弁護士法人ITJ法律事務所

最高裁判例


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主文
被告会社を罰金300万円に,被告人Aを懲役2年及び罰金100万円に,
被告人B及び被告人Cをそれぞれ懲役1年に処する。
被告人Aにおいてその罰金を完納することができないときは,金1万円を
1日に換算した期間,同被告人を労役場に留置する。
この裁判が確定した日からいずれも3年間,被告人Aに対する懲役刑の,
被告人B及び被告人Cに対する各刑の執行をそれぞれ猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社は,大阪府東大阪市(以下略)に本店を置き,精米の製造・卸売等を業
としていたもの,被告人Aは同社代表取締役,同Bは同社営業部長,同Cは同社経
理課長であったものであるが,被告人A,同B及び同Cは,同社製造部係長D及び
同社製造部主任Eらと共謀の上,
第1被告会社の業務に関し,不正の目的をもって,平成18年7月24日及び同
月26日,2回にわたって,同社第1精米工場において,平成15年産千葉県
産コシヒカリ,平成16年産千葉県産コシヒカリ及び品種不明の未検査米を混
合して,「平成17年産福井県コシヒカリ100%」と印刷された包装袋に詰
め込み,これがあたかも平成17年産福井県産コシヒカリ単品の商品であるか
のように表記し,商品の原産地,品質及び内容等について誤認させるような虚
偽表示をした上,平成18年8月1日ころ,同府吹田市(以下略)所在の有限
会社Fに対し,前記包装に係る精米合計9袋(合計約51キログラム)を譲渡
し,もって,不正競争を行った
第2精米の袋に表示された米とは産地等の異なる米を袋詰めにして販売し,売買
代金名下に金員を詐取しようと企て,被告会社の業務に関し,不正の目的をも
って,同年9月1日ころ,前記第1精米工場において,平成17年産岡山県産
コシヒカリ,平成18年産高知県産コシヒカリ及び品種不明の返品された米を
混合して,「平成17年産新潟県コシヒカリ100%」と印刷された包装袋に
詰め込み,これがあたかも平成17年産新潟県産コシヒカリ単品の商品である
かのように表記し,商品の原産地,品質及び内容等について誤認させるような
虚偽表示をした上,平成18年9月7日ころ,前記Fにおいて,同社代表取締
役Gに対し,前記包装に係る精米3袋(合計約15キログラム)を平成17年
産新潟県産コシヒカリ単品の商品と称して代金合計6000円の約定で引き渡
し,もって,不正競争を行うとともに,同人をして前記精米3袋がその表示さ
れた平成17年産新潟県産コシヒカリ単品の商品である旨誤信させ,よって,
平成18年12月29日,前記F店内において,同人から,被告会社営業員H
が,前記精米3袋の代金合計6000円を含む額面5万3834円の小切手1
通の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させた
ものである。
(事実認定の補足説明)
第1弁護人の主張等
被告人Bの弁護人は,同被告人は判示各犯行について共謀していないと主張
し,同被告人もこれに沿う供述をする。また,被告人A及び同Cは,いずれも,
同B及びDとは共謀していない旨の供述をしている。そこで,以下,判示各事
実を認定した理由を補足して説明する。
第2当裁判所の判断
1被告人Bの共謀の有無
(1)前提事実
関係証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア被告会社は,精米の製造・卸売等を業としていたものであるが,同社に
おいては,その存続のために必要であるなどとして,従前から単一銘柄商
品の少なくとも二,三割程度につき原産地等について虚偽表示をした上,
これを販売することが日常的かつ継続的に行われていた。
イ被告会社の卸売り部門においては,営業部員が,営業会議等において被
告人Aから指示された価格の範囲内で,顧客が被告会社から特定の種類の
商品を仕入れる際の価格を定める契約(以下「基本契約」という。)を締
結し,後日,顧客からの発注の都度,同契約に沿った価格で精米を納入し
ていた。
ウ被告会社営業員Iは,被告人Aから指示された価格の範囲内で,平成1
7年9月ころ,判示の有限会社F(以下「F」という。)と基本契約を締
結し,Fは,平成18年7月30日ころ,同基本契約に沿って,平成17
年産福井県産コシヒカリ単品の商品を発注し,これを受けた被告会社は,
同社製造部主任Eにおいて同年7月24日及び同月26日に製造した虚偽
表示のなされた商品を,同年8月1日ころ,Fに納入した。
エまた,Iは,被告人Aから指示された価格の範囲内で,平成17年10
月ころ,Fと基本契約を締結し,Fは,平成18年9月6日ころ,同基本
契約に沿って,平成17年産新潟県産コシヒカリ単品の商品を発注し,こ
れを受けた被告会社は,Eにおいて同年9月1日ころ製造した虚偽表示の
なされた商品を,同月7日ころ,Fに納入した。
オ被告人Bは,平成17年9月から契約社員の扱いで,平成18年1月こ
ろから正社員として,被告会社の営業部長として勤務しており,被告人A
及び営業員らの出席する営業会議の議事進行,被告会社営業員の全般的な
指導・監督,大口顧客との契約の決裁等の職務を行っていた。
(2)Jの供述について
ア被告会社の営業員Jは,その検察官調書(甲9及び10)において,大
要以下のとおり供述する(以下「J供述」という。)。
(ア)平成17年7月7日,被告人A,同B,I及びJらが出席した営業
セミナーにおいて,被告人Aらから,被告会社には専務取締役のKがい
て産地と強いパイプを持っていることからどこよりも安く米を仕入れる
ことができるなどと説明して営業するよう指示された。また,被告人A
は,「うちのお米はDNAを合わせているので自信を持って売りなさ
い。」,「お客さんが100パーセント間違いないかと聞いてくれば,
間違いないですと答えなさい。」などと指示をしていた。被告人Bから
も,営業の際のセールストークの指導があった。
(イ)同年11月7日の営業会議において,被告人Aが,「今までどおり
DNAを合わせたとう精をしなさい。販売単価を上げるためコシヒカリ
系をもっと販売しなさい。」などと指示してきた。また,Kは,「クレ
ームを出さないようにするためには販売単価を上げて,コシヒカリにコ
シヒカリを入れていくしかない。」などと言い,被告人Bは,「1キロ
200円以下の低価格の商品については,最低でも1キロ20円上げて
売りなさい。単価を上げるためにコシヒカリ系をもっと売りなさい。」
などと指示してきた。
(ウ)被告人A及び同Bは,営業員に対し,その各得意先から,新米等に
ついて同業他社の提示価格等を調査させて報告を求めていた。
イJは,会社組織の最上位あるいはそれに準じる地位にある被告人A及び
同Bらの営業セミナー及び営業会議における言動や被告会社の営業体制等
について具体的かつ詳細に述べており,その供述内容に特段不自然ないし
不合理な点はない。
また,被告人Aが営業会議においてDNAを合わせている旨言ったこと,
被告人Bから営業の指導を受けたことやその指導内容等について述べる点
は,Iの供述(甲13)及び被告人Bの捜査段階供述(乙7及び8)とそ
の基本的部分が合致しており,相互にその信用性を補強し合っているほか,
平成17年11月7日ころの営業会議における被告人Aの言動について述
べる点は,被告人Cの捜査段階供述(乙14)とも整合している。
さらに,Jは,自己の刑事責任を基礎付ける事実についても率直に供述
しているほか,被告人Bの指示内容や関与の度合いをことさら誇張するよ
うな供述はしておらず,事実をありのままに供述しているものと認められ
る。これらの点を併せ考えれば,J供述は基本的に信用することができる。
これに対し,被告人Bの弁護人は,とう精日報を営業員らには見せない
ようにしていた被告人Aらの態度等からして,同被告人が,営業員らに対
し,虚偽表示をしていることが明らかになるような脈絡でDNAという言
葉を使ったとは考えがたい旨主張する。しかしながら,営業員らに対して,
被告会社において虚偽表示をしていることを間接的な表現を用いながらも
伝達しておくことは,営業員らが顧客からの問合せ等に対してそれを踏ま
えた対応ができるという点で被告会社にとって意味のあることであり,と
う精日報の記載内容等の具体的な虚偽表示の証拠資料を営業員らに知られ
ないようにすることとは両立し得るものである。
(3)Iの供述について
アIは,その検察官調書(甲13)及び警察官調書(甲60)において,
大要以下のとおり供述する(以下「I供述」という。)。
(ア)被告人Aは,従前から,営業会議等で,被告会社の商品はDNAを
合わせているから自信を持って販売するよう指示しており,特に,平成
17年ころの営業会議では,頻繁に「DNAを合わせているから自信を
持って売ってこい。」などと指示していた。
(イ)被告人Bからは,平成17年7月か8月ころ,営業方法について,
「当社はライバル社に負けない価格設定をしていますと言って価格の安
さを強調すること。」などと指導された。
また,被告人Bからは,「上の方が判断するのに情報が必要だから,
折に触れてライバル会社についての情報を取ってくるように。」,「ラ
イバル会社の動きを見ながら,下をくぐった営業をしてこい。」などと
指示されていた。
イIも,Jと同様に,被告人A及び同Bの営業部員に対する指示・指導の
内容等について具体的かつ詳細に述べており,その供述内容に特段不自然
ないし不合理な点はない。
また,被告人Aが営業会議においてDNAを合わせている旨言った旨述
べる点については,J供述や被告人B(乙7及び8)及び同C(乙14
等)の各捜査段階供述と,被告人Bから受けた指導内容等については,J
供述及び被告人Bの捜査段階供述とそれぞれ合致しており,相互にその信
用性を補強し合っている。
以上に加えて,Iは,自己の刑事責任を基礎付ける事実についても供述
していること,その供述内容からしても,被告人Bらの指示内容や関与の
度合いをことさら誇張するような態度はうかがわれないことなどを併せ考
えれば,I供述は基本的に信用することができる。
(4)被告人Bの捜査段階供述について
ア被告人Bは,捜査段階において,大要以下のとおり供述していた(乙7
及び8)。
(ア)被告人Aは,営業会議では,いつも,営業員に対し,「うちの商品
はDNAを合わせてるから,安心して売ってきて。」と言っていた。
(イ)平成17年7月7日ころ,営業セミナーが開かれ,その際,被告人
Bは,営業員らに対して,「『うちは,小売の直営店もやっていますか
ら,中身も大丈夫です。100パーセントの米に間違いありません。』
などと言ってきなさい。」と指示した。被告人Aも,「うちの商品はD
NA合わせてるから,大丈夫や。」などと言っていた。
(ウ)同年11月7日ころの営業会議において,被告人Aが,「DNAは
合わせてるんだけど,1等以外の未検査米を使ってるから,品質が安定
しない。1等ばかりで米を作っていたら,売上は上がらないから,今ま
でどおりの方法で販売をするしかない。今後は,販売価格の平均値段を
引き上げてくれないか。平均価格が1キロ当たり268円になるように
引き上げてほしい。全体として20円くらい価格を上げていきたい。販
売価格を上げるために,安い米じゃなく,コシヒカリ系を拡販してほし
い。」などと言い,Kも,「今後は販売価格を上げる必要がある。平均
販売価格が1キロ当たり268円になるようにしてほしい。」などと言
った。そこで,被告人Bは,営業員に対し,「1キロ当たり200円以
下の販売価格の商品については,20円上げて売ってくれ。コシヒカリ
系を売れば利益が出るので,今後これを拡販しよう。」と指示した。
(エ)平成17年から平成18年にかけて,被告人Aから,同業他社の不
正に関する新聞記事等を使って営業するよう指示されたことがあった。
同被告人から,福井県内の米販売業者が行政指導を受けたという新聞記
事を渡され,「これをセールストークに織り込んでもらえんかな。」,
「『他の業者では安く売るために,こんな不正をしている。』などと営
業員に話させて,記事を客に見せてほしい。」,「被告会社は,それと
は違って,Kさんがおるから安くいけるんやと説明さして。」などと言
われたため,営業員にその記事のコピーを渡して,「この業者が取引し
ていた販売先に営業をかけに行く。」,「記事を見せて,被告会社では,
このようなことはなく,間違いがない米を納入できると言って営業をか
けるように。」と指示した。
(オ)被告人Aから他の業者の新米の販売価格を調査するよう言われ,平
成17年7月ころ,営業員に対し,「取引先担当者に,他社の新米の販
売価格の予定を聞き出すように。」と指示し,営業員から集めた情報を
まとめて同被告人に伝えた。
イ被告人Bの捜査段階供述は,被告人A及び同B自身の営業会議や営業セ
ミナーでの言動,営業員に対する指示内容等について,自己の心情をも交
えた具体的かつ詳細なもので,迫真性を伴っており,その供述内容に特段
不自然ないし不合理な点はない。
被告人A及び同Bの営業員らに対する指示内容,営業会議及び営業セミ
ナーにおける被告人A及び同Bの言動等について供述する点は,I及びJ
の各供述と合致しており,相互にその信用性を補強し合っているほか,平
成17年11月7日ころの営業会議における被告人Aの言動について述べ
る点は,被告人Cの捜査段階供述(乙14)と整合している。また,営業
員らに対し,同業他社の不正に関する新聞記事等を用いて営業をするよう
指示したなどとする点は,被告会社等から押収された新聞記事の写し等
(甲59)によって裏付けられている。
加えて,被告人Bは,捜査段階から弁護人を選任し,その助言を受けて
いたことからすると,その捜査段階供述の信用性に特段の疑義はないとい
うべきである。
(5)被告人Aの供述について
被告人Aは,被告人Bら営業担当者に対してDNAを合わせるなどと言っ
たことはないと供述する。しかしながら,被告人Aの供述は,虚偽表示をし
た動機や,Dに指示した内容等について捜査段階から変遷がみられること,
被告人Bは虚偽表示を知らなかったと思う旨供述する一方,業界の中で何が
行われているかというのは大人の世界として同被告人もご承知になっていた
と思う旨の供述もしており,供述が一貫していないことなどからして,ただ
ちに信用することができない。
(6)被告人Bの公判供述について
ア被告人Bは,当公判廷において,大要以下のとおり供述する。
(ア)平成17年7月7日ころ,営業セミナーにおいて,被告人Aが,D
NAを合わせているから大丈夫などと言ったことは記憶にない。
(イ)同年9月ころの営業会議において,コシヒカリのスポット商品につ
いて,営業員から「その商品大丈夫ですか。」などという質問がなされ
た際,被告人Aは,DNAを合わせている商品である旨を答えていた。
(ウ)同年11月ころの営業会議において,被告人Aが,表示と異なり中
国米を入れていた会社の得意先に,被告会社はDNAが合っている商品
を提供する問屋であるとして営業をかけるよう言った。
(エ)出荷量の少ないFに対する営業の指示や,契約締結には関与してお
らず,事後的な報告も受けていない。
(オ)被告会社で作為的な虚偽表示がなされていると知ったのは事件発覚
後である。
イ被告人Bの公判供述は,被告会社における虚偽表示を認識した時期や経
緯などの重要部分について捜査段階の供述から後退したものとなっている
が,そこには合理的な理由は見出せない。また,営業セミナーの場での被
告人Aの言動等について述べる点は曖昧なものにとどまっている。
次に,DNAを合わせているとの被告人Aの発言の趣旨について,等級
の落ちた米を使うことをいうとも考えたなどと供述する点は,DNAのみ
が表示と適合的である旨の説明をする同被告人の発言に照らして,にわか
に納得することができない。
さらに,上記(オ)に関連して,平成18年のゴールデンウィーク前に起
きたホームセンターLでのクレームについて,被告人Aから虚偽表示を否
定されてその言葉を信じたとする点や,その後のDNA鑑定の結果(弁1
ないし3)を見せられたことから,虚偽表示はされていないと判断したと
する点は,被告人Bが,その直前に,Kから,秋田県産の米に岡山県産の
未検査米を入れているなどという具体的な話を聞かされていたこと,しか
るに,被告人Aから虚偽表示を否定された後にKらに事実確認を試みたり
はしていないこと,さらに,Kから,DNAは合わせているだろうと思う
旨を聞かされており,営業会議等の場でも,被告人AのDNAを合わせて
いる旨の発言を聞いていたことなどからすると,不自然な感を否めない。
以上からすれば,被告人Bの公判供述は直ちに信用することができない。
(7)共謀の有無
ア信用できるJ及びIの各供述並びに被告人Bの捜査段階供述等によれば,
以下のとおり認められる。
すなわち,被告人Bは,被告会社の営業会議の際に被告人Aがたびたび
営業員らに対して「うちの商品はDNAを合わせてるから,安心して売っ
てきて。」と指示するのを聞いて,同社の商品について虚偽表示がされて
いるのではないかとの疑念を抱いていた。
被告人Bは,平成17年7月7日ころ,営業セミナーにおいて,被告会
社の営業員らに対し,営業の際には被告会社の精米は虚偽表示がされてい
ないことなどを言うよう営業方法について指導したが,その際,被告人A
は,「うちの商品はDNA合わせてるから,大丈夫や。」などと言ってい
た。その後,同年11月7日ころにも,営業会議において,被告人Aは,
「DNAを合わせているから自信を持って売ってこい。」などと発言し,
被告人Bは,これを受けて,営業員らに対し,被告会社においては商品と
表示とが一致していることを強調して営業活動をするよう指示した。
Iは,被告人Bによる上記のような営業方法に関する指導を受けて,同
年9月ころと同年10月ころ,Fとの間で前記の各基本契約を締結した。
イ以上のような,被告人Bが被告会社の精米の虚偽表示につき抱いていた
疑念に加えて,営業セミナー及び営業会議等における被告人Aの言動,被
告人Bの職制上の地位・職務内容及び営業員に対する指示・指導の内容等
を併せ考慮すれば,被告会社においては,その存続のために必要であると
して,従前からその商品である精米の原産地等について虚偽表示をした上,
これを販売することが継続的に行われていたところ,被告人Bは,本件各
犯行当時に至るまでに,被告会社の営業部長としての立場において,継続
的に精米の虚偽表示が行われていることを認識・認容しつつ,営業員らに
対してかかる精米販売のための営業活動を促すなど,被告会社において重
要な役割を果たしていたものというべきであるから,被告会社による精米
の虚偽表示及び販売の一環としてなされた本件各犯行(虚偽表示及び詐
欺)については,被告人Bと同Aらとの間で,少なくとも黙示的で包括的
な共謀が形成されていたものと認められる。
2Dの共謀の有無
(1)Eの供述について
アEは,その検察官調書(甲11及び12)において,大要以下のとおり供述す
る(以下「E供述」という。)。
(ア)平成18年4月25日,Eは,Dとともに社長室に呼び出され,被告人A
から,これまでどおりのとう精をすればいいなどと言われた。その後も,被告
人Aから,たびたびDと一緒に社長室に呼ばれ,「1キロ当たり50円の粗利
を出せ。DNAは合わせるように気を付けろ。新米の時期には初入荷は数量を
合わせないとだめだから,その時期を気を付けろ。」などと言われた。
(イ)被告会社では,商品の袋が破れたり,とう精してから1か月以上が経過し
て,返品された白米をDが品種ごとに整理し,商品別に積み替えを行って保管
していた。これらの白米のうち,コシヒカリなどについては,前工場長のMか
ら,品種を合わせて再度精米して商品にすることを指示されており,返品され
た商品は,もう一度商品化して販売していた。
イEについても,J及びIと同様に,Eらが虚偽表示をするようになった経緯,
返品された精米の管理状況,被告人Aの言動等について具体的かつ詳細に供述し
ており,その供述内容に特段不自然ないし不合理な点はない。
E供述のうち,返品された商品の利用状況等について供述する点は,判示第2
の犯行の際,現に返品された精米が使用された事実によって裏付けられている。
また,Dも被告人AからE同様の指示を受けていたとする点は,Dが工場長を務
める第2工場でも,Eが工場長を務める第1工場と同様,使用した原料米と製造
された精米とが整合しないとう精日報が作成されていたこと(甲52及び53)
と整合的である。
さらに,E供述のうち,被告人Aが,Eらに対し,50円の粗利を出すような
とう精を求めていたこと,Dに対してもDNAを合わせたとう精をするよう言っ
ていたことなどについては,被告人Cの捜査段階供述(乙13)もこれに沿うも
のとなっている。
以上からすれば,E供述は十分信用することができる。
(2)被告人Aの供述について
被告人Aは,Dには虚偽表示等を指示していない旨供述するが,かかる供
述は,Dが返品された精米を管理していたことや,Dが工場長を務める第2
工場においても,原料米と製造された精米との整合しないとう精が行われて
いたことと整合しない上,虚偽表示をする動機やDに対する指示内容等の重
要部分において供述内容に変遷があることなどを考慮すれば,にわかに信用
することができない。
(3)共謀の有無
信用できるE供述等によれば,Dは,Eとともに,被告人AからDNAだ
けを合わせた虚偽表示の商品を製造するよう指示され,これに従ってとう精
を行うとともに,虚偽表示の原料となる返品された商品を保管していたこと
が認められ,判示第2の犯行においては,現に返品された商品が原料米とし
て使用されていることなどを併せ考慮すれば,本件犯行当時,被告人Aらと
Dとの間でも,虚偽表示及び詐欺について少なくとも黙示的で包括的な共謀
が存在していたものと認められる。
第3結論
以上の次第であるから,判示各事実は優に認められ,弁護人の主張はいずれ
も理由がない。
(法令の適用)
1被告会社について
被告会社の判示各所為はいずれも包括して平成18年法律第55号附則11条
により同法による改正前の不正競争防止法22条1項1号,21条1項1号,2
条1項13号に該当するが,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法4
8条2項により各罪所定の罰金の多額を合計した金額の範囲内で被告会社を罰金
300万円に処することとする。
2被告人Aについて
被告人Aの判示第1の所為は包括して刑法60条,前記改正前の不正競争防止
法21条1項1号,2条1項13号に,判示第2の所為のうち,不正競争の点は
包括して刑法60条,前記改正前の不正競争防止法21条1項1号,2条1項1
3号に,詐欺の点は刑法60条,246条1項にそれぞれ該当するが,判示第2
の不正競争と詐欺は1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,同法54
条1項前段,10条により1罪として重い詐欺罪の刑(ただし,罰金併科に関し
ては不正競争防止法違反の罪について定めたそれによる。)で処断することとし,
各所定刑中いずれも懲役刑及び罰金刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪
であるから,懲役刑については同法47条本文,10条により重い判示第2の罪
の刑に法定の加重をし,罰金刑については同法48条2項により各罪所定の罰金
の多額を合計し,その刑期及び金額の範囲内で同被告人を懲役2年及び罰金10
0万円に処し,その罰金を完納することができないときは,同法18条により金
1万円を1日に換算した期間同被告人を労役場に留置し,情状により同法25条
1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予するこ
ととする。
3被告人B及び同Cについて
被告人B及び同Cの判示第1の所為はいずれも包括して刑法60条,前記改正
前の不正競争防止法21条1項1号,2条1項13号に,判示第2の所為のうち,
不正競争の点はいずれも包括して刑法60条,前記改正前の不正競争防止法21
条1項1号,2条1項13号に,詐欺の点はいずれも刑法60条,246条1項
にそれぞれ該当するが,判示第2の不正競争と詐欺は1個の行為が2個の罪名に
触れる場合であるから,同法54条1項前段,10条により1罪として重い詐欺
罪の刑(ただし,罰金併科に関しては不正競争防止法違反の罪について定めたそ
れによる。)で処断することとし,各所定刑中いずれも懲役刑を選択し,以上は
同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第
2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人B及び同Cをいずれも懲役
1年に処し,いずれも情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した
日から各3年間それぞれその刑の執行を猶予することとする。
(量刑の理由)
1本件は,被告人A,同B及び同Cが,被告会社の業務に関し,2回にわたって,
商品の原産地,品質及び内容等と異なる虚偽表示をした精米を顧客に譲渡し,そ
のうち1回は顧客を欺いて代金の交付を受けたという不正競争防止法違反及び詐
欺の事案である。
2被告会社では,遅くとも平成15年10月ころから同種行為を繰り返していた
ことがうかがえるところ,本件当時は,被告人Aの指示の下,製造担当者におい
て,虚偽表示のなされた商品の製造や,その原料とするために,返品された精米
の保管等を行い,営業担当者において,虚偽表示のなされた商品を表示と一致す
るものとして販売し,経理担当者において,立入調査等に備えて実態に反すると
う精日報を作成して備え置くなどしており,本件は被告会社がその利益を図るべ
く組織として行った常習的な犯行の一環である。被告人らは,産地及び生産年等
によって同一品種であっても精米の販売価格に差があり,表示の正確性は,商品
の外観等からは明らかでなく,DNA鑑定等によって判別されることなどをいわ
ば逆用して,表示と合致するDNAの玄米等を用いて虚偽表示のなされた商品を
製造して販売したものであって,本件は計画性の高い巧妙な犯行である。しかも,
被告人らは,被告会社に警察の捜索が入ったため,被害会社から代金支払を待つ
よう求められたにもかかわらず,営業員を派遣して代金を回収しているのであっ
て,詐取の態様にも悪質なところがある。そして,本件により公正な競争秩序が
現に害されており,また,食品の品質等の表示については,購入者がその真偽を
自主的に検査することは実際上困難であり,専ら製造販売者の良識に信頼が寄せ
られているところ,本件はその信頼を根底から裏切ったものであって,本件が消
費者らに与えた影響にも大きいものがある。
被告人Aは,被告会社の代表者として,製造部門担当者らに対しては虚偽表示
の手法等を指示し,被告人Cに対しては内容虚偽のとう精日報の作成を指示し,
営業担当者らに対しては商品と表示とが一致しているものとして営業するよう指
示するなど,本件において中心的かつ主導的な役割を果たしている。
被告人Bは,販売価格の調査や営業員の指導監督を行うなど,被告会社が組織
として虚偽表示を継続する上で重要な役割を果たしている。
被告人Cは,遅くとも平成16年ころには虚偽表示を認識しながら,その発覚
を防止するため内容虚偽のとう精日報を作成していたものであり,関与の期間は
長く,果たした役割も重要である。
以上からすれば,被告人らの刑事責任,とりわけ被告人Aの刑事責任は重大で
ある。
3しかしながら,他方において,本件譲渡に係る商品は12袋であって,多量と
まではいえず,本件詐欺に係る被害金額も少額にとどまっていること,被告会社
については,詐欺の被害者に10万円を支払って示談を遂げており,被害者は被
告会社を宥恕していること,被告会社は,精米等の製造販売事業を既に停止して
いること,これまで前科前歴がないこと,被告人Aについては,個人的利益を追
求して本件に及んだものではないこと,基本的な事実関係を認めて反省の弁を述
べていること,娘が出廷して同被告人のために証言していること,これまで前科
前歴がないこと,被告人Bについては,被告会社の業務の過程で本件に関与した
ものであって,個人的利益を図ったものではないこと,虚偽表示には直接関与し
ておらず,被告人Aの意向を受けて行動していたものであって,従属的立場にあ
ったといえること,妻が出廷して同被告人のために証言していること,罰金前科
1犯のほか前科前歴はないこと,被告人Cについては,その個人的利益を図った
ものではないこと,Aに指示されて犯行に関与したものであり,従属的立場にあ
ったといえること,基本的な事実関係を認めて反省の態度を示していること,姉
が出廷して同被告人のために証言していること,これまで前科前歴がないこと,
被告人B及び同Cは,いずれも被告会社を解雇されていることなどの,被告人ら
のためにそれぞれ有利に斟酌すべき事情も認められる。
4そこで,当裁判所は,これら諸事情を総合考慮の上,被告会社及び被告人3名
をそれぞれ主文の刑に処した上,被告人Aについてはその懲役刑の執行を,同B
及び同Cについてはその各刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑被告会社につき罰金300万円,被告人Aにつき懲役2年及び罰金100
万円,同B及び同Cにつき各懲役1年6月)
平成20年4月17日
大阪地方裁判所第5刑事部
中川博之裁判長裁判官
村木洋二裁判官
裁判官入子光臣は転補のため署名押印することができない。
中川博之裁判長裁判官

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