弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 一審原告らの一審被告東京都多摩建築指導事務所長に対する本件控訴をいずれ
も棄却する。
2 一審原告らの一審被告東京都建築主事に対する検査済証交付処分の取消しの訴
えを却下する。
3 原判決中,一審被告東京都多摩建築指導事務所長敗訴部分を取り消す。
4 前項に係る別紙当事者目録第1及び第4の1記載の一審原告らの訴えをいずれ
も却下する。
5 訴訟費用は,第1,2審を通じ,一審原告らの負担とする。
       事実及び理由
第1 控訴の趣旨
(一審原告らの控訴の趣旨)
 原判決を次のとおり変更する。
1 一審被告東京都多摩建築指導事務所長がI株式会社,J株式会社及びK株式会
社に対し原判決別紙土地目録記載の土地(以下「本件土地」という。)上に存在す
る原判決別紙建築物目録記載の建築物(以下「本件建物」という。)について次の
命令を発しないことが違法であることを確認する。
「本件土地上に存在する本件建物について高さ20mを超える部分を除却せよ。」
2 一審被告東京都多摩建築指導事務所長は,I株式会社,J株式会社及びK株式
会社に対し,本件土地上に存在する本件建物について,次の命令をせよ。
「本件土地上に存在する本件建物について高さ20mを超える部分を除却せよ。」
3 一審被告東京都建築主事がI株式会社に対して本件土地上に存在する本件建物
について平成13年12月20日付けでした検査済証の交付処分を取り消す。(当
審における訴えの変更後の申立て)
(一審被告東京都多摩建築指導事務所長の控訴の趣旨)
1 原判決中,一審被告東京都多摩建築指導事務所長敗訴部分を取り消す。
2 上記部分に係る
(1)(本案前)
 別紙当事者目録第1及び第4の1記載の一審原告らの訴えをいずれも却下する。
(2)(本案)
 別紙当事者目録第1及び第4の1記載の一審原告らの請求をいずれも棄却する。
第2 事案の概要
 1 本件は,I株式会社が国立市内の本件土地上に建設中であった本件建物につ
いて,一審原告らが,本件建物は建築基準法68条の2に基づく「国立市地区計画
の区域内における建築物の制限に関する条例」に違反した違法建築物であり,一審
原告らは本件建物の違法部分により日照,景観等について被害を受けると主張し
て,一審被告東京都多摩建築指導事務所長に対し,本件建物の違法部分について,
建築基準法9条1項に基づく建築禁止命令及び除却命令を発しないという不作為が
違法であることの確認(本件不作為違法確認請求)並びに建築禁止命令及び除却命
令の発令(本件義務付け請求)を求め,また,一審被告東京都建築主事に対し,本
件建物について検査済証を交付してはならないという不作為(本件予防的不作為請
求)をそれぞれ求めて無名抗告訴訟を提起した事案である。
 原判決は,一審被告東京都多摩建築指導事務所長に対する本件不作為違法確認請
求につき,一審原告らの一部の者について原告適格を認め,その請求の一部を認容
し,その余の一審原告らの訴えを却下し,一審被告東京都多摩建築指導事務所長に
対する本件義務付け請求及び一審被告東京都建築主事に対する本件予防的不作為請
求につき,一審原告らの訴えをいずれも却下した。
 一審原告ら及び一審被告東京都多摩建築指導事務所長は,それぞれの敗訴部分を
不服として控訴した。
 なお,本件建物が完成し,平成13年12月20日付けで一審被告東京都建築主
事が本件建物について検査済証を交付したことから,一審原告らは,当審におい
て,一審被告東京都多摩建築指導事務所長に対する本件不作為違法確認請求及び本
件義務付け請求を除却命令に係るもののみに整理し,一審被告東京都建築主事に対
する訴えを本件予防的不作為請求の訴えから検査済証交付処分の取消しの訴えに交
換的に変更した。
2 法令の定め及び前提事実
 次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2,1及び2記載のと
おりであるから,これを引用する。ただし,原告Lに関する部分は除き(同人は本
件訴えを取り下げ,一審被告らはこれに同意した。),当事者目録は本判決別紙当
事者目録とする。また,平成14年4月1日に組織名の変更があったことに基づ
き,「東京都多摩西部建築指導事務所」を「東京都多摩建築指導事務所」と読み替
える。
 ① 原判決16頁末行から17頁5行目までを「ヌ Iらは,平成13年7月2
2日の時点で,本件建物の躯体の工事を終え,原判決言渡後,本件建物を完成させ
た。一審被告建築主事は,同年12月20日,Iに対し,本件建物についての検査
済証を交付し(この検査済証の交付を,以下「本件検査済証交付処分」とい
う。),Iは,現在,本件建物の販売行為を行っている。(甲90,101,11
6の1~4,乙56~59,弁論の全趣旨)」に改める。
 ② 原判決17頁18行目から22行目までを「なお,本件建物の北側には,ゴ
ミ置き場,ゲスト用パーキング,バイク置き場(36台),自転車置き場(535
台)が設けられており,本件建物の駐車場は,ゲスト用パーキングを含め224台
分である。(甲45,101,116の1~4)」に改める。
 3 当事者の主張
(一審原告らの主張)
 (1) 原告適格
 次のとおり付加訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2,3(原告らの
主張),(1)(17頁下から2行目より23頁8行目まで)記載のとおりである
から,これを引用する。
 ① 原判決20頁8行目及び16行目の「本建築」を「本件地区」に改める。
 ② 原判決21頁1行目の次に改行して次のとおり加える。
「(エ) 圧迫感のない開放的な環境で生活する利益
 過密な環境で圧迫感を受けながらの生活は,そこに居住する者に精神的なストレ
ス等の弊害をもたらすものであり,圧迫感のない開放的な環境は,快適な生活を実
現する重要な因子である。本件建築条例の高さ制限の目的の中には,周辺住民の圧
迫感のない開放的な環境での生活の確保が含まれており,本件建築条例の高さ規制
が周辺住民の圧迫感のない開放的な環境で生活する利益を個別具体的な利益として
保護していることは明らかである。」
 ③ 原判決21頁16行目の次に改行して「また,一審原告Mは,本件建物につ
き検査済証が交付されたことにより,販売行為が行われ,購入者による使用行為が
開始されると,教育環境(景観,日照,圧迫感のない開放的な環境)についての上
記損害が強固に固定化し,これを回復することが困難な状況に陥る。」を加える。
 (2) 本件義務付け請求及び本件不作為違法確認請求について
 次のとおり付加訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2,3(原告らの
主張),(2)(23頁10行目から48頁12行目まで)記載のとおりであるか
ら,これを引用する。ただし,原告Lに関する部分を除く。
 ① 原判決23頁16行目の末尾に「また,一審被告建築指導事務所長は,一審
判決によって,本件建物のうち高さ20mを超える部分が違法建築であり,これを
是正すべき旨の是正命令権限を行使しないことが違法であると確認されたにもかか
わらず,除却等の是正命令を発することを拒絶している。」を加える。
 ② 原判決25頁4行目から27頁8行目までを次のとおり改める。
「(a) 建築基準法3条2項の解釈
 建築基準法3条2項は,「…条例の規定の施行の際現に建築…の工事中の建築物
…がこれらの規定に適合せず,又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合に
おいては,当該建築物…又は建築物…の部分に対しては,当該規定は,適用しな
い。」と規定するところ,「現に建築…の工事中」であるといい得るためには,物
理的に建築物の一部である人工の建造物の存在が必要であり,直接基礎の場合に
は,建築物の一部である基礎工事がある程度進行しており,少なくとも配筋工事が
なされていること,杭基礎をする場合には,実際に建築物の一部である杭を打ち,
かつ杭工事がある程度進行していることを要すると解すべきである。
 上記解釈が正当であることは,以下のとおり,条文の文言及び立法趣旨から明ら
かである。
 すなわち,建築基準法3条2項は,「現に建築…の工事中の建築物」については
不適合となる新規定の適用は除外すると規定するが,「建築物」とは,同法2条1
号によれば,「土地に定着する工作物のうち,屋根及び柱若しくは壁を有するも
の」とされる。ところで,「土地に定着する」とは,現に土地に付着しており,か
つ社会通念上その性質として継続的に付着した状態となっていることをいう。そし
て,建築物の部分である躯体そのものの工事の一部である基礎工事が既になされて
(杭基礎の場合は杭打ちが既になされて)初めて「建築物」があったと考えられる
のであり,根切り工事を含む土地の掘削などの土工事をしているだけでは,何ら
「建築物」は存しないことは明らかである。そうすると,土工事のみでは同法3条
2項にいう「現に建築…の工事中の建築物」に該当しないと解される。換言すれ
ば,「現に建築…の工事中の建築物」に該当するためには,文言上,(杭を打たな
い)直接基礎の場合には,建築物の一部である基礎工事がある程度進行しており,
少なくとも配筋工事がなされていること,杭基礎をする場合には,実際に建物の一
部である杭を打ち,かつ杭工事がある程度進行していることを要すると解すべきで
ある。また,同法3条2項が,同法6条1項や3条3項3号で用いられている「工
事の着手」という文言を用いず,これらと明確に区別して,「現に建築…の工事中
の建築物」という文言を用いていることからも,上記見解が正当であると解され
る。
 そして,建築基準法3条2項の立法趣旨は,建築主の既得権の保護と新たな規制
の目的の達成との調整を図ることであり,この立法趣旨からも,建築主の既得権の
保護と新たな規制の目的の達成との調整点としては,基礎工事又は杭工事が開始さ
れてある程度経過してから新法令の適用除外を認める見解が妥当と解される。
 さらに,「現に建築…の工事中の建築物」に対する保護は,その沿革,文言上の
体裁からいって,建築基準法3条2項の核心である「現に存する建築物」に対する
規定について,その外延を拡大したものと解されるものであって,「現に存する建
築物」に対する規定に準じて解するべきであり,土地に付着する物が何も存在しな
い場合に,「現に建築…の工事中の建築物」が存したとは到底いえない。
 これに対し,根切り工事の開始時点で建築基準法3条2項の適用除外を認める見
解もあるが,同条項の「現に存する建築物」(既存建物)及び「現に建築…の工事
中の建築物」には確認を受けていないものも含まれるとされているので,この見解
によれば,新法が成立した後新法が施行されるまでの間にほんの僅かな土工事を開
始することにより,確認の有無にかかわらず全てのケースにおいて適用除外が認め
られることになり,同条項の存在意義自体が全くなくなるほか,単なる土の掘削だ
けではそれが根切り工事かどうかも不明であり,基準としては極めて不当であるこ
とから,このような見解をとることは誤りである。
 なお,従来からの慣習上,根切り工事が基礎工事として扱われていたという事実
はなく,根切り工事が建築基準法3条2項の「現に建築…の工事中の建築物」の
「工事」に含まれると解するのが建築基準法制定以来の行政慣例ないし実務であっ
たということもない。
 すなわち,「基礎」とは,上部構造からの荷重を地盤に伝える下部構造の総称を
意味するものであり,杭工事は基礎工事に含まれるが,根切り工事(土工事)は基
礎工事に含まれず,第31回国会(昭和34年)の参議院建設委員会において,建
設省住宅局長は,根切り工事は建築工事そのものとは扱っていないと述べ,昭和4
4年全建行連発4号は,「基礎工事着手」には「根切りを含まず」と明言していた
のであり,「現に建築…の工事中の建築物」の工事は配筋工事以降あるいは基礎工
事開始以降の工事を指し,その基礎工事に根切りは含まれないとの見解が長年にわ
たり公的に維持されてきたのである。
 なお,一審被告らが証拠として提出したアンケートに対する回答は,「現に建築
…工事中の建築物」が「建築の工事中」にすり替えられて質問されているため,
「工事の着手」の問題と混同して回答しているなど,全般的に不正確な回答である
から,これらの回答をもって,根切り工事が「現に建築…工事中の建築物」の「工
事」に含まれるとの行政解釈が広く行き渡っているとはいえない。」
 ③ 原判決27頁9行目から14行目までを次のとおり改める。
「(b) 本件建築条例施行時における,本件建築工事の進捗状況
 本件建築条例施行時である平成12年2月1日においてなされていた土工事は,
根切り工事自体の10%程度であり,工事全体からいえば400分の1程度であ
る。基礎工事,杭工事は全くなされていなかった。しかも,一審被告らの主張する
4691厭の中には前所有者(N株式会社)が建物を取り壊す際に地中に大量に埋
めた建築物のコンクリートのガラ(産業廃棄物)を除去した分が含まれている。こ
のような産業廃棄物の除去は根切り工事ではなく,根切り工事の準備作業に過ぎな
い。また,本件マンションの地下になる部分に存する前所有者の電算センターの地
下室内の残土の搬出とコンクリート壁の取り壊しは平成12年3月になってから行
われた。以上によれば,3月以降にガラの除去が完全に終わるまでになされていた
土工事は,ガラの除去のための土工事であり,根切り工事ではないというべきであ
る。」
 ④ 原判決45頁18行目の「建築工事を続行している。」を「建築工事を続行
し,完成させて,平成13年12月16日,本件建物が竣工した。」と改める。
 ⑤ 原判決47頁末行から48頁3行目までを「したがって,これを防止するた
めには,一刻も早く本件建物について高さ20mを超える部分の除却を命ずる必要
がある。一審被告建築指導事務所長は本件是正命令を発するタイミングに関する裁
量を有しない。」に改める。
 (3) 本件検査済証交付処分の取消しの訴えについて
 ア 本案前の主張
 (ア) 審査請求手続前置について
 特別法で不服申立前置が採用されている場合でも,これを強制することが適切で
ない場合には,その要件は緩和され,「処分,処分の執行又は手続の続行により生
ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき」(行政事件訴訟法8条2項2
号),「その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき」(同項3号)は,
裁決を経ないで,処分の取消しの訴えを提起することができる。
 本件マンションは極めて大規模なマンションであり,本件マンションの違法部分
の住戸は140戸である。本件マンションが販売されると,新たに140人を超え
る所有者及び占有者が出現する。これほど多数の所有者及び占有者が出現した場
合,占有者を排除しつつ違法部分を除去して違法状態を解消するためには,実際上
多大な困難が伴うであろうことは,明らかであり,また,現時点では危惧に留まっ
ているプライバシーの侵害や交通事故の危険性の増大といった生活環境の悪化も現
実化する。さらに,本件マンションについて使用行為が開始されることにより,そ
の存在自体が既成事実化し,是正命令自体が実際上困難となる。しかも,一審被告
ら行政当局関係者は,本件マンションが適法建築物であるとの見解に固執してお
り,本件において一審原告らに不服申立前置を強制することは全く無意味である。
 以上のとおり,本件においては,行政事件訴訟法8条2項2号の「緊急の必要」
及び同項3号の「正当な理由」があり,本件検査済証交付処分の取消しの訴えは,
建築審査会への審査請求を経なくても適法である。
 (イ) 原告適格について
 前記(1)と同じ。
 (ウ) 訴えの利益について
 前記(ア)のとおり,本件マンションは極めて大規模なマンションであり,本件
マンションが販売されて使用が開始された場合には,本件マンションの違法部分に
は極めて多数の入居者が入居する。多数の入居者がいったん入居してしまえば事後
的にこれを本件マンションから排除することが実際上極めて困難であることは明ら
かである。本件マンションについて検査済証が交付され,多数の入居者によって本
件マンションの使用が具体的に開始された場合,日照阻害,環境破壊などは入居に
より侵害態様がより強固となり固定化される。また,現時点では危惧に留まってい
るプライバシーの侵害や交通事故の危険性の増大といった生活環境の悪化が現実化
する。さらに,本件マンションについて使用行為が開始されることにより,その存
在自体が既成事実化し,本件是正命令の執行自体も実際上著しく困難となる。この
ように,本件マンションについて検査済証が交付されたことにより,一審原告ら
は,日照阻害,圧迫感,景観破壊等について不可逆的な損害を被ることになるので
あり,一審原告らが本件検査済証交付処分の取消しを求める法律上の利益を有する
ことは明らかである。
 行政事件訴訟法上,行政処分の取消判決には特殊の効力として拘束力が付与され
ている。行政処分の取消判決がなされた場合,取消判決の拘束力により,行政庁に
は判決の趣旨に従って行動しなければならないとの実体法上の義務が発生する。建
築物が建築基準法に適合性がないことを理由に検査済証交付処分が判決によって取
り消された場合,特定行政庁は,以後,当該建築物が違法であるとの前提に立って
行動すべき義務を負う。通常の場合は,是正命令権限の行使に関して特定行政庁に
裁量権があるので,仮に建築物が違法であっても直ちに是正命令権限を行使すべき
義務は負わない。しかし,是正命令権限に係る裁量権が収縮し,特定行政庁が違法
建築物に対して直ちに是正命令権限を行使すべき事情がある場合において,違法建
築物であるとの理由により検査済証交付処分が取り消された場合には,違法建築物
であるとの前提により行動すべき義務を負っている特定行政庁としては,直ちに是
正命令権限を行使しなければならない。すなわち,是正命令権限に係る裁量権が収
縮していると認められる事情がある場合には,検査済証交付処分の取消判決の効果
は,単に当該検査済証交付処分を取り消すとの点にとどまらず,取消判決の拘束力
を介して,特定行政庁に対して建築物除却命令の発令をも義務付けるとの効果を有
する。本件の場合,前記「一義的明白性」において述べたとおり,一審被告建築指
導事務所長の是正命令権限に係る裁量が収縮しているのであるから,仮に日照阻
害,景観破壊等が本件マンションが存在することによる損害であるとしても,日照
阻害,景観破壊等が一審被告建築主事に対する本件検査済証取消請求訴訟の原告適
格を基礎づける利益侵害になる。
 イ 本件検査済証交付処分の違法性について
 前記(2),ウ,(ア),a「本件建物の違法性」で述べたとおり,本件建物
は,高さ20mを超える部分において建築基準法令に適合しない違法建築物であ
る。
 よって,本件建物が建築基準関係規定に適合していることを確認した本件検査済
証交付処分は違法である。
(一審被告らの主張)
 (1) 原告適格
 原判決の「事実及び理由」の第2,3(被告らの主張),(1)(52頁4行目
から53頁7行目まで)記載のとおりであるからこれを引用する。
 (2) 無名抗告訴訟の要件
 次のとおり改めるほか,原判決の「事実及び理由」の第2,3(被告らの主
張),(2)(53頁9行目より同頁下から5行目まで)記載のとおりであるか
ら,これを引用する。
 原判決53頁9行目から10行目の「不作為請求訴訟であれ,」までを「一審原
告らの控訴の趣旨第1項及び第2項は,」に改める。
 (3) 本件義務付け請求及び本件不作為違法確認請求について
 次のとおり付加訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第2,3(被告らの
主張),(3)(53頁下から3行目より67頁2行目まで)記載のとおりである
から,これを引用する。ただし,原告Lに関する部分を除く。
 ① 原判決55頁7行目から57頁9行目までを次のとおり改める
「(a) 建築基準法3条2項の解釈
 (あ) 根切り工事,山留め工事の概念
 根切り工事とは,建造物の基礎または地下室部分を築造するために,地盤面以下
の土を掘削して所要の空間を作ることをいう。形の上から総堀り,布堀り,壺堀り
に分けられる。大規模な建築物の場合,根切りの深さも深くなるため,根切り面の
崩壊を防止し,安全を確保するため,法(勾配)付き総堀りや山留めと合わせての
根切りが行われることが多い。本件建物についての根切り工事は,基本的には法付
き総堀りであり,根切りが深いなどの工事上必要は部分について山留めを行った上
で根切り工事がなされた。
 山留め工事とは,根切り工事により地盤を掘削する際,周囲地盤の崩落を防ぐた
め,矢板などを用いて土圧を受ける壁を設け,その壁を切張りなどの支持材で受け
た支持架構のことをいう。
 基礎工事は,建築物の形状,地盤の状態,敷地や周囲の建築物の状況など,さま
ざまな制約条件のもとで,最も効率的と考えられる工法が選択され,建築工事の当
初に行われる作業は多様である。基礎工事については建築基準法や積算基準等に明
確な定義はないが,従来からの慣習上,根切り工事や杭工事も基礎工事として取り
扱われている。
 本件においては,地盤が良好であること,また,工程上の効率性を踏まえ,杭を
打たない部分の根切り工事から開始され,本件条例施行前日の平成12年1月31
日までに搬送トラック941台分に相当する4,691厭の根切り工事が行われ
た。
 (い) 行政慣例,社会通念による建築基準法3条2項の解釈
 根切り工事が建築基準法3条2項の「現に建築…の工事中の建築物」の「工事」
に含まれると解するのが建築基準法制定以来50年以上にわたり旧建設省をはじめ
全国自治体で一貫して採られてきた行政慣例であった。
 平成13年12月12日に東京都都市計画局建築指導部調査課が全国の都道府
県・政令指定都市の建築主務課を対象にして行ったアンケートの回答によれば,回
答した59庁のうち57庁が根切り工事の段階で建築基準法3条2項にいう「建築
の工事中」に当たるとしている。
 大規模な建築工事においては,工期(建築工事の契約から建築物が完成して引渡
しとなるまでの期間)全体のうちの相当の長期間を根切り工事のために費やすこと
が一般的である。根切り工事の段階では,杭や基礎などの建築物の一部が存在しな
いから,法3条2項のいう「建築…の工事中」に該当しないとすることは,著しく
社会通念に反する。
 また,同じ規模の建築物の工事でも,工法の選択により,最初に行われる工事
が,山留め工事であったり,根切り工事であったり,杭打ち工事であったりするの
であり,このうち,杭打ち工事を最初に行った場合のみを法3条2項該当として扱
うことは,明らかに不合理である。
 (う) 文理,他の法文との論理的整合性
 建築基準法3条2項の「現に存する建築物…又は現に建築…の工事中の建築物」
との文言からすれば,「現に存する建築物」は実在する建築物をいい,「現に建築
…の工事中の建築物」は建築物が実在しない状態をいうことは明らかである。ま
た,同法2条13号は,「建築」について「建築物を新築し,増築し,改築し,又
は移転することをいう」と定義しており,「建築」の概念のうち,「新築」につい
ては,建築物が実在しない場合をいうことに疑問の余地はない。したがって,同法
3条2項の「現に建築…の工事中の建築物」について,文理解釈上,「建築物」の
実在が必要であるとはいえない。同法3条2項にいう「現に建築…の工事中の建築
物」が新築建築物である場合,この「建築…工事」は「工事の着手」から始まるも
のである。
 建築基準法9条10項は,「建築基準法令の規定…に違反することが明らかな建
築…の工事中の建築物」について,特定行政庁は,緊急工事停止命令を発すること
ができる旨定めている。同条項にいう「建築物」には基礎などの物理的な実体が形
成される前の生成中の建築物も含まれ,根切り工事の規模が建築確認を受けた計画
に比して著しく大きく,工事現場の安全を確保することができなくなるおそれがあ
るような場合には,根切り工事について緊急工事停止命令を発し得るものと解され
る。また,緊急工事停止命令は,工事に着手し,かつその後違反が明らかな工事を
続行中である場合に発せられる。同法3条2項の「建築…の工事中の建築物」も,
同法9条10項の「建築…の工事中の建物」と同義に解すべきである。
 建築基準法6条1項は,「建築主は,…建築物を建築しようとする場合…におい
ては,当該工事に着手する前に,その計画が建築基準関係規定…に適合するもので
あることについて,確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け,確認済証の交
付を受けなければならない」と定め,同条6項は,「第1項の確認済証の交付を受
けた後でなければ,同項の建築物の建築…の工事は,することができない」と定め
ている。これらの条項にいう「工事…着手」,「建築…の工事」の「工事」には,
根切り工事も含まれるものと解される。同法3条2項の「建築…の工事中」の「工
事」もこれと同義に解すべきである。
 工事現場の危害の防止について定める建築基準法施行令136条の3は,根切り
工事,山留め工事を基礎工事の例示として規定している。
 (え) 立法の沿革
 建築基準法の前身である市街地建築物法18条1項は,「本法適用区域ノ設定若
ハ地区ノ指定若ハ変更ノ場合ニ於テ従来存在スル建築物カ其ノ後新タニ建築セラレ
タリトセハ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反スヘキモノトナルトキハ行政官
庁ハ相當ノ期間ヲ指定シ其ノ建築物ニ付前條ニ掲クル必要ナル措置ヲ命ズルコトヲ
得」と定め,同条2項は,「前項ノ規定ニ依ル措置ヲ命スルトキハ勅令ノ定ムル所
ニ依リ建築物所在地ノ公共団体ヲシテ損失ヲ補償セシム」と規定して,既存不適格
建築物を是正させる場合の補償規定を設けていた。そして,どのようなものが既存
不適格建築物となるかについては,市街地建築物法施行規則41条が,「法適用区
域ノ設定若ハ地区ノ指定若ハ変更ノ場合ニ於テ建築工事中ノ建築物又ハ建築工事ニ
着手セサルモ設計アル建築物ヲ建築セムトスル者ハ其ノ設定,指定若ハ変更アリタ
ル日ヨリ三十日以内ニ第三十二条第一項各号ノ事項ヲ具シ設計書及図面ヲ添付シタ
ル申請書正副二通ヲ提出スベシ(以下略)」と定め,建築工事中の場合だけでなく
設計が完了したが未着工のものにも一定の要件の下で既得権を認めており,同法施
行規則41条のいう「建築工事中」については,大体敷地の根切りに着手した時期
以降がこれに該当するものと解されていた。
 このように,市街地建築物法が施行されていた当時は,設計完了段階にある建築
物の計画についても既得権保護の対象となっていたが,昭和25年の建築基準法の
施行により,「現に建築…の工事中の建築物」が既得権保護の対象とされたもので
ある。
 なお,建築基準法制定時の衆議院及び参議院の建設委員会における政府委員の建
築基準法案についての説明において,「工事中」が何を意味するのは明らかにされ
ていないが,建築物の実在を要するとか根切り工事は含まないといった説明もなさ
れていない。
 (お) 立法趣旨
 一般に,建物の建築は高額の費用と相当の準備及び期間を要して完成に至るもの
であり,建築主の既得権あるいは期待権を保護すべき要請が強い。一方,建築基準
法及びその関係法令による建築制限は,安全・防火・消火・衛生・避難・周辺住民
に対する影響等の重要な行政目的を達成するために行われるものであり,その新規
定は,より現状にふさわしいものとして立法者により定められるものであるから,
そのような行政目的の達成のためには,なるべく全ての建築物に対し適用すること
が望ましい。建築基準法3条2項は,この相反する要請の調整を図る趣旨で設けら
れた規定である。
 このような建築基準法3条2項の立法趣旨からすると,同条項の「現に建築…の
工事中の建築物」に該当するといい得るためには,建築物の建築の工事が行われて
いることが外部から客観的に認識できる程度に継続して実施されていることを要す
るものと解される。すなわち,建物敷地の取得から始まる,建物建築請負契約締
結,建築設計,既存建築物の除去,建物建築現場の整地,建物建築現場の板囲い,
建物建築現場への資材の搬入,根切り工事,杭打ち,基礎工事,躯体工事等のどの
段階において明白確実な建築意思の存在を認めるのが妥当かとの観点から,建築意
思が確実に認定できる行為が外部から客観的に認識できる程度に継続して実施され
ている段階をもって明白確実な建築意思の存在を認めるのが妥当であると解するも
のである。
 そして,建築確認を受けた建築物の建築工事においては,敷地内に建築確認の表
示が義務づけられており,根切り工事が着手されれば,その表示が工事現場に掲示
され,建築物の建築工事であることが客観的に認識し得る状態となるのであるか
ら,建築確認を受けた建築物の建築工事においては,根切り工事に着手し,工事が
継続して実施されていることをもって,同項の「現に建築…の工事中」に該当する
というべきである。
 (か) まとめ
 以上,建築基準法3条2項の文理,他の法文との論理的整合性,立法の沿革及び
立法趣旨に照らすと,同条項の「現に建築…の工事中の建築物」については,「建
築物」の実在は不要であり,「工事」には根切り工事も含まれ,建築意思が確実に
認定できる行為としての根切り工事が外部から客観的に認識できる程度に継続実施
されていれば,同条項の「現に建築…の工事中の建築物」に該当すると解すること
が正当である。」
 ② 原判決57頁17行目の次に改行して,次のとおり加える。
「すなわち,本件建築工事のうち,E-1棟,E-2棟及びS-2棟は,杭基礎で
はなく,直接基礎の方式がとられた。この場合の根切り工事は,単に地面を掘削す
るだけではなく,計画建築物の底面と接する地盤の地耐力を調査したうえ,計画建
築物の底面の位置を決定し,これと予定された側面の形を正確に合わせて土を掘削
除去する重要な工事である。
 本件建築工事における根切り工事費用は,約1億8000万円で総工事費の約
2.8%を占めており,杭工事の費用約1億2000万円を上回っている。そし
て,平成12年1月5日の根切り工事の開始から2月1日までの工事の進捗状況は
以下のとおりである。
 (あ) 根切り工事
 バックホー   延べ20台
 10tダンプ  延べ941台(場内88台,場外853台)
 運搬土量    4691.5厭(場外搬出)
 (い) 山留め工事
 杭打機       延べ5台
 打設山留めH鋼本数  19本(C棟15本,S棟4本)
 山留めH鋼の長さ  185m(9m×15本=135m,12.5m×4本=
50m)」
(4) 本件検査済証交付処分の取消しの訴えについて
ア 本案前の主張
(ア) 審査請求手続前置について
 建築基準法94条1項は,同法の規定による建築主事の処分に不服がある者は,
当該市町村又は都道府県の建築審査会に対して審査請求をすることができる旨規定
し,同法96条は,同法94条1項に規定する処分の取消しの訴えは,当該処分に
ついての審査請求に対する建築審査会の裁決を経た後でなければ,提起することが
できない旨規定している。したがって,建築主事の処分に不服がある者は,当該市
長村又は都道府県の建築審査会に対して審査請求をし,その裁決を経た後でなけれ
ば当該処分の取消しの訴えを提起できない(行政事件訴訟法8条1項ただし書)。
 本件検査済証交付処分については東京都建築審査委員会の裁決を経ていない。よ
って,本件検査済証交付処分の取消しの訴えは不適法である。
(イ) 原告適格について
 前記(1)と同じ。
 一審原告らが主張する生活環境上の利益のうち,日照を除く利益については,建
築基準法中に,これを具体的に保護した規定は存在せず,建築基準法上,これらの
利益は,同法が公共の福祉増進を目的とする結果,一定の者が受ける反射的利益で
あるにすぎない。本件地区計画が建築基準法に取り込まれることによって保護され
るべき周辺住民の利益は日照のみであるというべきである。
(ウ) 訴えの利益について
 本件において原告適格を有するのは日照被害を具体的に主張している一審原告
M,同O及び同Pのみであるが,同人らの主張する日照被害は,建築物の構造その
ものから生ずるもので,是正命令(建築基準法9条)や当事者の協議によらなけれ
ば排除できないものである。一方,検査済証の交付は,建築等の工事が完了した建
築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していることを公権的に判断した結果
を確認し公証する行為であって,それを受けなければ原則として当該建築物の使用
を開始することができないという法的効果が付与されているに過ぎず,仮に本件検
査済証交付処分が取り消されたとしても,一審原告Mらの上記日照被害は回復され
ない。
 よって,一審原告M,同O及び同Pの本件検査済証交付処分の取消しの訴えは訴
えの利益がなく,不適法である。
イ 本件検査済証交付処分の適法性について
 前記(3),ア,(イ),a「本件建物は適法であること」で述べたとおり,本
件建物には本件建築条例の適用が除外される建築物であり,適法な建築物である。
 よって,本件検査済証交付処分は適法である。
第3 当裁判所の判断
1 本件不作為違法確認請求及び本件義務付け請求に係る訴えの適法性及びその請
求の当否
(1) いわゆる義務付け訴訟としての性質を有する無名抗告訴訟の適法要件
 本件義務付け請求は,一審被告建築指導事務所長が,建築基準法9条に基づいて
「本件土地上に存在する本件建物について高さ20mを超える部分を除却せよ」と
の是正命令(以下「本件是正命令」という。)を発令することを求めるものであっ
て,行政庁の公権力の行使の発動を求める給付訴訟であり,本件不作為違法確認請
求は,一審被告建築指導事務所長が本件是正命令を発令しないことが違法であるこ
との確認を求めるものであって,行政庁の公権力の不行使の違法を確認する確認訴
訟であるが,いずれもその実質は,行政庁に対して公権力の行使を義務付けること
を求める,いわゆる義務付け訴訟としての性質を有する無名抗告訴訟と解される。
 当裁判所も,原判決と同様に,このような無名抗告訴訟が許容されるためには,
①行政庁が当該行政権を行使すべきこと又はすべきでないことが一義的に明白であ
って,行政庁の第一次判断権を尊重することが重要でないこと(一義的明白性の要
件),②事前審査を認めないと,行政庁の作為又は不作為によって受ける損害が大
きく,事前救済の必要性があること(緊急性の要件),③他に適切な救済方法がな
いこと(補充性の要件)の三要件をいずれも満たしていることが必要であるものと
解する。その理由は,原判決70頁下から10行目から71頁4行目まで記載のと
おりであるから,これを引用する。
(2) 一義的明白性の要件を満たしているか
ア 建築基準法9条1項の規定に基づく是正命令の裁量性
 建築基準法9条1項の規定に基づく是正命令についての一義的明白性の要件の当
てはめに関する当裁判所の解釈は,以下のとおり,原判決と同様である。
 建築基準法9条1項の規定に基づく是正命令は,特定行政庁(同法2条36号)
において,同法が規定する行政目的達成のために,同法に違反する建築物又は建築
物の敷地について,①違反の有無,内容及び程度,②違反によって阻害される行政
目的の内容及び程度,③違反により周辺住民の受ける被害の内容及び程度,④是正
命令により建築主の受ける不利益の程度,⑤建築主による自発的な違反解消の見込
みなどの諸般の事情を考慮した上で,その合理的な判断に基づいて,誰に対し,ど
のような内容の是正命令を発令するか,いつ是正命令を発令するか,どのような手
続を経て是正命令を発令するか等を決して,発するものであり,これらの各判断は
特定行政庁の裁量に委ねられているものと解されるが,このような行政庁に裁量が
委ねられた行為についても,具体的事情の下において,当該権限が付与された趣
旨・目的に照らし,当該権限を行使しないことが著しく不合理であり,裁量権の濫
用・逸脱と認められるような特段の事情がある場合には,行政庁には当該権限を行
使すべき一義的に明白な義務があるというべきであり,この場合には,もはや行政
庁の第一次的判断権を尊重することは重要でないというべきである。
イ 本件建物は建築基準法に違反しているか
 本件においては,そもそも,本件建物が建築基準法に違反しているのか否かの点
について,当事者間に争いがある。すなわち,本件建物は,43.65mの高さを
有し,建築基準法68条の2,本件建築条例の規定する高さ20mの制限に適合し
ない建物であるが,建築基準法3条2項によれば,建築基準法に基づく条例の施行
の際現に建築の工事中の建築物が当該条例に適合しない場合においては,当該建築
物に対しては当該条例が適用されないとされている関係で,本件建物が本件建築条
例に係る改正条例が施行された時点(平成12年2月1日)において「現に建築…
の工事中の建築物」と認められる状態にあったか否かにつき,当事者の見解が対立
している。
(ア) 建築基準法3条2項の解釈
a 建築基準法3条2項は,新法適用についての経過規定であり,新規定の適用又
は施行時において「現に建築…の工事中」であった建築物については,その建築を
許容し,結果的に新規定に適合しなくなった建築物を容認することとして,新規定
による行政目的の達成を一部後退させて,建築主の期待を保護することとしたが,
その反面において,新規定の適用又は施行時において「現に建築…の工事中」でな
かった建築物については,適法に建築確認を受けた建築物であっても,新規定を適
用し,建築主に一定の不利益が生じることをやむを得ないものとして,新規定によ
る行政目的の達成を優先することとしている。建築基準法及びその関係法令による
建築規制は,安全・防火・消火・衛生・避難・周辺住民に対する影響等の重要な行
政目的を達成するために行われるものであり,新規定は,より現状にふさわしいも
のとして立法者により定められるものであるから,この行政目的の達成のために
は,新規定が全ての建築物に適用されることが望ましい。他方,一般に,建築物の
完成には高額な費用,相当の準備及び相当な工事期間を要するものであるため,建
築の工事途中であっても,建築主の既得権あるいは期待権を保護すべき要請が強
い。そこで,建築基準法3条2項は,これらの調整を図り,「現に建築…の工事
中」の建築物について新法の適用を除外する一方,「建築…の工事中」の段階に至
っていない建築物については新法を適用することとしたものである。
 このような建築基準法3条2項の趣旨からすると,「現に建築…の工事中の建築
物」に該当するというためには,建築物の実現を直接の目的とする工事が開始さ
れ,建築主の建築意思が外部から客観的に認識できる状態に達しており,かつ,そ
の工事が継続して実施されていることを要すると解するのが相当である。
 なお,建築基準法3条2項が,「現に存在する建築物」とは別に「現に建築…工
事中の建築物」について新法の適用を除外していることからすると,「現に建築…
工事中の建築物」とは,建築物の実現を直接の目的とする工事が継続されているが
建築物の実現には至っていない状態をいい,「建築物」自体が存在することは要件
とされていないものと解される。
b ところで,マンションの建築は,敷地取得価格・工事価格・マンション販売価
格等についての営利計算,敷地の取得,地質調査,建物建築請負契約締結,建築設
計,既存建築物の除却,建物建築現場の整地,建物建築現場の仮囲い,建物建築現
場への資材・建設機械の搬入,根切り工事,山留め工事,杭打ち,基礎工事,躯体
工事などの各段階を経て行われる。このうち物理的有形力の行使がないものが工事
に該当しないことは明らかであり,また,地質調査,既存建築物の除却,整地,仮
囲い,資材・建設機械の搬入は,有形力の行使ではあるものの,建築物の実現を直
接の目的とする工事ではなく,建築主の建築意思を客観的に認識できる工事でもな
いから,建築基準法3条2項のいう「建築…の工事中」の「工事」に該当するとは
いえない。問題は,根切り工事がこの「工事」に含まれるか否かである。
(a) 根切り工事の実態
(あ) 根切り工事は,建築物を支持しうる地盤が確保されたことに引き続き,建
築物の基礎躯体や地下室部分を容れる空間を作り出すために,地盤面以下の土地を
掘削する工事であり,建築物の形状に合わせ,地盤面の高さを精密に測定して,空
間の形状を作るものである。建築物を支えるに足りる地盤の地耐力の大きさは,建
築物の規模や建築物の力学的構造により決定され,建築基準法上一棟とされる建築
物が力学的構造の異なる部分からなるときは,異なる部分ごとに必要な地耐力の大
きさが決定される。そして,地耐力が十分ある場合には,地盤は杭なしで建築物の
重量を支えることができ,この場合は,杭は不要になる。杭工事を施工しない工程
を採用する建築物は大規模建築物であっても相当数あり,平成13年度だけでも2
0数棟の高さ60mを超える超高層建築物及び建築面積10,000㎡以上の免震
建築物が杭工事を施工しない工程を採用している。また,十分な地耐力が得られな
い弱い地盤の場合は,根切り工事に先立って,地耐力が得られる深い位置に杭を打
つ杭工事を施工することになる。この場合は,杭頭において建築物を支えることに
より,建築物の重さと地盤の地耐力が釣り合い,建築物が地盤に安定して支えられ
ることになる。なお,山留め工事は,地盤を掘削するに当たり,周囲地盤の崩落を
防ぐために,H鋼材などの支持材を打ち込み,矢板などを用いて土圧を受ける壁を
設ける工事であり,根切り工事と一体として行われる。(乙26,62,71の1
~11)
(い) 根切り工事の規模は,大規模建築物においては,膨大なものになり,本件
建物建築工事に係る根切り工事の規模は,掘削する空間の大きさが,最大深さ約9
m,容積約45,000厭(学校の25mプール約80個分),根切り工事に要す
る工費が,約1億8000万円,根切り工事に要する期間が,実動累計106日間
であった。また,新都庁舎建築工事においては,全体工期約33か月のうちの約7
か月を,東京中央卸売市場食肉市場北側棟建築工事においては,全体工期約34か
月のうちの約8か月を,中央区a町の地上14階地下1階建てのマンション建築工
事においては,全体工期約17か月のうちの約3か月を,山留め・根切り工事に費
やしており,これらいずれの工事においても,根切り工事が終わりに近づくまで杭
や基礎は存在しなかった。(乙31~33の1,2,62)
(う) 建築確認を得ている場合には,根切り工事又は杭打ち工事を開始した段階
で,建築主の建築意思は明確である。そして,工事が根切り工事から開始される
か,杭打ち工事から開始されるかは,敷地の地盤の良否等の偶然の事情によって決
まるものである。
(え) 根切り工事のこの実態によれば,根切り工事は建築物の実現を直接の目的
とする工事であるというべきであり,個々の建築物の具体的建築工事状況によって
は,根切り工事が外部から客観的に建築主の建築意思を把握し得る建築意思の具現
化としての工事(建築基準法3条2項のいう「建築…の工事中」の「工事」)に該
当する場合もあるというべきである。
(お) これに対し,一審原告らは,建築基準法3条2項の文理解釈や立法趣旨か
らみて,「現に建築…の工事中の建築物」に該当するためには,「建築物」の一部
が存在することが必要であるとして,杭基礎を経ない直接基礎の場合には,建築物
の一部となる基礎工事がある程度進行し,少なくとも配筋工事がなされているこ
と,杭基礎の場合には,建物の一部となる杭を打ち,その工事がある程度進行して
いることが必要であり,単なる根切り工事や山留め工事の段階では,何ら土地に付
着する「建築物」が存在しないから,これに該当しないと主張する。
 しかし,この解釈によれば,いかに大規模な根切り工事や山留め工事が長期間に
わたって行われても,配筋工事か杭打工事がなされていない限り,「現に建築…の
工事中の建築物」には該当しないことになり,著しい不合理が生ずる。
 前記のとおり,建築基準法3条2項の「現に建築…の工事中の建築物」に該当す
るためには,「建築物」自体が存在することは要件とされていないものと解される
のであり,したがって,配筋工事や杭打工事がある程度進行していればこれに該当
するとするのは,「建築物」の一部が存在するからではなく,配筋工事や杭打工事
によって建築主の建築意思が外部に明確に示されるからであるというべきである。
 そうであるとすれば,根切り工事や山留め工事の規模や進捗状況によっては,配
筋工事や杭打工事がなされていなくても,当該根切り工事や山留め工事の継続によ
り建築主の建築意思が外部から明確に認識できる状態にあり,建築基準法3条2項
の「現に建築…の工事中の建築物」に該当する場合があると解するのが相当であ
る。
(b) なお,建築基準法令における根切り工事の位置づけ,行政における解釈及
び建築行政の実務は次のとおりであるが,これらは,前記結論を導き出すための決
定的根拠にはなり得ず,また,この結論を覆すに足りるものでもない。
(あ) 建築法令における根切り工事の位置づけ
 工事現場の危害の防止について定める建築基準法施行令(以下「令」という。)
136条の3第1項は,「建築工事等において根切工事,山留め工事…その他基礎
工事を行う場合においては」と規定している。
 建築確認について定める建築基準法6条は,1項において,「…建築物を建築し
ようとする場合においては,当該工事に着手する前に」建築確認を受けなければな
らないと規定し,6項において,確認済証の交付を受けた後でなければ,「…建築
物の建築…の工事」はすることができないと規定している。そして,令93条は,
地盤の地耐力を建築確認に当たっての審査対象事項としている。したがって,直接
基礎の形式における根切り工事の掘削深度及び建築物底面と接する地盤の地耐力
は,建築確認に当たっての審査対象事項となり,この場合の根切り工事は,建築確
認が下りるまでは禁止されている「…建築物の建築…の工事」に該当する。
(い) 行政における解釈
 建築基準法の前身である市街地建築物法は,新法適用についての経過規定である
18条1項において,「本法適用区域ノ設定若ハ地区ノ指定若ハ変更ノ場合ニ於テ
従来存在スル建築物カ其ノ後新タニ建築セラレタリトセハ本法又ハ本法ニ基キテ発
スル命令ニ違反スヘキモノトナルトキハ行政官庁ハ相當ノ期間ヲ指定シ其ノ建築物
ニ付前條ニ掲クル必要ナル措置ヲ命ズルコトヲ得」と,同条2項において,「前項
ノ規定ニ依ル措置ヲ命スルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ建築物所在地ノ公共団体ヲ
シテ損失ヲ補償セシム」と定め,既存不適格建築物を是正させる場合の補償規定を
設けていた。そして,どのようなものが既存不適格建築物となるかについては,市
街地建築物法施行規則41条が,「法適用区域ノ設定若ハ地区ノ指定若ハ変更ノ場
合ニ於テ建築工事中ノ建築物又ハ建築工事ニ着手セサルモ設計アル建築物ヲ建築セ
ムトスル者ハ其ノ設定,指定若ハ変更アリタル日ヨリ三十日以内ニ第三十二条第一
項各号ノ事項ヲ具シ設計書及図面ヲ添付シタル申請書正副二通ヲ提出スベシ(以下
略)」と定めていた。この規則41条のいう「建築工事中ノ建築物」が何を意味す
るかについて,当時東京府の区域内における地方長官である警視総監の下に市街地
建築物法の施行事務を所管していた警視庁では,「建築工事ノ著手時期」につい
て,「大体敷地ノ根切工事ニ著手シタル時期トス」と決議し,例規として通達して
いた。(乙74)
 昭和34年の第31回国会参議院建設委員会における,建築基準法の一部(確認
申請手数料等に関する部分)を改正する法律案についての質疑応答において,建設
省住宅局長は,根切り工事を建築工事そのものの工事とは取り扱っておらず,確認
前においても基礎のために地面を掘ることはできるように取り扱っている旨答弁し
た。(甲91)
 昭和44年の建築基準法施行令の一部改正により防火・避難関係の規定が整備強
化されたことに伴い,全国建築行政連絡会議は,同改正に伴う昇降機の防火上の措
置の取扱方針をまとめ,建設省全建行連発第4号昭和44年10月16日として,
会員である建築主務課長に通知した。この中で,新政令の適用に関し,「適用は,
建築物の着工時点 ただし…建築の着工とは,基礎工事着手(修跋式,綱張り,整
地,根切,捨てコンを含まず,杭打ち,フッテングを含む。着工届とは無関係)」
としていた。(乙66)
 平成14年2月26日,衆議院議員Qが本件建物に関し同月14日に内閣に提出
した質問書に対する内閣の答弁書が閣議決定され,衆議院議長に送付され,公表さ
れた。その中で,内閣総理大臣は,「国土交通省においては,建築基準法(昭和2
5年法律第201号)第3条第2項にいう『工事中』には,根切工事又は杭打ち工
事に着手している段階を含むと解している。」と述べている。(乙74)
(う) 建築行政の実務
 平成13年12月12日,東京都都市計画局建築指導部調査課は,全国都道府県
及び政令指定都市59庁に対し,建築基準法3条2項にいう「現に…工事中の建築
物」の取扱いについてアンケートを求めたところ,「土留め工事の進行」とするも
のが9庁,「根切り又は杭打ち工事の進行」とするものが48庁あったが,後者の
うち,根切り工事を「建築の工事中」とは扱わないものが2庁あった。
 なお,上記の回答の内容からみて,建築行政の実務においては,「現に…工事中
の建物」の概念については,建築基準法6条の「工事の着手」と統一的に捉え,工
事に着手した以降の工事の状況を指すものとして解釈している庁が一般的である。
(イ) 本件建物は本件建築条例に係る改正条例が施行された時点(平成12年2
月1日)において「現に建築…の工事中の建築物」と認められる状態にあったか
a Iは,平成11年7月に本件土地を購入し,同年8月に本件建物建築計画を明
らかにし,同年11月に説明会を開催し,同年12月3日に本件建物に係る建築確
認申請書を提出し,平成12年1月5日に建築確認通知を受け,同日,根切り工事
に着工し,平成13年12月に本件建物を完成させた。(前提事実)
b 本件建物建築工事においては,本件土地上に従前存在していたN株式会社(以
下「N」という。)の事務所ビル(以下「旧建物」という。)が地下室部分をあわ
せて除却された際に,地下室跡が埋め戻されていたため,この埋め戻し部分が地耐
力に乏しかった。そこで,本件建物のうち地下部分のある部分については地耐力が
十分な深さまで根切り工事を実施し,地下部分のない部分については杭工事を施工
してから根切り工事を行うことが選択され,杭工事を施工する部分については杭工
事を施工しない部分の根切り工事が完了してから工事に着工することとされた。
(乙62)
c 本件建物は,外観上4棟(正確には6棟)からなる建築物であるが,受変電設
備等の建築設備を共用し,一体的に管理され,互いに接続した部分を有し,完成後
一個の建築物として登記されることになっていた。本件建物のうち,E-1棟,E
-2棟及びS-2棟は,地上1階と地下1階にまたがるメゾネットタイプの住戸が
設けられ,この地下部分が深く,その深さにおける地耐力が十分であったため,直
接基礎の形式がとられてた。これら杭工事を施工しない棟の地盤の根切り工事は,
平成12年1月5日に開始され,同年1月31日までにバックホー延べ20台によ
り地盤を掘削し,10tダンプ延べ853台により約4700厭の残土を場外に搬
出した。この杭工事を施工しない部分の根切り工事は4月4日に終了した。また,
山留め工事は,1月26日から根切り工事の必要に応じて行われ,1月31日まで
に,抗打機延べ5台により,19本(C棟9m15本,S棟12.5m4本,長さ
合計185m)のH鋼材を打設した。このような残土処理のために多数の大型ダン
プが出入りしていたこと,したがって,かなり大規模な根切り工事等が行われてい
たであろうことは,近隣の住民によっても容易に知り得る状況にあった。なお,本
件建物建築工事に係る根切り工事の規模は,前記のとおり,掘削する空間の容積約
45,000厭(学校の25mプール約80個分),根切り工事に要する工費約1
億8000万円,根切り工事に要する期間実動累計106日間であった。(甲4
5,101,113の1,116の1~4,乙10,13,14,23の1,6
2,63の1~3)
d 旧建物の解体工事は,平成9年にNが行った。その際,旧建物の建築面積約
6,500㎡のうち約82㎡(約1.3%)が残存物として残された。これは,本
件土地の大学通り沿いの法面にあったつつじの植栽を残すために,この法面の強度
の関係上,旧建物の地下室壁の一部を残す必要があったことによる。この解体工事
においては,旧建物の地下室部分も解体され,解体工事で発生したガラ(コンクリ
ート廃材)を砕石状にしたものがこの地下室部分の埋め戻しに利用された。本件建
物建築工事に係る根切り工事においては,この埋め戻し部分も掘削したため,根切
り工事の残土にはこのガラが混ざっていた。(甲113の2の⑤,⑥,⑩,⑪,乙
62,64)
 一審原告らは,このガラの掘り出しは根切り工事に該当しないと主張するが,こ
のガラは砕石状にされ埋め戻しに利用されていたのであるから,この埋め戻し部分
の掘削も根切り工事に該当するというべきである。
e 旧建物の残存物の除却工事は,平成12年2月1日より後に行われた。すなわ
ち,同年3月8日にクラッシャーを用いて解体を開始し,3月16日からクラッシ
ャー及びジャイアントブレーカーで破砕を行い,3月24日にはガラの搬出を含め
て除却作業を全て完了した。この除却工事により搬出した地下室壁のガラの数量は
約93厭である。(甲113の2の①~④,⑦から⑨,乙62)
 一審原告らは,この残存物の除却工事が完了するまでの間の掘削は根切り工事に
該当しないと主張するが,本件においては残存物の除却工事が完了する前の段階で
も残存物が存在しない部分について根切り工事をすることが可能だったのであるか
ら,一審原告らのこの点についての主張は理由がない。
f 本件建物は,外観上4棟(正確には6棟)からなる建築物であるが,受変電設
備等建築設備の共用,一体的な管理運営,相互接続部分の存在,完成後の登記の一
個性に照らせば,一個の建築物と評価でき,本件土地を敷地とする建築物として全
体的に考察すべきである。
 そして,本件建物建築計画が明らかにされてから本件建物完成に至るまでの経
過,本件建物の構造,本件建物建築工事に係る根切り工事の規模,平成12年1月
5日から同月30日までの26日間に行われた根切り工事の実態等を総合すると,
同年2月1日の時点において行われていた本件建物建築工事に係る根切り工事の状
態は,外部から客観的に建築主の建築意思を把握できる工事が継続中であると評価
できる状態にあったというべきであり,したがって,本件建物は本件建築条例に係
る改正条例が施行された時点において建築基準法3条2項のいう「現に建築…の工
事中の建築物」と認められる状態にあったと認めるのが相当である。
(ウ) 本件建物は建築基準法に違反しているか
 前記(ア)のとおり,本件建物は,本件建築条例に係る改正条例が施行された時
点において建築基準法3条2項のいう「現に建築…の工事中の建築物」に該当する
のであるから,本件建築条例に係る改正条例の適用を受けず,したがって,本件建
築条例の規定する高さ20mの制限に適合しない建物ではあるが,建築基準法に違
反する建物ではない。
ウ 一義的明白性の要件を満たしているか
 前記イのとおり,本件建物は建築基準法に違反する建物ではないのであるから,
一審被告建築指導事務所長が本件建物について建築基準法9条に基づく是正命令を
発令すべきことが一義的に明白であるとはいえない。
 したがって,本件不作為違法確認請求及び本件義務付け請求に係る訴えは,一義
的明白性の要件を満たしておらず,不適法である。
2 本件検査済証交付処分の取消しの訴えの適法性及びその請求の当否
 建築主事のした検査済証交付処分の取消しの訴えは,当該処分について当該市長
村又は都道府県の建築審査会に対して審査請求をし,その裁決を経た後でなければ
提起することができない(行政事件訴訟法8条1項ただし書,建築基準法96条,
94条1項)。ただし,「処分,処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損
害を避けるため緊急の必要があるとき」(行政事件訴訟法8条2項2号)や「その
他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき」(同項3号)は,裁決を経ない
で,処分の取消しの訴えを提起することができる。
 本件検査済証交付処分については,東京都建築審査委員会の裁決を経ていない。
 一審原告らは,本件においては,行政事件訴訟法8条2項2号の「緊急の必要」
及び同項3号の「正当な理由」があるから,建築審査会への審査請求を経なくても
本件検査済証交付処分の取消しの訴えは適法である旨主張するが,前記1,
(2),イのとおり,本件建物は建築基準法に違反する建物ではないのであるか
ら,この「緊急の必要」,「正当な理由」があるとは認められない。
 したがって,東京都建築審査委員会の採決を経ていない本件検査済証交付処分の
取消しの訴えは,不適法である。
3 結論
 以上によれば,一審原告らの本件不作為違法確認請求に係る訴え,本件義務付け
請求に係る訴えは,その余の点を判断するまでもなく,いずれも却下すべきもので
あり,一審原告らの本件控訴は,理由がない。また,一審原告らの本件検査済証交
付処分の取消しの訴えは,不適法なものとして却下すべきである。
 よって,一審原告らの一審被告東京都多摩建築指導事務所長に対する本件控訴を
いずれも棄却し,一審原告らの一審被告東京都建築主事に対する検査済証交付処分
の取消しの訴え(本件検査済証交付処分の取消しの訴え)を却下し,一審被告東京
都多摩建築指導事務所長の本件控訴に基づき,原判決中,一審被告東京都多摩建築
指導事務所長敗訴部分を取り消し,同部分に係る別紙当事者目録第1及び第4の1
記載の一審原告らの訴えをいずれも却下することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第7民事部
裁判長裁判官 奥山興悦
裁判官 山崎まさよ
裁判官 萩本修

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