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平成18年(行ケ)第10417号審決取消請求事件
平成20年5月14日判決言渡,平成20年4月9日口頭弁論終結
判決
原告カイロンベーリングゲーエムベーハーアンドカンパニー
訴訟代理人弁護士城山康文,岩瀬吉和,山本健策
訴訟代理人弁理士山本秀策,駒谷剛志,長谷部真久
被告特許庁長官肥塚雅博
指定代理人種村慈樹,徳永英男,森山啓
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
第1原告の求めた裁判
「特許庁が不服2001−19324号事件について平成18年5月9日にした
審決を取り消す。」との判決
第2事案の概要
本件は,特許出願の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消し
を求める事案である。
1特許庁における手続の経緯
(1)原告は,昭和63年6月3日(パリ条約による優先権主張日・1987
(昭和62)年6月3日(以下「本件優先日」という。),ドイツ連邦共和国),
名称を「シュードモナス・アエルギノザの外部膜タンパク質F」とする発明につき,
特許出願(特願昭63−137206号)をし,さらに,同特許出願を原出願とし
て,平成10年9月14日,分割出願(特願平10−260701号。以下「本件
出願」という。)をした(甲6,7の1)。
(2)原告は,平成13年7月25日付けで,本件出願につき拒絶査定(甲7の
6)を受けたため,同年10月29日,拒絶査定不服審判の請求(甲7の7)をし
(不服2001−19324号事件として係属),さらに,同年11月28日付け
手続補正書(甲7の8)により,明細書中の特許請求の範囲の補正(以下「本件補
正」といい,本件補正後の本件出願に係る明細書(甲6,7の8)を「本願明細
書」という。)をした。
(3)特許庁は,平成18年5月9日,「本件審判の請求は,成り立たない。」
との審決をし,同月19日,その謄本を原告に送達した。
2本願発明の要旨
審決が対象としたのは,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願発
明」という。)であり,その要旨は次のとおりである(なお,下記「配列番号1に
示したDNA配列」は,別紙配列表記載のとおりである。)。
「【請求項1】配列番号1に示したDNA配列を有する,Pseudomon
asaeruginosaの外部膜タンパク質F(OMPF)をコードするヌク
レオチド,またはE.coli細胞に対して毒性である免疫原性ポリペプチドをコ
ードするそのフラグメント。」
3審決の理由の要旨
審決は,本願発明は,下記引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発
明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受け
ることができないとした。
引用例1986(昭和61)年8月発行の「JOURNALOFBACTERIOLOGY」167
巻2号の473頁から479頁までに掲載されたWendyA.Woodruff,ThomasR.
Parr,Jr.,RobertE.W.Hancock,LarryF.Hanne,ThaliaI.Nicas及びBarbaraH.
EscherichiacoliPseudomonasIglewskiによる「ExpressioninandFunctionof
OuterMembranePorinProteinF」と題する論文(甲8)aeruginosa
審決が上記のとおり判断した理由は,以下のとおりである(符号及び明らかな誤
記と認められる記載を改めた部分,略称を本判決が指定したものに改めた部分,引
用例の引用箇所に「原文」との断り書を付記した部分並びに本訴における書証番号
を冒頭に「本訴」との文言を付した上で付記した部分がある。)。
(1)本願発明には,配列番号1に示したDNA配列を有するP.aeruginosa由来OMPF遺伝子に係
る発明が典型的な発明として包含されているので,まず,本件優先日前に引用例の記載に基づ
いてP.aeruginosa由来OMPF遺伝子をクローニングし,配列決定することが当業者にとって容易
であるか否かについて検討する。
ア引用例には,P.aeruginosaのPAO1株由来のゲノムDNAコスミドバンクから,プロテインF
(OMPF)に特異的なモノクローナル抗体を用いてスクリーニングし,OMPF遺伝子を含むプラス
ミドpHN4を得てポリン不全大腸菌JF733を形質転換したこと(原文474頁右欄下から8行∼
475頁左欄2行)が記載されており,当該形質転換ポリン不全大腸菌JF733(pHN4)と共に,
正常な大腸菌宿主HB101株を形質転換したHB101(pHN4)株の発現産物のいずれもが,2種類の
エピト−プを認識するOMPF特異的モノクローナル抗体との反応性,及びSDSゲル電気泳動上で
の挙動が天然のP.aeruginosaの外膜蛋白OMPFと同一であったことをもって,大腸菌宿主におい
て天然と同一のOMPFが外膜蛋白として発現できたと結論づけている(原文473頁「要約」2
∼7行,475頁左欄3行∼最下行など)。
そして,プラスミドpHN4のサブクローニングにより11kbのEcoRI断片を得,当該断片を挿入
したプラスミドpWW13で形質転換した大腸菌HB101(pWW13)において,外膜でOMPFが発現する
ことを確認しているのだから,OMPF遺伝子は,既にその全長を含む11kbフラグメントとしてク
ローニングされているというべきである(原文476頁FIG.4など)。さらに,OMPF遺伝子の
うち,OMPF特異的エピトープの1つを有するポリペプチド(分子量24,000)をコードするDNA
を含む4.7kbのSalI断片及び同2kbのSalI-PstI断片がそれぞれpWW4及びpWW5に挿入されてサブク
ローニングされている(同FIG.4,左欄1∼23行)。
また,引用例で用いられているPAO1株は本件優先日前の他の文献(例えば,J.Bacteriology,
vol.136,no.1(1978)p.381-390,J.Biochem.,vol.86,no.4(1979)p.979-989(本訴乙9
(本訴甲52))等)においても典型的なP.aeruginosaに属する微生物として広く利用されて
おり,明らかに容易に入手できる微生物である。
そうしてみると,引用例に接した本件優先日前の当業者にとっては,公知微生物であるP.
aeruginosaに属するPAO1株ゲノムから,確実にOMPF遺伝子の全長を含むDNAが11kbのEcoRIフラ
グメントとしてクローニングされている上に,OMPF遺伝子の1部配列を確実に含むフラグメン
トも各種得られている以上,既にOMPF遺伝子自体がクローニングされているに等しいといえ,
その塩基配列及び推定アミノ酸配列を知りたければ,必要に応じてこれらのフラグメントから
適宜ルーチン的作業で機械的に読み取ればよいことであると理解するはずである。
してみれば,少なくとも,P.aeruginosaのPAO1株由来のOMPF遺伝子については,それをクロ
ーニングし,次いでDNA配列及び推定アミノ酸配列を決定することに何らの困難性を見いだす
ことはできない。
イところで,P.aeruginosaは周知の微生物であって多数の公知菌株が存在し,ATCCカタロ
グにおいても多数の菌株が販売されており,本願明細書で用いられた菌株(ATCC33354株)も
そのうちの1つである。
そして,引用例では,OMPF遺伝子の2.0kb部分断片から作成した標識プローブ
(「P-labeled-2.0kb-probe」)を用いてPAO1株由来ゲノムDNAの種々の制限酵素による分解
物とのハイブリダイゼーション実験を行い,その実験結果に基づいて,「これらのデータから,
P.aeruginosaPAO1株の染色体中に存在するプロテインF遺伝子は1コピ−のみであることを推
測させる。」とし,この観察が,従来からの大腸菌のポリンOmpF,OmpCおよびPhoEの構造遺伝
子がすべて単一コピーで存在するという知見と一致することも示されている。(原文476頁
右欄1∼11行)
OMPFは外膜上に存在して菌体内の浸透圧などを調節するポリンチャンネルの1種であり,P.
aeruginosa微生物の生存にとって重要な蛋白質の1つであるといえるにもかかわらず,OMPF遺
伝子が染色体中に1コピーしか存在しないのであるから,当然に同属同種内での遺伝子の保存
性も高いと考えられる。塩基配列レベルでは菌株ごとに多少の相違が見られたとしても,アミ
ノ酸配列レベルでの大幅な相違,少なくとも活性に関わるような立体構造の主要部分での相違
が存在するとは考えにくい。
そうなので,引用例のP.aeruginosaに属するPAO1株以外の菌株,例えば本願明細書中の
ATCC33354株も,そのゲノム中には1コピーのOMPF遺伝子を有し,かつそのDNA配列はPAO1株由
来OMPF遺伝子と極めて相同性の高いものであると予測できるから,これらの菌株のゲノムDNA
をライブラリー化して,引用例中のOMPF遺伝子の全長もしくは部分長を含むフラグメントから
作成されたプローブ(例えば,上記「P-labeled-2.0kb-probe」)を用いるハイブリダイゼー
ション法,または引用例に記載されたと同様のOMPF特異的抗体を用いる抗体スクリーニング法
などを適用することで,P.aeruginosaに属するPAO1株以外の菌株由来のOMPF遺伝子をクローニ
ングすることも,さらにそのDNA配列を決定することも当業者が容易になし得ることである。
ウそして,このように,引用例に基づいてP.aeruginosaに属するPAO1株由来OMPF遺伝子の
みならず,同属同種内の他の菌株由来のOMPF遺伝子もクローニングし,配列決定することが当
業者にとって容易であるときに,その結果として,P.aeruginosaに属する公知菌株に由来する
OMPF遺伝子のDNA配列が「配列番号1」であると解析した程度のことをもって,進歩性を担保
するほどの格別の効果として評価することはできない。
しかも,当該DNA配列は,既に引用例でpHN4,pWW13中の挿入配列としてクローニングされて
いたPAO1株由来OMPF遺伝子のDNA配列とは,同一もしくはきわめて類似したDNA配列を有してい
ると予測されることは上述の如くであり,請求人は,当該DNA配列がPAO1株由来OMPF遺伝子と
比較して予測を超えるほどに多数の相違箇所を含むものであることを立証したわけではない。
むしろ,請求人自身が原審の拒絶理由通知(本訴甲7の2)に対する意見書(平成13年1
月17日付。本訴甲7の4)と共に提出した甲3(NCBIprotein検索:AAD11568。本訴甲3)
によれば,PAO1株由来OMPFのアミノ酸配列は本願明細書中の「配列番号1」(【表1】)のア
ミノ酸配列と同一であるから,まさに引用例で用いられたPAO1株由来OMPF遺伝子と本願発明の
OMPF遺伝子とは,同一のアミノ酸配列をコードする同一もしくはきわめて類似したDNA配列で
あったことが実証されたことになる。
以上述べたとおり,P.aeruginosaに属する微生物のOMPF遺伝子を取得し,そのDNA配列を決
定することは,本件優先日前の当業者であれば引用例の記載に基づいて容易になし得ることで
あり,そのDNA配列が「配列番号1」であったことをもって格別の効果とすることはできない。
したがって,本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をするこ
とができるものである。
エところで,請求人は,審判請求書補正書(平成14年2月1日付。本訴甲7の9)にお
いて,引用例の原文476頁左欄5−7行を示し,「引用例で単離された遺伝子は,引用例の
著者らがOMPFをコードする遺伝子として実際に単離した遺伝子とは異なる。」旨主張している。
なるほど,引用例の上記指摘箇所及びそれ以降の記載において,引用例の筆者は,pHN4を
XhoIで消化してHB101株に形質転換して得られた発現産物がOMPF特異的モノクローナル抗体で
あるMA5-8とは反応するがMA4-4とは反応しなかったという実験結果に基づき,OMPF遺伝子の
DNA配列中のC末側(3'側)にXhoI認識配列(CTCGAG)が存在する可能性を述べている。
しかしながら,上述の如く,引用例全体の記載からみて,P.aeruginosa(PAO1株)のゲノム
中に1コピーしか存在しないOMPF遺伝子の全長が,pHN4及びpWW13中に包まれていることを疑
うべき理由はない。
そして,上記指摘箇所は,pHN4のXhoI切断断片に対する実験結果を説明できる1つの可能性
を推定したに留まり,しかもその推定が後に立証されたわけでもないから,当該記載が引用例
に存在することによっては,何ら上記認定は左右されない。
そもそも,請求人の上記主張中の「引用例の著者らがOMPFをコードする遺伝子として実際に
単離した遺伝子」については,何ら配列情報を示していないのだから,「引用例で単離された
遺伝子」と対比すること自体が失当であり,上記甲3(NCBIprotein検索:AAD11568)に記載
されているものを指すと解したとしても,当該甲3でPAO1由来OMPF遺伝子に関して記載されて
いるのはアミノ酸配列のみであってDNA配列ではないから,引用例のPAO1由来OMPF遺伝子のDNA
配列中にXhoI認識配列(CTCGAG)が存在するか否かは不明であって,請求人の上記主張の根拠
とはなり得ない。
上述のように,本件出願後の上記甲3によれば,引用例におけるPAO1株由来OMPF遺伝子の
DNA配列も,「配列番号1」と同一のアミノ酸配列をコードするものであったといえるところ,
仮に引用例に記載されるPAO1由来OMPF遺伝子のDNA配列中にはXhoI認識配列が存在し,本願明
細書で取得されたOMPF遺伝子のDNA配列(配列番号1)中には存在しなかったことが立証でき
たとしても,このことは,単にXhoI認識配列(CTCGAG)に関連した塩基配列中にアミノ酸配列
には影響を与えない程度,すなわち1塩基程度の差異を有するアレル変異体が取得できたこと
でしかないから,格別の効果として評価できないことには変わりはない。
オまた,請求人は,上記意見書及び上記審判請求書補正書において,本願明細書【001
6】の「この断片は遺伝子生成物が明らかに宿主細胞に対して毒性を有するために高コピー数
のベクターにクローニングすることができなかった。従って遺伝子を,約500bpの重複領域を
有する二つの重複断片にサブクローン化した。OMPF遺伝子と隣接領域のDNA配列をこれらの二
つのサブクローンから決定した。」の記載を示すと共に,本件出願後の甲1(本訴甲1)ない
し甲2(本訴甲2)中の同趣旨の記載を示して,本願明細書で得られたOMPF遺伝子の発現産物
が大腸菌宿主に対する「毒性」を有するために,OMPF遺伝子全長を含むDNA断片を高コピー数
ベクターを用いて増幅することができないことを主張し,あわせてそのことを理由として,P.
aeruginosaのOMPF遺伝子のクローニングが困難であったことを主張する。
そこで,「大腸菌宿主に対するOMPF遺伝子発現産物の毒性」の用語について検討するが,本
願明細書では【0027】にも,「OMPFのE.コリにおける発現は,構造遺伝子がその自らのプ
ロモーターの制御下の中−コピー(pBR322)或いは高−コピー(pUCプラスミド)上に存在す
る場合には細菌に対して毒性を示すため,構造遺伝子は先ず誘導性プロモーターの制御下にお
かれる。」とも記載されており,本願明細書中でいう「毒性」とは,単に「大腸菌宿主細胞中
で強制的に大量に発現させると大腸菌宿主が生存できなくなる」程度の意味であると解するこ
とができる。
そして,当該「毒性」は既に引用例においても十分に認識されていたことであり,本願明細
書で用いられた特定の菌株においてはじめて見いだされた特別な性質というわけではない。
すなわち,引用例の「要約」の項(原文473頁)では,「プロテインFがポリン不全大腸
菌のバックグラウンドでは優勢な外膜蛋白として発現され,ポリンが十分なバックグラウンド
では一次元SDSポリアクリルアミドゲル上で明確に視認できた。」と記載されている。
さらに,同「考察」の項においても,「プロテインFに対する構造的遺伝子を大腸菌に導入
し,遺伝子産物の発現を調査した。大量のプロテインFが大腸菌の外膜中に発現した。クロー
ン化した蛋白の電気泳動的および免疫的特徴は,Pseudomonasaeruginosa(緑膿菌)中のプロ
テインFの場合と同一であった。これは,P.aeruginosaの遺伝子内の信号および合成,組み立
てまたは外膜への転座に関するmRNA転写物が認識され大腸菌中で機能的であったことを示唆す
る。ポリン不全突然変異大腸菌JF733(pHN4)中で,外膜中のプロテインFの量がポリンの十分
ある大腸菌HB101(pHN4)株中における場合より高かったことは興味深い。」(原文477頁
左欄31−43行)と記載されている。
そもそも各種ポリンはグラム陰性菌の外膜の内と外との環境を直接結ぶチャンネルであり,
浸透圧など菌の生存に関わる重要な調節機構を担うものであるところ,上記記載からみて,そ
のポリンの1種であるP.aeruginosa由来のOMPFが,大腸菌外膜中のポリンが大量に存在する通
常の大腸菌外膜内環境では発現量が少なく,ポリン不全大腸菌外膜内という,大腸菌由来の各
種ポリン類が極めて少ない環境では発現量が高かったのであるから,このことは,P.
aeruginosa由来のOMPFがアミノ酸一次配列の類似性はともかく,チャンネルを構成する三次元
構造的には極めて大腸菌のポリン類と類似していることを示唆するものであり,同時に,大腸
菌の外膜中では許容される全ポリン量には(外来のポリンも含めて)一定の上限値があること
も強く示唆するものである。
そうなので,反対に正常なポリン生産能を有する大腸菌宿主において,外来のポリンである
OMPFを高コピーのベクターなどを用いて半ば強制的に大量のOMPFを発現させようとすれば,今
度は大腸菌自身の生存に必要な本来の各ポリン類の発現が極度に抑制される可能性が高いこと
は充分に予測される。まさに,引用例の上記記載によれば,高コピーベクターを用いた場合に
大腸菌宿主の生存が阻害される可能性が高いことが示唆されていることに他ならない。
そして,OMPF遺伝子はP.aeruginosaの生存にとって重要な遺伝子であるといえるにもかかわ
らず,引用例には当該OMPF遺伝子がP.aeruginosaのゲノム中に1コピーしか存在しないとも記
載されている(原文476頁右欄1∼11行)のだから,当該記載に接した当業者は,OMPF遺
伝子が本来有するプロモーター自体もかなり強力なプロモーターであると想定し,クローニン
グに際しても発現産物による大腸菌宿主への「毒性」を危惧するはずである。
そのような場合のクローニング手法として,遺伝子を含むDNAをフラグメント化してサブク
ローニングすることが本件優先日前の当業者にとって常套の手段であるばかりでなく,宿主と
して引用例で用いられたようなポリン不全大腸菌を用いることもできるから,OMPF遺伝子クロ
ーニングに格別の困難性があったとする特段の事情は見いだせない。
よって,この点についての請求人の主張も採用できない。
(2)付記
なお,上記した如く,請求人自身が提出した甲3に記載されるように,引用例のPAO1株由来
のOMPF遺伝子がコードするアミノ酸配列が,本願明細書の【表1】(配列番号1)に示される
ATCC33354株由来のOMPF遺伝子がコードするアミノ酸配列と一致していることからみて,両遺
伝子の遺伝子産物が同一物質であることは請求人自身が充分に認識していたことは明らかであ
る。そして,その前提にたって,請求人は当該審判請求書においては,引用例に記載される
OMPF遺伝子をクローニングすることの困難性のみを主張していたはずである。
そうであるにもかかわらず,請求人は,当審における平成15年4月21日付の審尋(本訴
甲7の10)に対して,平成15年7月16日付回答書(本訴甲7の11)において,「・・
・引用例に記載される遺伝子産物が,本願発明に係るOMPFとは全く異なること・・・したがっ
て,無関係なタンパク質に関して一部欠損した分子量のペプチドを得たことについて文献に記
載されていたとしても,そのような事項は全く本願発明には無関係です。(同5頁)」と述べ
ており,あたかも本願発明で発現産物として取得されたOMPFが,引用例に記載されるOMPF(プ
ロテインF)とは全く別異のタンパク質であるかのような主張をし,そのことを前提とした反
論を展開している。
このような主張が,請求人本人も十分に理解しているはずの真実を無視して当審の判断をあ
えてミスリードしようとしたのであれば,当業者としてあるまじき態度であり慎むべきである。
そうでないとしても,本件出願後には引用例のproteinFと本願発明のOMPFが同一アミノ酸配列
を有する同一のタンパク質であること,すなわち両者が「無関係なタンパク質」でなかったこ
とは明らかであるから,そもそも請求人の上記主張の前提が成り立たない。
そうなので,上記回答書における主張も,添付された補正案についても検討しない。
(3)結語
以上述べたとおりであるから,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けるこ
とができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶され
るべきものである。
第3原告主張の審決取消事由の要点
審決は,以下のとおり,引用例の記載事項及び本件優先日前における技術的事項
の各認定並びに本願発明に係る進歩性の判断をそれぞれ誤ったものであるから,取
り消されるべきである。
1取消事由1(引用例の記載事項の認定の誤り)
審決は,引用例において,(シュードモナス・アエルギPseudomonasaeruginosa
ノザ(緑膿菌)。以下「」という。)の外部膜タンパク質F(以下P.aeruginosa
「OMPF」という。また,単に「OMPF」というときは,のOP.aeruginosa
MPFを指す。)が発現されたものと認定したが,以下のとおり,引用例において
発現されたタンパク質はOMPFではないから,審決の当該認定は誤りである。
(1)引用例の著者らがOMPF遺伝子であると考えて単離した遺伝子のDNA
配列に係る制限酵素認識部位と,本願発明のDNA配列に係る制限酵素認識部位と
が異なること(制限酵素地図の相違)について
ア制限酵素地図の情報は,遺伝子の構造に関し,配列情報に次いで信頼できる,
極めて信頼性の高い情報であって,モノクローナル抗体との反応性やSDSゲル電
気泳動法などについての情報よりも格段に信頼性が高く,犯罪捜査時に「指紋」の
代わりに用いられることもある(甲38(以下,書証中,書籍の抜粋(学術論文を
除く。)については,初出の場合も含め,「甲38文献」などという。))。
ところが,引用例においてOMPF遺伝子であるとして単離された遺伝子のDN
A配列に係る制限酵素認識部位(引用例の図4。制限酵素I及びIの認識部位PstXho
が存在するのに対し,制限酵素Iの認識部位が存在せず,また,制限酵素IのSalSma
認識部位が読み取り枠の外側か左端(5’末端)のぎりぎり内側に存在してい
る。)と,本願発明のDNA配列から導き出される制限酵素認識部位(配列番号1
のDNA配列によれば,制限酵素I及びIの認識部位を有しないが,制限酵素PstXho
I及びIの認識部位を有する。)とは全く異なるのであるから,このような制SalSma
限酵素地図(制限酵素認識部位)の相違は,引用例で単離された遺伝子がOMPF
遺伝子ではないことを端的に示すものである。
イまた,甲11の論文(以下,書証中,学術論文(引用例を除く。)について
は,初出の場合も含め,「甲11論文」などという。なお,乙20は,被告が追加
提出した甲11論文の抄訳文である。)は,引用例の著者の1人が引用例頒布の後
に発表した博士論文であるところ,引用例とは異なる方法でクローニングが行われ
ており,ここではOMPF遺伝子が正しくクローニングされている(甲11論文の
32頁図5に記載されたDNAの読み枠(太い線で示される)周辺の制限酵素地図
は,本願発明に係るOMPF遺伝子の制限酵素地図と同一である。)。
具体的には,
(ア)まず,コスミドベクターを用いたクローニングの段階において使用された
テトラサイクリンの濃度について,引用例においては10μg/mlであるのに対
し,甲11論文においては25μg/mlである。甲11論文の著者は,試行錯誤
を重ねてテトラサイクリン濃度の変更に至ったものと推測されるが,これにより,
OMPFの毒性を回避ないし軽減させることに成功したものと思われる(甲42論
文図9参照)。
(イ)次に,プラスミドpWW13のサブクローニングの段階において使用された大腸
菌宿主について,引用例においては大腸菌HB101が用いられているのに対し,甲1
1論文においては使用された大腸菌宿主について記載がされておらず,これについ
てもOMPFの毒性を回避ないし軽減させるために何らかの工夫がされたことをう
かがわせる。
このように,引用例と甲11論文の著者は同じであるにもかかわらず,甲11論
文においてクローニングの手法が変更されているのは,OMPFの毒性を回避する
ための工夫がされ,その結果,甲11論文においては,OMPF遺伝子が正しくク
ローニングされたと考えるのが合理的である。
ウさらに,仮に,引用例に記載されたプラスミドpWW13が,甲11論文に記載
されたプラスミドpWW13と同じものであり,制限酵素地図の作成にのみ問題があっ
たとすると,被告が引用する甲31(乙3)論文(以下「甲31論文」という。)
及び乙16論文に記載されるように,具体的に制限酵素地図のどの部分が正確であ
り,どの部分に誤りがあったかが明確にされてしかるべきである。すなわち,引用
例の著者らが自らの制限酵素地図の誤りに気付き,それを訂正しようとするならば,
「ERRATA」(正誤表)として,その誤りを訂正するか(甲43),あるいは
後の論文において誤りに言及するはずであるが,そのような手続は何ら行われてい
ない。
また,甲11論文におけるプラスミドpWW13の制限酵素地図の作成においては,
引用例において用いられた制限酵素I(記号:T)及びI(記号:X)が用いSstXho
られていない。
これらの事実も,引用例においてクローニング又はサブクローニングされた遺伝
子がOMPF遺伝子でなかったことを裏付けるものである。
エそして,上記アないしウを時系列順に整理すると,
(ア)1986年8月ころ引用例発表(OMPF遺伝子の制限酵素地図を開示
せず)
(イ)1987年6月3日本件優先日(OMPF遺伝子のDNA配列を開示)
(ウ)1988年8月甲11論文発表(OMPF遺伝子の制限酵素地図を開
示)
となるところ,この事実経過と,甲11論文において,引用例におけるのとは異な
るクローニング法が用いられた事実とを併せ考えると,引用例の著者らは,引用例
においてOMPF遺伝子のクローニングに失敗したものの,その後,再度クローニ
ングを行った結果,OMPF遺伝子のクローニングに成功し,その結果を甲11論
文に記載したものと推測するのが合理的である。
オなお,引用例においてサブクローニングされたpWW13が,甲11論文におい
てサブクローニングされたpWW13と同一のプラスミドであるとすると,以下のとお
りの矛盾が生じることになる。
(ア)引用例に記載されたpWW13は,約2.0kbのI-I断片を含む(引用SalPst
例の図4。また,引用例においては,このことが実験的に確認されているといえ
る。)にもかかわらず,甲11論文に記載されたpWW13に含まれるI-I断片は,SalPst
約1.3kbのものと約0.9kbのものである。
(イ)引用例においては,pHN4及びpWW13が約2.0kbのI断片を含むことがSma
実験的に確認されている(引用例の図4)にもかかわらず,甲11論文に記載され
たI断片は,約1.7kbのものと約4.3kbのものであり,pHN4全体に占めSma
る同断片の位置も,引用例と異なる。
(ウ)甲11論文におけるpWW13の制限酵素地図を前提にして,引用例に記載され
たpWW1の調製方法(pHN4をIで切断して自己閉環させる方法)を適用すると,OXho
MPF遺伝子を含んだ部分が切り取られてしまうことになるから,甲11論文にお
けるpWW4及びpWW5には,OMPF遺伝子が含まれないことになる。
カ被告は,「テトラサイクリン濃度の変更・・・により,OMPFの毒性を回
避ないし軽減させることに成功した」との原告の上記主張に対し,「憶測に過ぎず,
参酌に値しない」と主張する。
しかしながら,引用例の著者らに事実を確認することができず,また再試験を行
うこともできない以上,現時点において判明している当時の事実関係を斟酌して推
測を行う以外にないことは当然である。そして,重要な点は,かかる推測を行うこ
とで,
(ア)引用例においては,「OMPF遺伝子」であるとしながらもその制限酵素
地図はOMPF遺伝子のものとは大きく異なること,
(イ)甲11論文においては,引用例とは異なるクローニング法が採用されてい
ること,
(ウ)甲11論文においては,OMPF遺伝子の制限酵素地図が正しく開示され
ていること,
という原被告間で争いがなく,かつ,(ア)と(ウ)という相矛盾する事実を合理的に説
明することができることである。
よって,被告の上記主張は誤りである。
キ被告が制限酵素地図の正確性(制限酵素地図が不正確なものであること)に
ついて援用する甲31論文は,制限酵素HIを使用する際の反応液の濃度が低かBam
ったために,本来の認識部位以外を切断するというスター活性が生じた事例に関す
るものであるところ(甲40参照),引用例の投稿日である1986(昭和61)
年2月の時点では,制限酵素の適切な反応条件が既に確立されていたのであるから,
甲31論文は,制限酵素地図の正確性についての証拠として適切なものではない。
また,乙16論文については,「I部位が追加されている」との内容に照らし,Pst
従前の制限酵素地図のほうが正しかったという事例に関するものであるから(甲1
3文献及び甲41(ヌクレオチド検索結果)参照),制限酵素地図が後になって覆
ることがあり得るとの根拠となるものではない。
クさらに,乙17論文については,仮に,引用例においてサブクローニングさ
れたpWW5が,同論文の図4に示されるような欠失した構造を有するのであれば,引
用例の記載との間で,次のような矛盾が生じる。
(ア)乙17論文の記載内容からすると,引用例においてサブクローニングされ
たpWW5は,共直線性を欠くことになるところ,引用例の図4によれば,pWW5内には
共直線性がない領域が存在しないこととされている。
(イ)乙17論文の記載内容からすると,サザンハイブリダイゼーションに使用
するために,引用例においてサブクローニングされたpWW5からプローブを調製する
と,アミノ酸1∼170残基に対応するプローブ及びアミノ酸301∼326残基
に対応するプローブが生じることになるから,前者のプローブを用いてサザンハイ
ブリダイゼーションを行うとこれに対応するタンパク質断片が,後者のプローブを
用いてサザンハイブリダイゼーションを行うとこれに対応するタンパク質断片がそ
れぞれ検出されることとなるにもかかわらず(両断片はサイズを異にする。),引
用例には,pWW5から調製したプローブによってサザンハイブリダイズした場合に単
一のバンドが確認されたと記載されている。
ケなお,甲5(乙15)論文(以下「甲5論文」という。)においては,本願
発明の発明者らがクローニングしたOMPF遺伝子のクローンλF1に,引用例の著
者らのクローンであるpWW5がハイブリダイズした旨の記載があるが(乙15の抄訳
4頁「6.第160頁左欄第3段落」),当該クローンpWW5は,引用例の発表後に正
しくクローニングされたもの(すなわち甲11論文に係るクローンpWW5)である。
甲5論文が引用例を引用しているのは,甲11論文が発表されていなかったため,
便宜的に,引用例を引用したにすぎない。このようなことは,本件優先日前におい
ても日常的に行われていたことであり,甲5論文の中でpWW5につき引用例が引用さ
れていることは,これが引用例に係るpWW5であることを必ずしも意味しないもので
ある。
(2)NationalCenterforBiotechnologyInformation(以下「NCBI」とい
う。)に登録されたOMPFのアミノ酸配列(甲3(NCBIのタンパク質検索結
果。以下,書証中,NCBIの検索結果については,初出の場合も含め,「甲3検
索結果」などという。)。1999年8月19日登録)及びOMPF遺伝子のDN
A配列(甲22検索結果。同日登録)について
ア甲22検索結果によれば,引用例の著者らが1999年8月19日にNCB
I(データバンク)に登録したOMPF遺伝子のDNA配列から導き出される制限
酵素部位は,引用例(図4)に示された制限酵素部位と矛盾している。
イ被告は,「引用例の著者らは,PAO1株(セロタイプ5)のOMPF遺伝子の
DNA配列を,1992年5月19日にNCBIに登録し(甲18検索結果),そ
の後,一貫して,PAO1株のOMPF遺伝子について,同じDNA配列を提出してい
た」と主張する。
しかしながら,引用例の著者らがOMPFのアミノ酸配列及びOMPF遺伝子の
DNA配列(以下,OMPFのアミノ酸配列とOMPF遺伝子のDNA配列を併せ
て「OMPFのアミノ酸配列等」という。)をNCBIに登録した経緯に加え,甲
18検索結果に供給源としてのプラスミドの記載がないこと,甲18検索結果及び
甲19検索結果には,OMPFのアミノ酸配列等の各全長が記載されているのに対
し,甲20検索結果及び甲21検索結果には,アミノ酸4残基及びこれに対応する
DNA配列のみが記載されていることから,引用例の著者らは,後者に係る登録に
よって,前者に係る配列情報をいったん削除したものといえること,甲19検索結
果には,「この記録は中断された。」との記載があることにかんがみれば,引用例
の著者らは,甲18検索結果(1992年5月19日登録。DNA配列)及び甲1
9検索結果(同日登録。アミノ酸配列)に記載された配列とは別個独立の情報とし
て,甲20検索結果(1998年11月20日登録。DNA配列)及び甲21検索
結果(同日(同検索結果に「1997」とあるのは,「1998」の誤記であると
考えられる。)登録。アミノ酸配列)に記載された配列を提出したものと考えるの
が合理的である。
仮に,引用例の著者らが,PAO1株のOMPF遺伝子のDNA配列を1992年5
月19日にNCBIに登録し,その後は一貫してPAO1株のOMPF遺伝子について
同じDNA配列を提出していたとしても,引用例の著者らが,同日以降,引用例と
は無関係に,OMPFのアミノ酸配列等を決定したことに変わりはなく,引用例に
おいて単離されたタンパク質がOMPFではなかったとの結論にも変わりはない。
ウまた,甲18検索結果ないし甲22検索結果のいずれにおいても,本願発明
の発明者らによる甲5論文が引用されているにもかかわらず,引用例は全く引用さ
れていない。仮に,引用例の著者らが,引用例において単離したプラスミドにOM
PF遺伝子が含まれていると考えていたならば,これらの検索結果に係る登録にお
いても,引用例を引用したはずである。
エさらに,引用例の発表後,OMPF遺伝子のDNA配列あるいはOMPFの
アミノ酸配列が明らかになるまで長期間(甲3検索結果及び甲22検索結果に係る
登録まで10年以上,甲18検索結果及び甲19検索結果に係る登録まででも,約
6年)が経過している。このことも,引用例の著者らが単離したタンパク質がOM
PFではなかったことを裏付けるものである。
オ①引用例の著者の1人が,引用例の発表後に再度クローニングを行い,その
結果を甲11論文において発表したこと,②引用例の実験の後にその著者らがNC
BIに登録したDNA配列から導き出される制限酵素地図が,引用例においてクロ
ーニングされた遺伝子の制限酵素地図とは大きく異なる一方で,甲11論文におい
てクローニングされた遺伝子の制限酵素地図とは一致すること,の2点を合理的に
説明するためには,引用例の著者らは,引用例においてクローニングされた遺伝子
ではなく,その後,クローニングし,甲11論文に記載した遺伝子について配列決
定を行い,NCBIに登録したと考えるほかない。
(3)引用例において用いられたOMPFの発現を確認する方法について
原告は,引用例において採用されたモノクローナル抗体を用いたスクリーニング
及びSDSゲル電気泳動法の存在意義を否定するものではないが,これらの方法に
よる遺伝子やタンパク質の同定は,以下のとおり,制限酵素地図の作成や配列決定
による方法に比べて格段に精度の劣る手法である。よって,これらの手法のみによ
った場合には,遺伝子やタンパク質の同定につき誤った結果を導くおそれがある。
なお,本願発明においては,タンパク質の同定法として最も正確な方法であるア
ミノ酸配列(ペプチド配列)を決定することによってOMPFを正確に同定してい
る。
ア(ア)モノクローナル抗体を用いたスクリーニングとは,タンパク質中に存在
する抗原決定基(エピトープ)とモノクローナル抗体との特異的な抗原抗体反応を
利用した方法であるところ,別個のタンパク質であっても,同一又は類似のエピト
ープが存在する場合には,目的のタンパク質以外のタンパク質とも反応してしまう
ものであるという原理上の問題点(いわゆる「抗原・抗体の交差反応」。以下,単
に「交差反応」という。)を有する。
すなわち,OMPF特異的モノクローナル抗体と反応したということは,目的の
タンパク質が当該モノクローナル抗体に特異的なエピトープを有することを意味す
るにすぎず,当該タンパク質がOMPFであるとは限らない。
P.(イ)実際,引用例において用いられているモノクローナル抗体(MA4-4)は,
aeruginosaPseudomonasputidaP.に由来する外膜タンパク質のみならず,(以下「
」という。)に由来する外膜タンパク質とも反応している(甲15(乙1putida
0)論文(以下「甲15論文」という。))。
(ウ)また,モノクローナル抗体の交差反応の例としては,甲15論文のほか,
甲34論文及び甲35論文にも言及がある。
(エ)さらに,引用例の図3をみても,①「F」で示される位置より上に出現す
るバンド(パネルA及びBの各レーン5。以下「①のバンド」という。)と,②
「F」と「T」の間の位置に出現するバンド(パネルBのレーン5。以下「②のバ
ンド」という。)が検出されているところ,天然ののPAO1株に由来P.aeruginosa
するOMPF(パネルA及びBの各レーン1)については,これらのバンドが検出
されていない。これは,のPAO1株に由来するOMPF(各レーンP.aeruginosa
1)と大腸菌HB101(pHN4)の発現タンパク質(各レーン5)が異なること又は使
用したモノクローナル抗体の交差反応によるものであるが,引用例においては,モ
ノクローナル抗体の交差反応についての言及が全くないから,引用例の著者らは,
モノクローナル抗体の交差反応の可能性を看過して実験を行っていたものと考えら
れ,この点でも,引用例において用いられたモノクローナル抗体によるスクリーニ
ングの正確性に疑義があるといえる。
イ(ア)SDSゲル電気泳動法とは,タンパク質の分子量に基づく挙動の相違を
目視により比較する方法であるところ,同程度の分子量を有する異なるタンパク質
は数多く存在するのであるし,目視による比較という点においても,タンパク質
(特に膜タンパク質)の同一性の確認方法としては,不十分なものである(甲16
論文,甲36文献)。
P.(イ)また,SDSゲル電気泳動法は,生体膜タンパク質(甲29文献)や
のOMPF(甲37論文)の分子量を正確に測定することができないもaeruginosa
のである。実際,引用例においては,SDSゲル電気泳動法のデータから,OMP
Fを構成するアミノ酸を約410個(正確には350個)としている。
ウ本件優先日前に一般的に行われていたクローニング法は,目的タンパク質を
精製し,その部分配列を決定し,その部分配列に基づいてクローニングをする方法,
すなわち,本願明細書に記載される方法であった。この一般的なクローニング法は,
困難な方法ではあったが,その正確性のために,一般に用いられていた。
これに対し,引用例において用いられたクローニング法は,本願発明に係る上記
クローニング法と比較して,発現したタンパク質と抗体との反応及びタンパク質の
分子量による推定に依存する点において,得られたデータに誤りが生じる可能性が
より高い方法であり,引用例におけるクローニング法の選択は,不適切であったと
いえる。
(4)OMPFを構成するアミノ酸の個数に関する引用例の著者らの認識につい

OMPFは350個のアミノ酸から構成されるタンパク質であるのに対し(甲3
検索結果),引用例(原文477頁右欄8∼9行)には「天然のタンパク質F(O
MPF)における約410アミノ酸」と記載されている。よって,OMPFを構成
するアミノ酸につき,引用例の著者らが認識していた個数は正確性を欠くものであ
る。引用例の著者らが認識していた個数と実際の個数が異なることは,引用例の著
者らが単離したタンパク質がOMPFではなかったことを裏付けるものである。
(5)引用例において単離されたDNAによってコードされるタンパク質と,そ
の後に引用例の著者の1人が単離したDNAによってコードされるタンパク質の機
能(チャネル伝導度)について
アタンパク質の機能,すなわちチャネル伝導度について,引用例には,約65
%が4nSよりも大きな単一チャネルを形成していることが記載されているのに対
し,甲11論文においては,その大多数が0.6nS未満であったことが記載され
ている。また,甲24論文においては,OMPFのチャネル伝導度が0.93∼1
nSであると報告されている。
イまた,引用例においては,クローニングされた遺伝子がコードするタンパク
質は,「のタンパク質Fについて以前に報告された(3)のものと同じP.aeruginosa
大きさ」のチャネル伝導度を有することが明記されているのに対し(原文477頁
左欄13∼15行。なお,ここでいう「(3)」とは,引用例が引用する文献3
(Benz&Hancock,1981)である。),甲11論文においては,「これらの観察は,
精製されたタンパク質Fの平均チャネル伝導度が5nSだと報告されていた従来公
開された観察(Benz&Hancock,1981)に反している」(原文63頁下から3行∼
末行)と明記されている。
ウ以上からすると,引用例において単離された遺伝子によってコードされるタ
ンパク質と,甲11論文及び甲24論文において単離された遺伝子によってコード
されるタンパク質(すなわちOMPF)とは異なる機能を有するため,両者は異な
るタンパク質であるというべきである。
(6)引用例の発表後の著者らの態度について
ア引用例の著者らにとって,引用例は自ら著した論文なのであり,そこには,
著者らの述べるところの「OMPF」を発現させ,また「OMPF遺伝子」の制限
酵素地図を作成したとしているのであるから,後の論文における著者らの態度とし
ては,OMPFのアミノ酸配列等が問題になった場合,引用例を引用するのが自然
である。
しかしながら,引用例の著者らが後に発表したOMPFに関する論文(甲2(乙
19)論文(以下「甲2論文」という。),甲17論文)においては,OMPFの
アミノ酸配列等に関する箇所に,引用例が一切引用されておらず,かえって,本願
発明の発明者らによる甲5論文が引用されている。
イまた,仮に,引用例の著者らが,自らもOMPF遺伝子の配列決定を行った
のであれば,甲5論文の存在にかかわらず,自らの実験についても言及するはずで
あるし,さらに,甲18検索結果に記載されたDNA配列と本願発明に係るDNA
配列とは異なるのであるから,その差異についての考察がされるはずである。
ウ以上からすると,引用例の著者らは,引用例において発現されたタンパク質
がOMPFでなかったことを認めているといえる。
(7)OMPFの大腸菌に対する毒性について
ア引用例においては,OMPFのサブクローニングの段階で高コピー数のベク
ター(pUC8及びpUC9)が用いられているところ,高コピーベクターを用いてOMP
F遺伝子を大腸菌等の宿主細胞に導入した場合,それらの遺伝子生成物(OMP
F)により宿主細胞を死滅させるという毒性が存在するため,仮に,引用例におい
て,実際にOMPFのサブクローニングに成功し,OMPFが発現されたとすると,
少なくともサブクローニングの段階で,宿主細胞はOMPFの毒性ゆえに死滅して
いたはずである。
なお,引用例においては,OMPF遺伝子の断片のサブクローニングがされてい
るが,たとえOMPFの断片であっても大腸菌に対して毒性を有するものと推測さ
れる(乙2論文)。
また,審決は,OMPFがグラム陰性菌の外膜の内と外との環境を直接結ぶチャ
ネル,すなわちポリンとして機能し,浸透圧など菌の生存に関わる重要な調節機能
を担うものであるところ,大腸菌の外膜中では許容される全ポリン量には一定の上
限値があり,そのため,半ば強制的に大量のOMPFを発現させようとすれば,大
腸菌自身の生存に必要な本来の各ポリン類の発現が極度に抑制される可能性が高い
などと説示し,OMPFの過剰発現が大腸菌宿主に対し毒性を有するとしていると
ころ,甲44論文によれば,OMPFは,N末端1−162のみでポリンとして機
能するのであるから,OMPF断片であっても,N末端1−162が含まれていれ
ば,大腸菌に対して毒性を有するものである。
イなお,乙5(甲58)論文(以下「乙5論文」という。)によれば,大腸菌
のOmpAの場合には,たとえ短縮型であっても,毒性を有するとされている。
ウ以上からすると,OMPFは,たとえ断片であっても,大腸菌に対して毒性
を有するため,OMPF遺伝子の断片がサブクローニングされていても,宿主細胞
が死滅することには相違ないといえるから,引用例に記載された実験方法によれば,
OMPFを発現させることはできない。したがって,引用例において発現されたタ
ンパク質は,OMPFではない。
エこれに対し,被告は,原告の上記主張によれば,本願発明を実施することも
できないなどと主張する。
しかしながら,本願発明におけるクローニング法は,タンパク質の発現を必要と
しない方法であり,しかも,宿主大腸菌を死滅させる方法であるため,クローニン
グされた遺伝子の毒性は問題とならず,また,サブクローニングにおいても,タン
パク質の発現を必要としないため,当該毒性が問題とならないものであるのに対し,
引用例に記載されたクローニング法及びサブクローニング法は,遺伝子によってコ
ードされるタンパク質を発現し,そのタンパク質と抗体との反応性を指標としてい
るために,目的遺伝子が毒性を有するタンパク質をコードする場合には,その影響
が生じることになるものであるから,被告の主張は,両者のクローニング法の根本
的な差異を看過するものであり,失当である。
(8)私的鑑定意見等について
ア京都大学大学院医学研究科教授長田重一作成の「鑑定意見書」と題する書面
(甲55。以下「長田意見書」という。)には,の生体内に実在し,P.aeruginosa
OMPFと同様にポリン活性を有すると推定され,モノクローナル抗体MA4-4及び
MA5-8と結合すると推定されるタンパク質(“hypotheticalprotein”)が,SD
Sゲル電気泳動法における挙動及び熱変更性タンパク質としての挙動において,O
MPFと同様であると推定されることから,引用例においては,OMPF遺伝子と
は異なる遺伝子をクローニングした可能性があると記載されている。
そして,長田意見書の上記記載は,コンフォメーショナルエピトープに結合する
モノクローナル抗体について述べる甲56論文や,MA4-4の反応の非厳密性につい
て述べる甲11論文,さらには,帝京大学薬学部長・東京大学名誉教授井上圭三作
成の「鑑定書」と題する書面(甲53)からも裏付けられるものである。
イまた,甲11論文の著者は,引用例においてOMPFとは異なるタンパク質
が混入したことを認めている。
ウ引用例は,複数のモノクローナル抗体との反応,SDSゲル電気泳動におけ
る挙動,熱変更性タンパク質としての挙動及びポリンとしての特性という4つの基
準において,発現させたタンパク質をOMPFと同定しているところ,これは,単
一のタンパク質が当該4つの基準を満たしたことを何ら意味するものではない。そ
して,複数のタンパク質が存在すれば,それだけ,上記4つの基準を満たす確率が
高くなる。
エなお,本件優先日前の当業者は,引用例におけるのと同様のクローニング法
を用いた場合には,目的の遺伝子とは異なる遺伝子をクローニングする可能性があ
ることを認識しており,甲31論文,乙2論文,乙4(甲57)論文(以下「乙4
論文」という。)及び乙5論文に記載されるように,クローニングした遺伝子が目
的のタンパク質をコードするものであるか否かを確認するため,目的のタンパク質
の部分アミノ酸配列と,クローニングした遺伝子がコードするアミノ酸配列とを比
較していたものである。
2取消事由2(本件優先日前における技術的事項の認定の誤り)
審決は,「引用例のP.aeruginosaに属するPAO1株以外の菌株,例えば本願明細
書中のATCC33354株も,・・・そのDNA配列はPAO1株由来OMPF遺伝子と極め
て相同性の高いものであると予測できる」と認定したが(以下,審決の上記認定に
係る技術的知見を「本件知見」という。),以下のとおり,本件知見は,技術的に
誤っているから,審決の上記認定も誤りである。
(1)ア本件優先日前において,には,少なくとも3000種類以P.aeruginosa
上の株が存在し,株間で,病原性,薬剤抵抗等の性質が異なることが常識であり
(甲9論文),緑膿菌が染色体の再構成すらも行うことが知られており(甲10論
文),細菌がポリンの変化を誘導することにより薬剤耐性を獲得することも周知の
事項であり(甲27論文),また,引用例の著者の1人であるHancockは,自己が
作成したモノクローナル抗体が種々のタンパク質Fと異なる反応性を有することの
原因がアミノ酸配列の変化である可能性を認め(甲15論文),その後,変異実験
によってのポリンの構造が変化することも既に確認されていた(甲P.aeruginosa
28論文)。現に,引用例の著者の1人も,甲11論文において,タンパク質Fに
多様性があると考え,OMPFの構造解析を目的の1つとして,遺伝子変異(易変
異性)を含む薬剤耐性のメカニズムを解析しようとしていた。
イそして,当業者は,本件優先日前において,のOMPFは変P.aeruginosa
異を起こしやすいものと認識していた。
ウそうすると,本件優先日前の当業者は,の異なる株においてP.aeruginosa
はポリン構造が異なると予測していたものと考えられる。
(2)大腸菌OmpAタンパク質と他のグラム陰性菌の熱変更性タンパク質との
比較をテーマとする甲45論文(1980年8月発行)には,OmpAや熱変更性
タンパク質についての議論のみならず,グラム陰性菌の外膜タンパク質全般にわた
る記載があり,その「考察」欄には,「ポリンタンパク質は,同種内においても,
また,異なる属または種の間においても,相同性をほとんど示さない。」との記載
がある(なお,OMPFは,ポリンタンパク質の一種である。)。
(3)審決は,OMPFが微生物の生存にとって重要なタンパク質P.aeruginosa
であると説示するが,以下の理由により,OMPFは,の生存にとP.aeruginosa
って不可欠なタンパク質ではない。
ア菌株によっては,ポリンチャネルが複数個存在するものもある(甲23論文
参照)。
イ大腸菌については,ポリン不全株(JF733)が生存している。
ウについても,タンパク質Fを欠失する株(H283)が存在するP.aeruginosa
(甲15論文参照)。
(4)被告は,甲15論文を援用して,モノクローナル抗体に対する反応性を理
由に,のセロタイプ間における外部膜タンパク質の保存性が高い旨P.aeruginosa
の主張をするが,モノクローナル抗体に反応することは,単に,同一又は類似のエ
ピトープが存在することを示すにすぎないから,被告の上記主張は,菌株が異なる
のOMPF遺伝子のDNA配列における保存性を根拠付けるものでP.aeruginosa
はない。
(5)以上からすると,本件優先日前において,当業者は,ポリンタンパク質の
一種であるOMPFの保存性が極めて低いものと認識していたものであるから,本
件知見は,技術的な誤りを含んでいるというべきである。
3取消事由3(進歩性についての判断の誤り・その1)
審決は,引用例において単離されたコスミドクローン(pHN4)にOMPF遺伝子
が含まれていたことを前提に,「P.aeruginosaに属する微生物のOMPF遺伝子
を取得し,そのDNA配列を決定することは,本件優先日前の当業者であれば引用
例の記載に基づいて容易になし得ることであり,そのDNA配列が『配列番号1』
であったことをもって格別の効果とすることはできない。したがって,本願発明は,
引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができるもので
ある。」と判断したが,以下のとおり,この判断は誤りである。
(1)取消事由1の(7)のとおり,本件優先日前においては,OMPF遺伝子の大
腸菌宿主に対する毒性は認識されておらず,仮に,引用例において単離されたコス
ミドクローン(pHN4)にOMPF遺伝子が含まれていたとしても,OMPF遺伝子
の大腸菌宿主細胞に対する毒性ゆえに,本件優先日前の当業者にとって,引用例に
記載された方法でOMPF遺伝子をクローニングし,そのDNA配列を決定するこ
とは容易でなかったものである。
(2)また,以下の各点からも,本件優先日前の当業者にとって,引用例に記載
された方法でOMPF遺伝子をクローニングし,そのDNA配列を決定することは
容易でなかったといえる。
ア本件優先日前においては,DNAの配列決定が行われなくても,遺伝子をク
ローニングすれば,一流の科学雑誌に掲載され,学位論文として認められる程度の
価値があった。かかる事実は,本件優先日前の技術水準では,遺伝子をクローニン
グしてそのDNA配列を決定することが困難であったことを示すものである。
イ引用例の著者らは,本件優先日の2年後である1989(平成元)年6月に
発表した甲2論文において,OMPF遺伝子のDNA配列につき,自ら決定した配
列ではなく,本願発明の発明者らによる甲5論文に記載された配列を引用している。
このことは,引用例の著者らでさえも,引用例の記載に基づいてOMPF遺伝子の
DNA配列を決定することが困難であったことを示すものである。
(3)本願発明は,引用例に記載された方法ではなく,OMPFの部分配列を決
定し,ハイブリダイゼーションプローブを調製してファージベクターを用いる方法
を採用し,プロモーターを工夫するなどして,クローニング,配列決定等における
困難性を克服したものであり,この点において,本願発明には進歩性が認められる
べきである。
(4)また,OMPF遺伝子のDNA配列を正確に決定することは,ワクチンの
生産にとって重要であるから,本願発明において同DNA配列が正確に決定された
こと自体が,顕著な作用効果であるというべきである。
(5)なお,引用例において実際にクローニング及びサブクローニングがされた
遺伝子は,読み取り枠中央のシステイン残基を含む部分を欠失し,そのために,ポ
リン活性を有さない短縮型タンパク質をコードする「変異体」遺伝子であり,その
ような「変異体」遺伝子であれば,たとえタンパク質が発現したとしても宿主細胞
に対して毒性を示さないということが十分考えられるから,引用例において,毒性
の問題が解決された上で,OMPF遺伝子がクローニングされたということはでき
ない。
4取消事由4(進歩性についての判断の誤り・その2)
審決は,「引用例に接した本件優先日前の当業者にとっては,公知微生物である
P.aeruginosaに属するPAO1株ゲノムから,確実にOMPF遺伝子の全長を含むD
NAが11kbのEcoRIフラグメントとしてクローニングされている上に,OMP
F遺伝子の1部配列を確実に含むフラグメントも各種得られている以上,既にOM
PF遺伝子自体がクローニングされているに等しいといえ,その塩基配列及び推定
アミノ酸配列を知りたければ,必要に応じてこれらのフラグメントから適宜ルーチ
ン的作業で機械的に読み取ればよいことであると理解するはずである。」と判断し
たが,以下のとおり,この判断は誤りである。
(1)仮に,引用例において単離された遺伝子がOMPF遺伝子であったとして
も,本件優先日前の技術水準では,これを含むフラグメントのみからOMPF遺伝
子のDNA配列を読み取ることは困難であったため,引用例の記載に基づいてOM
PF遺伝子の配列を決定することは,本件優先日前の当業者にとって容易でなかっ
たものである。
すなわち,本件優先日前の技術水準では,OMPF遺伝子の全長を発現した場合
の毒性が認識されていなかった以上,OMPF遺伝子そのもの,または大腸菌宿主
に対して毒性を有するフラグメントをタンパク質として発現させて調製するために
用いる発現ベクターを調製することは不可能であったから,OMPF遺伝子そのも
のがクローニングされた状態及びその機能について確認することは不可能であった
といわざるを得ず,クローニングされたものが目的のタンパク質であることを知る
ことはできなかった。
(2)また,引用例に記載された制限酵素地図と甲11論文に記載された制限酵
素地図とが異なることから,引用例に接した当業者は,たとえOMPF遺伝子を含
むコスミドクローンを得たとしても,そこにはOMPF遺伝子は含まれないものと
ミスリードされてしまい,そのコスミドクローン全長のDNA配列を決定すること
が必要と考えるところ,本件優先日前において,遺伝子をサブクローニングする技
術自体は確立していたものの,コスミドクローンの場合には,その全長が非常に長
かったため,DNA配列の決定は困難であったものである。
同様に,引用例においては,単離されたタンパク質の全長の推定アミノ酸長が誤
って410アミノ酸とされており,これによれば,対応する遺伝子の全長は123
0塩基長と計算されるから,引用例の記載に基づいてタンパク質又は遺伝子を得た
当業者は,OMPF又はOMPF遺伝子が得られなかったとミスリードされてしま
う。
(3)さらに,引用例の著者らが,引用例に基づいて速やかにOMPF遺伝子の
DNA配列を決定し,これをいち早く論文発表することができなかった(引用例の
発表からOMPF遺伝子のDNA配列の決定まで,13年(甲18検索結果に係る
DNA配列の決定までであっても6年)もの長期間を要した)という事実も,OM
PF遺伝子を含むコスミドクローンが得られた場合にはOMPF遺伝子のDNA配
列を決定することが容易であったとの被告の主張が誤りであることを強く裏付ける
ものである。
(4)加えて,本件優先日当時,DNA配列を正確に決定するだけで,博士号を
授与されることが多かったことも,本件優先日当時の技術水準では,DNA配列を
決定することが非常に困難であったことを裏付けるものである。
(5)なお,審決は,上記のとおり,引用例において「確実にOMPF遺伝子の
全長を含むDNAが11kbのEcoRIフラグメントとしてクローニングされてい
る」と認定するが,これは,制限酵素による認識・切断の正確性を前提とするもの
であって,引用例における制限酵素地図が正確なものではないとの被告の主張と矛
盾するものである。
(6)以上のとおり,仮に引用例において単離されたのがOMPF遺伝子であっ
たとしても,これを含むフラグメントから,OMPF遺伝子のDNA配列を決定す
ることは困難であったのであるから,審決の上記判断は誤りである
第4被告の反論の要点
1取消事由1(引用例の記載事項の認定の誤り)に対し
以下のとおり,原告の主張はいずれも失当であり,引用例においては,OMPF
が発現され,クローニングされたといえるから,審決の認定に誤りはない。
(1)引用例の著者らがOMPF遺伝子であると考えて単離した遺伝子のDNA
配列に係る制限酵素認識部位と,本願発明のDNA配列に係る制限酵素認識部位と
が異なること(制限酵素地図の相違)について
ア(ア)制限酵素地図は,クローニングによって得られた目的DNA断片の配列
のおおよその構造を知るために作成し,目的DNA断片が種々の制限酵素によって
どの部位で切断されるかを示す地図であり,その作成は,種々の制限酵素で目的D
NA断片を切断した後,ゲル電気泳動による移動度から推測される切断断片の長さ
に基づいて,当該切断断片が,目的DNA断片のどの部分に相当するかを推測する
ものである(甲12文献参照)から,作成された制限酵素地図は,推定されたおお
よそのものであり,その作成の際に,サブクローニングするDNAの一部が脱落す
るなどの可能性も否定できず,後になって,正確なDNA配列が決定されれば,そ
の推測が覆ることも十分にあり得ることである(このようなことは,甲31論文や
乙16論文においても生じた事態であり,推測が覆る要因は,様々である。)。
なお,甲38文献に記載された「制限酵素断片長多型」(RFLP)の検出は,
その存在を証明しようとする遺伝子について,制限酵素認識部位の存在(又は不存
在)があらかじめ分かっていることを前提とする技術であり,当該遺伝子のDNA
配列が正確に決定されていることを前提としているのに対し,引用例の制限酵素地
図は,遺伝子のDNA配列を決定する前段階において,当該遺伝子のおおよその構
造を決めたものであるから,制限酵素認識部位が存在するかどうかの信頼性は,甲
38文献に記載された技術と比べて低いものであることは当然である。したがって,
甲38文献を援用して,制限酵素地図の信頼性が格段に高い旨をいう原告の主張は,
失当である。
(イ)引用例のpWW13の制限酵素地図は,後に,引用例の著者らにより,訂正され
ている(甲11論文)。また,引用例の著者らは,後に,pWW5について構造解析を
行っているところ(乙17論文),乙17論文には,pWW5が,のOP.aeruginosa
prF(OMPF)のアミノ酸171∼300の中間領域が欠失したものをコード
することが示されており,このことからすると,原告が主張する,本願発明の「配
列番号1」に制限酵素I及びIの認識部位が存在せず,他方,制限酵素I及PstXhoSal
びIの認識部位が存在するということに対して,合理的な説明が可能である。Sma
イ原告は,引用例の著者の1人が,後に発表した甲11論文において,OMP
Fの毒性を回避するための工夫がされた結果,初めて正しくOMPF遺伝子をクロ
ーニングした旨主張する。
しかしながら,原告の上記主張は,甲11論文の図2∼4に示される実験結果が,
引用例の図1∼3に示されるものと全く同じであることを見過ごしたものであり,
失当である。
また,甲11論文の著者が「テトラサイクリン濃度の変更・・・により,OMP
Fの毒性を回避ないし軽減させることに成功した」との原告の主張は,憶測にすぎ
ず,参酌に値しない。
さらに,甲11論文に大腸菌宿主についての記載がないからといって,原告の主
張のように「OMPFの毒性を回避ないし軽減させるために何らかの工夫がされ
た」とみるべき根拠はない。
ウ(ア)原告は,「引用例の著者らが自らの制限酵素地図の誤りに気付き,それ
を訂正しようとするならば,『ERRATA』(正誤表)として,その誤りを訂正
するか,あるいは後の論文において誤りに言及するはずである」と主張するが,研
究者一人一人の思惑,行動等については,知る由もないのであるから,仮に,引用
例の著者らが原告が主張する誤りに気付いたとしても,原告が主張するような行動
をとるとは限らず,したがって,原告の上記主張は,憶測にすぎないというべきで
ある。
(イ)原告は,甲11論文におけるpWW13の制限酵素地図の作成においては,引用
例において用いられた制限酵素I(記号:T)及びI(記号:X)が用いられSstXho
ていないと主張するが,引用例における制限酵素地図は,pWW5の約2.0kbの
I-I断片がそのまま含まれているという誤った仮定に基づいて作成されたもSalPst
のであり,後日,正しいものに訂正されたのであるから,引用例における制限酵素
地図に原告が主張するような記載の誤りがあったとしても,そのことをもって,引
用例において発現されたタンパク質がOMPFではなかったということはできない。
エ原告は,引用例においてサブクローニングされたpWW13が,甲11論文にお
いてサブクローニングされたpWW13と同一のプラスミドであるとすると,以下のと
おりの矛盾が生じることになると主張するが,いずれも理由がない。
(ア)原告は,引用例に記載されたpWW13は,約2.0kbのI-I断片を含SalPst
む(引用例においては,このことが実験的に確認されているといえる。)にもかか
わらず,甲11論文に記載されたpWW13に含まれるI-I断片は,約1.3kbSalPst
のものと約0.9kbのものであると主張するが,引用例には,pWW13が約2.0
kbのI-I断片を含むことが「実験的に確認された」とは記載されていない。SalPst
(イ)原告は,引用例においては,pHN4及びpWW13が約2.0kbのI断片を含Sma
むことが実験的に確認されているにもかかわらず,甲11論文に記載されたI断Sma
片は,約1.7kbのものと約4.3kbのものであり,pHN4全体に占める同断片
の位置も,引用例と異なると主張するが,上記(ア)と同様,引用例において,pHN4
及びpWW13が約2.0kbのI断片を含むことが「実験的に確認されている」とSma
はいえない。
(ウ)原告は,甲11論文におけるpWW13の制限酵素地図を前提にして,引用例に
記載されたpWW1の調製方法を適用すると,OMPF遺伝子を含んだ部分が切り取ら
れてしまうことになるから,甲11論文におけるpWW4及びpWW5には,OMPF遺伝
子が含まれないことになると主張するが,その根拠は不明であるといわざるを得な
い。
オ原告は,仮に,引用例においてサブクローニングされたpWW5が,乙17論文
の図4に示されるような欠失した構造を有するならば,以下のとおりの矛盾が生じ
ることになると主張するが,いずれも理由がない。
(ア)原告は,乙17論文の記載内容からすると,引用例においてサブクローニ
ングされたpWW5は,共直線性を欠くことになるところ,引用例の図4によれば,
pWW5内には共直線性がない領域が存在しないこととされていると主張するが,pWW5
の正確なDNA配列は,乙17論文において初めて明らかにされたものであり,
pWW5のDNA配列の情報が不明な状況下で推測された引用例の制限酵素地図に誤り
があったとしても,そのことをもって,引用例において発現されたタンパク質がO
MPFでなかったということはできない。
(イ)原告は,乙17論文の記載内容からすると,サザンハイブリダイゼーショ
ンに使用するため,引用例においてサブクローニングされたpWW5からプローブを調
製すると,アミノ酸1∼170残基に対応するプローブ及びアミノ酸301∼32
6残基に対応するプローブが生じることになり,これらを用いてサザンハイブリダ
イゼーションを行うと,前者に対応するタンパク質断片及び後者に対応するタンパ
ク質断片がそれぞれ検出されることとなるにもかかわらず,引用例には,pWW5から
調製したプローブによってサザンハイブリダイズした場合に単一のバンドが確認さ
れたと記載されていると主張する。
しかしながら,原告が主張する両断片の長さには,6倍以上の差があり,アミノ
酸1∼170残基に対応する断片のみがプローブによって検出されたものである。
カなお,甲5論文によれば,pWW5は,実際に本願発明のOMPF遺伝子と強く
ハイブリタイズすることができるものであるから,引用例の制限酵素地図に誤りが
あったとしても,そのことにより,引用例において,OMPFが得られなかったと
いうことにはならない。
(2)NCBIに登録されたOMPFのアミノ酸配列等(甲3検索結果及び甲2
2検索結果)について
ア上記(1)において主張したところに照らせば,甲22検索結果に記載(登
録)されたOMPF遺伝子のDNA配列から導き出される制限酵素部位が,引用例
に示された制限酵素部位と矛盾しているからといって,引用例の著者らが,引用例
においてクローニングされた遺伝子とは無関係にOMPFのアミノ酸配列等を決定
したことを裏付けるものではない。
イ(ア)甲18検索結果ないし甲22検索結果によれば,引用例の著者らは,
PAO1株(セロタイプ5)のOMPF遺伝子のDNA配列を,1992年5月19日
にNCBIに登録し(甲18検索結果),その後,一貫して,PAO1株のOMPF遺
伝子について,同じDNA配列を提出していたことが分かる。したがって,遅くと
も同日時点においては,OMPF遺伝子のDNA配列が明らかになっていたといえ
る。
(イ)これに対し,原告は,引用例の著者らがOMPFのアミノ酸配列等をNC
BIに登録した経緯,甲18検索結果に供給源としてのプラスミドの記載がないこ
と,引用例の著者らは,甲20検索結果及び甲21検索結果に係る登録によって,
甲18検索結果及び甲19検索結果に係る配列情報をいったん削除したものといえ
ること,甲19検索結果に「この記録は中断された。」との記載があることにかん
がみれば,引用例の著者らは,甲18検索結果及び甲19検索結果に記載された配
列とは別個独立の情報として,甲20検索結果及び甲21検索結果に記載された配
列を提出したものと考えるのが合理的であると主張する。
しかしながら,甲18検索結果に係るDNA配列は,甲20検索結果に係るDN
A配列によって差し換えられ,さらに,甲22検索結果によって再度差し換えられ
たものであり,また,甲18検索結果のコメント欄並びに甲20検索結果及び甲2
2検索結果の各供給源欄には,いずれも,のPAO1株からのものであP.aeruginosa
ることが記載され,しかも,甲20検索結果及び甲22検索結果に記載されている
プラスミドのうち,pWW1901及びpWW2300は,引用例において用いられたpWW13から
派生するものである。さらに,甲18検索結果に記載されたDNA配列と別紙配列
表記載のDNA配列とを比べると,ほぼ一致するものであり,甲18検索結果に記
載されたDNA配列には,OMPF遺伝子の全長が含まれているといえる。加えて,
甲18検索結果,甲20検索結果及び甲22検索結果に記載されたDNA配列を対
比すると,甲22検索結果に記載されたDNA配列は,甲18検索結果に記載され
たDNA配列(OMPF遺伝子の全長を含むもの)及び甲20検索結果に記載され
たDNA配列(甲18検索結果に記載されたDNA配列の5’末端の一部を含む同
末端上流域のDNA配列)を組み合わせたものである。
そうすると,原告の上記主張は,理由がない。
ウまた,上記イからすると,「引用例の発表後,OMPF遺伝子のDNA配列
あるいはOMPFのアミノ酸配列が明らかになるまでに長期間が経過している」と
の原告の主張に理由がないことは,明らかである。
エ原告は,甲18検索結果ないし甲22検索結果のいずれにおいても,本願発
明の発明者らによる甲5論文が引用されているにもかかわらず,引用例は全く引用
されていないと主張するが,これらの検索結果に記載された参考文献は,NCBI
が,各研究主体の提出した配列を整理し,関連のある配列を掲載する文献等を参考
文献として掲載したものであり,具体的な配列情報が開示されていない引用例が参
考文献として掲載されるはずがないから,原告の上記主張は失当である。
(3)引用例において用いられたOMPFの発現を確認する方法について
ア(ア)モノクローナル抗体に交差反応の可能性があるとしても,引用例におい
ては,複数のOMPF特異的なモノクローナル抗体との結合が確認されており,複
数のOMPF特異的な抗体が,いずれもOMPF以外のタンパク質を検出したとは
考えられない。
(イ)原告は,モノクローナル抗体の交差反応の例として,甲15論文,甲34
論文及び甲35論文を挙げるが,交差反応の可能性はあったとしても,甲15論文
及び甲34論文は,モノクローナル抗体を用いて,目的とするタンパク質を検出す
ることができることを示しているし,甲35論文も,そのことを否定するものでは
ない。なお,引用例の実験において,モノクローナル抗体MA4-4と反応するとされ
ているのタンパク質が混入する余地はなかったものである。P.putida
(ウ)原告は,引用例の図3における①のバンド及び②のバンドの検出を根拠に,
引用例の著者らが,モノクローナル抗体の交差反応の可能性を看過して実験を行っ
たものと考えられると主張するが,引用例においては,①のバンドについては,天
然ののOMPF調製物においてもしばしば観察されるものであり,P.aeruginosa
②のバンドについては,おそらくOMPFの分解産物であり,いずれもOMPFに
派生するものであろうとの,妥当な考察を加えているところである。また,レーン
1(のOMPF)とレーン5(クローニングされたOMPF)とのP.aeruginosa
違いについては,これらのレーンで用いた外部膜の調製物が,のもP.aeruginosa
のと大腸菌のものという違いがあり,レーン5の大腸菌の外部膜の調製物に含まれ
るのOMPFが,大腸菌宿主由来の組成により何らかの影響を及ぼP.aeruginosa
されて①のバンド及び②のバンドが生じ,わずかに見出されるに至ったとしても,
格別不思議なことではないから,原告の上記主張は,失当である。
イ(ア)また,SDSゲル電気泳動法によるタンパク質の同定に限界があるとし
ても,同じタンパク質であれば,同一条件下では,同じ位置に電気泳動されるはず
であるところ,引用例においては,クローニングされた遺伝子の発現産物が,天然
ののPAO1株由来のOMPFと比較して,同一条件下で,SDSゲルP.aeruginosa
電気泳動法における挙動が同じであることが示されている。
(イ)原告は,甲29文献及び甲37論文を根拠に,SDSゲル電気泳動法によ
る分子量の測定が不正確である旨主張するが,引用例においては,SDSゲル電気
泳動法により分子量を測定しているのではなく,クローニングした遺伝子の発現産
物が,天然ののPAO1株由来のOMPFと比較して,同一条件下で同P.aeruginosa
一の挙動(すなわち,見かけ上の分子量が同一であること)を示すか否かを観察し
ているのであるから,原告の上記主張は,不適切なものである。
ウ以上からすると,OMPF以外のタンパク質が大腸菌で発現した際に,複数
のOMPF特異的な抗体と交差反応し,かつ,天然ののPAO1株に由P.aeruginosa
来するOMPFと同じ位置に電気泳動されるなどということは,およそあり得ない
ことであるから,引用例において得られたタンパク質がOMPFであったことは,
疑う余地のないところである。
エなお,原告は,本願発明において採用されたクローニング法(目的タンパク
質を精製し,その部分配列を決定し,その部分配列に基づいてクローニングする方
法)がより正確である旨主張する。
しかしながら,この方法においては,精製されたタンパク質がOMPFであるこ
とが前提とされているところ,本願発明においては,精製されたタンパク質がOM
PFであることをSDSゲル電気泳動法によって同定しているのであるから,原告
の上記主張は失当である。
(4)OMPFを構成するアミノ酸の個数に関する引用例の著者らの認識につい

ア引用例が頒布された時点において,OMPFの分子量は,SDSゲル電気泳
動法により把握されていたのであるから,おおよその値であることは当然である
(甲29文献参照)。
イそして,上記(3)において主張したとおり,引用例においては,クローニン
グされた遺伝子の発現産物が,天然ののPAO1株由来のOMPFと比P.aeruginosa
較して,同一条件下で,SDSゲル電気泳動法における挙動が同じであることが示
されているのであるから,分子量の把握が大雑把で正確性を欠くものであったとし
ても,引用例におけるタンパク質の同定が不確かなものであるとはいえない。
ウ以上からすると,引用例に「天然のタンパク質Fにおける約410アミノ
酸」との記載があることをもって,引用例において単離されたタンパク質がOMP
Fでなかったということはできない。
(5)引用例において単離されたDNAによってコードされるタンパク質と,そ
の後に引用例の著者の1人が単離したDNAによってコードされるタンパク質の機
能(チャネル伝導度)について
ア引用例及び甲11論文には,いずれも,OMPFのチャネル伝導度について
は,天然のから単離したOMPFについても,大腸菌において発現P.aeruginosa
させクローニングしたOMPF遺伝子の産物についても,大多数のチャネルが小さ
な伝導度を有し,他方,低い頻度で,大きな伝導度のチャネルが存在すること,両
者において観察された小さな伝導度のチャネルは従来から報告されていた値(Benz
&Hancock,1981)と比べて小さいものであることが記載されているのであるから,
引用例に記載されたタンパク質と甲11論文に記載されたタンパク質とが異なると
いうことはできない(引用例の「約65%が4nSよりも大きな」との記載は,
「平均伝導度0.36nSを有した。・・・それよりも大きなチャネルが,それよ
りも低頻度で観察された。」,「測定された大きなチャネルのうちの約65%は4
nSよりも大きな(のタンパク質Fについて以前に報告された(3)P.aeruginosa
(原告が主張する引用文献3)のものと同様の大きさ)単一チャネル伝導度を有し
た。」との文脈における記載であり,原告の主張は,引用例を誤って解釈するもの
である。)。
イまた,甲24論文の記載によれば,同論文においては,のOP.aeruginosa
prF(OMPF)のチャネル特性について,引用例の発表後,より詳細な実験系
を用いて調べたことが明らかであるほか,引用例の図6には,1MのKCl水溶液
中で形成されるチャネルが,伝導度0.1∼1.0nSの範囲に分布することが示
されているのであるから,甲24論文において,事後的に正確なチャネル伝導度の
測定が行われたからといって,それは,実験の制度,手法等の違いによるものにす
ぎないというべきである。
(6)引用例の発表後の著者らの態度について
ア引用例の著者らは,甲2論文及び甲17論文において,引用例を引用してい
る。ただし,これらの論文においては,OMPF遺伝子のDNA配列に関連して引
用例を引用するものではないが,引用例には,DNA配列が記載されていないので
あるから,当然のことである。
イなお,本願発明は,OMPF遺伝子のDNA配列を決定した最初のものであ
るから,引用例の著者らが,甲2論文及び甲17論文において,本願発明の発明者
らによる甲5論文を引用するのは,当業者として何ら不自然な点はない。
(7)OMPFの大腸菌に対する毒性について
アOMPFの過剰発現が大腸菌に対して毒性があるとしても,乙6論文ないし
乙8論文に記載されているように,低コピー数の発現ベクターを用いることにより
全長の遺伝子をクローニングすることは可能であるところ,引用例におけるpHN4及
びpWW13のクローニングは,この手法でされている。
また,DNA配列を決定するために多量のコピーを必要とする場合には,乙4論
文ないし乙7論文及び乙21論文に記載されているように,発現させても毒性を示
さない部分長のものに全長遺伝子を断片化すれば,当該遺伝子を高コピー数のベク
ターを用いて大量に複製することができるから,OMPFの過剰発現が大腸菌に対
して毒性を有するとしても,当該遺伝子のクローニング及びDNA配列の決定に格
別の支障があるとはいえない。
なお,引用例において,高コピーベクターを用いたサブクローニングが成功した
とされるpWW5は,既にOMPF遺伝子の全長ではなく部分配列しか含んでいないこ
とが明らかとなった時点で,高コピーベクターにサブクローニングされているにす
ぎないところ,たとえ,高コピーベクターを用いたとしても,外部膜タンパク質の
部分ペプチドであれば,宿主を死に至らしめるようなことは起こらない場合もある
ことは,本件優先日前に知られていた事項である。
イ原告が指摘する乙2論文においても,OmpF合成が抑制された変異宿主細
胞(大腸菌のKY2562株)を用いて,高コピーベクターでOMPF遺伝子がサブクロ
ーニングされたことが記載されている。
ウ本願発明においても,OMPF遺伝子の部分断片を高コピーベクターにサブ
クローニングしており,また,本願発明の対応論文である甲5論文においても,O
MPF遺伝子を部分的に含む2つの重複断片をサブクローニングしていることが記
載されているのであるから,原告が主張するように「OMPFは,たとえ断片であ
っても大腸菌に対して毒性を有する」のであれば,本願発明の実施は不可能となる
ものである。
(8)私的鑑定意見等について
ア長田意見書にいう“hypotheticalprotein”が引用例における発現産物であ
るという可能性は極めて低い。
イ長田意見書は,単に,モノクローナル抗体MA5-8を認識するかも知れない仮
想のアミノ酸配列について述べているにすぎず,引用例においては,そのようなタ
ンパク質は検出されなかったものである(引用例の図3)。
ウ長田意見書においては,実際に確認を行ったものではなく,以下のとおり,
根拠が希薄な事項について,これを「可能性がある」と述べているものである。
(ア)2つのシステイン残基に挟まれた13残基であることをもって,モノクロ
ーナル抗体MA4-4が認識する部位であるとはいえない。また,仮に,モノクローナ
ル抗体MA4-4が非常に緩い特異性を有する(2つのシステイン残基に挟まれた13
残基を認識する)のであれば,引用例の図3において,OMPF以外のバンドが検
出されたはずである。
(イ)449アミノ酸残基から成るタンパク質のSDSゲル電気泳動における挙
動は,天然ののOMPFのそれと異なるものである。P.aeruginosa
(ウ)“hypotheticalprotein”の熱変更性タンパク質としての挙動及びポリン
活性が,天然ののOMPFと同じであるとする理由がない。P.aeruginosa
エ仮に,の外膜に“hypotheticalprotein”が存在するとすると,P.aeruginosa
本願発明において,OMPFを単一のものとして単離することができないことにな
る。
2取消事由2(本件優先日前における技術的事項の認定の誤り)に対し
以下のとおり,本件知見に係る審決の認定に誤りはない。
(1)ア一般に,ある生物由来のタンパク質のアミノ酸配列等の構造は,その生
物と同属同種に属する生物の対応するタンパク質の当該構造と類似しており,その
相同性は,別の属や別の種に属するものと比べて高いものであり,当該タンパク質
をコードする遺伝子のDNA配列も,同様に相同性が高いものと考えることは,当
業者にとって,自然なことである。
そして,本願発明のATCC33354株(セロタイプ6)由来のOMPFと,引用例の
PAO1株(セロタイプ5)由来のOMPFとは,という同種内のセロP.aeruginosa
タイプが異なるだけの株に由来するものであるから,両タンパク質をコードするO
MPF遺伝子の相同性は高いものであると予測することができる。
イ(ア)また,本件優先日前において,OMPFを含む外部膜タンパク質の保存
性が高いことは,当業者に知られていた事項である(のOMPFにP.aeruginosa
対する高度に特異的なモノクローナル抗体が,の17の全セロタイP.aeruginosa
プに属する各株に反応すること,の外部膜タンパク質が,17のセP.aeruginosa
ロタイプに属する株間において保存されていることが記載されている甲15論文の
ほか,乙6論文及び乙7論文参照)。
(イ)原告は,甲9論文,甲10論文,甲15論文,甲27論文及び甲28論文
を根拠に,という同じ種に属する株であっても,遺伝子型が顕著にP.aeruginosa
異なると主張する。しかしながら,これらの論文は,以下のとおり,OMPFが,
の株間において,その遺伝子の相同性が極めて低いといえるほどのP.aeruginosa
多様性があることを示すものではないし,かえって,甲28論文は,当該相同性が
高いことを示すものである。
a甲9論文には,の株が3000種類以上存在すること及び染P.aeruginosa
色体間を移動するトランスポゾンが存在することが記載されているだけである。
b甲10論文には,の染色体が再構成されることが記載されてP.aeruginosa
いるだけであり,外部膜タンパク質であるOMPFについて,顕著な遺伝子型の変
異があることを示すものではない。
c甲15論文は,のOMPFに特異的なモノクローナル抗体が,P.aeruginosa
にも結合することを示すだけであり,のOMPFが多様なP.putidaP.aeruginosa
変異をしていることを意味するものではない。
d甲27論文に記載されたβ−ラクタム因子によって誘導される「ポリン変
化」は,遺伝子型の変異に関するものではない。
e甲28論文には,抗生物質であるβ−ラクタムの浸透性が減じた変異体につ
いても,ポリンF(OMPF)のアミノ酸組成はほとんど変わることがなく,1つ
又は2つのアミノ酸変異に基づくものであることが記載されている。
ウまた,原告は,ポリン不全株が生存していることなどを根拠に,OMPFが
の生存にとって不可欠なタンパク質ではないと主張する。しかしなP.aeruginosa
がら,ポリン不全株が生存しているといっても,そのような株は,野生型の株と比
較して,外部環境に対し生存能力が劣っていることが多いのであるから,ポリン不
全株が生存していることをもって,OMPFがの生存にとって重要P.aeruginosa
でないということはできない。なお,いずれも本件優先日後に頒布された文献では
あるが,甲2論文には,OMPF欠損株が,特殊な培地環境でなければ生育が困難
であることが記載され,また,甲30文献には,膜タンパク質のほとんどが生命の
維持に不可欠な機能を有していることが記載されている。
エ実際に,本件知見が誤りでなかったことは,後に,甲17論文において,1
7のセロタイプのうち,1つを除いて制限酵素地図が一致するとされていることか
ら実証されているといえる。
(2)ア原告がその主張の根拠とする甲45論文において,「同種内において相
同性をほとんど示さない」例として挙げられているのは,同種内であっても異なる
ポリンタンパク質であると認識されているOmpCとOmpFであるところ,審決
は,という同一の種に属する別のセロタイプ(血清型)の株由来のP.aeruginosa
同一タンパク質,すなわち,PAO1株(セロタイプ5)由来のOMPFとATCC33354
株(セロタイプ6)由来のOMPFとの相同性が高いと予測することができると認
定しているのであり,OMPFと別の外部膜タンパク質との相同性について本件知
見を認定したものではない。
S.イなお,甲45論文における大腸菌K-12のOmpC及びOmpFと,
LT2の上記両タンパク質との間の相同性についての記載は,別の属にtyphimurium
おける対応するタンパク質の間の相同性について述べたものであり,同種の細菌に
おける同一タンパク質の間の相同性について述べたものではない。
ウ以上からすると,甲45論文の記載により,のPAO1株(セロP.aeruginosa
タイプ5)由来のOMPFと,ATCC33354株(セロタイプ6)由来のOMPFの保
存性が低いと解することはできず,原告の主張は失当である。
3取消事由3(進歩性についての判断の誤り・その1)に対し
(1)上記1の(7)のとおり,引用例において,全長OMPF遺伝子のクローニン
グ(pHN4及びpWW13)は,低コピー数のベクターを用いて行われており,このよう
な方法であれば,原告が主張するような毒性があるとしても,全長OMPF遺伝子
のクローニングは可能である。
また,のOMPFが大腸菌宿主に対して毒性を有するかも知れなP.aeruginosa
いことは,当業者が容易に予測し得ることであり,仮に,当該毒性について予測し
ていなかったとしても,OMPF遺伝子のDNA配列の決定のためのサブクローニ
ングの際には,当該毒性について認識することができるところ,これに対処する方
法は当業者に知られていた事項であるから,当該DNA配列の決定に格別の困難性
はない。
(2)すなわち,乙12文献及び乙13文献によれば,クローニングの手法及び
DNA配列の決定手法は,本件優先日前に汎用のものとなっており,また,甲31
P.aeruginosa論文,乙2論文及び乙4論文ないし乙8論文に記載されるように,
のOMPFを含む外部膜タンパク質をコードする遺伝子のクローニングの際に,高
コピーベクターを用いた当該遺伝子の過剰発現が大腸菌宿主細胞に対して毒性を有
する現象については,当業者が容易に想到し得ることであり,そのような課題に対
する解決手段についても,十分に知られていたことであるから,乙21論文に記載
された手法が本件優先日前に周知であったことをも併せ考慮すると,本願発明に係
るOMPF遺伝子のクローニング及びそのDNA配列の決定は,引用例に基づいて,
当業者が容易になし得たことである。
(3)ア原告は,DNA配列を決定していない引用例が科学雑誌に掲載されたこ
とが,本件優先日前の技術水準では,遺伝子をクローニングしてそのDNA配列を
決定することが困難であったことを示すと主張するが,科学雑誌への掲載とDNA
配列の決定の困難性との関係について,原告の主張の趣旨は不明である。
イ原告は,引用例の著者らが,本件優先日の2年後に発表した甲2論文におい
て,OMPF遺伝子のDNA配列につき,自ら決定した配列ではなく,本願発明の
発明者らによる甲5論文に記載された配列を引用しており,このことからすると,
引用例の著者らでさえも,引用例の記載に基づいてOMPF遺伝子のDNA配列を
決定することが困難であったことを示すと主張する。
しかしながら,取消事由1に対する反論の(6)で主張したとおり,当業者にとっ
て,のATCC33354株のOMPF遺伝子の配列決定を最初に行った甲5P.aeruginosa
論文を引用することは,何ら不自然なことではなく,当該引用の事実は,OMPF
遺伝子のDNA配列の決定が困難であったことを意味するものとはいえない。
(4)原告は,本願発明は,引用例に記載された方法ではなく,OMPFの部分
配列を決定し,ハイブリダイゼーションプローブを調製してファージベクターを用
いる方法を採用し,プロモーターを工夫するなどして,クローニング,配列決定等
における困難性を克服したものであり,この点において,進歩性が認められるべき
であると主張する。
しかしながら,本願発明のλファージベクターを用いたクローニング手法は,遺
伝子工学の技術分野における典型的な手法であり,その手法を採用することに何ら
技術的な意義は見出せず,また,本願発明において,タンパク質の単離・精製は,
公知の手法(乙9(甲52)論文。以下「乙9論文」という。)を用いており,プ
ローブ作製は,この技術分野の常套手段を用いたにすぎないのであるから,本願発
明の手法を採用することに何ら困難性は見当たらない。
(5)原告は,OMPF遺伝子のDNA配列を正確に決定することは,ワクチン
の生産にとって重要であるから,本願発明において同DNA配列が正確に決定され
たこと自体が,顕著な作用効果であると主張する。
しかしながら,のOMPFは,感染症を引き起こす外部膜タンパP.aeruginosa
ク質であり,そのDNA配列が決定されれば,その情報をワクチン生産に利用する
ことは,当業者が予測し得る範囲内のことであるから,本願発明におけるDNA配
列の決定が,ワクチン生産に寄与する可能性があることをもって,これを顕著な作
用効果であるということはできない。しかも,本願発明においては,実際にワクチ
ンを生産したわけでもなく,OMPFの発現すらしていないのであるから,なおさ
ら,本願発明が顕著な作用効果を奏するということはできない。
4取消事由4(進歩性についての判断の誤り・その2)に対し
(1)上記3のとおり,全長遺伝子を含むフラグメントが得られていれば,それ
をサブクローニングして当該遺伝子の塩基配列を決定し,それがコードするアミノ
酸配列を決定する手法は,本件優先日前に周知の技術であり,のOP.aeruginosa
MPF遺伝子についても,格別の阻害事由がない限り,当業者がルーチンの作業に
よりこれを行い得たものである。
(2)原告は,「OMPF遺伝子の全長を発現した場合の毒性が認識されていな
かった以上,・・・クローニングされたものが目的のタンパク質であることを知る
ことはできなかった。」と主張する。
しかしながら,グラム陰性菌の外部膜タンパク質をクローニングする際に,当該
遺伝子の過剰発現により宿主が死に至ることがあることは,本件優先日前によく知
られていた事項であるところ,これを回避する方法についても,本件優先日前によ
く知られていた事項であるから,OMPF遺伝子の全長を発現した場合の毒性が認
識されていなかったことを前提とする原告の上記主張は,その前提を欠くものであ
る。
また,引用例においては,全長遺伝子をクローニング(pHN4及びpWW13)する際
に,複数のOMPF特異的モノクローナル抗体及びSDSゲル電気泳動法によりタ
ンパク質の同定を行っているのであるから,引用例においてクローニングされたも
のが目的のタンパク質であることを知ることができなかったということはできない。
以上からすると,原告の上記主張は理由がない。
(3)原告は,引用例に記載された制限酵素地図と甲11論文に記載された制限
酵素地図とが異なることから,引用例に接した当業者は,たとえOMPF遺伝子を
含むコスミドクローンを得たとしても,そこにはOMPF遺伝子は含まれないもの
とミスリードされてしまうと主張するが,制限酵素地図は,DNA配列が決定され
れば,その誤りが修正される類のものであるから,引用例に記載された制限酵素地
図と甲11論文に記載された制限酵素地図が異なることをもって,引用例に接した
当業者にとって,のOMPF遺伝子のDNA配列の決定が困難であP.aeruginosa
ったということはできない。
(4)原告は,引用例においては,単離されたタンパク質の全長の推定アミノ酸
長が誤って410アミノ酸とされており,これによれば,対応する遺伝子の全長は
1230塩基長と計算されるから,引用例の記載に基づいてタンパク質又は遺伝子
を得た当業者は,OMPF又はOMPF遺伝子が得られなかったものとミスリード
されてしまうと主張する。
しかしながら,のATCC33354株からスクリーニングされた遺伝子がP.aeruginosa
OMPF遺伝子であることの確認を,アミノ酸長に基づくおおよその塩基長の一致
によってのみ行うということはあり得ず,例えば,引用例において行われたように,
当該遺伝子の発現産物について,SDSゲル電気泳動法による挙動や,OMPF特
異的モノクローナル抗体との反応性が,天然ののOMPFと一致すP.aeruginosa
るか否かによって,当該遺伝子がOMPF遺伝子であると同定するものであるから,
原告の上記主張は失当である。
(5)原告は,引用例の著者らが,引用例の発表からOMPF遺伝子のDNA配
列の決定まで長期間を要したとの事実も,OMPF遺伝子のDNA配列を決定する
ことが困難であったことを裏付ける旨主張する。
しかしながら,遺伝子のクローニングからそのDNA配列の決定までの期間の長
短が,当該DNA配列の決定の困難さの程度を示すものではなく,原告の主張は,
憶測にすぎない。例えば,引用例の発表後,2年も経たないうちに,甲5論文によ
り,のOMPF遺伝子のDNA配列が公知となっており,引用例のP.aeruginosa
著者らが,のセロタイプ間で,OMPF遺伝子が高度に保存されてP.aeruginosa
いることを知っていた状況下において(甲11論文参照),のPAO1P.aeruginosa
株のOMPF遺伝子のDNA配列の決定を優先して行う必要はないと考えてもおか
しくはない。
第5当裁判所の判断
1取消事由1(引用例の記載事項の認定の誤り)について
原告は,引用例において発現されたタンパク質がのOMPFであP.aeruginosa
ったとの審決の認定が誤りであると主張するので,以下,検討する。
(1)引用例における発現タンパク質の同定について
ア引用例には,以下の各記載がある(なお,以下,外国語で作成された書証中
の引用箇所を特定する場合には,特に断らない限り,訳文(当事者双方が訳文を提
出しているものについては,引用する訳文に係る書証番号を付記する。)の該当箇
所を示す。また,訳文中,明らかな誤訳等と認められる部分は,特に指摘すること
なく,適宜,加除訂正を行った上で引用することとする。)。
(ア)「この大腸菌クローンに由来するタンパク質Fおよび天然のタンパク質FP.aeruginosa
の同一性が,ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動におけるこれらのタ
ンパク質の移動度が同じであること,2−メルカプトエタノールによる改変可能性,およびタ
ンパク質Fの2つの別個のエピトープに対して特異的なモノクローナル抗体群との反応性によ
って実証された。」(473頁要約(「のポリンタンパク質FをコーPseudomonasaeruginosa
ドする遺伝子を,」で始まる段落)4∼7行)
(イ)「大腸菌(pHN4)におけるFタンパク質の特徴付け外膜を,大腸菌HB101(pHN4)およ
び大腸菌JF733(pHN4)から単離した。これらの外膜の電気泳動プロフィールを,それぞれ,
図1のレーン2および図2のレーン7に示す。両方の株において,に由来するタP.aeruginosa
ンパク質F(図1のレーン1;図2のレーン5)と同様のタンパク質が,観察され,このタン
パク質は,大腸菌HB101(図1のレーン3)においても大腸菌JF733(図2のレーン3)におい
ても観察されなかった。株JF733(pHN4)において,タンパク質Fは,主要な外膜タンパク質
(図2のレーン7)であるようであった。
大腸菌HB101(pHN4)[および株JF733(pHN4);データは示さない]の外膜プロフィールに
おける新しいバンドは,タンパク質F特異的モノクローナル抗体であるMA4-4およびMA5-8とそ
のバンドとの相互作用(図3Aおよび図3Bのレーン5)によって,タンパク質Fと同定され
た。」(475頁左欄10∼26行)
(ウ)「2−メルカプトエタノールに対する上記のクローン化タンパク質の応答もまた,調査
した。大腸菌HB101(pHN4)および大腸菌JF733(pHN4)における上記クローン化タンパク質は,
2−メルカプトエタノール中で加熱した後に,天然のタンパク質F(13)と類似する様式で,見
かけ上の分子量が増加した。この現象は,大腸菌JF733(pHN4)において最も容易に観察され
た(図2のレーン4およびレーン7)。なぜなら,その2−メルカプトエタノール還元された
タンパク質Fのバンドは,株HB101(pHN4)のOmpC-OmpFポリンバンドによって部分的に覆い隠
されたからである。上記のクローン化タンパク質は,その還元形態において,モノクローナル
抗体MA5-8と反応したが,MA4-4とは反応しなかった(データは示さない)。これは,天然のタ
ンパク質Fについて以前に観察された(23)通りである。」(475頁左欄36∼50行)
(エ)「図1.外膜調製物のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動プロフィール。各サン
プルについて,15μgの外膜タンパク質を,88℃にて10分間,2−メルカプトエタノー
ルを用いずに可溶化した。レーン1:PAO1;レーン2:大腸菌HB101P.aeruginosa
(pHN4);レーン3:大腸菌HB101;レーン4:大腸菌HB101(pWW1);レーン5:大腸菌
HB101(pWW4)。分子量マーカー(×1000[K])が,右に示されている。タンパク質F
の位置(F)および短縮型タンパク質F遺伝子産物の位置(T)が,左に示されている。」
(475頁右欄図1脚注1∼9行)
(オ)「図2.大腸菌外膜調製物および外膜調製物におけるタンパク質Fの2−P.aeruginosa
メルカプトエタノールによる改変可能性を実証する,SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳
動図。サンプルは,図1の脚注に記載される通りに処理したが,但し,5%2−メルカプトエ
タノールを,レーン2,レーン3,およびレーン4のサンプルに加熱前に添加した。レーン2
およびレーン5:PAO1;レーン3およびレーン6:大腸菌JF733;レーン4おP.aeruginosa
よびレーン7:大腸菌JF733(pHN4)。2−メルカプトエタノール改変形態のタンパク質F
(F)および非改変形態のタンパク質F(F)が,示されている。」(475頁右欄図2脚

注1∼10行)
(カ)「図3.SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離された大腸菌HB101の外膜
タンパク質のウェスタン免疫ブロット。パネルA中のタンパク質は,タンパク質F特異的モノ
クローナル抗体MA5-8を用いてプロービングした。パネルB中のタンパク質は,モノクローナ
ル抗体MA4-4(これは,タンパク質Fの別のエピトープを認識する)を用いてプロービングし
た。レーン1:PAO1;レーン2:大腸菌HB101(pCP13);レーン3:大腸菌P.aeruginosa
HB101(pWW4);レーン4:大腸菌HB101(pWW1);レーン5:大腸菌HB101(pHN4)。レーン5
における上側の微かなバンドは,タンパク質Fの不完全な熱改変に起因し,由来P.aeruginosa
のタンパク質F調製物においてしばしば観察される(13)。パネルBのレーン5における分子量
が低い方のバンドは,おそらく,タンパク質Fのタンパク質分解産物である(22)。」(475
頁右欄図3脚注1∼14行)
(キ)「大腸菌JF733(pHN4)(図5)または(データは示さない)のいずれかにP.aeruginosa
由来する少量(0.6ng/ml)の電気溶出済みタンパク質Fを,黒膜二重層を入れている
塩水溶液(1MKCl)中に添加すると,伝導度の段階的増加が生じた。他の脂質二重層の
実験結果から類推して,これらの伝導度の増加は,タンパク質Fの単一チャネル形成単位がこ
の膜中に段階的に組み込まれることを伴った。
使用した最低濃度(0.6ng/ml)において,高感度に設定した機器を使用すると,小
さなチャネルの組み込みが,主に観察された(図6A及び図6B)。測定された伝導度の増加
の確率棒グラフ(図6)および1MKCl中での単一チャネルの平均伝導度(0.34nS
∼0.38nS)は,または上記の完全なクローン化タンパク質F遺伝子を保有P.aeruginosa
する大腸菌株のいずれかから単離されたタンパク質Fについて,同様であった。」(476頁
右欄下から4行∼477頁左欄12行)
(ク)「大腸菌クローン(pHN4)およびから電気溶出したタンパク質FについてP.aeruginosa
の機能研究により,極めて類似する特性が明らかになった(図6)。」(477頁右欄下から
11∼9行)
(ケ)「図6.脂質二重膜を入れた1MのKCl水溶液に,PAO1(A)または大P.aeruginosa
腸菌JF733(pHN4)(B)由来の精製ポリンタンパク質Fを添加した後に観察された伝導度の
段差の棒グラフ。・・・棒グラフの形状に基づいて,0.6nS未満のチャネルを選択し,0.
38nS(タンパク質F;92事象の平均)および0.34nS(大腸菌由来のP.aeruginosa
タンパク質F;197事象の平均)という平均単一チャネル伝導度を測定した。」(477頁
右欄図6脚注1∼8行)
また,図1ないし図3には,以下の各事項が示されている。
(コ)図1
大腸菌HB101(pHN4)(天然ののPAO1株からDNAを単離した上,P.aeruginosa
目的の遺伝子を制限酵素で切断してコスミドベクターに挿入し,さらに,これを大
腸菌HB101へ導入して形質転換した株)の発現タンパク質(レーン2)は,36K
よりやや少ない分子量の付近で,大腸菌HB101に由来するタンパク質(レーン3)
とは異なるバンドを示す一方,天然ののPAO1株に由来するタンパクP.aeruginosa
質F(レーン1)のバンドと同じ位置(図左欄外に「F」と示された位置)にバン
ドが出現している。
(サ)図2
2−メルカプトエタノールを添加せずに加熱した場合,大腸菌JF733(pHN4)
(上記目的の遺伝子を制限酵素で切断してコスミドベクターに挿入し,さらに,こ
れをポリン欠損性大腸菌である大腸菌JF733へ導入して形質転換したもの)の発現
タンパク質(レーン7)は,大腸菌JF733に由来するタンパク質(レーン6)とは
異なるバンドを示す一方,天然ののPAO1株に由来するタンパク質FP.aeruginosa
(レーン5)のバンドと同じ位置(図右欄外に「F」と示された位置)にバンドが
出現している。他方,2−メルカプトエタノールを添加して加熱した場合,大腸菌
JF733(pHN4)の発現タンパク質(レーン4)は,大腸菌JF733に由来するタンパク
質(レーン3)とは異なるバンドを示す一方,天然ののPAO1株に由P.aeruginosa
来するタンパク質F(レーン2)のバンドと同じ位置(図右欄外の「F」と示され
た位置よりも分子量が大きい「F」と示された位置)にバンドが出現している。*
(シ)図3
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離された後のモノクローナル
抗体に対する反応につき,図3のA(モノクローナル抗体MA5-8との反応)及びB
(同MA4-4との反応)とも,大腸菌HB101(pHN4)の発現タンパク質(各レーン5)
は,天然ののPAO1株に由来するタンパク質F(各レーン1)のバンP.aeruginosa
ドと同じ位置(図左欄外の「F」と示された位置)にバンドが出現している。
イ上記アの記載及び図示によれば,引用例において発現されたタンパク質(大
腸菌HB101(pHN4)及び大腸菌JF733(pHN4)の発現タンパク質)は,2種類の異な
るOMPF特異的モノクローナル抗体に対する反応及びSDSゲル電気泳動法にお
いて,いずれも,天然ののPAO1株に由来するOMPFと同様の結果P.aeruginosa
を示し,また,引用例において発現されたタンパク質(少なくとも大腸菌JF733
(pHN4)の発現タンパク質)は,2−メルカプトエタノールを添加して加熱した場
合のSDSゲル電気泳動法による見かけ上の分子量の増加(以下「タンパク質の熱
変更性」という。)につき,天然ののPAO1株に由来するOMPFとP.aeruginosa
同様の結果を示し,さらに,チャネル伝導度についても,同様の又は類似した結果
を示したというのであるところ,異なるタンパク質の間において,上記各同定方法
ないし測定方法のすべてにおいて上記のような結果を示すということは,合理的に
P.みておよそあり得ないといえるから,引用例において発現されたタンパク質が
のPAO1株に由来するOMPFであったことは,優にこれを認めることがaeruginosa
できるというべきである。
(2)引用例における発現タンパク質の同定方法に係る原告の主張(取消事由1
の(3))について
原告は,引用例における発現タンパク質の同定方法につき,種々の疑義がある旨
主張するので,以下,検討する。
アモノクローナル抗体に対する反応について
(ア)原告は,交差反応が生じることを根拠に,モノクローナル抗体を用いたス
クリーニングの信頼性に疑問を呈するが,上記(1)のとおり,引用例においては,
2種類の異なるOMPF特異的モノクローナル抗体を用いているほか,SDSゲル
電気泳動法(タンパク質の熱変更性についての観察も含む。)をも用いて,引用例
において発現されたタンパク質がOMPFであると同定しているのであるし,さら
には,チャネル伝導度においても,引用例において発現されたタンパク質と天然の
に由来するOMPFは,同様の又は類似した結果を示しているのでP.aeruginosa
あるから,モノクローナル抗体を用いたスクリーニングに原告が主張するような一
般的な問題があるとしても,少なくとも引用例に関しては,上記(1)の認定を覆す
には足りないというべきである。
(イ)原告は,甲15論文(1983(昭和58)年12月発行の「INFECTION
ANDIMMUNITY」42巻3号の1027頁から1033頁までに掲載されたRobertE.
W.Hancockらによる「SurfaceLocalizationofOuterPseudomonasaeruginosa
MembranePorinProteinFbyUsingMonoclonalAntibodies」と題する論文)を援用
P.して,「引用例において用いられているモノクローナル抗体(MA4-4)は,
に由来する外膜タンパク質のみならず,に由来する外膜タンaeruginosaP.putida
パク質とも反応している。」と主張する。
確かに,甲15論文には,「嚢胞性線維症単離物のSDSポリアP.aeruginosa
クリルアミドゲル電気泳動の外膜タンパク質のパターンは,H103株のパターンと類
似していた・・・。これらの単離物由来のタンパク質Fは,・・・モノクローナル
Pseudomonas抗体MA4-4・・・と良好に相互作用した・・・。・・・MA4-4は,
外膜由来のタンパク質とは,強く相互作用した・・・。」(原告から提出さputida
れた2種類の抄訳文のうち,「[甲15抄訳]」で始まり「異なる抗原−抗体親和性
に起因する可能性がある。」で終わるもの(以下「甲15抄訳」という。)・1丁
下から9行∼2丁1行)との記載がある。
しかしながら,引用例において発現されたタンパク質は,引用例の次の記載にみ
られるように,大腸菌を宿主としてのPAO1株の遺伝子に基づきタンP.aeruginosa
パク質を発現させており,の遺伝子が混在する可能性はなかったものとP.putida
認められ,加えて,引用例において,2種類の異なるOMPF特異的モノクローナ
ル抗体を用いたスクリーニングが行われていることをも併せ考慮すると,引用例に
おいて発現されたタンパク質が,の遺伝子に由来するものであった可能P.putida
性はなく,甲15論文の上記記載は,引用例におけるモノクローナル抗体を用いた
スクリーニングの信頼性を左右するものではない。
a「細菌株およびプラスミドを,本研究において使用した。」(473頁右P.aeruginosa
欄下から12∼11行)
b「PAO1クローンバンクの構築・・・PAO1ゲノムDNAを,RIで部P.aeruginosaEco
分切断し,・・・サイズ分画した。20kb∼25kbのDNAフラグメントを,コスミドベ
クターであるpLAFR1(10)のRI部位中に連結した。組換え分子を,ファージλ粒子中にインEco
ビトロパッケージングし,大腸菌HB101中に形質導入した。その形質導入体を,10μg/m
lのテトラサイクリンを含むL寒天上にプレーティングした。」(474頁左欄下から21∼
11行)
c「クローニングストラテジーおよびコスミドクローンの同定PAO1ゲノムP.aeruginosa
DNAのコスミドバンクを,大腸菌HB101中にトランスフェクトした。得られた株を,シング
ルコロニーにするためにプレーティングし,タンパク質F抗原の生成についてスクリーニング
した。約3,500個のコロニーをスクリーニングした。これらのうちの5個が,タンパク質
F特異的モノクローナル抗体と反応した。pHN4という名のプラスミドを含む1つのクローンを,
さらなる操作のために自由選択した。このプラスミドを単離し,ポリン欠損性大腸菌JF733中
に形質転換した。」(474頁右欄下から2行∼475頁左欄9行)
(ウ)原告は,モノクローナル抗体の交差反応に言及した例として,甲15論文
のほか,甲34論文(1985(昭和60)年8月25日発行の「THEJOURNALOF
BIOLOGICALCHEMISTRY」260巻18号の10111頁から10117頁までに掲
載されたLudwigM.G.Heilmeyer,Jr.らによる「MonoclonalAntibodiestoRabbit
SkeletalMusclePhosphorylaseKinase」と題する論文)及び甲35論文(平成6
年10月発行の「JpnJClinPathol」42巻の1003頁から1009頁までに掲
載された高瀬幸次郎らによる「HCV抗体の測定」と題する論文)を挙げる。
a確かに,甲34論文には,「図1は,モノクローナル抗体KIN692/IVB5で
得られたパターンを示す。驚いたことに,α,β及びγの三つのサブユニットがこ
のモノクローナル抗体と強く反応した。」との記載(1丁6∼8行。なお,原文1
0113頁右欄図1脚注1∼2行(「FIG.1.ReactionofmonoclonalantibodyKIN
692/IVB5withthephosphorylasekinasesubunits.」)によれば,「図1」は「ホ
スホリラーゼキナーゼのサブユニットに対するモノクローナル抗体KIN692/IVB5
の反応」についての図である。)がある。
しかしながら,他方で,同論文には,「この状況においては,活性に影響を与え
るモノクローナル抗体の全てが,4つの構造的に異なるサブユニットのうち,α,
β及びγの三つに明らかに存在する構造と反応することは驚くべきことである。こ
れは免疫ブロット法(図1)に見られる交差反応によって明確に証明される。抗体
KIN692/IVB5が,ラクテートデヒドロゲナーゼや,アルドラーゼ,アルブミンの
ような他の関連しないタンパク質と反応しないことは,この交差反応はこのモノク
ローナル抗体の『一般的な多特異性』によるものではあり得ないことを示す。」と
の記載(1丁17∼23行)や,「おそらく,これらのサブユニットのそれぞれに
は,同一でないのであれば,非常に類似したエピトープが存在する。」との記載
(1丁下から3∼末行)もみられるところ,これらの記載によれば,甲34論文は,
一のタンパク質(ホスホリラーゼキナーゼ)を構成する複数の異なる構造のサブユ
ニットに対するモノクローナル抗体の反応について論じたものであって,異なるタ
ンパク質の同定の際に生じる交差反応そのものについて論じたものではないし,し
かも,これらのサブユニットのそれぞれに同一又は非常に類似したエピトープが存
在することを示唆するものである。
bまた,甲35論文には,「GORはヒトおよびチンパンジーの誰でもが持っ
ている遺伝子の一つであり,GOR遺伝子がコードする蛋白上にGRRGQKAK
SNPNRPL(GORエピトープ)が存在し,この遺伝子を認識する抗体がGO
R抗体である。GORエピトープとHCVcore蛋白とのホモロジーをみるとHCV
の15個のアミノ酸残基であるPKPQRKTKRNTNRRPの下線部にホモロ
ジーを認めており,HCV感染に伴って産生されたcore抗体の一部がGORエピト
ープを交差認識すると理解されている。」との記載(1005頁左欄下から8行∼
右欄3行)がある。
しかしながら,同論文は,モノクローナル抗体の交差反応が,特定のタンパク質
の間において,同一のエピトープを有する場合のみならず,エピトープのホモロジ
ーが認められる場合にも生じることを示唆するものにすぎない。
cそして,上記(1)のとおり,引用例においては,2種類の異なるOMPF特
異的モノクローナル抗体を用いているほか,SDSゲル電気泳動法(タンパク質の
熱変更性についての観察も含む。)をも用いて,引用例において発現されたタンパ
ク質がOMPFであると同定していること,さらには,チャネル伝導度においても,
引用例において発現されたタンパク質と天然のに由来するOMPFP.aeruginosa
が同様の又は類似した結果を示していることをも併せ考慮すると,少なくとも引用
例に関しては,甲34論文及び甲35論文の記載をもって,上記(1)の認定を覆す
には足りないというべきである。
(エ)原告は,引用例の図3における①のバンド及び②のバンドの出現並びにこ
れに関するモノクローナル抗体の交差反応についての言及の欠如を根拠に,引用例
の著者らが,モノクローナル抗体の交差反応の可能性を看過して実験を行ったもの
と主張する。
しかしながら,上記(1)ア(カ)のとおり,引用例においては,文献の根拠を明示し
P.た上で,①のバンドについては,「タンパク質Fの不完全な熱改変に起因し,
由来のタンパク質F調製物においてしばしば観察される(13)。」と,②aeruginosa
のバンドについては,「おそらく,タンパク質Fのタンパク質分解産物である
(22)。」とそれぞれ説明しているのであり(なお,引用例中の引用文献「(13)」と
は,後記甲37論文であり(引用例原文478頁右欄下から23∼21行参照),
同「(22)」とは,甲15論文である(引用例原文479頁左欄10∼13行参
照)。),①のバンド及び②のバンドがモノクローナル抗体との反応において出現
しても不自然ではないと理解されるから,引用例の著者らが,①のバンド及び②の
バンドの出現に関し,モノクローナル抗体の交差反応について言及していないから
といって,同反応の可能性を看過して実験を行ったとみることはできない。
イSDSゲル電気泳動法について
(ア)原告は,甲16論文(2005(平成17)年発行の「Journalof
ChromatographyB」815号の227頁から236頁までに掲載されたKunio
Yamaneらによる「Effectivenessandlimitationoftwo-dimensionalgel
electrophoresisinbacterialmembraneproteinproteomicsandperspectives」と
題する論文)及び甲36文献(1987(昭和62)年3月12日発行の社団法人
日本生化学会編「タンパク質の化学(上)」第1版の13頁から15頁まで)を根
拠に,SDSゲル電気泳動法がタンパク質(特に膜タンパク質)の同定方法として
不十分である旨主張する。
aしかしながら,甲16論文において論じられている電気泳動法は,「2D−
PAGEは,多大な不利益を被る場合がある。その主要なものとしては,疎水性が
強いタンパク質に対してはロード許容量が低いことおよび不十分な分離となること
である。」との記載(1丁6∼8行)や,「1次元目で,pH勾配を固定して(I
PG)等電点電気泳動(IEF)を利用し,2次元目で,Tri−グリシンSDS
−PAGE(IPG−Dalt)を利用する2D−PAGEは,疎水性膜タンパク
質を分離するには適さない。」との記載(1丁13∼16行)にみられるように,
2D−PAGE(2次元電気泳動。原理や条件が異なる2種の電気泳動を組み合わ
せてタンパク質を分離する方法)に関するものであり,1次元目の分離は,タンパ
ク質の電荷の違いを利用して行い,2次元目の分離は,タンパク質の分子量の違い
を利用して行うものである。そして,同論文の「これら膜タンパク質の多くのもの
は,IEFでのpH勾配によっても可溶性とはなり得ない。膜タンパク質は,非イ
オン性界面活性剤または両性イオン性界面活性剤,特にイオン強度が低いものでは,
比較的不溶性である。仮にこれらの膜タンパク質が可溶となった場合でも,このよ
うなタンパク質は,その等電点に近いpH値においては沈殿してしまうことが頻繁
に起こる。」との記載(1丁16∼21行)に照らせば,「疎水性膜タンパク質を
分離するには適さない」などの上記指摘は,タンパク質の電荷の違いを利用して行
う1次元目の分離における問題に係るものであって,タンパク質の分子量の違いを
利用して行われた引用例におけるSDSゲル電気泳動法について,そのまま当ては
まるものではない。
bまた,甲36文献には,SDSゲル電気泳動法に関する問題点の指摘として
は,「ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)存在下におけるポリアクリルアミドゲル
電気泳動(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)は愛用者が着実に増加して
きている。従来,連続緩衝液系を用いる方式・・・が使用されていたが,最近では
一般的に分解能が高いとされている不連続緩衝液系を用いる方式・・・が広く使用
されている。しかし,後者においては緩衝液の境界に起こるSDSのスタッキング
に由来する問題点が指摘されている。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の
変法としてSDSをドデシル硫酸リチウムで置き換えた手法が提案された。0℃付
近でも結晶の析出を見ることがないので,特に光合成の研究者の間でクロロフィル
タンパク質の分子集合体を解離させぬまま分離するために活用されている。しかし,
原報の処方によると泳動する試料タンパク質の周辺に存在するのはドデシル硫酸の
トリス塩であり,リチウムイオンは存在しない。この種の試料を対象とする低温で
のドデシル硫酸塩存在下のポリアクリルアミドゲル電気泳動においては陽イオンの
種類が泳動の結果を大きく左右することに注意を促したい。ゲル電気泳動において,
実験者の関心は“目に見える”タンパク質バンドに集中する。しかし,手法を最高
度に活用するためには,上記の二例のような見えない背景の事象にも十分な注意を
払う必要がある。」との記載(14頁下から9行∼15頁6行)や,「これほどま
でに各種の電気泳動法が広く活用されている今日において,タンパク質の電場の下
における移動速度の絶対測定を精度良く行える高性能装置が欠けているのは残念で
ある。」との記載(15頁17∼19行)がみられる程度であり,同文献は,原告
が主張するように,SDSゲル電気泳動法が,その手法(タンパク質の分子量に基
づく挙動の相違を目視により比較するというもの)の故に信頼性を欠くとの趣旨を
述べるものではない。
c以上からすると,甲16論文及び甲36文献の記載をもって,引用例におい
て用いられたSDSゲル電気泳動法が十分な信頼性を有しないということはできな
いから,原告の上記主張は失当である。
(イ)原告は,甲29文献(1985(昭和60)年12月10日発行の泉美治
外2名編「生物化学実験のてびき2タンパク質の分離・分析法」第1版の5頁か
ら8頁まで,21頁から80頁まで,99頁,100頁,102頁)及び甲37論
文(1979(昭和54)年12月発行の「JOURNALOFBACTERIOLOGY」140巻3
号の902頁から910頁までに掲載されたRobertE.W.Hancockらによる「Outer
Membraneof:Heatand2-Mercaptoethanol-ModifiablePseudomonasaeruginosa
Proteins」と題する論文)を根拠に,SDSゲル電気泳動法は生体膜タンパク質
(のOMPFを含む。)の分子量を正確に測定することができず,P.aeruginosa
実際,引用例においても,SDSゲル電気泳動法によりOMPFを構成するアミノ
酸の個数が誤って測定されている旨主張する。
確かに,甲29文献には,「SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いる
と,・・・手軽にタンパク質の分子量を決定できる。そのため,生化学の研究にお
いては欠かすことのできない実験手法になっている。ただし,この手法にも幾つか
の制約や限界がある。得られる分子量はポリペプチド鎖のそれであり,何本かの鎖
が寄り集まって構成されているタンパク質のそれを求めることはできない。水に溶
けない生体膜タンパク質はSDSで可溶化されるので,それらの分析にこの電気泳
動法はきわめて有用であるが,得られる分子量は多くの場合不確かなものであ
る。」との記載(35頁下から14∼7行)がみられる。
しかしながら,前記(1)のとおり,引用例においては,SDSゲル電気泳動法に
より,発現されたタンパク質(大腸菌HB101(pHN4)及び大腸菌JF733(pHN4)の発
現タンパク質)が天然ののPAO1株に由来するOMPFと同様の挙動P.aeruginosa
(タンパク質の熱変更性の観察も含む。)を示すとの結果が得られているのである
から,甲29文献に,SDSゲル電気泳動法が分子量の確定につき不十分な点を有
している旨の上記記載があることや,引用例において測定されたOMPFを構成す
るアミノ酸の個数が誤りであること(引用例477頁右欄下から26∼25行及び
P.甲3検索結果参照)を考慮しても,引用例において発現されたタンパク質が
のPAO1株に由来するOMPFであったとの前記(1)の認定を覆すには足aeruginosa
りないといわざるを得ない。
なお,甲37論文には,「可溶化における2−メルカプトエタノールの濃度を0
から5%(vol/vol)に変えた場合,その後のSDSポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動において,ポリンタンパク質Fは,二つの明らかな移動度の変性を受け
た(表4)。」との記載(1丁下から3行∼末行)がみられるが,これは,要する
に,引用例においても観察されたタンパク質の熱変更性について言及したものにす
ぎず,前記(1)の認定を何ら左右するものではない。
以上のとおりであるから,甲29文献等を根拠とする原告の上記主張は理由がな
い。
(3)その余の原告の主張(取消事由1の(1),(2)及び(4)ないし(8))について
原告は,上記(2)のほか,種々の根拠を挙げて,引用例において発現されたタン
パク質がOMPFであったことには疑義がある旨主張するので,以下,順次検討す
る。
ア制限酵素地図の相違(取消事由1の(1))について
原告は,引用例に記載された制限酵素地図が,本願発明に係る制限酵素地図と異
なること,すなわち,引用例に記載された制限酵素地図が誤りであることを理由に,
引用例において発現されたタンパク質はOMPFではない旨主張する。
(ア)引用例に記載された制限酵素地図(図4)に誤りがあることについては,
当事者間に争いがない。
(イ)そこでまず,引用例の著者らによる学術論文の記載をみることとする。
a引用例(1986(昭和61)年8月頒布)には,以下の各記載がある。
(a)「pHN4のサブクローニングプラスミドpHN4のサブクローンおよび欠失誘導体を,単離
した。そのタンパク質F遺伝子は,pLAFR1中にクローニングされた11kbRIフラグメンEco
ト上にて位置決めされた。このサブクローンを,pWW13と名付けた(図4)。大腸菌HB101
(pWW13)から単離された外膜は,大腸菌HB101(pHN4)におけるタンパク質Fと同じ電気泳動
特徴および免疫学的特徴を有するタンパク質を示した(データは示さない)。
親プラスミドpHN4もまた,Iで切断し,コンピテント大腸菌HB101細胞中に形質転換した。Xho
タンパク質F抗原を発現する陽性形質転換体を,モノクローナル抗体MA5-8を用いて検出した。
pWW1と名づけたプラスミド(図4)を含むそのようなあるF陽性サブクローンから単離された
外膜は,見かけ上の分子量が24,000であるタンパク質を示した。このタンパク質は,
MA5-8と反応したが,MA4-4とは反応しなかった(図1のレーン4;図3Aおよび図3Bのレー
ン4)。この短縮型タンパク質Fは,2−メルカプトエタノールにより改変可能ではなかった
(データは示さない)。おそらく,タンパク質Fのカルボキシ末端をコードする遺伝子領域が,
pHN4をIで切断したときに欠失された(図4)。pWW1のIフラグメントを,pCP13のIXhoSalSal
部位中に連結して,プラスミドpWW4を生成した(図4)。大腸菌HB101(pWW4)外膜の短縮型
タンパク質F生成物は,大腸菌HB101(pWW1)と同じ電気泳動特徴および免疫ブロット特徴を
有した(図1のレーン4およびレーン5;図3Aのレーン3およびレーン4)。
プラスミドpWW4に由来する2.0kbのI-Iフラグメントを,pUC8およびpUC9(これSalPst
らは,対抗方向においてlacプロモーターを有する)中に連結して,それぞれ,プラスミド
pWW5およびpWW7を生成した(図4)。大腸菌TB1(pWW5)は,短縮型タンパク質Fフラグメン
トを生成した。一方,大腸菌TB1(pWW7)は,この短縮型タンパク質Fフラグメントを生成し
なかった。このことによって,この遺伝子の方向が決定された(図4)。pWW5により生成され
た短縮型タンパク質は,見かけ上の分子量が24,000を有し,大腸菌HB101(pWW1)およ
びHB101(pWW4)により生成されるペプチドと一緒に電気泳動した(データは示さない)。」
(475頁右欄図2脚注末行の次行∼476頁左欄下から3行)
(b)「DNAの特徴付け上記タンパク質Fサブクローンを,制限酵素を用いてマッピング
した。pWW5に由来する2.0kbI-Iフラグメントを,ニックトランスレーションによSalPst
って放射標識し,それを使用して制限切断物をプロービングし,それらよりも大きなインサー
トのマッピングを促進した。上記のすべてのフラグメントの制限酵素地図を,図4に示す。
pHN4のI末端の連結から生じるpWW1およびpWW4のインサートの共直線性のない領域が,示さXho
れる。」(476頁左欄下から2行∼右欄7行)
(c)「インサートDNAの制限酵素地図を,図4に示す。おそらく,上記の短P.aeruginosa
縮型タンパク質Fは,プラスミドpWW1およびプラスミドpWW4におけるI部位の下流にある,Xho
タンパク質Fのカルボキシ末端領域をコードしていた遺伝子部分の欠失により生じた。」(4
77頁左欄本文下から3行∼右欄本文2行)
また,図4及びその脚注の記載(476頁上段)は,次のとおりである。
「図4.タンパク質Fをコードする組換えプラスミドまたは短縮型タンパク質F遺伝子産物を
コードする組換えプラスミドにおける,PAO1DNAインサートの制限酵素マッP.aeruginosa
プ。太い黒線は,ベクターDNA配列(pHN4およびpWW1についてのみ示される)を示す。細い
黒線は,DNAを示す。pHN4の白四角は,pWW1の構築において欠失されたDNP.aeruginosa
Aを示す。pWW1およびpWW4の網掛け領域は,染色体上の共直線性のないDNAをP.aeruginosa
示す。これらの組換えプラスミドのインサートサイズおよびベクターは,以下の通りである。
pHN4:pLAFR1中にインサート約30kb;pWW13:pLAFR1中にインサート11kb;pWW1:
pLAFR1中にインサート約14kb;pWW4:pCP13中にインサート4.7kb;pWW5:pUC8中に
インサート2kb。プラスミドpWW7は,pWW5と同じインサートを有したが,使用したベクター
は,pUC9であり,その結果,そのインサートは,逆方向に存在するようになった。フラグメン
トは,タンパク質F遺伝子の転写が左から右へ(すなわち,反時計回り)になるように並べら
れている。制限部位が,以下のような1文字コードによって示されている:A:I;E:Acc
RI;M:I;P:I;S:I;T:I;X:I。上記のインサートすべてに共EcoSmaPstSalSstXho
通するI部位がS’として示されている。読み易くするために,すべての制限部位を示したSal
わけではない。1.0kbサイズの参照マーカーが,直線状フラグメントのために提供されて
いる。」
b甲11論文(1988(昭和63)年8月にブリティッシュコロンビア大学
がPHD取得のための水準を満たすものと認めたWendyAnneWoodruffによる
oprFPseudomonas「CLONINGANDCHARACTERIZATIONOFTHEGENEFORPROTEINFFROM
」と題する博士論文)には,以下の各記載がある(なお,甲11論文中aeruginosa
の「H103」とは,のPAO1株のことである(原文12頁P.aeruginosaP.aeruginosa
表1参照))。
(a)「B.Screeningthegenebank
ThepLAFR1cosmidgenebankofPAO1DNAinHB101wasplatedforP.aeruginosaE.coli
singlecoloniesandscreenedfortheproductionofproteinFantigen.Ofapproximately
threethousandfivehundredcoloniesscreened,fivereactedwithmonoclonalantibodies
specificforproteinF.Oneofthesefivecolonieswasarbitrarilyselectedfor
characterizationandfurthermanipulations.TheplasmidinthisHB101clonewasE.coli
designatedpHN4.(B.遺伝子バンクのスクリーニング
大腸菌HB101中のPAO1DNAのpLAFR1コスミド遺伝子バンクは,シングルコロP.aeruginosa
ニーにするためにプレーティングし,タンパク質F抗原の生成のためにスクリーニングした。
スクリーニングした約3,500個のコロニーのうち5個がタンパク質F特異的モノクローナ
ル抗体と反応した。これら5個のうち1個のコロニーを,特徴付けと更なる操作のために自由
選択した。この大腸菌HB101クローン中のプラスミドは,pHN4と名付けられた。)」(原文2
7頁1∼8行(引用例474頁右欄末行∼475頁左欄7行参照))
(b)「C.Characterizationoftheclonedgeneproduct
...
OutermembraneswereisolatedfromHB101(pHN4)andJF733(pHN4),aE.coli
porin-deficientstrainof.SDS-PAGEprofilesoftheseoutermembranesareshownE.coli
inFigures2and3,lanes4and7.Ineachprofile,aprotein,havingthesamemolecular
weightasnativeproteinF(Fig.2,lane1;Fig.3,lanes2&5),waspresentanditwasnot
foundinoutermembraneprofilesofstrainspHN4(Fig.2,lane3andFig.3,lanes3E.coli
&6).InJF733,theplasmid-encodedproteinwasthepredominantoutermembraneE.coli
protein.(C.クローニングされた遺伝子産物の特徴付け
・・・
外膜は,大腸菌HB101(pHN4)及びJF733(pHN4)(大腸菌のポリン欠損性株)から単離した。
これらの外膜のSDS−PAGEプロフィールを,図2及び3,レーン4及び7(判決注:
『レーン2及び7』の誤記であると認められる。)に示す。いずれのプロフィールにおいても,
天然のタンパク質F(図2,レーン1;図3,レーン2及び5)と同じ分子量を有するタンパ
ク質が出現したが,pHN4を含まない大腸菌株(図2,レーン3並びに図3,レーン3及び6)
の外膜のプロフィールにおいては,そのようなタンパク質は見られなかった。大腸菌JF733に
おいては,このプラスミドによってコードされるタンパク質は,主要な外膜タンパク質であっ
た。)」(原文27頁9∼25行(引用例475頁左欄8∼20行参照))
(c)「ThisnewproteinbandwasidentifiedasproteinFbyitsinteractionwiththe
proteinF-specificmonoclonalantibodiesMA4-4andMA5-8(Fig.4A&B,lanes5andFig.6A
&B,lanes2).IneachWesternblot,asinglemajorproteinbandreactedwithantibody.A
E.colifaintreactionoccurredwithaslightlyhighermolecularweightproteininthe
(pHN4)laneswithbothMA4-4andMA5-8.Thisphenomenonisoftenobservedinouter
membranepreparationsfromandispresumedtobetheresultofpartialheatP.aeruginosa
modification(Hancock&Carey,1979).InHB101(pHN4),(Fig.4B,lane5),alowerE.coli
molecularweightbandwasobservedwhichinteractedwithonlyMA4-4.Thisbandwas
presumablyaproteolyticbreakdownproductofproteinF.(この新しいタンパク質バンドは,
タンパク質F特異的モノクローナル抗体MA4-4及びMA5-8との相互作用(図4A及びB,レーン
5並びに図6A及びB,各レーン2)によって,タンパク質Fと同定された。いずれのウェス
タンブロットにおいても,一の主要なタンパク質バンドのみが抗体と反応した。大腸菌
(pHN4)のレーン中,若干分子量の大きいタンパク質について,MA4-4及びMA5-8の双方とのか
すかな反応が見られた。これは,由来の外膜調製物においてしばしば観察され,P.aeruginosa
部分的な熱改変の結果であると推定される現象である(Hancock&Carey,1979)。大腸菌HB101
(pHN4)(図4B,レーン5)においては,MA4-4のみと相互作用した分子量のより小さいバ
ンドが観察された。このバンドは,おそらく,タンパク質Fのタンパク質分解産物であろ
う。)」(原文27頁下から4行∼29頁7行(引用例475頁左欄21∼26行,右欄図3
脚注下から6∼2行参照))
(d)「Theeffectof2-mercaptoethanolontheclonedgeneproductwasalsoexamined.oprF
InbothHB101(pHN4)andJF733(pHN4),theproteinFbandincreaseditsE.coliE.coli
apparentmolecularweightafterheatingin2-mercaptoethanol.Thisphenomenonwas
difficulttoobserveinHB101(pHN4)becausethe2-mercaptoethanolmodifiedbandE.coli
comigratedwithOmpAandwasobscured.InJF733(pHN4)theeffectofE.coli
2-mercaptoethanolonproteinFwaseasilyobserved(Fig.3,lanes4&7)andwasidentical
totheshiftinmolecularweightobservedforproteinFin(Fig.3,lanes2&P.aeruginosa
5).(2−メルカプトエタノールがクローニングされた遺伝子産物に与える影響につoprF
いても調査した。大腸菌HB101(pHN4)及び大腸菌JF733(pHN4)の双方とも,タンパク質Fバ
ンドは,2−メルカプトエタノール中で加熱した後,見かけ上の分子量が増加した。この現象
は,大腸菌HB101(pHN4)においては,観察しづらいものであった。なぜなら,2−メルカプ
トエタノールで改変されたバンドは,OmpAと共に移動し,不明瞭となるからである。大腸
菌JF733(pHN4)においては,2−メルカプトエタノールがタンパク質Fに与える影響は,容
易に観察され(図3,レーン4及び7),中のタンパク質Fについて観察されるP.aeruginosa
のと同様の分子量の位置まで移動した(図3,レーン2及び5)。)」(原文29頁12∼2
0行(引用例475頁左欄36∼46行参照))
(e)「D.サブクローニング方法および制限酵素地図
・・・精製されたpHN4DNAを,制限酵素で切断し,再結紮し,大腸菌のコンピテント細
胞に形質転換した。タンパク質F抗原発現形質転換体を,コロニーイムノブロットにおいて
MA5-8を用いて検出した。MA5-8と反応した形質転換体を,pHN4をIおよびRIで切断してXhoEco
単離した。サブクローンのI系統は,pWW4およびpWW5で終結した(図5)。これらのプラスXho
ミドは,短縮型の遺伝子産物をコードした(図2,レーン4および5;図4AおよびB,レー
ン3および4)。」(原告から提出された2種類の翻訳文のうち,「[甲11抄訳]」と題する
もの(以下,単に「甲11抄訳」という。)・5丁8∼17行)
(f)「サブクローンのRI系統(図5)は,pWW13およびpWW2200を含んでいた。これらのプEco
P.ラスミドの両方が,分子量およびモノクローナル抗体反応性に関して大腸菌(pHN4)および
の外部膜における遺伝子産物と同一である,その宿主株の外部膜における遺伝子産aeruginosa
物をコードした(図6AおよびB,レーン2,4,5および6)。」(甲11抄訳・5丁下か
ら4行∼6丁1行)
(g)「E.pWW4,pWW5およびpWW12由来の新規な遺伝子産物の特徴づけ
サブクローニング実験の間,短縮された,あるいはわずかに変形したタンパク質産物を生成
した,数個のサブクローンが生成された。そのうちの2つであるpWW4およびpWW5は,MA5-8と
は相互作用するがMA4-4とは相互作用しない(図4AおよびB,レーン3および4)約24,
000ダルトン(図2,レーン4および5)のタンパク質をコードする。短縮型タンパク質は
外部膜へ運ばれたが,2−メルカプトエタノールによって修飾され得るものではな・・・かっ
た。」(甲11抄訳・6丁下から5行∼7丁4行)
また,図5(原文32頁)及びその脚注の記載(甲11抄訳・8丁下から12行
∼9丁3行)は,次のとおりである。
「図5.のサブクローニング方法遺伝子バンクから単離されたコスミドクローン,oprF
pHN4を,円として示している。太線は,ベクター配列を示す。サブクローンpWW12は,pHN4の
11.3キロベース(kb)断片,pWW13は,pHN4の11.0kb断片であり,を含oprF
んでいる。サブクローンpWW2200は,pWW13の2.4kbI断片であり,遺伝子全体PstoprF
を含んでいた。サブクローンpWW4(4.7kb)およびpWW5(2.0kb)は,短縮された遺
伝子産物を生成し,この遺伝子産物は,タンパク質Fに対するモノクローナル抗体と反応した。
全てのサブクローンにおいて,タンパク質F遺伝子配列を,濃い黒四角として示してoprF
いる。pWW4およびpWW5の配列は,網掛けを施した四角として示してあり,染色体P.aeruginosa
において対応する要素が同一線上にない。直線状の断片に対して,1.0kbの大きさの基準
マーカーを与えている。一文字のコードで示された制限酵素部位は,E:RI;K:I;EcoKpn
M:I;P:I;S:Iである。疑問符は,可能性のあるI部位の存在を示す。」SmaPstSalSal
さらに,図2ないし4は,それぞれ,引用例の図1ないし3と同一のものである
と認められるところ(なお,図2ないし4には,鮮明さに欠ける部分がみられるが,
原告は,これらがそれぞれ引用例の図1ないし3と同一のものであるとの被告の主
張を特段争っていない。),各図の脚注の記載(図3については,その抜粋)は,
以下のとおりである。
(h)「Figure2.SDS-PAGEprofilesofoutermembranepreparationsofcontainingE.coli
oprFP.aeruginosaE.coliE.coliclones.Lane1,H103;lane2,HB101(pHN4);lane3,
HB101;lane4,HB101(pWW4);lane5,HB101(pWW5).MolecularweightE.coliE.coli
markers,inthousands(K),areindicatedontheright.ThepositionofproteinF(F)and
thetruncatedproteinFgeneproduct(T)areindicatedontheleft.ThepositionsofOmpF,
OmpC,andOmpAinthestrainsareindicated.(図2.クローンを含む大腸菌E.colioprF
の外膜調製物のSDS−PAGEプロフィール。レーン1,H103;レーン2,P.aeruginosa
大腸菌HB101(pHN4);レーン3,大腸菌HB101;レーン4,大腸菌HB101(pWW4);レーン5,
大腸菌HB101(pWW5)。分子量マーカー(×1000(K))が右に示されている。タンパク
質Fの位置(F)及び短縮型タンパク質F遺伝子産物の位置(T)が左に示されている。大腸
菌株のOmpF,OmpC及びOmpAの位置が示されている。)」(原文26頁図2脚注1
∼7行(引用例475頁右欄図1脚注1∼9行参照))
E.coliP.(i)「Figure3.SDS-PAGEprofilesofoutermembranepreparationsofand
showingthe2-mercaptoethanolmodifiabilityofproteinF.Samplesinlanes2,aeruginosa
3and4weretreatedwith5%2-mercaptoethanolbeforeleadingontothegel.Lanes2and5,
H103;lanes3and6,JF733;lanes4and7,JF733(pHN4).TheP.aeruginosaE.coliE.coli
2-mercaptoethanolmodified(F)andunmodified(F)formsofproteinFareindicated.(図3.
*
タンパク質Fの2−メルカプトエタノールによる改変可能性を示す大腸菌及びのP.aeruginosa
外膜調製物のSDS−PAGEプロフィール。レーン2,3及び4のサンプルは,ゲル化する
前に5%の2−メルカプトエタノールで処理した。レーン2及び5,H103;レP.aeruginosa
ーン3及び6,大腸菌JF733;レーン4及び7,大腸菌JF733(pHN4)。2−メルカプトエタノ
ールの改変形態のタンパク質F(F)及び非改変形態のタンパク質F(F)が示されてい

る。)」(原文28頁図3脚注1∼6行(引用例475頁右欄図2脚注1∼10行参照))
(j)「Figure4.WesternimmunoblotsofoutermembraneproteinsofH103andP.aeruginosa
strainscontainingthetruncatedencodingplasmids.TheproteinsinpanelAE.colioprF
P.werereactedwithMA5-8;theproteinsinpanelBwerereactedwithMA4-4.Lanes1,
aeruginosaE.coliE.coliE.H103;lanes2,HB101(pCP13);lanes3,HB101(pWW4);lanes4,
HB101(pWW5);lanes5,HB101(pHN4).ThepositionofproteinFisindicatedcoliE.coli
(F)andthatofthetruncatedgeneproductislabelledT.(図4.H103及び短P.aeruginosa
縮型をコードするプラスミドを含む大腸菌株の外膜タンパク質のウェスタン免疫ブロoprF
ット。パネルA中のタンパク質は,MA5-8と反応し,パネルB中のタンパク質はMA4-4と反応し
た。レーン1,H103;レーン2,大腸菌HB101(pCP13),レーン3,大腸菌P.aeruginosa
HB101(pWW4);レーン4,大腸菌HB101(pWW5);レーン5,大腸菌HB101(pHN4)。タンパク
質Fの位置は(F)に,短縮型の遺伝子産物の位置はTにそれぞれ示される。)」(原文30
頁図4脚注1∼7行(引用例475頁右欄図3脚注1∼9行参照))
c乙17論文(1992(平成4)年8月発行の「JOURNALOFBACTERIOLOGY」
174巻15号の4977頁から4985頁までに掲載されたWendyA.Woodruff,
RobertE.W.Hancockらによる「AnalysisoftheMajorPseudomonasaeruginosa
OuterMembraneProteinOprFbyUseofTruncatedOprFDerivativesandMonoclonal
Antibodies」と題する論文)には,以下の各記載がある(なお,乙17論文中の引
用文献「(40)」とは,引用例である(乙17論文原文4985頁右欄下から7∼4
行参照。原文の当該部分に記載された引用例の表題は,誤記であると認められ
る。))。
(a)「pWW5が短縮型の生産物を発現する(40)ことは,以前に記述されている。」(1頁5∼
6行)
(b)「この研究によるpWW5・・・の配列決定により,・・・pWW5は,OprFのアミノ酸1
71∼300の中間領域が欠失したものをコードすることが明らかになった。」(1頁11∼
13行)
(c)「プラスミドpWW5は,のコーディング配列(全体で1,053塩基対)におけoprF
る583及び973のヌクレオチドの位置から始まる同一のDNA配列,CCGGTTGCC
GAC間の明らかな組換えによって中間領域の欠失したことによって起こった。その結果とし
て得られた欠失タンパク質は,OprFの4つのシステインをコードする領域とアミノ酸30
1∼326を除く,OprFのC末端領域のほとんどの領域が欠失した。該欠失タンパク質は,
分子量が22,000と予測され,見かけ上の分子量は24,000であり(40)(図5),
MA7-1及びMA5-8との反応性のみを維持する。」(1頁下から7行∼末行)
また,図4(原文4982頁)及びその脚注の記載(2頁2∼8行)は,次のと
おりである。
「図4.のOprFの直線的な地図上における融合物,サブクローン及びモノクP.aeruginosa
ローナル抗体のエピトープの位置についての要約。融合物が線の上に示され,黒い矢印はPh
oAの構造的な発現を示し,白い矢印はX−P培地における白いコロニーを示し,矢印の方向
は転移の開始を示す。OprFのと相同的な領域(網掛け領域)及びシステインompA
(C)が,線の下に示されている。サブクローン及びそれらがコードするOprFの一部が示
されている。モノクローナル抗体のエピトープは,実線で示されている(エピトープを含むと
ここで定義された領域を表す。)。」
(ウ)次に,制限酵素地図の作成方法,正確性等に関し,以下の各証拠には,そ
れぞれ下記の各記載がある。
a甲12文献(1986(昭和61)年6月1日発行の泉美治外2名編「生物
化学実験のてびき3核酸の分離・分析法」第1版の15頁,37頁から61頁ま
で及び63頁から106頁まで)
(a)「クローニング・・・によって得られた目的DNA断片(DNAの一部で,しかも,研
究対象の遺伝子を含むDNA断片である場合が多い)のおおよその構造を知るためには,まず,
目的DNA断片が種々の制限酵素によってどの部位で切断されるか,を示す地図を作る必要が
ある。」(65頁下から2行∼66頁2行)
(b)「制限酵素は,DNAの特定のホスホジエステル結合・・・を加水分解し,新たに生じ
た3’末端にOH基を,そして5’末端にリン酸基を生成させる酵素(エンドヌクレアーゼ)
である。エンドヌクレアーゼは,2本鎖DNA中の特定の塩基配列を正確に認識し,その配列
の内部あるいは近傍のホスホジエステル結合を切断することによって,DNA断片・・・を生
成させる。」(66頁6行∼67頁6行)
(c)「ここでは,例として,岡山−バーグ法・・・によってクローニングした目的DNA断
片の切断地図の作成について述べる。」(67頁下から4∼2行)
(d)「実験例
操作1RV(判決注:制限酵素の1つ。70頁9∼11行参照)によるpL-D66(判決Eco
注:TMV−RNA(タバコモザイクウイルスの1本鎖RNA)中の5’末端側の約1,90
0ヌクレオチドに相補性のDNA(cDNA)及びcDNAに対して相補性のDNAの2本鎖
DNAをベクターDNAに挿入し,作成した組換えDNA。67頁末行∼69頁本文8行参
照)の加水分解とアガロースゲル電気泳動
pL-D66をRVによって完全加水分解し,その分解物をアガロースゲル電気泳動にかけEco
る。」(70頁12∼15行)
(e)「RVによるpL-D66の完全加水分解物は1本のゾーンとして泳動し,その泳動距離は未Eco
処理pL-D66のccc型とoc型の中間にある・・・。この事実は,RVがpL-D66のcDNAを1箇Eco
所で切断することによって,pL-D66は開環されて1本の直鎖状DNA・・・になったことを示
す。また,そのゾーンの位置・・・から,直鎖状DNAの長さは約4.5kbと測定される。
ベクターDNAの長さ(2,628bp)は既知であるので,cDNAの長さは約1,900
bpと計算される。」(70頁本文下から3行∼71頁末行)
(f)「操作2I-RVおよびⅡ(判決注:制限酵素の1つ。69頁末行参照)-RVPstEcoPvuEco
の組合せによるpL-D66の加水分解とアガロースゲル電気泳動
この操作は,pL-D66において,I(2)(判決注:Iは,ベクターDNAを2箇所で切PstPst
断するため,この実験例においては,各切断箇所を『I(1)』及び『I(2)』と指称PstPst
している。後記図3−6及びその脚注9∼10行(69頁)参照)およびⅡによるベクタPvu
ーDNAの切断部位から,RVによるcDNA上の切断部位までの長さを求めることを目的Eco
とする。まず,IとRVの両者を同時に用いることによってpL-D66を完全加水分解する。PstEco
・・・反応後,反応液をアガロースゲル電気泳動・・・にかける・・・。ゲル電気泳動によっ
て,完全加水分解物は3種のDNA断片に分離される(レーン5)。サイズマーカー(λDN
Aを制限酵素dⅢとRIの両者によって完全加水分解したもの)の長さ(レーン6のサイHinEco
ズマーカーのkb数)と電気泳動での移動距離(レーン6での実測値)の相関曲線を作成する
・・・。レーン5の3種類のDNA断片のそれぞれの移動距離を実測し,実測値(3.2cm,
5.8cmおよび8.3cm)を相関曲線と照合すると,DNA断片の長さは,移動距離の短
いものから順に,約2,900bp,約1,070bpおよび約480bpと求められる。こ
れら3種のDNA断片がpL-D66のどの部分に相当するかは,それぞれのDNA断片の長さから
推定する。pL-D66において,その環の右まわりの方向で,1,070bp断片はI(1)かPst
らI(2)の部位までのもの(文献上では1,057bp)に対応する。pL-D66全体の長さPst
は約4,500bpと測定されており,文献上で,ⅡからI(1)までのDNA断片のPvuPst
長さは1,543bp(判決注:『1,545bp』の誤記であると認められる。)であるこ
とがわかっている。したがって,I(2)からⅡまでのDNA断片(cDNAを含む)PstPvu
の長さは1,950bpと計算できる。総合すると,RVからI(1)までのDNA断片EcoPst
の長さは,当然,1,545bpよりも長いはずである(判決注:後記図3−6参照)ので,
2,900bp断片がRVからI(1)までのもの,また,480bp断片がI(2)EcoPstPst
からRVまでのものと判断できる。」(72頁本文8行∼73頁下から9行)Eco
なお,図3−6及びその脚注(抜粋)の記載(69頁)は,次のとおりである。
b甲31論文(1982(昭和57)年発行の「NucleicAcidsResearch」1
0巻21号の6957頁から6968頁までに掲載されたShojiMizushimaらによ
る「PrimarystructureofthegenethatcodesforamajoroutermembraneompF
proteinofK-12」と題する論文。なお,甲31論文中の引用文献Escherichiacoli
「(15)」とは,甲39論文(1981(昭和56)年2月発行の「JOURNALOF
BACTERIOLOGY」145巻2号の1085頁から1090頁までに掲載されたShoji
Mizushimaらによる「SpecializedTransducingBacteriophageLambdaCarryingthe
EscherichiacoliStructuralGeneforaMajorOuterMembraneMatrixProteinof
K-12」と題する論文)である(甲31論文原文6967頁下から2行∼末行参
照)。)
(a)「のK-12株の主要な外部膜タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチE.coliompF
ド配列が決定され,そこからOmpFタンパク質のアミノ酸配列が推定された。」(乙3・1
頁下から15∼14行)
(b)「制限酵素地図作成及びDNA配列決定
図2は,遺伝子周辺の制限酵素切断地図を示す。図1に示されるの染色体かompFE.coli
ら得られた領域に,一つのHI部位があることを報告した以前の論文は,誤りであった(15)。Bam
この領域には,HI部位は見当たらなかった。図3に示したヌクレオチド配列からもこの事Bam
実を確認できる。」(乙3・2頁5∼9行)
c乙16論文(1987(昭和62)年5月発行の「ANTIMICROBIALAGENTS
ANDCHEMOTHERAPY」31巻5号の728頁から734頁までに掲載されたRogerC.
Levesqueらによる「DevelopmentofNaturalandSyntheticDNAProbesforOXA-2
andTEM-1β-Lactamases」と題する論文)
(a)「OXA−2βラクタマーゼをコードするR46から精製したプラスミドDNAを,制限
酵素Ⅱで切断し,HIで処理したpACYC184に連結した。」(1頁下から11∼9行)BglBam
(b)「制限酵素地図及び構造遺伝子の位置決めbla
制限酵素I,HI,RI,cⅡ,dⅢ,I,I及びIを用いて,pMON20の6.AvaBamEcoHinHinNruPstSal
3kbⅡフラグメントの地図を決定した。・・・公表されたR46との唯一の相違点は,我々Bgl
がマッピングしたスルホンアミド遺伝子には,I部位が追加されていることである。」(1Pst
頁下から5行∼末行)
(エ)そこで,引用例における制限酵素地図の誤りが,前記(1)の認定を覆すに足
りるものであるか否かについて検討する。
a甲11論文におけるOMPF遺伝子のクローニングについて
原告は,甲11論文においてはOMPF遺伝子が正しくクローニングされている
旨主張し,被告も,この点を争うものではない。
そして,前記(イ)bのとおりの甲11論文の記載及び図示によれば,同論文にお
いてクローニングされたpHN4(全長プラスミド。以下,甲11論文においてクロー
ニング又はサブクローニングされたプラスミドと,引用例においてクローニング又
はサブクローニングされたプラスミドとを区別する必要があるときは,前者を「甲
11pHN4」,後者を「引用例pHN4」などという。)の遺伝子産物(大腸菌HB101
(pHN4)及び大腸菌JF733(pHN4)の発現タンパク質)は,2種類の異なるOMP
F特異的モノクローナル抗体に対する反応及びSDSゲル電気泳動法において,い
ずれも,天然ののPAO1株に由来するOMPFと同様の結果を示し,P.aeruginosa
また,甲11pHN4の遺伝子産物(少なくとも大腸菌JF733(pHN4)の発現タンパク
質)は,タンパク質の熱変更性において,天然ののPAO1株に由来すP.aeruginosa
るOMPFと同様の結果を示し,さらに,甲11pWW13(RI系統の全長プラスミEco
ド)についても,分子量及びモノクローナル抗体に対する反応において,pHN4及び
の外部膜に係る遺伝子産物と同一の遺伝子産物をコードしたというP.aeruginosa
のであるから,少なくともpHN4及びpWW13については,甲11論文において正しく
クローニング又はサブクローニングされたものと認めるのが相当である。
b引用例pHN4及びpWW13と甲11pHN4及びpWW13との同一性について
(a)前記(1)ア及び(2)ア(イ)並びに前記(イ)aのとおりの引用例の記載及び図示
の内容と,前記(イ)bのとおりの甲11論文の記載及び図示の内容とを対比すると,
pHN4のクローニング方法はおおむね同様であるほか,pHN4の遺伝子産物に係るSD
Sゲル電気泳動法,モノクローナル抗体に対する反応及びタンパク質の熱変更性に
ついての実験に至っては,引用例pHN4と甲11pHN4は完全に同一の結果を示したと
いうのであるから,引用例pHN4と甲11pHN4が同一のプラスミドであることは,動
かし難い事実としてこれを認めることができる。そして,pWW13についても,制限
酵素RIによりpHN4の同一箇所を切断するなどしてサブクローニングされた11Eco
kbのプラスミドであることなどに照らせば,引用例pWW13と甲11pWW13は同一の
プラスミドであると認めるのが相当である。
(b)引用例において正しくクローニングされなかったOMPF遺伝子が,甲1
1論文において初めて正しくクローニングされたとの原告の主張について
i原告は,コスミドベクターを用いたクローニングの段階において使用された
テトラサイクリンの濃度が,引用例においては10μg/mlであるのに対し,甲
11論文においては25μg/mlであり,これにより,甲11論文においてはO
MPFの毒性が回避ないし軽減されたとして,引用例において正しくクローニング
されなかったOMPF遺伝子が,甲11論文においては正しくクローニングされた
と主張する。
確かに,上記テトラサイクリンの各濃度は,原告が主張するとおりであるが(引
用例474頁左欄下から12行,甲11論文原文16頁9行),原告が援用する甲
42論文(1995(平成7)年2月発行の「JOURNALOFBACTERIOLOGY」177巻
4号の998頁から1007頁までに掲載されたHiroshiNikaidoらによる「Role
ofOuterMembraneBarrierinEfflux-MediatedTetracyclineResistanceof
」と題する論文)の図9(1丁)及びその脚注の記載(1丁下かEscherichiacoli
ら4行∼2丁末行)をみても,テトラサイクリンの濃度を上昇させることによりO
MPFの毒性が回避ないし軽減されるものと直ちに認めることはできず,その他,
テトラサイクリンの濃度を上昇させることによりOMPFの毒性の回避等が図られ
るものと認めるに足りる確たる証拠はないから,原告の上記主張は,全くあり得な
いとまではいえないとしても,推測される1つの可能性をいうものにすぎず,引用
例pHN4及びpWW13と甲11pHN4及びpWW13がそれぞれ同一のプラスミドであるとの上
記認定を左右するに足りるものではない。
ii原告は,pWW13のサブクローニングの段階において使用された大腸菌宿主に
ついて,引用例においては大腸菌HB101が用いられているのに対し,甲11論文に
おいては使用された大腸菌宿主についての言及がないことから,甲11論文におい
ては,OMPFの毒性を回避ないし軽減させるための何らかの工夫がされたことが
うかがわれると主張するが,前記(イ)bのとおり,甲11論文においても,遺伝子
バンクのスクリーニングや,pHN4,pWW4又はpWW5を用いた遺伝子産物(タンパク
質)の発現の場面において,特段の留保なしに大腸菌HB101が用いられているので
あるから,pWW13のサブクローニングの段階のみを取り上げて,大腸菌宿主に関し,
甲11論文においてはOMPFの毒性の回避等のための何らかの工夫がされたとみ
ることはできず,したがって,原告の上記主張は,これを採用することができない。
iii原告は,仮に,引用例において制限酵素地図の作成のみに問題があったの
であれば,「ERRATA」(正誤表)による訂正又は後の論文における言及があ
るはずであるところ,引用例の著者らは,そのような手続をとっていない旨主張す
るが,前記(イ)cのとおり,引用例の著者らのうち,WendyA.Woodruff及びRobert
E.W.Hancockは,引用例の頒布から6年の後に頒布された乙17論文において,
引用例pWW5がコードするアミノ酸に欠失があったことを論じているのであり,そう
すると,引用例の制限酵素地図にも当然に変更が生じること(後記d参照)を公表
していることになるから,原告の上記主張は失当である。
iv原告は,甲11pWW13に係る制限酵素地図の作成につき,引用例において用
いられた制限酵素I(記号:T)及びI(記号:X)が用いられていないと主SstXho
張する。
しかしながら,後記dにおいて詳述するとおり,引用例においては,pWW5の長さ
(bp(塩基対)数。以下同じ。)の認識について誤りがあり,このことが,
pWW13の制限酵素地図の内容を根本から誤らせたものであるところ,甲11論文に
おいてpWW5が正しくサブクローニングされているとすれば(原告は,その旨主張し,
被告も,その点を争うものではない。また,前記(イ)cのとおり,乙17論文によ
れば,引用例pWW5には,いわば突然変異に準ずるような事態が生じたといえるとこ
ろ,そのようなプラスミドが,甲11論文においても同じようにサブクローニング
されたとは考え難い。),甲11論文に係る最終的な結論としての制限酵素地図に
おいて,制限酵素I及びIの認識部位が記載されなかったとしても,何ら不合SstXho
理なことではない(なお,最終的な結論としての制限酵素地図に記号T及びXが記
載されていないことは,制限酵素地図の作成過程で,制限酵素I及びIが用いSstXho
られなかったことを意味するものではない。)から,原告の上記主張は,pWW13が
甲11論文において初めて正しくサブクローニングされたことの根拠となるもので
はない。
v原告は,引用例pWW13が甲11pWW13と同一のプラスミドであるとすると,以
下の理由により矛盾が生じると主張するが,いずれも理由がない。
(i)原告は,引用例pWW13は,約2.0kbのI-I断片を含む(引用例のSalPst
図4。また,引用例においては,このことが実験的に確認されているといえる。)
にもかかわらず,甲11pWW13に含まれるI-I断片は,約1.3kbのものとSalPst
約0.9kbのものであると主張するが,引用例pWW13に含まれるI-I断片のSalPst
長さが約2.0kbであるとの主張は,誤りを含んだ制限酵素地図(引用例の図
4)に基づくものであるし,引用例を精査しても,同断片の長さが約2.0kbで
あることが実験により確認されたものであると認めることはできないから,原告の
主張は,その前提を欠くものとして失当である。
(ii)原告は,引用例においては,pHN4及びpWW13が約2.0kbのI断片をSma
含むことが実験的に確認されている(引用例の図4)にもかかわらず,甲11論文
に記載されたI断片は,約1.7kbのものと約4.3kbのものであり,pHN4Sma
全体に占める同断片の位置も,引用例と異なると主張するが,引用例における同断
片の長さが約2.0kbであるとの主張が,制限酵素地図(引用例の図4)に基づ
くものであるならば,誤りを含んだ制限酵素地図に基づくものであるといわざるを
得ないし,また,引用例を精査しても,引用例における同断片の長さが約2.0k
bであることが実験により確認されたものと認めることはできないから,原告の主
張は,上記(i)と同様,その前提を欠くものとして失当である。
(iii)原告は,甲11pWW13の制限酵素地図を前提にして引用例に記載された
pWW1の調製方法(pHN4をIで切断して自己閉環させる方法)を適用すると,OMXho
PF遺伝子を含んだ部分が切り取られてしまうことになるから,甲11pWW4及び
pWW5にはOMPF遺伝子が含まれないことになると主張する。
しかしながら,甲11論文の図5及びその脚注の記載(前記(イ)b)によれば,
pWW4及びpWW5について,染色体において対応する要素が同一線上にP.aeruginosa
ない部分(図5中の網掛けを施した四角部分)は,OMPF遺伝子を含む部分(図
5中の濃い黒四角部分)の下流側(右側)に存在しているのであるから,同論文に
おいて,I系統のサブクローニングを行う際に,Iによって切断された各部位XhoXho
は,OMPF遺伝子を含む部分よりも下流側(右側)に存在していたことになる。
そうすると,甲11pWW4及びpWW5にOMPF遺伝子が含まれないとの原告の主張は,
甲11論文における制限酵素地図が誤りであるという趣旨を含むものとなり,同論
文においてOMPF遺伝子が正しくクローニング又はサブクローニングされたとの
原告自身の主張と整合しないばかりか,引用例pWW13と甲11pWW13との同一性を否
定する根拠ともなり得ないものであるから,これを採用することはできない。
vi原告は,OMPF遺伝子の制限酵素地図を開示しない引用例の発表の後,本
件優先日を経て,OMPF遺伝子の制限酵素地図を開示する甲11論文が発表され
たとの事実経過等からみて,引用例の著者らは,引用例においてOMPF遺伝子の
クローニングに失敗したものの,再度クローニングを行った結果,OMPF遺伝子
のクローニングに成功し,その結果を甲11論文に記載したと主張するが,前記
(イ)aのとおり,引用例には,誤りを含むものではあるものの,制限酵素地図が開
示されているのであるから,原告の上記主張は,その前提を誤るものとして失当で
ある。
vii以上のとおりであるから,引用例において正しくクローニングされなかっ
たOMPF遺伝子が,甲11論文において初めて正しくクローニングされたとの原
告の主張は,少なくともpHN4及びpWW13に関する限りにおいては,理由がない。
c制限酵素地図及びその誤り(一般)について
(a)前記(ウ)aのとおり,制限酵素地図は,制限酵素によるDNAの切断部位を
特定することにより,DNAの当該切断部位に特定の塩基配列(当該制限酵素が認
識する塩基配列)が存在するとの情報を得て,これを,線で表したDNA上に当該
制限酵素名(の省略記号)を記載することによって表現したものである。そして,
制限酵素認識部位を知るためには,目的とするDNA全体の長さや,各種制限酵素
によって切断された各DNA断片の長さを測定することが必要であり,そのために
は,ゲル電気泳動における移動距離を実測するなどしなければならない。また,未
知の制限酵素認識部位を知るための前提として,ベクターDNAの長さ,既に明ら
かになっている特定の制限酵素に係る制限酵素認識部位,ゲル電気泳動における移
動距離とDNAの長さとの相関関係を示す相関曲線等の既知の情報を活用すること
が必要になる。
その上で,各種制限酵素に係る制限酵素認識部位の位置は,各DNA断片を,目
的とするDNA全体に,いわばパズルのピースをはめ込むようにして推定されるこ
とになる。
そうすると,正確な制限酵素地図を作成するためには,各種制限酵素が正しく特
定の塩基配列を認識した上,必要な部分を欠失させることなく,正しい部位におい
てDNAを切断すること,DNA全体及び各DNA断片のゲル電気泳動における移
動距離が正しく測定されること,活用される各種の既知の情報が誤りでないことな
ど,多様な要素についての正確さが要求されるものであるといえる。
(b)また,前記(ウ)b及びcのとおり,甲31論文及び乙16論文は,従前の制
限酵素地図を訂正するものであり,引用例における制限酵素地図も,甲11論文に
おいて訂正されているところである(前記(イ)a及びb)。
原告は,甲31論文は,制限酵素HIを使用する際の反応液の濃度が低かったBam
ために,本来の認識部位以外を切断するというスター活性が生じた事例に関するも
のであると主張するが,仮にそうであるとすると,反応液の濃度という要素が正確
でないだけでも,制限酵素地図の正確さに影響を及ぼすことになる(なお,原告は,
引用例の投稿日時点では,制限酵素の正確な反応条件が既に確立していたと主張す
るが,引用例の投稿日時点において,引用例において用いられたすべての制限酵素
につき,原告が主張するような反応条件の確立があったものと認めるに足りる証拠
はない。また,原告は,乙16論文に関し,従前の制限酵素地図のほうが正しかっ
たという事例に関するものであると主張するが,要するに,制限酵素地図が正確で
ない場合があるという事実に変わりはない。)。
(c)以上からすると,正確な制限酵素地図を作成するには,多様な要素におけ
る正確さが求められ,制限酵素地図が訂正されるということも普通に行われている
ところであるから,一般的には,制限酵素地図の正確性に大きな信頼を寄せること
はできず,したがってまた,制限酵素地図が誤っていることと,当該制限酵素地図
に係るDNAが異なるものであることとの間の相関性は,さほど大きなものではな
いというべきである。
d引用例における制限酵素地図の誤りについて
(a)i前記(イ)cのとおり,乙17論文には,引用例pWW5は,中間領域を欠失し
たものであり,その産物として得られたタンパク質も,アミノ酸171ないし30
0の中間領域を欠くものであったことが明らかとなったこと,その原因は,特定の
塩基配列における組換えが起こったことであることが示されている
iiなお,原告は,仮に,引用例pWW5が,乙17論文の図4に示されるような欠
失した構造を有するのであれば,共直線性を欠くことになるところ,引用例の図4
によれば,pWW5内には共直線性がない領域が存在しないこととされており,矛盾し
ていると主張する。
しかしながら,引用例の著者らが,引用例pWW5をサブクローニングした際,これ
が中間領域を欠くものと認識していなかったことは明らかであるから,引用例の図
4において,pWW5に共直線性がない領域が示されていないのは,むしろ当然のこと
であり,原告の上記主張は,理由がない。
iiiまた,原告は,仮に,引用例pWW5が,上記のような欠失した構造を有する
のであれば,引用例pWW5からプローブを調製すると,アミノ酸1ないし170残基
に対応するプローブ及びアミノ酸301ないし326残基に対応するプローブが生
じることとなり,引用例pWW5を用いてサザンハイブリダイゼーションを行うと,こ
れら2つのプローブに対応する2つのタンパク質断片が検出されることとなるにも
かかわらず,引用例には,単一のバンドが確認されたと記載されており,矛盾して
いる旨主張する。
しかしながら,引用例pWW5が中間領域を欠失したプラスミドであることは,それ
が構造的にも2つのDNA断片に分断されており,その産物たるタンパク質も構造
的に2つの断片に分断されるということを当然に意味するものではないから,原告
の上記主張は,前提を誤るものとして失当である。
(b)そうすると,引用例pWW5は,客観的には,中間領域(390bp(=(3
00−171+1)×3))を欠いたものであるにもかかわらず,引用例の著者ら
の主観においては,これを欠かないものであることを前提に,長さ2000bp
(前記(イ)a)のDNA断片であると認識されていたものであるといえる。
このようなDNA断片の内容についての誤りは,上記c(a)のとおりの制限酵素
地図の作成方法にも照らせば,一般的な観点からも,当該DNA断片を含むDNA
全体についての制限酵素認識部位の正確性に影響を及ぼすものであるといえるとこ
ろ,とりわけ,引用例には,「pWW5に由来する2.0kbI-IフラグメントSalPst
を,ニックトランスレーションによって放射標識し,それを使用して制限切断物を
プロービングし,それらよりも大きなインサートのマッピングを促進した。」との
記載(前記(イ)a(b))があるのであるから,結局,引用例においては,pWW5の内容
についての誤りが,DNA断片であるpWW5の制限酵素地図や,同じくDNA断片で
あるpWW1及びpWW4の制限酵素地図のみならず,全長プラスミドであるpHN4及び
pWW13の制限酵素地図についても,それらの内容を根本から誤らせたものと認める
のが相当である。
(c)以上に加え,上記cのとおりの制限酵素地図の正確性についての一般論を
も併せ考慮すると,引用例における制限酵素地図の誤りは,引用例pHN4及びpWW13
が正しくクローニング又はサブクローニングされたものである旨の前記a及びbの
結論を左右するには不十分であるというほかなく,ひいては,引用例において発現
されたタンパク質がのPAO1株に由来するOMPFであったとの前記P.aeruginosa
(1)の認定を覆すには足りないといわざるを得ない。
(オ)小括
以上のとおりであるから,引用例に記載された制限酵素地図が誤りであることを
理由に,引用例において発現されたタンパク質がOMPFでない旨をいう原告の主
張は,理由がない。
イNCBIに登録されたOMPFのアミノ酸配列等(取消事由1の(2))につ
いて
原告は,引用例の著者らがNCBIにOMPFのアミノ酸配列等を登録したのは,
引用例の頒布(1986(昭和61)年8月)から10年以上も経過した1999
(平成11)年8月19日のことであり,しかも,その内容は,引用例の制限酵素
地図に反するものであるから,引用例の著者らは,引用例とは無関係に,上記OM
PFのアミノ酸配列等の登録をしたものであり,ひいては,引用例において発現さ
れたタンパク質は,OMPFではなかった旨主張する。
(ア)そこで,引用例の著者らによるOMPFのアミノ酸配列等のNCBIへの
登録の経過についてみるに,甲3検索結果及び甲18ないし甲22検索結果には,
以下の各記載がある。
a甲18検索結果及び甲19検索結果(以下,これらに係るNCBIへの登録
を「1992年の登録」という。)
(a)甲19検索結果(アミノ酸配列)
「1:151409.報告・・・[gi:151409]この記録は中断された。
・・・
ローカス151409350アミノ酸直線状1992年5月19日
定義oprF
受入番号
バージョンGI:151409
出典データベースローカスPSEOPRFB受入番号M94078
・・・
引用文献1(サイト)
著者Duchene,M.・・・
タイトルSequenceandtranscriptionalstartsiteofthePseudomonas
aeruginosaoutermembraneporinproteinFgene(判決注:後記甲5論文
である。)
ジャーナルJ.Bacteriol.170,155-162(1988)
・・・
引用文献2(サイト)
著者・・・Woodruff,W.・・・
タイトルConservationoftheGeneforOuterMembraneProteinOprFinthe
FamilyPseudomonadaceae:SequenceofthePseudomonassyringaeoprF
Gene(判決注:後記甲17論文である。)
ジャーナルJ.Bacteriol.173,768-775(1991)
・・・
引用文献3(1から350残基)
著者・・・Hancock,R.E.・・・
タイトルPseudomonasaeruginosaoutermembraneproteinOprF,proteinchemical
andimmunochemicalstudies
ジャーナル未発表(1992)
コメント以前に報告されたP.aeruginosaからの配列(P13794,J.
Bacteriol.170巻155頁から162頁まで(1988年)(判決
注:後記甲5論文である。)において公表)はセロタイプ12からであ
った。セロタイプ12の制限パターンは他の16のセロタイプとは異な
る(J.Bacteriol.173巻768頁から775頁まで(1991年)
(判決注:後記甲17論文である。))。ここで報告された配列(M9
4078)はセロタイプ5である。
方法:概念上の翻訳
特性・・・
供給源1..350
/生物=“Pseudomonasaeruginosa”
/菌株=“PAO1”
/db_xref=“分類群:287”
タンパク質1..350
/機能=“主要な外部膜タンパク質”
/名称=“oprF”
・・・
コード1..350
/遺伝子=“oprF”
/“M94078:71..1123”によってコードされる
/transl_table=11」
(b)甲18検索結果(DNA配列)
「1:M94078.報告・・・[gi:151408]この記録はAF027290
に差し替えられた
・・・
ローカスPSEOPRFB1449塩基対DNA直線状BCT
1992年5月19日
定義PseudomonasaeruginosaOprF遺伝子,全長のコード
受入番号M94078
バージョンM94078GI:151408
・・・
引用文献1(サイト)
著者Duchene,M.・・・
タイトルSequenceandtranscriptionalstartsiteofthePseudomonas
aeruginosaoutermembraneporinproteinFgene(判決注:後記甲5論文
である。)
ジャーナルJ.Bacteriol.170,155-162(1988)
・・・
引用文献2(サイト)
著者・・・Woodruff,W.・・・
タイトルConservationoftheGeneforOuterMembraneProteinOprFinthe
FamilyPseudomonadaceae:SequenceofthePseudomonassyringaeoprF
Gene(判決注:後記甲17論文である。)
ジャーナルJ.Bacteriol.173,768-775(1991)
・・・
引用文献3(1から1449塩基)
著者・・・Hancock,R.E.・・・
タイトルPseudomonasaeruginosaoutermembraneproteinOprF,proteinchemical
andimmunochemicalstudies
ジャーナル未発表(1992)
コメント[注意]1998年11月20日,この配列は新しいバージョンgi:
2625003に差し替えられた。
原文:Pseudomonasaeruginosa(菌株PAO1)DNA
以前に報告されたP.aeruginosaからの配列(P13794,J.
Bacteriol.170巻155頁から162頁まで(1988年)(判決
注:後記甲5論文である。)において公表)はセロタイプ12からであ
った。セロタイプ12の制限パターンは他の16のセロタイプとは異な
る(J.Bacteriol.173巻768頁から775頁まで(1991年)
(判決注:後記甲17論文である。))。ここで報告された配列(M9
4078)はセロタイプ5である。
特性・・・
供給源1..1449
/生物=“Pseudomonasaeruginosa”
/mol_type=“ゲノミックDNA”
/菌株=“PAO1”
/db_xref=“分類群:287”
・・・
コード71..1123
/遺伝子=“oprF”
/機能=“主要な外部膜タンパク質”
/コドン開始=1
/transl_table=11
/タンパク質id=“151409”
/db_xref=“GI:151409”」
b甲20検索結果及び甲21検索結果(以下,これらに係るNCBIへの登録
を「1998年の登録」という。)
(a)甲21検索結果(アミノ酸配列)
「1:AAD11568.報告・・・[gi:2625007]この記録は41864
19に差し替えられた
・・・
ローカス26250074アミノ酸直線状BCT1997年1
1月20日(判決注:『1998年11月20日』の誤登録と認められ
る。)
定義主要な外部膜タンパク質OprF[Pseudomonasaeruginosa]
受入番号
バージョンGI:2625007
出典データベースローカスAF027290受入番号AF027290
・・・
引用文献1(1から4残基)
著者・・・Hancock,R.E.W.・・・
タイトルRelationshipbetweenaproposednovelECFsigmafactorandtheouter
membraneproteinOprF,inPseudomonasaeruginosaandPseudomonas
fluorescens
ジャーナル未発表
引用文献2(1から4残基)
著者・・・Hancock,R.E.W.
タイトル直接投稿
ジャーナル1997年9月24日投稿,微生物学・免疫学部,ブリティッシュコロ
ンビア大学・・・
コメント[注意]1999年1月26日,この配列は新しいバージョンgi:4
186419に差し替えられた。
方法:著者によって与えられた概念上の翻訳
特性・・・
供給源1..4
/生物=“Pseudomonasaeruginosa”
/菌株=“PAO1”
/db_xref=“分類群:287”
/注記=“実験室での菌株名:H103;重複プラスミドpWW1401,pWW1901,
pWW1701,及びpWW2300から配列が得られた”
タンパク質1..>4
/生成物=“主要な外部膜タンパク質OprF”
コード1..4
/遺伝子=“oprF”
/“AF027290:3020..>3031”によってコードされる
/注記=“外部膜タンパク質;ポリン;GenBank受入番号M94
078のoprFの全配列を参照”
/transl_table=11」
(b)甲20検索結果(DNA配列)
「1:AF027290.報告・・・[gi:2625003]この記録は41864
17に差し替えられた
・・・
ローカスAF0272903031塩基対DNA直線状BCT
1998年11月20日
定義Pseudomonasaeruginosaの推定細胞膜付随タンパク質,推定細胞膜タン
パク質,及び推定細胞外液シグマ因子X(sigX),全長コード;主
要な外部膜タンパク質OprF(oprF)遺伝子,部分コード
受入番号AF027290M94078
バージョンAF027290GI:2625003
・・・
引用文献1(1から3031塩基)
著者・・・Hancock,R.E.W.・・・
タイトルRelationshipbetweenaproposednovelECFsigmafactorandtheouter
membraneproteinOprF,inPseudomonasaeruginosaandPseudomonas
fluorescens
ジャーナル未発表
引用文献2(1から3031塩基)
著者・・・Hancock,R.E.W.
タイトル直接投稿
ジャーナル1997年9月24日投稿,微生物学・免疫学部,ブリティッシュコロ
ンビア大学・・・
コメント[注意]1999年1月26日,この配列は新しいバージョンgi:4
186417に差し替えられた。
1998年11月20日,この配列バージョンはgi:151408か
ら差し替えられた。
特性・・・
供給源1..3031
/生物=“Pseudomonasaeruginosa”
/mol_type=“ゲノミックDNA”
/菌株=“PAO1”
/db_xref=“分類群:287”
/注記=“実験室での菌株名:H103;重複プラスミドpWW1401,pWW1901,
pWW1701,及びpWW2300から配列が得られた”
コード121..1119
/注記=“OrfU1;主要な細胞質;カルボニル末端に二つの膜透過
αヘリックスを含み,これにより細胞膜に固定される;そのカルボニル
末端は大腸菌のマグネシウム/コバルト運搬タンパク質CorAに似て
おり,全長の長さはGenBankの受入番号AE000232によっ
てコードされる未同定大腸菌ORFo327に似ている”
/コドン開始=1
/transl_table=11
/生成物=“推定細胞膜付随タンパク質”
/タンパク質id=“2625004”
/db_xref=“GI:2625004”
・・・
コード1425..2249
/注記=“OrfU2;少なくとも5個の膜透過ドメインを含む”
/コドン開始=1
/transl_table=11
/生成物=“推定細胞膜タンパク質”
/タンパク質id=“2625005”
/db_xref=“GI:2625005”
・・・
遺伝子2438..2911
/遺伝子=“sigX”
コード2438..2911
/遺伝子=“sigX”
/注記=“細胞外因子ファミリーに属する他の細胞外液シグマ因子に似
ている;代わりの可能性があるGTG開始点はヌクレオチド位置241
4;この遺伝子を破壊するとOprFの発現が減少する”
/コドン開始=1
/transl_table=11
/生成物=“推定細胞外液シグマ因子X”
/タンパク質id=“2625006”
/db_xref=“GI:2625006”
・・・
遺伝子3020..>3031
/遺伝子=“oprF”
コード3020..>3031
/遺伝子=“oprF”
/注記=“外部膜タンパク質;ポリン;GenBank受入番号M94
078のoprFの全配列を参照”
/コドン開始=1
/transl_table=11
/生成物=“主要な外部膜タンパク質OprF”
/タンパク質id=“2625007”
/db_xref=“GI:2625007”」
c甲3検索結果及び甲22検索結果(以下,これらに係るNCBIへの登録を
「1999年の登録」といい,1992年の登録及び1998年の登録と併せて
「本件各登録」という。)
(a)甲3検索結果(アミノ酸配列)
「1:AAD11568.主要な外部膜・・・[gi:4186419]
ローカスAAD11568350アミノ酸BCT1999年8月1
9日
定義主要な外部膜タンパク質OprF前駆体[Pseudomonasaeruginosa]
受入番号AAD11568
PIDg4186419
バージョンAAD11568.1GI:4186419
出典データベースローカスAF027290受入番号AF027290.1
・・・
引用文献1(1から350残基)
著者・・・Hancock,R.E.W.
タイトル直接投稿
ジャーナル1999年1月26日投稿微生物学・免疫学部,ブリティッシュコロ
ンビア大学・・・
注釈配列は投稿者により更新された
コメント1999年1月26日,gi:2625007はこの配列バージョンに
差し替えられた。
方法:著者によって与えられた概念上の翻訳
特性・・・
供給源1..350
/生物=“Pseudomonasaeruginosa”
/菌株=“PAO1”
/セロタイプ=“5”
/db_xref=“分類群:287”
/注記=“実験室での菌株名:H103;重複プラスミドpWW1401,pWW1901,
pWW1701,及びpWW2300,並びにpRW5から配列が得られた”
タンパク質1..350
/生成物=“主要な外部膜タンパク質OprF前駆体”
sigペプチド1..71
matペプチド72..350
/生成物=“外部膜タンパク質OprF”
コード1..350
/遺伝子=“oprF”
/“AF027290.1:3020..4072”によりコードされる
/transl_table=11
/注記=“ポリンF;外部膜タンパク質F」
(b)甲22検索結果(DNA配列)
「1:AF027290.報告Pseudomonasaerug・・・[gi:4186417]
・・・
ローカスAF0272904398塩基対DNA直線状BCT
1999年8月19日
定義Pseudomonasaeruginosaの推定細胞膜付随タンパク質(cmaX),仮
定的タンパク質,推定細胞膜タンパク質(cmpX),推定細胞外液シ
グマ因子X(sigX),及び主要な外部膜タンパク質OprF前駆体
(oprF)遺伝子,全長コード
受入番号AF027290M94078
バージョンAF027290.1GI:4186417
・・・
引用文献1(2950から4398塩基)
著者Duchene,M.・・・
タイトルSequenceandtranscriptionalstartsiteofthePseudomonas
aeruginosaoutermembraneporinproteinFgene(判決注:後記甲5論文
である。)
ジャーナルJ.Bacteriol.170(1),155-162(1988)
・・・
引用文献2(2950から4398塩基)
著者・・・Woodruff,W.・・・
タイトルConservationofthegeneforoutermembraneproteinOprFinthe
familyPseudomonadaceae:sequenceofthePseudomonassyringaeoprF
gene(判決注:後記甲17論文である。)
ジャーナルJ.Bacteriol.173(2),768-775(1991)
・・・
引用文献3(2950から4398塩基)
著者・・・HancockR.E.
タイトルConservationofsurfaceepitopesinPseudomonasaeruginosaouter
membraneporinproteinOprF
ジャーナルFEMSMicrobiol.Lett.113(3),261-266(1993)
・・・
引用文献4(1から3031塩基)
著者・・・HancockR.E.・・・
タイトルInfluenceofaputativeECFsigmafactoronexpressionofthemajor
outermembraneprotein,OprF,inPseudomonasaeruginosaand
Pseudomonasfluorescens
ジャーナルJ.Bacteriol.181(16),4746-4754(1999)
・・・
引用文献5(2950から4398塩基)
著者Hancock,R.E.
タイトル直接投稿
ジャーナル1993年4月26日投稿微生物学・免疫学部,ブリティッシュコロ
ンビア大学・・・
引用文献6(1から3031塩基)
著者・・・Hancock,R.E.W.
タイトル直接投稿
ジャーナル1997年9月24日投稿微生物学・免疫学部,ブリティッシュコロ
ンビア大学・・・
引用文献7(1から4398塩基)
著者・・・Hancock,R.E.W.
タイトル直接投稿
ジャーナル1999年1月26日投稿微生物学・免疫学部,ブリティッシュコロ
ンビア大学・・・
注釈配列は投稿者により更新された
コメント1999年1月26日,この配列バージョンはgi:2625003か
ら差し替えられた。
特性・・・
供給源1..4398
/生物=“Pseudomonasaeruginosa”
/mol_type=“ゲノミックDNA”
/菌株=“PAO1”
/セロタイプ=“5”
/db_xref=“分類群:287”
/注記=“実験室での菌株名:H103;重複プラスミドpWW1401,pWW1901,
pWW1701,及びpWW2300,並びにpRW5から配列が得られた”
遺伝子121..1119
/遺伝子=“cmaX”
コード121..1119
/遺伝子=“cmaX”
/注記=“主要な細胞質;カルボニル末端に二つの膜透過αヘリックス
を含み,これにより細胞膜に固定される;そのカルボニル末端は大腸菌
のマグネシウム/コバルト運搬タンパク質CorAに似ており,全長の
長さはGenBankの受入番号AE000232によってコードされ
る未同定大腸菌ORFo327に似ている”
/コドン開始=1
/transl_table=11
/生成物=“推定細胞膜付随タンパク質”
/タンパク質id=“AAD11565.1”
/db_xref=“GI:2625004”
・・・
コード1174..1422
/コドン開始=1
/transl_table=11
/生成物=“仮定的タンパク質”
/タンパク質id=“AAD11569.1”
/db_xref=“GI:4186420”
・・・
遺伝子1425..2249
/遺伝子=“cmpX”
コード1425..2249
/遺伝子=“cmpX”
/注記=“少なくとも5個の膜透過ドメインを含む”
/コドン開始=1
/transl_table=11
/生成物=“推定細胞膜タンパク質”
/タンパク質id=“AAD11566.1”
/db_xref=“GI:2625005”
・・・
遺伝子2321..2911
/遺伝子=“sigX”
コード2321..2911
/遺伝子=“sigX”
/推定=“実験で得られた証拠はない,追加の詳細な記録はない”
/注記=“細胞外因子ファミリーに属する他の細胞外液シグマ因子に似
ている;この遺伝子を破壊するとOprFの発現が減少する”
/コドン開始=1
/transl_table=11
/生成物=“推定細胞外液シグマ因子X”
/タンパク質id=“AAD11567.1”
/db_xref=“GI:4186418”
・・・
コード3020..4072
/遺伝子=“oprF”
/注記=“ポリンF;外部膜タンパク質F”
/コドン開始=1
/transl_table=11
/生成物=“主要な外部膜タンパク質OprF前駆体”
/タンパク質id=“AAD11568.1”
/db_xref=“GI:4186419”」
dなお,甲19検索結果,甲21検索結果(ただし,冒頭の4アミノ酸残基の
みである。)及び甲3検索結果に記載されたOMPFのアミノ酸配列は,すべて同
一のものであり,また,甲18検索結果(71塩基ないし1123塩基),甲20
検索結果(3020塩基以降。ただし,冒頭の12塩基のみである。)及び甲22
検索結果(3020塩基ないし4072塩基)に記載されたOMPF遺伝子のDN
A配列は,すべて同一のものである。
(イ)次に,1992年の登録(同年5月19日)前に執筆された引用例の著者
らの学術論文の記載についてみるに,乙18(甲60)論文(1988(昭和6
3)年6月発行の「JOURNALOFBACTERIOLOGY」170巻6号の2592頁から25
98頁までに掲載されたWendyA.Woodruff及びRobertE.W.Hancockによる
「ConstructionandCharacterizationofProteinPseudomonasaeruginosa
F-DeficientMutantsafterInVitroandInVivoInsertionMutagenesisofthe
ClonedGene」と題する論文。以下「乙18論文」という。)及び乙17論文には,
以下の各記載がある。
a乙18論文(なお,乙18論文中の引用文献「34」とは,引用例である
(乙18論文原文2598頁左欄下から6∼3行参照)。)
「表1.菌株,プラスミド及びバクテリオファージ
株又はプラスミド特徴由来又は引用文献
・・・・・・・・・
プラスミド
・・・・・・・・・
pWW13遺伝子を含む11kbRIフラグメント34oprFEco
を有するpLAFr1
・・・・・・・・・
pWW2200遺伝子を含むpWW13由来の2.5kbIこの研究oprFPst
フラグメントを挿入したpRK404
・・・・・・・・・
pWW2300pWW2200由来のI-Iフラグメントを有するpUC18この研究PstSal
・・・・・・・・・
」(乙18・1頁の表部分)
b乙17論文(1992(平成4)年1月28日原稿受領。なお,乙17論文
中の引用文献「(38)」とは,乙18論文であり(乙17論文原文4985頁右欄1
1∼14行参照。当該部分に記載された乙18論文の表題は,誤記であると認めら
れる。),引用文献「(40)」とは,引用例である(乙17論文原文4985頁右欄
下から7∼4行参照。当該部分に記載された引用例の表題は,誤記であると認めら
れる。)。)
「プラスミドpWW2200がインタクトな遺伝子を発現し(38),pWW5が短縮型の生産物oprF
を発現する(40)ことは,以前に記述されている。・・・プラスミドpWW1901及びpWW1602は,プ
ラスミドpWW13(40)由来の3.0及び1.2kbpのIフラグメントを,プラスミドベクタSal
ーpUC8にサブクローニングすることにより得られた(20)。」(1頁5∼8行)
(ウ)上記(ア)及び(イ)のとおり,引用例の著者らは,1992年の登録の際,既
に,OMPFのアミノ酸配列等の全長について,1999年の登録の際に提出した
ものと同一の配列を提出していたこと,本件各登録の際に提出された配列は,いず
れも,のPAO1株を供給源とするものであること,1998年の登録P.aeruginosa
及び1999年の登録については,いずれも,供給源欄中の注記欄に重複プラスミ
ドpWW1401,pWW1901,pWW1701,pWW2300等から配列が得られた旨の記載があるとこ
ろ,うちpWW1901及びpWW2300は,引用例においてサブクローニングされたpWW13に
由来するプラスミドであること,1992年の登録の際に提出されたDNA配列は,
OMPFをコードする遺伝子全長のDNA配列を明らかにすることに主眼を置いた
ものであったのに対し,1998年の登録及び1999年の登録の際に提出された
各DNA配列は,OMPFをコードする遺伝子のDNA配列の前(上流側)に存在
するの推定細胞膜付随タンパク質等に係る遺伝子のDNA配列を明P.aeruginosa
らかにすることに主眼を置いたものであったと考えられることなどの事実に照らせ
ば,引用例の著者らは,1992年の登録の際,既に,引用例においてサブクロー
ニングされたpWW13に基づき,OMPFのアミノ酸配列等の各全長につき正しい結
論を得ていたものといえるから,本件各登録の経緯をもって,引用例の著者らが,
引用例におけるOMPF及びその遺伝子のクローニング又はサブクローニングとは
独立して本件各登録を行ったものとみることはできず,ひいては,本件各登録の経
緯から,引用例において発現されたタンパク質がOMPFでなかったということは
できない。
(エ)a原告は,1992年の登録に係るOMPF遺伝子のDNA配列から導き
出される制限酵素認識部位が,引用例の図4に示された制限酵素認識部位と矛盾す
ると主張するが,引用例における制限酵素認識部位(制限酵素地図)の誤りが,引
用例において発現されたタンパク質がのPAO1株に由来するOMPFP.aeruginosa
であったとの前記(1)の認定を覆すに足りないことは,前記アにおいて詳論したと
おりであるところ,その理は,本件各登録の経緯及びその内容を理由とする原告の
主張についてもそのまま当てはまるものであるから,原告の上記主張は理由がない。
b原告は,①甲18検索結果の供給源欄にプラスミドの記載がないこと,②引
用例の著者らは,1998年の登録によって1992年の登録に係る配列情報をい
ったん削除したといえること,③甲19検索結果に「この記録は中断された。」と
の記載があることから,引用例の著者らは,1992年の登録に係るOMPFのア
ミノ酸配列等とは別個独立の情報として,1998年の登録に係るOMPFのアミ
ノ酸配列等を提出したものと考えられると主張する。
(a)確かに,前記(ア)a(b)のとおり,甲18検索結果の供給源欄には,プラス
ミドの記載がないが,他方で,当然ながら,甲20検索結果や甲22検索結果の供
給源欄に記載されているプラスミドと異なるプラスミドが記載されているわけでは
ない。そして,前記(ア)dのとおり,甲18検索結果,甲20検索結果(ただし,
配列の一部)及び甲22検索結果に記載されたOMPF遺伝子のDNA配列は同一
のものであるし,また,前記(ア)b(b)のとおり,供給源欄にプラスミドの記載のあ
る甲20検索結果には,OMPF(oprF)遺伝子のコード欄に,「注記」とし
て,「外部膜タンパク質;ポリン;GenBank受入番号M94078のopr
Fの全配列を参照」との記載(ここでいう「受入番号M94078」とは,甲18
検索結果に係るものである。)があるのであるから,甲18検索結果の供給源欄に
プラスミドの記載がないことをもって,1998年の登録に係る配列情報が199
2年の登録に係る配列情報と別個独立のものであるとみることはできない。
(b)また,上記(a)の各事情に加え,前記(ウ)のとおり,1992年の登録の際
に提出されたDNA配列は,OMPFをコードする遺伝子全長のDNA配列を明ら
かにすることに主眼を置いたものであったのに対し,1998年の登録及び199
9年の登録の際に提出された各DNA配列は,OMPFをコードする遺伝子のDN
A配列の前(上流側)に存在するの推定細胞膜付随タンパク質等にP.aeruginosa
係る遺伝子のDNA配列を明らかにすることに主眼を置いたものであったと考えら
れることをも併せ考慮すると,引用例の著者らが,1998年の登録により,19
92年の登録に係る配列情報をいったん削除したとみることはできない。
(c)さらに,上記(a)及び(b)の各事情に照らせば,甲19検索結果に「この記
録は中断された。」との記載があることをもって,1998年の登録に係る配列情
報が1992年の登録に係る配列情報と別個独立のものであるとみることはできな
い。
(d)以上のとおりであるから,原告の上記主張は理由がない。
c原告は,仮に,引用例の著者らが,引用例において単離したプラスミドにO
MPF遺伝子が含まれていると考えていたならば,本件各登録においても,引用例
を引用したはずであると主張する。
これに対し,被告は,引用文献の掲載はNCBI側が決定する事項である旨主張
する。
登録すべき引用文献をNCBI側が決定するのか,登録を求める側が決定するの
かは,証拠上明らかではないが,仮に,後者であるとしても,前記ア(イ)c及び前
記(イ)bのとおり,引用例の著者らは,1992年の登録前に乙17論文を執筆し,
その中で,引用例pWW5が中間領域を欠失したものであることを論じているところ,
前記ア(エ)dのとおり,引用例pWW5の内容についての誤りは,全長プラスミドであ
るpHN4及びpWW13の制限酵素地図の内容を根本から誤らせるものと認められるから,
引用例の著者らが,そのような事実が判明した後である1992年の登録の際に引
用例を引用しないのは,当然のことといえる。
したがって,原告の上記主張は,いずれにせよ失当である。
d原告は,引用例の発表後,1999年の登録まで10年以上(1992年の
登録までであっても約6年)という長期間を要しているという事実は,引用例にお
いて発現されたタンパク質がOMPFでなかったことを裏付けると主張する。
しかしながら,まず,前記(ウ)のとおり,引用例の著者らは,1992年の登録
の際,既に,OMPFのアミノ酸配列等の全長について,1999年の登録の際に
提出したものと同一の配列を提出しており,また,引用例の著者らが,引用例にお
けるOMPF及びその遺伝子のクローニング又はサブクローニングとは独立して本
件各登録を行ったものとみることはできないから,引用例の発表後,NCBIへの
配列登録まで10年以上が経過したとの原告の主張は,その前提を欠くものとして
失当である。
また,引用例の発表から1992年の登録まで約6年の期間が経過していること
についても,前記(ウ)のとおり,引用例の著者らは,引用例においてサブクローニ
ングされたpWW13に基づき,OMPFのアミノ酸配列等の各全長につき正しい結論
を得たのであるから,かかる期間の経過は,引用例において発現されたタンパク質
がOMPFであったとの前記(1)の認定を左右するものではない。
e原告は,仮に,引用例の著者らが,PAO1株のOMPF遺伝子のDNA配列を
1992年5月19日にNCBIに登録し,その後は一貫してPAO1株のOMPF遺
伝子について同じDNA配列を提出していたとしても,引用例の著者らが,同日以
降,引用例とは無関係に,OMPFのアミノ酸配列等を決定したことに変わりはな
いと主張するが,原告の主張は,証拠に基づく合理的な根拠を欠き,単なる推測を
述べるにとどまるものであるから,これを採用することはできない。
(オ)小括
以上のとおりであるから,本件各登録の経緯及びその内容を根拠に,引用例にお
いて発現されたタンパク質がOMPFでない旨をいう原告の主張は,理由がない。
ウOMPFを構成するアミノ酸の個数に関する引用例の著者らの認識(取消事
由1の(4))について
原告は,OMPFを構成するアミノ酸につき,引用例の著者らが認識していた個
数は約410であり,実際の個数(350)と異なることを理由に,引用例におい
て発現されたタンパク質はOMPFでなかったと主張する。
確かに,引用例には,「天然のタンパク質Fにおける約410アミノ酸」との記
載(477頁右欄10∼11行)がある。
しかしながら,前記(1)のとおり,引用例においては,発現させたタンパク質を
構成するアミノ酸の個数の絶対値を測定し,これが約410であるからOMPFと
同定することができると結論付けたのではなく,モノクローナル抗体に対する反応,
SDSゲル電気泳動法における挙動及びタンパク質の熱変更性において,発現させ
たタンパク質が天然のOMPFと同様の結果を示したこと,すなわち,発現させた
タンパク質が天然のOMPFとの比較において同様の結果を示したことから,発現
させたタンパク質をOMPFと同定したものである。したがって,引用例の著者ら
が天然のOMPFを構成するアミノ酸の個数を誤解していたとしても,引用例にお
いて発現されたタンパク質がOMPFであるとの前記(1)の認定を左右するもので
はない。
なお,付言するに,本願明細書に次の各記載があることからすると,引用例の著
者らが引用例に記載された研究を行っていた当時,OMPFのアミノ酸配列等は研
究者らに明らかとなっておらず,したがってまた,OMPFを構成するアミノ酸の
個数も正しく認識されていなかったものと認められるから,引用例の著者らが天然
のOMPFを構成するアミノ酸の個数を誤解していたからといって,引用例に記載
された研究がずさんなものであるなどと即断するのは相当でない。
(ア)「W.A.ウッドラフ等(W.A.Woodruffetal.,J.Bacteriol,167(1986)473-479)は詳
細には規定されていないP.アエルギノザPAO1を出発菌株として用いるE.コリ(E.
coli)中における外部膜タンパク質F(OMPF,ポリンF)の発現を記載している。クロー
ン化されたDNA配列は極めて大雑把な制限酵素地図によってのみ特性化されているにすぎず,
DNA配列或はアミノ酸部分配列は述べられて・・・いない。」(段落【0003】)
(イ)「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は,シュードモナス・アエルギノザの
外部膜タンパク質F,それをコードするDNA・・・を提供することにある。」(段落【00
04】)
(ウ)「【課題を解決するための手段】本発明によれば,表1に示したアミノ酸配列を有する
シュードモナス・アエルギノザ(Pseudomonasaeruginosa)の外部膜タンパク質F(OMP
F)が提供される。」(段落【0005】)
(エ)「本発明によれば,OMPFをコード化し,表1に示されたDNA配列(コード化鎖)
を有するDNAが提供される。」(段落【0007】)
エ引用例において単離されたDNAによってコードされるタンパク質と,その
後に引用例の著者の1人が単離したDNAによってコードされるタンパク質の機能
(チャネル伝導度)(取消事由1の(5))について
原告は,引用例において単離されたDNAによってコードされるタンパク質のチ
ャネル伝導度と,その後に引用例の著者の1人が甲11論文において単離したDN
Aによってコードされるタンパク質のチャネル伝導度及び更にその後に頒布された
甲24論文(2006(平成18)年6月16日発行の「TheJOURNALOF
BIOLOGICALCHEMISTRY」281巻24号の16230頁から16237頁までに掲
載されたSergeyM.Bezrukovらによる「PorinOprF:Pseudomonasaeruginosa
PROPERTIESOFTHECHANNEL」と題する論文)に記載されたOMPFのチャネル伝導
度とが異なることから,引用例において発現されたタンパク質はOMPFでないと
主張する。
(ア)そこでまず,上記各論文の内容をみることとする。
a引用例には,以下の各記載がある(なお,前記(1)ア(キ)ないし(ケ)の各記載
を再掲する部分がある。)。
(a)「クローニング後にポリン機能が保持されていることを実証するために,上記の大腸菌
クローンに由来するタンパク質Fを,黒膜二重層中に組み込んだ。2種類の主要なチャネルが,
明らかにされた。優勢な種類のチャネルは,1MKCl中で平均伝導度0.36nSを有し
た。一方,それよりも大きなチャネル(4nS∼7nS)が,それよりも低頻度で観察され
た。」(473頁要約(「のポリンタンパク質Fをコードする遺伝子Pseudomonasaeruginosa
を,」で始まる段落)下から5∼2行)
(b)「大腸菌JF733(pHN4)(図5)または(データは示さない)のいずれかにP.aeruginosa
由来する少量(0.6ng/ml)の電気溶出済みタンパク質Fを,黒膜二重層を入れている
塩水溶液(1MKCl)中に添加すると,伝導度の段階的増加が生じた。他の脂質二重層の
実験結果から類推して,これらの伝導度の増加は,タンパク質Fの単一チャネル形成単位がこ
の膜中に段階的に組み込まれることを伴った。
使用した最低濃度(0.6ng/ml)において,高感度に設定した機器を使用すると,小
さなチャネルの組み込みが,主に観察された(図6A及び図6B)。測定された伝導度の増加
の確率棒グラフ(図6)および1MKCl中での単一チャネルの平均伝導度(0.34nS
∼0.38nS)は,または上記の完全なクローン化タンパク質F遺伝子を保有P.aeruginosa
する大腸菌株のいずれかから単離されたタンパク質Fについて,同様であった。
より高濃度(7ng/ml)の大腸菌由来のタンパク質Fを使用し,上記機器を,より低感
度(その条件よりも下では,図5において観察されたチャネルは測定されない)に設定すると,
より大きな伝導度段差が観察された(データは示さない)。一連の実験において,測定された
大きなチャネルのうちの約65%は,4nSよりも大きな(のタンパク質FにつP.aeruginosa
いて以前に報告された(3)のものと同様の大きさ)単一チャネル伝導度を有した。」(476
頁右欄下から4行∼477頁左欄20行)
(c)「大腸菌クローン(pHN4)およびから電気溶出したタンパク質FについてP.aeruginosa
の機能研究により,極めて類似する特性が明らかになった(図6)。しかしながら,主要なチ
ャネルが小さな伝導度を有したことの実証は,大きなタンパク質Fチャネルの存在を証明した
以前のモデル膜データ(3,24,25,33)に鑑みると,意外であった。」(477頁右欄下から1
1∼6行)
(d)「本論文に記載されたデータは,タンパク質Fチャネルの大多数は,機能しないのでは
なく,むしろ小さい(1MKClにおける平均の単一チャネル伝導度0.36nS)という
ことを示唆する。・・・これらの小さな単一チャネル事象は,タンパク質Fのチャネルサイズ
が5.6nSであると報告したBenz及びHancock(3)によっては観察され得なかった。」(47
8頁10∼18行)
(e)「図6.脂質二重膜を入れた1MのKCl水溶液に,PAO1(A)または大P.aeruginosa
腸菌JF733(pHN4)(B)由来の精製ポリンタンパク質Fを添加した後に観察された伝導度の
段差の棒グラフ。・・・棒グラフの形状に基づいて,0.6nS未満のチャネルを選択し,0.
38nS(タンパク質F;92事象の平均)および0.34nS(大腸菌由来のP.aeruginosa
タンパク質F;197事象の平均)という平均単一チャネル伝導度を測定した。おそらく,約
0.7nS∼0.8nSにおける他の伝導度増加ピークは,同時に膜に入っている2つのチャ
ネルを表している。」(477頁右欄図6脚注1∼10行)
(f)「引用文献
・・・
3.Benz,R.,andR.E.W.Hancock.1981.Propertiesofthelargeion-permeableporesfrom
proteinFofinlipidbilayermembranes.Biochim.BiophysActa646:Pseudomonasaeruginosa
298-308.」(原文478頁右欄5∼17行。以下,引用文献としてここに掲げられた論文を
「ハンコックらの1981年論文」という。)
b甲11論文には,以下の各記載がある(なお,甲11論文中の引用文献
「Benz及びHancock,1981年」とは,ハンコックらの1981年論文であり
(甲11論文原文86頁7∼10行参照),同「Woodruffら,1986年」とは,
引用例である(甲11論文原文101頁下から10∼7行参照)。)。
(a)「Thesedata,forproteinFpurifiedfromH103andJF733P.aeruginosaE.coli
(pWW2200),areshowninFigure16.Forbothpreparations,predominantlysmallchannels
wereobservedatsimilarfrequencies.(HB103及び大腸菌JF733(pWW2200)かP.aeruginosa
ら精製されたタンパク質Fに係るデータを図16に示す。いずれの調製物においても,同様の
頻度で,小さなチャネルが主に観察された。)」(原文63頁15∼17行)
(b)「天然のタンパク質Fの単一チャネル伝導度の平均は0.41nSであり,クローニン
グされたタンパク質Fは,0.38nSであった。天然のタンパク質Fの調製物において,い
くつかのより大きなチャネルが観察された(観察された全チャネルの5.2%が,1.2nS
より大きかった。)。一つの実験では,観察されたチャネルの15%が,1.2∼4.0nS
の間であり,半分よりわずかに多い52%が,1.2∼2.0nSの間であった。クローニン
グされたタンパク質Fの調製物においては,観察された最大のチャネルは,3.4nSの伝導
度であった。1.2nSよりも大きいチャネルは,全体の6.8%の頻度で観察され,天然の
タンパク質Fで観察されたものと同様の結果であった。観察された1.2nSよりも大きいチ
ャネルの63パーセントが,1.2∼2.0nSの間であった。それにもかかわらず,その天
然のバックグラウンドから単離されたタンパク質Fについて,また,大腸菌におP.aeruginosa
けるクローニングされた遺伝子から単離されたタンパク質Fについても,観察されたoprF
チャネルの大多数は0.6nS未満であった。これらの観察は,精製されたタンパク質Fの平
均チャネル伝導度が5nSだと報告されていた従来公開された観察(Benz及びHancock,19
81年)に反している。」(乙20・1頁下から2行∼2頁13行)
(c)「本研究において,タンパク質Fについて,Parrによる予備的観察を確認し,生体にお
ける孔の機能を実証することを,試みた。およびJF733(pWW2200)由来P.aeruginosaE.coli
の精製タンパク質Fを,黒脂質二分子層システムにおいて試験した。Parrの結果と一致して
(Woodruffら,1986年),種々のチャンネルサイズが観察された。しかしながら,平均単
一チャンネル伝導度は,天然のタンパク質Fについて0.41nSであり,クローニングした
タンパク質Fについては,0.38nSであった。Parrの知見とは対照的に,観察されたチャ
ンネルのほんの5%のみが,1.2nSを超え,そして,4nSを超えるチャンネルは観察さ
れなかった。予備的研究よりも,本研究において,さらに多くのチャンネル事象をモニターし
た。黒脂質二分子層のデータは,タンパク質Fが孔を形成することを示した。この研究の結果
は,形成されるチャンネルが非常に小さいことを示す。黒脂質二分子層のデータを,MICの
結果と組み合わせると,タンパク質Fの実際のサイズは,小さい,抗生物質不透過性の0.4
nSチャンネルであるという可能性を考えなければならない。」(原告から提出された2種類
の抄訳文のうち,「[甲11追加抄訳]」と題するもの(以下「甲11追加抄訳」という。)
・1丁下から26∼13行)
c甲24論文には,以下の各記載がある(なお,甲24論文中の引用文献
「(6)」とは,ハンコックらの1981年論文であり(甲24論文原文16237
頁右欄下から38行参照),同「(7)」とは,引用例である(甲24論文原文16
237頁右欄下から37∼36行参照)。)
(a)「のOprFは,2つの異なる高次構造・・・,すなわち,稀なPseudomonasaeruginosa
単一ドメイン型および主要なものである2ドメイン型で存在することが示された・・・。単一
ドメイン型が激減している画分について,著者らは,十分に規定された伝導度レベルを有する
チャネルの形成を検出することができなかった。・・・しかし,OprFの単一ドメインに富
んだ画分について,著者らは,高い再現性の伝導度を有するチャネルの規則的な挿入を観察し
た。単一のOprFチャネルは,イオン伝導度,および,高分子排除実験・・・において測定
される半径において差異がある数個の副次的高次構造・・・の間で,自発的な遷移を示す動力
学的挙動に富んでいることを示す。著者らは,最も伝導度の高い高次構造における有効半径が,
大腸菌のOmpFの一般的な外膜ポリンのものを上回ることを示したが,著者らはまた,単一
のOprFチャネルは,主として,弱伝導性の副次的高次構造で存在し,そして,ほんの少し
の間のみ,完全に開いた状態に切り替わることを見出した。従って,以前に報告されたOpr
Fの低い透過性は,主として,OprF集団において単一ドメイン型が不足していること,次
に,単一ドメイン型において弱伝導性の副次的高次構造が優勢であることの2つの要因による
ものであろう。」(原告から提出された2種類の抄訳文のうち,「[甲24抄訳]」で始まり最
終丁(5丁)が15行のもの(以下同じ。)1丁下から24∼3行)
(b)「BenzおよびHancockによる最初の研究(6)は,OprFを加えることで,大きな単一チ
ャネル伝導度(1MKClまたはNaClにおいて,数ナノジーメンス(nS))のチャネル
を生じ・・・ることが報告されている。しかし,・・・後の研究において,極めて異なる結論
が導かれてきた。こうして,Woodruffら(7)は,OprFが,伝導度が1MKClにおいて,
0.1∼1nSの範囲(平均0.36nS)である,大部分は『低分子』チャネルを生成する
ことを報告した。殆ど存在しないそれよりも大きなチャネルの存在についても言及しているも
のの,実際の電流の記録も,この知見を示すような伝導度のヒストグラムも,示されていなか
った。Brinkmanらによるつい最近の研究(8)において,0.2∼0.8nSの広い伝導度分布
を有する低分子チャネルが優勢であることが確認された。」(2丁16行∼下から5行)
(c)「平面状の二層の研究の多くは,現在,2つの完全に異なる型の混合物であることが知
られている(9),分画されていないOprFについて行なわれているので,著者らは,異なる
型を濃縮した調製物を用いて,OprFにより形成されるチャネルの特性をより詳細に調べる
ことを試みた。」(2丁下から2行∼3丁2行)
(d)「我々は,OprFで誘導される最小限の伝導度のレベルでその測定の殆どを行った。
・・・代表的には,チャネル挿入は,その膜伝導度の小刻みな段階的上昇,振幅の電位依存性
により明確であって,この電位依存的な振幅は,−150mVおよび150mVで,それぞれ,
約6pA及び8pA(40pS及び55pS)に対応する。これらの小さな電流のステップは,
・・・Lとして示した。low
OprFをシス側に加えてその膜にOprFチャネルを挿入することには,方向性がある・
・・。実際,負電圧では,低い伝導度レベル(L)が,常に,約140∼150pA(0.low
93∼1nS)の振幅の高い伝導度レベル(L)へ強力に変動する・・・。high
時間分解した数個の変動事象を,20μsの時間分解能で図4の中央の2つのプロットで示
した。・・・興味深いことに,高伝導度変動の時間分解した事象のうちのいくつかは,振幅5
0∼70pA(0.3∼0.47nS)を伴う中間の伝導度レベル(L)を有していintermediate
る。」(3丁下から11行∼4丁9行)
(e)「我々の分析から,図4における電流の記録が,1種のみのOprFチャネルを示すも
のであり,2つ以上の異なるチャネルの重ね合わせを示すものではないことが示唆される。実
際,このチャネルは,常に,ゼロから低伝導度レベルとなり,その後に限ってより高いレベル
へと上がるステップとして出現する。さらに,負電圧,数秒の間隔での観察では,高い伝導度
レベル(L)のみを示すチャネル,または低い伝導度レベル(L)のみを示すチャネルはhighlow
観察されなかった。・・・OprFチャネルは,2つの伝導度レベルの間で変動するが,その
変動する周波数は,チャネルごとで変化し,いくつかのチャネルについては,時間依存的であ
る。この場合,高伝導度レベルへの変動は,相対的に変化のない短い時間区間によって区切ら
れる数秒間のバーストとして群発した。」(4丁12∼22行)
(f)「Brinkman(8)reportthemostfrequentOprFchannelconductanceof0.36nS.etal.
Thisisveryclosetotheamplitudeoffluctuationsbetweenthelowandintermediatelevels
ofthesinglechannelsubstatesfoundinthepresentstudy.(Brinkmanら(8)は,チャネル伝
導度0.36nSを有するOprFが最も頻繁に観察されたと報告している。これは,この研
究で見られた単一チャネルの低レベル状態と中間レベル状態との間の変動の振幅に非常に近
い。)」(原文16237頁左欄30∼33行)
また,図6Bには,低レベル(L)の伝導度として0.039±0.014low
(=0.025∼0.053)nSが,高レベル(L)の伝導度として0.96high
±0.16(=0.8∼1.12)nSが,それぞれ示されている。
(イ)上記(ア)a及びbによれば,引用例及び甲11論文には,発現させたタンパ
ク質Fのチャネル伝導度について,以下の趣旨の記載があるものといえる。
a引用例
(a)主として観察されたチャネルは,伝導度が小さいものであり,その平均は,
0.34nSであること。
(b)上記(a)のように主要なチャネルが小さな伝導度を示したことは,ハンコッ
クらの1981年論文等の従前のデータと異なること。
(c)伝導度が大きいチャネル(4∼7nS)は,低頻度でしか観察されなかっ
たこと。
(d)観察された大きなチャネルのうち,約65%は,4nSよりも大きな伝導
度を有したが,これは,ハンコックらの1981年論文における伝導度(5.6n
S)と同様の大きさであったこと。
b甲11論文
(a)観察されたチャネルの大多数は,0.6nS未満の伝導度を示す小さなも
のであり,平均チャネル伝導度は,0.38nSであったこと。
(b)上記(a)の結果は,ハンコックらの1981年論文における平均チャネル伝
導度(5nS)に反していること。
(c)観察された最大のチャネルの伝導度は,3.4nSであったこと。
(d)1.2nSよりも大きいチャネルは,全体の6.8%の頻度でしか観察さ
れなかったこと。
(e)上記(d)のチャネルのうち,63%は,1.2∼2.0nSの範囲の伝導度
を示したこと。
(ウ)そうすると,発現させたタンパク質Fのチャネル伝導度に関する引用例の
記載と甲11論文の記載は,①主として観察されたチャネルは伝導度が小さいもの
であること,②平均チャネル伝導度は0.34nS(引用例)又は0.38nS
(甲11論文)であること(両者は,理論上の数値ではなく,実測された数値であ
り,かつ,多数のチャネルに係る平均値であることからすると,両者に有意な差は
ないというべきである。),③伝導度が大きいチャネルは低頻度でしか観察されな
かったこと,④これはハンコックらの1981年論文の内容と異なること,という
主要な部分において矛盾しない趣旨のものであるといえる。
他方,伝導度が大きいチャネルについての記載は,引用例においては,その伝導
度は4ないし7nSの範囲に分布し,その約65%は5.6nS程度の伝導度を示
したとされているのに対し,甲11論文においては,1.2nSよりも大きい伝導
度を示すチャネルのうち63%は1.2ないし2.0nSの範囲に分布し,最大の
伝導度は3.4nSであったとされているが,これらは,上記のとおり低頻度(甲
11論文によれば,1.2nSより大きい伝導度を示したチャネルは,全体の6.
8%にすぎない。)で観察された例外的な事象に係るものであるし,また,引用例
においては,前記(ア)a(b)のとおり,これら伝導度の大きいチャネルを観察するた
めに特段の工夫がされているのに対し,甲11論文においては,伝導度の大きいチ
ャネルの観察方法についての特段の言及がないことをも併せ考慮すると,伝導度が
大きいチャネルに関する記載についての上記差異は,引用例において発現させたタ
ンパク質と甲11論文において発現させたタンパク質が異なるものであることを根
拠付けるには,不十分であるといわざるを得ない。
なお,甲24論文は,単一のOMPFのチャネルが,主として弱伝導性の副次的
高次構造の状態で存在し,わずかの間,完全に開いた状態(伝導度が高い状態)に
切り替わることを見出したものであり,OMPFのチャネル伝導度を静的に測定し
たものとはいえないし,「以前に報告されたOprFの低い透過性」の原因につい
て合理的な説明をしているものであるから(上記(ア)c(a)),引用例の記載と甲2
4論文の記載が矛盾しているということはできない。
(エ)原告は,引用例については,前記(ア)a(b)の「・・・約65%は,4nS
よりも大きな(のタンパク質Fについて以前に報告された(3)のものP.aeruginosa
と同様の大きさ)単一チャネル伝導度を有した。」との記載を,甲11論文につい
ては,前記(ア)b(b)の「観察されたチャネルの大多数は0.6nS未満であった。
これらの観察は,精製されたタンパク質Fの平均チャネル伝導度が5nSだと報告
されていた従来公開された観察(Benz及びHancock,1981年)に反してい
る。」との記載を,甲24論文については,前記(ア)c(c)の「低い伝導度レベル
(L)が,常に,約140∼150pA(0.93∼1nS)の振幅の高い伝導low
度レベル(L)へ強力に変動する・・・。」との記載をそれぞれ抽出して,引用high
例において発現されたタンパク質が,甲11論文において発現されたタンパク質及
び甲24論文に記載されたOMPFと異なる旨主張するが,上記(ウ)において説示
したところに照らせば,原告の主張は,引用例,甲11論文及び甲24論文の各記
載の内容を正解しないものとして,失当であるといわざるを得ない。
(オ)小括
以上のとおりであるから,チャネル伝導度についての引用例,甲11論文及び甲
24論文の各記載を根拠として,引用例において発現されたタンパク質がOMPF
ではない旨をいう原告の主張は,理由がない。
オ引用例の発表後の著者らの態度(取消事由1の(6))について
原告は,引用例の著者らが後に発表した甲2論文(1989(平成元)年6月発
行の「JOURNALOFBACTERIOLOGY」171巻6号の3304頁から3309頁までに
Pseudomonas掲載されたWendyA.Woodruff及びRobertE.W.Hancockによる「
OuterMembraneProteinF:StructuralRoleandRelationshiptotheaeruginosa
OmpAProtein」と題する論文)及び甲17論文(1991(平成Escherichiacoli
3)年1月発行の「JOURNALOFBACTERIOLOGY」173巻2号の768頁から775
頁までに掲載されたWendyWoodruff,RobertE.W.Hancockらによる「Conservation
oftheGeneforOuterMembraneProteinOprFintheFamily:Pseudomonadaceae
SequenceoftheGene」と題する論文)において,OMPseudomonassyringaeoprF
PFのアミノ酸配列等に関する箇所に,引用例が一切引用されておらず,かえって,
本願発明の発明者らによる甲5論文(1988(昭和63)年1月発行の
「JOURNALOFBACTERIOLOGY」170巻1号の155頁から162頁までに掲載され
たMichaelDuchêne,FriedrichLottspeich,Bernd-UlrichvonSpecht,Horst
PseudomonasDomdeyらによる「SequenceandTranscriptionalStartSiteofthe
OuterMembranePorinProteinFGene」と題する論文)が引用されていaeruginosa
るとして,引用例の著者らが,引用例において発現されたタンパク質がOMPFで
なかったことを自認している旨主張する。
(ア)そこでまず,甲2論文及び甲17論文の記載をみることとする。
a甲2論文(1988(昭和63)年10月31日原稿受領)には,以下の各
記載がある(なお,甲2論文中の引用文献「(5)」とは,甲5論文であり(甲2論
文原文3309頁左欄下から19∼15行参照),同「(22)」とは,引用例である
(甲2論文原文3309頁右欄下から4行∼末行参照。当該部分に記載された引用
例の表題は,誤記であると認められる。)。)。
(a)「タンパク質Fは,ポリンとして機能することが示された(14,16,22)。」(原告から
提出された3種類の抄訳文のうち,「[甲2抄訳]」で始まり「*(訳注)文献22は引用文献1
(甲8)である。」で終わるもの(以下「甲2抄訳」という。)・1丁下から17行)
(b)「さらに,遺伝子の近年入手可能な配列(5)は,タンパク質FとOmpAタンパoprF
ク質との間での限定された相同性の領域(これら2個の遺伝子の各々からの30個のアミノ酸
ストレッチにおける19個の直接的な一致)を実証した。」(甲2抄訳・1丁下から14∼1
2行)
(c)「配列比較。公開されたOmpA(2)およびタンパク質F(5)の配列を,プログラムS
EQNCEバージョンPC3・・・およびFAST−Pアルゴリズムを用いることにより比較
した。」(甲2抄訳・1丁下から9∼6行)
(d)「ItshouldbenotedthatsincethegeneapparentlyconstitutesasinglegeneoprF
transcriptionalunit(5),theeffectsobservedinthisstudywererelatedtothepresence
orabsenceofproteinFratherthan....(遺伝子は,明らかに,単一の遺伝子転写oprF
単位から構成されるので(5),この研究において見られた効果は,・・・むしろ,タンパク質
Fの存在又は不存在に関連することに注意すべきである。)」(原文3305頁右欄22∼2
6行)
(e)「タンパク質Fの,大腸菌OmpAタンパク質に対する関係。Ducheneら(5)は,30ア
ミノ酸のうちの19アミノ酸が同じく配置されたという点で大腸菌OmpAタンパク質の30
アミノ酸ストレッチに対する相同性を強く示すタンパク質F配列由来の30アミP.aeruginosa
ノ酸ストレッチが存在することを実証した。」(甲2抄訳・1丁下から3行∼2丁1行)
(f)「興味深いことに,導入された最も大きな2つのギャップは,タンパク質Fの4つのシ
ステイン(これは,ジスルフィド結合を形成する[22])を含む領域においてであり,そして
OmpAの2つのシステイン(これはジスルフィド結合を形成しない)付近の領域においてで
あった。」(甲2抄訳・2丁4∼7行)
(g)「コントロール実験では,我々は,C386(pWW2200)がタンパク質Fを,他の遺伝的バッ
クグラウンドにおいて以前に実証された(22;すなわち,タンパク質Fが,主な外膜タンパク
質であった)のと等しい量で生じることを実証した。」(甲2抄訳・2丁下から9∼7行)
(h)「タンパク質Fは,ポリンであることが示されており(9,16),そしてそのポリン活性は,
クローン化された遺伝子を含む大腸菌株から精製されたタンパク質Fによって発現さoprF
れる(22)。」(甲2抄訳・2丁下から4∼2行)
b甲17論文(1990(平成2)年6月27日原稿受領)には,以下の各記
載がある(なお,甲17論文中の引用文献「(12)」とは,甲5論文であり(甲17
論文原文774頁左欄下から11∼7行参照),同「(39)」とは,引用例である
(甲17論文原文775頁右欄3∼6行参照)。)。
P.syringae(a)「ゲルスライスからの電気溶出の代わりに受動溶出を利用したこと以外は,
OprFタンパク質を,OprFについて以前に記載された(39)とおり,ディP.aeruginosa
ファレンシャル可溶化,SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動,およびゲルスライスからの
溶出により精製した。」(1丁下から19∼16行)
(b)「興味深いことに,Ducheneらによって公開された配列(12)は,セロタイプ12oprF
単離体から得られ,そしてまた,図1で示す位置での遺伝子内の2つのI部位を特oprFKpn
徴とする。」(1丁下から11∼9行)
(c)「小さなチャネルが観察され,100個の記録された事象からの平均単一チャネル伝導
度は,0.28nSであった(小さなOprFチャネルについての0.35nSの平均単一チ
ャネル伝導度(39)と比較して)。」(1丁下から3行∼末行)
P.syringaeoprFP.aeruginosaoprFP.aeruginosa(d)「遺伝子と遺伝子との比較。
遺伝子の配列は,Ducheneらによって以前に決定された(12)。そのサイズ(1,05oprF
0bp)は,上記の遺伝子のサイズと類似していた。これらの配列の比P.syringaeoprF
較は,この領域に隣接するアミノ酸配列の特別な特徴の保存が存在するという点で,I部位Sal
が両方の遺伝子において同様に配置されることを示した(特に,2つのジスルフィド結合を形
成する,間隔が近い4つのシステイン残基(16)およびアラニン−プロリンリッチ領域(12))。
P.syringaeoprFP.遺伝子の全体的なG+C含量は55.3%であった。これは,
遺伝子についての60.2%という値(12)よりも低い。」(2丁7∼15aeruginosaoprF
行)
(e)「OprFのカルボキシ末端側の半分は,OmpAタンパク質のP.aeruginosaE.coli
等価な部分に相同性を有することが以前に示されており(4,12,38),OprFのP.syringae
カルボキシ末端に非常に類似しており,85%の同一性および10%の保存的置換を有し
た。」(2丁下から7∼4行)
(f)「の配列(P.a.OprF)は,参考文献12からのものである。」(3丁6P.aeruginosa
∼7行)
(イ)上記(ア)の各記載によれば,原告が主張するとおり,引用例の著者らが,引
用例の頒布(1986(昭和61)年8月)後に執筆した甲2論文(1988(昭
和63)年10月31日原稿受領)及び甲17論文(1990(平成2)年6月2
7日原稿受領)は,OMPFのアミノ酸配列等に係る文脈において,甲5論文を引
用し,引用例を引用していない。
しかしながら,上記のとおり,甲2論文及び甲17論文が執筆されたのは,いず
れも,甲5論文の頒布(1988(昭和63)年1月)後であるところ,同論文が,
「ポリンFは,の主要な外部膜タンパク質の一つである。Pseudomonasaeruginosa
・・・我々は,・・・ポリンFについての遺伝子を・・・単離し,そのヌクレオチ
P.ド配列を決定した。」との記載(乙15・1頁下から16∼10行)や,
ポリンタンパク質F遺伝子のヌクレオチド配列を示した図2(アミノ酸aeruginosa
配列も併記されている。原文158頁)のとおり,OMPFのアミノ酸配列等を決
定した論文であるのに対し,引用例は,同配列等を決定していない論文であるから,
引用例の著者らが,甲2論文及び甲17論文の執筆当時,OMPFのアミノ酸配列
等に係る文脈において甲5論文を引用したのは,極めて当然のことであるといえる。
(ウ)原告は,引用例の著者らが,自らもOMPF遺伝子の配列決定を行ってい
たものと仮定して,OMPFのアミノ酸配列等に係る文脈における引用例への言及
があるはずである旨の主張をするが,甲2論文及び甲17論文の執筆当時,引用例
の著者らが,OMPFのアミノ酸配列等を自ら決定していたとの事実を認めるに足
りる証拠はない(なお,原告が指摘する甲18検索結果は,前記イ(ア)aのとおり,
1992年の登録に係るものである。)から,原告の上記主張は,その仮定を誤る
ものとして失当である。
(エ)小括
以上のとおりであるから,甲2論文及び甲17論文における甲5論文の引用等を
根拠として,引用例の著者らが,引用例において発現されたタンパク質がOMPF
でなかったことを自認している旨をいう原告の主張は,理由がない。
カOMPFの大腸菌に対する毒性(取消事由1の(7))について
原告は,引用例においては,高コピーベクター(pUC8及びpUC9)が用いられてい
るところ,高コピーベクターを用いてOMPF遺伝子又はその断片を大腸菌等の宿
主細胞に導入した場合,それらの遺伝子生成物(OMPF)の毒性のため,宿主細
胞が死滅したはずであるから,引用例に記載された方法ではOMPFを発現させる
ことはできず,したがって,引用例において発現されたタンパク質はOMPFでは
ない旨主張する。
(ア)そこで,引用例におけるpUC8又はpUC9(これらが高コピーベクターである
ことについては,当事者間に争いがない。)を用いたDNAのクローニング又はサ
ブクローニングについてみるに,引用例には,前記(2)ア(イ)b及びc並びに前記ア
(イ)a(a)のとおりの各記載に加え,前記ア(イ)aのとおりの図4及びその脚注の記
載があり,これらによれば,引用例において,pWW5については,pUC8を用いてサブ
クローニングされたものであるが,その余のプラスミドpHN4(ベクター:pLAFR1),
pWW1(同),pWW4(ベクター:pCP13)及びpWW13(ベクター:pLAFR1)については,
高コピーベクターを用いてクローニング又はサブクローニングされたものではない
と認められる。
(イ)そうすると,引用例において発現されたタンパク質又は短縮型タンパク質
のうち,少なくとも,DNA全長を含むプラスミドpHN4及びpWW13並びにDNA断
片であるプラスミドpWW1及びpWW4により発現されたものについては,いずれも,原
告が主張するような毒性の問題は生じないといえるから,当該毒性の存在を根拠と
して,引用例において発現されたタンパク質がOMPFでない旨をいう原告の主張
は,その前提を欠くものとして失当である。
キ私的鑑定意見等(取消事由1の(8))について
原告は,長田意見書及び甲11論文を根拠に,引用例において発現されたタンパ
ク質は“hypotheticalprotein”又は混入されたタンパク質であるなどと主張する
ので,以下,検討する。
(ア)長田意見書について
a長田意見書には,以下の各記載がある(なお,略称を本判決が指定したもの
に改めた部分がある。)。
(a)「第3結論
結論として,引用例において単離された遺伝子が何であるかについては,引用例には単離さ
れた遺伝子の核酸配列・アミノ酸配列が記載されていないため,不明です。引用例において単
離された遺伝子がOMPF遺伝子とは異なる遺伝子である可能性が,あります。」(2頁8∼
12行)
(b)「2.引用例に記載されるクローニングした遺伝子の同定法の基準を満たす他の遺伝子
引用例でクローニングされた遺伝子が,OMPF遺伝子以外にあり得ないのか否かについて
考察するために,引用例と同様のクローニング遺伝子の同定法の基準,すなわち,
①SDSゲル電気泳動での挙動,
②複数のモノクローナル抗体との反応性,
③熱変更性タンパク質としての挙動,および,
④ポリンとしての特性,
に関して,OMPF遺伝子と同様の特性を有するタンパク質をコードする遺伝子であって,こ
れらの基準を満たす可能性があり,かつ,OMPF遺伝子とは異なる遺伝子がP.aeruginosaゲ
ノム中に存在するか否かについて検討しました。
OMPF遺伝子と類似した構造を有する遺伝子は,OMPF遺伝子と同様にポリン活性を持
つことが予想されるので,最初に,P.aeruginosaPAO1株のゲノム配列中でOMPF遺伝子と
相同性を有する遺伝子をサーチしました。」(3頁8行∼下から2行)
(c)「次に,サーチでヒットした候補遺伝子の中から,引用例で使用されたモノクローナル
抗体と反応する可能性のある遺伝子を選択しました。
引用例でスクリーニングに使用されたモノクローナル抗体は,MA4-4とMA5-8と呼ばれるもの
です。・・・MA4-4はコンフォメーショナルエピトープに結合し(コンフォメーショナルエピ
トープを認識する抗体とは,立体構造のエピトープを認識する抗体をいいます。),MA5-8は
直鎖状のエピトープに結合します(直鎖状のエピトープを認識する抗体とは,タンパク質のあ
る特定のアミノ酸配列を認識する抗体をいいます。)。MA5-8が認識するエピトープのアミノ
酸配列として,“TAEGRAIN”あるいは“NATAEGRA”が記載されています。
OMPF遺伝子と相同性を有する遺伝子として上記の・・・サーチでヒットした遺伝子中,
P.aeruginosaPAO1株ゲノム核酸配列の95048∼96397に位置する遺伝子にコードさ
れる“hypotheticalprotein”,および,1591286∼1592176に位置する遺伝子
にコードされる“MotD”は,アミノ酸配列“NASAEGRA”を含んでいました。」
(4頁6行∼下から6行)
(d)「エピトープ内で,アミノ酸であるセリン“S”とスレオニン“T”との置換のような
保存的置換が1つだけ生じたに過ぎない場合には,なお抗体との反応性が維持されることが周
知です・・・。そのため,この“hypotheticalprotein”および“MotD”をコードする遺
伝子はともに,MA5-8と反応性を有するタンパク質をコードすると考えられます。
引用例で使用されたもう一つのモノクローナル抗体であるMA4-4は,MA5-8とは異なり,コン
フォメーショナルエピトープ(立体構造のエピトープ)を認識するため,アミノ酸配列によっ
てエピトープを同定することはできません。しかし,MA4-4は,2つのシステイン残基に挟ま
れた13残基のループ近傍に結合します。一方,この“hypotheticalprotein”も,2つのシ
ステイン残基に挟まれた16残基のループを有することから,“hypotheticalprotein”は
MA4-4によって認識されるアミノ酸の立体構造(またはそれに類似した立体構造)を有し,
MA5-8の場合と同様に,MA4-4とも結合する可能性があります。
従って,この“hypotheticalprotein”は,P.aeruginosaのOMPFタンパク質と反応する
複数のモノクローナル抗体(MA5-8およびMA4-4)と反応する可能性があります。(前記②の基
準)
また,この“hypotheticalprotein”は,449アミノ酸残基からなりますが,OMPFタ
ンパク質と同様にシグナル配列が切断された結果,SDSゲル電気泳動においてOMPFタン
パク質と同様の挙動をする可能性があります。(前記①の基準)
さらに,“hypotheticalprotein”中の3つのシステイン残基は,ジスルフィド結合を形成
し得ることから,この“hypotheticalprotein”は,2−メルカプトエタノール存在下で加熱
してSDS電気泳動を行った場合,移動度が変化する可能性が認められます。従って,この
“hypotheticalprotein”は,OMPFタンパク質と同様に,熱変更性タンパク質としての挙
動を示す可能性があります。(前記③の基準)
加えて,ポリン活性を有するOMPFタンパク質のカルボキシル末端側は,ポリン活性を有
するOmpAタンパク質のカルボキシル末端側と相同性を有しますが・・・,この“hypothetical
protein”もまた,OMPFタンパク質のカルボキシル末端側と相同性を有することから,ポ
リン活性を持つ可能性があります。(前記④の基準)」(5頁2行∼6頁9行)
(e)「3.まとめ
以上を考慮すると,引用例では,前記①SDSゲル電気泳動での挙動,②複数のモノクロー
ナル抗体との反応性,③熱変更性タンパク質としての挙動,および,④ポリンとしての特性と
いう4つの基準を指標としてクローニングした遺伝子を同定していますが,上記の“hypothetical
protein”もこれら①ないし④の基準を満たす可能性があります。そうすると,これらの基準
からでは,引用例でクローニングされた遺伝子がOMPF遺伝子であるとは断定できず,実際
には,上記の“hypotheticalprotein”がクローニングされた可能性もあります。」(6頁1
0∼17行)
b長田意見書の上記記載は,要するに,“hypotheticalprotein”が,(a)そ
の遺伝子がOMPF遺伝子と類似した構造を有すること及びそのカルボキシル末端
側がOMPFのそれと相同性を有することから,OMPFと同様にポリン活性を持
つ可能性があること,(b)モノクローナル抗体MA5-8が認識するエピトープのアミノ
酸配列と1箇所においてのみ保存的置換が生じたアミノ酸配列を有することから,
同モノクローナル抗体と反応すると考えられること,(c)モノクローナル抗体MA4-4
が認識する立体構造のエピトープ(2つのシステイン残基に挟まれた13残基のル
ープ近傍)と同一又は類似の立体構造のエピトープを有する(2つのシステイン残
基に挟まれた16残基のループを有する。)ことから,同モノクローナル抗体と反
応する可能性があること,(d)449アミノ酸残基から成るものの,シグナル配列
が切断される結果,SDSゲル電気泳動においてOMPFと同様の挙動をする可能
性があること,(e)その3つのシステイン残基がジスルフィド結合を形成し得るこ
とから,熱変更性タンパク質としての挙動を示す可能性があること,を理由に,
“hypotheticalprotein”が,引用例において発現されたタンパク質であった可能
性もあるというものである。
しかしながら,長田意見書は,“hypotheticalprotein”が,ポリン活性を有す
ること,モノクローナル抗体MA4-4と反応すること,SDSゲル電気泳動において
OMPFと同様の挙動を示すこと,熱変更性タンパク質としての挙動を示すことに
ついて,いずれも,その可能性を述べているものにすぎないし,ポリン活性及び熱
変更性タンパク質としての挙動に至っては,単に,「『同活性を持つ』可能性があ
る」,「『同挙動を示す』可能性がある」などと述べるのみで,同活性及び同挙動
の程度又は態様がOMPFと同様のものであるとは述べていない。また,長田意見
書の記載は,何ら実験において確認されたものではない。
そうすると,長田意見書の記載は,単に,机上において可能性や推測を幾重にも
重ねた結果として,“hypotheticalprotein”が引用例において発現されたタンパ
ク質であった可能性もある旨述べるにとどまるものであるから,その「可能性」は,
極めて小さいものと認めざるを得ず,引用例において発現されたタンパク質がOM
PFであったか否かを検討するに当たって,そのような“hypotheticalprotein”
の存在を考慮することは合理性を欠くものである。
cしたがって,長田意見書にいう“hypotheticalprotein”の存在を前提とす
る原告の主張は,すべて,その前提を欠くものとして,失当である。
(イ)甲11論文について
a甲11論文には,以下の記載がある(なお,前記エ(ア)bのとおり,甲11
論文中の引用文献「Benz及びHancock,1981年」とは,ハンコックらの198
1年論文であり,同「Woodruffら,1986年」とは,引用例である。)。
(a)「蓄積しつつある証拠によって,人工膜システムにおいて観察された主要な小さなチャ
ンネルがタンパク質Fチャンネルの実際のサイズを示すということが,支持されている。
TritonX-100中でのゲル分子ふるいによって精製されたタンパク質Fの初期の調製物中にのみ
一貫して観察された大きなチャンネル(R.E.W.Hancock,私信)は,外膜中に非常に少量存
在する,混入したポリンを示すのであろう・・・。あるいは,黒脂質二分子層において増加す
る大きな伝導度の観察は,タンパク質の凝集の結果,または,複数のポリン分子が同時に進入
した結果である可能性がある・・・。前者の仮説が,以下の理由により,より魅力的である。
第一に,元の研究において使用されたタンパク質Fの調製物は,他の外膜タンパク質を少量
(SDS−PAGEで可視可能)混入していることが公知である。」(甲11追加抄訳・1丁
下から11行∼末行)
(b)「(Hancock,1979;Benz&Hancock,1981).Suchcontaminationwaslesslikelyetal.
inlaterpreparationsduetoachangeinpurificationmethodologyandtheisolationof
clonedproteinFfrom(Woodruff,1986).((Hancockら,1979年;Benz及E.colietal.
びHancock,1981年)。そのような混入は,精製方法論の変更及びクローニングされたタ
ンパク質Fの単離を大腸菌から行うこと(Woodruffら,1986年)により,その後の調製物
においてはあまり生じなかった。)」(原文78頁6∼9行)
b甲11論文の上記記載は,要するに,従前の研究においては,OMPFでは
ない外膜タンパク質が少量混入していたが,引用例における工夫等により,そのよ
うなことはあまり生じなくなったというものであり,原告が主張するように,引用
例においてOMPFとは異なるタンパク質が混入したことを認めるものではない。
cしたがって,引用例においてOMPFとは異なるタンパク質が混入したこと
を前提とする原告の主張は,甲11論文の記載内容を正解しないものとして,すべ
て失当である。
(ウ)原告は,「本件優先日前の当業者は,引用例におけるのと同様のクローニ
ング法を用いた場合には,目的の遺伝子とは異なる遺伝子をクローニングする可能
性があることを認識しており,甲31論文,後記乙2論文,後記乙4論文及び後記
乙5論文に記載されるように,クローニングした遺伝子が目的のタンパク質をコー
ドするものであるか否かを確認するため,目的のタンパク質の部分アミノ酸配列と,
クローニングした遺伝子がコードするアミノ酸配列とを比較していたものであ
る。」と主張する。
しかしながら,原告が援用する各学術論文において,原告が主張するような配列
比較の方法がとられていたとしても,前記ウのとおり,引用例に記載された研究が
行われていた当時,OMPFのアミノ酸配列等は研究者らに明らかとなっていなか
ったのであるから,引用例におけるタンパク質の同定において,配列比較の方法が
用いられていないのは,何ら不合理なことではない。
仮に,原告の上記主張が,引用例におけるタンパク質の同定方法についての疑義
をいう趣旨であるとしても,前記(2)のとおり,理由がない。
(エ)小括
以上のとおりであるから,引用例において発現されたタンパク質が“hypothetical
protein”又は混入されたタンパク質であるなどとする原告の主張を採用すること
はできない。
(4)取消事由1についての結論
前記(1)のとおり,引用例において発現されたタンパク質がのPAO1P.aeruginosa
株に由来するOMPFであったことは,優にこれを認めることができるところ,前
記(2)及び(3)のとおり,これに対する原告の各主張は,いずれも,上記認定を左右
するに足りるものではないから,結局,取消事由1は理由がない。
2取消事由2(本件優先日前における技術的事項の認定の誤り)について
原告は,本件知見についての審決の認定が誤りであると主張するので,以下,検
討する。
(1)問題の所在
は,科属に属する種の1つであって,P.aeruginosaPseudomonadaceaePseudomonas
その血清型(セロタイプ)により,更に分類されるものである。
また,の菌株とは,の具体的な個体の細胞(親細胞。P.aeruginosaP.aeruginosa
臨床的に採取されるのが通常である。)から分化した子孫であり,変異等がない限
り,親細胞と同じ遺伝形質を備えている。の菌株は,1982年8P.aeruginosa
月に頒布された後記甲9論文によれば,当時既に3000種類以上存在するとされ
ているところ(1丁5∼7行),引用例において用いられた菌株は,セロタイプ5
に属するPAO1株であり,本願発明において用いられた菌株は,セロタイプ6に属す
るATCC33354株である(引用例474頁右欄末行∼475頁左欄1行,本願明細書
段落【0015】,乙11論文(1987(昭和62)年5月発行の「INFECTION
ANDIMMUNITY」55巻5号の1051頁から1057頁までに掲載されたJosephS.
Lamらによる「ProductionandCharacterizationofMonoclonalAntibodiesagainst
SerotypeStrainsof」と題する論文)1頁下から7∼5Pseudomonasaeruginosa
行)。
取消事由2においては,本件優先日当時の当業者において,といP.aeruginosa
う同種の細菌の菌株ではあるものの,セロタイプ及び菌株の種類が異なるPAO1株と
ATCC33354株につき,これらに係るOMPF遺伝子のDNA配列の相同性が極めて
高いものであると予測することができたか否か(本件優先日当時の当業者が本件知
見を有していたか否か)が問題となる。
(2)の外部膜タンパク質の相同性(保存性)に関連する学術論文P.aeruginosa
について
ア乙9論文(1979(昭和54)年発行の「J.Biochem.」86巻の979
頁から989頁までに掲載されたMakotoKageyamaらによる「Isolationand
PseudomonasaeruginosaCharacterizationofMajorOuterMembraneProteinsof
StrainPAOwithSpecialReferencetoPeptidoglycan-AssociatedProtein」と題す
る論文)には,以下の各記載がある(なお,乙9論文中の引用文献「(6)」とは,M.
Kageyamaらによる1978(昭和53)年頒布の論文である(乙9論文原文989
頁右欄12∼13行参照)。)。
(ア)「のPAO株の外部膜には,6つの主要なタンパク質(タンパク質Pseudomonasaeruginosa
D,E,F,G,H及びI)が含まれる。」(乙9・1頁下から18∼17行)
(イ)「タンパク質F及びHの精製がなされた。他の3つの主要外部膜タンパク質であるD,
E及びIもまた単離され,特徴づけられた。これらのアミノ酸成分が決定された。」(乙9・
1頁下から14∼12行)
(ウ)「我々は,の外部膜が,少なくとも6つの主要なタンパク質(タンパク質P.aeruginosa
D−I)からなることを見出した(6)。」(乙9・1頁下から4∼3行)
イ甲15論文(1983(昭和58)年12月頒布)には,以下の各記載があ
る。
(ア)「のポリンタンパク質Fに対する高度に特異的なモノクローナルPseudomonasaeruginosa
抗体を分泌するハイブリドーマが単離された。これらの抗体は,の17のセロタP.aeruginosa
イプで代表される株から単離された外部膜中のタンパク質F及び嚢胞性線維症の患者由来の他
の15の臨床単離体から単離された外部膜中のタンパク質Fと相互作用した。」(乙10・1
頁下から17∼14行)
(イ)「我々は,以前,国際抗原性分類スキーム(19)の17ののセロタイプ株にP.aeruginosa
ついて,SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動のタンパク質のパターンと,部分的に精製さ
れたタンパク質及び全膜タンパク質に対するウサギ血清によるこれらのセロタイプにおける主
要な外部膜タンパク質の交差反応性により,これらのセロタイプ株間で,いくつかの主要な外
部膜ポリペプチドが保存されていることを示した(20)。さらに,これらのセロタイプ株におけ
るタンパク質特異的なファージに対するレセプターに保存性があるという発見は,これらの保
存されたタンパク質のいくつかは,表面に曝されていることを示唆した(18)。」(乙10・1
頁下から12∼5行)
(ウ)「モノクローナル抗体の特異性,並びに,セロタイプに分けられた株からの外部膜及び
嚢胞性線維症の単離体からの外部膜との相互反応P.aeruginosa
タンパク質Fに特異的なモノクローナル抗体が,の17のセロタイプ株の外部P.aeruginosa
膜及び嚢胞性線維症の患者由来の16の臨床単離体の外部膜との結合性が,ELISAによっ
てテストされた。表2に,MA4-4及びMA2-10についての結果を示す。反応性は株やモノクロー
P.ナル抗体によって変化したが,これらのモノクローナル抗体は,テストされたすべての
株の外部膜と反応した。このように,タンパク質Fに対するこれらのモノクローナaeruginosa
ル抗体によって認識される抗原部位は,明らかにこれらの株間で共通している。P.aeruginosa
このことは,すべてのタンパク質F特異的モノクローナル抗体について,のセP.aeruginosa
ロタイプに分けられた株由来の外部膜タンパク質を分離した電気泳動ブロットとの相互反応に
よって確認された(図1)。」(乙10・1頁下から3行∼2頁9行)
(エ)「図1.モノクローナル抗体MA5-8で処理後ののセロタイプに分けられた株P.aeruginosa
の外部膜のウェスタン電気泳動ブロット。ブロットは,SDSポリアクリルアミドゲルからニ
トロセルロース紙へ,分離された外部膜タンパク質を電気泳動移動することにより得られ
た。」(乙10・2頁11∼14行)
(オ)「Outermembranesamplesare:lane1,serotype17;lane2,serotype16;lane3,
serotype15;lane4,serotype14;lane5,serotype13;lane6,serotype12;lane7,
serotype11;lane8,serotype10;lane9,purifiedproteinF;lane10,serotype9;lane11,
serotype8;lane12,serotype7;lane13,serotype6;lane14,serotype5;lane15,
serotype4;lane16,serotype3;lane17,serotype2;lane18,serotype1;lane19,
wild-typeH103.(外部膜のサンプルは次のとおりである。レーン1,セロタイプ17;レーン
2,セロタイプ16;レーン3,セロタイプ15,レーン4,セロタイプ14,レーン5,セ
ロタイプ13;レーン6,セロタイプ12;レーン7,セロタイプ11;レーン8,セロタイ
プ10;レーン9,精製されたタンパク質F;レーン10,セロタイプ9;レーン11,セロ
タイプ8;レーン12,セロタイプ7;レーン13,セロタイプ6;レーン14,セロタイプ
5;レーン15,セロタイプ4;レーン16,セロタイプ3;レーン17,セロタイプ2;レ
ーン18,セロタイプ1;レーン19,野生型H103。)」(原文1030頁左欄図1脚注11
∼19行)
また,図1には,レーン1ないし19のすべてにつき,ほぼ同様の位置にバンド
が出現している様子が示されている。
ウなお,本件優先日後(1991(平成3)年1月)に頒布されたものではあ
るが,甲17論文には,次の記載がある。
「Thegenewasmappedinseveralstrains....Comparisonsof...oprFP.aeruginosa
wild-typestrainH103(thesourceoftheclonedgene)with17typestrainsofthe
InternationalAntigenTypingSchemerevealedextensiveconservationoftherestriction
mapwithin1kbofthegene;onlyasinglestrain,theserotype12typestrain,hadanoprF
alteredmapforI....(数種の株において,・・・遺伝子がマッピKpnP.aeruginosaoprF
ングされた。・・・野生型の株H103(クローニングされた遺伝子の供給源である。)と,国際
抗原性分類スキームにおける17タイプの株とを比較すると,1kb以内の遺伝子のoprF
制限酵素地図において,広範囲にわたる保存性が明らかとなった。唯一,セロタイプ12の株
のみが,Iについて異なる制限酵素地図を示した・・・。)」(原文770頁左欄下から2Kpn
4∼15行)
(3)OMPFの機能について
OMPFはポリンとして機能するタンパク質である。ポリンは,透過膜チャネル
(pore)を形成し,水,イオン等を通過させ,細胞内の浸透圧の調製等を行う機能
を有する(以上の事実は,当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨によって認めら
れる。)。そして,前記1(3)エ(ア)のとおり,本件優先日前に,OMPFのチャネ
ル伝導度の測定を試みた各種学術論文(ハンコックらの1981年論文,引用例
等)が存在したことなどに照らすと,OMPFが上記機能を有することについては,
本件優先日前において,既に当業者が認識していたものと認められる。
(4)そこで検討するに,一般に,同一の種に属する細菌のタンパク質のうち,
少なくとも,当該細菌の生存にとって重要なタンパク質については,それをコード
するDNAの配列は,菌株,すなわち,個体が異なっても,それほど大きく異なる
ことはなく,むしろ,極めて高い相同性を有するものと認識するのが通常であると
考えられる。
そして,上記(2)ア及び(3)によれば,OMPFは,の生存においP.aeruginosa
て,極めて重要なタンパク質であるといえるし,また,上記(2)イのとおり,甲1
5論文の記載及び図示によれば,の17のセロタイプに属する各株P.aeruginosa
のOMPFが,OMPF特異的モノクローナル抗体MA4-4及びMA2-10と反応するエ
ピトープを有し,SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動等においても,当該17
のセロタイプに属する各株間において,いくつかの主要な外部膜ポリペプチドが保
存されることが示され,さらには,モノクローナル抗体MA5-8で処理した後の電気
泳動の結果は,17のセロタイプに属する各株のOMPFについて,ほぼ同様の挙
P.動が示されたというのであるから,本件優先日当時の当業者は,同一の種(
)に属するPAO1株とATCC33354株が,そのOMPF遺伝子のDNA配列aeruginosa
において,極めて高い相同性を有することを予測することができたものと認めるの
が相当である。
したがって,本件優先日当時の当業者は,少なくとも,本件知見中,PAO1株と
ATCC33354株との相同性に係る部分について,その認識を有していたものと認めら
れる(なお,上記(2)ウのとおりの甲17論文の記載によれば,のセP.aeruginosa
ロタイプ5及び6に属する株に係る遺伝子の1kb以内のDNA配列につき,本件
優先日当時においても,客観的には,広範囲にわたる相同性が存在していたものと
いえる。)。
(5)アこれに対し,原告は,OMPFはの生存にとって不可欠なP.aeruginosa
タンパク質ではないと主張する。
(ア)すなわち,原告は,菌株によっては,ポリンチャネルが複数個存在するも
P.のもあると主張するが,そのことにより,ポリンとして機能するOMPFが
の生存にとって極めて重要なタンパク質であることが否定されるものでaeruginosa
はない。
P.aeruginosa(イ)また,原告は,大腸菌につきポリン不全株であるJF733が,
につきタンパク質Fを欠失する株であるH283が,それぞれ存在すると主張する。
しかしながら,上記(3)のとおりのポリンの機能に照らせば,これらの株が,そ
のような欠陥のない株と比較して,その生存能力において劣ることは,容易に認め
られるところであり,本件優先日当時の当業者も,そのように認識していたものと
認めるのが相当であるから,原告の上記主張は,ポリンとして機能するOMPFが
の生存にとって極めて重要なタンパク質であることを何ら否定するP.aeruginosa
ものではない(なお,本件優先日後に頒布されたものではあるが,甲2論文(19
89(平成元)年6月頒布)には,「の外部膜タンパク質F欠損−P.aeruginosa
Ω挿入変異体株H636は,タンパク質Fが十分な親株H103と比べて,プロテオースペ
プトンが追加されていないno.2培養液・・・で成長することができなかった。高濃
度のNaCl,KCl,グルコース,スクロース又はコハク酸カリウムの追加によ
り,H636株は,親株のH103に近い割合で成長することができた。H636株細胞は,同
じ培地で同じ割合で成長させた親株よりも,33%短く,断面積が46%小さかっ
た。」との記載(乙19・1頁下から7∼2行)が,甲30文献(2002(平成
14)年10月15日発行の大島泰郎外3名編「ポストシークエンスタンパク質実
験法2試料調整法」第1版の97頁から104頁まで)には,「細胞は細胞膜を
始めとして種々の膜構造をもっている。それらのほとんどは半透性の脂質二重層で
構成されており,種々のチャネルやポンプ機能をもった膜タンパク質が組込まれて
いる。これらの膜タンパク質のほとんどは生命の維持に不可欠な機能をもっている
・・・。」との記載(97頁8∼12行)がそれぞれあることからすると,OMP
Fは,客観的に,の生存にとって極めて重要なタンパク質であるとP.aeruginosa
いえる。)。
(ウ)そうすると,OMPFがの生存にとって不可欠なものではなP.aeruginosa
いとの原告の上記主張は,少なくとも,OMPFがの生存にとってP.aeruginosa
極めて重要なタンパク質であることを否定する限度において,失当である。
イまた,原告は,モノクローナル抗体に反応することは,単に,同一又は類似
P.のエピトープが存在することを示すにすぎないから,そのことは,菌株が異なる
のOMPF遺伝子のDNA配列における保存性を根拠付けるものではなaeruginosa
いと主張する。
確かに,モノクローナル抗体に対する反応のみを取り上げれば,甲15論文の記
載中,前記(2)イ(ア)及び(ウ)に摘記した部分は,の17のセロタイプP.aeruginosa
に属する各株のOMPFが当該モノクローナル抗体に反応するエピトープを有して
いることを示すにすぎないが,そのことは,菌株が異なるのOMPP.aeruginosa
F遺伝子のDNA配列における相同性を肯定する方向に働くことはあっても,否定
する方向に働くことはないものであるし,前記(4)の認定は,モノクローナル抗体
に対する反応のみを理由にするものではないから,原告の上記主張は,前記(4)の
認定を覆すに足りるものではない。
(6)原告は,上記(5)のほか,種々の根拠を挙げて,本件優先日当時の当業者が
本件知見を有していなかった旨主張するので,以下,順次検討する。
ア原告は,甲9論文(1982(昭和57)年8月発行の「JOURNALOFBACTERIOLOGY」
151巻2号の569頁から579頁までに掲載されたB.W.Hollowayらによる「A
ChromosomallyLocatedTransposonin」と題する論文)をPseudomonasaeruginosa
P.aeruginosa根拠に,本件優先日当時に存在した少なくとも3000種類以上の
の株間で,病原性,薬剤抵抗性等の性質が異なることが常識であった旨主張する。
確かに,甲9論文には,「著者らは,臨床的供給源から単離された3000株を
超えるを,抗生物質耐性のパターンについて試験し,このPseudomonasaeruginosa
ような耐性の遺伝的基礎を決定した。これらの株の約1%において,伝染性プラス
ミドが立証された・・・。さらに,80%を超える株が多剤耐性を有したが,耐性
の接合伝達は検出できなかった。このような非伝達性耐性に関する2つの最もあり
そうな説明は,移動欠損プラスミドまたは染色体上に位置した耐性決定子であった。
いくつかの異なる病院から得た非伝達性耐性を有する株は,カルベニシリン・・・,
ストレプトマイシン・・・,スペクチノマイシン・・・,スルファニルアミド・・
・,および水銀・・・の耐性について共通の耐性パターンを有することが見出され
た。このような株を試験して,これらの株がトランスポゾンを有することを示した。
このトランスポゾン・・・は,カルベニシリン,ストレプトマイシン,スペクチノ
マイシン,およびスルファニルアミドの耐性をコードし,これらの臨床株の染色体
上に位置する。」との記載(1丁5∼末行)がある。
しかしながら,甲9論文は,薬剤耐性を決定付けるものがOMPF遺伝子のDN
A配列であると論ずるものではないから(むしろ,トランスポゾン(染色体間を移
動する遺伝子単位)の果たす機能について論ずるものである。),同論文の上記記
載は,のOMPF遺伝子のDNA配列が菌株ごとに異なることを何P.aeruginosa
ら根拠付けるものではない。
イ原告は,甲10論文(1986(昭和61)年発行の「Ann.Rev.Microbiol.」
40巻の79頁から105頁までに掲載されたB.W.Hollowayらによる「GENOME
ORGANIZATIONIN」と題する論文)を根拠に,緑膿菌が染色体の再構成PSEUDOMONAS
すらも行うことが知られていたと主張する。
確かに,甲10論文には,「属の染色体は,さらなる機能および可Pseudomonas
変性を獲得し得るという物理的証拠および遺伝的証拠が増加してきている。」との
記載(1丁14∼16行)がある。
しかしながら,染色体が再構成を行うことは,一般に知られていた事象であると
ころ,甲10論文の上記記載は,属の1つの種であるをPseudomonasP.aeruginosa
構成する1つのタンパク質であるOMPFについて,その遺伝子が特に変異しやす
いことまで論ずるものではないから,原告の上記主張は,のOMPP.aeruginosa
F遺伝子のDNA配列が菌株ごとに異なることを根拠付けるに足りるものではない。
ウ原告は,甲27論文(「TheAmericanJournalofMedicine」1984(昭和
59)年7月31日号の11頁から23頁までに掲載されたHaroldC.Neuによる
「ChangingMechanismsofBacterialResistance」と題する論文)を根拠に,細菌
がポリンの変化を誘導することにより薬剤耐性を獲得することが周知の事項であっ
たと主張する。
(ア)確かに,甲27論文には,次の記載がある(なお,甲27論文中の「β−
ラクタム」とは,ペニシリン等,β−ラクタム構造を有する抗生物質である。)。
「図2は,β−ラクタムが細菌の壁を通過してペリプラズム空間内に入る場合に,何が起こ
るかを示す。理想的反応は,最も右側の,ペニシリン結合タンパク質への迅速な結合および細
胞溶解である。・・・細胞溶解は,ペリプラズムのβ−ラクタマーゼ(特に,この酵素がβ−
ラクタムによって誘導された場合)を放出させ,そして放出された酵素は,残りの薬物を破壊
し,細菌の増殖を可能にする。別の可能性においては,誘導された酵素は,β−ラクタムが細
胞壁を通過するときにそれと結合し,そしてポリンの変化を誘導することにより,ペニシリン
結合タンパク質において少量の薬物を結合させ,したがって増殖は,ゆっくりした速度である
が,進行する。このβ−ラクタマーゼ誘導の後者の機序・・・は,第3世代のセファロスポリ
ンおよび第4世代のペニシリンに抵抗するために,エンテロバクター種,Citrobacter
freundii,およびP.aeruginosaにおいて発達した,新たな耐性の機序である。幸いなことに,
この耐性の形態は,まだ一般的でなく,複合感染を有する患者が多くの新型抗生物質で処置さ
れているセンターに限られているように見える。」(1丁11∼末行)
また,図2には,外部β−ラクタムが,壁の孔からペリプラズム空間に入り,4
つの場合の1つとして,ポリン変化を誘導し,ゆっくりした増殖を導くとの機序が
示されている(2丁の図部分)。
(イ)しかしながら,上記の記載及び図示は,そこにいう「ポリンの変化」が,
ポリン(タンパク質)の遺伝子の変異であると論じるものではなく,単に,ポリン
のタンパク質としての二次構造,機能等の変化をいうにすぎないものと理解される
から,甲27論文の上記の記載及び図示は,のOMPF遺伝子のDP.aeruginosa
NA配列が菌株ごとに異なることを根拠付けるに足りるものではない。
エ原告は,甲15論文(1983(昭和58)年12月頒布)を根拠に,引用
例の著者の1人であるHancockが,その作成に係るモノクローナル抗体が種々のタ
ンパク質Fと異なる反応性を有することの原因がアミノ酸配列の変化である可能性
を認めていると主張する。
(ア)確かに,甲15論文には,「我々は,タンパク質F特異的モノクローナル
抗体と,異なる株由来のタンパク質Fとの相互作用の差異を観察しP.aeruginosa
た。この結果は,種々の膜中のタンパク質Fの量の差異,または,モノクローナル
抗体によって認識される抗原性部位の変化のいずれかによって生じる,異なる抗体
−抗原親和性に起因する可能性がある。」との記載(甲15抄訳・3丁下から4行
∼末行)がある。
(イ)しかしながら,同論文には,前記(2)イのとおりの各記載及び図示もみられ
るところであって,上記記載をこれらの記載及び図示と併せて考慮すると,甲15
論文は,「OMPF特異的モノクローナル抗体は,の17のセロタP.aeruginosa
イプに属する各株のOMPFと反応した。また,同モノクローナル抗体によって認
識される抗原部位は,これらの株間において共通していた。しかしP.aeruginosa
ながら,その反応性(反応の程度)は,株の種類や,抗体の種類によって差異があ
った。この差異は,①OMPFの量の差異又は②モノクローナル抗体によって認識
される抗原部位の変化のいずれかに起因する可能性がある。」旨論じているものと
理解される。
(ウ)そして,上記「差異」の原因のうち,①については,もとより,OMPF
のアミノ酸配列とは無関係のものであるし,他方,②については,「モノクローナ
ル抗体によって認識される抗原部位の変化(『thealterationoftheantigenic
siterecognizedbythemonoclonalantibody』(原文1032頁左欄下から32∼
31行))」が,抗体側に起因する事象をいうのか,抗原側に起因する事象をいう
のか判然とせず,また,いずれにせよ,甲15論文は,当該変化の「可能性」を指
摘するにすぎない。したがって,上記「差異」及びその原因の可能性についての指
摘があることを考慮しても,のOMPFのアミノ酸配列が変化しやP.aeruginosa
すいものであるということはできない。
オ原告は,甲28論文(1987(昭和62)年8月発行の「ANTIMICROBIAL
AGENTSANDCHEMOTHERAPY」31巻8号の1216頁から1221頁までに掲載された
PseudomonasaeruginosaA.J.Godfreyらによる「Penetrationofβ-Lactamsthrough
PorinChannels」と題する論文(1987(昭和62)年1月27日原稿受領))
を根拠に,変異実験によってのポリンの構造が変化することが確認P.aeruginosa
されていたと主張する。
(ア)甲28論文には,以下の各記載がある。
a「β−ラクタム系抗生物質の取り込みは,ポリンチャネルを通っての侵入・・・に依存す
ること・・・が示されている。
著者らは,この文献において,主要なポリンタンパク質(タンパク質F)における変化に起
因して,透過性・・・に欠陥を有するの変異株を記載する。」(1丁5∼10P.aeruginosa
行)
b「トリプシン消化および結果として生じるペプチドの分析によって,ポリンのトリプシン
感受性部位が2つの株で異なっていることが示唆された。全アミノ酸組成は有意に異ならない
ので,消化実験のデータは,単一のアミノ酸変化または可能性としては二重のアミノ酸変化が
変異ポリンタンパク質に生じたことを示唆する。」(1丁下から4行∼末行)
(イ)上記各記載のとおり,確かに,甲28論文には,ポリンタンパク質にアミ
ノ酸変化が生じたことを示唆するとの記載があるが,他方で,β−ラクタム系抗生
物質の取り込み(透過性)において欠陥を有するの変異株においてP.aeruginosa
さえ,ポリンタンパク質に生じるアミノ酸変化は単一又は二重のものにとどまり,
全アミノ酸組成は有意に異ならないとの記載もあるのであるから,甲28論文は,
原告が意図するところとは逆に,のOMPFのアミノ酸配列の高いP.aeruginosa
保存性を示すものであるというべきである。
カ原告は,甲11論文の著者がタンパク質Fに多様性があると考えていたと主
張するが,当該「多様性」が何を意味するのかについては,原告の主張によっても,
甲11論文の記載によっても,判然としないから,原告の上記主張を採用すること
はできない。
キ原告は,甲45論文(1980(昭和55)年8月発行の「JOURNALOF
BACTERIOLOGY」143巻2号の906頁から913頁までに掲載されたMichaelG.
Beherらによる「MajorHeat-ModifiableOuterMembraneProteininGram-Negative
Bacteria:ComparisonwiththeOmpAProteinof」と題する論文)Escherichiacoli
を根拠に,グラム陰性菌の外膜タンパク質全般について,「ポリンタンパク質は,
同種内においても,また,異なる属または種の間においても,相同性をほとんど示
さない。」との記載があると主張する。
(ア)甲45論文には,次の記載がある。
「ポリンタンパク質は,全てのグラム陰性菌がこれらのタンパク質と機能的な同等物を有し
ているはずであるにもかかわらず,進化を通じて保存されなかったと思われる。ポリンタンパ
ク質は,同種内においても,また,異なる属または種の間においても,相同性をほとんど示さ
ない。OmpC及びOmpFポリンタンパク質(いずれも大腸菌K-12により産生される)は,
共通の先祖遺伝子から進化したものと思われる。しかし,これらの非常によく似たタンパク質
は,同一のタンパク質分解ペプチドをほとんど持たない・・・。我々は,最近,大腸菌K-12の
OmpC及びOmpFポリンタンパク質と,LT2によって産生された遺伝的にS.typhimurium
同等のタンパク質とを比較し,これら二つの近縁種・・・によって産生された同じタンパク質
の間で,半分未満のタンパク質分解ペプチドが同一であることを見出した。」(1丁下から1
2行∼末行)
(イ)上記記載から明らかなとおり,甲45論文が「相同性をほとんど示さな
い」としているのは,①OmpCとOmpFという異なるタンパク質の間の相同性
及び②大腸菌(科属に属する種の1つ)K-12のOEnterobacteriaceaeEscherichia
S.typhimuriumEnterobacteriaceaeSalmonellaSalmonellaentericampCと(科属
種亜種に属する血清型の1つ(ネズミチSalmonellaentericasubspeciesenterica
フス菌))LT2によって産生された遺伝的に同等のタンパク質,大腸菌K-12のOm
pFとLT2によって産生された遺伝的に同等のタンパク質という異S.typhimurium
なる属に属するタンパク質の間の相同性についてであるから,といP.aeruginosa
う同一の種における同一のタンパク質であるOMPFについての,異なる菌株間に
おける相同性の有無に係る前記(4)の認定を左右するものではない。
ク以上のとおりであるから,原告の上記アないしキの各主張は,すべて理由が
ない。
(7)取消事由2についての結論
P.前記(4)のとおり,本件優先日当時の当業者は,少なくとも,本件知見中,
のPAO1株とATCC33354株との相同性に係る部分について,その認識を有aeruginosa
していたものと認められるところ,前記(5)及び(6)のとおり,これに対する原告の
各主張は,いずれも,上記認定を左右するに足りるものではないから,結局,取消
事由2は理由がない。
3取消事由3(進歩性についての判断の誤り・その1)及び取消事由4(進歩
性についての判断の誤り・その2)について
原告は,仮に,引用例において単離されたコスミドクローンpHN4にOMPF遺伝
子が含まれていたとしても,本件優先日当時の当業者にとって,引用例に記載され
た方法でOMPF遺伝子をクローニングし,そのDNA配列を決定することは容易
でなかったと主張し(取消事由3),また,仮に,引用例において単離された遺伝
子がOMPF遺伝子であったとしても,本件優先日当時の技術水準では,これを含
むフラグメントのみから同遺伝子のDNA配列を決定することは容易でなかったと
主張する(取消事由4)ので,以下,検討する。
(1)引用例が開示する技術内容
P.ア前記1(1)並びに前記1(3)ア(エ)a及びbのとおり,引用例においては,
のPAO1株に由来するOMPF遺伝子のうち,少なくともpHN4及びpWW13aeruginosa
(いずれもOMPFのDNA全長を含むプラスミド)については,正しくクローニ
ング又はサブクローニングがされたものと認められる。
イまた,前記1(3)ア(イ)a(a)のとおり,引用例には,pWW1及びpWW4(いずれ
もOMPFのDNA断片であるプラスミド)のサブクローニングの方法が開示され
ている。
ウさらに,前記1(3)カのとおり,これらのプラスミドについては,これらに
より発現されたタンパク質又は短縮型タンパク質が大腸菌宿主細胞に与える毒性の
問題は生じないものである。
エ以上からすると,引用例には,のPAO1株に由来するOMPFP.aeruginosa
のDNA全長を含むプラスミド(pHN4及びpWW13)に加え,そのDNA断片である
プラスミド(pWW1及びpWW4)のクローニング及びサブクローニングの方法が開示さ
れているといえる(なお,本願発明の発明者らが執筆した甲5論文(1987(昭
和62)年7月2日原稿受領。この原稿受領日は,本件優先日のわずか1か月後で
ある。)には,「この研究においては,タンパク質Fをコードする遺伝子の第一次
構造を決定するために,該遺伝子がλEMBL3ファージへクローニングされた。この
遺伝子は,最近,Woodruffらにより別途クローニングされている(53)(判決注:引
用例である(原文162頁右欄下から7∼4行参照)。)。」との記載(乙15・
4頁8∼10行)がある。)。
(2)本件優先日当時における遺伝子のDNA配列の決定に係る技術水準等につ
いて
ア菌株間のDNA配列の相同性について
前記2(4)のとおり,本件優先日当時の当業者は,のPAO1株とP.aeruginosa
ATCC33354株が,そのOMPF遺伝子のDNA配列において極めて高い相同性を有
することを予測することができたものと認められる(以下,この認定に係る技術的
知見を「本件認定知見」という。)。
イDNA配列の決定方法について
(ア)乙13文献(1986(昭和61)年6月25日発行の社団法人日本生化
学会編「遺伝子研究法Ⅰ−核酸の化学と分析技術−」第1版の1頁から33頁まで
及び166頁から201頁まで)には,DNAの塩基配列の決定方法として,「マ
クサム−ギルバート法」及び「ジデオキシ法」が紹介されているところ(167∼
200頁),その概要は,以下のとおりである。
a「マクサム−ギルバート法では,3'−または5'−末端をPで標識したDNA鎖を,塩
基に特異的な化学反応によって切断し,その産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動法で分離
することによって塩基配列を決める。したがって,Sangerらによって開発された,DNAポリ
メラーゼを用いる酵素法(判決注:ジデオキシ法の別名である。)に対して化学分解法ともよ
ばれる。両法はほぼ同時期に発表されたが,初期にはマクサム−ギルバート法の方が一般性が
あり,より確実な方法として広く用いられた。しかしその後,酵素法は・・・改良が進んだ・
・・。・・・現在では酵素法がより簡便であり,配列決定の速度もマクサム−ギルバート法よ
り勝っているといえる。したがって,未知の塩基配列を決める目的にはマクサム−ギルバート
法は使用されなくなってきている。」(167頁本文下から13∼3行)
b「DNAポリメラーゼによる修復合成を利用することから酵素法ともよばれており,
Sangerらが1975年に発表したプラス−マイナス法を改良,発展させた方法である。大腸菌
のDNAポリメラーゼⅠ・Klenow酵素(・・・以下Klenow酵素と略)またはT4DNAポリ
メラーゼは,ポリメラーゼとしての活性と3'→5'エキソヌクレアーゼ活性をもっており,鋳
型となる一本鎖DNAとプライマーの存在下で,dNTP(デオキシリボヌクレオシド三リン
酸)を加えると修復合成(プラス反応)が,dNTPを除くと分解(マイナス反応)が起こる。
この原理をうまく利用したのがプラス−マイナス法である。しかし・・・あまり適用されなか
った。これに対して,同じころMaxam-Gilbertによって発表された化学分解法の方は,・・
1),2)
・1980年頃まではもっぱら使用された。このような状況下で酵素法は大きな改良が行われ
た。Sangerらは,Klenow酵素を用いるとジデオキシヌクレオチド(ddNMP)がデオキシ
3)
ヌクレオチドと同じように取込まれるが・・・,いったん取込まれると3−OHがブロックさ
れているためそこで合成が終止するという原理を導入した。つまりこの方法を用いれば,反応
液に加えるジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)とdNTPの比を調節するだけで,
加えるddNTPの種類に応じてそれぞれのヌクレオチドが出現する位置で終止したDNA鎖
を得ることができる。一方,Messingらによって非常に便利なベクターが開発されたため,
4),5)
目的とするDNA領域が一本鎖DNAとして簡単にクローニングできるようになった。・・・
現在ではDNA塩基配列の決定にはもっぱらこの酵素法が使われるようになっている。
この方法の原理は,1)目的とするDNA断片を一本鎖DNAファージにクローニングし,2)
挿入したDNAの近傍に15塩基以上の長さのプライマーDNAをはり付け,3)ddNTP存
在下でKlenow酵素により修復合成を行う。合成されたDNAを鋳型から外しシークエンスゲル
にかけて分析する。」(183頁本文下から11行∼184頁本文下から5行)
c「1)A.M.Maxam,W.Gilbert,,74,560(1977).Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.
2)A.M.Maxam,W.Gilbert,“MethodsinEnzymology”,ed.byL.Grossman,K.Moldave,
AcademicPress,NewYork,Vol.65,p.499(1980).
3)F.Sanger,S.Micklen,A.R.Coulson,,74,5463(1977).Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.
...
5)J.Messing,“MethodsinEnzymology”,ed.byR.Wu,L.Grossman,K.Moldave,Academic
Press,NewYork,Vol.101,p.20(1983).」(184頁脚注1∼7行)
(イ)乙4論文(1980(昭和55)年発行の「Molec.gen.Genet.」179巻
の13頁から20頁までに掲載されたUlfHenningらによる「ClonedStructural
Gene()foranIntegralOuterMembraneProteinofK-12ompAEscherichiacoli
」と題するLocalizationonHybridPlasmidpTU100andExpressionofaFragmentoftheGene
論文)には,以下の各記載がある(なお,表題(副題を除く。)の訳は,「大腸菌
ompのK-12株の不可欠な外部膜タンパク質のクローニングされた構造遺伝子(
)」である(乙4・1頁2∼3行)。)。A
a「pTU100は,7.5kbのEcoRIフラグメント(野生型の遺伝子を保持)のompA
pSC101へのクローニングにより構築されたハイブリッドプラスミドである・・・。」(乙4・
1頁5∼7行)
b「pTU102mutant...inpTU100(pTU102pTU100における変異体・・・)」ompAompA
(原文14頁左欄表2の「pTU102」の欄)
c「pTU201RIfragmentwith31frompTU102clonedinpBR325(pTU201pBR325にEcoompA
おいてクローニングされたpTU102に由来する31を有するRIフラグメント)」ompFEco
(原文14頁左欄表2の「pTU201」の欄)
d「ForDNA-sequencingendonucleasefragmentswere...furtherprocessedasdescribed
byMaxamandGilbert(1977).(DNA配列決定のため,制限酵素切断フラグメントは,・・・
Maxam及びGilbert(1977年)に記述されているように更に処理された。)」(原文14頁
右欄21∼24行)
IsolationandSequencingofRestrictionEndonucleaseFragmentsfrompTU201e「
pTU201DNAwassubjectedtoHIdigestion.(pTU201に由来する制限酵素切断フラグメントBam
の単離及び配列決定
pTU201のDNAがHIによって切断された。)」(原文16頁右欄下から17∼15行)Bam
f「83bpフラグメントのDNA配列決定によって(図2),6つの可能な読み取り枠の
1つにおいて,タンパク質Ⅱの230位∼255位のアミノ酸残基に対応する塩基配列が示

された。500bpのフラグメントは,188位∼223位のアミノ酸残基に対応する配列を
含んでいた(図2)。」(甲57(乙4)につき,原告から提出された2種類の抄訳文のうち,
「[甲57抄訳]」と題するもの・1丁3∼末行)
g「Inthe500bpfragmenttheDNAsequencewasdetermined....(500bpフラグメント
において,DNA配列が・・・決定された。)」(原文17頁左欄4∼7行)
h「Maxam,A.M.,Gilbert,W.:AnewmethodforsequencingDNA.Proc.Natl.Acad.Sci.
USA74,560-564(1977)」(原文20頁左欄下から8∼7行)
(ウ)乙5論文(1980(昭和55)年発行の「NucleicAcidsResearch」8巻
13号の3011頁から3027頁までに掲載されたE.Bremerらによる「Nucleotide
sequenceofthegeneompAcodingtheoutermembraneproteinIIofEscherichia*
coliK-12」と題する論文)には,以下の各記載がある(なお,表題の訳は,「大
腸菌K-12株の外部膜タンパク質ⅡをコードするompA遺伝子のヌクレオチド配*
列」である(乙5・1頁2∼3行)。)。
a「クローニングされた大腸菌のDNA(を含む。)から,2271塩基対のヌクompA
レオチド配列が決定された。」(乙5・1頁6∼7行)
b「...subfragmentswere...sequencedusingthechemicaldegradativemethodsofMaxam
andGilbert(17).(・・・サブフラグメントは,・・・Maxam及びGilbertの化学分解法(17)を
用いて配列決定された。)」(原文3015頁下から13∼10行)
c「Maxam,A.M.andGilbert,W.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,560-564」(原74
文3023頁10∼11行)
(エ)乙2論文(1982(昭和57)年1月発行の「FEBSLETTERS」137巻
2号の171頁から174頁までに掲載されたShojiMizushimaらによる「AMINO
ACIDSEQUENCEOFTHESIGNALPEPTIDEOFOmpF,AMAJOROUTERMEMBRANEPROTEINOF
」と題する論文)には,以下の各記載がある(なお,表題の訳は,ESCHERICHIACOLI
「大腸菌の主要な外部膜タンパク質であるOmpFのシグナルペプチドのアミノ酸
配列」である(1頁2∼3行)。)。
DNAsequencinga「2.4.
Allsequencingmethodswereaccordingto[13].(2.4.DNA配列決定
配列決定の方法は,すべて,引用文献[13]に従った。)」(原文171頁右欄下から3∼
2行)
b「3.2.制限酵素地図とDNA配列決定
・・・我々は,・・・OmpFのN末端配列を見つけた。そして,N末端配列の上流のDN
A配列を決定した。」(1頁下から5行∼2頁2行)
c「[13]Maxam,A.M.andGilbert,W.(1980)MethodsEnzymol.65,499-560.」(原文17
4頁右欄26∼27行)
(オ)乙7論文(1982(昭和57)年発行の「NucleicAcidsResearch」10
巻7号の2367頁から2378頁までに掲載されたStewartT.Coleらによる
「ThenucleotidesequencecodingformajoroutermembraneproteinOmpAof
」と題する論文)には,以下の各記載がある(なお,表題のShigelladysenteriae
訳は,「志賀赤痢菌の主要外部膜タンパク質OmpAをコードするヌクレオチド配
列」である(1頁2∼3行)。また,志賀赤痢菌は,属(分類上,科Shigella
()までは,大腸菌と同一である。)に属する種の1つであEnterobacteriaceae
る。)。
a「志賀赤痢菌の遺伝子のヌクレオチド配列が決定され・・・た。」(1頁6∼7ompA
行)
DNASequenceAnalysisb「
TheDNAsequencingprocedureofMaxamandGilbert(25)wasemployedbutwiththe
modificationsofSmithandCalvo....(DNA配列決定の手続については,Maxam及びGilbert
の方法(25)を,Smith及びCalvoによる改変を加えて採用した。)」(原文2369頁3∼6
行)
c「ThecompositeDNAsequenceobtainedispresentedinFig.3.(得られた合成DNA配
列を図3に示す。)」(原文2371頁24∼25行)
d「25.Maxam,A.M.andGilbert,W.(1980)inMethodsinEnzymology,Colowick,S.P.and
Kaplan,N.O.Eds.,Vol.65,pp.497-560,AcademicPress,NewYork.」(原文2377頁下か
ら19∼17行)
(カ)甲31論文(1982(昭和57)年頒布)には,以下の各記載がある
o(なお,表題の訳は,「大腸菌のK-12株の主要な外部膜タンパク質をコードする
遺伝子の一次構造」である(乙3・1頁2∼3行)。また,甲31論文中のmpF
引用文献「(4)」とは,乙2論文である(甲31論文原文6967頁下から18行
参照)。)。
a「大腸菌のK-12株の主要な外部膜タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチドompF
配列が決定され・・・た。」(乙3・1頁下から15∼14行)
b「以前の研究(4)において,我々は,OmpFのアミノ末端領域をカバーするDNA配列
を決定し・・・た。本論文において,我々は,遺伝子の全DNA配列を示す。」(原ompF
告から提出された2種類の抄訳文のうち,「[甲31追加抄訳]」と題するもの・1丁下から
3行∼末行)
c「AllDNAsequencingmethodswereaccordingtoMaxamandGilbert(23).(DNA配列決
定の方法は,すべて,Maxam及びGilbert(23)に従った。)」(原文6959頁下から17∼1
6行)
d「Thenucleotidesequenceof1807bpcoveringtheentireregionshowninFig.2was
determined(Fig.3).(図2に示されたすべての領域をカバーする1807bpのヌクレオチ
ド配列が決定された(図3)。)」(原文6961頁下から11∼10行)
ompFome「Figure3.The1807basepairsDNAsequenceencompassingthegene.(図3.
遺伝子含む1807塩基対のDNA配列)」(原文6962頁図3脚注1行)pF
f「23.Maxam,A.M.andGilbert,W.(1980)inMethodsEnzymol.,Grossman,LandMoldave,
K.Eds.,Vol65,pp.499-560,AcademicPressInc.,NewYork.」(原文6968頁14∼15
行)
(キ)乙6論文(1984(昭和59)年発行の「MolGenGenet」195巻の3
21頁から328頁までに掲載されたG.Braunらによる「DNAsequenceanalysisof
thegene:ImplicationsfortheorganisationofanSerratiamarcescensompA
enterobacterialoutermembraneprotein」と題する論文)には,以下の各記載が
ある(なお,表題の訳は,「セラチア菌遺伝子のDNA配列分析:腸内細ompA
菌の外部膜タンパク質の編成への含意」である(1頁2∼3行)。また,セラチア
菌は,属(分類上,科()までは,大腸菌と同一であSerratiaEnterobacteriaceae
る。)に属する種の1つである。)。
a「....SequenceanalysiswasperformedeitherbythemethodofMaxamDNAtechniques
andGilbert(1980)orbyusingthedideoxychain-terminationreactions(Sangeretal.
1977)withtheshot-guncloningapproachofSangeretal.(1980).(DNA技術・・・配列
分析は,Maxam及びGilbertの方法(1980年)又はSangerらのショットガン・クローニング
・アプローチ(1980年)を加味したジデオキシ鎖停止反応(Sangerら,1977年)の使
用のいずれかにより実施された。)」(原文322頁左欄1∼6行)
b「TotryandunderstandthebiologicalpropertiesoftheOmpAproteinweS.marcescens
determinedthenucleotidesequenceofitsgene....(セラチア菌のOmpAタンパク質の生
物学的特性を試し,理解するため,我々は,その遺伝子のヌクレオチド配列を決定し・・・
た。)」(原文323頁左欄下から18∼15行)
c「MaxamAM,GilbertW(1980)SequencingendlabelledDNAwithbase-specificchemical
cleavages.In:ColowickSP,KaplanNO(eds)MethodsinEnzymology,vol65.AcademicPress,
NewYork,pp497-560」(原文328頁左欄15∼18行)
d「SangerF,NicklenS,CoulsonAR(1977)DNAsequencingwithchainterminating
inhibitors.ProcNatlAcadSciUSA74:5463-5467
SangerF,CoulsonAR,BarrellBG,SmithAJH,RoeBA(1980)Cloninginsinglestranded
bacteriophageasanaidtorapidDNAsequencing.JMolBiol143:161-178」(原文328頁左
欄下から8∼3行)
(ク)乙21論文(1986(昭和61)年12月発行の「JOURNALOFBACTERIOLOGY」
168巻3号の1277頁から1282頁までに掲載されたRichardS.Stephensら
による「SequenceAnalysisoftheMajorOuterMembraneProteinGenefrom
SerovarL」と題する論文)には,以下の各記載がある(なChlamydiatrachomatis2
お,表題の訳は,「クラミジア・トラコマチスの血清型L由来の主要な外部膜タ2
ンパク質の遺伝子の配列分析」である(1頁2∼3行)。また,クラミジア・トラ
コマチスは,分類上,Bacteria(真正細菌)界に属する点で,緑膿菌,大腸菌,志
賀赤痢菌,セラチア菌等と同一であるが,これらの細菌とは,属する門が異な
る。)。
a「クラミジア・トラコマチス由来の主要な外部膜タンパク質(MOMP)の構造遺伝子が
クローニングされ,配列決定された。」(1頁6∼7行)
b「MOMP遺伝子は,394のアミノ酸をコードし,3つのストップコドンで終止する1,
182bpのオープンリーディングフレームからなる。」(1頁13∼15行)
c「DNAsequencing....theM13clonesweresequencedbythedideoxymethodas
previouslydescribed(16,23).(DNA配列決定・・・M13クローンは,以前に記述された
ジデオキシ法(16,23)によって配列決定がされた。)」(原文1278左欄下から38∼33
行)
d「16.Messing,J.1983.NewM13vectorsforcloning.MethodsEnzymol.101:20-78.」
(原文1282頁左欄5∼6行)
e「Sanger,F.S.,S.Nicklen,andA.RCoulson.1977.DNAsequencingwith
chain-terminatinginhibitors.Proc.Natl.Acad.Sci.USA74:5463-5467.」(原文1282
頁左欄下から3行∼末行)
(3)本願発明の進歩性について
ア本願発明は,前記第2の2のとおり,「別紙配列表記載のDNA配列(以下
『本件DNA配列』という。)を有する,のOMPFをコードするP.aeruginosa
ヌクレオチド」の発明を選択的に含むものであるから,以下,本件優先日当時の当
業者にとって,のOMPF遺伝子のDNA配列につき,これを本件P.aeruginosa
DNA配列(これは,のATCC33354株に由来するOMPF遺伝子のDP.aeruginosa
NA配列である(本願明細書段落【0015】参照)。)であると決定することが
容易に行い得たものであるか否かについて検討する。
イ(ア)前記(1)及び(2)アのとおり,引用例には,のPAO1株に由来P.aeruginosa
するOMPFのDNA全長を含むプラスミド及びそのDNA断片であるプラスミド
のクローニング及びサブクローニングの方法が開示されており,かつ,本件優先日
当時の当業者は,本件認定知見を有していたものであるから,のP.aeruginosa
ATCC33354株に由来するOMPFのDNA全長を含むプラスミド及びそのDNA断
片であるプラスミドをクローニング及びサブクローニングすることは,引用例に記
載された方法に本件認定知見を適用することにより,容易にこれを行い得たものと
認めることができる。
(イ)そして,前記(2)イのとおり,本件優先日当時,DNA配列の決定方法とし
て,マクサム−ギルバート法及びジデオキシ法並びにこれらを改良した方法が知ら
P.aeruginosaれており,これらの方法を用いて,実際に,各種真正細菌(なお,
と同様,いずれも,グラム陰性菌である。)の外部膜タンパク質につき,クローニ
ングされたDNAからその配列が決定された例が少なからず存在したのであるから,
本件優先日当時の当業者にとって,クローニングされたのATCC33354P.aeruginosa
株に由来するOMPF遺伝子からそのDNA配列を決定する方法は,周知の技術で
あったと認めることができる。
そうすると,上記のとおり,引用例に記載された方法に本件認定知見を適用して,
のATCC33354株に由来するOMPFのDNA全長を含むプラスミド及P.aeruginosa
びそのDNA断片であるプラスミドを容易にクローニング及びサブクローニングす
ることができた本件優先日当時の当業者にとって,上記周知技術を適用することに
より,のATCC33354株に由来するOMPF遺伝子のDNA配列を本件P.aeruginosa
DNA配列であると決定することもまた,容易にこれを行い得たものと認めるのが
相当である(なお,本願明細書には,「・・・遺伝子を,約500bpの重複領域
を有する二つの重複断片にサブクローン化した。OMPF遺伝子と隣接領域のDN
A配列をこれらの二つのサブクローンから決定した。遺伝子の両DNA鎖を完全に
配列決定した(Sanger法による)。」との記載(段落【0016】)がある。)。
(ウ)また,本願発明が奏する作用効果についても,原告は,「OMPF遺伝子
のDNA配列を正確に決定することは,ワクチンの生産にとって重要であるから,
本願発明において同DNA配列が正確に決定されたこと自体が,顕著な作用効果で
あるというべきである」と主張するが,原告が主張する上記作用効果は,同DNA
配列が正確に決定されることにより奏する作用効果として,当業者が当然に予測し
得る範囲内のものであって,これを格別顕著なものということはできない。
(エ)したがって,本願発明は,引用例に記載された発明,本件認定知見及び上
記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められ,
また,その奏する作用効果も,格別顕著なものとはいえないから,本願発明は,進
歩性を欠くものといわざるを得ない。
(4)これに対し,原告は,OMPFないしその遺伝子の大腸菌宿主細胞に対す
る毒性を理由として,本件優先日当時の当業者にとって,引用例に記載された方法
でOMPF遺伝子をクローニングし,そのDNA配列を決定することは容易に行い
得るものではなかった旨主張する。
しかしながら,引用例に記載されたプラスミドのうち,少なくとも,DNA全長
を含むプラスミドpHN4及びpWW13並びにDNA断片であるプラスミドpWW1及びpWW4
について,原告が主張する毒性の問題が生じないことは,前記1(3)カのとおりで
あるから,当該毒性を理由とする原告の主張は,すべて採用することができない。
(5)原告は,上記(4)のほか,種々の根拠を挙げ,本件優先日当時の当業者にと
って,引用例に記載された方法でOMPF遺伝子をクローニングし,そのDNA配
列を決定することは容易でなかったと主張するので,以下,順次検討する。
ア原告は,本件優先日前においては,DNAの配列決定が行われなくても,遺
伝子をクローニングすれば,一流の科学雑誌に掲載され,学位論文として認められ
る程度の価値があったのであるし,DNA配列を正確に決定するだけで,博士号を
授与されることが多かったのであるから,これらの事実は,本件優先日前の技術水
準では,遺伝子をクローニングしてそのDNA配列を決定することが困難であった
ことを示すものであると主張する。
しかしながら,本件優先日当時,遺伝子をクローニングすること又は遺伝子のD
NA配列を正確に決定することに学術的な意義が認められるものであったとしても,
そのことにより当然に,遺伝子のDNA配列を決定することが当業者にとって困難
であったということはできないから,原告の上記主張は,前記(3)の結論を左右す
るに足りるものではない。
イ原告は,引用例の著者らが,本件優先日の2年後である1989(平成元)
年6月に発表した甲2論文において,OMPF遺伝子のDNA配列につき,自ら決
定した配列ではなく,本願発明の発明者らによる甲5論文に記載された配列を引用
しているのであるから,引用例の著者らでさえも,引用例の記載に基づいてOMP
F遺伝子のDNA配列を決定することが困難であったと主張する。
しかしながら,引用例の著者らが,甲2論文の執筆の際,OMPF遺伝子のDN
A配列に係る文脈において,甲5論文を引用し,引用例を引用しなかったのが当然
であることは,前記1(3)オのとおりであるところ,本件認定知見を有していた当
業者である引用例の著者らにとって,甲2論文(1988(昭和63)年10月3
1日原稿受領)の執筆前に頒布されていた甲5論文(1988(昭和63)年1月
頒布)において,のATCC33354株(甲5論文の下記各記載参照)に由P.aeruginosa
来するOMPF遺伝子のDNA配列が既に決定されていた以上,のP.aeruginosa
PAO1株に由来するOMPF遺伝子のDNA配列の決定を急がなかったとしても,特
段不合理ではないというべきであるから,引用例の著者らが,甲2論文の執筆時点
において,のPAO1株に由来するOMPF遺伝子のDNA配列を決定P.aeruginosa
していなかったことをもって,直ちに,既にクローニング及びサブクローニングが
されていたOMPF遺伝子のDNA配列を決定することが,本件優先日当時の当業
者にとって容易でなかったということはできない。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
(ア)「Bacterialstrainsandgrowthconditions.serotype12(...;ATCCP.aeruginosa
33359)wasaclinicalisolate....serotype6wasobtainedfromtheAmericanP.aeruginosa
P.aeruginosaTypeCultureCollection,Rockville,Md.(ATCC33354).(細菌株及び培養条件
のセロタイプ12(・・・ATCC33359株)は,・・・臨床単離体であった。のセP.aeruginosa
ロタイプ6は,Maryland州Rockville所在のtheAmericanTypeCultureCollectionから得た
(ATCC33354株)。)」(原文155頁右欄8∼12行)
P.aeruginosaP.(イ)「IsolationofporinFclones.SincetheoriginalATCCstrain
serotype6becameavailabletousduringthesestudies,itwasdecidedtocarryaeruginosa
outalltheDNAworkonthisstrainratherthanontheclinicalisolate.(のポP.aeruginosa
リンFのクローンの単離この研究中,のセロタイプ6に属するATCC原株が利用P.aeruginosa
可能となったので,前記臨床単離体ではなく,この株に基づき,DNAに係るすべての作業を
行うこととした。)」(原文156頁右欄下から22∼19行)
ウ原告は,また,引用例の著者らが,引用例の発表からOMPF遺伝子のDN
A配列の決定まで,13年(1992年の登録に係るDNA配列の決定までであっ
ても6年)もの長期間を要したことは,OMPF遺伝子のDNA配列の決定が困難
であったことを裏付ける旨主張するが,上記イにおいて説示したところに照らせば,
引用例の著者らが,引用例の発表からOMPF遺伝子のDNA配列の決定(199
2年の登録に係るもの)まで6年の期間を要したことをもって,直ちに,既にクロ
ーニング及びサブクローニングがされていたOMPF遺伝子のDNA配列を決定す
ることが,本件優先日当時の当業者にとって容易でなかったということはできない。
なお,引用例の著者らが,1992年の登録の際,既に,引用例においてサブク
ローニングされたpWW13に基づき,OMPFのアミノ酸配列等の各全長につき正し
い結論を得ていたことは,前記1(3)イにおいて認定したとおりである。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
エ原告は,引用例に記載された制限酵素地図と甲11論文に記載された制限酵
素地図とが異なることから,引用例に接した当業者は,たとえOMPF遺伝子を含
むコスミドクローンを得たとしても,そこにはOMPF遺伝子は含まれないものと
ミスリードされてしまうと主張する。
しかしながら,甲11論文は,ブリティッシュコロンビア大学が1988(昭和
63)年8月にPHD取得のための水準を満たすものと認めた論文であり,また,
同論文の下記の記載のとおり,著者であるWendyAnneWoodruffが同論文の学術目的
の複製等に同意したのは,同年9月21日のことであり,いずれにせよ,同論文は,
本件優先日(1987(昭和62)年6月3日)当時には,当業者が利用すること
ができる状態に置かれていなかったのであるから,引用例に記載された制限酵素地
図と甲11論文に記載された制限酵素地図との齟齬により,本件優先日当時の当業
者がミスリードされるということはあり得ない。したがって,原告の上記主張は,
失当である。
「Inpresentingthisthesis...,IagreethattheLibraryshallmakeitfreelyavailable
forreferenceandstudy.Ifurtheragreethatpermissionforextensivecopyingofthis
thesisforscholarlypurposesmaybegrantedbytheheadofmydepartmentorbyhisorher
representatives....
WendyWoodruff
DepartmentofMicrobiology
TheUniversityofBritishColumbia
...
DateSeptember21,1988(・・・この論文の提出に当たり,私は,大学図書館が,参考文献と
して,また,研究目的で,これを自由に利用可能な状態に置くことに同意します。さらに,私
は,学部長又はその代理人が,この論文を学術目的で広範囲に複製する許諾を与えることに同
意します。・・・
WendyWoodruff(判決注:署名である。)
微生物学部
ブリティッシュコロンビア大学
・・・
日付1988年9月21日)」(原文2丁)
オ原告は,引用例においては,単離されたタンパク質の全長の推定アミノ酸長
が誤って410アミノ酸とされており,これによれば,対応する遺伝子の全長は1
230塩基長と計算されるから,引用例の記載に基づいてタンパク質又は遺伝子を
得た当業者は,OMPF又はOMPF遺伝子が得られなかったとミスリードされて
しまうと主張する。
しかしながら,前記1(3)ウのとおり,引用例には,「天然のタンパク質Fにお
ける約410アミノ酸」との記載があるのみであり,これは,引用例の著者らが,
いまだOMPFのアミノ酸配列等も明らかでない状況下で推定した値であることは
明らかである。そして,そのようにOMPFのアミノ酸配列等が明らかでない状況
下で引用例に接した当業者は,得られたタンパク質又はその遺伝子がOMPF又は
その遺伝子であると同定するためには,当該タンパク質の長さが約410アミノ酸
であるか否かを確認するのではなく,引用例に記載されたのと同様の方法,すなわ
ち,モノクローナル抗体に対する反応,SDSゲル電気泳動法における挙動及びタ
ンパク質の熱変更性において,発現させたタンパク質が天然のOMPFとの比較に
おいて同様の結果を示すか否かによると考えられるから,引用例に上記記載がある
としても,本件優先日当時の当業者が,引用例に記載された方法で真にOMPF又
はその遺伝子を得たのであれば,それがOMPF又はその遺伝子ではないとミスリ
ードされるとは考えられない。
したがって,原告の上記主張を採用することはできない。
カ原告は,本願発明は,引用例に記載された方法ではなく,OMPFの部分配
列を決定し,ハイブリダイゼーションプローブを調製してファージベクターを用い
る方法を採用し,プロモーターを工夫するなどして,クローニング,配列決定等に
おける困難性を克服したものであり,この点において,本願発明には進歩性が認め
られるべきであると主張する。
しかしながら,本願発明は,前記第2の2のとおり,「本件DNA配列を有する,
P.aeruginosaのOMPFをコードするヌクレオチド,またはE.coli細胞に対して
毒性である免疫原性ポリペプチドをコードするそのフラグメント」という物の発明
であるから,本願発明におけるOMPF遺伝子の配列決定等の方法の優位性をいう
原告の上記主張は,本願発明の要旨に基づかないものとして,失当である。
(6)取消事由3及び4についての結論
前記(3)のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明,本件認定知見及び本
件優先日当時の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたもの
であり,また,その奏する作用効果も,格別顕著なものとはいえないから,本願発
明は,進歩性を欠くものといわざるを得ないところ,前記(4)及び(5)のとおり,こ
れに対する原告の各主張は,いずれも,上記判断を左右するに足りるものではない
から,結局,取消事由3及び4は,いずれも理由がない。
4結論
よって,審決取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求は棄却されるべき
である。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官
石原直樹
裁判官
榎戸道也
裁判官
浅井憲
(別紙)配列表
gccacccaagttgtgcggtgattgttggacaactaactgaccatcaagatggggatttaa60
cggatgaaactgaagaacaccttaggcgttgtcatcggctcgctggtt108
MetLysLeuLysAsnThrLeuGlyValValIleGlySerLeuVal
gccgcttcggcaatgaacgccttcgcccagggccagaactcggtagag156
AlaAlaSerAlaMetAsnAlaPheAlaGlnGlyGlnAsnSerValGlu
atcgaagccttcggcaagcgctacttcaccgacagcgttcgcaacatg204
IleGluAlaPheGlyLysArgTyrPheThrAspSerValArgAsnMet
aagaacgctgacctgtacggcggctcgatcggctacttcctgaccgac252
LysAsnAlaAspLeuTyrGlyGlySerIleGlyTyrPheLeuThrAsp
gacgtcgagctggctctgtcctacggtgagtaccacgatgttcgtggc300
AspValGluLeuAlaLeuSerTyrGlyGluTyrHisAspValArgGly
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弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
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興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
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なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
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詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
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◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
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◎事務所の名称は自由に選択可能
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