弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主   文
     原判決を破棄する。
       本件を高松高等裁判所に差し戻す。
         理    由
上告代理人田中達也,同田中浩三の上告受理申立て理由について
 1 本件は,徳島県(以下「県」という。)の住民である被上告人が,徳島県情
報公開条例(平成元年徳島県条例第5号。平成13年徳島県条例第1号による全部
改正前のもの。以下「本件条例」という。)に基づき,上告人に対し,県議会議員
及び同事務局職員に関する平成7年8月1日から同8年7月31日までの間の,①
 食糧費及び議長交際費に係る支出負担行為決議書兼支出命令書,支出伺,懇談の
相手方など支出に係る一切の書類,② 旅行命令簿兼旅費請求書,支出伺,復命書
など旅費に係る一切の書類の公開を請求したところ,上告人から,県議会は実施機
関ではないという理由で請求を不受理とする旨の処分(以下「本件処分」という。)
を受け,これに対する異議申立てに対して,本件請求に係る公文書は本件条例2条
1項に規定する「公文書」に当たらないという理由で棄却決定を受けたので,本件
処分の取消しを求める事件である。
2 原審は,次のとおり判断して,本件処分を取り消した。
 (1) 県の予算執行の権限は長である上告人に専属し,県議会議長は予算執行
事務を行う権限を有しない。そして,上告人は,予算執行権限のうち県議会議員及
び同事務局職員に関する事項については,徳島県事務決裁規程(昭和42年徳島県
訓令第160号)に基づき,知事部局の事務吏員に併任された県議会事務局の事務
局長等に対し,専決ないし代決権限を与え,これを補助執行させていると解される。
県議会議員又は同事務局職員に関する食糧費,議長交際費及び旅費の予算執行事務
も,上告人が上記併任事務吏員をして補助執行させているものと認められる。
 したがって,本件請求に係る文書は,実施機関である上告人の補助職員が専決な
いし代決権限を行使する上で作成し又は取得した文書であり,かつ,上告人が管理
している文書と認められる。
 (2) 上告人は,本件請求に係る文書は,県議会が徳島県議会事務局規程(昭
和39年徳島県議会規程第1号)24条,徳島県議会事務局文書編さん保存規程(
昭和35年徳島県議会規程第2号)に基づいて県議会事務局の文書保管庫に保管し
ていると主張する。しかし,地方自治法149条8号が長の事務として証書及び公
文書類を保管することを定めていることなどからすると,長は予算執行終了後も事
務処理の過程で作成し又は取得した文書を管理する権限と責任を有するから,本件
請求に係る文書も上告人の補助職員である併任事務吏員が管理している文書という
べきである。上記各規程は,このような解釈を妨げるものではない。
 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
 (1) 本件条例2条1項は,「この条例において『公文書』とは,実施機関の
職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画及び写真(これらを撮影したマイク
ロフィルムを含む。)であって,決裁,供覧等の手続が終了し,実施機関が管理し
ているものをいう。」と規定している。したがって,本件請求に係る文書が本件条
例による公開請求の対象となる公文書に当たるというためには,実施機関の職員が
職務上作成し,又は取得した同項に掲げる文書等(以下「文書等」という。)であ
り,かつ,実施機関が管理しているものであることを要すると解される。そして,
同条3項は,上告人を実施機関としているが,県議会ないし県議会議長を実施機関
としていないから,県議会議員若しくは同事務局職員が職務上作成し,かつ,取得
した文書等,又はこれらの者が管理している文書等は,上記の公開請求の対象とな
る公文書には含まれないものというべきである。
 (2) 本件請求に係る文書は,具体的には「経費支出伺」,「支出負担行為決
議書兼支出命令書」,「旅行命令簿兼旅費請求書」及び「復命書」であるところ,
これらが予算執行に何らかの関連を有する文書であることは,肯認することができ
る。しかしながら,これらの文書の件名からすれば,予算執行事務を行う職員(以
下「予算執行職員」という。)が作成したことが明らかなのは,「支出負担行為決
議書兼支出命令書」のみであり,その余の文書は,予算執行の前提となる県議会議
長の交際事務,県議会議員や同事務局職員の旅行命令等の決裁,報告等であって,
予算執行以外の事務のために作成したものであるか,又は予算執行の前提として作
成するものではあっても,予算執行職員が自ら作成したものでない可能性のある文
書と考えられる。また,一般に,「旅費請求書」は予算執行職員が取得するもので
あるから,「旅行命令簿兼旅費請求書」は予算執行職員が取得した文書である可能
性が高いが,「経費支出伺」及び「復命書」は,予算執行職員が当然に取得する文
書であるとは考え難い。ところが,原審は,これらの文書が予算執行職員が作成し
,又は取得したものであることを肯認するに足りる事実を何ら確定しておらず,本
件記録を精査しても,これを見いだすことはできない。
 (3) 徳島県会計規則(昭和39年徳島県規則第23号)48条1項は,収入
及び支出の証拠書類の保存を規定しているが,保存の主体については規定しておら
ず,上告人の主張によれば,上記各文書は,予算執行終了後は,県議会が徳島県議
会事務局文書編さん保存規程等に基づいて,県議会の他の文書と同様に編さんして
県議会事務局の文書保管庫に保存しているというのである。そうすると,仮に上記
各文書が予算執行職員の作成し,又は取得した文書であるとしても,そのことから
,その保存の根拠規定,保存に至る手続,保存の方法等の実態について検討しない
まま,直ちに予算執行職員の管理する文書であるということはできない。そして,
これらの点について,原審は,何ら審理判断しないまま,前記の結論を導いている
ものである。
 地方自治法149条8号は,証書及び公文書類の「保管」を普通地方公共団体の
長の担任事務としているが,同号は当該地方公共団体のすべての証書及び公文書類
の保管の総括的な責任と権限を有する者が長であることを明らかにしたものにすぎ
ない。これに対し,【要旨1】本件条例2条1項にいう「管理」は,同条3項に掲
げられた各実施機関がその主体であると構成されていることからみても,上記の「
保管」と異なり,当該公文書を現実に支配,管理していることを意味するものと解
すべきである。したがって,地方自治法149条8号を根拠に,県における保存の
実態等を考慮しないまま,上記各文書を上告人が管理するものと断定することは,
できないものというほかはない。
 (4) 【要旨2】以上によれば,県の予算執行事務の権限が上告人に属するこ
とから直ちに本件請求に係る文書はすべて本件条例により公開請求をすることがで
きる公文書に当たるとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法
令の違反があり,原判決は破棄を免れない。そして,本件については,上記各文書
を作成し,取得し,又は管理しているのが上告人ないしその補助職員であるか否か
につき更に審理の上,本件条例により公開請求をすることができる公文書に当たる
か否かを判断すべきであるから,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 亀山継夫 裁判官 河合伸一 裁判官 福田 博 裁判官 北川
弘治 裁判官 梶谷 玄)

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