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平成29年11月29日判決言渡
平成29年(行ケ)第10071号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成29年8月30日
判決
原告ファルメコソシエテアノニム
デルモコスメティックス
訴訟代理人弁護士深井俊至
花井美雪
弁理士青島恵美
被告ピアス株式会社
訴訟代理人弁理士中川博司
小川稚加美
松本康伸
主文
1特許庁が取消2014-300312号事件について平成28年11
月14日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1原告の求めた裁判
主文同旨
第2事案の概要
本件は,商標登録の不使用取消審判請求に基づいて商標登録を取り消した審決の
取消訴訟である。争点は,商標法50条1項該当性(登録商標の使用の有無)であ
る。
1本件商標
原告は,次の商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1)。
「COVERDERM」
①登録番号第4164563号
②出願日平成9年2月5日
③登録日平成10年7月10日
④商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第3類化粧品
2特許庁における手続の経緯
被告は,平成26年4月25日,特許庁に対し,継続して3年以上日本国内にお
いて商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが本件商標の指定商品に
ついて本件商標の使用をしていないとして,商標法50条1項に基づき本件商標に
係る商標登録の取消しを求めて審判(以下「本件審判」という。)を請求した(取消
2014-300312号)。
なお,本件審判の請求の登録は平成26年5月16日になされたことから,要証
期間は,平成23年5月16日から同26年5月15日までである(以下,当該期
間を「本件要証期間」という。)。
特許庁は,平成28年11月14日,原告が提出した証拠からは,本件商標が本
件要証期間内に使用されたことが証明されたということはできないとして,本件商
標に係る商標登録は取り消す旨の審決をし,当該審決の謄本は,同月25日,原告
に送達された。
3審決の理由の要点
次に掲げる原告が提出した証拠(ただし,審決における証拠番号は本件訴訟にお
ける証拠番号に合わせるものとする。)からは,本件要証期間内に日本国内において,
本件商標に係る商標権を有する者(以下「本件商標権者」という。),本件商標に係
る通常使用権者又は専用使用権者のいずれかが,「化粧品」について本件商標(社会
通念上同一のものを含む。)を使用していることを証明したということはできない
から,本件商標に係る商標登録は,商標法50条1項の規定により,取り消すべき
ものである。
(1)甲9について
甲9の1ないし7は,いずれもイタリア国所在の会社が発行した「EM/EXP
ORTMAGAZINE」と題する雑誌(以下,当該雑誌を「EM」という。)の
一部(写し)である。これらの雑誌の使用商標は,本件商標の「COVERDER
M」の欧文字につき,書体のみ変更を加えた同一の文字からなるものといえるから,
本件商標と社会通念上同一のものと認められる。
しかしながら,これらの雑誌は,いずれも外国語によるものであるから,日本の
取引者,需要者に向けたものということができない。
(2)甲10及び甲11について
甲10は,2014年7月31日付けの「TOWHOMITMAYCONCERN」と題する書
面(写し)であり,その抄訳には,「『エクスポート・マガジン』というタイトルの
雑誌の各号で,ファルメコ株式会社が彼らの広告を出していたことを証明する」,
「エクスポート・マガジンには日本と極東を含む世界中で3つの配布方法があるこ
と」及び「毎年日本へおよそ1,000部送り,非常に多くのオンラインでの購読
者を持っていること」等が記載されている。
しかしながら,甲10において毎年日本へおよそ1,000部送付している旨述
べられているものの,これらの送付されたEMが,我が国において本件要証期間内
に頒布された事実を証する書面の提出はない。
また,甲11には,日本で2013年5月13日から15日までに行われた「ビ
ューティーワールドジャパン」という化粧品の展示会でEMが配布されていた旨
の記載が認められるものの,当該展示会が本件要証期間内に開催されたとしても,
甲11からは,当該展示会において実際にEMが頒布された事実を確認することは
できない。
(3)甲12について
甲12の1ないし10は,いずれも「COMMERCIALINVOICE」
(写し)であって,「FARMECO」の取扱いに係る「COVERDERM」の各
種商品についてのインボイスが,本件商標権者から日本在住の者に対して発行され
ている。しかしながら,このうち,甲12の1ないし9は,全て本件要証期間外の
ものであり,また,甲12の10は,本件要証期間内のものではあるが,「ITEM」
に記載されている「COVERDERMPERFECTFACE30ml」,
「COVERDERMFINISHINGPOWDER25gr」等の各種
商品が使用商品であるとしても,これらの商品に本件商標がどのように使用されて
いるかを確認することができず,かつ,本件商標権者が輸出したCOVERDER
Mの各種商品が,日本在住の者に輸入され,我が国において譲渡等された事実を確
認することはできない。
(4)甲17について
ア甲17の2は,「【COVERDERM】カバーおまけフィニシンパウ
ダー(粉パウダー)」が,2014年1月17日時点において「完売」であること,
甲17の7は,「COVERDERM(カバーダーム)パーフェクトレッグス」が,
同じく「取り扱いを終了」したこと,甲17の12は,カバーダームの「コンシー
ラー,パーフェクトレッグス」等が,同じく「生産終了」であること,甲17の4
は,「YAHOO!BEAUTY」のウェブサイトにおいて「カバーダームの検索結
果」を,それぞれ示すにすぎないものである。
イ甲17の3は,2014年1月17日に印刷された「釣りナビTUR
INAVI」のウェブサイトであり,「メーカー」を「カバーダーム(COVERD
ERM)」とするコンパクトパウダー,コンシーラー等の商品の販売に関する広告が
掲載されており,甲17の5は,2013年10月28日に印刷された「Ould
oor」のウェブサイトであり,甲17の3と同様の商品の販売に関する広告が掲
載されている。しかしながら,これらは本件要証期間内のものといえるとしても,
当該ウェブサイトの作成者である「釣りナビTURINAVI」又は「Ould
oor」による化粧品(コンパクトパウダー,コンシーラー等)の販売に関する広
告であって,本件商標を使用した本件商標権者による化粧品の販売に関する広告と
いうことができない。
ウ甲17の6は,「フェイスパウダー通販SHOP」のウェブサイトであり,
2006年6月3日に,「販売元」を「ケイワ・インターネットショップ」とする「C
OVERDERMファンデーション・コンシーラー・フェイスパウダー」の販売に
関する広告が掲載されたものといえる。しかしながら,当該広告は,本件商標を使
用した本件商標権者による「化粧品」の広告ということができず,かつ,本件要証
期間外のものである。
エ甲17の8は,2013年10月28日に印刷された「フェイスショッ
プファンデーションYahoo!ショッピング館」のウェブサイトにおいて,「商
品名」として「COVERDERM(カバーダーム)パーフェクトフェイス」など
と記載されたこと,甲17の9は,同じく「メイク専門店」のウェブサイトにおい
て,「COVERDERM(カバーダーム)コンパクトパウダー」の商品情報が掲載
されたこと,甲17の10は,2014年1月17日に印刷された「Keywor
ds」のウェブサイトにおいて,ファンデーション「パーフェクトフェイスSP
F20ピンクベージュ2カバーダーム(COVERDERM)」の商品情報が掲
載されたこと,甲17の11は,同じく「livedoorblog」において,
「COVERDERMファンデーション・コンシーラー・フェイスパウダー3点セ
ット」の商品情報が掲載されたこと,甲17の13及び14は,同じく「フェロモ
ン通販」において,「カバーダーム【COVERDERMフィニッシングパウダー】」
及び「カバーダーム【COVERDERMパーフェクトフェイスSPF20】」の商
品情報が掲載されたということができる。しかしながら,これらの情報が本件要証
期間内のものといえるとしても,これらはいずれも当該ウェブサイトの作成者によ
る化粧品に関する情報等が掲載されたにすぎず,本件商標を使用した本件商標権者
による「化粧品」の広告ということができない。
(5)甲14及び甲20について
甲14の1は,2011年における日本語での注文書(写し)であり,甲20の
1は,体裁は異なるが,同じく日本語での注文書である。また,甲14の1及び甲
20の1には,上段に使用商標が表示され,その下に「カバーダーム」の記載があ
り,「製品名」,「数量」について記載する欄が設けられ,甲20の1には「送信」の
記載があるから,「カバーダーム」の化粧品の注文書といえるものであり,甲20の
2及び3の画面に移動することにより,英語により各種商品についての情報を見る
ことができる。しかしながら,甲14の1及び甲20の1は日本語によるものであ
るから,日本の需要者が利用することができるといえるものの,本件要証期間内に,
本件商標権者が日本の需要者から当該注文書を利用した「カバーダーム」の化粧品
の注文を受け,本件商標権者から日本の需要者に「化粧品」が引き渡されたことを
証する証拠の提出はない。
また,甲20の1について,原告は,自ら開設している「日本向けのオフィシャ
ル・ウェブサイト」のトップページであると主張するが,甲20の1からは,これ
が原告のオフィシャル・ウェブサイトであることの確認ができず,また,インター
ネットアドレスの記載はない。そして,甲20の1の「弊社製品に関する詳しい説
明はこちらをクリックしてください。」という部分から甲20の2及び3の画面に
移動できるとしても,当該画面には,商品の注文に関する事項である商品価格,送
料,支払方法等についての記載は見当たらず,甲20の2及び3の画面から,甲2
0の1の画面に移動できるものであるかは不明である。
(6)甲21について
甲21は,「Amazon.co.jp」のウェブサイトであり,「カバーダーム
コンパクトパウダーフェイスパウダー」について,「現在在庫切れ」であることを
示すにすぎないものである。そして,当該商品の「Amazon.co.jpでの
取り扱い開始日」が2011年9月6日であるとしても,これが本件要証期間内に
掲載されていたものであるかを確認することができず,また,当該商品の販売者と
本件商標権者との関係も明らかでない。
(7)その他について
原告が提出した甲13,甲15及び甲16を勘案しても,本件商標権者等によっ
て,本件商標(社会通念上同一のものを含む。)が「化粧品」について商標法2条3
項にいう使用をされたものということができない。
第3原告主張の審決取消事由
本件商標は,通常使用権者である株式会社ベリタスによって本件要証期間内に日
本において化粧品について使用されていたのであり,また,原告は本件要証期間内
に本件商標を日本において化粧品について使用していたのであるから,審決の認定
は誤りであり,取り消されるべきである。
1株式会社ベリタスによる本件商標を付した化粧品の輸入,販売
原告は,株式会社ベリタスに対し,「COVERDERMPERFECTFA
CE30ml」等の商品を販売し(甲12の10,甲22),同商品は2011年
12月7日にUPSにより発送され(追跡番号H7965583738号,甲13
の10,甲23),さらに,同商品は,株式会社ベリタスによって輸入されて,20
11年12月12日に同社に配達されたのであり,これらの事実は,UPSの証明
書により証明されている(甲13の1)。
したがって,原告は,上記各商品を日本に所在する日本法人である株式会社ベリ
タスへ譲渡し,同社によって上記各商品は日本に輸入され,上記各商品は日本国内
の流通に置かれたことが認められる。
2本件商標を付した化粧品の広告
(1)EMに掲載された広告
EMの2011年4号(甲28),6号(甲9の4,甲29),8号(甲30),2
012年2号(甲31),4号(甲32),6号(甲33),8号(甲9の3),20
13年2号(甲9の1),4号(甲9の5),6号(甲9の6),8号(甲9の7),
2014年2号(甲9の2),4号(甲34)において,「COVERDERM」商
標を使用した化粧品の広告が掲載されている。
(2)EMの日本における配布
アEMの「ビューティーワールドジャパン」における配布
原告は,EMの発行者から,平成24年開催の「ビューティーワールドジャパ
ン」において2012年4号(甲36の1及び2)が,平成25年開催の「ビュー
ティーワールドジャパン」において2013年4号(甲37の1及び2)が,そ
れぞれ配布されたという連絡を受けている。また,メサゴ・メッセフランクフルト
株式会社のAは,2011年から2014年まで東京ビッグサイトで開催された「ビ
ューティーワールドジャパン」において,EMが配布されたことを確認している
(甲11の2)。
したがって,少なくとも本件要証期間内である平成25年において,東京ビッグ
サイトにおいて開催された「ビューティーワールドジャパン」で化粧品について
本件商標を使用した広告を掲載したEMの2013年4号が配布されている。
イEMの購読者への配布
EMの発行者である「MTEEdizionis.r.l.」のマネージングパー
トナーであるBは,毎年日本にEMを約1,000部送付している旨を述べている
(甲10)。そして,2011年から2014年までの日本国内における購読者数は
少なくとも68名である(甲41)。実際に,日本の法人である株式会社アルビオン
のCは,2011年から2014年までに,日本においてEMを受領していた旨を
述べている(甲39)。
したがって,EMは,日本においても少なくとも2011年から2014年まで
に定期的に購読者宛てに配布されていた。
ウEMによる日本における広告
EMの配布地域には日本も含まれており,2011年から2014年までの日本
国内における購読者数は少なくとも68名である(甲41)。また,株式会社アルビ
オンのCは,2011年から2014年まで現実に同社がEMを受領し,社内で読
まれていた旨を述べている(甲39)。そして,2011年から2014年までの購
読者のリストの中には,日本でショップチャンネルを運営している日本の会社「S
FILLINTERNATIONALINC.」が含まれている(甲18,甲4
1)。また,2013年には,同社のショップチャンネルでCOVERDERMを販
売するための交渉をしている(甲18,甲42,甲43)。このことからも,EMに
おける広告は,原告の日本における顧客に対するものとして有効であったというこ
とができる。
したがって,COVERDERMの広告が掲載されたEMの2011年4号,6
号及び8号,2012年2号,4号,6号及び8号,2013年2号,4号,6号
及び8号,2014年2号及び4号は,日本国内の購読者に配布されたのであるか
ら,これらの広告は,日本国内において行われた広告である。また,COVERD
ERMの広告が掲載されたEMの2011年4号,2012年4号,2013年4
号及び2014年4号は,東京で開催された「ビューティーワールドジャパン」
において配布されていたのであるから,これらの広告も,日本において行われた広
告である。
3原告の日本向けウェブサイト
平成23年11月23日印刷と付されている「http://www.coverderm.jp」のウェ
ブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。甲14の1)には,ページ冒頭に小
さく「CoverdermProductOrderForm」の記載があり,その下に大きく「COVE
RDERM」が表示されている。そして,「カバーダーム」,「カバーダームは最先端
のスキンケア化粧品の専門ブランドです。」,「輝かしい歴史を誇り,さらに成長を続
ける製品ラインナップを,長年にわたり80ヶ国以上の国々にお届けしています。」,
「顔や体の気になる箇所をカバーしてくれる,理想的なアイテムを多数揃えていま
す!」,「世界中の皮膚科医やメイクアップアーティストにも長年支持されていま
す!」,「下記の空欄に必要事項をご記入のうえ,ご注文ください。」の記載の下に,
名,姓,住所,製品名,数量,メールアドレス,コメントの記入欄と送信ボタンが
あり,これに記入して送信することにより注文できるようになっている。
さらに,その下には,「弊社製品に関する詳しい説明はこちらをクリックしてくだ
さい。」と記載され,COVERDERM商品の紹介ページにリンクが張られている。
このように,甲14の1の記載は,日本語で記載されているのであるから,「CO
VERDERM」,「カバーダーム」は,日本の消費者に向けた広告に該当し,また,
当該ページにより直接注文することもできるのであるから,取引書類にも該当する。
したがって,原告は,本件ウェブサイト(電磁的方法による提供に該当する。)に
おいて,本件商標を化粧品に使用していた。
第4被告の反論
原告の提出する証拠には,本件商標が本件要証期間内に日本国内で使用されたこ
とが何ら記載されておらず,審決の認定判断に誤りはない。
1株式会社ベリタスによる本件商標を付した化粧品の輸入,販売
原告の商品が2011年12月7日にUPSにより発送されたことを示すUPS
送り状等について,新たに甲22及び甲23が提出されたものの,甲22及び甲2
3と甲13の1については,互いにその関連が理解できず,何ら紐付けがなされて
いない。また,コマーシャル・インボイスにおいては,「COVERDERMPE
RFECTFACE」,「COVERDERMFINISHINGPOWDE
R」等の記載があるものの,これらがどのような商品なのか,これらの商品におい
て本件商標がどのように使用されているのかが明らかではない。
したがって,これらの証拠によっても,これらの商品に本件商標がどのように使
用されているかを確認することができず,かつ,本件商標権者が輸出したCOVE
RDERMの各種商品が,日本在住の者に輸入され,我が国において譲渡等された
事実を確認することもできない。
2本件商標を付した化粧品の広告
「ビューティーワールドジャパン」のような展示会において,イタリアの会社
が配布した雑誌の中に広告が掲載されていたとしても,このような事実をもって,
その広告が日本国内の需要者をターゲットにしているとは到底いうことができず,
当該広告によって本件商標が使用されていたとは認めることができない。仮に,E
Mが日本において配布され,購読者がいたとしても,EMに掲載されている広告は
日本の需要者をターゲットとしたものではなく,当該配布によっては,本件商標が
使用されていたことにはならない。このような広告が日本国内における商標の使用
となると,日本に輸入販売されている外国の新聞や雑誌に掲載されている広告は全
て日本国内での商標の使用に該当することになり,このような結果は不合理である。
したがって,EMにおける広告によっては,本件商標が使用されたことを証明す
るものとはならない。
3原告の日本向け本件ウェブサイト
確かに,本件ウェブサイトは日本語で作成されており,商品の注文ができる体裁
になっているが,リンク先とされるCOVERDERM商品の紹介ページは,原告
の英語のウェブサイトであり,商品の価格は不明である。また,商品の発送方法や
代金の支払等について何ら記載がなく,本件ウェブサイトが日本の需要者を対象と
した注文サイトとして機能しているかどうか疑わしいといわざるを得ない。仮に,
本件ウェブサイトにおける本件商標が広告として機能されることがあるとしても,
日本の需要者の目に触れることのない状況において,本件ウェブサイトは形式的に
インターネット上にアップされているにすぎず,正当な商標の使用とはいえない。
したがって,本件ウェブサイトにおいても,本件商標が使用されていたと認める
ことはできない。
第5当裁判所の判断
1認定事実
前記第2の1記載の事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実
が認められる。
(1)原告は,平成23年11月23日,冒頭に「CoverdermProductOrderForm」
と付した本件ウェブサイトにおいて,本件商標及び日本語でこれを仮名書きした「カ
バーダーム」という名称を表題に付して,「カバーダームは最先端のスキンケア化粧
品の専門ブランドです。」,「輝かしい歴史を誇り,さらに成長を続ける製品ラインナ
ップを,長年にわたり80ヶ国以上の国々にお届けしています。」,「顔や体の気にな
る箇所をカバーしてくれる,理想的なアイテムを多数揃えています!」,「世界中の
皮膚科医やメイクアップアーティストにも長年支持されています!」という文章を
掲載した。
そして,原告は,その下に「下記の空欄に必要事項をご記入のうえ,ご注文くだ
さい。」という文章を掲載した上,名,姓,住所,製品名,数量,メールアドレス,
コメントの記入欄と送信ボタンを設けるなどして,原告の商品をインターネットで
注文できるように設定するとともに,その下に「弊社製品に関する詳しい説明はこ
ちらをクリックしてください。」という文章を掲載し,COVERDERMの商品の
紹介ページにリンクさせていた。
なお,本件ウェブサイトの末尾には,「Copyright🄫FarmecoS.A.Dermocosmetics
–Allrightsreserved.」と表記され,本件ウェブサイトの著作権者が原告である
ことが明記されている。(甲14の1)
(2)原告の代表者は,平成20年10月30日から少なくとも本件口頭弁論終
結時まで,本件ウェブサイトに係る「coverderm.jp」という日本のドメイン名を個
人名で取得し,これを原告に使用させていた(甲14の2,甲20の1ないし3,
甲44の1及び2)。
(3)本件ウェブサイトは,本件商標が付された原告のCOVERDERMの商
品につき,日本における販売促進及び日本の消費者から直接注文を受けることを目
的として,平成20年に作成されたものである。また,原告のインターネット経由
での売上げは,平成23年が7863.49ユーロ,平成24年が8129.44
ユーロ,平成25年が7555.50ユーロ,平成26年上半期が4289.94
ユーロであることがそれぞれ認められる(甲15)。
2商標法50条1項該当性
上記認定事実によれば,原告は,少なくとも本件要証期間内である平成23年1
1月23日に,本件ウェブサイトにおいて,日本の需要者に向けて原告の「COV
ERDERM」の商品に関する広告及び当該商品の注文フォームに本件商標を付し
て電磁的方法により提供していたことが認められる。
したがって,原告は,本件商標について,少なくとも本件要証期間内に日本国内
で商標法2条3項8号にいう使用をしたものといえるから,同法50条1項に該当
するものとは認められず,原告の前記第3の3の取消事由は,理由がある。
3被告の主張について
被告は,本件ウェブサイトは日本語で作成されているものの,リンク先とされる
COVERDERMの商品の紹介ページは原告の英語ウェブサイトであり,商品の
発送方法や代金の支払等について何ら記載がないのであるから,本件ウェブサイト
が日本の需要者を対象とした注文サイトとして機能しているかどうかは疑わしく,
仮に,本件ウェブサイトにおける本件商標が広告として機能されることがあるとし
ても,日本の需要者の目に触れることのない状況において,本件ウェブサイトは形
式的にインターネット上にアップされているにすぎず,正当な商標の使用とはいえ
ないなどと主張する。
しかしながら,前記1の認定事実によれば,本件ウェブサイトは,日本語で本件
商標に関するブランドの歴史,実績等を紹介するとともに,注文フォーム及び送信
ボタンまで日本語で記載されているのであるから,リンク先の商品の紹介が英語で
記載されているという事情を考慮しても,本件ウェブサイトが日本の需要者を対象
とした注文サイトであることは明らかである。そうすると,審決が認定するとおり,
本件商標を付した商品が日本の需要者に引き渡されたことまで認めるに足りないか
否かはさておき,少なくとも,原告は,本件商標について本件要証期間内に日本国
内で商標法2条3項8号にいう使用をしたものと認められる。
また,証拠(甲63の1ないし3)によれば,グーグルで検索する場合において,
検索キーワードを「カバーダーム」,「COVERDERM化粧品」としたとき及び日本語の
ページを検索するように設定した上で検索キーワードを「COVERDERM」としたときは,
本件ウェブサイトのリンク及び本件ウェブサイトの説明が表示されるものと認めら
れるから,本件ウェブサイトは形式的にインターネット上にアップされているとは
いえず,被告の主張は,その前提を欠くものである。
したがって,被告の上記各主張は,いずれも採用することができない。
第6結論
以上によれば,原告の前記第3の3の取消事由は理由があり,その余の点につい
て判断するまでもなく,原告の本訴請求は理由があるから,これを認容することと
して,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官
清水節
裁判官
中島基至
裁判官
岡田慎吾

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