイルド社のカタログには,「大型室内遊
具」との分類が設けられて掲載された。また,その他の保育雑誌やカタログ,アミ
ューズメントビジネス情報誌などにも掲載された。原告は,ゲミノシリーズの屋内
遊具等について,日本国内での販売開始から累積数として100台以上を販売し
た。
(2) 判断
ア 以上認定した事実を基礎として,原告各製品等の商品形態が,原告の出
所を表示する商品等表示と解されるか否か等について検討する。
 商品の形態は,必ずしも商品の出所を表示することを目的として選択さ
れるものではないが,商品の形態が他の商品と識別し得る独特の特徴を有し,か
つ,商品の形態が長期間継続的かつ独占的に使用され,又は,その使用が短期間で
あっても商品形態について強力な宣伝等が伴う場合には,商品の形態が,商品自体
の機能や美観等の観点から選択されたという意味を超えて,自他識別機能又は出所
表示機能を有するに至り,需要者の間で広く認識されることがあり得るので,この
観点から判断する。
(ア) 原告各製品等の形態的特徴について
 原告各製品等の形態は,いずれも,幼児向けの家屋を模した室内遊具
の部品として通常有する,ありふれたものであり,特徴的な形態ではなく,原告各
製品等の広告や販売の実情等に照らしても,その形態が,原告の商品又は営業を示
す機能を有する商品等表示であると認めることはできない。
 以下,原告各製品等の形態について個別的に検討する。
a 原告各部品1及び2のうち,ホームベース形の5角形のパネルであ
る点,同じ大きさ,形状の長方形の窓が2つ付されている点,逆U字形の窓が1つ
付されている点,屋根状に棒材で縁取りする点,棒材で窓枠や窓の仕切を設ける
点,縁取りや棒材の枠等を着色する点は,家屋を模した屋内遊具の部品としてごく
一般に採用される形態であること,ドイツのベカ社の平成10年版のカタログ(乙
7)において,ほぼ同様の形状がみられることに照らすならば,特徴的な形態とは
いえない。
b 原告部品3のうち,円筒状の棒材が等間隔に並べられた格子状であ
る点は,家屋や店舗を模した屋内遊具の部品としてごく一般に採用される形態であ
ること,平成10年版のドイツやアメリカ合衆国の会社のカタログ(乙6,7),
被告が平成3年に販売した製品(乙1~5)にもみられることに照らすならば,特
徴的な形態とはいえない。また,原告部品3のうち,格子を構成する棒材が円筒状
である点,等間隔に並べられる点,各棒材の間隔を幼児の足が通らない幅にする点
は,幼児の安全確保の観点から通常選択される形態であることに照らすならば,い
ずれも特徴的な形態とはいえない。
c 原告部品4のうち,支柱等の上部に丸みを帯びたキャップを設ける
点は,幼児の安全確保の観点から一般に採用される形態であること,被告の販売す
る幼児用の遊具において平成3年ころから採用されていたこと(乙14の1,14
の2,17,18)に照らすならば,特徴的な形態といえない。
d 原告部品5には,何ら特徴的な形態はない。
e 原告部品6及び7のうち,カウンターを備えた点は,家屋や店舗を
模した屋内遊具の部品としてごく一般に採用される形態であること,前記ベカ社の
カタログ(乙7)にも同様の形態がみられることに照らすならば,特徴的な形態と
はいえない。原告部品7のうち,カウンター上部が凹形である点は,幼児用の遊具
に,曲線を用いた形や飾りが設けられる点は,一般に採用される形態であることに
照らすならば,特徴的な形態とはいえない。
f 原告部品8及び9のうち,パネルにドアが付されている点,ドアの
形状が長方形や逆U字形である点,ドアに丸みを帯びた形や長方形等の飾りが付さ
れている点,中央付近にドアノブが設けられている点は,家屋や店舗を模した屋内
遊具の部品において,ごく一般に採用される形態であることに照らすならば,特徴
的な形態とはいえない。
g 原告部品10のうち,パネルに半球体状の透明プラスチック製の窓
を備えた点は,幼児用の遊具において,身を乗り出して外を眺めることを可能にし
つつ,幼児の落下を回避するために,一般に採用される形態であること,被告の販
売する幼児用の遊具において平成3年ころから採用されていたこと(乙14の1,
14の2,17,18)に照らすならば,特徴的な形態とはいえない。
h 原告部品11のうち,透明プラスチック製の円形の窓を備えた点
は,外を眺めることを可能にしつつ,幼児の落下を回避するために,一般に採用さ
れる形態であることに照らすならば,特徴的な形態とはいえない。
i 原告部品12のうち,同一形状の模様を連続して付する点は,ごく
一般に採用される形態であること(乙13)に照らすならば,特徴的な形態とはい
えない。
j 原告部品13のうち,バルコニーがアーチ形をしている点,着色さ
れ,編み目状に穴のあいた鋼材で構成されている点は,幼児用の遊具において,ご
く一般に採用される形態であること,被告の販売する遊具においても平成7年時に
既に採用されていた形態であること(乙20)に照らして,特徴的な形態とはいえ
ない。
k その他,原告部品のいくつかに共通する,木材の自然色を基調と
し,枠材部分や格子部分の着色が可能である点,パネル平面に目地様の溝が設けら
れている点も,特徴的な形態とはいえない。
(イ) 原告各製品の形態的特徴について
 原告各製品は,上記のとおり特徴的な形態を備えない原告各部品等を
組み合わせたものであり,パネルの組合せ,パネルの組み方で形成される全体の形
状,階段の位置,縁台や階段踊り場の配置などに,それぞれデザイン的に考慮され
た工夫がみられるが,それらは,通常の家屋や店舗あるいは遊具において,ごく一
般に採用される形態にすぎず,特徴的な形態とはいえない。
イ 原告は,原告各製品等は,構成部材を規格化することで,需要者の要求
に応じて,部材を組み合わせ,外観上の多様な組立てを可能にするという特徴を有
する旨主張する。しかし,この点は,機能的な工夫や使用方法を述べるものにすぎ
ず,他に特段の事情がないことに照らせば,このことをもって形態的な特徴がある
ということはできない。
 以上に,原告各製品等についての前記広告,販売状況を併せて検討すれ
ば,原告各製品等の形態について,商品表示性を認めることはできない。
(3) 小括
 以上のとおり,原告各製品等の形態は,原告の商品又は出所を表示する機
能を有するものとはいえない。
2 争点(4)(不法行為の成否)について
 原告は,原告各製品等と全体ないし部分的に酷似する形態の商品を,原告の
販売地域と競合する地域において販売する被告の行為は,公正かつ自由な競争原理
によって成り立つ取引社会において,著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護
に値する営業活動上の利益を侵害するものとして,不法行為を構成する旨主張す
る。
 しかし,前記1で検討したとおり,原告各製品等の形態は周知な商品等表示
であるとはいえず,被告が被告各製品等を販売する行為は不正競争防止法2条1項
1号所定の不正競争行為には当たらないのであるから,特段の事情のない限りは,
被告の上記行為は自由競争の範囲内の行為として不法行為を構成しないものという
べきである。そして,本件において特段の事情があるとは認められない。
 したがって,被告の行為について不法行為は成立しない。
第4 結論
 以上のとおり,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却すること
とし,主文のとおり判決する。
     東京地方裁判所民事第29部
          裁判長裁判官     飯  村  敏  明
裁判官   榎  戸  道  也
裁判官   山  田  真  紀
(別紙)
被告製品目録1被告製品目録2被告製品目録3被告製品目録4被告製品目録5被告
部品目録1被告部品目録2被告部品目録3被告部品目録4被告部品目録5被告部品
目録6被告部品目録7被告部品目録8被告部品目録9被告部品目録10被告部品目
録11被告部品目録12被告部品目録13原告製品目録1原告製品目録2原告製品
目録3原告製品目録4原告製品目録5原告部品目録1原告部品目録2原告部品目録
3原告部品目録4原告部品目録5原告部品目録6原告部品目録7原告部品目録8原
告部品目録9原告部品目録10原告部品目録11原告部品目録12原告部品目録1

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