弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中、上告人の被上告人に対する昭和四九年一〇月一日から同五〇
年四月一一日まで一か月二六〇七円の割合による金員の支払請求に関する部分を破
棄し、右部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。
     上告人のその余の上告を棄却する。
     前項に関する上告費用は、上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人平山国弘、同村崎満、同川畑雄三の上告理由第一点及び第三点につい

 原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、上告人のした本件賃貸借契約の
解除の意思表示を無効であるとした原判決の判断は、正当として是認することがで
きる。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非
難するか、又は原審において主張しない事実に基づいて原判決を論難するものであ
つて、いずれも採用することができない。
 同第二点について
 原審は、1 上告人を賃貸人、被上告人を賃借人とする本件土地の賃貸借契約に
おいて、昭和四七年五月以降の賃料は一か月六四九〇円の定めであつたが、昭和四
八年五月以降の賃料については公租公課の増加に応じ上告人と被上告人とが協議し
て定める旨の約定(以下本件約定という。)があつたこと、2 上告人は、昭和四
八年五月一五日ころ被上告人に対し同月末に支払期限の到来する同月分の賃料から
一か月九〇九七円に増額する旨の意思表示をしたこと、3 上告人は、右の意思表
示をする前に被上告人と協議をしなかつたこと、4 被上告人は、右の増額の意思
表示を受けて間もなく、他の賃借人二五名とともに上告人方を訪れて右の意思表示
の撤回を求めて交渉したが、上告人の容れるところとならなかつたこと、5 そこ
で被上告人は、同月分の賃料を従前の額で提供し、上告人がその受領を拒絶したの
で、その後約二年間従前の額により賃料の弁済供託を続けたが、結局当事者間に賃
料増額の協議が成立しなかつたこと、以上の事実を認定したうえ、上告人は賃料増
額の意思表示をするについて被上告人と協議しなかつたものであるから、右の意思
表示は本件約定に反しその効力を生じないとして賃料の増額を認めず、他方で被上
告人は、上告人の請求する期間(昭和四九年一〇月一日から同五〇年四月一一日ま
で)の賃料について、従前の額である一か月六四九〇円の割合により弁済供託して
おり、右供託は有効であつて右賃料債権は消滅したと判断し、上告人の賃料請求を
すべて棄却している。
 ところで、土地の賃貸借契約の当事者は、従前の賃料が公租公課の増減その他の
事由により不相当となるに至つたときは、借地法一二条一項の定めるところにより、
賃料の増減請求権を行使することができるところ、右の規定は強行法規であつて、
本件約定によつてもその適用を排除することはできないものである(最高裁昭和二
八年(オ)第八六一号同三一年五月一五日第三小法廷判決・民集一〇巻五号四九六
頁参照)。そうすると、本件約定は、賃貸借当事者間の信義に基づき、できる限り
訴訟によらずに当事者双方の意向を反映した結論に達することを目的としたにとど
まり、当事者間に協議が成立しない限り賃料の増減を許さないとする趣旨のもので
はないと解するのが相当である。そして、賃料増減の意思表示が予め協議を経るこ
となく行なわれても、なお事後の協議によつて右の目的を達することができるので
あるから、本件約定によつても、右の意思表示前に必ず協議を経なければならない
とまでいうことはできない。また、当事者相互の事情によつて協議が進まない場合
においては、本件約定は、当事者が訴訟により解決を求めることを妨げるものでは
ないのであつて、右のような場合でも当事者は協議を尽くすべき義務を負い、これ
に違反すると先にした増減請求の意思表示は無効となると解すべきものではない(
最高裁昭和四一年(オ)第二八五号同年一一月二二日第三小法廷判決・裁判集八五
号二四三頁参照)。
 しかるに、原判決が、前記の事実関係を認定しただけで、上告人に本件約定の違
反があるとし、その賃料増額の意思表示の効力を否定したことには、ひつきよう、
賃料の増減請求権に関する法規及び本件約定の解釈適用を誤つた違法があるものと
いうべく、右の意思表示の効力が肯定され賃料の増額が認められれば、増額賃料の
うち一か月六四九〇円の割合による被上告人の弁済供託額を超える部分の請求を認
容すべきこととなる。したがつて、右違法が、原判決中、一か月九〇九七円の割合
による上告人の賃料請求のうち右の弁済供託額を控除した一か月二六〇七円の割合
による賃料請求を棄却した部分に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は結
局理由があり、原判決は右部分につき破棄を免れない。そして、右部分については
さらに審理を尽くさせるのが相当であるから、これを原審に差し戻すこととする。
なお、原判決が解除後の賃料相当損害金の請求を棄却したことを非難する論旨は、
解除の効力の認められないこと前記のとおりであるから、失当であつて採用するこ
とができない。
 よつて、民訴法四〇七条一項、三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁
判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    鹽   野   宜   慶
            裁判官    栗   本   一   夫
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    塚   本   重   頼
            裁判官    宮   崎   梧   一

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