弁護士法人ITJ法律事務所

最高裁判例


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平成20年(ネ)第10002号損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平
成19年(ワ)第21818号)
平成20年4月23日判決言渡,平成20年3月17日口頭弁論終結
判決
控訴人(一審原告)X
被控訴人(一審被告)グンゼ株式会社
訴訟代理人弁護士石川正,金井美智子,重冨貴光,佐藤俊
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人
「原判決を取り消す。被控訴人は,控訴人に対し,300万円を支払え。訴訟費用
は第1,第2審とも被控訴人の負担とする」との判決及び仮執行の宣言。
2被控訴人
主文と同旨の判決
第2事案の概要
本件は,控訴人が,被控訴人は,試作品の製作又は製造をするに当たり,控訴人
の特許出願であって出願公開前のものに係る発明の技術情報を使用したにもかかわ
らず,同技術情報に係る秘密保持契約の締結を怠って控訴人に損害を与えた等と主
張し,被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償として300万円を請求する事
案である。
原判決は,被控訴人が上記特許出願に係る発明の技術情報を使用したことは認め
られず,秘密保持契約を締結すべき義務を控訴人に対し負っていたとも認められな
い等として,控訴人の請求を棄却した。
当事者双方の主張は,以下のとおり当審における主張を付加するほかは,原判決
の「事実及び理由」欄の「第2当事者の主張」に記載のとおりであるから,これ
を引用する。
(,。)1控訴人の主張当審において提出陳述した各書面を善解したところによる
特許出願は,出願後1年6月の期間を経過するまでは,特許庁といえども勝手に
公開をすることができないのであるから,出願公開前の特許出願に係る発明の技術
情報については,秘密が保持されなければならず,したがって,控訴人の出願公開
前の特許出願である特願989号及び特願267号に係る発明の技術情報に触れた
被控訴人は,秘密保持義務を負うものというべきである。原判決は,この点につい
ての判断を誤っている。
2被控訴人の主張
控訴人の上記1の主張は争う。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の被控訴人に対する本訴請求は理由がないと判断する。
その理由は,2において当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほか
は,原判決の「事実及び理由」欄の「第3当裁判所の判断」に記載のとおりであ
るから,これを引用する。
2当審における控訴人の主張に対する判断
控訴人は,控訴人の出願公開前の特許出願である特願989号及び特願267号
に係る発明の技術情報に触れた被控訴人は,秘密保持義務を負うものと主張すると
ころ,その主張の趣旨が,被控訴人による試作品の製作が,特願989号及び特
願267号に係る発明の技術情報を漏洩したことに当たり,被控訴人が当該「秘密
保持義務」に直接違反したというものであるのか,当該「秘密保持義務」が,秘密
保持契約締結義務の根拠であるとするものであるのか,必ずしも判然としないが,
いずれにせよ失当である。
すなわち,特許法その他の法令には,出願公開前の特許出願に係る発明の技術情
報に触れた者に対し,秘密保持義務を負わせる旨の規定は存在せず,また,特許法
が,特許庁長官は,特許出願の日から一定の期間が経過したときは出願公開をしな
ければならないと規定しているからといって,当該期間経過前に当該特許出願に係
る発明の技術情報に触れた者が,出願人に対し,私法上の義務として,当然に秘密
保持義務を負うと解することもできない。したがって,控訴人の主張に係るような
「秘密保持義務」なるものを観念することができないから,控訴人の主張は失当と
いうほかはない。
第4結論
以上によれば,控訴人の被控訴人に対する請求は理由がないから棄却すべきであ
り,これと同旨の原判決は正当である。
よって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
石原直樹
裁判官
杜下弘記
裁判官古閑裕二は,転補のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官
石原直樹

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