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判決言渡平成20年4月28日
平成19年(行ケ)第10384号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成20年4月23日
判決
原告株式会社大一商会
訴訟代理人弁護士大脇保彦
同鷲見弘
同相羽洋一
同谷口優
同原田彰好
同宮本増
同川口一幸
同成瀬玲
被告特許庁長官
肥塚雅博
指定代理人川島陵司
同伊藤陽
同吉川康史
同高木彰
同内山進
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
特許庁が不服2003−1299号事件について平成19年9月27日にし
た審決を取消す。
第2事案の概要
本件は,原告が名称を「遊技機(補正前の名称は「パチンコ機の払い出し」
制御装置)とする発明につき特許出願(本願)したところ,拒絶査定を受け」
たので,これを不服として審判請求をしたが,特許庁が請求不成立の審決をし
たことから,その取消しを求めた事案である。
争点は,本願が,特開平1−308581号公報(発明の名称「パチンコ玉
の払出装置,出願人株式会社三共,公開日平成元年12月13日。以下こ」
「」,「」。の文献を引用文献といいそこに記載された発明を引用発明1という
甲1)との関係で進歩性を有するか(特許法29条2項,である。)
第3当事者の主張
1請求原因
()特許庁における手続の経緯1
原告は,平成5年8月19日,名称を「パチンコ機の払い出し制御装置」
とする発明につき特許出願(特願平5−205236号,請求項の数1,甲
11。公開公報〔特開平7−51455〕は甲8)をし,平成12年8月8
「」()日に発明の名称を遊技機とし特許請求の範囲も変更する請求項の数3
等を内容とする手続補正(甲12)をしたが,平成14年12月16日付け
で拒絶査定を受けたので,平成15年1月22日,これに対する不服の審判
請求をした。
特許庁は,同請求を不服2003−1299号事件として審理し,その中
で原告は平成19年2月9日付けで,特許請求の範囲の変更等を内容とする
手続補正(以下「本件補正」という。請求項の数3。甲9)をしたが,特許
庁は,平成19年9月27日「本件審判の請求は,成り立たない」との審,。
決をし,その謄本は平成19年10月16日原告に送達された。
()発明の内容2
本件補正後の請求項の数は前記のとおり3であるが,そのうち請求項1に
係る発明(以下「本願発明」という)の内容は,以下のとおりである。。
「請求項1】球払い出しユニットを有する払い出し制御装置を備えた遊【
技機であって,
前記球払い出しユニットは内部に複数列の球通路が構成されるユニッ,
トベースと,そのユニットベース内において水平方向の軸線回りに回転
可能に組み付けられかつ前記複数列の球通路の球をそれぞれ逐一受取っ
て放出する球送り部材と,その球送り部材を回転駆動する出力軸を有す
る払い出しモータと,を備え,
前記ユニットベースは,前記複数列の球通路を区画形成する複数の構
成部材が分離可能に結合されて構成され,
前記ユニットベースの複数の構成部材のうち,1つの構成部材には,
前記払い出しモータの出力軸が貫挿される金属製の放熱板が当該構成部
材と前記払い出しモータとに当接挟持された状態で前記払い出しモータ
が取り付けられ,
しかも,前記ユニットベースは,透明合成樹脂材によって構成される
一方,前記球送り部材は,不透明合成樹脂材によって形成されているこ
とを特徴とする遊技機」。
()審決の内容3
ア審決の内容は,別添審決写しのとおりである。
その理由の要点は,本願発明は前記引用発明1及び周知・慣用の技術に
基づいて当業者が容易に発明をすることができたから,特許法29条2項
により特許を受けることができない,というものである。
因みに,審決が周知・慣用技術の例として掲げた文献は,次のとおりで
ある(以下順に「刊行物2」ないし「刊行物7」という),。
甲2:実願昭57−143450号(実開昭59−50557号)のマイ
クロフイルム(考案の名称「回転電機の固定子枠,出願人東京」
芝浦電気株式会社,公開日昭和59年4月3日)
甲3:実願昭62−8456号(実開昭63−117262号)のマイク
ロフイルム(考案の名称「回転電機の支持装置,出願人三菱電」
機株式会社,公開日昭和63年7月28日)
甲4:実願昭61−34563号(実開昭62−149243号)のマイ
クロフィルム(考案の名称「樹脂製フレームにおけるモータ放熱
構造,出願人沖電気工業株式会社,公開日昭和62年9月2」
1日)
甲5:特開平2−16400号公報(発明の名称「送風機,出願人三菱」
電機株式会社,公開日平成2年1月19日)
甲6:実願昭60−128441号(実開昭62−36779号)のマイ
クロフィルム(考案の名称「パチンコ機における入賞装置,出」
願人京楽産業株式会社,公開日昭和62年3月4日)
甲7:実願昭61−164848号(実開昭63−71077号)のマイ
クロフィルム(考案の名称「パチンコ機の入賞装置,出願人株」
式会社大一商会〔原告,公開日昭和63年5月12日)〕
イなお,審決は,上記判断をするに当たり,引用発明1の内容を以下のと
おり認定したうえ,本願発明と引用発明1との一致点及び相違点を次のと
おりとした。
〈引用発明1の内容〉
「景品玉払出装置29を有する景品玉を払い出すための各種の機構を
備えたパチンコ遊技機1であって,
前記景品玉払出装置29は,内部に供給通路34a,34bが構成
される取付板30・通路区画板31・通路カバー板32と,その取付
板30・通路区画板31・通路カバー板32内において水平方向の軸
線回りに回転可能に組み付けられかつ前記供給通路34a,34bの
景品玉をそれぞれ逐一受取って放出するスプロケット43a,43b
と,そのスプロケット43a,43bを回転駆動する回転軸42を有
するステッピングモータ41と,を備え,
前記取付板30・通路区画板31・通路カバー板32は,前記供給
通路34a,34bを区画形成する複数の構成部材が分離可能に結合
されて構成され,
前記取付板30・通路区画板31・通路カバー板32の複数の部材
のうち,通路カバー板32には,モータ取付板46が当該通路カバー
板32とステッピングモータ41とに当接挟持された状態で前記ス
テッピングモータ41が取り付けられている,パチンコ遊技機1」。
〈一致点〉
いずれも「球払い出しユニットを有する払い出し制御装置を備えた,
遊技機であって,
前記球払い出しユニットは,内部に複数列の球通路が構成されるユ
ニットベースと,そのユニットベース内において水平方向の軸線回りに
回転可能に組み付けられかつ前記複数列の球通路の球をそれぞれ逐一受
取って放出する球送り部材と,その球送り部材を回転駆動する出力軸を
有する払い出しモータと,を備え,
前記ユニットベースは,前記複数列の球通路を区画形成する複数の構
成部材が分離可能に結合されて構成され,
前記ユニットベースの複数の構成部材のうち,1つの構成部材には,
介在部材が当該構成部材と前記払い出しモータとに当接挟持された状態
で前記払い出しモータが取り付けられている,遊技機」であること。。
〈相違点〉
A:介在部材が,本願発明では払い出しモータの出力軸が貫挿される
金属製の放熱板であるのに対し,引用発明1ではモータ取付板であ
る点。
B:本願発明では,ユニットベースは,透明合成樹脂材によって構成
される一方,球送り部材は,不透明合成樹脂材によって形成されて
いるのに対し,引用発明1では,それらの材料が明らかでない点。
()審決の取消事由4
しかしながら,審決には,以下に述べるような誤りがあるので,審決は違
法として取り消されるべきである。
ア取消事由1(引用発明1の認定・一致点認定・相違点Aについての判断
の各誤り)
(ア)審決は,引用発明1について「モータ取付板46が当該通路カバ,
ー板32とステッピングモータ41とに当接挟持された状態で前記ス
テッピングモータ41が取り付けられている」と認定した(4頁下6行
∼下4行)が,誤りである。
引用文献甲1には…通路カバー板32の後面側には…ステッ(),「,
ピングモータ41がモータ取付板46を介して取り付けられている5」(
頁左上欄12行∼14行)との記載があるが,その一方で「…モータ取
付板46の上下に穿設された取付長穴47a,47b(47bは,図示
せず)を通路カバー板32に形成したモータ用取付穴48a,48bに
対応させて図示しないビスで螺着することにより取り付けられる(5」
頁左上欄15行∼19行)との記載があることから分かるとおり,モー
タ取付板46と通路カバー板32との取付け方法の記載がされているの
にステッピングモータ41とモータ取付板46との取付けについては,
甲1には記載がない。それでも甲1の構造上は,ステッピングモータ4
1と通路カバー板32とは固定されていなければならないから,ステッ
ピングモータ41とモータ取付板46とは当然固定されていなければな
らない。その固定方法について明細書に記載がないことからすると,甲
1では,少なくともステッピングモータ41とモータ取付板46とは固
着されている構成であることが前提となっているものである。
すなわち,モータ取付板46は,ステッピングモータ41と固着され
ているとともに,通路カバー板32と螺着固定されているのであって,
モータ取付板46は,ステッピングモータ41を通路カバー板32に取
付け固定するために不可欠の部材といえる。
したがって,甲1では,通路カバー板32には,モータ取付板46が
当該通路カバー板32とステッピングモータ41とを固着する状態で前
記ステッピングモータ41が取り付けられているのであって,審決が認
定したように,単に「通路カバー板32には,モータ取付板46が当該
通路カバー板32とステッピングモータ41とに当接挟持された状態で
前記ステッピングモータ41が取り付けられている」のではない。審決
の引用発明1の認定は誤りである。
(イ)また審決は,引用発明1について上記認定の上,引用発明1の「モ
ータ取付板46」と本願発明の「放熱板」とが「介在部材」において共
通する(9頁2行∼4行)としてこれを一致点と認定したが,これも誤
りである。
甲1のモータ取付板46は,上記(ア)のとおり,ステッピングモータ
41に固着されてステッピングモータ41を通路カバー板32に取付け
る作用効果を持つ不可欠の部材であり「接続部材」ともいうべきもの,
である。
これに対し本願発明の放熱板は,本件補正後の明細書(甲9,11)
の請求項1に「金属製の放熱板が当該構成部材と前記払い出しモータと
に当接挟持された状態で前記払い出しモータが取り付けられ」と記載,
され,発明の詳細な説明に「…払い出しモータ25とカバー板23との
間に金属製の放熱板68が挟み込まれた状態で放熱板68とともに取付
けられ(段落【0045)と記載され,その図7,8からも明らかな」】
とおり,払い出しモータ25とカバー板23とは,その間に放熱板68
を挟み付ける状態で螺着されることが示されており,放熱板は払い出し
モータと当該構成部材との間に単に介在するだけでこれらを固定する機
能を有せず,両者を固定することと無関係の部材である。
これに対して引用発明1のモータ取付板46は,ステッピングモータ
41を通路カバー板32に取り付けるために不可欠であることが明白で
ある。
したがって,引用発明1の「モータ取付板46」と本願発明の「放熱
板」とを比較すると「介在部材」において共通するものとはいえない,
から,審決の認定は誤りである。
(ウ)また審決は,本願発明と引用発明1との一致点として「前記ユニッ
トベースの複数の構成部材のうち,1つの構成部材には,介在部材が当
該構成部材と前記払い出しモータとに当接挟持された状態で前記払い出
しモータが取り付けられている(9頁15行∼17行)と認定した。」
しかし,甲1の「モータ取付板46」は,ステッピングモータ41と
通路カバー板32との間に単に介在する部材ではなく,ステッピングモ
ータ41に固着されてステッピングモータ41を通路カバー板32に取
付ける機能を持った不可欠の部材であって,上記(イ)のとおり接続部材
ともいうべきものであり,甲1については「接続部材が当該構成部材と
前記払い出しモータとを固定する状態で前記払い出しモータが取り付け
られている」と表現すべきである。
これに対し本願発明の「放熱板」は,払い出しモータと当該構成部材
との間に単に介在するだけで,払い出しモータの放熱の作用効果は有す
るものの,両者を固定する作用効果を有さず,甲1の「モータ取付板4
」,,6とは異なり両者を固定することとは無関係の構成部材であるから
「介在部材が当該構成部材と前記払い出しモータとに当接挟持された状
」。態で前記払い出しモータが取り付けられているといって差し支えない
したがって,両者は一致しておらず,これを一致点として認定した審
決は誤りである。
(エ)また審決は,本願発明と引用発明1との相違点Aとして「介在部材
が,本願発明では払い出しモータの出力軸が貫挿される金属製の放熱板
であるのに対し,引用発明1ではモータ取付板である点(9頁19行」
∼20行)と認定した。
しかし,引用発明1の「モータ取付板」は本願発明では「モータ」の
フランジ部に該当するものであるから,本願発明の金属製の放熱板に当
る介在部材は引用発明1には存在しないというべきであって,相違点A
としては「本願発明におけるモータの出力軸が貫挿され,モータとカバ
ー板とに当接挟持された金属製の放熱板が,引用発明にはない点」と認
定すべきである。審決の相違点Aの認定は誤りである。
(オ)aその上で審決は,相違点Aについての判断として,刊行物2,3
に示された周知慣用技術1(金属製の放熱板を介在させてモータを「
取り付ける技術〔審決9頁31行,及び,刊行物4,5に示され」〕)
た周知慣用技術(モータ出力軸の直径方向の両側まで延伸させた金「
属製の放熱板を介してモータを取り付ける技術〔審決9頁32行∼」
33行)に照らし「周知慣用技術1を引用発明1のモータ取付手段〕,
に適用する際に,放熱板の構成をモータの出力軸が貫挿されるような
構成とし,相違点(A)に係る構成とすることは当業者が容易になし
得ることである(10頁3行∼5行)と判断した。」
bしかし,本願発明と刊行物2∼5による発明とは,根本的に異なる
技術的思想に基づくものであるため,その周知慣用技術を引用発明1
。,に適用しただけでは本願発明を容易にすることはできないすなわち
刊行物2∼5に示されるモータの取付けに関する放熱板の構成につい
て周知慣用技術であること自体について原告はこれを争うものではな
いが,刊行物2∼5に示された技術は,いずれもモータ自体の過熱を
予防する目的の技術である。
c例えば甲2では「回転電機の冷却に関して伝熱特性が悪くなる等,
の問題があった(明細書3頁7行∼9行)と指摘したうえ,考案の」
目的として「本考案の目的はこの様な問題を除去する為に成された」
(明細書3頁11行∼12行)としている。
また甲3は「冷却用放熱フィン(明細書3頁8行)の構成が考案」
の目的であるがこの「冷却用放熱フィン」は電動機自体を冷却しよう
とするものであることは明白である。
甲4は「駆動用モータの放熱構造(明細書2頁13行∼14行)」
と記載され,駆動用モータの過熱を防止する目的ないし効果が明白で
ある。
甲5は「この発明は,送風機,特にそのモータの冷却装置に関する
ものである(1頁右欄11行∼12行)と記載があり,モータを冷」
却するものであることは明白である。
dこれに対して本願発明における放熱板は本件補正後の明細書甲,,(
9,11)において「払い出し制御装置の過熱を防止することを課題
とするものである(段落【0003)とし「払い出しモータの。」】,
作動時に異常発熱しても払い出しモータの熱を放熱板によって放散さ
せて,球払い出しユニットのユニットベースおよび球送り部材への熱
の伝導を防止することができる。このため,透明合成樹脂材より構成
されたユニットベースの複数の構成部材や,不透明合成樹脂材により
構成された球送り部材が過熱によって熱変形して球送り動作が阻害さ
れたり不能となる不具合を解消することができ,球の払い出しが実行
できない状態となる不具合を解消することができる(段落【000。」
6)と記載していることから明らかなとおり,主として,過熱によ】
り変形する樹脂製などの駆動対象へのモータからの熱流束密度を低減
することを目的としている。
そのため,本願発明では,放熱部材と駆動対象との接触面積を大き
くして熱流束密度を低減することにより駆動対象の熱変形を防ぐこと
ができるという新たな知見に基づき,駆動対象とモータとに当接挟持
された状態で金属製の放熱板を配置することとしたものである。モー
タから駆動対象に伝わる総熱量が増加する可能性があるにもかかわら
ず,駆動対象との接触面積を大きくして熱流束密度を低減し,駆動対
象の熱変形を防ぐという知見は新しいものであって,上記の周知慣用
技術にはないものである。
eしたがって,本願発明と刊行物2∼5に記載された発明とは,その
目的も構成も異なるものであり,本願発明と審決が指摘した周知慣用
技術とは,根本的に異なる技術的思想に基づくものである。これら周
知技術に基づき審決が相違点Aに係る構成につき容易想到とした判断
は誤っている。
(カ)また,モータに放熱板を取付けることにより放熱効果を上げられる
ことは周知の技術であるとしても,本願発明は,合成樹脂材によって構
成されるユニットベースの1つの構成部材に,放熱板が当該構成部材と
払い出しモータとに当接挟持される状態で,払い出しモータが取付けら
れる構成をとることでモータの熱(特に停止による過熱時の熱)が合成
樹脂材のユニットベースに強く伝わらないようにするという効果があ
り,放熱板とユニットベースの構成部材とが当接することが熱流束密度
が小さくするという作用に基づくことを説明しただけであり,放熱板の
放熱効果の存在を否定するものではない。ユニットベースという狭いケ
ース内で,熱源たるモータから大きく離すのではなく,放熱材を耐熱性
に問題のある合成樹脂部材であるユニットベースに当接させる構成を取
ることにより,モータの熱のユニットベースへの伝導を少なくすること
ができるというのが本願発明の技術思想であり,単にモータに放熱板を
取り付けて放熱するという周知技術からは容易に想到しうるものではな
く,審決の判断は誤りである。
イ取消事由2(相違点Bについての認定・判断の誤り)
(ア)審決は,相違点Bについて,前記甲6,7によれば遊技機の構成部
材を透明合成樹脂材及び不透明合成樹脂材によって構成・形成すること
は周知・慣用の技術であるとして,これを引用発明1のユニットベース
及び球送り部材に適用し,相違点Bに係る構成とすることは当業者が容
易になし得ると判断した(10頁7行∼14行)が,誤りである。
(イ)刊行物6,7において,透明合成樹脂材と不透明合成樹脂材を選択
しているのは,装飾目的のためであって,本願発明のように検査・確認
目的のためではない。本願発明の課題は,払い出し制御装置による遊技
球の払い出しが異常停止した場合に,その原因が電気的なものか機械的
なものなのかがすぐに判断できない状態において,球噛みが発生してい
るかどうか,また発生している時の球噛みの状況を容易に検査・確認で
きるようにすることにある。その目的を達成するため,ユニットベース
を透明合成樹脂材とすることで,外部からユニットベースの内部を視認
可能とし,ユニットベース内に誘導された遊技球の状態をを容易に視認
できることとし,さらにユニットベース内部に取り付けられる球送り部
材を不透明合成樹脂材とすることで,ユニットベース内部での遊技球と
球送り部材との関係が一見しただけで把握できることを可能としたもの
である。
(ウ)このように,本願発明と刊行物6,7に記載された発明とでは,そ
の目的が異なるにかかわらず,その技術を遊技機の構成部材で共通する
引用発明1のユニットベース及び球送り部材に適用し,相違点Bに係る
構成とすることは当業者が容易になし得ることであると判断した審決は
誤りである。
2請求原因に対する認否
請求原因()ないし()の各事実は認めるが,同()は争う。134
3被告の反論
審決の認定判断に誤りなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
()取消事由1に対し1
ア審決が甲1に示されていると認定した技術事項は,通路カバー板32に
ステッピングモータ41を取付け固定する具体的な手段・方法に関する技
術ではなく「通路カバー板32にステッピングモータ41が取り付けら,
れた場合における,モータ取付板46についての通路カバー板32及びス
テッピングモータ41との状態」を認定したものである。それは,甲1の
図面,特に「景品玉払出装置の分解斜視図である第2図」と「景品玉払出
装置の縦断面図である第3図」には「通路カバー板32に,ステッピン,
グモータ41が取り付けられ」た場合においては「モータ取付板46が通
路カバー板32とステッピングモータ41との間に当接して挟まれた状
態」で景品玉払出装置が組み立てられている技術事項が明らかに示されて
いることによるものである。そうすると,甲1には「モータ取付板46,
が通路カバー板32とステッピングモータ41とに当接挟持された状態
で,通路カバー板32にはステッピングモータ41が取り付けられ」の技
術事項が示されているといえる。
したがって,審決において,甲1には「通路カバー板32には,モータ
取付板46が当該通路カバー板32とステッピングモータ41とに当接挟
持された状態で前記ステッピングモータ41が取り付けられている(4」
頁下6行∼下4行)と認定したことに誤りはない。
イまた,引用発明1の「モータ取付板46」と本願発明の「放熱板」とを
比較すると,前者は「通路カバー板32とステッピングモータ41とに当
接挟持され」るものであり,後者は「1つの構成部材と払い出しモータと
に当接挟持され」たものであり,引用発明1の「通路カバー板32」及び
「ステッピングモータ41」は本願発明の「1つの構成部材」及び「払い
出しモータ」にそれぞれ相当するから,両者は「1つの構成部材と払い出
」。,しモータとに挟持された状態にあることにおいて共通するそうすると
両者は「1つの構成部材と払い出しモータとの間に挟まって存在する」の
であるから,引用発明1における「モータ取付板46」と本願発明の「放
熱板」とは「介在部材」において共通する。
したがって,審決が「引用発明1の『モータ取付板46』と本願発明の
『放熱板』とを比較すると『介在部材』において共通する(9頁2行,。」
∼4行)と認定したことに誤りはない。
なお,本願の特許請求の範囲において「放熱板」が「払い出しモータと
構成部材とを固定することと無関係である」とする技術的限定はされてい
ないから,原告が本願発明の「放熱板」は,上記両者を固定する機能を有
せず,両者を固定することと無関係の部材であるとの主張は,そもそも特
許請求の範囲の記載に基づく主張ではない。
ウ審決が甲1には「通路カバー板32には,モータ取付板46が当該通路
カバー板32とステッピングモータ41とに当接挟持された状態で前記ス
テッピングモータ41が取り付けられている」との技術事項が記載されて
いると認定したこと,及び「引用発明1の『モータ取付板46』と本願発
明の『放熱板』とを比較すると『介在部材』において共通する」と認定し
たことに,それぞれ誤りはないことは上記のとおりである。
そうすると,審決が一致点として「前記ユニットベースの複数の構成部
材のうち,1つの構成部材には,介在部材が当該構成部材と前記払い出し
モータとに当接挟持された状態で前記払い出しモータが取り付けられてい
る(審決9頁15行∼17行)ことを含めて認定した点に誤りはない。」
エ上記のとおり,審決が「引用発明1の『モータ取付板46』と本願発明
の『放熱板』とを比較すると『介在部材』において共通する」と認定し,。
。,,「,たことに誤りはないしたがって審決が相違点Aとして介在部材が
本願発明では払い出しモータの出力軸が貫挿される金属製の放熱板である
のに対し,引用発明1ではモータ取付板である点」と認定したことに誤り
はない。
オ(ア)原告は,審決が周知慣用技術から本願発明は容易想到であるとした
判断は誤りであると主張するところ,放熱板については,本件補正後の
明細書(甲9,11)には,以下の各記載がある。
「作用】…払い出しモータの動作において,同払い出しモータが過【
熱すると,その熱が前記放熱板に伝導されて放熱板を通じて放散す
る(段落【0005)。」】
「発明の効果】この発明によれば,払い出しモータの作動時に異常【
発熱しても払い出しモータの熱を放熱板によって放散させて,球払い
出しユニットのユニットベースおよび球送り部材への熱の伝導を防止
することができる。このため,透明合成樹脂材より構成されたユニッ
トベースの複数の構成部材や,不透明合成樹脂材により構成された球
送り部材が過熱によって熱変形して球送り動作が阻害されたり不能と
なる不具合を解消することができ,球の払い出しが実行できない状態
となる不具合を解消することができる。また,払い出しモータ自体の
過熱による払い出しモータの損傷を防止することができる段落0。」(【
006)】
「払い出しモータ25が球噛み等の原因によって過熱したときには払
い出しモータ25の熱が放熱板68を通じて放散されてユニットベー
ス21への熱の伝導が防止される(段落【0047)。」】
「このため,球払い出しユニット20の払い出しモータ25が球噛み
等の原因によって異常発熱しても払い出しモータ25の熱を放熱板6
8によってユニットカバー76内に放散させ,さらにユニットカバー
76内から放熱孔76gを通じて外気中に放散させてユニットベース
21へおよび球送り部材27への熱の伝導を防止することができ,ユ
ニットベース21が過熱によって熱変形する不具合や,払い出しモー
タ25の出力軸25aへの球送り部材27の固定状態が出力軸25a
の過熱によって不正化したり,球送り部材27の取付け部に熱膨張に
よるガタツキが生じて球送り動作が阻害されたり不能となる不具合を
解消することができる(段落【0110)。」】
(イ)これらの記載によれば放熱板68は払い出しモータの熱をユニッ,,
トカバー76内に放散させるためのものであって,その熱を放散させ
ることにより,払い出しモータ自体の過熱による払い出しモータの損
傷を防止,及び球払い出しユニットのユニットベースおよび球送り部
材への熱の伝導を防止するものであることは明らかである。
そうすると,本願発明における放熱板は,主として,過熱により変
形する樹脂製などの駆動対象への,モータからの熱流束密度を低減す
ることを目的とし,本願発明では放熱部材と駆動対象との接触面積を
大きくして熱流束密度を低減する旨の原告の主張はそもそも明細書の
記載に基づかないものである。
そして,金属製の放熱板を介在させてモータを取り付ける技術は,
例えば,刊行物2∼5のように周知・慣用の技術であって,本願発明
,と当該周知・慣用の技術とは異なる技術的思想に基づくものではなく
また本願発明と当該周知・慣用の技術との間に目的及び構成において
差異は認められない。
なお,仮に上記原告主張の,明細書に記載されていない「放熱部材
と駆動対象との接触面積を大きくしてモータからの熱流束密度を低減
する」との目的が,本願発明の構造から当然に導き出されるものであ
るとすれば,放熱板を介在させた点で本願発明と共通する刊行物2∼
5を引用発明1にモータ冷却のため適用した場合には目的効果は必然
的に生じるものと認められ,いずれにしろ審決の判断に影響を及ぼす
ものではない。
以上のように,金属製の放熱板を介在させてモータを取り付ける技
術は周知・慣用の技術であるから,引用発明1に周知・慣用の技術を
適用する,即ち引用発明1のモータと通路カバー板とに放熱板を挟持
させ,相違点Aに係る本願発明の構成とすることは当業者であれば容
易に想到し得たことである。
したがって,審決が「周知慣用技術1を引用発明1のモータ取付手
段に適用する際に,放熱板の構成をモータの出力軸が貫挿されるよう
な構成とし,相違点(A)に係る構成とすることは当業者が容易にな
し得ることである」とした判断(10頁3行∼5行)に誤りはない。。
(2)取消事由2に対し
ア前記甲7には,以下のとおり本願発明と同様に透明合成樹脂により成形
された部材を通して視認・確認できる技術が記載されているから,前記甲
6,7に示された周知・慣用の技術と本願発明とは異なる技術的思想に基
づくものではなく,原告の主張は理由がない。
イ甲7には以下の事項が記載されている。
①「さて,本実施例は…入賞装置3であって,その本体4には開閉扉用開
口部6の下方に透視窓部7を形成するとともに,開閉扉62の左右に入
賞口12およびランプ取付孔13を形成し,これらの前面には透明合成
樹脂により透視窓部7の覆い部69と入賞口12への球受部78を有す
るランプカバー部70を一体成形した飾り板68を装着する構成とした
ものである(13頁15行∼14頁4行)。」
②「さらに,特定の入賞口27を通過したパチンコ球は透視窓部7の存在
により該透視窓部7中央より通し孔21への流下が視認でき特定の入賞
の発生を確認することができる。また,特定の入賞口27の両側の支持
片30により左右に振分けられて通常の入賞となるパチンコ球は,…該
パチンコ球が受け皿部材16の左右のガイド片17,18に案内されて
透視窓部7左右両側からの通過を該透視窓部より視認することができて
通常入賞が確認できる(14頁18行∼15頁8行)。」
③「さて,本考案は…入賞装置であって,その本体には開閉扉用開口部の
下方に透視窓部を形成するとともに,開閉扉の左右に入賞口およびラン
プ取付孔を形成し,これらの前面には透明合成樹脂により透視窓部の覆
い部と入賞口への球受部を有するランプカバー部を一体成形した飾り板
を装着したものである。したがって,この飾り板を透明な合成樹脂によ
り形成したことで遊技者は当該のパチンコ球が特定の入賞球であるか,
通常の賞球であるかを確認することができるともに,…(15頁19」
行∼16頁10行)
ウ上記によれば,甲7には,透視窓部7の覆い部69とランプカバー部7
0とを透明合成樹脂により一体成形した飾り板68であって,遊技者はパ
チンコ球を該透視窓部より視認することができて,当該のパチンコ球が特
定の入賞球であるか,通常の賞球であるかを確認することができる,飾り
板68が記載されているといえるから,原告の主張は理由がない。
第4当裁判所の判断
1請求原因()(特許庁における手続の経緯,()(発明の内容,()(審決123))
の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2取消事由1(引用発明1の認定・一致点の認定・相違点Aについての判断の
各誤り)について
()ア原告は,本願発明における「挟持」は互いに押さえ付けようとする両1
端の部材の間に存在することを意味する一方,引用発明1(甲1)ではス
テッピングモータ41とモータ取付板46とは固着した構成であることが
前提となっているところ,審決が相違点Aについて判断するに当たり,引
用発明1においてモータ取付板46が通路カバー板32とステッピングモ
ータ41とに当接挟持された状態でステッピングモータ41が取り付けら
れていると認定したのは誤りであると主張する。
イ本件補正後の明細書(甲9,11)には,以下の記載がある。
「請求項1】球払い出しユニットを有する払い出し制御装置を備えた【
遊技機であって,
前記球払い出しユニットは,内部に複数列の球通路が構成されるユ
ニットベースと,そのユニットベース内において水平方向の軸線回り
に回転可能に組み付けられかつ前記複数列の球通路の球をそれぞれ逐
一受取って放出する球送り部材と,その球送り部材を回転駆動する出
力軸を有する払い出しモータと,を備え,
前記ユニットベースは,前記複数列の球通路を区画形成する複数の構
成部材が分離可能に結合されて構成され,
前記ユニットベースの複数の構成部材のうち,1つの構成部材には,
前記払い出しモータの出力軸が貫挿される金属製の放熱板が当該構成
部材と前記払い出しモータとに当接挟持された状態で前記払い出しモ
ータが取り付けられ,
しかも,前記ユニットベースは,透明合成樹脂材によって構成される
一方,前記球送り部材は,不透明合成樹脂材によって形成されている
ことを特徴とする遊技機」。
「作用】【
請求項1に係る遊技機において,球払い出しユニットを構成する複数
の構成部材のうち,1つの構成部材に,当該構成部材との間に放熱板を
当接挟持した状態で取り付けられている払い出しモータの動作によって
球送り部材が水平方向の軸線回りに回転駆動されると,その球送り部材
によって複数列の球通路の球を逐一受取って放出する。払い出しモータ
の動作において,同払い出しモータが過熱すると,その熱が前記放熱板
に伝導されて放熱板を通じて放散する。…(段落【0005)」】
「発明の効果】【
この発明によれば,払い出しモータの作動時に異常発熱しても払い出
しモータの熱を放熱板によって放散させて,球払い出しユニットのユ
ニットベースおよび球送り部材への熱の伝導を防止することができる。
このため,透明合成樹脂材より構成されたユニットベースの複数の構成
部材や,不透明合成樹脂材により構成された球送り部材が過熱によって
熱変形して球送り動作が阻害されたり不能となる不具合を解消すること
ができ,球の払い出しが実行できない状態となる不具合を解消すること
ができる。…(段落【0006)」】
「カバー板23の後面(この発明のモータ取付部に相当する)には支軸
26の後方に突合わせ状に隣設された出力軸25aを有するステッピン
グモータ型の払い出しモータ25が,この払い出しモータ25とカバー
板23との間に金属製の放熱板68が挟み込まれた状態で放熱板68と
ともに取付けられ,放熱板68は本例ではアルミニルム板をほぼL形状
に曲折した形状に形成されている(段落【0045)。」】
「放熱板68にはユニットベース21のカバー板23と払い出しモータ
25との間に垂立状態で介座されて払い出しモータ25が後面に固定さ
れ,払い出しモータ25の出力軸25aが中心部に貫挿されたモータベ
ース部68aと,このモータベース部68aの外端縁に直交状に連接さ
れて後方へ突出され,払い出しモータ25の外方に近接して垂立された
遮蔽部68bとが形成されている。モータベース部68aの下端には後
記球送り数センサ71に接続されたリード線束が挿通保持されるリード
線挿通部86が切欠き形成され,このリード線挿通部86はリード線の
脱出が阻止されるようにその入口部の挿通幅を狭くした形状に形成され
ている(段落【0046)。」】
「払い出しモータ25が球噛み等の原因によって過熱したときには払い
出しモータ25の熱が放熱板68を通じて放散されてユニットベース2
1への熱の伝導が防止される。また,球払い出しユニット20の組付け
等に際し,球払い出しユニット20が誤って落下したときなどに放熱板
68によって落下衝撃を受止めてユニットベース21および払い出しモ
ータ25を落下衝撃から防護することができる(段落【0047)。」】


ウ上記からすると,本願発明の放熱板68は,
ユニットベース21と払い出しモータ25との
間にあって,払い出しモータ25とカバー板23との間に挟み込まれた状
態で取付けられており,払い出しモータ25の熱が放熱板68を通じて放
散されてユニットベース21への熱の伝導が防止されること,球払い出し
ユニット20が誤って落下したときなどに放熱板68によって落下衝撃を
受止めてユニットベース21および払い出しモータ25を落下衝撃から防
護することができること,が記載されているといえる。
そうすると,本願発明における放熱板が「挟持」されていることの意味
は,挟み込まれた状態にあることを意味し,固着されているか否かを問う
ものではないと解される。
エ一方,引用発明1が記載されている甲1(引用文献)には,以下の記載
がある。
「…前記通路カバー板32の後面側には,駆動モータとしてのステッピ
ングモータ41がモータ取付板46を介して取り付けられている。す
なわち,モータ取付板46の上下に穿設された取付長穴47a,47
b(47bは,図示せず)を通路カバー板32に形成したモータ用
取付穴48a,48bに対応させて図示しないビスで螺着することに
より取り付けられる。この場合,取付長穴47a,47bが移動可能
であるため,供給通路34a,34b及び排出通路36a,36bに
対するスプロケット43a,43bの好ましい位置調節が容易にでき
るようになっているまたステッピングモータ41の回転軸42第。,(
1図参照)には,所定間隔離れて2つのスプロケット43a,43b
が固着されている(5頁左上欄12行∼右上欄6行)。」
オ上記によれば,甲1には,ステッピングモータ41とモータ取付板30
との間にモータ取付板46が配置されることが記載され,本願発明の放熱
板も,上記ウのとおり払い出しモータ25とカバー板23との間に挟み込
まれた状態で取付けられているものであるから,本願発明の放熱板と引用
発明1の「モータ取付板46」は,払い出しモータ(引用発明1では「ス
テッピングモータ41)とユニットベース(引用発明1では「取付板3」
0・通路区画板31・通路カバー板32)との間に配置されている点で」
共通しており,いずれもユニットベースあるいは「取付板30・通路区画
板31・通路カバー板32」に固定するように取り付けられている。
そうすると,審決が「引用発明1の『モータ取付板46』と本願発明の
『放熱板』とを比較すると『介在部材』において共通する(9頁2行∼,」
4行)と認定したことに誤りはない。
カこれに対し原告は,甲1のモータ取付板46は,ステッピングモータ4
1と通路カバー板32との間に単に介在する部材ではなく,ステッピング
モータ41に固着されてステッピングモータ41を通路カバー板32に取
付ける作用効果を持つ不可欠の部材であり,接続部材というべきものであ
るのに対し,本願発明の放熱板は払い出しモータと当該構成部材との間に
単に介在するだけで,払い出しモータの放熱の作用効果は有するものの,
両者を固定する機能を有しないと主張する。
しかし上記オで検討したとおり本願発明の放熱板と引用発明1のモ,,「
ータ取付板46」は,払い出しモータ(ステッピングモータ41)とユ「」
ニットベース(取付板30・通路区画板31・通路カバー板32)との「」
間に配置されている点で共通し,両者ともユニットベースあるいは「取付
板30・通路区画板31・通路カバー板32」に固定するように取り付け
られており「介在部材」において共通するといえるから,原告の主張は,
採用することができない。
キまた原告は「挟持」の意味は,固定することとは無関係であるとも主,
張する。しかし,上記ウで検討したとおり本願発明における「挟持」の意
味は,挟み込まれた状態にあることを意味するところ,上記イで摘示した
本件補正後の明細書(甲9,11)の段落【0047】に「…球払い出し
ユニット20の組付け等に際し,球払い出しユニット20が誤って落下し
たときなどに放熱板68によって落下衝撃を受止めてユニットベース21
および払い出しモータ25を落下衝撃から防護することができる」と記。
載されているように,本願発明の放熱板は払い出しモータに固定されてい
る場合も含まれるのであるから,原告主張のように「挟持」の意味を固定
することと無関係であると限定して解釈する根拠はない。
クさらに原告は,甲1においては「接続部材が当該構成部材と前記払い出
しモータとを固定する状態で払い出しモータが取り付けられている」とい
うべきであるのに対し,本願発明の「放熱板」は,払い出しモータと当該
構成部材との間に単に介在するだけで,両者を固定することとは無関係の
構成部材であるから「介在部材が当該構成部材と前記払い出しモータと,
に当接挟持された状態で前記払い出しモータが取り付けられている」ので
これを一致点とすることはできない,とも主張する。
しかし,既に上記オで検討したとおり,本願発明の放熱板と引用発明1
の「モータ取付板46」とは,払い出しモータ(ステッピングモータ4「
1)とユニットベース(取付板30・通路区画板31・通路カバー板3」「
2との間に配置されている点で共通しているそして両者ともユニッ」)。,
トベースあるいは「取付板30・通路区画板31・通路カバー板32」に
固定するように取り付けられているものであるから,審決がこれらを『介
在部材』において共通する」としたことに誤りはない。
()ア原告は,引用発明1の「モータ取付板」は本願発明ではモータのフラ2
ンジ部に該当するから,これを本願発明の放熱板と一致するとすることは
できないし,本願発明と引用発明1との相違点Aにはこの点も含め「本,
願発明におけるモータの出力軸が貫挿され,モータとカバー板とに当接挟
持された金属製の放熱板が,引用発明1にはない点」と認定すべきである
とも主張する。
イしかし,本件補正後の明細書(甲9,11)には,原告がモータのフラ
ンジ部であると主張するその「フランジ部」に関する記載はなく,払い出
しモータと区別されるとする根拠を欠く上,本願発明の放熱板と引用発明
「」,(「」)のモータ取付板46は払い出しモータステッピングモータ41
とユニットベース(取付板30・通路区画板31・通路カバー板32)「」
との間に配置されている点で共通しており,審決が相違点Aとして「介在
部材が,本願発明では払い出しモータの出力軸が貫挿される金属製の放熱
板であるのに対し,引用発明1ではモータ取付板である点」と認定したこ
とに誤りはない。
()ア原告は,刊行物2∼5に示されるモータの取付けに関する放熱板の構3
,,成についてこれが周知・慣用の技術であることは争わないとするところ
これらはいずれもモータ自体の過熱を予防する目的の技術であるとし,こ
れに対して,本願発明における放熱板は,主として,過熱により変形する
樹脂製などの駆動対象への,モータからの熱流束密度を低減することを目
的としており,本願発明に上記周知・慣用の技術を適用することはできな
いと主張する。
イ審決が相違点Aに関し周知・慣用の技術であるとするのは,①金属製の
放熱板を介在させてモータを取り付ける技術(審決9頁25行,②モー)
タ出力軸の直径方向の両側まで延伸させた金属製の放熱板を介してモータ
を取り付ける技術(同9頁32行∼33行)の2点である。
まず上記①の周知技術に関し,前記甲2(実願昭57−143450号
〔実開昭59−50557号〕のマイクロフイルム,考案の名称「回転電
機の固定子枠,出願人東京芝浦電気株式会社,公開日昭和59年4月」
3日)には「回転電機の冷却(明細書3頁7行∼8行)に関する「波形」
の薄鋼板(同3頁16行)が示され,また前記甲3(実願昭62−84」
56号〔実開昭63−117262号〕のマイクロフイルム,考案の名称
「回転電機の支持装置,出願人三菱電機株式会社,公開日昭和63年」
7月28日)には「回転電機本体を支持する支持部を上記冷却用放熱フ,
ィンと一体に形成されてなることを特徴とする回転電機の支持装置(明」
細書1頁7行∼9行)が示されていることから,上記①の金属製の放熱板
を介在させてモータを取り付ける技術に関しては周知であると認められ
る。
また上記②の周知技術に関し前記甲4実願昭61−34563号実,(〔
開昭62−149243号〕のマイクロフィルム,考案の名称「樹脂製フ
レームにおけるモータ放熱構造,出願人沖電気工業株式会社,公開日」
昭和62年9月21日)には,後記()イのとおり,アルミ板等の放熱板4
3を介在せしめた,モータの放熱構造が示されており,前記甲5(特開平
,「」,,2−16400号公報発明の名称送風機出願人三菱電機株式会社
公開日平成2年1月19日)には「モータの冷却装置(1頁右欄11,」
行∼12行)につき「アルミニウムの放熱部材を送風機ケーシングとモー
タとの間に挟み付けて組付ける(2頁左下欄7行∼9行)との技術が示」
され,上記②のモータ出力軸の直径方向の両側まで延伸させた金属製の放
熱板を介してモータを取り付ける技術についても従来周知・慣用であるこ
とが認められる。
ウ一方,この点に関し,本件補正後の明細書(甲9,11)には,以下の
記載がある。
「作用】請求項1に係る遊技機において,球払い出しユニットを構【
成する複数の構成部材のうち,1つの構成部材に,当該構成部材と
の間に放熱板を当接挟持した状態で取り付けられている払い出しモ
ータの動作によって球送り部材が水平方向の軸線回りに回転駆動さ
れると,その球送り部材によって複数列の球通路の球を逐一受取っ
て放出する。払い出しモータの動作において,同払い出しモータが
過熱すると,その熱が前記放熱板に伝導されて放熱板を通じて放散
する(段落【0005)。」】
「発明の効果】この発明によれば,払い出しモータの作動時に異常【
発熱しても払い出しモータの熱を放熱板によって放散させて,球払
い出しユニットのユニットベースおよび球送り部材への熱の伝導を
防止することができる。このため,透明合成樹脂材より構成された
ユニットベースの複数の構成部材や,不透明合成樹脂材により構成
された球送り部材が過熱によって熱変形して球送り動作が阻害され
たり不能となる不具合を解消することができ,球の払い出しが実行
できない状態となる不具合を解消することができる。…(段落【0」
006)】
エ上記ウの記載によれば,本願発明の放熱板については,払い出しモータ
自体の過熱を予防することも目的としていることが明らかであり,本願発
明における放熱板は,主として過熱により変形する樹脂製などの駆動対象
(球払い出しユニット)への,モータからの熱流束密度を低減することこ
とを目的としていると限定して解することはできない。審決の上記認定に
誤りはなく,原告の主張は採用することができない。
()ア原告は,本願発明は,合成樹脂材によって構成されるユニットベース4
の1つの構成部材に,放熱板が当該構成部材と払い出しモータとに当接挟
持される状態で,払い出しモータが取付けられる構成をとることにより,
モータの熱(特に停止による過熱時の熱)が合成樹脂材のユニットベース
に強く伝わらないようにするという効果があり,放熱板とユニットベース
の構成部材とが当接することが熱流速密度が小さくするという作用に基づ
くことを説明しただけであり,放熱板の放熱効果の存在を否定するもので
はないとも主張する。
イしかし,前記甲4(実願昭61−34563号〔実開昭62−1492
43号〕のマイクロフィルム,考案の名称「樹脂製フレームにおけるモー
タ放熱構造,出願人沖電気工業株式会社,公開日昭和62年9月21」
日)には以下の記載がある。
・実用新案登録請求の範囲
「樹脂製フレームとモータ間に放熱板を介在せしめ,この放熱板の
一部を筐体ベースと接合せしめたことを特徴とする樹脂製フレーム
におけるモータ放熱構造」
・「本考案は,樹脂製フレーム2とモータ1間にL型金具(放熱板)
3を介在せしめ(明細書3頁4行∼6行)」
・「本考案によれば,以上のように樹脂製フレームにおけるモータの
放熱構造を構成したので,モータの自己発熱は放熱用シリコン・グ
リース4,L型金具3及びその底部3aを経て筐体ベース5に放熱
される(明細書3頁13行∼17行)。」
・第1図


ウ上記によれば,モータと「樹脂製フレーム」の間に金属製の放熱板を介
,,在させモータの熱が樹脂製フレームに強く伝わらないようにすることは
周知の技術であるといえる。
したがって,放熱材を耐熱性に問題のある合成樹脂部材であるユニット
ベースに当接させる構成を採ることに格別の困難性があるとはいえず,原
告の主張は採用することができない。
3取消事由2(相違点Bについての認定・判断の誤り)について
ア原告は,相違点Bにつき,審決が遊技機の構成部材を透明合成樹脂材及び
不透明合成樹脂材によって構成・形成することは刊行物6,7に示されたと
おり周知であってこれを引用発明1のユニットベース及び球送り部材に適用
し相違点Bに係る構成とすることは容易想到であると判断したのは誤りであ
り,刊行物6,7において,透明合成樹脂材と不透明合成樹脂材を選択して
いるのは装飾目的のためであって,本願発明のように検査・確認目的のため
ではなく,本願発明は制御装置による遊技球の払い出しが異常停止した場合
に,球噛みの状況を容易に検査・確認できるようするため,ユニットベース
内に誘導された遊技球の状態を容易に視認できるようにするとともに,ユ
ニットベース内部に取り付けられる球送り部材を不透明合成樹脂材とするこ
とで,ユニットベース内部での遊技球と球送り部材との関係が一見しただけ
で把握できることを可能としたものであることを看過している旨主張する。
イ(ア)この点に関し,前記甲6(実願昭60−128441号〔実開昭62
−36779号〕のマイクロフィルム,考案の名称「パチンコ機における
入賞装置,出願人京楽産業株式会社,公開日昭和62年3月4日)に」
は以下の記載がある。
・実用新案登録請求の範囲
「,取付基板の一部または全部を有色透明な合成樹脂によつて形成し
かつ該取付基板に開口した球入口の前部にチャッカーを固着すると
ともに,該チャッカーの上部に有色透明な合成樹脂によつて形成し
後面が解放された一対の可動片を傾動自在に軸支し,さらに取付基
板の後方に案内箱,案内部材などを設けた入賞装置において,取付
基板の有色透明部分の後方に小型ランプを設け,さらに左右の可動
片の下部に対向する取付基板の後面にそれぞれ筒状のランプハウス
を設け,該ランプハウスの内孔を取付基板の前面に開口させるとと
もに後方へ貫通させ,該ランプハウス内にも小型ランプを挿入し,
これらの小型ランプを共に一つの配線板に取付け,該配線板の後面
に小型ランプの電極部を形成し,該配線板を案内箱の一部に取付け
るとともに,該配線板の電極部に対向するカバー部材を案内箱に着
脱自在に設けてなるを特徴とするパチンコ機における入賞装置」。
・実施例
「図面に基づいて本考案の一実施例を説明する。
入賞装置を遊技盤に取付けるための取付基板1は,不透明な合成樹
脂により板状に形成され,且つその上部の一部2は有色透明な合成
樹脂によって形成されており(3頁7行∼12行)」
・考案の効果
「本考案の入賞装置は,可動片のみならず取付基板の一部または全部
を有色透明素材によって形成し(6頁下4行∼下1行)」
・図面の簡単な説明
「,」図面は本考案の一実施例を示し第1図は本例の入賞装置の斜視図
(7頁8行∼10行)

(イ)また,前記甲7(実願昭61−164848号〔実開昭63−71
〕,「」,077号のマイクロフィルム考案の名称パチンコ機の入賞装置
出願人株式会社大一商会〔原告,公開日昭和63年5月12日)に〕
は以下の記載がある。
・実用新案登録請求の範囲
「全ての入賞球を検出するスイッチと特定の入賞球を検出するス
イッチとを有する入賞装置であって,その本体には開閉扉用開口部
の下方に透視窓部を形成するとともに,開閉扉の左右に入賞口およ
びランプ取付孔を形成し,これらの前面には透明合成樹脂により透
視窓部の覆い部と入賞口への球受部を有するランプカバー部を一体
成形した飾り板を装着したことを特徴とするパチンコ機の入賞装
置」。
・「本考案は上記従来の問題点を解決すべくなされたもので,玉受け
プレートにより誘導されたパチンコ球の入賞部での通過状態を遊技
者が目視により確認することのできるパチンコ機の入賞装置を提供
することを目的とする(3頁下2行∼4頁3行)」
・「この入賞装置3の本体4は不透明合成樹脂よりなるもので,遊技
盤2に取付けられる略平板状の取付基板5を主体とし(5頁1行」
∼3行)
・「この受け皿部材16は開閉扉用開口部6からの入賞球を受けるも
のであって該受け皿部材16は無色透明の合成樹脂よりなり5,」(
頁末行∼6頁2行)
・「25は本体4の背面側に取付けられて入賞部15の背面を塞ぐ中
,」()板で例えば赤色透明の合成樹脂からなり6頁15行∼17行
・「このランプ押え部材45は透明合成樹脂からなるもので(9頁」
3行∼4行)
・「この開閉扉62は…例えば白色不透明の合成樹脂からなり(1」
1頁2行∼4行)
・「68は本体4の前面側に取付けられる飾り板であって,例えば赤
色透明の合成樹脂からなり(11頁末行∼12頁1行)」
・「この飾り板を透明な合成樹脂により形成したことで遊技者は当該
のパチンコ球が特定の入賞球であるか,通常の入賞球であるかを確
認することができるとともに,例えばランプ切れ等があったとして
も,それに基因するトラブルを解消することができ信頼性を高める
ことができる(16頁7行∼12行)。」
・第2図
ウ上記によれば,甲6,7には,遊技機の構成部品を透明合成樹脂材と不
透明合成樹脂材とを選択的に使用し,透明合成樹脂材を使用した箇所から
はパチンコ球を視認することも記載されており,遊技機においてその内部
を視認できるように透明合成樹脂材を使用することは周知の技術手段であ
ることが認められる。
そうすると引用発明1にこれら周知の技術を適用して外部からユニッ,,
トベースの内部を視認可能とし,ユニットベース内に誘導された遊技球の
状態を容易に視認できることとし,さらにユニットベース内部に取り付け
られる球送り部材を不透明合成樹脂材とすることで,ユニットベース内部
での遊技球と球送り部材との関係が一見しただけで把握できることを可能
とすることは容易に想到することができたものといえる。
上記によれば,審決の相違点Bについての認定,判断に誤りはない。
エなお原告は,甲6,7において透明合成樹脂と不透明合成樹脂を選択し
ているのは装飾目的であり,本願発明と目的が異なると主張するが,上記
ウのとおり,甲6,7において一部透明合成樹脂を用いるのはその部分か
ら遊技機の内部を視認できるようにする目的もあることが明らかであるか
ら,原告の上記主張は採用することができない。
3結語
以上のとおりであるから,原告主張の取消事由はすべて理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官中野哲弘
裁判官今井弘晃
裁判官清水知恵子

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