弁護士法人ITJ法律事務所

最高裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
理由
検察官の上告趣意は,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行
為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下
「麻薬特例法」という。)11条1項,13条1項の没収・追徴に関する原判決の
判断が,名古屋高等裁判所金沢支部平成6年(う)第22号同年6月21日判決,
大阪高等裁判所平成8年(う)第715号同9年3月26日判決及び東京高等裁判
所平成16年(う)第2814号同17年6月3日判決に反するとともに,法令の
解釈適用に誤りがあって,これを破棄しなければ著しく正義に反するというのであ
る。
原判決は,麻薬特例法の没収・追徴について,薬物犯罪収益等を得ていない者か
らこれを没収・追徴することはできないとの解釈を示した上,本件薬物の売上金で
ある薬物犯罪収益は,正犯が得たものであり幇助犯である被告人が得たものではな
いとして,これを被告人から追徴せず,被告人が幇助行為の報酬として得た金銭の
限度で追徴を認めた。この判断は,薬物犯罪収益の具体的な分配等にかかわらず幇
助犯からも正犯と同様に薬物犯罪収益全額について没収・追徴することを認めた所
論引用の大阪高等裁判所及び東京高等裁判所の各判例と相反するというべきである
(なお,所論引用の名古屋高等裁判所金沢支部の判決は,共同正犯たる被告人から
の追徴に際して判断を示したもので,事案を異にし,本件に適切でない。)。
しかしながら,麻薬特例法11条1項(2条3項),13条1項は,その文理及
び趣旨に照らし,薬物犯罪の犯罪行為により得られた財産等である薬物犯罪収益等
をこれを得た者から没収・追徴することを定めた規定であると解される。これを幇
助犯についてみると,その犯罪行為は,正犯の犯罪行為を幇助する行為であるか
ら,薬物犯罪の正犯(共同正犯を含む。)がその正犯としての犯罪行為により薬物
犯罪収益等を得たとしても,幇助犯は,これを容易にしたというにとどまり,自ら
がその薬物犯罪収益等を得たということはできず,幇助したことのみを理由に幇助
犯からその薬物犯罪収益等を正犯と同様に没収・追徴することはできないと解され
る。そして,上記各条文の解釈によれば,幇助犯から没収・追徴できるのは,幇助
犯が薬物犯罪の幇助行為により得た財産等に限られると解するのが相当である。し
たがって,これと異なる上記大阪高等裁判所及び東京高等裁判所の各判例は,いず
れもこれを変更し,原判決は,その判断が相当なものとして,これを維持すべきで
ある。
よって,刑訴法410条2項,408条により,裁判官全員一致の意見で,主文
のとおり判決する。
(裁判長裁判官近藤崇晴裁判官藤田宙靖裁判官堀籠幸男裁判官
那須弘平裁判官田原睦夫)

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