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主文
1本件控訴をいずれも棄却する。
2控訴費用は,控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴の趣旨
(1)原判決を取り消す。
(2)被控訴人独立行政法人理化学研究所が,平成18年4月24日開札のP
ET用小型サイクロトロン入札手続において,被控訴人a株式会社を落札者
と定めた処分を取り消す。
(3)被控訴人独立行政法人理化学研究所が,平成18年4月24日開札のP
ET用小型サイクロトロン入札手続において,被控訴人a株式会社を落札者
と定めた処分に基づき,被控訴人独立行政法人理化学研究所,被控訴人a株
式会社及び被控訴人b株式会社との間で締結されたPET用小型サイクロト
ロン二式の納入に関する契約(賃貸借契約)が無効であることを確認する。
(4)控訴人と被控訴人らとの間において,控訴人が,被控訴人独立行政法人
理化学研究所の行った平成18年4月24日開札のPET用小型サイクロト
ロン入札手続による落札者たる地位を有することを確認する。
(5)訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
2控訴の趣旨に対する答弁
主文同旨
第2事案の概要
1本件は,被控訴人独立行政法人理化学研究所(以下「被控訴人理化学研」と
いう。)がポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)用小型サイクロ
トロンの調達を目的として行った一般競争入札(以下「本件入札」という。)
において,被控訴人a株式会社(以下「被控訴人a」という。)を落札者と決
定したところ(以下「本件落札決定」という。),本件入札に参加していた控
訴人が,被控訴人aは競争参加者として必要な資格を有していなかったと主張
して,被控訴人理化学研に対し,本件落札決定が行政処分であることを前提に
その取消を求める抗告訴訟を提起すると共に,被控訴人理化学研,被控訴人a
及び被控訴人b株式会社(以下「被控訴人b」という。)ら三者間で締結され
たPET用小型サイクロトロンの納入に関する契約(以下「本件納入契約」と
いう。)の無効確認と控訴人と被控訴人らの間において,控訴人が落札者たる
地位を有することの確認を求める訴訟を行政事件訴訟法4条の公法上の法律関
係に関する確認の訴えとして追加的併合(同法19条)として提起した事案で
あるが,原判決は,控訴人の本件訴えをいずれも不適法として却下した。そこ
で,控訴人がこれを不服として本件控訴を申し立てた。
2前提事実(争いのない事実等),争点及びこれに対する当事者の主張は,以
下のとおり控訴人の当審における補充主張を付加するほかは原判決の「事実及
び理由」中の第2の2ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。
(控訴人の当審における補充主張)
原判決は,乙14号証を根拠に控訴人の入札金額は入札予定価格を上回るも
のであり,入札手続において落札者となりうる要件を満たしていないとするが,
乙14号証は原審の終局間際に提出されて信用性のないものである。また,上
記予定価格の決定は著しく不公正であり無効である。すなわち,被控訴人理化
学研は,サイクロトロン等の特殊機器を使用し,分子イメージング研究プログ
ラムの創薬に関する研究を実施して放射性物質を取り扱っていることから,R
I管理区域という特殊区域のレイアウトに関するノウハウが重要であるのにそ
の知識を有していなかったことから,平成17年夏ころより,控訴人からアド
ヴァイスを受けてきた。その中で被控訴人理化学研は,控訴人に対し,PET
用小型サイクロトロンの納入候補者は控訴人しかいないなどと仄めかし,平成
18年初旬には,控訴人からPET用小型サイクロトロンの見積書を入手した
のである。その上で,これを下回る価格を予定価格として控訴人を排除したも
のであり,極めて不公正な予定価格決定方法を採ったもので,その決定は無効
である。
仮に,控訴人の入札価格が予定価格を上回っているとの理由から控訴人が落
札者でないとしても,被控訴人aは,橋梁談合に関与して,本件入札手続の欠
格事由に該当することから同社も落札者たり得ず,本件入札手続は落札者がい
なかったことになるから,再入札が必要となり,控訴人がこれを求めるために
も本件納入契約の無効を確認する利益がある。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も控訴人の本件訴えはいずれも却下すべきものと判断する。その理
由は,次のとおりである。
2本件入札手続の経緯,落札決定,その後の本件納入契約の締結経過について
は引用にかかる原判決の「前提事実」に記載のとおりであり,上記「前提事
実」に証拠(甲1,乙1,6,12ないし15)及び弁論の全趣旨によれば,
被控訴人理化学研は,売買,貸借,請負その他の契約を締結する場合は,公告
して申し込みをさせることにより競争入札に付することを原則として(会計法
29条の3第1項参照),契約担当者等はあらかじめ当該契約にかかる予定価
格を設定しなければならないとされており,本件入札においてもその入札説明
書(甲第1号証)において,入札は契約の申し込みとして扱うこと,予定価格
の制限の範囲内で最低価格をもって有効な入札者を落札者とすること,落札者
が期日までに契約書の取り交わしをしないときは落札を取り消すこと,落札者
は調達物品の納入に関する契約書を締結するものと定めていること,調達物品
(PET用小型サイクロトロン)等の本件入札予定価格は417万3411円
とされたこと,入札者は控訴人と被控訴人aの2社であったが,控訴人の入札
価格は448万円であったのに対し被控訴人aは,入札予定金額以下であった
ことから同社が落札者とされたこと,落札決定を受けた被控訴人aは,調達物
品を被控訴人bに売却し,被控訴人bがこれを被控訴人理化学研に賃貸する旨
本件納入契約を締結し,当該物品は平成19年3月13日には納入されたこと
が認められる。
3争点ア(落札決定の行政処分性)について
前記2の事実によれば,本件において,落札者が被控訴人理化学研らと締結
することになるPET用小型サイクロトロン納入に関する契約(本件納入契
約)は,一般の私人間の契約と同様に対等当事者間の法律関係である私法上の
行為であるということができ,本件落札決定により決定された落札者は,被控
訴人理化学研と上記契約を締結すべき義務を負うことになるにすぎないと認め
るのが相当であるから,本件落札決定により被控訴人aは,契約当事者となり
うる地位,すなわち予約当事者たる地位に立たせられるにすぎないものという
べきである。もとより落札者である被控訴人aは本件納入契約を締結すべき義
務を負うに至るが,それは申し込み(入札)に対する承諾(落札決定)があっ
たことによる契約上の効果によるものにすぎない。
そうすると,本件において落札者が被控訴人理化学研と締結するPET用小
型サイクロトロン納入に関する契約は,一般の私人間の契約と同様に対等当事
者間の法律関係である私法上の行為であり,相手方の意思にかかわらず,一方
的に決定し,相手方にその受忍を強制する性質を有するものではなく,いわば
その準備的行為にすぎない本件落札決定は,法の認める優越的な意思の発動と
して行われるものと解することはできないものというべきである。
この点,控訴人は,入札者がある場合に,独立行政法人たる被控訴人理化学
研は,法令上の審査権限を行使し,当該入札者を落札者とするか否かを決定す
るのであって,入札者と対等な関係で協議するのではないから,申請認諾・拒
否処分と同様に,本件落札決定には処分性があると主張する。
そこで検討するに,国の会計について定めた会計法29条の3第1項は,契
約担当官等は,売買,貸借,請負その他の契約を締結する場合においては,原
則として,公告して申し込みをさせることにより競争に付さなければならない
旨定めているが,これは国の締結する契約については機会均等の理念にもっと
も適合して公正であり,かつ価格の有利性を確保しうるという観点から一般競
争入札の方法によることを原則としたものであり,独立行政法人である被控訴
人理化学研においても,独立行政法人通則法28条,独立行政法人理化学研究
所に関する省令1条8号に基づく独立行政法人理化学研究所業務方法書第19
条(乙第12号証)において,契約を締結する場合は公告して申込みをさせる
ことにより競争に付するものとすることを原則とする旨,独立行政法人通則法
49条を受けて定められた会計規程15条,その細則である契約事務取扱細則
(乙第13号証)において一般競争契約について,競争参加者資格に関する公
示(乙第5号証)などについてそれぞれ定めている。
したがって,入札者のうちのいずれを落札者とするかは,入札者の意見と関
係なく予め定められた要件及び手続に従って決定されることになり,控訴人ら
契約締結希望者は,入札基準についてあらかじめ了解する者のみが入札に応じ
るということになるけれども,それは,通常の私人間の契約締結にあたり,自
由競争の範囲内で最良の条件を提示する相手を契約相手に選定することと変わ
りがない。したがって,控訴人の主張は採用できない。また,控訴人は被控訴
人理化学研の上記審査権限には契約条件のみならず過去の談合の有無など実質
的資格要件についての審査も含まれるから本件落札決定は行政処分に該当する
と主張するが,そもそも本件落札決定は入札者の申し込みに対する承諾にすぎ
ないのであって,入札有資格者であるとする処分を含むものではないというべ
きである。
以上によれば,本件落札決定は,取消訴訟の対象たる行政処分ということは
できないから,その余の争点について判断するまでもなく,本件落札決定の取
消を求める訴えは不適法であるといわざるをえない。
4争点ウ(「公法上」の当事者訴訟にあたるか)について
原判決の「事実及び理由」中の第3の2(原判決21頁20行目から同22
頁4行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。
そうすると,控訴の趣旨3項及び4項にかかる訴えは,公法上の法律関係に
関する訴え(行政事件訴訟法4条)としては不適法である。
5以下,本件の経緯に鑑み,控訴の趣旨3項及び4項が私法上の法律関係の確
認の訴えを含む余地があるとした場合も含めて争点エ(確認の利益)について
判断する。確認の訴えは,現に控訴人の有する権利または法律的地位に危険ま
たは不安が存在し、これを除去するために被控訴人に対し確認判決を得ること
が必要かつ適切な場合に限り、許されるものであるところ,控訴の趣旨3項の
訴え(本件納入契約無効確認)は,控訴人と被控訴人らとの間で,被控訴人ら
間の本件納入契約(賃貸借契約)の無効確認を求めるものであるが,同契約は
控訴人の権利義務に何らかの影響を及ぼしているものでもなく,また,仮にそ
の無効を確認したとしても,被控訴人理化学研と被控訴人a及び被控訴人bと
の間の本件納入契約の効力には影響がないことは明らかであるし,それによっ
て本件落札決定が影響を受けるものでもなく,控訴人が被控訴人理化学研に対
して本件納入契約の締結を求めうることになるものでもないことも明らかであ
るから,控訴人において上記無効確認を求める法律上の利益は認めがたい。
次に,控訴の趣旨4の訴え(落札者たる地位の確認)について見るに,控訴
人の主張によれば,控訴人は有効な落札者であるというのであるから,そうで
あれば,端的に被控訴人理化学研に対し,本契約たる本件納入契約の承諾の意
思表示の履行を求める給付請求訴訟を提起することが可能であり,その方がよ
り有効適切な法的手段であるということができるから,本件のような落札者た
る地位の確認を求める訴えの利益を欠くものというべきである。
なお,前記2認定事実のとおり本件入札における入札者は被控訴人aと控訴
人の2社であったが,控訴人の入札価格は予定価格の範囲を超えるものであっ
たのであるから,控訴人は被控訴人aの入札資格の有無に拘わらず,本件入札
において落札者となる可能性はなかったものといわざるを得ない(したがって,
本件訴えに確認の利益があるとしても請求棄却を免れない。)。
この点,控訴人は,乙第14号証は,①原審の終盤段階で提出されたもので
あり,被控訴人理化学研は,「本件入札手続は平成18年4月24日に開札さ
れ,同日,被控訴人理化学研は,控訴人と被控訴人aから適切な入札があった
とし」という主張につき,異議をとどめることなく認めていた,②本件の対象
物件であるPET用小型サイクロトロンは,その定価だけでも少なくとも13
億円から14億円もするのに,これを10年間も賃貸するのであり,諸費用を
含めると417万3411円との数字は入札者に赤字を強いるもので,予定価
格として不自然である,③入札実務としては開札の際に予定価格を超えた金額
を提示した者がいた場合には,その旨の指摘がなされるはずであるのに,本件
では,そのような指摘がなされなかったものであるから,同号証は信用できな
いと主張するが,本件訴訟においては予定価格が当初から争点になっていたわ
けではないし,また,予定価格が入札者に赤字を強いる金額であることを認め
るに足りる証拠もなく(控訴人の入札金額も予定価格と大きくかけ離れた金額
でもないし,被控訴人aは予定価格の範囲内で入札している。),また,仮に
開札の際に指摘がされなかったからといって予定価格が上記金額と異なってい
たと推認することもできないから,控訴人の主張は採用できない。乙14,1
5号証によれば,本件予定価格は417万3411円であったと認めることが
できるというべきである。
さらに,控訴人は,被控訴人理化学研が控訴人からPET用小型サイクロト
ロンの見積書を事前に入手した上で,これを下回る予定価格を設定し,控訴人
を排除するという極めて不公正な予定価格決定を設定したものであり,このよ
うな予定価格の決定は無効である旨主張するが,控訴人の落札を妨害するため
に本件予定価格が決定されたことを窺わしめる証拠はないから,控訴人の主張
は採用できない。
以上によれば,本件落札者たる地位の確認の訴えも確認の利益を欠くものと
いうべきである。
6以上によれば,控訴人の本件訴えはいずれも不適法であり,却下すべきもの
であるから,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴を棄却することとし,
主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第16民事部
裁判長裁判官宗宮英俊
裁判官坂井満
裁判官黒津英明

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