弁護士法人ITJ法律事務所

最高裁判例


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平成29年(オ)第1725号請求異議事件
平成30年12月18日第三小法廷決定
主文
高松高等裁判所が平成29年11月30日にした本件を
最高裁判所に移送する旨の決定を取り消す。
理由
1上告裁判所である高松高等裁判所は,平成29年11月30日,要旨以下の
とおり判断して,民訴法324条に基づき,本件を最高裁判所に移送する旨の決定
(以下「本件決定」という。)をした。
債権執行の申立てをした債権者が当該債権執行の手続において配当等により請求
債権の一部について満足を得た後に当該申立てを取り下げた場合,当該申立てに係
る差押えによる時効中断の効力が民法154条により初めから生じなかったことに
なると解するのは相当でない。このような法令解釈に関する意見(以下「本件意
見」という。)は,最高裁平成8年(オ)第2422号同11年9月9日第一小法
廷判決・裁判集民事193号685頁(以下「平成11年判決」という。)と相反
するから,民訴規則203条所定の事由がある。
2民訴法324条は,上告裁判所である高等裁判所は,最高裁判所規則で定め
る事由があるときは,事件を最高裁判所に移送しなければならない旨を定め,民訴
規則203条は,法令等の解釈について当該高等裁判所の意見が最高裁判所等の判
例と相反するときに上記事由があると定めている。そして,民訴法22条1項は,
「確定した移送の裁判は,移送を受けた裁判所を拘束する。」と規定しているもの
の,その趣旨が主として第1審裁判所の間で移送が繰り返されることによる審理の
遅延等を防止することにあることに照らせば,同法324条に基づく高等裁判所の
移送決定が上記「移送の裁判」に含まれると解すべきではない。むしろ,民訴規則
203条の趣旨が,同条所定の事由がある場合に高等裁判所が判決をすると,当該
判決が最高裁判所等の判例と相反することとなるため,事件を最高裁判所に移送さ
せることによって法令解釈の統一を図ろうとするものであることに照らせば,同条
所定の事由の有無についての高等裁判所の判断と最高裁判所の判断が異なる場合に
は,最高裁判所の判断が優先するというべきである。
したがって,最高裁判所は,民訴規則203条所定の事由があるとしてされた民
訴法324条に基づく移送決定について,当該事由がないと認めるときは,これを
取り消すことができると解するのが相当である。
3本件決定についてみると,平成11年判決は,担保不動産競売の申立てをし
た債権者が当該競売の手続において請求債権の一部又は全部の満足を得ることなく
当該申立てを取り下げた場合について判断したものであって,債権執行の申立てを
した債権者が当該債権執行の手続において配当等により請求債権の一部について満
足を得た後に当該申立てを取り下げた場合についての本件意見とは前提を異にして
いるというべきである。したがって,本件意見は平成11年判決と相反するもので
はなく,本件決定に係る民訴規則203条所定の事由はないと認められる。
4よって,本件決定を取り消すこととし,裁判官全員一致の意見で,主文のと
おり決定する。
(裁判長裁判官岡部喜代子裁判官山崎敏充裁判官戸倉三郎裁判官
林景一裁判官宮崎裕子)

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