弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴は之を棄却する。
         理    由
 弁護人松浦松次郎の控訴趣意は「一、第一審検察官は第一審公判廷で被告人Aに
対する起訴状の内容として『被告人等は共謀の上昭和二十四年一月十八日午後八時
頃山形市a町bc番地所在B株式会社C倉庫内に於て同会社取締役社長Dの保管に
係る生ゴム弍拾六貫六百匁時價約拾参万三千円相当を窃盗したものである。』云々
と訴因を朗読し且つ罰條として『刑法第二百三十五條』を指示して敍べたのであ
る。即ち公訴事実の内容は控訴人Aと第一審被告人E等は共謀してB株式会社のC
倉庫から生ゴム二十六貫六百匁を窃取した実行正犯であると言う趣旨に考えられる
のである。然るに第一審被告人Aに対する判決は其理由の中で『(二)被告人Aは
被告人E及Fか右(一)(被告人EはFと共謀して昭和二十四年一月十八日頃山形
市a町bc番地所在B株式会社C倉庫内で同会社取締役Dが保管している生ゴム二
十六貫六百匁を窃取し)のように生ゴムを窃取するの情を知りながら同年同月十七
日頃被告人Eの肩書住所で同人及Fに対し『明日の夕方宴会があるので生ゴムを置
いてある方の工場が留守になるから盗むのに都合よい』旨を告げ以て同人等の右
(一)の犯行を容易たらしめこれを幇助し』云々と説示し後段法律の適用を説示す
るのに『Aの所爲は同法第二百三十五條第六十二條第一項に該当する』と判示せら
れて被告人Aに対しては窃盗正犯行爲を認めないで同幇助罪を以て処断したのでお
る。
 元來刑事訴訟法第二百五十六條並に同法第二百九十一條に謂う起訴状の内公訴事
実は其訴因を明示したければならないことは成文上明かであるが訴因と言うものは
どんな程度に明示しなければならぬかと言うに起訴の原因乃至理由である事実の表
示であると考えられるのである言葉を換えて言えば犯体即ち犯罪自体であつて此一
部でも脱落して仕舞へば最早や犯罪の自体が形を爲さないと言う最少範囲の事実の
明示であらなければならないと思うのである。
 而して実行正犯は実行正犯としての罪体があり幇助罪は幇助罪としての別の罪体
があつて決して二者間同一ではないと信ずるのである勿論幇助罪の罪体とは正犯の
事実と幇助の事実を併せたものであつて幇助の事実のみで罪体を形成しないことは
幇助罪が正犯の従属性から見ても当然であるが反対に正犯の事実そのものが幇助を
当然包含すると言う事は考えられない。それは正犯のみあつて幇助のない場合もあ
るからである。
 本件公訴事実中の訴因は実行正犯であつて幇助の事実にまで、及んでいないから
若し正犯行爲が無かつたとすれば当然其範囲で裁判すべきものであつて公訴事実を
拡張して幇助罪まで判断すべきものでなく若し其範囲が不明であり或は不正確であ
つたなら第一審裁判所は刑事訴訟法第三百十二條第二項に基いて訴因又は罰條の変
更を命じてから裁判をしたければならない事と考えられるのである。
 結論すれば第一審裁判は窃盗正犯に関する審判の請求を受けながら之れを審判せ
ず却て公訴提起のない幇助罪に就て判断を加えた違法があるから刑事訴訟法第三百
七十八條第二項第三に該当すると信じて控訴を申立てた次第である。」というにあ
る。
 記録によれば、本件起訴状記載の訴因は論旨摘録の通りの窃盗の共同正犯の事実
であるのに原審は、刑事訴訟法第三百十二條によつて訴因を追加又は変更を命ずる
の措置を執ることなしに、判決において論旨摘録のように右訴因に掲げられた窃盗
についてその幇助の事実を認定しているのであつて、この点は正に所論の通りで<要
旨>ある。しかしながら訴因とは公訴事実を法律的に構成したものをいい、ことに法
律的こ構成するとは、刑罰法令の各本條に定める犯罪構成要件にあてはめて
叙述するということに外ならないから、訴因と判決の認定事実との間に若干の相違
があつてもその間に公訴事実としての同一性が失われす、同時に、そのあてはめら
れた構成要件の同一性もまた失われていないならば、両者は同一性を保つているも
のというべきで、判決の事実認定において、訴因をこの程度に変更するには、固よ
り刑事訴訟法第三百十二條の措置を執るの要がない。ところで、前記本件訴因の窃
盗の共同正犯と原判決認定の窃盗の幇助とでは、両者の基本的事実関係は同一で單
に犯行の態様を異にするに過ぎぬものであるから、両者が公訴事実に於いて同一性
を有するものというべきことは、従来における大審院幾多の判例に徴して疑なく、
又共犯の観念は講学上犯罪構成要件の修正形式とか刑罰拡張原因などと呼ばれると
ころのもので、それ自体が別個の犯罪構成要件を成立せしめる要素ではないから、
ある罪の共同正犯とせられているものをその罪の幇助に変更したからとて、それに
よつて犯罪構成要件の同一性を失わしめたということはできないのである。果して
然らば、原審が前記のような事実認定をしたからとて訴因に包含せられない事実を
認定したものということを得ず、その間原審が刑事訴訟法第三百十二條所定の措置
をとらなかつたことはむしろその所であつて何等違法の廉はない。所論は右と異る
見解に立つて原審の措置を攻撃するもので、到底採用することを得ない。
 よつて刑事訴訟法第三百九十六條に則り主文の通り判決する。
 (裁判長判事 稲田馨 判事 鈴木禎次郎 判事 松本晃平)

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