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平成20年3月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成19年(ワ)第12631号特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成20年2月13日
判決
横浜市緑区〈以下略〉
原告加藤電機株式会社
訴訟代理人弁護士片岡義夫
同佐藤秀樹
訴訟代理人弁理士伊藤捷雄
大阪府東大阪市〈以下略〉
被告下西技研工業株式会社
訴訟代理人弁護士長谷則彦
補佐人弁理士鈴木征四郎
主文
1被告は,別紙物件目録(2)記載の複写機の原稿圧着板開閉装置を製造し,譲
渡し,輸入し,又は譲渡の申出をしてはならない。
2被告は,前項記載の製品及びその製品の製造に供した金型を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,78万4524円及びこれに対する平成19年6月1
3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5訴訟費用はこれを10分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担
とする。
事実及び理由
第1請求
1被告は,別紙物件目録(1)ないし(4)記載の複写機の原稿圧着板開閉装置を製
造し,譲渡し,輸入し,又は譲渡の申出をしてはならない。
2被告は,前項記載の製品及びその製品の製造に供した金型を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,1240万1251円及びこれに対する平成19年6
月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,原告が被告に対し,被告製品が原告の有する特許権又は実用新案権を侵
害するとして,特許法100条及び実用新案法27条に基づく被告製品の輸入,譲
渡等の差止め並びに被告製品及びその金型の廃棄,並びに不法行為に基づく損害賠
償を求めたのに対し,被告が,構成要件の非充足及び特許権等の無効を主張して争
った事案である。
1前提事実
(1)当事者
ア原告は,複写機の原稿圧着板開閉装置をはじめとし,携帯電話機,ノート
パソコン,ラップトップパソコン等の開閉装置(ヒンジ)の製造販売を業とする株式
会社である。
イ被告は,複写機の原稿圧着板開閉装置をはじめとする各種ヒンジ,磁気製
品,電磁波対策商品の製造販売を業とする株式会社である。
(以上,争いのない事実)
(2)本件特許権等
ア本件特許権
(ア)本件特許権の概要
原告は,以下の特許権を有している。以下,この特許権を「本件特許権,その」
請求項1の発明を「本件特許発明1,その請求項3の発明を「本件特許発明2」」
といい,本件特許権に係る明細書及び図面を「本件特許権明細書」といい,別紙と
してその特許公報(甲4)を添付する。
特許番号第3899213号
発明の名称原稿圧着板開閉装置
出願日平成11年11月30日
登録日平成19年1月5日
特許請求の範囲【請求項1】及び【請求項3】
本件特許権明細書の該当欄に記載のとおり
(イ)本件特許発明1の構成要件の分説
A1取付ベースとこの取付ベースの両側部より立ち上げた両側板とこの両側板
の各一側部に設けた湾曲凹部とを有し,前記取付ベースを装置本体側へ取り付けた
取付部材と,
A2背板とこの背板より折り曲げられた両側板と頂板及び前記両側板より内側
へ折り曲げた抱持部とを有し,この両側板の一端部側を前記取付部材の両側板へヒ
ンジピンを介して回動可能に取り付けた原稿圧着板の支持部材と,
A3この支持部材内部に前記取付部材側に向けて摺動可能に収装されたカムス
ライダーと,
A4このカムスライダーの端部に設けたカム部と接し前記取付部材の両側板間
に軸架された受圧ピンと,
A5この受圧ピンと前記カムスライダーとの間に塗布させた潤滑用グリスと,
A6前記カムスライダーと前記支持部材の自由端側との間に弾設収容されたコ
イルスプリングとで構成し,
A7前記原稿圧着板を閉じた時に前記支持部材の前記抱持部の前記受圧ピン側
が前記湾曲凹部内へ嵌入するように構成することにより,
A8前記原稿圧着板をコンタクトガラス上への原稿の載置角度まで開いた時に
前記受圧ピンが前記コンタクトガラス側へ極力露出しないように成したことを特徴
とする,
A9原稿圧着板開閉装置。
(ウ)本件特許発明2の構成要件の分説
B1少なくとも取付ベースとこの取付ベースの両側より立ち上げた両側板とこ
の両側板の各一側部に設けた湾曲凹部とを有し,前記取付ベースを装置本体側へ取
り付ける取付部材と,
B2少なくとも背板とこの背板より折り曲げた両側板とこの両側板より内側へ
折り曲げた抱持部とを有し,この両側板を前記取付部材の両側板へヒンジピンを介
して回動可能に連結した支持部材と,
B3原稿圧着板を取り付ける背板とこの背板より折り曲げた両側板と頂板を有
し,前記支持部材の両側板の自由端側に連結ピンを介して該支持部材とは異なる方
向へその両側板を回動可能となるように軸着したリフト部材と,
B4このリフト部材の前記支持部材に対する軸着部側であって前記リフト部材
の回動時に前記連結ピンを支点に旋回する位置の両側板間に取り付けられた作動部
材と,
B5前記取付部材側の両側板間にヒンジピンとは異なる位置に軸架させた受圧
ピンと,
B6この受圧ピンにカム部を当接させて前記支持部材内部に摺動可能に収装さ
れたカムスライダーと,
B7このカムスライダーと前記受圧ピンとの間に塗布させた潤滑用グリスと,
B8前記支持部材内の自由端側に前記作動部材に当接させて摺動可能に収装さ
れたスプリング受けカム部材と,
B9前記カムスライダーと前記スプリング受けカム部材との間に弾設させるこ
とにより,前記リフト部材を支持部材と重なり合う方向へ回動附勢させつつ前記支
持部材を少なくとも原稿圧着板の開成方向へ附勢させるコイルスプリングとで構成
し,
B10前記原稿圧着板を閉じた時に前記支持部材の前記抱持部の前記受圧ピン
側が前記湾曲凹部内へ嵌入するように構成することにより,
B11前記原稿圧着板をコンタクトガラス上への原稿の載置角度まで開いた時
に前記受圧ピンが前記コンタクトガラス側へ極力露出しないように成したことを特
徴とする,
B12原稿圧着板開閉装置。
(以上,争いのない事実)
イ本件実用新案権1
(ア)本件実用新案権1の概要
原告は,以下の実用新案権を有している。以下,この実用新案権を「本件実用新
案権1,その請求項1の考案を「本件考案1の(1),その請求項2の考案を「本」」
件考案1の(2)」といい,本件実用新案権1に係る明細書及び図面を「本件実用新
案権1明細書」といい,別紙としてその登録公報(甲5)を添付する。
実用新案登録番号第2598506号
考案の名称原稿圧着板開閉装置
出願日平成5年4月27日
登録日平成11年6月11日
実用新案登録請求の範囲【請求項1】及び【請求項2】
本件実用新案権1明細書の該当欄に記載のとおり
(イ)本件考案1の(1)の構成要件の分説
C1装置本体側に取り付けられる取付部材と,
C2この取付部材の両側板に回動可能にその両側板の一端部側をヒンジピンを
介して軸着させた支持部材と,
C3この支持部材と重なり合い該支持部材の自由端側の両側板へ該支持部材と
は反対方向へ回動するようにその両側板を支持ピンを介して軸着させたところの原
稿圧着板の後部を取り付けるリフト部材と,
C4このリフト部材の前記支持部材に対する軸着部側であって前記リフト部材
の回動時に前記支持ピンを支点に旋回する位置の両側板間に取り付けられた作動部
材と,
C5この作動部材と前記取付部材側の前記支持部材の軸着位置とは異なる位置
との間に前記支持部材を前記原稿圧着板の開成方向へ附勢させ,かつ該原稿圧着板
を取り付けた前記リフト部材を自己の弾力のみで前記支持部材と重なり合う方向へ
附勢保持するように弾設した圧縮コイルスプリングとで構成すると共に,
C6前記支持部材の両側板には前記リフト部材が前記支持ピンを支点として回
動する時に,前記作動部材の旋回を許容する切欠を設けたことを特徴とする,
C7原稿圧着板開閉装置。
(ウ)本件考案1の(2)の構成要件の分説
D1前記圧縮スプリングを前記リフト部材側と取付部材側との間に弾設するに
当り,前記圧縮コイルスプリングの両端部に支持部材に摺動自在に拘持される一対
のスライダーを取り付け,
D2このスライダーの一方を前記リフト部材の前記作動部材側へ当接させ,他
方を取付部材に固着したカム部材へ当接させたことを特徴とする,
D3請求項1記載の原稿圧着板開閉装置。
(以上,争いのない事実)
ウ本件実用新案権2
(ア)本件実用新案権2の概要
原告は,以下の実用新案権を有している。以下,この実用新案権を「本件実用新
案権2,その請求項1の考案を「本件考案2」といい,本件実用新案権2に係る」
明細書及び図面を「本件実用新案権2明細書」といい,別紙としてその登録公報
(甲6)を添付する。
実用新案登録番号第2582475号
考案の名称原稿圧着板開閉装置
出願日平成5年7月30日
登録日平成10年7月24日
実用新案登録請求の範囲【請求項1】
本件実用新案権2明細書の該当欄に記載のとおり
(イ)構成要件の分説
E1装置本体側に取り付けられる取付部材と,
E2この取付部材に回動自在に端部を軸着させた支持部材と,
E3この支持部材と前記取付部材との間に前記支持部材を一方向へ回動附勢さ
せるために弾設したスプリングと,
E4前記支持部材の自由端側に回動自在に軸着させたところの原稿圧着板の後
部を取り付けるリフト部材と,
E5このリフト部材と前記支持部材との間に設けた前記リフト部材の高さを調
節する調節手段とで構成したことを特徴とする,
E6原稿圧着板開閉装置。
(以上,争いのない事実)
(3)被告製品
ア被告製品の販売
(ア)被告製品(1)及び(2)
a被告製品(1)及び(2)の販売
被告は,業として,平成18年4月から平成19年10月末日まで,別紙物件目
録(1)記載の製品(以下「被告製品(1)」といい,他の製品についても同様に略称す
る。)及び被告製品(2)を輸入し,株式会社リコー(以下「リコー」という。)に対し
て販売した。
b被告製品(2)の販売個数
被告製品(2)の上記期間における販売個数は,5万0666個である。
c販売期間中の為替レート
上記期間における為替レートは,平均して1米国ドル117円である。
(以上,争いのない事実)
(イ)被告製品(3)及び(4)
被告は,業として,平成17年5月から平成19年10月末日まで,被告製品
(3)及び(4)を輸入し,販売した。
(以上,争いのない事実)
イ各被告製品と各権利との対応関係
各被告製品と原告が侵害の根拠として主張する特許権等との対応関係は,次のと
おりである。
被告製品(1)本件特許発明1
被告製品(2)本件特許発明2,本件考案1の(1)及び(2)
被告製品(3)及び(4)本件特許発明2,本件考案2
ウ構成要件の一部充足
(ア)本件特許発明1
被告製品(1)は,構成要件A1∼A3,A5∼A7及びA9を充足する。
(イ)本件特許発明2
a被告製品(2)
被告製品(2)は,構成要件B1∼B4,B6∼B10及びB12を充足する。
b被告製品(3)及び(4)
被告製品(3)及び(4)は,構成要件B1∼B4,B6∼B10及びB12を充足す
る。
(ウ)本件考案1の(1)
被告製品(2)は,構成要件C1∼C3,C5及びC7を充足する。
(エ)本件考案1の(2)
a被告製品(2)は,構成要件D1を充足する。
b被告製品(2)は,構成要件D2のうち,作動部材以外の点を充足する。
c被告製品(2)は,構成要件D3のうち,構成要件C4及びC6以外の部分
を充足する。
(オ)本件考案2
被告製品(3)及び(4)は,構成要件E1∼E4及びE6を充足する。
(以上,争いのない事実)
(4)本件実用新案権1の出願経過
ア本件当初明細書の記載事項
本件実用新案権1の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「本件当初明
細書」という。)の記載事項は,別紙本件当初明細書(乙3。実開平6−82649
号)のとおりである。
イ本件補正
原告は,平成11年1月18日,別紙手続補正書(乙4)のとおり「作動ピン」,
を「作動部材」と「軸架された」を「取り付けられた」と補正した(以下,これ,
らの補正を「本件補正」という。)。
2争点
(1)構成要件の充足
ア被告製品(1)の構成要件A4の充足
イ被告製品(1)の構成要件A8の充足
ウ被告製品(2)の構成要件B5の充足
エ被告製品(2)の構成要件B11の充足
オ被告製品(3)及び(4)の構成要件B5の充足
カ被告製品(3)及び(4)の構成要件B11の充足
キ被告製品(2)の構成要件C4及び構成要件D3のうち構成要件C4の部分の
充足
ク被告製品(2)の構成要件C6の充足及び構成要件D3のうち構成要件C6の
部分の充足
ケ被告製品(2)の構成要件D2のうち作動部材の点の充足
コ被告製品(3)及び(4)の構成要件E5の充足
(2)本件実用新案権1の無効
ア本件考案1の(1)の新規性又は進歩性欠如
イ本件考案1の(2)の新規性又は進歩性欠如
ウ本件考案1の(1)及び(2)の要旨変更による新規性欠如
(3)損害の額
3争点(1)(構成要件の充足)についての当事者の主張
(1)被告製品(1)の構成要件A4の充足
ア原告の主張
(ア)クレーム解釈
構成要件A4は「受圧ピン」の形状を断面円形と限定していないから,断面円,
形以外の形状のものを含む。
(イ)被告製品(1)
a被告製品(1)は,受圧部材13を有する。
b受圧部材13は,取付部材4の側板4b,4b間に取付ピン13bを介し
て取り付けられている。
c受圧部材13には,取付ピン13bの外周を覆って,受圧ピン部13aが
設けられている。
dカムスライダー7は,その一端側を受圧ピン部13aに当接させている。
(ウ)充足
よって,被告製品(1)は,構成要件A4を充足する。
イ被告の主張
(ア)クレーム解釈
原告の主張(ア)は否認する。
受圧「ピン」は,断面円形の形状を意味する。
(イ)被告製品(1)
a認否
同(イ)は認める。
b形状の相違
受圧部材13は下側面がなく,断面円形の形状をしていない。
c取付の相違
受圧部材13は,取付ピン13bに取り付けられるとともに,取付部材4の側板
4b,4bに回転可能に軸として架け渡されているヒンジピン6に取り付けられ,
さらに,取付部材4の頂板に接している。
d作用の相違
受圧部材13は,下側面がないだけでなく,回転しないので,潤滑用グリスが下
側まで及ぶおそれがなく,汚れ防止の必要性が低い。
また,受圧部材13は,熱伝導性の低いプラスチック製であるので,潤滑用グリ
スが流動化するおそれが少なく,汚れ防止の必要性が低い。
さらに,受圧部材13が受ける押圧力は,取付ピン13bだけでなく,ヒンジピ
ン6及び取付部材4の頂板でも受けるようになっている。
(ウ)充足
同(ウ)は否認する。
(2)被告製品(1)の構成要件A8の充足
ア原告の主張
(ア)クレーム解釈
構成要件A8の「極力露出しないように成した」とは,可能な限りという意味で
あり,全部露出しないようにすることまでは要しない。
(イ)被告製品(1)
,被告製品(1)は,抱持部5c,5cを有し,抱持部5c,5cは,湾曲凹部4c
4cへ嵌入できる構成になっている。
(ウ)充足
よって,被告製品(1)は,構成要件A8を充足する。
イ被告の主張
(ア)クレーム解釈
原告の主張(ア)は否認する。
(イ)被告製品(1)
a同(イ)は認める。
b抱持部5c,5cの折り曲げ幅は,極めて狭い。特に受圧部材13側にお
いて,左右の抱持部5c,5c間は大幅に開放される構造になっている。
したがって,原稿圧着版2を原稿の載置角度まで開いた時に,受圧部材13がコ
ンタクトガラス16側へ露出しないように成していない。
(ウ)充足
同(ウ)は否認する。
(3)被告製品(2)の構成要件B5の充足
ア原告の主張
(ア)クレーム解釈
構成要件B5は「受圧ピン」の形状を断面円形と限定していないから,断面円,
形以外の形状のものを含む。
(イ)被告製品(1)
a被告製品(1)は,受圧部材13を有する。
b受圧部材13は,ヒンジピン6とは異なる位置で,取付部材4の側板4b,
4b間に取付ピン13bを介して取り付けられている。
c受圧部材13には,取付ピン13bの外周を覆って,受圧ピン部13aが
設けられている。
(ウ)充足
よって,被告製品(2)は,構成要件B5を充足する。
イ被告の主張
(ア)クレーム解釈
原告の主張(ア)は否認する。
受圧「ピン」は,断面円形の形状を意味する。
(イ)被告製品(2)
a認否
同(イ)は認める。
b被告の主張
前記(1)イ(イ)bないしdと同旨
(ウ)充足
同(ウ)は否認する。
(4)被告製品(2)の構成要件B11の充足
ア原告の主張
(ア)クレーム解釈
構成要件B11の「極力露出しないように成した」とは,可能な限りという意味
であり,全部露出しないようにすることまでは要しない。
(イ)被告製品(2)
,被告製品(2)は,抱持部5c,5cを有し,抱持部5c,5cは,湾曲凹部4c
4cへ嵌入できる構成になっている。
(ウ)充足
よって,被告製品(2)は,構成要件B11を充足する。
イ被告の主張
(ア)クレーム解釈
原告の主張(ア)は否認する。
(イ)被告製品(2)
a同(イ)は認める。
b抱持部5c,5cの折り曲げ幅は,極めて狭い。特に受圧部材13側にお
いて,左右の抱持部5c,5c間は大幅に開放される構造になっている。
したがって,原稿圧着版2を原稿の載置角度まで開いた時に,受圧部材13がコ
ンタクトガラス16側へ露出しないように成していない。
(ウ)充足
同(ウ)は否認する。
(5)被告製品(3)及び(4)の構成要件B5の充足
ア原告の主張
(ア)クレーム解釈
構成要件B5は「受圧ピン」の形状を断面円形と限定していないから,断面円,
形以外の形状のものを含む。
(イ)被告製品(3)及び(4)
a被告製品(3)及び(4)は,受圧部材13を有する。
b受圧部材13は,ヒンジピン6とは異なる位置で,取付部材4の側板4b,
4b間に取付ピン13bを介して取り付けられている。
c受圧部材13には,取付ピン13bの外周を覆って,受圧ピン部13aが
設けられている。
(ウ)充足
よって,被告製品(3)及び(4)は,構成要件B5を充足する。
イ被告の主張
(ア)クレーム解釈
原告の主張(ア)は否認する。
受圧「ピン」は,断面円形の形状を意味する。
(イ)被告製品(3)及び(4)
a認否
同(イ)は認める。
b形状の相違
受圧部材13は下側面がなく,断面円形の形状をしていない。
c取付の相違
受圧部材13は,取付ピン13bに取り付けられるとともに,取付部材4の頂板
に接している。
d作用の相違
受圧部材13は,下側面がないだけでなく,回転しないので,潤滑用グリスが下
側まで及ぶおそれがなく,汚れ防止の必要性が低い。
また,受圧部材13は,熱伝導性の低いプラスチック製であるので,潤滑用グリ
スが流動化するおそれが少なく,汚れ防止の必要性が低い。
さらに,受圧部材13が受ける押圧力は,取付ピン13bだけでなく,取付部材
4の頂板でも受けるようになっている。
(ウ)充足
同(ウ)は否認する。
(6)被告製品(3)及び(4)の構成要件B11の充足
ア原告の主張
(ア)クレーム解釈
構成要件B11の「極力露出しないように成した」とは,可能な限りという意味
であり,全部露出しないようにすることまでは要しない。
(イ)被告製品(3)及び(4)
,被告製品(2)は,抱持部5c,5cを有し,抱持部5c,5cは,湾曲凹部4c
4cへ嵌入できる構成になっている。
(ウ)充足
よって,被告製品(3)及び(4)は,構成要件B11を充足する。
イ被告の主張
(ア)クレーム解釈
原告の主張(ア)は否認する。
(イ)被告製品(3)及び(4)
a同(イ)は認める。
b被告製品(3)及び(4)の抱持部5cの折り曲げ幅は,極めて狭い。特に受圧
部材13側において,左右の抱持部5c,5c間は大幅に開放される構造になって
いる。
したがって,原稿圧着版2を原稿の載置角度まで開いた時に,受圧部材13がコ
ンタクトガラス16側へ露出しないように成していない。
(ウ)充足
同(ウ)は否認する。
(7)被告製品(2)の構成要件C4及び構成要件D3の充足
ア原告の主張
(ア)クレーム解釈
a構成要件C4は,作動部材のリフト部材に対する取付方法を何ら限定して
いないから,作動部材がリフト部材の両側板に直接取り付けられたものも,何らか
の取付部材を介して取り付けられたものも含む。
b後記被告の主張(ア)bは,実施例によって請求項の範囲を限定しようとす
るものにすぎない。
(イ)被告製品(2)
被告製品(2)の作動部材11は,リフト部材9の支持部材5に対する軸着部側で
あって,リフト部材9の回動時に支持ピン10を支点に旋回する位置の両側板9b,
9bへ,取付片11aを用いて取り付けられている。
(ウ)充足
よって,被告製品(2)は,構成要件C4及び構成要件D3のうち構成要件C4の
部分を充足する。
イ被告の主張
(ア)クレーム解釈
a原告の主張(ア)aは否認する。
b構成要件C4の記載からは,作動部材が何に取り付けられているかを理解する
ことはできないが,この記載の文脈及び明細書の実施例(【0010】)にある「このリ
フト部材9の両側板9b,9bの支持ピン10による支持部材5の軸着個所とは異なる
位置に作動部材11が軸架されている」との記載からすると,作動部材11の両端部が,。
。リフト部材9の両側板9b,9bに軸架されていることを意味することは明らかである
(イ)被告製品(2)
同(イ)は認める。
(ウ)充足
同(ウ)は否認する。
被告製品(2)の作動部材11は,取付片11aに取り付けられ,作動部材11の両
端とリフト部材9の両側板9b,9bとは直接接していないから,構成要件C4を充足
しない。
(8)被告製品(2)の構成要件C6及び構成要件D3の充足
ア原告の主張
(ア)クレーム解釈
a構成要件C6の切欠は,作動部材の旋回を許容するものであれば,作動部材
そのものの嵌入を許すものも,作動部材の取付片の嵌入を許すものも含まれる。
bこれを別な観点から述べれば,構成要件C4及びC6は,単に作動部材と記
載しているのみで,その具体的な形状や構造を何ら限定していないから,取付片を含
んだものが作動部材に当たると解することもできる。
(イ)被告製品(2)
リフト部材9が連結ピン10を支点に回動する時,切欠5d,5dは,取付片11
aが嵌入することを許容し,作動部材11の旋回を可能にする。
(ウ)充足
よって,被告製品(2)は,構成要件C6及び構成要件D3のうち構成要件C6の
部分を充足する。
イ被告の主張
(ア)クレーム解釈
原告の主張(ア)は否認する。
構成要件C6の切欠は,作動部材の旋回を許容するものでなければならない。
(イ)被告製品(2)
同(イ)は認める。
(ウ)充足
同(ウ)は否認する。
(9)被告製品(2)の構成要件D2の作動部材の点の充足
ア原告の主張
前記(7)アのとおり
イ被告の主張
前記(7)イのとおり
(10)被告製品(3)及び(4)の構成要件E5の充足
ア原告の主張
(ア)文言侵害
a被告製品(3)及び(4)のヒンジピン6には,その一端部側に角状部6aが設
けられ,この角状部6aが支持部材5の一方の側板5bに形成された角孔5dと係
合することにより,ヒンジピン6は支持部材5に拘束され,一体化している。
bよって,ヒンジピン6は,支持部材5と同義であり,被告製品(3)及び(4)
は,均等論を持ち出すまでもなく,構成要件E5を充足する。
(イ)均等侵害
aまとめ
被告製品(3)及び(4)の調節手段8は,構成要件E5における調節手段と均等の技
術であるから,被告製品(3)及び(4)は,構成要件E5を充足する。
b本質的部分
高さ調節手段の設置箇所が本件考案2の作用効果を生じさせる特徴的部分という
ことはできないから,リフト部材の高さを調節する手段をリフト部材と支持部材と
の間に設けるか,それともリフト部材とヒンジピンとの間に設けるかは,本質的な
部分ではない。
c置換可能性
高さ調節手段をリフト部材とヒンジピンとの間に設けても,同手段をリフト部材
と支持部材との間に設けた場合と同一の作用効果を奏するから,置換可能性の要件
を満たす。
d置換容易性
高さ調節手段の設置箇所の変更は,被告製品の製造時点における当業者であれば,
容易に想到できたことである。
イ被告の主張
(ア)文言侵害
原告の主張(ア)aは認め,bは否認する。
(イ)均等侵害
aまとめ
同(イ)aは否認する。
b本質的部分
同(イ)bは否認する。
c置換可能性
(a)同(イ)cは否認する。
,(b)一被告製品(3)及び(4)の調整手段8は,本件考案2の調整手段に比べて
優れた作用効果を有する。
二すなわち,本件考案2の調整手段がリフト部材又は支持部材の特に背板
20aや支持部材24の背板24aに設けられることは,本件実用新案権2明細書
の【0011】∼【0013】の記載から明らかであり,背板以外に設けることを
示唆する記載はない。これら背板20a,24aは,基本的には板材であって,薄
い材料である。このような薄い板材にエキセンピン14を取り付けるには,取付板
13を必要とし,また,薄い板材に調整ネジ21を取り付けても,ネジ穴のネジの
巻数が極めて少なく十分な螺合が確保できない。
三これに対して,被告製品(3)及び(4)の調整手段8は,十分な直径が確保
されているヒンジピン6を貫通するネジ穴に螺合させるため,ネジ穴に形成した雌
ネジの巻数を多く確保することができ,その結果,調節ネジと十分に螺合している。
四以上のように,被告製品(3)及び(4)の調整手段8は,本件考案2の調整
手段よりも優れた作用効果を奏するものであり,置換可能性の要件を満たさない。
d置換容易性
(a)同(イ)dは否認する。
(b)上記c(b)で述べたとおり,被告製品(3)及び(4)の調整手段はヒンジピン
に設けたので,本件考案2の高さ調整手段とは構成が異なり,かつ,優れた作用効
果を奏するから,当業者が被告製品(3)及び(4)の調整手段に置き換えることにきわ
めて容易に想到することはできなかった。
4争点(2)(本件実用新案権1の無効)
(1)本件考案1の(1)の新規性又は進歩性欠如
ア被告の主張
(ア)乙2考案
a特公平4−19532号公報(乙2。以下「乙2刊行物」といい,それに
記載された考案を「乙2考案」という。)には,次の記載がある。
「(実施例)
図面に依れば,複写機本体Aの後部アッパープレートa上には,両側板1a,1aを
有する取付部材1が取付釦2を介して着脱可能に取り付けられている・・・この取付部。
材1の一側には,ヒンジピン3を介して支持部材4がその両側板4a,4aの一端部を
回動自在に軸着させている。この支持部材4の自由端側には,両側に取付板5b,5b
を設けた凸型の制御部材5が両側板5a,5aをヒンジピン7,7によって回動自在に
軸着させており,この制御部材5の取付板5b,5bに原稿圧着板Bの後端部が固着さ
れている・・・制御部材5の軸着側には,クランク部材8が固定ピン9によって固着さ。
,れると共に,このクランク部材8はヒンジピン7,7に回動自在に軸着されている。尚
このクランク部材8は制御部材5,或は原稿圧着板Bと一体(「一対」は誤記と認め
る。)に構成されても良い。そして,クランク部材8の支点を越えた側に取り付けた受圧
ピン10,10と,取付部材1の側に設けた固定ピン11との間には,嵌縮自在に構成
されたガイド部材12が懸架されると共に,このガイド部材12を環巻きして弾性手段
を構成する圧縮コイルスプリング13が受圧ピン10,10と固定ピン11との間に弾
設されている。
したがって今,原稿圧着板Bを閉じた状態において,とくに第1図乃至第2図に示し
たように指示部材4と制御部材5は取付部材1に対して互いに折畳まれた状態にある。
この状態から原稿圧着板Bを開くと制御部材5の背部は支持部材4の背部に当接するの
で,原稿圧着板Bは支持部材4と共にヒンジピン3を支点として開かれる。同時に固定
ピン11と受圧ピン10,10間の距離が変化し長くなるので,ガイド部材12が長手
方向に伸長し,同時に圧縮コイルスプリング13の弾力が変化し,手を離した際に原稿
圧着板Bがヒンジピン3の回りに生じさせる回転トルクと,これを打ち消す方向に作用
する圧縮コイルスプリング13の弾力がバランスしたところで停止し,とくに第4図に
示したように,自然落下することがなく保持される。この中間開角度における原稿圧着
板Bに対する安定保持の許容範囲は,ヒンジピン3で連結した取付部材1と支持部材4
の当接部にフリクション機能を与えればそれだけ増大するものである。
開いた原稿圧着板Bから手を離すと,該原稿圧着板Bは制御部材5と共にヒンジピン
7を支点として反転しそうに見えるが,この制御部材5と共に回動するクランク部材8
の支点を越えた一端部に設けた受圧ピン10,10に一方の作用点を有する圧縮コイル
スプリング13の弾力によって,原稿圧着板Bは制御部材5と共に支持部材4と重なる
方向である時計方向へ回動附勢されており,反転することなく支持部材4と一体性を維
持する。
原稿圧着板Bは開かれるにつれて回転トルクが減少し,圧縮コイルスプリング13の
弾力が勝る一定開角度以上ではこれを弾ね上げるので,90°近くからは圧縮コイルス
プリングの弾力が0となる工夫が凝らされている。
原稿圧着板Bを閉じると,圧縮コイルスプリング13を圧縮することになり,原稿圧
着板Bは制御部材5と共にヒンジピン7を支点に反時計方向へ回動しようとする力を受
けるので,全閉位置から閉じ方向へ押圧させると,最初のうちは圧縮コイルスプリング
13の弾力が弱いので,原稿圧着板Bは制御部材5と共に若干反時計方向へ若干回転す
るが,すぐに圧縮コイルスプリング13の弾力に押し戻され,支持部材4と一体的に閉
じられるものである。
第5図に示したように,原稿が本のように厚い立体原稿Cのような場合には,原稿圧
着板Bを閉じると,その一部が最初はこの立体原稿Cの角に当接するが,さらに若干力
を加えて原稿圧着板Bの手前側を押し下げると,艇子の原理により原稿圧着板Bは圧縮
コイルスプリング13の弾力に抗して制御部材5と共に反時計方向へ反転し,立体原稿
Cに対して水平になる。そして,この反転許容範囲は立体原稿Cの厚さによって制限を
受けることがない。反時計方向へ回転させた原稿圧着板Bはその手前側を押し下げる力
を除くか,立体原稿Cを取り去れば,制御部材5は圧縮コイルスプリング13の弾力に
,よってクランク部材8を介して支持部材4と重なる方向である時計方向へ押されるので
該制御部材5共に原稿圧着板Bは同じく時計方向へ回転し,折り畳まれて支持部材4と
一体になる」(3欄33行∼6欄5行)。
「(効果)
この発明は以上のように構成したので,簡単な構造で,通常の原稿圧着板開閉装置と
しての原稿圧着板に対する開閉動作及びその中間開角度での原稿圧着板に対する安定停
止保持動作を行うことができた上で,本のように厚い立体原稿上を原稿圧着板で容易に
水平状態で覆い,露光が外部に漏れたり,外光が機械内部に侵入するのを可及的に防止
することができるものである。そして,その際に原稿圧着板を立体原稿に対して反転さ
せることのできる範囲にとくに制限が設けられることがないという効果を合わ奏し得
る」(6欄6行∼17行)。
b乙2刊行物の第4図及び第5図には,制御部材5が,ヒンジピン7を支点と
して回動し,支持部材4と一体となる時に,固定ピン9との干渉を避けるため,支持
部材4に切欠が形成されていることが図示されている。
(イ)一致点及び相違点
a一致点
乙2考案の「取付部材1「支持部材4「制御部材5「受圧ピン10」及び「圧縮」,」,」,
コイルスプリング13」は,それぞれ本件考案1の(1)の「取付部材「支持部材「リ」,」,
フト部材「作動部材」及び「圧縮コイルスプリング」に相当するから,乙2考案と本」,
件考案1の(1)とは,構成要件C1ないしC5及びC7の点で一致する。
b相違点
しかし,乙2考案には,構成要件C6が開示されていない点で,両者は相違する。
(ウ)相違点についての判断
本件考案1の(1)の「切欠」は,部材の干渉を避けるためのものであるが,部材の干渉
を避けるために「切欠」を設けることは,乙2刊行物の第5図等に固定ピン9との干渉
を避けるための切欠が支持部材4に形成されているように,当業者が必要に応じて採用
する常套手段であり,単なる設計事項である。
(エ)まとめ
したがって,本件考案1の(1)についての実用新案登録は,乙2考案と同一か,乙2考
案から当業者がきわめて容易に考案することができたものについてされたものであるか
ら,無効とされるべきである。
イ原告の主張
(ア)乙2考案
原告の主張(ア)aは認め,bは明らかに争わない。
(イ)一致点及び相違点
a一致点
同(イ)aのうち,乙2考案の「受圧ピン10」が本件考案1の(1)の「作動部材」に相当
し,乙2考案と本件考案1の(1)とは,構成要件C4の点で一致することは,否認し,そ
の余は認める。
b相違点
同(イ)bは認める。
(ウ)相違点についての判断
同(ウ)は否認する。
構成要件C6の「切欠」は,構成要件C4の構成を採った場合には,その前提条
件としてリフト部材が支持部材の外側に軸支される構成を採らざるを得ないという
技術的要請のある以上,支持部材の両側板によって作動部材の旋回が阻害されない
ようにするための必須の構成要件である。
よって,構成要件C4及びC6のような技術要件と,乙2考案とは,構成と目的
及び作用効果が異なることから,単なる設計上の微差ということはできない。
(エ)まとめ
同(エ)は否認する。
(2)本件考案1の(2)の新規性又は進歩性欠如
ア被告の主張
(ア)一致点及び相違点
a構成要件D1
乙2考案のガイド部材12は,相互に嵌縮する一対の部材から構成され,本件考案1
の(2)の一対のスライダーに相当する。
b構成要件D2
乙2考案のガイド部材12を構成する左右の嵌縮部品のうち,一方の嵌縮部品は受圧
ピン10側に当接され,他方の嵌縮部品は,カム部材に相当する固定ピン11側に当接
されているから,構成要件D2を充足する。
c構成要件D3
,構成要件D3の点で同じか,少なくともきわめて容易に考案することができたことは
前記(1)アのとおりである。
(イ)まとめ
したがって,本件考案1の(2)についての実用新案登録は,乙2考案と同一か,乙2考
案から当業者がきわめて容易に考案することができたものについてされたものであるか
ら,無効とされるべきである。
イ原告の主張
(ア)一致点及び相違点
被告の主張(ア)は否認する。
本件考案1の(2)の一対のスライダーは支持部材に抱持されているのに対し,乙
2考案のガイド部材12は,制御部材5側の作動ピン10と取付部材1側の固定ピ
ン11の間に支持されており,両者は構成に違いがある。そして,その作用効果も
当然に異なる。
(イ)まとめ
同(イ)は否認する。
(3)本件考案1の(1)及び(2)の要旨変更による新規性欠如
ア被告の主張
(ア)本件補正
a「部材」を意味する「構成材」は「ピン」を意味する「細い棒」を含む,
広い概念であるから,本件補正後の「作動部材」は,本件当初明細書の「作動ピ
ン」の概念を超える広い概念である。
b本件補正後の「取り付けられた」は「かけわたされた」を意味する「軸,
架された」の概念を超える広い概念である。
(イ)本件当初明細書
本件当初明細書には,本件補正後の「作動部材」及び「取り付けられた」ことは
記載されておらず,また,それらを示唆する記載も見あたらない。
(ウ)要旨変更
以上によれば,本件補正は,本件当初明細書の要旨を変更するものであり,その
出願日は,手続補正書(乙4)の提出日である平成11年1月18日に繰り下がる。
(エ)新規性欠如
a本件考案1の(1)及び(2)は,その出願日前の平成6年11月25日に公開
された実開平6−82649号公報(乙3。本件実用新案権1の公開公報)に記載さ
れた考案である。
bよって,本件考案1の(1)及び(2)は,新規性欠如の無効理由を有する。
イ原告の主張
(ア)本件補正
被告の主張(ア)は,原告において明らかに争わない。
(イ)本件当初明細書
同(イ)は否認する。
「作動ピン」を「作動部材」に「軸架された」を「取り付けられた」にそれぞ,
れ補正する程度のことは,自明の範囲内であり,本件考案1の(1)及び(2)の目的と
作用効果からすれば,要旨変更には当たらない。
(ウ)要旨変更
同(ウ)は否認する。
(エ)新規性欠如
a同(エ)aは,原告において明らかに争わない。
b同(エ)bは争う。
5争点(3)(損害の額)についての当事者の主張
(1)原告の主張
ア被告製品(1)及び(2)
(ア)相当な実施料率
a実施料相当額は,以下の理由により,被告製品(1)及び(2)の売上高に1
0%乗じた額が相当である。
bすなわち,事務用機械器具に関し,過去23年間に締結されたライセンス
契約における実施料率は,1%から23%であるが(甲15),10%は,ほぼその
中間値である。
c本件考案1の(1)及び(2)を実施した原稿圧着板開閉装置が複写機に占める
価値は,極めて高い。
すなわち,複写機用の原稿圧着板開閉装置(以下「ヒンジ」ともいう。)で,特に
自動原稿送り装置(以下「ADF」という。)が付いているものでは,原稿をコピー
する際に,10kg∼25kgの重量を有するADFを開いて,途中で止めておく
必要がある。このADFを開く時の操作力はできるだけ軽く持ち上げるように設計
しなければならないし,閉じている際にはある程度の押さえ力が必要である。さら
に,この重いADFを開けた時には,自重落下角度以上から使用解放角度まではど
こでも停止(フリーストップ)する必要があり,使用の途中にいきなり閉まることが
あってはならない。
また,ヒンジの開閉回数の規格は,現在では20万回保証まで要求されている。
原稿は,薄いものとは限らず,書籍のような厚手のものもあるが,本件特許権等
によれば,ヒンジにリフト機構が付いているので,厚いものでも水平かつ均一に圧
着し操作もスムーズである。このリフト機構は「Z型リフトヒンジ」と呼ばれて,
いる。
ADFは,相当数の部品点数から構成されているが,できるだけ軽く見栄えをよ
くするためカバー等に樹脂が使用され,また,機構的に片側に重量が偏ってしまう。
そのため,ADFが複写機本体(コンタクトガラス)から浮いてしまうなどの場合が
あり,ヒンジにより,このような場合の調整を行っている。
以上のように,複写機にとってヒンジは極めて重要な役目を果しており,複写機
の中において,この原稿圧着板開閉装置は,重要部品の5本の指に入っている。
dさらに,本件考案1の(1)及び(2)は,Z型のヒンジにおいても重要技術で
ある。
すなわち,ヒンジをZ型とした場合には,本件考案1の(1)及び(2)のように実施
すると,被告製品(1)に示したようなリフト部材9を支持部材5と重なる方向へ回
動付勢させる弾性手段(捩じりコイルスプリング11)を別に設けなくとも,被告製
品(2)に示したように,支持部材9を原稿圧着板2の開成方向へ回動付勢させる弾
性手段12の弾力を利用できることになり,捩じりコイルスプリング11を省略で
きる分だけ,構成が簡単になり,コストダウンを図ることができる。
さらに,被告製品(2)のヒンジに被告製品(1)のヒンジのような捩じりコイルスプ
リング11を用いるとすると,重量のあるADF側を支えるものであるために,被
告製品(1)のものよりも線径が太くてトルクの高い高価な捩じりコイルスプリング
を用いる必要があり,コストアップになってしまう。
したがって,Z型のヒンジ,特に被告製品(2)のようなヒンジにおいては,本件
考案1の(1)及び(2)のように実施することは,コストダウンを図る意味において極
めて重要なファクターとなるものである。
e原告は,本件特許権等の開発に多額の費用を要した。
すなわち,ヒンジの開発は,空間の具合から入り複写機の開発が終わるまで,複
写機メーカーと一緒になって,何回も手作り試作をし,部品をすべて金型で作成し,
その後,実機での重量確認,左右バランス,重芯の位置等の確認を行わなければな
らない。
最近ではスピードが早くなり約1年に短縮されているが,それだけの期間がかか
るので,延べの設計工数はかなりの工数になる。
その費用はすべて原告の負担である。
f実用新案権1の保護期間は,残り少ないので,実施権を許諾するにしても,
低い料率で許諾することは考えられない。
g特許権等の侵害事件における損害認定のための実施料相当額は,通常のラ
イセンス契約の実施料率よりも高く見積られるべきである。
(イ)被告製品(1)及び(2)の販売価格
被告製品(1)及び(2)の販売価格は,各1個の組で1組当たり6.1米国ドルであ
る。
(ウ)損害額
よって,原告の被った損害の額は,以下の計算式のとおり330万4816円を
下らない。
6.1米国ドル×117円×5万0666組×10%=361万6032円
イ被告製品(3)及び(4)
(ア)販売数量
a被告が平成17年5月から平成19年10月末日までに輸入して販売した
被告製品(3)及び(4)の個数は,各3万個である。
b各3万個のうち,村田製作所株式会社の型式V−2850に搭載されるも
の(以下「2850用」という。)及び同V−2350に搭載されるもの(以下「23
50用」という。)がそれぞれ半数の1万5000個ずつである。
(イ)販売価格及び売上高
a被告製品(3)のうち2850用
(a)被告製品(3)のうち2850用の販売価格は,740円である。
(b)よって,その売上高は,1110万円である。
740円×1万5000個=1110万円
b被告製品(4)のうち2850用
(a)被告製品(4)のうち2850用の販売価格は,675円である。
(b)よって,その売上高は,1012万5000円である。
675円×1万5000個=1012万5000円
c被告製品(4)のうち2350用
(a)被告製品(4)のうち2350用の販売価格は,740円である。
(b)よって,その売上高は,1110万円である。
740円×1万5000個=1110万円
d被告製品(4)のうち2350用
(a)被告製品(4)のうち2350用の販売価格は,640円である。
(b)よって,その売上高は,960万円である。
640円×1万5000個=960万円
(ウ)相当な実施料率
上記ア(ア)と同様の理由で,相当な実施料率として,10%が相当である,
(エ)損害額
よって,原告の被った損害の額は,330万4816円を下らない。
(1110万円+1012万5000円+1110万円+960万円)×10%=
419万2500円
ウ弁護士費用等相当の損害額
(ア)原告は,平成18年11月27日及び同年12月22日,本件特許権等の
侵害を理由として,被告製品(1)∼(4)の製造,販売の中止を要求したが,被告がこ
れに応じなかったため,本件訴訟を提起せざるを得なかった。
(イ)原告は,代理人弁護士に100万円,同弁理士に50万円の着手金を支払
った。
(ウ)加えて,原告は,両代理人に合計300万円を支払う予定である。
(エ)したがって,原告は,弁護士費用等相当の損害として,450万円の損害
を被った。
(2)被告の主張
ア被告製品(1)及び(2)
(ア)相当な実施料率
原告の主張ア(ア)は否認する。
原告がア(ア)bで主張する事務用機械器具の過去23年間のライセンス契約の平均
,によっても,加重平均は5%以下である。また,原告が同c以下で主張する事情は
複写機の蓋ヒンジ全般に関するものであり,本件実用新案権1に係る複写機の蓋ヒ
ンジに限定して述べられたものではない。
したがって,相当な実施料率は,販売価額の2%を上回ることはない。
(イ)被告製品(1)及び(2)の販売価格
同ア(イ)は否認する。
被告製品(2)の販売価格は,3.568米国ドルである。
(ウ)損害額
同ア(イ)は否認する。
イ被告製品(3)及び(4)
(ア)販売数量
同イ(ア)は否認する。
(イ)販売価格及び売上高
同イ(イ)は否認する。
(ウ)相当な実施料率
同イ(ウ)は否認する。
(エ)損害額
同イ(エ)は否認する。
ウ弁護士費用等相当の損害額
同ウのうち,(イ)及び(ウ)は不知,その余は否認する。
第3当裁判所の判断
1争点(1)イ(被告製品(1)の構成要件A8の充足)
(1)クレーム解釈
ア構成要件A8の「前記原稿圧着板をコンタクトガラス上への原稿の載置角
度まで開いた時に前記受圧ピンが前記コンタクトガラス側へ極力露出しないように
成した」とは,請求項の記載から,構成要件A7の「前記原稿圧着板を閉じた時に
前記支持部材の前記抱持部の前記受圧ピン側が前記湾曲凹部内へ嵌入するように構
成」した上,原稿圧着板を開いた際に,抱持部が受圧ピンのコンタクトガラス側近
傍まで延在し,受圧ピンを覆うことによって,コンタクトガラス側へ露出しないよ
うに構成したことを意味すると認められる。
イ本件特許権明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載も,上記解釈と整合
するものである。
(2)被告製品(1)
前提事実(3)ア(ア)a(別紙物件目録(1))によれば,被告製品(1)の抱持部5cは,
その折り曲げ幅が狭いため,全長にわたって左右の抱持部5c,5c間が大幅に開
放される構造になっている。
なお,前提事実(3)ア(ア)a(別紙物件目録(1))によれば,被告製品(1)では,カム
スライダー7の遮蔽板7bが,潤滑用グリスが付着した受圧ピン部13aを露出さ
せない機能を果たしているものである。
(3)結論
ア以上によれば,被告製品(1)は,構成要件A8を充足しない。
イ原告は,構成要件A8の「極力露出しないように成した」とは,可能な限
りという意味であり,全部露出しないようにすることまでは要しない旨主張する。
確かに「極力露出しないように成した」とは,原告主張のとおり,全部露出し,
ないようにすることまでは要しない解する余地があるとしても,被告製品(1)のよ
うに,折り曲げ幅が狭いため,全長にわたって左右の抱持部5c,5c間が大幅に
開放される構造になっているような構成まで含むように構成要件A8を解釈するこ
とはできないから,原告の上記主張は採用することができない。
ウしたがって,原告の本件特許発明1に基づく被告製品(1)に対する請求は,
その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
2争点(1)エ及びカ(被告製品(2)∼(4)の構成要件B11の充足)
(1)クレーム解釈
構成要件B11の「前記原稿圧着板をコンタクトガラス上への原稿の載置角度ま
で開いた時に前記受圧ピンが前記コンタクトガラス側へ極力露出しないように成し
た」とは,前記1(1)で述べたと同様の理由により,構成要件B10の「前記原稿
圧着板を閉じた時に前記支持部材の前記抱持部の前記受圧ピン側が前記湾曲凹部内
へ嵌入するように構成」した上,原稿圧着板を開いた際に,抱持部が受圧ピンのコ
ンタクトガラス側近傍まで延在し,受圧ピンを覆うことによって,コンタクトガラ
ス側へ露出しないように構成したことを意味すると認められる。
(2)被告製品(2)∼(4)
前提事実(3)ア(ア)a及び(イ)(別紙物件目録(2)∼(4))によれば,被告製品(2)∼
(4)の抱持部5cも,その折り曲げ幅が狭いため,全長にわたって左右の抱持部5
c,5c間が大幅に開放される構造になっている。
なお,前提事実(3)ア(ア)a及び(イ)(別紙物件目録(2)∼(4))によれば,被告製品
(2)∼(4)においても,カムスライダー7の遮蔽板7bが,潤滑用グリスが付着した
受圧ピン部13aを露出させない機能を果たしている。
(3)結論
ア以上によれば,被告製品(2)∼(4)は構成要件B11を充足しない。
イしたがって,原告の本件特許発明2に基づく被告製品(2)∼(4)に対する請
求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
3争点(1)キ及びケ(被告製品(2)の構成要件C4(D3),D2の充足)
(1)クレーム解釈
ア構成要件C4は「このリフト部材の前記支持部材に対する軸着部側であ,
って前記リフト部材の回動時に前記支持ピンを支点に旋回する位置の両側板間に取
り付けられた作動部材と」と規定するだけで,作動部材のリフト部材に対する取付
方法を何ら限定していないから,作動部材がリフト部材の両側板に直接取り付けら
れたものも,何らかの取付部材を介して取り付けられたものも含むと解される。
イ被告は,構成要件C4は,作動部材の両端部がリフト部材の両側板に軸架され
たものに限定している旨主張し,その根拠として,構成要件C4の記載の文脈や考案の
詳細な説明【0010】を指摘するが,被告が指摘する考案の詳細な説明は,実施例に
ついての説明にすぎない上,被告主張のとおりに解釈すべき技術的理由についての主張
もないし,構成要件C4の記載の文脈からも被告主張のように限定して解釈することは
できないから,被告の上記主張は採用することができない。
(2)被告製品(2)
被告製品(2)の作動部材11は,リフト部材9の支持部材5に対する軸着部側で
あって,リフト部材9の回動時に支持ピン10を支点に旋回する位置の両側板9b,
9bへ,取付片11aを用いて取り付けられていることは,当事者間に争いがない。
(3)結論
したがって,被告製品(2)は,構成要件C4及び構成要件D3のうち構成要件C
4の部分,並びに構成要件D2を充足する。
4争点(1)ク(被告製品(2)の構成要件C6(D3)の充足)
(1)クレーム解釈
ア構成要件C6は「前記支持部材の両側板には前記リフト部材が前記支持ピ,
ンを支点として回動する時に,前記作動部材の旋回を許容する切欠を設けたこと」
と規定しており,切欠に作動部材が嵌入することを要するとは限定していない。し
たがって,構成要件C6は,作動部材の旋回を許容するものであれば,作動部材その
。ものの嵌入を許すものも,作動部材の取付片の嵌入を許すものも含まれると解される
イこれに反する被告の主張は,採用することができない。
(2)被告製品(2)
被告製品(2)は,リフト部材9が連結ピン10を支点に回動する時,切欠5d,5d
,は,取付片11aが嵌入することを許容し,作動部材11の旋回を可能にすることは
当事者間に争いがない。
(3)結論
したがって,被告製品(2)は,取付片11aを構成要件C6の「作動部材」の一
部に相当すると認めるか否かにかかわらず,構成要件C6及び構成要件D3のうち
構成要件C6の部分を充足する。
5争点(1)コ(被告製品(3)及び(4)の構成要件E5の充足)
(1)文言侵害
ア被告製品(3)及び(4)のヒンジピン6には,その一端部側に角状部6aが設
けられ,この角状部6aが支持部材5の一方の側板5bに形成された角孔5dと係
合することにより,ヒンジピン6は支持部材5に拘束され,一体化していることは,
当事者間に争いがない。
イ原告は,被告製品(3)及び(4)のヒンジピン6は支持部材5と同義であり,
被告製品(3)及び(4)は構成要件E5を文言上充足する旨主張する。
確かに,構成要件E5は「このリフト部材と前記支持部材との間に設けた前記,
リフト部材の高さを調節する調節手段とで構成した」と規定し,請求項の記載上,
調節手段をリフト部材又は支持部材に設けることまでは規定していないが,取付部
材4と支持部材5とを連結するヒンジピン6が支持部材5と同義であると認めるこ
とはできないし,考案の詳細な説明や図面中にも,そのことをうかがわせる記載は
見いだせない。したがって,被告製品(3)及び(4)は,高さ調節手段を「リフト部材
とヒンジピンとの間」に設けたものというべきであり,構成要件E5を文言上充足
すると認めることはできない。
ウよって,文言侵害をいう原告の主張は,理由がない。
(2)均等侵害
ア本質的部分
(ア)本件実用新案権2明細書の従来技術(【0002】),考案が解決すべき課
題(【0003】),考案の目的(【0004】),課題を解決するための手段(【0
005】),作用(【0007】),実施例(【0011,実施例(【0013】)及】
び考案の効果(【0018】)の記載によれば,本件考案2は,リフト部材と支持部
材との間にリフト部材の高さを調節する調節手段を設け,この調節手段を調節する
ことにより,リフト部材の自由端側が支持部材に対する軸支個所を支点に上下して
その高さが変化し,リフト部材にその後部を取り付けた原稿圧着板の取付位置を変
化させ,もって,従来のような煩雑な手段によらずに原稿圧着板とコンタクトガラ
スとの間の浮きを調節することができるという作用効果を奏するものと認められる。
(イ)そうすると,本件考案2の本質的部分は,リフト部材と指示部材との間に
設けた調節手段によってリフト部材の高さを調節することにより,原稿圧着板とコ
ンタクトガラスの浮きを調節することができるようにした点にあると認められる。
(ウ)原告は,高さ調節手段を取り付ける位置は本件考案2の本質的部分ではな
い旨主張するが「リフト部材の高さを調節する調節手段」というだけでは,従来,
の調節作業に用いられていたとされる「調節プレート」(本件実用新案権2明細書
【0003】)との差異が明らかでなくなるから,その取付位置を除外しようとす
る原告の上記主張は,採用することができない。
イ置換容易性
証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア)本件実用新案権2明細書には,リフト部材にくの字形状の取付板を固着し,
それに調節手段であるエキセンピンを設ける実施例(【0011】)や,リフト部材
又は支持部材の背板に調節手段を設ける実施例(【0013】)が記載されているが,
ヒンジピンに着目して,同所に高さ調節手段を設けることを示唆する記載は見いだ
せない。
(イ)支持部材やリフト部材は,板状の材料で構成されていると認められるから,
そこに高さ調節手段を設置するには,くの字形状の取付板のような取付手段を介在
させたり,雌ねじ部分の厚さを確保するために板状の材料を厚くするなどの工夫が
必要であると認められる。
(ウ)これに対し,ヒンジピンに高さ調節手段を設けるとすれば,その直径の大
きさから,取付手段などを要することなく,雌ねじ部分の厚さを確保することは容
易ではある。
(エ)しかし,ヒンジピンは本来自由に回転するものであるから,ヒンジピンに
高さ調節手段を設けるとすれば,ヒンジピンの一端部側に角状部6aを設け,この
角状部6aを支持部材5の一方の側板5bに形成された角孔5dに係合させること
により,回転しないようにするなどの工夫が必要となる。
ウまとめ
これらの事実によれば,高さ調節手段をヒンジピン6に設けた被告製品(3)及び
(4)は,本件考案2とは技術思想を異にし,均等の第1要件(本質的部分)を欠き,
しかも,均等の第3要件(置換容易性)を欠くと認められる。
(3)結論
以上によれば,原告の本件考案2に基づく被告製品(3)及び(4)についての請求は,
その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
6争点(2)ア(本件考案1の(1)の新規性又は進歩性欠如)
(1)乙2考案
被告の主張(ア)aは,当事者間に争いがない。
(2)一致点及び相違点
乙2考案の「取付部材1「支持部材4「制御部材5」及び「圧縮コイルスプリン」,」,
グ13」は,それぞれ本件考案1の(1)の「取付部材「支持部材「リフト部材」及び」,」,
「圧縮コイルスプリング」にそれぞれ相当し,乙2考案と本件考案1の(1)とは,構成要
件C1ないしC3,C5及びC7の点で一致することは,当事者間に争いがない。
(3)構成要件C4の点
ア乙2刊行物中の「制御部材5の軸着側には,クランク部材8が固定ピン9によ
って固着されると共に,このクランク部材8はヒンジピン7,7に回動自在に軸着され
ている。尚,このクランク部材8は制御部材5,或は原稿圧着板Bと一体(「一対」は誤
記と認める。)に構成されても良い。そして,クランク部材8の支点を越えた側に取り付
けた受圧ピン10,10と,取付部材1の側に設けた固定ピン11との間には,嵌縮自
在に構成されたガイド部材12が懸架されると共に,このガイド部材12を環巻きして
弾性手段を構成する圧縮コイルスプリング13が受圧ピン10,10と固定ピン11と
の間に弾設されている」との記載及び第2図の記載によれば,乙2考案の受圧ピン1。
0は,クランク部材8,固定ピン9を介して,制御部材5の両側板5a,5aに取
り付けられていると認められる。
イそして,構成要件C4は,作動部材のリフト部材に対する取付方法を何ら
限定していないから,作動部材がリフト部材の両側板に直接取り付けられたものも,
何らかの取付部材を介して取り付けられたものも含むと解されることは,前記3
(1)で述べたとおりである。
ウしたがって,乙2考案の受圧ピン10は,構成要件C4の作動部材に相当
し,乙2考案と本件考案1の(1)とは,構成要件C4の点でも一致することが認め
られる。
(4)構成要件C6の点
ア新規性欠如
(ア)乙2刊行物の第4図及び第5図には,制御部材5が,ヒンジピン7を支点と
して回動し,支持部材4と重なる時に,固定ピン9との干渉を避けるため,支持部材
4に切欠が形成されていることが図示されていることは,原告において明らかに争
わないから,これを自白したものとみなす。
(イ)上記切欠は,固定ピン9の旋回を許容するものであり,ひいては受圧ピン
10の旋回を許容するものであるから,構成要件C6の切欠に相当し,したがって,
乙2考案は本件考案1の(1)と同一であると認められる。
イ進歩性欠如
(ア)乙2考案では,制御部材5が支持部材4と重なる時に,固定ピン9との干渉
を避けるため,支持部材4に切欠が形成されているのに対し(上記ア),本件考案1
の(1)では,リフト部材が支持部材から折れ曲がる時に作動部材の旋回を許容する
ものであり,両者はこの点で相違するとしても,弁論の全趣旨によれば,部材の干
渉を避けるために「切欠」を設けることは,当業者が必要に応じて採用する単なる
設計事項であると認められる。
(イ)したがって,乙2考案において,受圧ピン10の取付態様を適宜変更する
のに伴い構成要件C6のように構成することは,当業者がきわめて容易に想到す,
ることができたことと認められる。
(ウ)これに反する原告の主張は,採用することができない。
(5)まとめ
したがって,本件考案1の(1)は,新規性欠如又は進歩性欠如の無効理由を有す
るから,原告の本件考案1の(1)に基づく被告製品(2)についての請求は,その余の
点について判断するまでもなく,理由がない。
7争点(2)イ(本件考案1の(2)の新規性又は進歩性欠如)
(1)被告は,乙2の「ガイド部材12「固定ピン11」が本件考案1の(2)」,
の「一対のスライダー「カム部材」にそれぞれ相当する旨主張する。」,
しかしながら,乙2考案の「ガイド部材12」は「クランク部材8の支点を超え,
た側に取り付けた受圧ピン10,10と,取付部材1の側に設けた固定ピン11との間
に・・・懸架される」ものであり,構成要件D1にいう「支持部材に摺動自在に拘持
される」ものとか,構成要件D2にいう「取付部材に固着したカム部材へ当接させ
た」ものということはできない。
(2)したがって,被告の本件考案1の(2)の新規性及び進歩性欠如の主張は,理
由がない。
8争点(2)ウ(本件考案1の(1)及び(2)の要旨変更による新規性欠如)
(1)「作動部材「取り付けられた」は,それぞれ本件当初明細書の「作動ピ」,
ン「軸架された」の概念を超える広い概念であるとしても,前提事実(4)ア(本」,
件当初明細書の記載事項)及び別紙手続補正書(乙4)によれば「作動部材「取,」,
り付けられた」は,本件当初明細書から自明の範囲内のことであり,本件補正は本
件当初明細書の要旨を変更するものではないと認められる。
(2)したがって,被告の本件考案1の(1)及び(2)の要旨変更による新規性欠如
の主張は,理由がない。
9争点(3)(損害の額)
(1)相当な実施料率
証拠(甲15)によれば,社団法人発明協会発行の「実施料率〔第4版」では,〕
昭和49年から平成3年までに間に,事務用機械器具の属する「16.その他の
機械」について締結されたライセンス契約における実施料率は,1%から23%に
分散しているが,2%から7%の間に集中していることが認められる。
この事実に,本件考案1の(2)の技術内容等の本件に顕れた諸般の事情を考慮す
れば,相当な実施料率を3%と認めるのが相当である。
(2)被告製品(2)の販売価格
原告は,被告製品(2)の販売価格は被告製品(1)との組で1組当たり6.1米国ド
ルであると主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
したがって,被告が自認する3.568米国ドルをその販売価格として採用する。
(3)3項の損害額
被告製品(2)の販売個数及び販売期間中の為替レートは,前提事実(3)ア(ア)b及
びcのとおりである。
そうすると,実施料相当の損害額は,63万4524円となる。
3.568米国ドル×117円×5万0666個×3%=63万4524円
(4)弁護士費用等相当の損害額
ア証拠(甲7∼9)及び弁論の全趣旨によれば,原告の主張ウ(ア)∼(ウ)の事実
が認められる。
イ本件訴訟の内容,訴訟経過,認容額等本件に顕れた諸般の事情を考慮すると,
被告の不法行為と相当因果関係を有する弁護士費用等相当の損害額を15万円と認
めるのが相当である。
10結論
以上によれば,原告の請求は,本件実用新案権1の請求項2に基づき,被告製品
(2)の輸入,譲渡等の差止め並びに被告製品(2)及び金型の廃棄,並びに不法行為に
よる損害金78万4524円及びこれに対する不法行為後である平成19年6月1
3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限
度で理由があり,その余は理由がない。
仮執行の宣言は,相当でないので,付さないこととする。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官
市川正巳
裁判官
大竹優子
裁判官
宮崎雅子

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