弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
一 被申立人が、昭和五五年三月一四日付で申立人A、同Bの両名に対してなした
各無期停学(ただし、一二か月を経過するまでは解除を認めない)処分の効力は、
昭和五六年四月一日以降右当事者間の当庁昭和五五年(行ウ)第一号無期停学処分
取消請求事件の判決確定に至るまでこれを停止する。
二 申立人C、同D、同Eの三名の本件各申立は、いずれもこれを却下する。
三 申立費用はこれを五分し、その二を被申立人の負担とし、その余を申立人C、
同D、同Eの三名の負担とする。
○ 理由
第一 申立人五名の申立の趣旨及びその理由は、別紙執行停止申立書、「執行停止
申立書訂正箇所について」と題する書面及び申立補充書(一)ないし(三)のとお
りであり、被申立人の意見は、別紙意見書、意見書訂正書、意見書訂正書
(二) 及び意見書(二)のとおりである。
第二 当裁判所の判断
一 (本案訴訟の係属)
疎明資料によれば、申立人五名はいずれも筑波大学の学生であり、申立人Aは昭和
五一年四月に入学し、第二学群人間学類の四年次に在籍し教育学を専攻する者、同
Bは同年同月に入学し、第二学群比較文化学類の四年次に在籍し比較文学を専攻す
る者、同Cは昭和五二年四月に入学し、第三学群社会工学類の四年次に在籍し社会
経済計画を専攻する者、同Dは同年同月に入学し、第二学群人間学類の四年次に在
籍し心身障害学を専攻する者、同Eは昭和五三年四月に入学し、第三学群社会工学
類の三年次に在籍する者であるところ、被申立人(但し、当時はF学長であつ
た。)は申立人五名に対し昭和五五年三月一四日付で「筑波大学学則第四七条第一
項及び第二項により、無期停学に処する(ただし、一二か月を経過するまでは解除
を認めない)。」との懲戒処分(以下「本件処分」という。)をしたこと、申立人
五名は右処分について違法があるとして同年六月一三日当裁判所に右処分取消の訴
えを提起し係属していることが認められる。
二 (積極的要件について)
申立人五名はいずれも「本件処分により回復困難な損害を被り、かつ、その損害は
時々刻々拡大累積しているから、これを避けるため右各処分の効力を停止する緊急
の必要がある。」旨主張するので判断する。
1 疎明資料によれば、筑波大学学則上、同大学学生の在学年限は医学専門学群の
学生を除き、最長六年間であり(学則第二三条。なお、申立人五名の在籍する学群
ではいずれも通常四か年間で卒業できる建前になつている)、右在学年限六年間を
超えた者については学長が除籍する(学則第四五条二号)ところ、停学処分期間も
右在学年限に算入される(学則第四七条四項)(即ち、停学処分中で、かつ卒業に
必要な単位数のうち未履修単位ある者は、在学年限六年以内に復学してその単位を
修得することができないときには、在学年限六年を超えたことを理由に除籍され
る。)関係にあることが認められる。この経過をたどり除籍されることになる虞れ
が現在発生している停学処分中の者は、結果的には退学処分を受けたのに等しいこ
とになるのであるから(即ち、本来停学処分は、退学処分と異なり、学生たる身分
を保持することを前提とする懲戒処分であるにも拘らず、在学年限経過によりその
身分を喪失することとなるから)、このような事態は行政事件訴訟法第二五条二項
の「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に当たると解するのが
相当である。
(一) そこで、まず申立人A及び同Bの両名について検討する。疎明資料によれ
ば、右申立人両名はいずれも昭和五七年三月末までが六か年の在学年限(即ち昭和
五一年四月入学であるため)であり、昭和五六年四月からの一年間を残すのみであ
るところ、申立人Aには卒業に必要な単位数(一三四・五単位)のうち未履修のも
のが少なくとも一九・五単位(疎乙第五三号証、専攻科目及び体育など)あり、同
Bには卒業に必要な単位数(一三三単位)のうち未履修のものが通年科目(この科
目は第一学期の始めに履修申請をしなければ受講できない。以下同じである。)を
含め四一単位(専攻科目一九・五単位、関連科目A一三単位、総合科目三単位、体
育二単位、第一外国語一・五単位、国語二単位)あると認められる。従つて、右両
名については、昭和五六年度の第一学期(四月)からの履修ができないと、仮に同
年度の途中で本件処分が解除されたとしても、卒業に必要な単位数の履修が未了の
まま険籍されることになる虞れが現在既に発生していると解せられるから、右両名
につき「回復の困難な損害を避けるため緊急の必要がある」旨の一応疎明がなされ
ているものというべきである。
なお、この点に関し、被申立人は、「申立人A、同Bの両名については、昭和五六
年五月六日までに本件処分が解除され、同日から学業に復帰すれば、在学年限たる
昭和五七年三月末日までに卒業に必更な履修単位を修得できるから、現段階(即ち
昭和五六年三月の時点)において回復困難な被害を避けるため緊急の必要があると
はいえない。」旨主張するが、右は単純な日数計算の結果にすぎず、実際に単位修
得が可能かどうか多分に疑問があり(例えば体育についてみるに、年度当初に履修
申請をしていない場合は、受講しても単位が認められないことになつている。-正
課体育ガイダンス・マニユアル五頁。疎甲第六五号証)、にわかに採用できない。
(二) 次に申立人C、同Eの両名について検討する。
(1) 疎明資料によれば申立人Cは昭和五八年三月までが在学年限(昭和五二年
四月入学であるため)であり、昭和五六年四月からの二年間を残すところ、殊に疎
乙第六六号証の資料(6)によれば卒業に必要な単位数(一三四単位、そのうち専
攻科目が四〇単位である。)のうち未履修のものが四〇単位(専攻科目二七単位
((一三単位が履修済である。I5000))関連科目A九単位、同B一単位、体
育二単位、第一外国語専門一単位)あり、かつその未履修のもののうちの卒業研究
(通年科目)は本来同申立人の主専攻の社会経済計画の専攻実習(通年科目)の履
修が前提条件になつているが、しかし同大学履修案内上「主専攻分野に進学してい
る四年次以上の学生にあつては、基礎科目二五単位と専攻科目三一単位以上を修得
していれば、右卒業研究を専攻実習と同時に履修できる」ことになつているので、
基礎科目二五単位を既に修得している同申立人としては昭和五六年度に専攻科目の
未履修のもののうち右二科目を除く中から一八単位を修得すれば、昭和五七年度に
専攻実習と卒業研究を同時に履修できる条件を充たすことができ、かつ右書証のう
ち第三学群社会工学類長の陳述部分によれば右専攻科目一八単位は、体育〇・五単
位及び第一外国語専門〇・五単位とともに、昭和五六年度の第一学期からでなくと
も、第二及び第三学期に修得可能であることが一応認められる。もつとも、右履修
案内上「履修申請は通年科目は勿論、第二学期及び第三学期から開始されたり又は
夏期休暇期間中などに集中講義で行なわれる科目についても、原則として指定期間
内(おおむね四月下旬)に行なわれなければならない。
」旨定められている(疎乙第六六号証資料(5)一一ページ及び疎甲第六五号証参
照)が、右疎乙第六六号証の陳述部分では、第二学期に入つてからの履修申請も例
外的に許容されることを前提としているので、同Cについては昭和五六年度第二学
期始め(八月一日)ころまでに本件処分が解除されるならば卒業に必要な単位数の
履修が可能であると認められる。なお、同申立人は回復困難な損害として教育職員
免許状取得の不能をも主張するが、右疎乙第六六号証によれば教育職員免許法上、
右免許状取得の基礎資格は「学士の称号を有すること」であるから、同申立人が卒
業できれば充足され、未履修のいわゆる「教職科目」(教育原理三単位、教科教育
法一単位、教育実習二単位)については前述のとおり昭和五八年三月に卒業できれ
ば、その後は筑波大学の聴講生として受講することにより、同年度中に同法による
教育職員免許取得の資格要件を取得することが可能であると認められる。
(2) 疎明資料によれば、申立人Eは昭和五九年三月までが在学年限(昭和五三
年四月入学であるため)であり、昭和五六年四月から三年間を残すところ、同申立
人は同Cと同じ社会工学類に属しているが、希望している社会経済計画の専攻をし
た場合、前記(1)のとおり卒業研究と主専攻実習の同時履修が可能となり得るの
で、少なくとも二年間の在学年限を残していれば卒業に必要な単位の履修期間とし
て足りると認められる。
従つて、右申立人C、同Eの両名については、現時点において本件処分の効力の執
行停止をしなければならない程の「緊急の必要」が存するとはいえない。
2 申立人Dについてみるに、同申立人は「本件処分のため特に大きな経済上の困
難に直面している」旨主張するが、疎明資料によれば、確かに同申立人は入学時か
ら親の経済的援助を受けられず、日本育英会の奨学金及び家庭教師等のアルバイト
の収入で自活してきたところ、本件処分後の昭和五五年四月から大学の学生宿舎を
出て民間アパートに移つた(学生宿舎の収容数の制約から四年生は宿舎から出る扱
いになつている)ため、住居費がかさみ、同月二二日右奨学金(一か月一万八〇〇
〇円)の貸与が停止されたうえ、本件処分中の大学に対し年間九万八〇〇〇円の授
業料を納めなければならず、経済的にかなり苦しい状態にあることが一応認められ
る。しかし、四年次になれば右学生宿舎から出なければならないことはあらかじめ
予想され得たことであり、また、奨学金貸与者(日本育英会)と本件処分の行政庁
たる学長とは勿論別個独立の存在であるから、仮に本件処分の執行が停止されたと
しても、その効力として同申立人の奨学金被貸与者としての地位が当然に回復され
るものであるとの疎明もない。更に同申立人は昭和五八年三月末までが在学年限
(昭和五二年四月入学のため)であり、昭和五六年四月から二年間を残すところ、
疎乙第六五号証によれば、同人の希望する聾学校教諭の免許取得及び卒業に必要な
単位数のうち未履修のもの(四三・五単位)を修得するには今後一年間あれば必
要、かつ十分であり、従つて、昭和五七年三月末までに本件処分が解除され同年四
月から学業に復帰できれば、前記各免許修得のうえで支障はなく、しかも、科目の
組み合わせを工夫すれば昭和五七年度の履修をしながらも、週三、四日程度のアル
バイトをする余地がなくもない(勿論相当の努力を要するであろうが)ことが一応
認められる。
右事実を総合考慮すれば、申立人Dにつき今直ちに本件処分の効力を停止しなけれ
ば、同申立人が経済的に困窮して就学の機会を失う等回復の困難な損害を被るとま
では認められない。
3 申立人C、同E、同Dの三名は、以上のほか大学の授業を受けられないことや
図書館その他大学の諸施設を利用できないことなどによる不利益を主張するが、こ
れらはいずれも無期停学処分に通常伴う効果であつて、これを目して行政事件訴訟
法第二五条第二項所定の「回復困難な損害」がある、ということはできない。
三 (消極的要件について)
1 そこで、被申立人は「申立人A、同Bの両名について本件処分の執行を停止す
ることにより公共の福祉に重大な影響を及ぼす」旨主張するけれども、右申立人両
名が本件処分の執行を停止されたとしても、学内を混乱させ、他の学生の勉学を妨
げるなど公共の福祉に重大な影響を及ぼす虞れがあるとまで認めるに足りる程の疎
明はないというべきである。
2 次に被申立人は「学生懲戒処分に対する執行停止という特殊性からして(即
ち、停止に伴い履修が積み重ねられ、終局的満足を与えたに等しい結果を招来する
虞れがある場合には)申立人側が本案訴訟において勝訴の合理的確実性を有する場
合に限り、執行停止が許容されるべきであり、かかる場合にはじめて『本案につい
て理由がないとみえるときは、執行停止はできない』という消極的要件に該当しな
いことになるけれども、しかし自由裁量たる本件処分につき一応でも適法性の疎明
がなされている以上、本件処分の執行停止は許容されるべきではない。」旨主張す
る。
なるほど右主張も一個の法律解釈ではあるが、しかしながら、いまだ本案について
全く証拠調べが実施されておらず、かつ疎明のみの段階にとどまる本件の場合に右
の解釈を適用することは申立人側に過酷であるとして、直ちに採用でぎないという
べきである。のみならず、被申立人は「本件処分の基礎事実として、昭和五四年一
〇月二三日以降同年一一月二日までの無許可集会など、同年一〇月二九ないし三一
日の木部棟乱入行動など、同年一一月二〇日のG基礎工学類長に対する身体拘束事
件があつた。」旨主張するところ、申立人A、同Bの両名も、それ相当に加担した
旨の疎明(疎乙第一ないし第一〇号証、第六八号証、但し、枝番のあるものはそれ
をも含む、その他)があるけれども、その反面、昭和五四年度の学園祭の実行をめ
ぐる対立した背景等を含む相反する疎明もあり(疎甲第二三ないし第二八号証、第
七〇ないし第七二号証、但し枝番のあるものはそれをも含む。殊に右三浦事件につ
いても水戸地方検察庁検察官は不起訴処分にしており)、真相は如何なる実態であ
つたのか、更には、本件処分が裁量権の範囲をこえ又はその濫用の存否を含めて、
どのように評価されるべきかにつぎ、結局のところ、いずれとも断定し難いものと
いわざるを得ない。従つて現片階においては、行政事件訴訟法第二五条三項の「本
案について理由がないとみえるとき」に該当しないと認めるのを相当とする。
四 (結論)
以上のとおりであるから、本件処分に際し、当初最少限の停学期間として予定した
一二か月を既に経過している現段階でもあり、申立人A、同Bの両名については、
これ以上本件処分を継続せしめることは(確かに被申立人主張の如く「これまでの
四年間に単位取得の努力に欠けていた」ことはあるとしても)在学年限六か年以内
に単位取得不可能を惹起し除籍へと続く事態になるため、取りあえず暫定的に履修
の機会を与えるために、本件処分の執行停止の申立を認容することとし、その余の
申立人三名については「回復困難な損害を難けるため緊急の必要がある」とは認め
られないので、その余の点を判断するまでもなく理由がないものとしてこれを却下
することとし、申立費用の負担については行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第九
三条一項本文、第八九条を適用して主文のとお力決定する。
(裁判官 記前三郎 大東一雄 山本哲一)
執行停止申立書等(省略)

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