弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告人Aが当審において提起した和歌山県田辺市a町bc番d及び同所
e番fの土地につき強制収用を原因として被上告人への所有権移転登記手続を求め
る訴えを却下する。
     上告費用は上告人らの負担とし,前項の訴えに係る費用は上告人Aの負
担とする。
         理    由
 1 上告代理人赤木淳の上告理由書(総論部分)記載の上告理由第一点のうち憲
法29条3項の違反をいう部分について
 (1) 憲法29条3項にいう「正当な補償」とは,その当時の経済状態において
成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって
,必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないことは,当
裁判所の判例(最高裁昭和25年(オ)第98号同28年12月23日大法廷判決・
民集7巻13号1523頁)とするところである。土地収用法71条の規定が憲法
29条3項に違反するかどうかも,この判例の趣旨に従って判断すべきものである。
 (2) 土地の収用に伴う補償は,収用によって土地所有者等が受ける損失に対し
てされるものである(土地収用法68条)ところ,収用されることが最終的に決定
されるのは権利取得裁決によるのであり,その時に補償金の額が具体的に決定され
る(同法48条1項)のであるから,補償金の額は,同裁決の時を基準にして算定
されるべきである。その具体的方法として,同法71条は,事業の認定の告示の時
における相当な価格を近傍類地の取引価格等を考慮して算定した上で,権利取得裁
決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて,権利取得裁決の時における補償
金の額を決定することとしている。
 (3) 事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までには,近傍類地の取引価格
に変動が生ずることがあり,その変動率は必ずしも上記の修正率と一致するとはい
えない。しかしながら,上記の近傍類地の取引価格の変動は,一般的に当該事業に
よる影響を受けたものであると考えられるところ,事業により近傍類地に付加され
ることとなった価値と同等の価値を収用地の所有者等が当然に享受し得る理由はな
いし,事業の影響により生ずる収用地そのものの価値の変動は,起業者に帰属し,
又は起業者が負担すべきものである。また,土地が収用されることが最終的に決定
されるのは権利取得裁決によるのであるが,事業認定が告示されることにより,当
該土地については,任意買収に応じない限り,起業者の申立てにより権利取得裁決
がされて収用されることが確定するのであり,その後は,これが一般の取引の対象
となることはないから,その取引価格が一般の土地と同様に変動するものとはいえ
ない。そして,任意買収においては,近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事
業認定の告示の時における相当な価格を基準として契約が締結されることが予定さ
れているということができる。
 なお,土地収用法は,事業認定の告示があった後は,権利取得裁決がされる前で
あっても,土地所有者等が起業者に対し補償金の支払を請求することができ,請求
を受けた起業者は原則として2月以内に補償金の見積額を支払わなければならない
ものとしている(同法46条の2,46条の4)から,この制度を利用することに
より,所有者が近傍において被収用地と見合う代替地を取得することは可能である。
 これらのことにかんがみれば,土地収用法71条が補償金の額について前記のよ
うに規定したことには,十分な合理性があり,これにより,被収用者は,収用の前
後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を受けられるもの
というべきである。
 (4) 以上のとおりであるから,【要旨】土地収用法71条の規定は憲法29条
3項に違反するものではない。そのように解すべきことは,前記大法廷判決の趣旨
に徴して明らかである。論旨は,採用することができない。
 2 その余の上告理由について
 所論の点に関する原審の認定判断は,原判決挙示の証拠関係に照らし,正当とし
て是認することができ,その過程に所論の違法はない。論旨は,違憲をいう点を含
め,原審の専権に属する証拠の取捨判断,事実の認定を非難するか,又は独自の見
解に基づき若しくは原判決を正解しないでこれを論難するものにすぎず,採用する
ことができない。
 3 上告人Aの主文第2項の訴えについて
 記録によれば,上告人Aは,当審において,平成10年8月31日付け上告の趣
旨訂正の申立書により,被上告人に対し,主文第2項記載の訴えを本件損失補償の
訴えに追加して併合提起したものである。しかしながら,法律審である上告審にお
いては,新たな訴えの提起は許されない。そして,上記訴えの追加的併合は,本件
損失補償請求と同一の訴訟手続内で審判されることを前提とし,専ら併合審判を受
けることを目的としてされたものと認められる。したがって,主文第2項記載の訴
えは,不適法として却下すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
    最高裁判所第三小法廷
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道 裁判官 上田
豊三)

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