弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

       主   文
1 被告が,平成13年4月3日付で原告に対してした異議申立棄却決定(原処
分・原告が平成9年5月14日にした公文書公開請求に対する「公文書不存在等通
知書」〔平成9年5月27日付〕による処分)を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
       事実及び理由
1 原告の申立て(請求の趣旨)
 主文同旨の判決を求めた。
2 事案の概要
 本件は,原告の公文書公開請求に対する「公文書不存在等通知」について,被告
がした異議申立棄却決定の取消訴訟である。なお,立証は,記録中の証拠関係目録
記載のとおりである。
(1) 争いのない事実等
 原告は,千葉県内に住所を有する者である。また,被告は,旧千葉県公文書公開
条例(平成12年千葉県条例第65号による廃止前のもの〔昭和63年千葉県条例
第3号〕。以下「本件条例」という。)の「実施機関」として,その職員が職務上作
成・収受した文書等について,同条例に基づく公開請求についてその可否を決定す
るべき立場にある。なお,本件条例の関係規定は,別紙のとおりである。
 原告は,平成9年5月14日,千葉県監査委員に対し,本件条例に基づき,「平
成4年度分の監査委員事務局の食糧費の支出に係る一切の資料」の公開請求(以下
「本件公開請求」という。)をした。これに対し,被告は,同月27日付「公文書不
存在等通知書」を原告に交付したが,この書面には,原告の公開請求については
「不適合なため応じられません」としたうえ,その理由として,公開請求文書は
「紛失のため不存在である。」と記載がされている(上記通知書による処分を,以下
「本件原処分」という。)。
 原告は,同年6月6日,本件原処分について異議申立てをしたところ,被告は,
平成13年4月3日付で,異議申立棄却決定(以下「本件決定」という。)をし,そ
の頃,原告にその旨の通知をしたところ,原告は,同年6月27日,本件訴訟を提
起した。
 なお,本件決定にあたっては,本件条例13条1項の諮問手続がなされてはいな
い。
(当事者間に争いがない事実及び証拠〔甲第1号証ないし第4号証,乙第1,2号
証〕によって認める。)
(2) 争点
ア 原告の主張
 被告は,本件決定をするに際し,① 本件条例13条1項の諮問手続を経ていな
い違法があり,② 何らの理由も付していない点で,県民の県政に対する理解と信
頼を深め,県政の公正な運営の確保と県民参加による行政の一層の推進を図るべき
ことを定めた本件条例1条にも違反する。
イ 被告の主張
 本件決定にあたり,本件条例13条1項所定の諮問手続が必要であるのは,公開
請求に対する「決定」について不服申立てがある場合である。ここにいう「決定」
とは,「請求書を受理」(本件条例8条1項)したことを前提とする公開・非公開・
部分公開の決定であって,本件原処分のような「不存在等通知」を含まないと解す
べきである。
 このことは,本件条例19条に基づく「監査委員が管理する公文書の公開に関す
る規程」(昭和63年監査委員告示第1号)3条1項が,本件条例8条1項の書面に
ついて公開・非公開・部分公開の決定と定めてその書式を明記する一方,同規程2
条の2において,文書不存在の場合は請求の補正を求めるか請求を拒否できると
し,その書式を3条1項のものとは別のものとしていることからも明らかである。
 本件では,被告が「不存在等通知」を発することによって,請求書の受理そのも
のを拒否している以上,これに対する不服申立てついては諮問手続を要しない。
 また,本件条例13条1項の諮問手続の実際は,公文書の存在を前提として,非
公開事由該当性の有無が論じられるものであるから,本件のような対象文書が不存
在の場合にまで諮問手続を経る実質的な必要性に乏しい。
3 当裁判所の判断
 本件決定にあたり,被告が本件条例13条1項の諮問手続を経ていないことは,
前示のとおりであるところ,当裁判所は,以下に説示するとおり,本件決定は本件
条例13条1項に違反するものであると判断する。
(1) 被告は,公文書公開請求書が提出された場合,実施機関により「受理」さ
れるときと「不受理」とされるときがあるところ,そのうち,実施機関によって
「受理」がなされたときに限って本件条例8条1項所定の「決定」がなされるもの
であるから,「不存在等通知」によって本件公開請求を「不受理」とした本件原処
分は上記決定にはあたらず,したがって,その異議申立手続について本件条例13
条1項の適用がないと解すべきであり,被告が同条項所定の諮問手続を経ないで本
件決定をしたことについて違法はないと主張する。
(2) しかしながら,本件原処分は,本件条例8条1項所定の「決定」にあたる
と解すべきであり,したがって,被告が同条例13条1項に定める諮問手続を経な
いで本件決定をしたことは違法である。
ア すなわち,法令の解釈は,その文言の通常の用語例に従って解釈されるのが一
般であるところ,「申請書の受理」は,「申請書の提出を受けたこと」と考えるこ
とができ,被告所論(実施機関によって適式・適法な申請書の提出があったとの判
断がされた場合に限って,「申請書の受理」にあたるとするもの)のように解する
のは用語例として無理がある(ちなみに,行政手続法7条によると,行政行為の申
請が行政庁に到達した場合,その申請行為に不備があるときは,行政庁としては補
正を求めるか,申請の拒否処分等をするべきであるとされており,被告所論のよう
な,「不受理」というような特別の措置をとる余地はないとされている。)。
 また,本件条例には,公文書公開申請書の提出についての定め(7条)がある
が,それ以後の手順としては,公開請求の許否処分が定められているほかに,「不
受理」ないし「返戻」という別個の措置をとることを許容・予定した特別の規定は
存在しない(乙第2号証参照。しかも,本件条例8条1項の「受理」を被告所論の
ように解釈するとすれば,公文書公開請求を受けた行政機関としては,請求を「受
理」すべきでないと判断しさえすれば,定められた期間内に申請に応答する義務が
ないという不都合な結果を招来することにもなる。)。
 そうすると,本件原処分は,本件条例8条1項に基づいて,本件公開請求に対し
てなされた「決定」であるということができる。被告所論は,本件条例8条1項の
請求書の「受理」の意義を「請求書面の実施機関への到達」ではなく,「請求書面
の提出」と「申請の前提条件を具備したという実施機関の認定行為」の双方を含む
という誤った前提に立ったものであって,到底採用することができない。
 なお,被告は,「監査委員が管理する公文書の公開に関する規程」の定めに照ら
せば,公開対象文書の「不存在等通知」は本件条例8条1項にいう決定に含まれな
いと解釈すべきであると主張する。しかし,証拠(乙第2,3号証)によれば,上
記規程は,本件条例19条(この条例の施行に関し必要な事項は,実施機関が定め
るとするもの)を承けて定められたものであることが明らかであるが,「不存在等
通知」が本件条例8条1項にいう決定に含まれるかどうかが上記規程の文言によっ
て左右されるとする解釈,あるいは上記規程によって公文書公開請求についての
「不受理」処分なるものが創設されたとする解釈は,本件条例19条の委任の範囲
を逸脱するものであって採用することができない。
イ 以上説示したとおり,本件原処分が本件条例8条1項所定の「決定」であるか
ら,前示のとおり,本件条例13条1項所定の諮問手続を経ないでなされた本件決
定が違法であることが明らかである。
 被告は,本件決定に際し,諮問手続を経る実質的な必要性に乏しいとも主張する
が,採用することができない。
 よって,原告の本訴請求は,理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用
の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条に従い,主文のとおり判決
する。
千葉地方裁判所民事第三部
裁判長裁判官 園部秀穗
裁判官 向井邦生
裁判官 今泉秀和は,転補につき,署名押印することができない。
裁判長裁判官 園部秀穗
(別紙)本件条例の関係規定(抄)
第8条 実施機関は,前条(公開請求の手続)に規定する請求書を受理したとき
は,当該請求書を受理した日から15日以内に,請求に係る公文書を公開するかど
うかの決定をしなければならない。
2 実施機関は,前項の決定をしたときは,前条に規定する請求書を提出したもの
に対し,速やかに,書面により当該決定の内容を通知しなければならない。
第13条 実施機関は,第8条第1項の規定による決定について,行政不服審査法
に基づく不服申立てがあった場合は,当該不服申立てを却下する場合及び当該不服
申立てに係る公文書を公開しない旨の決定を取り消す場合を除き,速やかに … 
千葉県公文書公開審査会に諮問しなければならない。

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛