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平成30年10月19日判決言渡し・同日原本領収裁判所書記官
平成28年(ワ)第1770号債務不存在確認等請求事件,同年(ワ)第248
1号償還金請求反訴事件
口頭弁論終結日平成30年7月27日
判決
主文
1原告夫は,被告に対し,2万1497円及びこれに対する平成28年12月2
9日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2原告妻は,被告に対し,2万7497円及びこれに対する平成28年12月2
9日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
3原告らの本訴請求及び被告のその余の反訴請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,本訴反訴を通じ,これを8分し,その7を原告らの負担とし,そ
の余を被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1本訴
被告は,原告夫に対し,6000円及び以下の金員を支払え。
ア3000円に対する平成27年11月25日から支払済みまで年5%
の割合による金員
イ3000円に対する平成29年5月25日から支払済みまで年5%の
割合による金員
被告は,原告らに対し,それぞれ10万円及びこれに対する平成28年9
月29日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2反訴
原告夫は,被告に対し,13万8326円及びこれに対する平成28年1
2月29日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
原告妻は,被告に対し,4万1595円及びこれに対する平成28年12
月29日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1事案の要旨
原告らは,生活保護法による保護として金銭給付(以下「保護費」という。)
を受けていたところ,被告(日本司法支援センター)から,代理援助契約に基
づく援助(弁護士費用・実費の立替払)を受けた上,神戸市に対し,保護費の
過少支給があるなどと主張して,本来支給されたはずの保護費の額と過少支給
額の差額,慰謝料及び遅延損害金の支払を求める国家賠償請求訴訟を提起し,
その一部認容判決を受け,神戸市からその支払を受けた。
反訴は,被告が,原告らに対し,前記代理援助契約に基づく立替金償還請求
として,立替金の一部(原告
夫は13万8326円,原告妻は4万1595円。)及びこれらに対する立替
金支払期限の後の日(反訴状送達の日の翌日)である平成28年12月29日
から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める事
案である。
本訴は,原告夫が,神戸市から支払を受けた金員は,実質的には保護費で
あり,これを被告に償還するべき法律上の原因がないのに,平成27年11月
25日と平成29年5月25日に3000円ずつ原告夫の預金口座から引き落
として被告が利得したと主張して,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,
6000円及びこれに対する前記各支払日の翌日から支払済みまで民法704
条所定の年5%の割合による遅延利息の支
原告らが,被告による前記預金口座からの引落しが原告らに対する不法行為に
当たり,これによって,原告らが精神的苦痛を被ったと主張して,被告に対し,
不法行為に基づく損害賠償として,それぞれ,慰謝料10万円及び訴状送達の
日の翌日である平成28年9月29日から支払済みまで民法所定の年5%の割
合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2前提事実(当事者間に争いがないか,括弧内に掲記の証拠及び弁論の全趣旨
によって容易に認定することができる事実。)
当事者等
ア原告ら世帯は,原告夫(昭和○○年○○月○○日生まれ。),原告妻(昭
和○○年○○月○○日生まれ。)及び6名の子(平成30年2月15日当
時の年齢はそれぞれ○歳,○歳,○歳,○歳,○歳及び○歳10か月。)
で構成されている。原告らは,平成21年12月以降,神戸市の管理に属
する福祉事務所(以下,単に「福祉事務所」という。)を保護の実施機関
として,生活保護法による保護費の給付を受けている(甲3の1・2,甲
17,原告妻本人及び弁論の全趣旨)。
イ被告は,総合法律支援法(平成16年法律第74号)に基づき,総合法
律支援に関する事業を行うことを目的として設立され(同法14条,15
条),民事裁判手続等の準備及び追行に必要な費用を支払う資力のない国
民に対して弁護士に支払う報酬及び実費の立替等の業務を行う法人である。
被告は,総合法律支援法等に基づき,法務大臣の認可を受けて,被告の
業務の方法について基本的事項を定め,もってその業務の適正な運営に資
することを目的として,「日本司法支援センター業務方法書」(甲2。以
下「業務方法書」という。)を定めている。総合法律支援法及び業務方法
書の定めは,別紙のとおりである。
法律相談援助
原告妻は平成24年11月28日,原告夫は同年12月12日,保護費が
過少であると考え,被告に対し,それぞれ法律相談援助の申込みをし,法律
相談をした(甲3の1・2及び弁論の全趣旨)。
別件国家賠償請求訴訟の提起等
原告らは,A弁護士に訴訟委任をした上,平成25年3月14日,福祉事
務所職員が原告ら世帯の収入計算に関して誤った指示・指導をするなどの違
法行為をした結果,原告らに支給されるべき保護費が過少となり,よって,
原告らは肉体的・精神的苦痛を被ったなどと主張して,同市に対し,以下の
請求をする訴訟(以下「別件訴訟」という。)を神戸地方裁判所に提起した
(同裁判所平成25年(ワ)第514号。)。
(原告夫)国家賠償法1条1項に基づく国家賠償として,過少支給額42万
4886円と慰謝料50万円の合計92万4886円及びこれに対する平
成25年3月28日(同訴訟の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民
法所定の年5%の割合による遅延損害金
(原告妻)国家賠償法1条1項に基づく国家賠償として,過少支給額5万1
274円と慰謝料50万円の合計55万1274円及びこれに対する平成
25年3月28日(同訴訟の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法
所定の年5%の割合による遅延損害金
(甲5及び弁論の全趣旨)
代理援助契約(第1審分)の締結等
ア地方事務所長の決定の内容
被告兵庫地方事務所長(以下,単に「地方事務所長」という。)は,平
成25年3月22日,別件訴訟(第1審分)に関し,以下のとおり援助開
始決定をし,その後,これらの着手金・実費をA弁護士に支払った。
(原告夫)立替費用は,着手金12万3375円,実費1万7500円及
び後日地方事務所長が決定する報酬金とする。立替費用の償還方法は,
平成25年5月25日から月額3000円の割賦償還とする。
(原告妻)立替費用は,着手金12万3375円,実費1万7500円及
び後日地方事務所長が決定する報酬金とする。立替の償還は,事件終結
時まで猶予する。
イ原告らは,平成25年3月30日,A弁護士及び被告との間で,原告ら
を被援助者とし,A弁護士を受任者として,以下の定めがある代理援助契
約(業務方法書42条所定の個別契約に当たるもの。以下,原告夫にかか
る同契約を「本件援助契約1」といい,原告妻にかかる同契約を「本件援
助契約2」という。)をそれぞれ締結し,自動払込手続(業務方法書30
条3項)をするための口座として,原告夫名義のゆうちょ銀行の口座(以
下「本件口座」という。)を届け出た。
原告らは,それぞれ,被告に対し,前記アの地方事務所長の決定の内
容を承認の上,A弁護士に対し,別件訴訟の処理を委任し,同弁護士は
これを受任した(1条1号)。
原告らは,前記立替金の償還方法を遵守することを誓約する(2条1
項1号)。
本契約に規定のない事項については,業務方法書による(14条)。
(以上につき,甲4の1・2,甲10,15及び弁論の全趣旨)
代理援助契約(控訴審分)の締結等
アの請求を全
部棄却する判決をした。
イ原告らは,別件訴訟の第1審判決に対して控訴することとし,平成26
年9月12日,A弁護士及び被告との間で,前記イと同旨の定めのある
代理援助契約をそれぞれ締結した(以下,原告夫にかかる同契約を「本件
援助契約3」といい,原告妻にかかる同契約を「本件援助契約4」といい,
本件援助契約1ないし4を併せて「本件各援助契約」という。)。
ウ地方事務所長の決定の内容
地方事務所長は,本件援助契約3・4にかかる原告らの申込みを受け,
同各契約に先立ち,別件訴訟(控訴審分)に関し,以下のとおり援助開始
決定をし,その後,これらの着手金・実費
立替費用との合計額は,原告らそれぞれについて22万1825円ずつと
なる。以下,「本件立替金」という。)をA弁護士に支払った。
(原告夫)立替費用は,着手金6万3450円,実費1万7500円及び
後日地方事務所長が決定する報酬金とする。立替費用の償還方法は,月
額3000円の割賦償還とするが,事件終結時まで償還を猶予する。
(原告妻)立替費用は,着手金6万3450円,実費1万7500円及び
後日地方事務所長が決定する報酬金とする。立替費用の償還方法は,月
額5000円の割賦償還とするが,事件終結時まで償還を猶予する。
(以上につき,甲4の3・4,甲5及び弁論の全趣旨)
別件訴訟の控訴提起等
原告らは,別件訴訟の第1審判決を不服とし,大阪高等裁判所に控訴を提
起したところ,同裁判所は,平成27年2月26日,同事件の被告(神戸市)
の職員の行為に過誤があるとして,原告らの請求を一部認容する判決(同裁
判所平成26年(ネ)第2546号。以下「別件判決」という。)をし,同
判決は確定した。同判決の損害額及び結論部分の判示は,要旨,次のとおり
であった。
「前記過誤がなければ支給されていた保護費の額と実際に支給された保護費
の額の差額は,原告夫につき42万4886円,原告妻につき5万1274
円であることは,当事者間に争いがないから,これを損害と認める〔以下,
この部分についての損害を「保護不足分」という。〕。
また,上記差額が支払われれば,控訴人らの財産的な損害は回復されるも
のの,控訴人らは,支給されるべき保護費を支給されず,2年以上にわたっ
て最低限度の生活を下回る生活を余儀なくされていたことからすると,慰謝
料請求を認めることができる。その額については,本件に現れた諸般の事情
を考慮して,合計20万円(原告ら各人につきそれぞれ10万円)が相当で
ある〔以下,この部分についての損害を〔慰謝料分〕という。〕。〔中略〕
よって,原告らの請求は,原告夫の請求については,52万4886円及
びこれに対する平成25年3月28日から支払済みまで年5分の割合による
遅延損害金の限度で,原告妻の請求については,15万1274円及びこれ
に対する平成25年3月28日から支払済みまで年5分の割合による遅延損
害金の支払を求める限度で,それぞれ理由がある。」
(甲5及び弁論の全趣旨)
別件判決に基づく金員の取立て及び支払
A弁護士は,平成27年4月1日までに,神戸市から,別件判決に基づく
金員として,原告夫の請求については57万7302円,原告妻については
16万6380円を取り立て,その頃,これらの金員を原告らそれぞれに支
払った。なお,前記によれば,これらの金員の内訳は,次のとおり計算さ
れる(以下,これらの金員をまとめて「本件受領金銭」という。)。
(原告夫分)(原告妻分)
A:保護費不足分42万4886円5万1274円
B:Aの遅延損害金4万2430円5120円
C:慰謝料分10万0000円10万0000円
D:Cの遅延損害金9986円9986円
計57万7302円16万6380円
本件受領金銭についての福祉事務所の対応
福祉事務所は,平成27年5月1日までに,以下の理由及び根拠から,本
件受領金銭について収入認定をしないこととし,同日,その旨原告らに通知
した。
(収入認定をしなかった理由)
賠償金は,原告らが被った損害の賠償金として支払ったものであり,保護
費を遡及して支払ったものではないが,結果として最低生活を下回っていた
期間の生活に対する賠償金であるため,自立更生を理由に収入認定を行わな
い。
(収入認定をしなかった根拠)
生活保護法による保護の実施要領について(昭和36年厚生省発社第12
3号厚生事務次官通知)
次に掲げるものは,収入として認定しないこと。
オ災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金,保
険金又は見舞金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる

(甲12)
被告による立替金の償還方法等の決定
地方事務所長は,平成27年8月28日,原告らに対し,別件訴訟の第1,
2審の受任者(A弁護士)の意向により報酬は発生しないこととなったとし
原告らないしA弁護士に通知した。
(原告夫)終結時立替残高及び償還残高が22万1825円であるところ,
償還の方法は,従前と同様,平成27年10月25日から月額3000円
を割賦償還とし,原告夫が別件訴訟に関し相手方から受領した金銭57万
7302円のうち25%に相当する14万4326円を,前記償還残高に
償還充当する。なお,償還充当後の立替残高について償還免除を希望する
場合は改めて申請されたい。
(原告妻)終結時立替残高及び償還残高が22万1825円であるところ,
償還の方法は,従前と同様,平成27年10月25日から月額5000円
を割賦償還とし,原告夫が別件訴訟に関し相手方から受領した金銭16万
6380円のうち25%に相当する4万1595円を,前記償還残高に償
還充当する。なお,償還充当後の立替残高について償還免除を希望する場
合は改めて申請されたい。
(以下,これらの償還金合計18万5921円を「本件償還金」という。)
(甲7の1・2及び弁論の全趣旨)
被告による償還金の取立て
被告は,平成27年11月25日及び平成29年5月25日,原告夫名義
の本件口座から,本件償還金の取立て(割賦償還)のため,それぞれ300
0円(合計6000円)を自動引落しの方法により引き落として受領した(以
下,2回の引落としを併せて「本件引落し」という。甲10,15及び弁論
の全趣旨)。
不服申立て等
ア原告らは,前記の各決定を不服として,地方事務所長に対し,それぞ
れ不服申立て(業務方法書69条1項)をしたが,地方事務所長は,平成
27年10月13日,原告らの不服申立てについて,いずれも採用しない
旨の決定をした(甲8の1・2)。
イ原告らは,前記アの各決定を不服として,被告理事長に対し,それぞれ
再審査の申立て(業務方法書70条1項)をしたが,被告理事長は,平成
28年3月4日,原告らの再審査申立てをいずれも採用しない決定をした
(甲9の1・2)。
3争点
本件の争点は,本件各援助契約において,原告らが本件受領金銭の償還義務
を負うか否か(償還義務の存否)及び本件受領金銭全額が償還対象となるか否
か(償還対象の範囲)であり,争点に関する当事者の主張は,以下のとおりで
ある。
償還義務の存否について
【被告の主張】
ア業務方法書60条によれば,民事法律扶助事業の援助制度による立替金
は,被援助者の属性ないし援助の対象となる事件の内容を問わず,「事件
の相手方等から金銭等を得ている場合」,当該受領金銭等から償還残高の
償還をすべきものである。
原告らは,被告と本件各援助契約を締結し,本件立替金の援助を受けた
後,別件訴訟の相手方から本件受領金銭を得た。
したがって,原告らは,被告に対し,本件各援助契約に基づき,本件受
領金銭の償還義務を負うというべきである。
イ原告らの主張イは争う。総合法律支援法及び業務方法書には,福祉事務
所による収入認定がされなかった受領金銭について,償還義務の対象から
除く旨の規定はない。
【原告らの主張】
ア被告の主張アの2段落目は認める。しかし,以下のとおり,被告の業務
方法書60条に関する解釈は争う。
業務方法書60条2項は,「地方事務所長は,前項の規定にかかわらず,
当該被援助者に即時に立替金の全額の償還を求めることが相当でない事情
があると認めるときは,当該償還に充てるべき金額を適宜減額することが
できる。ただし,扶養料,医療費その他やむを得ない支出を要するなど特
別の事情のない限り,当該償還に充てるべき金額は,被援助者が事件の相
手方等から得た金銭等の額の100分の25を下回ることはできない。」
と定める。
このように,同項は,生活保護利用者が負担する必要のない「医療費」
や,生活保護利用者が所持している場合には収入認定されることとなる「扶
養料」などを検証する対象として規定しているのであるから,そもそも,
生活保護利用者に適用されるべき規程ではなく,生活保護利用者以外の生
活に困窮する者が,相手方等から得た金銭を「健康で文化的な最低限度の
生活」を送るために支出した場合を想定して規定されているものと解され
なければならない。
他方,生活保護利用者は,憲法25条1項及び生活保護法3条により,
受領した保護費は,「健康で文化的な最低限度の生活」を送るために必要
なものとして費消されるから,「相手方等から得た金銭」が保護費の過少
支給分の補填の趣旨で得た損害賠償金である場合には,業務方法書60条
2項を検討するまでもなく,当然に,同条項の要件を満たしている。
本件でもこれに異なるところはなく,「生活保護法の趣旨目的にかなっ
た目的と態様で保護金品等を原資としてされた貯蓄等は,収入認定の対象
とすべき資産には当たらない」と解されるため,生活保護利用者が相手方
等から得た金銭について,福祉事務所が収入認定しなかった場合は,まさ
に,「健康で文化的な最低限度の生活」を送るために必要な保護費を原資
とした「貯蓄等」と同視されなければならない金銭である。
よって,業務方法書60条2項本文に従い,「地方事務所長は,前項の
規定にかかわらず,当該被援助者に即時に立替金の金額の償還を求めるこ
とが相当でない事情があると認め」た上で,「当該償還に充てるべき金額
を」全額免除しなければならないというべきである。したがって,被告が
福祉事務所の「収入認定しない」との専門的判断とは異なる判断をし,業
務方法書60条2項ただし書を適用し,原告らに償還を求めた行為は同規
定の解釈を誤った違法なものであり,この点で本件各代理援助契約の解釈
運用も誤っているから,本件反訴請求は契約上の根拠を欠く違法なものと
いうべきである。
イまた,業務方法書60条は,以下のとおり,憲法25条1項,生活保護
法1条,3条ないし公序良俗に反するというべきであり,そのような規定
を原告らに適用した被告の行為も違法・無効というべきである。
業務方法書は,生活保護利用者に支給されるべき保護費が支給されな
かった場合において,①当該生活保護利用者が後から保護費を取得し,
これについて収入認定がされなかったときと,②当該生活保護利用者が
後から保護費に相当する金員以外の損害賠償金を取得し,これについて
収入認定がされたときについて,何ら区別することなく,①のときにも
保護費から立替金を回収する取扱いをするものである。業務方法書60
条は,この点で,憲法25条1項,生活保護法1条,3条に抵触し,無
効というべきである。
すなわち,保護費の過少支給があった事案においては,①支給されな
かった保護費の申請行為を介在させて抗告訴訟を提起して勝訴し,保護
費を取得する場合と,②国家賠償請求訴訟を提起して勝訴し,同様の損
害賠償金を取得し,同損害賠償金について「健康で文化的な最低限度の
生活」のために必要であることから福祉事務所が収入認定をしない場合
がある。いずれの場合でも,生活保護利用者が受領する金員は同額であ
るにもかかわらず,前者は保護費として支払われるために償還決定がさ
れることはないであろう一方,後者は賠償金として支払われるために償
還決定がされることとなる。このような帰結は,被告が生活保護制度の
運用・実態を全く理解することなく,現在の業務方法書により極めて形
式的な取扱いをするものであるとともに,税金を使用する公的業務とし
ておよそ合理的に説明し得ない不平等な結論となることは明らかである。
したがって,前記取扱いは,憲法25条1項,生活保護法に違背する
ものというべきである。
次に,業務方法書60条2項の前記アの2段落目ないし3段落目のよ
うな規定内容からすれば,同項は,生活保護利用者に適用されるべき規
程として相応しくないというべきである。
損害賠償金を取得し,損害賠償金
について福祉事務所が収入認定をしない場合,生活保護利用者において,
損害賠償金のうち「貯蓄」をする金銭は,業務方法書60条2項ただし
書の「やむを得ない支出」に当たらないと判断されることとなりかねな
い。しかし,そのような事態は,生活保護利用者が「貯蓄」をすること
を許容してきた裁判例(最高裁平成16年3月16日第三小法廷判決・
民集58巻3号647頁等)と抵触する運用・解釈を許すことになる。
したがって,業務方法書は,生活保護利用者が過去の未支給保護費の
填補の趣旨で損害賠償金を取得し,福祉事務所が損害賠償金を収入認定
しなかった場合には償還を求めることをしないとする免除規定が欠けて
いる点において,公序良俗に反し,違法というべきである。
償還対象の範囲について
【原告らの主張】
ア被告と生活保護利用者との間で締結される代理援助契約は,生活保護利
用者が保護費に相当する金員を裁判により取得した場合(生活保護利用者
が取得した金員について福祉事務所が収入認定しないとの判断をした場合)
は,「健康で文化的な最低限度の生活」のために費消する金員であるため,
当該生活保護利用者に対する償還を免除する義務を負うという立替金償還
免除特約付き立替払契約というべきである。すなわち,生活保護利用者が
被告との間で代理援助契約を締結した場合,通常の代理援助契約と異なり,
①被援助者が契約終結時において生活保護利用者であること,②被援助者
が相手方等から得た金銭等が,健康で文化的な最低限度の生活のためにや
むを得ない支出を要するなど特別の事情があること,という条件が成就し
た場合に,立替金の償還義務の全部を被告が免除すべき義務を負うという
特約が付されているものと解するべきである(業務方法書59条の3第1
項,65条参照)。このように解さなければ,代理援助契約を締結した者
のうち,最低生活費が不足する状況となる生活保護利用者は免除を受けら
れず,最低生活費を上回る収入を有する生活保護非利用者は免除を受けら
れるということとなり,不当である。
本件各受領金銭は,生活保護に関する専門的判断をする福祉事務所が,
収入認定をしない判断をした時点で,健康で文化的な最低限度の生活のた
めにやむを得ない支出を要するなど特別の事情がある金銭であることが確
定したこととなるというべきである。したがって,被告は,前記専門的判
断に従属し,立替金の償還義務の全部を免除すべき義務を負うというべき
である。
イ被告は,被告が償還を求めているのは,本件受領金銭のうち,慰謝料及
び遅延損害金の部分の範囲内であるなどと主張する。しかし,福祉事務所
は,同部分を含めた本件受領金銭全部について収入認定しなかったのであ
り,福祉事務所がそのように判断した以上,本件受領金銭の一部でも原告
らの生活に使用させないことは,原告らが健康で文化的な最低限度の生活
を確保するための資産を侵害することになるというべきである。
「保護費を遡及して支払ったものではない」としているが,原告らは,本
件受領金銭が本来支給されるべき保護費に相当する金員であったため,福
祉事務所が前記不認定としたと述べているに過ぎないから,福祉事務所の
見解と矛盾するものではない。
【被告の主張】
ア原告らの
60条によれば,民事法律扶助事業の援助制度による立替金は,被援助者
の属性ないし援助の対象となる事件の内容を問わず,「事件の相手方等か
ら金銭等を得ている場合」,当該受領金銭等から償還残高の償還をすべき
ものである。
イまた,本件受領金銭には,慰謝料及び遅延損害金合計26万7522円
も含まれているところ,これらは明らかに保護費ではない。そして,本件
償還金は合計18万5921円であるから,その償還を求めたとしても,
本件受領金銭のうち,明らかに保護費ではない部分の償還を求めているに
過ぎないというべきである。
第3当裁判所の判断
1償還義務の存否について

ば,被告の業務は,あまねく全国において,法による紛争の解決に必要な
情報やサービスの提供が受けられる社会を実現することを目指し,資力の
乏しい者その他の法による紛争の解決に必要なサービスの提供を求めるこ
とに困難がある者にも民事裁判手続等の利用をより容易にするという民事
法律扶助事業を含む事業を行うものであるところ,このような民事法律扶
助事業が公共性の高いものであることに鑑み,弁護士等の隣接法律専門職
者のサービスをより身近に受けられるようにするための総合的な支援をす
るため,自己の権利を実現するための準備及び追行に必要な費用を支払う
資力がない国民等に対しては,必要な実費の立替えをすることとされてい
るものである。そして,同法34条は,民事法律扶助事業に関し,必要な
手続のほか,立替えに係る報酬として,民事法律扶助事業が前記のような
資力がない国民等を広く援助するものであることを考慮した相当な額及び
実費の基準並びにそれらの償還に関する事項を記載した業務方法書を作成
し,法務大臣の認可を受けてこれを公表しなければならないものとしてい
る。したがって,総合法律支援法を受けて被告が作成した業務方法書ない
しこれに基づく代理援助契約も,同法の規定ないしその趣旨に即して解釈・
運用されるべきである。
また,憲法25条1項,生活保護法及び総合法律支援法の前記各規定及
びその趣旨からすれば,民事法律扶助事業は,資力の乏しい国民等にもあ
まねく弁護士等の隣接法律専門職者のサービスをより身近に受けられるよ
うにするための総合的な支援をするための事業であるから,被援助者が,
保護費を受給できない等のために健康で文化的な最低限度の生活を維持す
ることができない者であり,民事法律扶助事業による援助の結果,当該保
護費ないしその不足額を取得することができた場合において,被告が当該
保護費ないしその不足分の償還を求めることが常に可能であるとすると,
結局健康で文化的な最低限度の生活を維持することができない事態になり,
本末転倒といわなければならない。
イしかし,総合法律支援法は,被告が業務方法書を作成するに当たり,被
援助者が生活保護受給者であるか否か,事件により相手方等から得た金銭
が保護費の未払分の填補の趣旨であるか否かによって,規定を分けるべき
ことを命じていない。
したがって,業務方法書に被援助者が生活保護受給者であるか否か等に
応じた規定がないことのみをもって,業務方法書ないしそれに基づく代理
援助契約が直ちに違法となるということはできず,償還の免除に関する規
定(59条の3)や,相手方等から金銭等を得ている場合の償還等の例外
に関する規定(60条2項)等を含めて,総合法律支援法ないしその趣旨
に即した解釈・運用が可能か否かを検討するのが相当というべきである。
ウそして,業務方法書によれば,代理援助契約は,被援助者と弁護士であ
る受任者との間における訴訟委任契約(個別契約。42条)と併せて,被
援助者と被告との間で,被援助者が本来負担すべき訴訟費用,受任者に対
する報酬(弁護士費用)その他訴訟に要する費用等について,被援助者の
ために被告が弁済(立替払)をすることを委託する準委任契約を含むもの
であり,被告と受任者との間で,被告が弁護士費用の立替払いをする義務
を負う一方,受任者が一定の報告義務(46条),受領金銭の精算に協力
する義務(49条)等を負うという三面契約であると解される。
したがって,被告は,代理援助契約に基づいて被援助者のために訴訟に
要する費用を支払った場合,被援助者に対し,原則として,当該費用相当
額の償還を求める権利を有するというべきである。業務方法書60条1項
が,被援助者が,事件により相手方等から金銭等を得たときは,当該金銭
等から支払うべき報酬金の額を差し引いた残額について,立替金の額に満
つるまで,立替金の償還に充てなければならない旨定めるのは,この趣旨
を確認的に規定するとともに,事件の相手方等から受け取るべき金銭の受
領者を原則として受任者とし(48条2項),受任者において立替金の精
算をしてから残金を被援助者に交付させること(49条3項本文)と併せ
て,立替金の精算を確実かつ簡便にする趣旨に出たものと解される。
他方で,業務方法書57条ないし60条は,当該代理援助契約に係る事
件が終結し,地方事務所長が終結決定をするに当たり,被援助者の生活状
況等を考慮して,償還の猶予をし,又は被援助者の申請を受けて償還義務
の一部または全部を免除すべき場合(59条ないし同条の3),相手方等
から得た金銭を償還に充てるべき義務の対象から減額すべき場合(60条
2項)を定めているから,総合法律支援法ないしその趣旨に即した解決は,
後記2で検討するとおり,これらの規定の解釈・運用を通じて図られるべ
きものと解するのが相当である。
小括
以上を前提とすると,原告らが,被告と本件各援助契約を締結し,本件立
替金の援助を受けた後,別件訴訟の相手方から本件受領金銭を得たことにつ
いて,当事者間に争いがないから,被告は,原告らに対し,本件受領金銭に
ついて,原則として,償還請求をする権利を有するというべきである。
原告らの主張について
これに対し,原告らは,要するに,憲法25条1項,生活保護法1条,3
条からすれば,代理援助契約においては,被援助者が生活保護受給者であり,
また,事件により相手方等から得た金銭が保護費の未払分の填補の趣旨であ
る場合には,立替金の償還義務が当然には発生しない趣旨の規定を置くべき
であるから,その旨の解釈・運用をすべきであるのに,被告がその趣旨の規
定を置かず,前記のような解釈・運用をしないままに本件各援助契約を締結
し,本件終結決定,反訴請求及び本件引落しをしたことは,公序良俗に反し
て違法・無効である等と主張する。
のとおり,業務方法書に被援助者が生活保護受給者である
か否か等に応じた規定を置くべきであるとはいえず,原告の前記主張は,採
用することができない。
2償還対象の範囲について
業務方法書60条1項は,原則として,立替金全額の償還を認めるのに対
し,同条2項は,「地方事務所長は,前項の規定にかかわらず,当該被援助
者に即時に立替金の全額の償還を求めることが相当でない事情があると認め
るときは,当該償還に充てるべき金額を適宜減額することができる。ただし,
扶養料,医療費その他やむを得ない支出を要するなど特別の事情のない限り,
当該償還に充てるべき金額は,被援助者が事件の相手方等から得た金銭等の
額の100分の25を下回ることはできない。」と規定し,同条1項の例外
を定めている。
生活保護が受けられない又は保護費が過少支
給である等のため,健康で文化的な最低限度の生活を維持することができな
い被援助者について,当該保護費又はその不足分の償還を求めることが常に
可能であるとすると,結局健康で文化的な最低限度の生活を維持することが
できない事態になり,本末転倒というべきである。
したがって,業務方法書60条1項にいう相手方等から得た金銭が,当該
金銭が支払われることとなった経緯ないし理由及びその名目を総合考慮して,
生活保護利用者に支払われるべきであった保護費と同趣旨の金銭(以下「実
質的保護費」という。)といえる場合には,特段の事情がない限り,同条2
項本文の「当該被援助者に即時に立替金の全額の償還を求めることが相当で
ない事情」があり,かつ,当該金銭について,同項ただし書の「扶養料,医
療費その他やむを得ない支出を要するなど特別の事情」があると認めるのが
相当である。
そこで,本件受領金銭が実質的保護費に当たるかどうか検討する。
福祉事務所による過誤がなければ支給されていた保護費の額と実際に支給さ
れた保護費の額の差額であり,「C:慰謝料分」は,原告らが支給されるべ
き保護費を支給されなかったことによる精神的苦痛を慰謝するための慰謝料
であり,これらの各遅延損害金として,「B:Aの遅延損害金」,「D:C
の遅延損害金」があることが認められる。
以上の経緯ないし理由及び金銭の名目を総合考慮すると,本件受領金銭の
うち,「A:保護不足額」及び「B:Aの遅延損害金」は,生活保護利用者
に支払われるべきであった保護費と同趣旨の金銭であり,実質的保護費に当
たるということができる一方,「C:慰謝料分」及び「D:Cの遅延損害金」
は,実質的保護費に当たるということはできないというべきである。
これに対し,原告らは,業務方法書59条の3第1項,65条を参照し,
被告と生活保護利用者との間で締結される代理援助契約は,通常の代理援
助契約と異なり,①被援助者が契約終結時において生活保護利用者である
こと,②被援助者が相手方等から得た金銭等が,健康で文化的な最低限度
の生活のためにやむを得ない支出を要するなど特別の事情があること,と
いう条件が成就した場合に,立替金の償還義務の全部を被告が免除すべき
義務を負うという特約が付されているものと解するべきであると主張する。
しかし,原告らが指摘する各条文は,いずれも所定の書面を提出して立
替金の償還の免除を求める申請をすべき旨規定している(59条の3第2
項,65条2項)こと,民事法律扶助事業が多数の国民等との間で締結さ
れるものであるところ,被告において,被援助者による申請如何にかかわ
りなく常に契約終結時に原告が指摘するような事情があるかどうかを調査
すべきであるとすれば,被告の事業の運営に過大な費用を要することとな
り,被援助者ないし国民等一般の不利益となることは容易に考えられるか
ら,生活保護利用者を相手方とする代理援助契約において,原告らが主張
するような停止条件が付されていると解することはできない。
そして,原告らは,被告に対し,業務方法書59条の3第1項による償
還の免除を求める申請をしていない(弁論の全趣旨)。
イまた,原告らは,本件各受領金銭は,生活保護に関する専門的判断をす
る福祉事務所が,収入認定をしない判断をした時点で,健康で文化的な最
低限度の生活のためにやむを得ない支出を要するなど特別の事情がある金
銭であることが確定したこととなるというべきであると主張する。
しかし,福祉事務所の判断を尊重すべき場合があることはともかく,裁
判所が同判断に常に拘束されるということができないのは勿論,被告が同
判断と異なる判断をしたことのみをもって,被告の判断ないし償還請求が
違法となるということはできないというべきである。
ウ原告らの前記各主張はいずれも採用することができない。
次に,被告は,本件償還金は合計18万5921円であるから,原告らに
その償還を求めたとしても,本件受領金銭のうち,明らかに保護費ではない
部分の償還を求めているに過ぎないと主張するので,被告が原告らに対して
償還請求をすることができる金額について検討する。
によれば,本件受領金銭のうち,「A:保護不足額」及び「B:
Aの遅延損害金」については,業務方法書60条2項本文の「当該被援助者
に即時に立替金の全額の償還を求めることが相当でない事情」があり,かつ,
当該金銭について,同項ただし書の「扶養料,医療費その他やむを得ない支
出を要するなど特別の事情」があると認められる。
そうすると,これらの部分については,償還の対象とすることはできない
と解される。
したがって,地方事務所長が,本件受領金銭全体を対象として,100分
の25までを超える部分を償還に充てるべき金額から減額すると判断するの
であれば,原告らについて,それぞれ「C:慰謝料分10万円」と「D:C
の遅延損害金9986円」の合計10万9986円を基準とし,その100
分の25である2万7497円(円未満四捨五入)を超える部分を償還に充
てるべき金額から減額すべきであったというべきである。
よって,地方事務所長の前記判断及び本件受領金銭取得に至る経緯を前提
とすれば,被告が,本件受領金銭にかかる償還請求分として,原告らに対し
て償還請求をすることができる金額は,2万7497円に限られると解する
のが相当である。
3小括
したがって,被告は,本件各援助契約に基づく立替費用償還請求のうち,本
件受領金銭にかかる償還請求分として,原告夫に対しては,前記2万7497
円から本件引落し分6000円を控除した2万1497円及びこれに対する立
替金支払期限の後の日(反訴状送達の日の翌日)である平成28年12月29
日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める
ことができ,原告妻に対しては,2万7497円及び同様の遅延損害金の支払
を求めることができる。
また,以上の判示によれば,本件引落しは,被告が原告夫に対して立替費用
償還請求をすることができる範囲内でされたものであるから,これについて被
告に不当利得があるとも,原告らに対する不法行為に当たるということもでき
ない。
4結論
よって,被告の反訴請求は,主文記載の限度で理由があるので,同限度でそ
れぞれ認容することとし,原告らの本訴請求は,いずれも理由がないので棄却
することとして,主文のとおり判決する。
神戸地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官山口浩司
裁判官武村重樹
裁判官毛受裕介
(別紙)
総合法律支援法及び業務方法書の定めは,以下のとおりである。ただし,本件に
関係のある条項の抜粋であり,判決において,〔〕内に所要の注記等をした。
総合法律支援法
1条(目的)
この法律は,内外の社会経済情勢の変化に伴い,法による紛争の解決が一層
重要になることにかんがみ,裁判その他の法による紛争の解決のための制度の
利用をより容易にするとともに弁護士及び弁護士法人並びに司法書士その他の
隣接法律専門職者〔中略〕のサービスをより身近に受けられるようにするため
の総合的な支援(以下「総合法律支援」という。)の実施及び体制の整備に関
し,その基本理念,国等の責務その他の基本となる事項を定めるとともに,そ
の中核となる日本司法支援センターの組織及び運営について定め,もってより
自由かつ公正な社会の形成に資することを目的とする。
2条(基本理念)
総合法律支援の実施及び体制の整備は,次条から7条までの規定に定めると
ころにより,民事,刑事を問わず,あまねく全国において,法による紛争の解
決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現することを目指して
行われるものとする。
4条(民事法律扶助事業の整備発展)
総合法律支援の実施及び体制の整備に当たっては,資力の乏しい者その他の
法による紛争の解決に必要なサービスの提供を求めることに困難がある者にも
民事裁判等手続〔中略〕の利用をより容易にする民事法律扶助事業が公共性の
高いものであることに鑑み,その適切な整備及び発展が図られなければならな
い。
30条(業務の範囲)
1項支援センターは,14条の目的〔判決注:総合法律支援に関する事業を迅
速かつ適切に行うこと〕を達成するため,総合法律支援に関する次に掲げる業
務を行う。
二民事裁判等手続又は行政不服申立手続において自己の権利を実現するため
の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない国民若しくは我が国に住所
を有し適法に在留する者(以下「国民等」という。)又はその支払により生
活に著しい支障を生ずる国民等を援助する次に掲げる業務
イに掲げる場合の区分に応じ,それぞれ又はに定める手
続の準備及び追行〔中略〕のため代理人に支払うべき報酬及びその代理人
が行う事務の処理に必要な実費の立替えをすること。
特定援助対象者以外の国民等を援助する場合民事裁判等手続
ロイに規定する立替えに代え,イに規定する報酬及び実費に相当する額を
支援センターに支払うことを約した者のため,適当な契約弁護士等にイの
代理人が行う事務を取り扱わせること。
ハ弁護士法〔中略〕その他の法律により依頼を受けて裁判所に提出する書
類を作成することを業とすることができる者に対し民事裁判等手続〔中略〕
に必要な書類の作成を依頼して支払うべき報酬及びその作成に必要な実費
の立替えをすること。
ニハに規定する立替えに代え,ハに規定する報酬及び実費に相当する額を
支援センターに支払うことを約した者のため,適当な契約弁護士等にハに
規定する書類を作成する事務を取り扱わせること。
32条(支援センター等の義務等)
1項支援センターは,前条に規定する業務〔判決注:30条1項2号の業務等〕
が,これを必要とする者にとって利用しやすいものとなるよう配慮するととも
に,30条1項2号〔中略〕の各業務については,その統一的な運営体制の整
備及び全国的に均質な遂行の実現に努めなければならない。
34条(業務方法書)
1項支援センターは,業務開始の際,業務方法書を作成し,法務大臣の認可を
受けなければならない。これを変更しようとするときも,同様とする。
2項前項の業務方法書には,次に掲げる事項その他法務省令で定める事項を記
載しなければならない。
一30条1項2号〔中略〕の業務及びこれらに附帯する業務(以下「民事法
律扶助事業」という。)に関し,民事法律扶助事業の実施に係る援助の申込
み及びその審査の方法に関する事項,同項2号イ及びハに規定する立替えに
係る報酬及び実費の基準並びにそれらの償還に関する事項,同号ロ及びニに
規定する報酬及び実費に相当する額の支払に関する事項〔中略〕。この場合
において,当該報酬は,民事法律扶助事業が同項2号に規定する国民等を広
く援助するものであることを考慮した相当な額でなければならない。
3項法務大臣は,1項の認可をしようとするときは,あらかじめ,最高裁判所
及び評価委員会の意見を聴かなければならない。
4項法務大臣は,1項の認可をしたときは,遅滞なく,その旨を最高裁判所に
通知しなければならない。
5項支援センターは,1項の認可を受けたときは,遅滞なく,その業務方法書
を公表しなければならない。
6項法務大臣は,1項の認可をした業務方法書が業務の適正かつ確実な遂行上
不適当となったと認めるときは,その業務方法書を変更すべきことを命ずるこ
とができる。
業務方法書
5条(定義)
この節〔5条ないし70条の9〕において,次の各号に掲げる用語の意義は,
当該各号に定めるところによる。
一代理援助次に掲げる援助をいう。
ア裁判所における民事事件〔中略〕の準備及び追行〔中略〕のために代理
人に支払うべき報酬及びその代理人が行う事務の処理に必要な実費の立替
えをすること。
十六受任者代理援助に係る案件を受任した弁護士・司法書士等をいう。
二十一被援助者第1号から第3号までのいずれかの援助を受けた者をいう。
8条(方法及び対象)
1項代理援助は,次の各号に掲げる方法とし,それぞれ当該各号に定める手続
を対象とする。
一裁判代理援助民事訴訟〔中略〕その他裁判所における民事事件,家事事
件及び行政事件に関する手続
29条(申込みに対する決定)
1項地方事務所長は,〔中略〕申込案件〔援助の申込みに係る案件のこと(2
6条,24条)。〕について〔中略〕,次の各号に掲げる区分に応じ,当該各
号に定める決定をする。
一第9条各号に掲げる要件〔申込者の資力が乏しく,勝訴の見込みがないと
はいえないことなど。〕のいずれにも該当するとき援助を開始する決定
(以下「援助開始決定」という。)
30条(援助開始決定で定める事項)
1項地方事務所長は,援助開始決定をするときは〔中略〕,次の各号に掲げる
事項を定める。
一立替費用の種類及び額又は限度
二被援助者が負担する実費〔中略〕の額
四事件終結までの立替金の償還方法
五次条第1項の規定により償還を猶予する場合はその旨
3項第1項第4号に規定する立替金の償還方法は,援助開始決定後,地方事務
所長が指定した金額を,原則として,自動払込手続その他の方法により割賦で
支払う方式(以下「割賦償還」という。)とする。
31条(援助開始決定における事件進行中の償還の猶予)
1項地方事務所長は,被援助者から償還の猶予を求める申請を受け,被援助者
が次の各号に掲げる要件のいずれかに該当すると認めるときは,援助開始決定
において,事件進行中の期間における立替金の償還を猶予することができる。
一生活保護法による保護を受けているとき。
二前号に該当する者に準ずる程度に生計が困難であるとき。
33条(援助開始決定またはその後の決定内容の変更)
1項地方事務所長は,事件進行中に,被援助者又は受任者等から,援助開始決
定又はその後の決定において定めた事項(立替金の償還方法及び償還の猶予を
除く。)の変更〔中略〕を認めるときは〔中略〕,援助開始決定又はその後の
決定において定めた事項を変更する決定をすることができる。
37条(援助の条件等の遵守)
1項被援助者は,援助開始決定又はその後の決定で定められた立替金の償還方
法,資料の追完その他の援助の条件を遵守しなければならない。
2項被援助者は,援助開始決定又はその後の決定で立替金の割賦償還について
定められたときは,その決定後1か月以内に,自動払込手続その他理事長が別
に定める手続を行わなければならない。
42条(個別契約)
受任者等となるべき者は,第38条第7項〔中略〕の通知〔受任者となるべき
者に選任された旨の通知のこと。〕を受けたときは,速やかに,センター,被援
助者及び当該受任者等となるべき者との間において,理事長が別に定める契約(以
下「個別契約」)を締結するよう協力しなければならない。〔ただし書略〕
48条(金銭の取立て)
2項受任者は,被援助者が事件の相手方等から受け取るべき金銭につき,その
受領方法に関する約定をするときは,特別の事情がない限り,受任者を受領者
としなければならない。
49条(受領金銭)
1項受任者は,事件に関し相手方等から金銭を受領したときは,被援助者に交
付せず,受任者において一時保管するとともに,速やかに,地方事務所長にそ
の事実を書面で報告しなければならない。
3項地方事務所長は,第56条1項及び第2項に規定する終結決定があったと
きは,立替金,報酬金及び追加支出対象となるべき実費を精算して,残金を被
援助者に交付し又は受任者をしてこれを交付させる。ただし,必要と認める事
情があるときは,その決定の前であっても,被援助者に対し,受領金銭の一部
を交付し又は受任者をしてこれを交付させることができる。
56条(終結決定)
1項地方事務所長は,次の各号に掲げる事由があるときは,地方扶助審査委員
の審査に付し,その判断に基づき,援助の終結決定をする。
一事件が終結し,受任者等から終結報告書が提出されたとき。〔ただし書略〕
57条(終結決定時の審査・決定事項)
1項地方事務所長は,終結決定において,事件の内容,終結に至った経緯その
他の事情を勘案して次の各号に掲げる事項を決定し,立替金の総額を確定する。
一報酬金の額,支払条件及び支払方法
二追加支出の額,支払条件及び支払方法
三援助終結後の立替金の償還方法〔括弧書略〕
四第59条の2第1項の規定により立替金の償還を猶予する場合にはその旨
五第59条の3第1項により立替金の全部又は一部の償還を免除する場合は
その旨
2項前項第1号に掲げる支払方法の決定に当たっては,被援助者が事件に関し
相手方等から金銭その他の財産的利益(以下「金銭等」という。)を得た場合
には,報酬金の全部又は一部を,立替えではなく,被援助者が直接受任者に支
払うものとする。ただし,やむを得ない事情があるときは,地方事務所長は,
報酬金の全部又は一部の立替えを決定することができる。
59条(終結決定で援助終結後の立替金の償還方法を定める場合の手続)
1項地方事務所長は,終結決定において援助終結後の立替金の償還方法を定め
るに当たっては,被援助者から生活状況を聴取するとともに,事件の相手方等
からの金銭等の取得状況を確認する。
2項前項に規定する立替金の償還の方法は,割賦償還又は〔中略〕一括して支
払う方式(以下「即時償還」という。)とする。
59条の2(終結決定における償還の猶予)
1項地方事務所長は,被援助者から,立替金の償還の猶予を求める申請を受け
た場合において,被援助者が即時償還又は割賦償還により償還をすることが著
しく困難であると認めるときは,立替金の全部又は一部について,終結決定に
おいて,3年を超えない期間を定めて,償還の猶予を定めることができる。
4項地方事務所長は,猶予期間が満了したときは,被援助者の資力その他の状
況を勘案し,立替金の償還又はその猶予若しくは免除を決定する。
59条の3(終結決定における償還の免除)
1項地方事務所長は,被援助者から,立替金の償還の免除を求める申請を受け
た場合において,被援助者が次の各号に掲げる要件のいずれかに該当すると認
めるときは,理事長の承認を得て,終結決定において,立替金の全部または一
部の償還の免除を定めることができる。ただし,被援助者が相手方等から金銭
等を得,又は得る見込みがあるときは,当該金銭等の価額の100分の25に
相当する金額については,扶養料,医療費その他やむを得ない支出を要するな
ど特別の事情のない限り,その償還の免除を定めることができない。
一生活保護法による保護を受けているとき。
二前号に該当する者に準ずる程度に生計が困難であり,かつ,将来にわたっ
てその資力を回復する見込みに乏しいと認められるとき。
2項被援助者は,前項の規定により償還の免除を求める申請をするときは,地
方事務所長に対し,所定の申請書及び償還の免除を相当とする理由を証する書
面を提出してしなければならない。ただし,病気,障害その他やむを得ない事
情がある場合には,申請書の提出については,理事長が別に定める方法による
ことができる。
3項地方事務所長が第1項の規定により償還を免除する場合においては,第5
9条第1項の規定を準用する。
60条(相手方等から金銭等を得ている場合の償還等)
1項被援助者は,事件により相手方等から金銭等を得ているときは,当該金銭
等から支払うべき報酬金の額を差し引いた残額について,立替金の額に満つる
まで,立替金の償還に充てなければならない。
2項地方事務所長は,前項の規定にかかわらず,当該被援助者に即時に立替金
の全額の償還を求めることが相当でない事情があると認めるときは,当該償還
に充てるべき金額を適宜減額することができる。ただし,扶養料,医療費その
他やむを得ない支出を要するなど特別の事情のない限り,当該償還に充てるべ
き金額は,被援助者が事件の相手方等から得た金銭等の額の100分の25を
下回ることはできない。
64条(終結決定後の立替金の償還方法の変更及び償還の猶予)
1項地方事務所長は,援助終結後に,被援助者から,終結決定又はその後の決
定で定めた立替金の償還方法の変更の申請を受けた場合において,その申請を
相当と認めるときは,償還方法の変更を決定をすることができる。
2項地方事務所長は,被援助者から,終結決定又はその後の決定で定めた立替
金の償還の猶予を求める申請を受けた場合において,被援助者が即時償還又は
割賦償還により償還をすることが著しく困難であると認めるときは,立替金の
全部又は一部について,3年を超えない期間を定めて,償還を猶予する決定を
することができる。
4項被援助者が前三項の申請をする場合における申請の方法については,第5
9条の2第2項の規定を準用する。
65条(終結決定後の償還の免除)
1項地方事務所長は,被援助者から,終結決定において定めた立替金の償還の
免除を求める申請を受けた場合において,被援助者が第59条の3第1項各号
に掲げる要件のいずれかに該当すると認めるときは,理事長の承認を得て,立
替金の全部又は一部の償還の免除を決定することができる。ただし,被援助者
が相手方等から金銭等を得,又は得る見込みがあるときは,当該金銭等の価額
の100分の25に相当する金額については,扶養料,医療費その他やむを得
ない支出を要するなど特別の事情のない限り,その償還の免除を決定すること
ができない。
2項被援助者が前項の規定により償還の免除を求める申請をする場合における
申請の方法については,第59条の3第2項の規定を準用する。

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