弁護士法人ITJ法律事務所

最高裁判例


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平成30年(許)第7号文書提出命令申立てについてした決定に対する抗告審
の取消決定等に対する許可抗告事件
平成31年1月22日第三小法廷決定
主文
原決定を破棄する。
本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
理由
抗告人の抗告理由について
1記録によれば,本件の経緯等は次のとおりである。
(1)本件は,抗告人が,大阪府警察の違法な捜査により傷害事件(以下「本件
傷害事件」という。)の被疑者として逮捕されたなどとして,相手方に対し国家賠
償法1条1項に基づき損害賠償を求める訴訟において,相手方が所持する本件傷害
事件の捜査に関する報告書等の各写し(原決定による訂正後の原々決定別紙文書目
録記載1及び2の各文書。以下,それぞれ「本件文書1」,「本件文書2」とい
う。)並びに上記の逮捕に係る逮捕状請求書,逮捕状請求の疎明資料及び逮捕状の
各写し(同目録記載3の各文書。以下,これらを「本件文書3」といい,本件文書
1及び本件文書2と併せて「本件各文書」という。)について,民訴法220条1
号ないし3号に基づき,文書提出命令の申立て(以下「本件申立て」という。)を
した事件である。
(2)本件傷害事件の捜査は大阪府警察が担当し,抗告人は,平成27年1月に
本件傷害事件の被疑者として逮捕された。その後,抗告人は,本件傷害事件につい
て起訴され,有罪判決を受け,同判決は平成29年12月に確定した。
本件各文書も,その元となる各文書(以下「本件各原本」という。)も,本件傷
害事件の公判に提出されなかった。
2原審は,本件文書1については,民訴法220条1号所定の「当事者が訴訟
において引用した文書を自ら所持するとき」(以下,この場合に係る文書を「引用
文書」という。)に,本件文書2及び本件文書3については,同条3号所定の「挙
証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき」(以下,同号のこ
の部分を「民訴法220条3号後段」といい,この場合に係る文書を「法律関係文
書」という。)に,それぞれ該当するとした上で,次のとおり判断して,本件申立
てを却下すべきものとした。
本件各原本は大阪地方検察庁の検察官が保管しており,刑訴法47条ただし書の
規定によってこれを公にすることを相当と認めることができるか否かを決定する権
限は当該検察官が有していることからすれば,相手方は,本件各原本の写しである
本件各文書を公にすることを相当と認めることができるか否かを決定する権限を有
しないというべきであるから,裁判所は,相手方に対して本件各文書の提出を命ず
ることができない。
3しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
(1)ア刑訴法47条は,その本文において,「訴訟に関する書類は,公判の開
廷前には,これを公にしてはならない。」と定め,そのただし書において,「公益
上の必要その他の事由があって,相当と認められる場合は,この限りでない。」と
定めているところ,同条ただし書の規定によって「訴訟に関する書類」を公にする
ことを相当と認めることができるか否かの判断は,当該「訴訟に関する書類」が原
則として公開禁止とされていることを前提として,これを公にする目的,必要性の
有無,程度,公にすることによる被告人,被疑者及び関係者の名誉,プライバシー
の侵害,捜査や公判に及ぼす不当な影響等の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事
情を総合的に考慮してされるべきものであり,当該「訴訟に関する書類」を保管す
る者の合理的な裁量に委ねられているものと解すべきである。
イそして,民事訴訟の当事者が,民訴法220条3号後段の規定に基づき,刑
訴法47条により原則的に公開が禁止される「訴訟に関する書類」に該当する文書
の提出を求める場合においても,当該文書の保管者の上記裁量的判断は尊重される
べきであるが,当該文書が法律関係文書に該当する場合であって,その保管者が提
出を拒否したことが,民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程
度,当該文書が開示されることによる上記の弊害発生のおそれの有無等の諸般の事
情に照らし,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであると認めら
れるときは,裁判所は,当該文書の提出を命ずることができるものと解するのが相
当である(最高裁平成15年(許)第40号同16年5月25日第三小法廷決定・
民集58巻5号1135頁等参照)。
また,民事訴訟の当事者が,民訴法220条1号の規定に基づき,上記「訴訟に
関する書類」に該当する文書の提出を求める場合においても,引用されたことによ
り当該文書自体が公開されないことによって保護される利益の全てが当然に放棄さ
れたものとはいえないから,上記と同様に解すべきであり,当該文書が引用文書に
該当する場合であって,その保管者が提出を拒否したことが,上記の諸般の事情に
照らし,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであると認められる
ときは,裁判所は,当該文書の提出を命ずることができるものと解するのが相当で
ある。
ウところで,公判に提出されなかった,刑事事件の捜査に関して作成された書
類の原本及びその写しは,いずれも刑訴法47条により原則的に公開が禁止される
「訴訟に関する書類」に該当するところ,同法その他の法令において,当該原本を
保管する者と異なる者が当該写しを保管する場合に,当該原本を保管する者のみが
当該写しについて公にすることを相当と認めることができるか否かの判断をするこ
とができる旨の規定は存しない。そして,当該写しをその捜査を担当した都道府県
警察を置く都道府県が所持する場合には,当該都道府県は,当該警察において保有
する情報等を基に,前記アの諸般の事情を総合的に考慮して,同条ただし書の規定
によって当該写しを公にすることを相当と認めることができるか否かの判断をする
ことができるといえる。したがって,この場合には,上記の判断は,当該都道府県
の合理的な裁量に委ねられているものと解すべきである。
エ以上によれば,刑事事件の捜査に関して作成された書類の写しで,それ自体
もその原本も公判に提出されなかったものを,その捜査を担当した都道府県警察を
置く都道府県が所持し,当該写しについて引用文書又は法律関係文書に該当すると
して文書提出命令の申立てがされた場合においては,当該原本を検察官が保管して
いるときであっても,当該写しが引用文書又は法律関係文書に該当し,かつ,当該
都道府県が当該写しの提出を拒否したことが,前記イの諸般の事情に照らし,その
裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものであると認められるときは,裁判
所は,当該写しの提出を命ずることができるものと解するのが相当である。
(2)上記の見地に立って本件をみると,本件各原本及びその写しである本件各
文書は,本件傷害事件の捜査に関して作成された書類であり,公判に提出されなか
ったものであるところ,本件各文書は,本件傷害事件の捜査を担当した大阪府警察
を置く相手方が所持し,これらについて本件申立てがされているのであるから,本
件各原本を大阪地方検察庁の検察官が保管しているとしても,引用文書又は法律関
係文書に該当するものとされている本件各文書の提出を拒否した相手方の判断が,
前記(1)イの諸般の事情に照らし,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用す
るものであると認められるときは,裁判所は,その提出を命ずることができること
になる。
4以上と異なる原審の判断には,裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原決定は破棄を免れな
い。そして,上述したところによれば,本件各文書の提出を命ずるか否かは,本件
各文書に含まれる個々の文書ごとに,その提出を拒否した相手方の判断が,本件の
本案訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程度や当該文書が開示され
ることによる弊害発生のおそれの有無等の諸般の事情に照らし,その裁量権の範囲
を逸脱し,又はこれを濫用するものであると認められるか否かを検討するなどした
上で決せられるべきものであるから,これらの点について更に審理を尽くさせるた
め,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官山崎敏充裁判官岡部喜代子裁判官戸倉三郎裁判官
林景一裁判官宮崎裕子)

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