弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原決定を取り消す。
     相手方の異議申立を却下する。
     本件異議申立費用及び抗告費用は相手方の負担とする。
         理    由
 本件抗告の趣旨並びに理由は、別紙記載のとおりである。
 記録をみるに、釧路地方裁判所執行吏Aが、抗告人の委任に基き、昭和三五年八
月一八日、相手方の<要旨>有体動産に対してなした本件強制執行は、執行文を付与
した公正証書に基くものであること明らかである。然るに、相手方は、右公
正証書が民事訴訟法第五五九条第三号にいわゆる一定の金額の支払を目的とする請
求につき作成されたものではないから、右公正証書に基く強制執行は違法である旨
主張するが、かかる事由は、強制執行の方法について瑕疵あることを指示するもの
ではなく、債務名義の形式的な瑕疵あることを主張することに帰着するから、民事
訴訟法第五六二条にいわゆる執行文の付与に関する異議を以つて主張するは格別、
同法第五四四条にいわゆる強制執行の方法に関する異議の事由となすことはできな
いものと解すべきである。これを実質的にみても、かかる場合、後者の方法に関す
る異議を是認すべきものとなすならば、一箇の公正証書につき、数箇の裁判所に対
して数箇の異つた不服申立を許容する結果を生ずべく、かくては訴訟関係の安定性
を害するから、債務者側の救済方法としてはむしろ執行文付与の異議によつて当該
公正証書の執行力の存否が劃一的に決せられるのが妥当である。それゆえ、本件異
議申立は、抗告理由の判断をまつまでもなく不適法として却下を免れない。
 よつて、民事訴訟法第四一四条、第三八六条、第九六条、第八九条を適用して主
文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 臼居直道 裁判官 安久津武人 裁判官 藤野博雄)

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