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平成20年5月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成19年()第17279号著作権侵害差止等請求事件ワ
口頭弁論終結日平成20年3月17日
判決
当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり
主文
1被告は,被告が運営する別紙サービス目録記載のサービスにおいて,別紙著
作物目録記載1ないし7の著作物を複製の対象としてはならない。
2被告は,被告が運営する別紙サービス目録記載のサービスにおいて,別紙放
送目録記載1ないし11の放送に係る音又は影像を,録音又は録画の対象とし
てはならない。
3被告は,別紙物件目録記載の器具を廃棄せよ。
4被告は,別紙支払目録記載のとおり,原告欄記載の各原告に対し,対応する
支払金額欄記載の各金員を支払え。
5原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
6訴訟費用は,これを3分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告の負
担とする。
7この判決は,第4項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1主文第1項ないし第3項と同旨
2被告は,原告に対し,金4259万1214円及びこれに対する平成NHK
19年8月4日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
3被告は,原告日本テレビに対し,金279万8357円及びこれに対する平
成19年8月4日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
4被告は,原告に対し,金279万8357円及びこれに対する平成1TBS
9年8月4日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
5被告は,原告フジテレビに対し,金279万8357円及びこれに対する平
成19年8月4日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
6被告は,原告テレビ朝日に対し,金279万8357円及びこれに対する平
成19年8月4日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
7被告は,原告テレビ東京に対し,金279万8357円及びこれに対する平
成19年8月4日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
8被告は,原告静岡第一テレビに対し,金2038万0500円及びこれに対
する平成19年8月4日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支
払え。
9被告は,原告に対し,金2038万0500円及びこれに対する平成SBS
19年8月4日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
10被告は,原告テレビ静岡に対し,金2038万0500円及びこれに対す
る平成19年8月4日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払
え。
11被告は,原告あさひテレビに対し,金2038万0500円及びこれに対
する平成19年8月4日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支
払え。
第2事案の概要
本件は,原告ら(以下,原告らを総称する際には「原告ら」と,原告日本テ
レビ,原告,原告フジテレビ,原告テレビ朝日及び原告テレビ東京の5TBS
社を総称して「東京局各社」と,原告静岡第一テレビ,原告,原告テレビSBS
静岡及び原告あさひテレビを総称して「静岡局各社」という。)が,被告にお
いて,「ロクラクⅡビデオデッキレンタル」との名称で行っている事業は,ハ
ードディスクレコーダー「ロクラクⅡ」(以下「ロクラクⅡ」という。)2台
のうち1台を日本国内に設置して,受信するテレビ放送の放送波をその1台に
入力するとともに,これに対応するもう1台を利用者に貸与又は譲渡すること
により,当該利用者をして,日本国内で放送されるテレビ番組の複製を可能と
するサービス,すなわち,別紙サービス目録記載の内容のサービス(以下「本
件対象サービス」という。)であるとし,その事業を行う被告の行為は,原告
及び東京局各社が著作権を有する別紙著作物目録記載の番組(以下「本NHK
件番組」と総称する。)及び原告らが著作隣接権を有する別紙放送目録記載の
放送(以下「本件放送」と総称する。)に係る音又は影像を複製する行為に当
たるから,原告及び東京局各社の本件番組についての著作権(複製権,NHK
著作権法21条)及び原告らの本件放送に係る音又は影像についての著作隣接
権(複製権,著作権法98条)を侵害するとして,原告及び東京局各社NHK
において,本件番組を複製の対象とすることの差止め並びに原告らにおいて,
本件放送に係る音又は影像を録音又は録画の対象とすることの差止め及び本件
対象サービスに供されているロクラクⅡの親機の廃棄を求めるとともに,原告
らが,それぞれ,複製権の侵害により損害を受けたとして,その損害の賠償及
び本訴状送達の日の翌日である平成19年8月4日から支払済みに至るまで民
法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めたのに対し,被告が,本
件対象サービスの利用による本件番組等の複製行為の主体は被告ではないこと
などを主張して争っている事案である。
1前提となる事実等(争いがない事実以外は証拠等を末尾に記載する。)
⑴当事者
原告らは,いずれも放送事業者である。
被告は,平成12年1月27日に設立された,デジタル情報家電製品のマ
ーケティング,企画,設計,製造,販売等を目的とする株式会社である(弁
論の全趣旨)。
⑵原告及び東京局各社の著作権NHK
原告及び東京局各社は,以下のとおり,対応する番組についての著NHK
作権を有している(甲19の1∼19の6)。
原告別紙著作物目録記載1及び2の各番組(以下,同目録NHK
の番号順に「本件番組1」,「本件番組2」のように
示す。)
原告日本テレビ本件番組3
原告本件番組4TBS
原告フジテレビ本件番組5
原告テレビ朝日本件番組6
原告テレビ東京本件番組7
⑶原告らの著作隣接権
原告らは,以下のとおり,対応する放送についての著作隣接権を有してい
る(弁論の全趣旨)。
原告別紙放送目録記載1及び2の各放送(以下,同目録NHK
の番号順に「本件放送1」,「本件放送2」のよう
に示す。)
原告日本テレビ本件放送3
原告本件放送4TBS
原告フジテレビ本件放送5
原告テレビ朝日本件放送6
原告テレビ東京本件放送7
原告静岡第一テレビ本件放送8
原告本件放送9SBS
原告テレビ静岡本件放送10
原告あさひテレビ本件放送11
⑷被告の行為
被告は,「ロクラクⅡビデオデッキレンタル」という名称で,ハードディ
スクレコーダーであるロクラクⅡ(被告が製造し,販売・貸与を行っている,
インターネット通信機能を有するハードディスクレコーダーである。)の,
親子機能を有する2台のロクラクⅡ(以下,親機能を有するロクラクⅡを
「親機ロクラク」,子機能を有するロクラクⅡを「子機ロクラク」とい
う。)をセットにして,有償で貸与する(子機ロクラクについては販売する
場合もある。)事業(以下「本件サービス」という。なお,本件サービスの
内容の詳細については,後記のとおり,当事者間に争いがある。)を行って
いる。
なお,被告は,本件サービスで使用されている機器と同一の機器を,親機
ロクラク及び子機ロクラクのセットとして,「ロクラクⅡ親子ビデオセッ
ト」の名称で販売している(甲2の17,24の11)。
本件サービスの利用者は,同サービスを利用することによって,手元に設
置した子機ロクラクを操作して,離れた場所に設置した親機ロクラクにおい
て地上波アナログ放送を受信してテレビ番組を複製させ,複製した番組デー
タを子機ロクラクに送信させ,子機ロクラクに接続したテレビ等のモニタに,
当該番組データを再生して,複製したテレビ番組を視聴することができるこ
とになる。
⑸先行仮処分事件
原告らは,平成18年5月17日,被告に対し,本件サービスにおいて,
被告が,原告及び東京局各社が著作権を有する番組(本件番組3を除NHK
いて本件番組と同一である。)並びに原告及び静岡局各社が著作隣接NHK
権を有する放送(本件放送から,東京局各社に係る本件放送3ないし7を除
いたもの。東京局各社の著作隣接権の侵害の有無は審理の対象とされていな
かった。)の放送に係る音又は影像の複製を行っていると主張して,著作権
及び著作隣接権に基づく侵害差止請求仮処分命令の申立てを行った(以下
「先行仮処分事件」という。)。そして,先行仮処分事件において,平成1
9年3月30日,被告は,本件対象サービスを提供し,上記番組や放送に係
る音又は影像の複製行為を行っているというべきで,原告及び東京局NHK
各社の上記番組についての著作権並びに原告及び静岡局各社の上記放NHK
送についての著作隣接権を侵害すると判断され,被告に対し,本件対象サー
ビスにおいて上記番組や上記放送に係る音又は影像の複製行為を対象とする
ことの差止めを命ずる決定がされた(甲25,裁判所に顕著な事実。以下
「先行仮処分決定」という。)。
その後,原告らが,先行仮処分決定に基づく間接強制を申し立てたところ,
被告は,上記番組を複製することができないようにしたこと及び静岡県内に
設置された親機ロクラクを東京に移転させたことを主張し,先行仮処分決定
によって示された不作為義務に違反するおそれはないとして争ったが,同年
5月11日,上記間接強制の申立てを認容する決定がされ,同年7月12日,
同決定に対する執行抗告が棄却された(甲28)。
2争点
⑴本件サービスにおいて,被告は,本件番組及び本件放送に係る音又は影像
の複製行為を行っているか(争点1)
⑵原告らの損害の有無及びその金額(争点2)
⑶原告らの請求は権利の濫用といえるか(争点3)
3争点についての当事者の主張
⑴争点1(本件サービスにおいて,被告は,本件番組及び本件放送に係る音
又は影像の複製行為を行っているか)について
(原告らの主張)
ア本件サービスについて
(ア)ロクラクⅡについて
a基本機能
ロクラクⅡは,主な基本機能として,デジタル録画機能,インター
ネット機能(その一部としてメール機能)を有している。
デジタル録画機能は,アナログのテレビ番組等をデジタルデータと
して圧縮録画し,それを再生するハードディスクレコード機能である。
インターネット機能は,インターネットに接続し,インターネット
を利用できる機能である。
メール機能は,インターネット機能の一部で,メールアドレスを有
して,電子メールを利用することができる機能であるが,子機ロクラ
クから親機ロクラクへの録画予約要求及び録画されたデータの親機ロ
クラクから子機ロクラクへの転送には,一般にはメール機能とは呼称
しない,プロトコルによるトランザクションが用いられている。http
ロクラクⅡで受信録画できるテレビ番組は,機器の構造上,地上波
アナログ放送に係るもののみである。また,ロクラクⅡには,設定さ
れた録画時間枠において継続的に上書き録画を行う,リングバッファ
録画機能を備えることも可能である。
b親子機能
ロクラクⅡには,親子機能を利用することができる機種(異なる種
類のファームウェアを上書きすることはできないとの処理がされた上
で,親機能を持たせるためのファームウェア又は子機能を持たせるた
めのファームウェアが組み込まれているもの。)があり,その親子機
能を利用することで,以下の手順により,別の場所のテレビ番組を受
信録画し,その番組データを手元に移動して,再生することが可能と
なる。
⒜親機ロクラクと,当該親機ロクラクと対応関係にある,子機ロク
ラクを準備する。
⒝子機ロクラクを手元に設置し,親機ロクラクを,視聴したいテレ
ビ番組を受信できる別の場所に設置する。
⒞子機ロクラクを操作し,親機ロクラクが受信する放送における,
自己の視聴したいテレビ番組の録画予約のメールを,親機ロクラク
に送信する。
⒟親機ロクラクは,子機ロクラクの操作により送信された録画予約
指示に基づき,番組を録画し,同番組データをハードディスク内に
記録した上,子機ロクラクに当該番組データをメールにより移動す
る(移動後,親機ロクラクには番組データが保存されないように設
定されている。また,録画された番組データには,他の機器で更に
複製することができないように,コピー防止機能が付されてい
る。)。
⒠子機ロクラクを操作し,親機ロクラクから移動して子機ロクラク
に蓄積された番組データを,子機ロクラクにおいて再生して視聴す
る。
(イ)本件サービスの概要
被告は,自己の管理支配下において,親子機能を有する2台のロクラ
クⅡのうち親機ロクラクを日本国内に設置して,受信するテレビ放送の
放送波をその親機ロクラクに入力するとともに,これに対応する子機ロ
クラクを利用者に貸与又は譲渡することにより,当該利用者をして,日
本国内で放送されるテレビ番組の複製及び視聴を可能ならしめるサービ
スを提供している。本件サービスの利用者は,同サービスを利用するこ
とによって,手元に設置した子機ロクラクを操作して,離れた場所に設
置された親機ロクラクにおいて受信された地上波アナログ放送に係るテ
レビ番組を複製するように要求するとともに,複製された番組のデータ
を子機ロクラクに送信するよう要求し,子機ロクラクに接続したテレビ
等のモニタに,送信された当該番組データを再生させ,複製されたテレ
ビ番組を視聴できることになる。
(ウ)本件サービスの仕組み
本件サービスを実現している機器類は,以下のとおりである。これら
の機器類が,別紙「本件サービスのシステム構成」のとおり接続されて,
本件サービスのシステムが構築されている。
a親機ロクラク
親機ロクラクは,子機ロクラクから送信された指示に基づき,入力
されたテレビ番組をデジタルデータ化した動画ファイルとしてハード
ディスク内に複製し,利用者の手元の子機ロクラクに自動的に送信す
る機能を有する機器である。
親機ロクラクは,インターネット回線に接続されており,録画され
たテレビ番組は,インターネット回線を通じて利用者の手元の子機ロ
クラクに送信される。
b子機ロクラク
利用者は,手元に設置した子機ロクラクからの操作により録画予約
要求を親機ロクラクあてに送信し,親機ロクラクが複製した動画ファ
イルを受信し,テレビ番組を視聴する。
なお,子機ロクラクで録画予約したテレビ番組が親機ロクラクで録
画され,自動的に子機ロクラクにダウンロードされる一連の機能は,
被告が製造するソフトウェア(ロクラクファームウェア等)によって
実装されているものである。被告は,当該ソフトウェアを,随時,ヴ
ァージョンアップし,自社のウェブサイトで公表している。
cテレビアンテナ
放送波を受信するための機器である。
本件サービスにおいて複製されるすべてのテレビ番組は,被告が管
理する設置場所に設置されたアンテナで受信され,後記のブースター
及び分配機を経由して親機ロクラクに入力されるよう,被告によって
システム構築されている。
dブースター
アンテナから受信された放送波は,そのまま多数の親機ロクラクに
分配して供給すると,出力が減少して画像が劣化してしまう。被告は,
各親機ロクラクでテレビ番組を良好な画質で録画できるように,ブー
スターによってその出力を高めている。
e分配機
放送波を各親機ロクラクに供給するための分岐点の役目を果たす機
器である。
f光ファイバー
インターネットに接続する回線であって,利用者が本件サービス全
体にアクセスする際の入口であり,複製したテレビ番組のデータを送
信する際の出口でもある。
gルーター
親機ロクラク及び光ファイバーの間に入り,相互の信号やデータの
割り振りを行う機器である。
(エ)本件サービスの対象となる番組
本件サービスで録画できるのは,被告が親機ロクラクを設置した場所
で放送されているテレビ番組である。静岡県内に設置した場合は,静岡
地区のテレビ番組が録画の対象となり,東京に設置した場合及び東京周
辺に設置した場合は,東京のテレビ番組が録画の対象となる。すなわち,
親機ロクラクが静岡県内に設置されていた(現在も設置されている可能
性がある。)本件サービスの開始時から平成19年4月19日ころまで
は,原告(総合及び教育の2局),原告静岡第一テレビ,原告NHK
,原告テレビ静岡及び原告あさひテレビの地上波アナログ放送(別SBS
紙放送目録記載1(静岡),2(静岡)及び8∼11)が録画の対象と
なり,同月20日以降は,原告(総合及び教育の2局),原告日NHK
本テレビ,原告,原告フジテレビ,原告テレビ朝日,原告テレビTBS
東京の地上波アナログ放送(別紙放送目録記載1(関東),2(関東)
及び3∼7)が録画の対象となっている。
したがって,本件サービスにおいて複製の対象となっているテレビ番
組は,原告らが放送事業者として著作隣接権を有するものである。
また,本件サービスにおいて複製の対象となっているテレビ番組には,
本件番組のほか,原告及び東京局各社が著作権を有するものが多NHK
数含まれている。
(オ)利用者が本件サービスにおいて通常のサービスを利用する場合の具
体的手順
a録画予約
利用者は,自宅でインターネットに接続した子機ロクラクを起動し
て,テレビ画面に子機ロクラクの操作画面を表示させる。そして,子
機ロクラクを操作して録画予約のための番組表を表示させ,その番組
表の中から,視聴を希望する番組を選択,決定する。この決定は,イ
ンターネットを通じて,被告が管理する設置場所内に設置された親機
ロクラクに送信される。
b録画
被告が管理する設置場所内に設置された親機ロクラクが,自動的に
テレビ番組の録画を行う。
cダウンロード
録画が終了すると,同時に,被告が管理する設置場所内に設置され
た親機ロクラクから子機ロクラクに,録画された番組のデータが自動
的にインターネットを通じて送信される。
d視聴
利用者は,手元の子機ロクラクに送信された番組のデータ(動画フ
ァイル)を再生することにより,録画されたテレビ番組を視聴するこ
とができる。
イ被告による著作権及び著作隣接権の侵害
(ア)複製行為の主体について
著作権法上の複製行為の主体が誰であるかは,カラオケ装置を設置し
たスナック等の経営者について,客の歌唱についての管理及びそれによ
る営業上の利益という観点から,演奏の主体として,演奏権侵害の不法
行為責任があると認めた最高裁判例(最高裁昭和59年(オ)第1204
号同63年3月15日第三小法廷判決・民集42巻3号199頁,以下
「クラブキャッツアイ事件最高裁判決」という。)等も踏まえ,当該複
製行為を実際に管理しているかどうか,また,経済的利益を得ているか
どうか等によって規範的見地から総合的に判断されるべきである。
(イ)本件サービスの目的
本件サービスは,日本国外で日本のテレビ番組を視聴させる点を強調
して広告が行われ,また,サービス内容の説明においても,利用者が日
本国外で利用する場合を想定した説明のみを行い,利用申込欄の住所記
載欄の表示も,国名の入力が求められていることなどから明らかなよう
に,海外に居住する利用者を対象に,日本のテレビ番組をその複製物に
よって視聴させることのみを目的としたサービスである。
そして,被告が,親機ロクラクの設置場所について,取扱業者が提供
する場所に設置されているものと利用者の自宅に設置されているものと
の割合を示すよう求められたにもかかわらず,その回答を行っていない
ことからすれば,本件サービスの利用者において,自宅に親機ロクラク
を設置している利用者がほとんど存在しないことが推察され,そうであ
れば,被告は,本件サービスを維持するために,親機ロクラクの設置場
所の確保に関与せざるを得ないといえる。このことは,被告が,親機ロ
クラクが設置されていたと主張する静岡県浜松市<以下略>や,現在の
設置場所と主張する東京都渋谷区<以下略>が,被告の親会社であり被
告と人的・経済的に密接に関連する株式会社日本コンピュータ(以下
「日本コンピュータ社」という。)の取引先である有限会社スター電子
工業(以下「スター電子工業」という。)やホライズンパリテートサー
ビス株式会社(以下「ホライズン社」という。)の所在地であることに
も示されている。
(ウ)機器の調達・設置・管理
本件サービスにおいては,後記ウのとおり,被告の管理する設置場所
内に被告が設置した親機ロクラク,テレビアンテナ,ブースター,分配
機,ルーター等多くの機器類が,有機的に結合して1つの本件録画シス
テムを構成しており,親機ロクラクは被告の所有物であり,その他の機
器類も被告の管理下にあるものであり,被告は,上記システムが常時作
動するように監視し,これを一体として管理している。
また,本件サービスで利用されるロクラクⅡには,被告が製造したソ
フトウェア(ロクラクファームウェア等)がインストールされており,
同ソフトウェアによって,利用者は子機ロクラクを通じてテレビ番組の
録画予約が可能となり,また,親機ロクラクに録画されたテレビ番組が
自動的に子機ロクラクに送信される仕組みが作り上げられている。
利用者は,子機ロクラクを操作して,録画予約のための番組表を表示
させ,その番組表の中から,視聴を希望する番組を選択,決定すること
によってテレビ番組の録画予約を行うが,この番組表のデジタルデータ
は,被告が,被告のサーバから,インターネットを通じて提供している。
被告は,先行仮処分決定後に,同決定で複製の対象とすることを禁止さ
れた番組を除外した被告作成の番組表を,子機ロクラクが取得する方法
で利用者に取得させているが,これは,後記(エ)のとおり,被告が,親
機ロクラクと子機ロクラク間の通信をウェブサーバ又はメールサーバに
よって直接管理し,インターネット経由で子機ロクラクに被告作成のフ
ァームウェアを送信するなどして利用者の手元にある子機ロクラクに随
時変更を及ぼし得ることから,可能となったものである。
そして,親機ロクラクと子機ロクラク間の録画予約や録画された番組
データの送受信は,プロトコルにより,被告の管理するサーバを経http
由して行われている。
このように,被告は,上記システムが常時作動するように監視し,こ
れを一体として管理しているのであり,これに伴い,本件サービスの規
約においても,ロクラクⅡについて,その性能や機能の維持向上を目的
として,被告の定める方法及び内容によって,定期的に1か月当たり5
日間程度の日数について,メンテナンスを実施する旨が定められている。
(エ)被告による親機ロクラクと子機ロクラク間の通信の管理
親機ロクラクと子機ロクラク間の通信は,以下のとおり,被告の管理
支配下で行われている。
①親機ロクラクと子機ロクラク間の通信は,被告のサーバ又は被告が
契約するサーバを経由して行われている。
②上記サーバは,録画予約及び番組データの送信のために被告が用意
した専用サーバである。
③被告のサーバ又は被告が契約するサーバを経由するたびに,当該サ
ーバの管理者である被告が等による認証を行っている。ID
④これらの通信を実行するロクラクⅡ及びファームウェアは,すべて
被告が製造・開発したものであり,被告の規定する方式によって,通
信が実行されている(被告は,子機ロクラクの貸与後も,変更したフ
ァームウェアを利用者の手元にある子機ロクラクに送信するなどして
おり,その点でも,親機ロクラクと子機ロクラク間の通信を強固に規
律している。)。
⑤利用者は,録画予約や番組データの受信という,被告が規定する目
的及び方法でしか,当該通信機能を利用することはできない。
(オ)複製可能な放送・番組
本件サービスで録画可能な放送は,被告が設定した範囲内の放送(被
告の管理する設置場所所在の静岡県又は東京で受信された地上波アナロ
グ放送)に限定されている。加えて,上記のとおり,本件サービスでは,
テレビ番組の複製は,被告が提供する番組表により強く規制され,その
範囲内でのみ可能とされているにすぎない。
(カ)テレビ番組を複製するための環境整備
利用者は,本件サービスを利用する場合,被告から購入し又はレンタ
ルされて手元にある子機ロクラクを用いなければ割り当てられた親機ロ
クラクにアクセスすることができず,アクセスした後も,子機ロクラク
が示す手順に従って,番組の録画や録画データのダウンロードを行うも
のである。
そして,親子機能を有するロクラクⅡは,親子機能を実現するための
特別のソフトウェアであるファームウェアを被告自身が開発して組み込
み,かつ,被告が用意又は契約して管理するサーバを経由してのみ録画
予約や録画した番組データの送出が可能なように設定し,本件サービス
又は同種のサービスに利用されることのみを目的とするといえるもので
あり,これらのことにかんがみれば,親子機能を有するロクラクⅡは,
本件サービス又は同種サービスのための専用品と評価できるものである。
(キ)経済的利益
被告は,利用者から初期登録料3000円を受領し,また,毎月のロ
クラクⅡのレンタル料(通常サービスで1か月8500円,親機ロクラ
クのみのレンタルの場合1か月6500円)及び後記のロクラクアパー
トの賃料(1か月2000円)の名目で毎月本件サービスの対価を受領
し,利益を得ている。
(ク)小括
上記各事情を総合すれば,被告が,本件番組を含む,本件放送に係る
放送についての複製行為を管理していることは明らかであり,同複製行
為の主体であることは明らかである。したがって,被告の上記複製行為
は,原告及び東京局各社の本件番組についての複製権(著作権法NHK
21条)並びに原告らの本件放送に係る音又は影像についての著作隣接
権としての複製権(著作権法98条)をいずれも侵害する。
ウ親機ロクラク等の設置及び管理について
(ア)ロクラクアパートについて
被告は,従前,本件サービスと同様のサービスを無料のモニタに対し
て実施していた(以下「本件モニタ事業」という。)際,親機ロクラク
を被告事業所内に設置し,親機ロクラクとテレビアンテナ端子,分配機,
高速インターネット回線,ハブ,ルーターの各種機器を接続し一体とし
て管理を行ってきた。
本件モニタ事業終了後,本件サービスを開始するまでの期間はわずか
1か月に満たず,また,海外の利用者に日本のテレビ番組を視聴させる
という本件サービスの性質上,利用者の大多数は日本国内に親機ロクラ
ク設置場所を有しておらず,本件モニタ事業終了後,被告事業所内に親
機ロクラクを設置したままにしていた者もいたことなどから,被告に設
置場所の確保が強く要請されていた。そして,親機ロクラクの所有権は
被告にあること,利用者は本件サービスの利用の際に保証金の支払をす
ること,被告による機器の変更も可能で,定期的にメンテナンスが実施
されること,本件サービス終了時には返還が求められていること,被告
が親機ロクラクの設置場所として不適当であると考える場合には別の設
置場所を登録しなければならないことなどからすれば,被告が設置場所
を知らないとか関与しないということはあり得ない。
被告は,従前,親機ロクラクを設置している場所を「ハウジングセン
ター」と称していたが,近時,その名称を「ロクラクアパート」と変更
している。また,この名称変更に伴い,この「ロクラクアパート」の運
営主体は,第三者である「」(以下「社」という。)NuStarSupplyNS
や,「」(以下「社」という。)等のDREAMSDELITESDN.BHD.DD
代理店となった旨説明している。
しかしながら,まず,「ロクラクアパート」については,被告の説明
によれば,①親機ロクラクを預かる場所であり,②テレビアンテナ,光
ファイバー等の必要な機器がすべて用意されており,③親機ロクラクが
適正にテレビ番組の複製を行うよう管理する者がおり,④親機ロクラク
に対する保険が自動的に付され,⑤毎月2000円の賃料が発生すると
いうことであるが,これは,費用が2000円追加されただけで,他は,
従前の「ハウジングセンター」と何ら変わらないものである。
そして,被告は,自社ウェブサイト及び広告などで本件サービスを宣
伝する際に,この設置方法について言及し,特にウェブサイトにおいて
は,通常の家庭に設置する場合の危険性を述べるとともに,上記「ロク
ラクアパート」の特性を詳述して利用者を「ロクラクアパート」の利用
に誘引している。「ハウジングセンター」のころから本件サービスを利
用している利用者に対して,本件サービス上の利用者に対するメッセー
ジ送信機能を利用して,「ロクラクアパート」の利用を繰り返し勧めて
いる。
また,ロクラクアパート利用料は,「レントダイ」なNustarSupply
る屋号で決済されていたが,当該屋号を用いて徴収していた事業者は,
平成18年7月まで被告であり,その後は,被告と人的及び経済的に密
接な関係にある日本コンピュータ社であった。
さらに,社や社などは,被告の説明によれば,海外の業者でNSDD
あり,比較的小規模や個人事業主であることが多く,このような業者が
日本国内で直ちに一定規模の適切な親機ロクラク設置場所を一定数確保
することが困難であることは明らかである。
以上から,被告は,先行仮処分決定に至るまで,親機ロクラクを実質
的に管理していたことは明らかである。
(イ)先行仮処分決定後の親機ロクラクの移転について
a被告は,先行仮処分決定後に,被告とは関係のない海外の取扱業者
が浜松市所在の有限会社スカッシュ(以下「スカッシュ社」とい
う。)に親機ロクラクの設置場所を移動させた旨主張するが,被告の
説明は,以下のとおり信用できない。
被告は,平成18年1月から平成19年4月までの間,親機ロクラ
クが,浜松市<以下略>のスター電子工業と同市<以下略>のスカッ
シュ社所在地に設置されていた旨主張する。
しかしながら,スター電子工業では親機ロクラクの設置,管理等は
行われておらず,仮に行われていたとしても,当該場所はロクラクⅡ
の製造を行う工場であり,被告との関連性は明らかである。スカッシ
ュ社所在地は,同社の代表者の自宅であるが,同人の話では,コンピ
DDNSュータ機器の管理や運送等の業務は一切行っておらず,社や
社などは一切名前を聞いたことや取引を行ったことはなく,また,依
頼を受けて親機ロクラクの設置を行ったこともないとのことである。
さらに,被告は,社が,スカッシュ社に依頼して,静岡県内のDD
親機ロクラクを東京都内に移動させた旨主張するが,移動に用いたレ
ンタカーの契約は日本コンピュータ社の従業員がスカッシュ社を名
乗って行っていたことが判明した。
これらのことからすれば,親機ロクラクの移動及び設置場所の確保
に被告が関与していないとの主張は何ら信用できない。
bまた,被告は,親機ロクラクの東京における設置場所について,東
京都渋谷区<以下略>のホライズン社及び東京都豊島区<以下略>の
株式会社クロスワン(以下「クロスワン社」という。)である旨主張
するが,ホライズン社は,被告の親会社であり被告と人的・経済的に
密接に関連する日本コンピュータ社の取引先である。また,クロスワ
ン社の代表者の話によれば,同社の電気供給量の関係で,親機ロクラ
クの接続等は行っておらず,テレビアンテナ,ブースター,分配機,
光ファイバー,ルーター等の機器は何ら準備しておらず,これらと親
機ロクラクの接続等はしていなかったとのことである。
以上からすれば,親機ロクラクの設置場所に何ら関与していないと
の被告の主張は信用できず,被告が親機ロクラクを実質的に管理して
いる状況は何ら変わっていないというべきである。
(被告の反論)
ア原告らの主張の認否
(ア)原告らの主張アについて
aロクラクⅡの基本機能についての主張は,親機ロクラクと子機ロク
ラク間の通信に関する主張を除いて認める。親機ロクラクと子機ロク
ラク間の通信は,プロトコルによるメール通信によって行われてhttp
いるが,同通信が一般にメール通信と呼称されないとの原告らの主張
は誤りである。
ロクラクⅡの親子機能については,子機ロクラクを操作して,別の
場所のテレビ番組をその場所に設置した親機ロクラクが録画し,当該
番組データを手元の子機ロクラクに移動することで,子機ロクラクで
当該番組データを再生することが可能となることは認めるが,これは,
被告がロクラクⅡの利用者に対し,番組を再生させたり,視聴させる
ものではなく,利用者各自が操作することによって行われるものであ
る。また,子機ロクラクからの録画予約に基づき,親機ロクラクにお
いてデジタル化して圧縮された番組は,親機ロクラク内のハードディ
スク内に一時記録され,子機ロクラクにメールによって転送移動され
る。この際,番組データは親機ロクラクに残らないようにされており,
また,移動先は,1体1で対応している子機ロクラクだけであり,コ
ピー防止機能により,録画された番組データを他の機器で更に複製す
ることなどはできない。放送をタイムシフト視聴するための機器とし
てみれば,広く普及しているレコーダー等から,再複製機能をHDD
除いたタイムシフト視聴専用機ともいえる。そして,親機ロクラクは,
株式会社ソニー(以下「ソニー」という。)製の「ロケーションフリ
ーテレビ」(以下「ロケーションフリー」という。)におけるベース
ステーション(親機ロクラクと類似の機能を有する機器)が,遠隔地
に番組データを送信するに当たり,いったんベースステーション内の
メモリに番組データを記憶することと同様の一時的記憶作業をハード
ディスク内で行っているだけと評価できる。
b原告らの主張ア(イ)の本件サービスの概要についての主張は,否認
する。
本件サービスは,ロクラクⅡという機器を賃貸する事業であり,そ
れにとどまる。各利用者による複製行為は,著作権法30条が認める
私的使用のための複製にすぎない。本件サービス開始前の,試行とし
て行っていた本件モニタ事業の段階で,レンタルされた親機ロクラク
が被告の事業所内に設置されていた時期があったが,本件サービス開
始後は,親機ロクラクが被告の管理支配する場所に設置されたことは
一切ない。
c原告らの主張ア(ウ)の本件サービスの仕組みについての主張は,否
認する。
被告は,本件サービスにおいて,親機ロクラクの設置場所を提供し
たことはなく,親機ロクラクを管理支配していないから,別紙「本件
サービスのシステム構成」は明らかな誤りである(なお,この図面は,
本件モニタ事業時の状況とも相違している。分配機からのアンテナ接
続用ケーブルと,イーサネットケーブルは,親機ロクラクごとに個別
に接続していなければ,親機ロクラクは対応する子機ロクラクからの
指示を受けることはできない。)。
ファームウェアの更新は,他の市販のデジタル家電においても,ア
フターサービスにおいて一般的に行われている。ロクラクⅡでは,被
告が電子メールに新しいファームウェアを添付して送る方法と,被告
がインターネット上で新しいファームウェアを公開し,各利用者が子
機ロクラクのメニュー画面からファームウェア更新を選択してファー
ムウェアをダウンロードする方法により行われている。
なお,本件モニタ事業実施時には,被告事業所内に親機ロクラクが
設置されていたが,その際にも,原告が主張するようなシステムが構
築されていたものではない。すなわち,親機ロクラクの設置場所は,
監視サーバ等の特別な設備や保守管理をする者の配置を必要とせず,
テレビアンテナの接続環境,電源供給環境,高速インターネット接続
環境があればよいので,個人の利用者の自宅等でも,一般のハウジン
グ業者が提供する置き場所でも,親機ロクラクの設置が可能なのであ
る。
d原告らの主張ア(エ)の本件サービスの対象となる番組についての主
張は,否認する。
ロクラクⅡでは,販売用機器と賃貸用機器で録画可能な放送波は共
通であり,本件サービスの場合に,特別な設定や限定(受信制限)は
ない。
e原告らの主張ア(オ)の利用者が本件サービスにおいて通常のサービ
スを利用する場合の具体的手順についての主張は,否認する。
本件サービスにおいて,レンタルされた親機ロクラクは,被告が管
理する場所には設置されていない。
(イ)原告らの主張イについて
a原告らの主張イ(ア)の複製行為の主体についての主張は争う。本件
サービスの利用者の複製行為に関連して,被告の管理性を認めること
はできないから,被告を複製行為の主体であると評価することはでき
ない。
b原告らの主張イ(イ)の本件サービスの目的についての主張は否認す
る。
本件サービスの目的は,販売用商品であるロクラクⅡの製造者であ
る被告として,ロクラクⅡを賃貸することによって,デジタル家電機
器であるロクラクⅡを広く普及させるとともに,その利用を促進する
こと及び利用者のニーズに従ってロクラクⅡを利用させることによっ
て,本件サービスの利用を広げることである。
なお,被告は,レンタル機器の利用方法のうち,子機ロクラクのみ
で影像を録画し,再生する方法,親子機能を用いて離隔地の番組を録
画し,再生する方法(国内の離隔地の場合と海外の離隔地の場合双
方),インターネットビデオをダウンロードして視聴する方法などを
ウェブサイトで紹介しており,実際にどのような方法でレンタル機器
を利用するかは,利用者の自由に委ねられている。
c原告らの主張イ(ウ)の機器の調達・設置・管理についての主張は否
認する。
本件サービスにおいて,被告は,親機ロクラクの設置にも設置場所
にも関与していない。
ロクラクⅡの親子機能を利用するためには,そもそも,機器を常時
監視したり,保守するなどして,管理下においておく必要は全くない。
本件サービスの規約に記載されている「物件のメインテナンス」とは,
「性能や機能の維持向上を目的として」と記載されているように,バ
グを防止したり,機器をより扱いやすくするためなどに,インターネ
ット通信により行うファームウェアの更新のことである。
番組表の取得に関する原告らの主張が誤りであることは,後記のと
おりである。
d原告らの主張イ(エ)の被告による親機ロクラクと子機ロクラク間の
通信の管理についての主張は否認する。原告らの主張が誤りであるこ
とは,後記のとおりである。
e原告らの主張イ(オ)の複製可能な放送・番組についての主張は否認
する。
被告は,録画対象の番組の範囲に何の関係も有していない。
f原告らの主張イ(カ)のテレビ番組を複製するための環境整備の主張
は否認する。
親機ロクラクに,対応した特定の子機ロクラクからしかアクセスで
きないことは,親機ロクラク及び子機ロクラクが完全な1対1の対応
関係を有していることから当然である。販売されている親子機能を有
するロクラクⅡについても同様である。
g原告らの主張イ(キ)の経済的利益についての主張は否認する。
本件サービスにおいて被告が得ている金銭は,初期登録料と毎月の
機器のレンタル料金のみで,親機ロクラクの設置場所に関係する対価
を受領している事実は存在しない。
(ウ)原告らの主張ウについて
原告らの主張ウの(ア)のロクラクアパート及び(イ)の先行仮処分決定後
の親機ロクラクの移転についての主張は否認する。
イ親機ロクラクの設置場所
(ア)本件モニタ事業実施期間(平成16年∼平成17年3月)
被告は,本件モニタ事業実施時,希望する利用者に対し,「ハウジン
グセンター」との名称で,被告本社事業所内の一部のスペースを親機ロ
クラクの設置場所として提供するオプショナル契約を提案するビジネス
モデルを検討したことがあり,利用者の親機ロクラクを被告本社事業所
内に設置していたことがあった。
(イ)ビジネスモデルの確定後(平成17年3月以降)
被告は,平成17年3月,本件サービスを本格的に有料事業化するに
当たり,親機ロクラクの設置場所の提供は一切行わないビジネスモデル
を確定した。
そのため,それ以降に,本件サービスの利用を申し込んだ者は,被告
から送付を受けるか,取扱業者から送付され,又は手渡しで受け取った
親機ロクラクを,被告と関係なく,各自の準備した任意の場所に設置し
ている。
なお,取扱業者は,利用者から相談や希望があれば,親機ロクラクの
設置場所を賃貸することができる不動産業者を紹介している事実はある
が,被告は,これに一切関与しておらず,また,設置場所に関する対価
も得ていない。
(ウ)ビジネスモデル確定に伴った被告事業所内からの移動(平成17年
3月∼平成18年1月)
本件モニタ事業実施時に被告事業所内に親機ロクラクを設置していた
利用者については,確定後のビジネスモデルに基づくレンタル規約への
同意を得た上で,直接又は取扱業者を通じて,新たな親機ロクラクの設
置場所の連絡を受け,その場所あてに親機ロクラクを発送して,順次,
被告事業所内に残っていた親機ロクラクを移動した。さらに,平成17
年秋ころ,親機ロクラクを移動していない利用者との契約を相当期間経
過後に終了することを決め,取扱業者に伝えるとともに,取扱業者にお
いて,利用者に対する親機ロクラク移動の呼びかけを行うように依頼し
た。これに対し,マレーシアの取扱業者である社から被告に対し,DD
取扱業者が責任をもって新たな設置場所を準備するので,いったん取扱
業者に引き渡してもらいたい旨の申入れがされたので,被告は,引き渡
す親機ロクラクの紛失等について取扱業者が責任を持つことを確認し,
平成18年1月10日,社の連絡どおりに親機ロクラクの引取りにDD
訪れた者に,被告事業所内に残されていた親機ロクラクをすべて引き渡
した。その後,被告が引き渡した親機ロクラクは,各取扱業者が確保し
た不動産業者が準備した場所に移動された。この移動先を提供し,賃料
を得ていたのは,社の紹介による社等であったが,社等の不DDNSNS
動産業者は,被告とは何らの関係もない会社である。以降,レンタルさ
れている親機ロクラクが被告事業所内に設置されたことは一度もない。
なお,社に親機ロクラク設置場所を提供した業者に関する,上記NS
(原告の主張)ウ(イ)の原告主張は,信用性に欠ける調査結果に基づく
ものであり,不正確である。
(エ)先行仮処分決定を受けての移動(平成19年4月以降)
被告は,先行仮処分決定に従うため,取扱業者に対し,同決定の内容
を連絡した上で,社等の不動産業者が静岡県内に準備した場所に設NS
置されている親機ロクラクについては,やむを得ない措置として,レン
タル契約を解除する旨を連絡した。そして,レンタル契約を継続するた
めには,親機ロクラクを賃借人の自宅や静岡県外に移動することを求め,
かつ,その事実を明確に報告するとともに,静岡県外に移動した親機ロ
クラクの設置場所も被告に報告するように求めた。
被告は,平成19年4月13日,社から,同月19日に,静岡県DD
内の社等の不動産業者が準備した場所に設置されている親機ロクラNS
クすべてを東京都内に移動する予定であるとの連絡を受けた。そして,
社は,同月19日,当該親機ロクラクのすべてを,東京都内の2かDD
所に分けて移動した。この2か所は,社が借り受け,利用者に提供NS
していた。
DDDDその後,被告は,社から,移動した親機ロクラクについて,
社担当の利用者のもののみならず,他の取扱業者担当のものも含め,静
岡県内に設置されていた親機ロクラクのすべてであることの報告を受け,
他の取扱業者も含めて,現時点では,静岡県内に親機ロクラクを設置し
ている利用者はないとの報告を受けている。
(オ)現在の親機ロクラクの設置場所
社は,後記のとおり,平成19年5月に開設した社のクレジNSDD
ットカードのアカウントの継続ができなくなったという理由から,同年
10月に至って,独自に行っていた設置場所の提供を終了した。
現在は,ホライズン社が,社から設置場所のハウジングを引き継NS
いでいる。
ホライズン社は,①被告と資本関係や人的関係のない別法人格の独立
した株式会社であること,②その資本金額(1億4000万円)におい
て被告(5000万円)を上回っている事業会社であること,③自社事
業としてロクラクⅡのほかにもソニー製のロケーションフリー等を預か
り保管するハウジングサービスを営んでいること,④利用者との間でハ
ウジング契約を締結し,自らハウジングの利用料を徴収しており,他方,
被告にはハウジング利益の分配をしていないこと,⑤事業所内に,ハウ
ジング契約を結んだ親機ロクラクを設置していることからすれば,ホラ
イズン社が,単独で親機ロクラクのハウジング事業を行っているとしか
評価できない。被告とホライズン社が,いわば法的に不可分一体となっ
て,親機ロクラクのハウジング事業を実施しているとか,親機ロクラク
の設置場所を提供しているなどと,規範的に評価することはおよそ不可
能である。
加えて,ロクラクⅡの設置は,上記ア(ア)cのとおり,家庭用ビデオ
録画機の利用とインターネット接続に関する経験のある利用者であれば,
特別な知識なしに実現可能であること(なお,ロクラクⅡの設置は,ソ
ニーのロケーションフリーのベースステーションの設置と比べてもかな
り容易であること),ロクラクⅡの設置場所について特別な管理施設の
用意は必要ないこと,ロクラクⅡが常時作動するように監視したりする
特別な対処(保守管理)を必要としないことからも,ホライズン社が独
自のハウジング事業によって事業所内に占有保管している親機ロクラク
について,被告の管理支配性を認めることはできない。
したがって,現在,親機ロクラクは,本件サービスの原則形態として
全国に散らばる利用者個人の自宅等に設置されているほかは,社をNS
引き継いだハウジング業者であるホライズン社が準備した設置場所に置
かれ,被告はこれらを管理支配していない。
ウ被告は親機ロクラク設置場所に関する収益を得ていないこと
(ア)「レントダイ」の屋号による収益が被告に帰属していNuStarSupply
ないこと
原告らは,ベリトランス株式会社(以下「ベリトランス社」といSBI
う。)において,屋号名「レントダイ」として取り扱わNuStarSupply
れている決済代行業務によりクレジットカード会社からなされる入金が,
親機ロクラクの設置場所の賃料であり,その決済代行業務の申込みが,
当初被告により行われ,その後,申込名義が日本コンピュータ社に変更
されたことをもって,被告が親機ロクラク設置場所の賃料を得ていたと
主張するが,以下のとおり,これは誤りである。
被告は,平成17年,本件サービスの取扱業者である社から,ベDD
リトランス社のクレジットカード決済業務を,社の代わりに申し込DD
んでもらいたい旨の依頼を受けた。その理由は,例えば,設置サービス
や有料情報の提供など,社が本件サービスに関連して,日本人を中DD
心とする利用者に有料のサービスを提供する場合に,その費用について,
DD日本のクレジットカード決済代行業務を利用して受け取りたいが,
社が海外の業者であって,日本円の決済を行うことは難しく,そのため
に日本で口座を開設する等の手続は時間や手間がかかる可能性があると
いうものであった。社の申入れは,当該屋号に関する入金について,DD
社の指示する方法に従って被告から社に渡すという扱いにしてDDDD
もらいたいというものであった。
その後,被告は,取扱業者が,利用者から親機ロクラクの設置場所に
関する相談があった場合に,社を紹介していると知り,放送局とのNS
無用な紛争を避けるために被告は親機ロクラクの設置場所に関与しない
との方針から,上記屋号の依頼名義人が被告である状況は解消しておく
べきであると考え,平成18年7月,日本コンピュータ社に名義人変更
の手続を行ったものである。
上記屋号に関する入金は,全額,入金後速やかに社の指示に従っDD
て処理され,社に渡されている。したがって,被告の売上げでも,DD
日本コンピュータ社の売上げでもない。
(イ)社指定の「レントダイ」のアカウントの解除DDNuStarSupply
先行仮処分決定において,上記経緯について事実とは異なる事実認定
がされていたため,被告は,社に関する「レントダDDNuStarSupply
イ」の屋号での入金の取次終了を日本コンピュータ社に要請した。その
結果,同屋号による日本コンピュータ社名義でのベリトランス社の決済
代行業務の契約は,平成19年3月31日付けで解除されている。
(ウ)平成19年4月19日の移動先に関する賃料について
上記のとおり,親機ロクラクの東京への移動後,移動先に関する賃料
は,社が,自ら米ドル建てのクレジットアカウントを開設して,集DD
金を行ったが,これについて,被告は,一切関与していないし,配分も
受けていない。
しかしながら,社が行ったドル建て賃料の請求に対しては,対象DD
者からの入金の手続が円滑に進まず,また,平成19年9月で社のDD
当該クレジットアカウントが使用中止とされたことなどもあり,社NS
は,ホライズン社に対し,自らが契約していた利用者に対する設置場所
の提供を引き継いでいる。この後のホライズン社による賃料請求にも,
被告は関与していないし,ホライズン社からその配分も受けていない。
エロクラクⅡによる番組表の取得
原告らは,ロクラクⅡによる録画予約の際に,番組表が利用され,その
番組表を,被告が「用のウェブサーバ」からインターネットを通じEPG
て,各子機ロクラクに送信しているものであると主張するが,明らかな誤
りである。
番組表は,「」と呼ばれる,ソニーが開発したインターネットでiEPG
のテレビ番組予約方式を利用して,親機ロクラクが一般に対応の番iEPG
組表を提供しているウェブサイト(いわゆる「サイト」)にアクセiEPG
スして取得し,子機ロクラクが録画予約する際に,メール通信によって,
親機ロクラクから番組表を閲覧することによって利用されているもので
あって,被告には,番組表を子機ロクラクに送信する「用ウェブサEPG
ーバ」など存在しない。
なお,先行仮処分決定から現在に至るまで,番組表は,先行仮処分決定
で録画の対象とすることを禁止された番組のみを除外した被告作成の番組
表を,子機ロクラクが取得する方法で取得されているが,これは,先行仮
処分決定の理由中に,その履行方法として,対象の番組を除外した番組表
が提供されるとの方法が示されたことから,やむを得ずその指示に従い,
新たな技術開発をして,暫定的に番組表の取得方法を変更したためである
(仮に,この変更を原告らが取り上げて論難するとしても,被告としては,
先行仮処分決定の示唆に従って,本案訴訟の勝訴に至るまでの間の暫定的
措置として実施しているとしか言いようがない。)。
オ親機ロクラクと子機ロクラク間の通信
(ア)プロトコルによるメール通信http
親機ロクラクと子機ロクラク間の通信は,プロトコルによるメーhttp
ル通信である。
レンタル機器であるロクラクⅡは,世界中の様々なインターネット事
POPhttp情に柔軟に対応できるよう,プロトコルによるメール通信及び
プロトコルによるメール通信のいずれにも対応している。
なお,プロトコルによるメール通信と同様に,プロトコルにPOPhttp
よるメール通信においても,間にメールサーバが経由されるところ,メ
ールサーバは,あくまでも,メールを経由する役割を担うだけであり,
メールの内容に解析や改変を加えるなど,メール内容に関与することは
ないし,メールサーバが自ら符号を作成したり,独自にメールを送信す
ることも,性質上あり得ない。すなわち,すべてのメールアドレスは,
断続的にメールサーバに自身あてのメール確認のためにアクセスしてお
り,自身あてのメールが送信されている場合は,そのメールを取得して
受信するのであり,メールサーバからメールの送信を受けるのではない。
(イ)録画予約がメール通信によること
親子機能による録画予約の手順は,①利用者が子機ロクラクを操作し
て,録画予約のメールを,対応する親機ロクラクあてに送信する,②親
機ロクラクは,メールサーバを経由した子機ロクラクからの録画予約の
メールを取得(受信)し,録画予約メールに含まれる指令に基づき,録
画予約の処理を行い,録画予約完了のメールとして,録画予約を特定す
るを,子機ロクラクあてに送信する,③子機ロクラクは,メールサID
ーバを経由した親機ロクラクからの録画予約完了のメールに含まれる
に基づき,録画予約の完了の確認処理を行う,というものであり,ID
すべて①の利用者の操作に基づいて,ロクラクⅡに搭載されているイン
ターネット通信機能,親子機能が働いて実現されているものであり,被
告は,このプロセスに一切介在しない。なお,最新のファームウェアに
基づくプロトコルにおいては,②の録画終了メールが省略され,録画終
了メールを待たずに,子機ロクラクが番組データの移動を求めるメール
を送信している。
(ウ)番組データ移動がメール通信によること
親子機能による番組データの移動の手順は,①利用者の子機ロクラク
操作による録画予約に従い,親機ロクラクが番組を録画する,②録画が
終了すると,親機ロクラクは,子機ロクラクあてに録画が終了し,番組
データの移動が開始可能である旨の録画終了メールを送信する,③子機
ロクラクは,メールサーバを経由した親機ロクラクからの録画終了メー
ルを取得(受信)し,親機ロクラクに対し,番組データの移動を求める
メールを送信する,④親機ロクラクは,メールサーバを経由した子機ロ
クラクからの番組データの移動を求めるメールを取得(受信)し,録画
した番組データを細かく分割し,順次,番組データを添付したメールを,
子機ロクラクあてに送信する,⑤子機ロクラクは,メールサーバを経由
した番組データが添付されたメールを取得(受信)する,というもので
あり,これは,上記(イ)の①での利用者の操作に従って,ロクラクⅡが
実行する一連の動作にすぎず,このプロセスには,被告の介在は一切な
い。
(エ)メールサーバの性質について
上記のようなメール通信で経由されるメールサーバは,一般的なメー
ルサーバであり,容量が特別大きいとか,一般のメールサーバ以上に特
別な認証が必要とされるものではなく,現に被告は,一般のプロバイダ
が提供するメールサーバも併用している。
原告らは,大容量の番組データが送信されるためには,大容量のメー
ルサーバが必要である旨を述べるが,番組データは分割して,1分割当
たり4程度にして送られるために,当該メールが経由するメールサMB
ーバの容量としては,1アカウント当たり20程度もあれば十分でMB
ある。一般に普及しているフリーメールなどでも1アカウントについて
100程度のものが通常であるから,親機ロクラクと子機ロクラクMB
間の通信におけるメールサーバが,一般に比して大容量であるとはいえ
ない。
また,メールサーバを経由する通信について,メールサーバの管理者
が認証し,管理していると評価することは,余りに現実離れしている。
さらに,ロクラクⅡは,プロトコルによるメール通信と,プPOPhttp
ロトコルによるメール通信の双方に対応し,利用される国や地域に応じ,
また,その時々のインターネット状況,利用されるメールアドレスの種
類などに応じ,その時点で最も高速で安定するメールサーバ及びメール
通信のプロトコルを自動的に選択するようになっている。現在も,ロク
ラクⅡを用いた通信では,被告のメールサーバのみならず,コミNTT
ュニケーションズのプロバイダ「」のメールサーバが併用されてOCN
いる。以前には,プロバイダ「」や「ソフトバンク」のメールサーIIJ
バが使用されていたこともある。
(オ)市販されているロクラクⅡでも同様であること
以上のような通信方法は,レンタル機器だけでなく,販売しているロ
クラクⅡを利用して親子機能を利用する場合も同様である。
カ本件サービスにおける複製行為の主体について
(ア)本件において「カラオケ法理」により判断することが相当でないこ

クラブキャッツアイ事件最高裁判決は,カラオケをめぐる極めて特殊
な事情を前提とした事例判決であって,そこで示された考え方(以下
「カラオケ法理」という。)についても,一般化された法理として他の
事案に援用されることは予定されておらず,また,同判決は,直接的な
利用行為を行っていない者を行為主体とみなすという,一般的な行為概
念を大きく踏み出す極めて擬制的な判断をするに当たって,それを正当
化する根拠として,わずかに「著作権法の規律の観点から」としか述べ
ていない。したがって,同判決で示された考え方を一般化された法理と
して本件に援用することは許されるべきではない。
また,直接的な利用行為が著作権(又は著作隣接権)侵害とはならな
い場合に,それに関与する間接的な行為の著作権(又は著作隣接権)侵
害を肯定するには,十分な正当化根拠が示されていなければならないが,
カラオケ法理は,その根拠を示すものではない。
したがって,本件においては,そもそも,カラオケ法理により行為主
体性を判断すること自体が相当ではない。
(イ)本件において,原告らが主張するような基準,要素で判断すること
が相当でないこと
aネットワークサービスの提供者の行為主体性を肯定した裁判例(東
京地判平成15年1月29日,以下「ファイルローグ事件中間判決」
という。)は,直接的な利用行為をしているわけではないサービス提
供者を行為主体ととらえることができるか否かについて,直接的な利
用行為に対する管理・支配及びそれによって受ける利益の状況だけで
はなく,行為の内容・性質を判断要素としてあげており,問題とされ
るサービスが,利用者に著作権侵害行為を行わせるためのサービスで
あることを認定している。これは,カラオケ法理で示された管理支配,
それによって受ける利益の状況という判断要素だけでは,あまりに無
限定に過ぎるからである。
海外居住者を対象に,日本のテレビ番組をその複製物によって視聴
させるサービスにおける複製行為の主体性が肯定された裁判例(知財
高決平成17年11月15日,以下「録画ネット事件抗告審決定」と
いい,この事案を「録画ネット事件」という。)は,サービスの性質
を認定しているが,海外に居住する利用者が日本のテレビ番組を複製
物によって視聴することは,テレビ番組の著作権を侵害する行為でも,
放送事業者の著作隣接権を侵害する行為でもないから,上記のサービ
スの性質は,行為主体性を考えるに当たっては,中立的な事実にすぎ
ないはずである。録画ネット事件抗告審決定は,ファイルローグ事件
中間判決が,行為の内容・性質を判断要素に加えてカラオケ法理の適
用範囲を限定しようとした趣旨を無視するもので,相当ではない。
録画ネット事件抗告審決定において,サービス提供者の行為主体性
を肯定する評価根拠事実のうち,大半が中立的な事実にすぎず,実質
的な意味を有するのは,せいぜい,)全体が有機的に結合した1つのa
システムを構築していると評価できること(ただし,同決定がいかな
る事実関係を根拠としてそのように認定したかは明確ではなく,結論
の先取りとも考えられる。),)サービス提供の中心となる機器の所b
有権がサービス提供者に帰属していること,)サービスの提供に独自c
のソフトウェアが利用されていること,)サービス提供者が運営するd
サイトにアクセスし,そこでの認証を受けなければ,機器へアクセス
することができないこと,)サービスを利用するには,サービス提供e
者が運営するサイトの指示説明された手順に従わなければならないこ
とであるが,この程度の事実によって,サービス提供者が自ら複製行
為を行っているという擬制的な結論を導くことができないことは明ら
かである。
bまた,録画ネット事件抗告審決定において示されたサービス提供者
の行為主体性を認める上での評価根拠事実は,本件において妥当しな
い。
まず,本件サービスでは,親機ロクラクが被告の管理する設置場所
に設置されていると仮定しても,特定の利用者の親機ロクラクと他の
利用者の親機ロクラクとは,全く無関係に稼働し,それぞれ独立して
いる。また,録画ネット事件のようにホームページサーバや監視サー
バによる管理・制御はされていないから,複数の親機ロクラク全体が
有機的に結合して1つのシステムを構成していると認めることはでき
ない。
また,録画ネット事件において,サービス提供の中心となる機器の
所有権の帰属が問題とされたのは,利用者の機器を管理する権限の有
無が問題とされた結果であるが,本件サービスでは,親機ロクラクの
レンタルは実体を伴うもので,その管理権限は利用者に完全に移転し
ていることから,親機ロクラクの所有権が被告に帰属しているとして
も,被告の行為主体性を肯定する評価根拠事実たり得ない。
そして,本件サービスで利用されるのは,ロクラクⅡという汎用品
であり,本件サービスを提供するための特別なソフトウェアは一切利
用されていない。
さらに,本件サービスでは,機器へのアクセスのために,被告が運
営するウェブサイトにアクセスして認証を得ることや,サービス利用
のために,被告により指示説明された手順に従う必要はない。
(ウ)先行仮処分決定の判断が相当でないこと
先行仮処分決定では,親機ロクラクの設置,維持,環境整備等に関し
て,被告事業所内に親機ロクラクを設置していた場合と同様に,その管
理を継続しているとの誤った認定がされているが,仮にその事実が認定
できるとしても,それは,ハウジングサービス業者の行為主体性が否定
された裁判例(東京地決平成18年8月4日,以下「まねき事件決TV
定」という。)におけるロケーションフリーのベースステーションの設
置状況と何ら変わるものではない。ロクラクⅡが一般にも販売されてい
ることからもわかるように,ビデオデッキ等の他のデジタル家電DVD
と同様,一般消費者であるユーザーにとって,使用が容易な機器であっ
て,製造メーカーである被告による日常的な保守管理を必要とするもの
ではなく,上記事実は,行為主体性の評価根拠事実とはなり得ない。
さらに,本件サービスを利用する場合に,被告があらかじめ設定した
メールアドレスを用い,管理するサーバを経由して,指示やデータの送
受信が行われることは,汎用品であるロクラクⅡの仕組みにすぎず,ま
た,デジタル家電のメーカーが一般的に行っていることにすぎない。
加えて,カラオケ法理において問題とすべき利益とは,管理と直接に
結びついた経済的利益でなければならないはずであるところ,親機ロク
ラクが被告の管理する設置場所に設置されていると仮定しても,被告が
本件サービスによって,初期登録料及びレンタル料を取得していること
は,親機ロクラクの管理とは無関係であり,いずれにしても,カラオケ
法理において問題とすべき利益ではない。
⑵争点2(原告らの損害の有無及びその金額)について
(原告らの主張)
ア逸失利益
(ア)主位的主張(著作権法114条2項)
a損害の発生
⒜本件サービスは,原告らが行う事業活動と競合するところがあり,
本件サービスにより原告らに損害が発生している。
⒝原告らは,原告らを含むテレビ番組の著作権者及び著作隣接権者
等合計15団体(原告,原告日本テレビ,原告,原告フNHKTBS
ジテレビ,原告テレビ朝日,原告テレビ東京,日本民間放送連盟
(原告を除く原告らが会員となっている。),日本映画製作NHK
者連盟,全日本テレビ番組製作社連盟,日本脚本家連盟,日本シナ
リオ作家協会,日本文藝家協会,日本音楽著作権協会,日本芸能実
演家団体協議会,日本レコード協会)で共同して,放送番組著作権
保護協議会(以下「放番協」という。)を設立し,この放番協を通
じて在外邦人のために原告らが日本国内で放送するテレビ番組を低
廉な使用料(無償ではない)にて視聴させる仕組み(以下「放番協
認定ビデオ供給事業」という。)を構築している。
具体的には,会員の15団体が権利を有するテレビ番組について
は,在外邦人向けのレンタルサービスの用に供するためであれば,
レンタル用ビデオテープ1本当たり60円(レンタル期間が3か月
以内の場合)ないし120円(レンタル期間が3か月を超える場
合)という廉価な使用料の支払を受けることで,当該ビデオの取扱
業者に対して,認定ビデオとして許諾するものである。そして,放
番協が集めた使用料は,予め定めた分配比率によって,原告らに分
配されている。
このように,原告らは,この放番協認定ビデオ供給事業を通じて,
在外邦人に対して適法にテレビ番組を視聴してもらい,そこから得
られた使用料について原告らを含む会員団体で分配するという一連
のシステムを通じて一定の利益を得ている。
テレビ番組などは,一般的に,一度視聴されて番組内容が伝達さ
れれば,繰り返し視聴されることは極めて少ないという特性を持つ
から,被告が提供している本件サービスは,この放番協認定ビデオ
供給事業と競合関係にある。
⒞また,原告らは,別紙「インターネット配信番組一覧表」記載の
とおり,それぞれのウェブサイトで多数の番組をインターネットを
通じて配信している。さらに,他のプロバイダその他の配信会社に
有償で提供して,それらの配信会社等を通じてインターネット上で
配信しているものもある。これらの配信においては,現時点では,
各放送局のウェブサイトへの誘導という広告的側面で行われ,配信
に対し課金をしていないものも少なくないが,技術的にはいつでも
課金制度を取り入れられるのはもちろん,将来において課金するこ
とも念頭に置かれているものである。
⒟被告の主張に対する反論
被告は,著作権法114条2項の適用について,「同一の利用行
為を現に行っている」必要がある旨主張するが,その必要はなく,
著作権者が侵害者と同様の方法で著作物を利用して利益を得られる
蓋然性があれば足りるものである。
被告が主張するような,同一の利用行為を現に行っていることの
規範を定立した裁判例は見当たらない。
b被告の利益
被告は,本件サービスの提供に当たって,平成17年3月10日か
ら,レンタル料名目下に月額8500円,ロクラクアパートレント代
名目下に月額2000円,合計月額1万0500円(別途初期登録料
3000円)を利用者から受け取っている。
本件サービスの利用は,現在500名を下らないとして,経費もそ
れほどかからないことから,その利益率は90パーセントを下らない
ものと考えられる。これに基づいて,原告らの損害額を計算する。
⒜原告及び静岡局各社の損害NHK
本件サービスにより,平成17年3月10日から,平成19年4
月18日まで,原告及び静岡局各社の放送に係る音又は影像NHK
が,録音又は録画の対象とされていたのであるから,原告及NHK
び静岡局各社の1放送波当たりの損害額は,下記の計算式のとおり,
当該期間の損害額を6(原告は2波として計算)で割った金NHK
額になり,少なくとも1912万5000円を下らない。
①売上額:{円+(万円×か月(平成年月30001050024174
から平成年月末日まで))}×人=億万円19350012750
90%②利益率:
③利益:①×②=億万円11475
④1放送波当たりの損害額:③÷=万円619125000
⒝原告及び東京局各社の損害NHK
また,平成19年4月19日から現在に至るまで,原告及NHK
び東京局各社の放送に係る音又は影像が,録音又は録画の対象とさ
れているのであるから,原告及び東京局各社の1放送波当たNHK
りの損害額は,下記の計算式のとおり,当該期間の損害額を7(原
告は2波として計算)で割った金額になり,少なくとも15NHK
4万2857円を下らない。
①売上額:{円+(万円×か月(平成年月か3000105002195
ら同年月末日まで))}×人=万円65001200
90%②利益率:
③利益:①×②=万円1080
④1放送波当たりの損害額:③÷=万円71542857
⒞以上を計算すると,原告の損害は4133万5714円,NHK
原告日本テレビ,原告,原告フジテレビ,原告テレビ朝日及TBS
び原告テレビ東京の損害は,各154万2857円,原告静岡第一
テレビ,原告,原告テレビ静岡,原告あさひテレビの損害は,SBS
各1912万5000円となる。
(イ)予備的主張
原告らは,予備的に,著作権法114条3項に基づく損害賠償額の算
定を主張する。
a著作隣接権者としての原告らの受けるべき金銭の額
⒜被告が静岡県内に機器を設置していたと称する間の原告らの受け
るべき金銭の額(原告及び静岡局各社の受けるべき金銭のNHK
額)
1時間番組を1つ視聴させた場合,少なくとも利用者から100
円の視聴料が徴収でき,これをコンテンツ配信事業者とコンテンツ
ホルダーとが折半し,コンテンツホルダーとして,著作権者と著作
隣接権者とは,これを更に折半して配分することが相当である。
著作隣接権者としての原告らの受けるべき金銭の額の総額
円時間×××時間×日×人=100/1/21/271204500
円105,350,000
1放送波当たりの受けるべき額
円÷=円105,350,000617,558,333
①1時間番組1番組当たり,利用者から徴収する料金は100
円を下らない。
②現在に至るまでの利用者数は,平均して500人を下らない。
③1利用者当たりの1日の平均視聴時間は,世帯当たりのテレ
ビ視聴時間の調査結果からすれば,7時間を下らない。
④視聴日数1204日は,平成16年1月1日から平成19年
4月18日で計算した。
⒝被告が機器を東京に移転・設置したと主張する日以降の原告ら
の受けるべき金銭の額(原告及び東京局各社の受けるべき金NHK
銭の額)
著作隣接権者としての原告らの受けるべき金銭の額の総額
100/1/21/2734850030,450,000円時間×××時間×日×人=

1放送波当たりの受けるべき額
円÷=円30,450,00074,350,000
視聴日数348日は,平成19年4月19日から平成20年3
月31日で計算した。
b著作権者としての原告らの受けるべき金銭の額
別紙損害額計算書に記載のとおり,原告らの本件放送の放送回数に
応じ,原告及び東京局各社の受けるべき金銭の額は,それぞれ,NHK
以下のとおりである。
原告236万6146円NHK
原告日本テレビ52万1354円
原告59万4271円TBS
原告フジテレビ60万5208円
原告テレビ朝日53万2292円
原告テレビ東京50万6771円
c原告らの損害
以上を合計すると,原告らのそれぞれの損害額は,以下のとおりと
なる(ただし,原告については,1放送波として計算していNHK
る。)。
原告2427万4479円NHK
原告日本テレビ487万1354円
原告494万4271円TBS
原告フジテレビ495万5208円
原告テレビ朝日488万2292円
原告テレビ東京485万6771円
原告静岡第一テレビ1755万8333円
原告1755万8333円SBS
原告テレビ静岡1755万8333円
原告あさひテレビ1755万8333円
(ウ)著作権法114条の5
仮に,原告らによる損害額の立証が困難であるとされた場合であって
も,本件訴訟の口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果を総合し,著作権
法114条の5の規定に基づき,原告らに生じた相当な損害額が認定さ
れるべきである。
イ弁護士費用
被告の著作権及び著作隣接権侵害行為により,原告らが負担させられ
た弁護士費用は,本件訴訟の提起に至るまでの通告,仮処分命令申立等
の経緯を考慮に入れれば,各原告について,金125万5500円を下
回るものではない。
ウまとめ
(ア)著作権法114条2項を適用して逸失利益を計算した場合
被告の著作隣接権侵害行為により原告らが被った損害は,著作権法1
14条2項を適用して逸失利益を計算した場合に,以下のとおりとなる。
原告4259万1214円NHK
原告日本テレビ279万8357円
原告279万8357円TBS
原告フジテレビ279万8357円
原告テレビ朝日279万8357円
原告テレビ東京279万8357円
原告静岡第一テレビ2038万0500円
原告2038万0500円SBS
原告テレビ静岡2038万0500円
原告あさひテレビ2038万0500円
(イ)著作権法114条3項を適用して逸失利益を計算した場合
以上のとおり,被告の著作権及び著作隣接権侵害行為により原告らが
被った損害は,以下のとおりとなる。
原告2552万9979円NHK
原告日本テレビ612万6854円
原告619万9771円TBS
原告フジテレビ621万0708円
原告テレビ朝日613万7792円
原告テレビ東京611万2271円
原告静岡第一テレビ1881万3833円
原告1881万3833円SBS
原告テレビ静岡1881万3833円
原告あさひテレビ1881万3833円
(被告の反論)
ア著作権法114条2項の適用に関する原告らの主張について
(ア)著作権法114条2項の趣旨
著作権法114条2項は,損害の発生自体を推定するものではないか
ら,侵害行為との因果関係において権利者に何らかの損害が現実に発生
したこと又は現実に発生するおそれがあることは,権利の主張者である
原告らにおいて主張・立証責任を負う。
また,114条2項は,当該著作物等を利用して侵害者が現実に利益
を得ている以上,著作権者が同種の方法で著作物等を利用する限り同様
の利益を得られる蓋然性があることに基づく規定であるから,著作権者
等が自ら侵害者と同様の方法で著作物等を利用する行為を行っていない
場合には,同項の適用がないと解されており,裁判例も同様の見解を示
している。このような解釈は,特許法102条2項や,商標法38条2
項でも同様である。
(イ)著作隣接権に関し,原告らが本件サービスと同様の方法で著作物等
を利用しているといえるか
a著作権法114条2項の適用の前提となる被告の本件サービスと同
様の方法による事業とは,ロクラクⅡと同様の機器の頒布,レンタル
等に関する事業に限定されるべきであるが,原告らは,このような事
業を現実に営んでいないから,同項の適用に関する原告らの主張は失
当である。
b仮に,上記のような限定がされないとしても,著作権法114条2
項を適用するためには,原告らは,以下の範囲の事業を実施している
必要があるというべきである。
まず,原告らの事業は,本件サービスと同様の目的・態様のもので
あることが必要であり,したがって,海外に居住する利用者を対象に,
日本のテレビ番組をその複製物によって視聴させることのみを目的と
したサービスでなければならない。
また,著作隣接権としての複製権侵害に基づく主張の前提となる原
告らの事業は,自らの放送波で放送した内容をいったん受信して,そ
の放送に係る音又は影像を複製し,当該複製の成果を放送以外の媒体
・経路でも流通させる事業に限定されなければならない。原告らが主
張する,「放送される番組を放送以外の媒体・経路でも流通させる事
業」のうちの複製に関連する部分は,いずれも,送信,受信の過程を
経由しないものであることは明らかである。
c原告らは,放番協が行う事業が本件サービスと同様の方法による事
業である旨主張するが,同事業は,テレビ番組の複製物(有体物)を
レンタルするもので,有体物を伴うことのない本件サービスとは態様
をまったく異にする上,そもそも,同事業は原告らの事業ではなく,
原告らはライセンサーにすぎない。
d原告らは,インターネット配信についても,本件サービスと同様の
方法による事業である旨主張するが,そもそも,インターネット配信
番組に関する国内外市場は未形成であって,原告らがこれによって利
益を得ているとはいえない状況であり,また,原告らが主張する配信
は,送信,受信を経由しないものである。原告らがそれぞれのウェブ
サイトで行っている動画の配信は,無料の,短時間の断片的なものに
限定されているから事業とはいえないし,会員制の動画配信やブロー
ドバンド配信事業者やポータルサイト運営業者への配信許諾は,基本
的には日本国内の居住者向けであり,海外に居住する利用者向けのサ
ービスではない。加えて,上記配信許諾は,自ら行う配信事業ではな
く,原告らはライセンサーにすぎない。
(ウ)本件サービスにより原告らに損害が生じ得ないこと
また,そもそも,原告らには損害が生じない。
一般に,テレビ視聴者が放送を視聴する行為は,書籍を購入した消費
者がそれを読む行為と同様に,放送に係る音・影像を享受する行為であ
り,放送事業者は,視聴者の視聴行為について,著作隣接権に基づく権
利行使を一切行うことはできない。テレビ番組が著作物性を有する場合
には,著作権者についても同様である。
テレビ視聴者の大半は,日常的にテレビ番組をいったん録画し,視聴
可能な時間帯に再生して視聴している。この,いわゆるタイムシフトの
ための録画・視聴行為は,実質的にみれば,放送を放送時間どおりに視
聴する行為と同質の,放送に係る音・影像を享受する行為にほかならず,
かつ,放送事業者及び番組著作権者に何ら財産的損害を発生させるもの
ではない。視聴者の数や視聴の回数の多寡は,放送事業者及び番組著作
権者の経済的利益に何ら影響を及ぼすものではない。原告らが主張する
ところの本件サービスは,主に海外居住者に国内の放送を視聴する機会
を確保するものにすぎないところ,放送を視聴する機会が確保されるこ
とによって,放送事業者及び番組著作権者に財産的損害が発生し得ない
という点は,国内においてタイムシフトによる視聴をする場合と全く同
一である。
イ著作権法114条3項の適用に関する原告らの主張について
(ア)著作隣接権者としての原告らの受けるべき金銭の額
原告らは,1時間番組を1つ視聴させた場合,少なくとも利用者から
100円の視聴料が徴収できる旨主張するが,原告らがインターネット
配信をしているとして掲げるものは,大半が無料である。
また,原告らは,上記の架空の視聴料をコンテンツ配信業者とコンテ
ンツホルダーとが折半し,コンテンツホルダーとして,著作権者と著作
隣接権者とが折半して配分する旨主張するが,そこで指摘されているも
のは,送信,受信を経由しないコンテンツの複製に関する事業であり,
著作隣接権者としての原告らは上記配分を受け得る立場にない。
さらに,原告らは,親機ロクラクが東京に設置されていた場合には,
本件サービスの利用者500名の全員が,本件サービスを通じて1日7
時間分の録画指示を必ず行う,その録画指示には原告及び東京局NHK
各社の7放送波中の1波が必ず含まれる,その録画指示は,348日間
休むことなく継続する,という非現実的な状況を前提とした損害の算定
を行うが,上記前提事実を示す根拠はなく,非論理的,非現実的である。
(イ)著作権者としての原告らの受けるべき金銭の額
まず,原告及び東京局各社が本件番組の各著作権者であることNHK
の証拠は極めて不十分である上,被告又は本件サービスの各利用者が本
件サービスにおいて本件番組を複製したことを認める証拠は全くない。
また,番組当たりの料金,顧客数,視聴回数などの主張が,何らの実
体も伴わず,証拠にも基づかないことは(ア)と同様である。
(ウ)小括
以上から,著作権法114条3項の適用に関する原告らの主張は失当
である。
ウ著作権法114条の5に関する原告らの主張について
著作権法114条の5は,損害が生じたことが認められる場合における
損害額の認定に関する規定であり,本件において,原告らに損害が生じた
ことを認める余地がないことは,上記ア(ウ)のとおりである。
⑶争点3(原告らの請求は権利の濫用といえるか)について
(被告の主張)
本件サービスの各利用者の行為は,著作権法30条1項,102条1項に
より適法であり,このため,原告らは,利用者の行為の適法性という本件の
基本的争点を迂回する目的で,カラオケ法理により,被告を複製行為の主体
であると擬制して,各利用者ではなく被告に対する本件訴訟を提起したもの
である。
しかしながら,原告らの主張は,立法によらず権利範囲を拡張するに等し
く,それは,著作権法が21条以下において支分権を,113条において侵
害とみなす行為を,それぞれ明確に規定して法的安定性を図るとともに,3
0条以下において権利の制限規定を設けて過剰な権利とならないような配慮
をした趣旨を没却するものである。
また,本件サービスにおける複製は,有体物としての複製物の製作を伴う
ことのない,極めて,内部的,一時的,個別的なものである。
さらに,原告らは,競合する事業を自ら行っていないため,本件サービス
によって原告らに損害が発生する余地は全くない。
これらの事情を総合すれば,原告らの本訴提起は,原告らの著作権及び著
作隣接権を濫用するものとして許されない。
(原告らの反論)
被告の主張は争う。
第3争点に対する当裁判所の判断
1争点1(本件サービスにおいて,被告は,本件番組及び本件放送に係る音又
は影像の複製行為を行っているか)について
⑴事実認定
上記前提となる事実等,証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認
められる。
アロクラクⅡの仕様・機能(甲2の1∼2の3,2の18∼2の24,2
の30,21,24の1,24の19,24の24,31,乙1,34)
(ア)仕様
ロクラクⅡには,地上波アナログ放送を受信することができるテレビ
チューナーが搭載されている。
(イ)基本機能
ロクラクⅡは,主な基本機能として,デジタル録画機能,インターネ
ット機能(その一部としてメール機能)を有している。
デジタル録画機能は,アナログのテレビ番組等をデジタルデータとし
て圧縮録画し,それを再生するハードディスクレコード機能である。
インターネット機能は,インターネットに接続し,インターネットを
利用できる機能である。
メール機能は,インターネット機能の一部で,メールアドレスを有し
て,電子メールを利用することができる機能である。メール機能の利用
により,ハードディスクレコーダーに保存されたデータを,他の機器に
転送することができるほか,メールによる録画予約をすることなどがで
きる。
ロクラクⅡには,設定された録画時間枠において継続的に上書き録画
(被告の開設するウェブサイト(以下「被告サイト」という。)の説明
では「リング録画」と呼ばれている。)を行う,リングバッファ録画機
能を備えることも可能である。
(ウ)親子機能
aロクラクⅡには,親子機能を利用することができる機種(後記のと
おり,親機能を持たせるためのファームウェア又は子機能を持たせる
ためのファームウェアが組み込まれているもの。)があり,その親子
機能を利用することで,以下の手順により,別の場所のテレビ番組を
受信録画し,その番組データを手元に移動して,再生することが可能
となる。
なお,親機ロクラクと子機ロクラクとの間のデータの送受信等につ
いてはメールが用いられ,その際,プロトコルによる場合(このhttp
場合に経由するメールサーバは,被告の管理するサーバである場合が
含まれる。)と,プロトコルによる場合とが併用できるようにPOP
設定されている。
⒜親機ロクラクと,当該親機ロクラクと対応関係にある,子機ロク
ラクを準備する。
⒝子機ロクラクを手元に設置し,親機ロクラクを,視聴したいテレ
ビ番組を受信できる別の場所に設置する。
⒞子機ロクラクを操作し,親機ロクラクが受信する放送における,
視聴したいテレビ番組の録画予約のメールを,親機ロクラクに送信
する。
⒟親機ロクラクは,子機ロクラクの操作により送信された録画予約
指示に基づき,番組を録画し,同番組データをハードディスク内に
記録した上,子機ロクラクに当該番組データをメールにより移動す
る(移動後,親機ロクラクには番組データが保存されないように設
定されている。また,録画された番組データには,他の機器で更に
複製することができないように,コピー防止機能が付されてい
る。)。
⒠子機ロクラクを操作し,親機ロクラクから移動して子機ロクラク
に蓄積された番組データを,子機ロクラクにおいて再生して視聴す
る。
bロクラクⅡは,親機能を持たせるためのファームウェア,子機能を
持たせるためのファームウェアが組み込まれることによって,上記
()の機能のほかに,上記aの親子機能を有するようになる。なお,イ
機器の製造出荷工程のファームウェアを組み込む段階で,異なる種類
のファームウェアを上書きすることはできない処理が行われるため,
通常の操作によって,親機能を持たせるためのファームウェアと,子
機能を持たせるためのファームウェアとを入れ替えることはできない。
イ親機ロクラク及び子機ロクラクにより親子機能を利用するために必要な
準備等
(ア)必要な環境
a親機ロクラクについて(甲21)
テレビアンテナ(地上波アナログ放送受信)の接続環境,電源供給
環境,高速インターネットの接続環境である。
b子機ロクラクについて(甲22)
電源供給環境,高速インターネットの接続環境である。
(イ)設置作業
a親機ロクラクについて(甲21)
付属する電源ケーブルで,電源コンセントと親機ロクラク背面の電
源入力端子を接続する。
付属するアンテナ接続ケーブルで,地上波アナログ放送のテレビア
ンテナ端子と親機ロクラクの背面のアンテナ入力端子を接続する。
イーサネットケーブルで,インターネット回線につながるルーター
などのイーサネット端子と親機ロクラク背面のイーサネット端子を接
続し,電源を入れる。
b子機ロクラクについて(甲22)
付属する電源ケーブルで,電源コンセントと子機ロクラク背面の電
源入力端子を接続する。
イーサネットケーブルで,インターネット回線につながるルーター
などのイーサネット端子と子機ロクラク背面のイーサネット端子を接
続し,電源を入れる。
付属するビデオケーブルで,テレビモニタの映像・音声入力端子と
子機ロクラク背面の映像・音声出力端子を接続し,電源を入れる。
(ウ)接続作業
a親機ロクラクについて(甲21,39,乙29)
親機ロクラクを接続して録画等を実行するためには,電源コンセン
ト接続用の電源ケーブル,地上波アナログ放送へのアンテナケーブル,
テレビ受像機への出力用ビデオケーブル及びインターネット接続用イ
ーサネットケーブルを用いて,親機ロクラクと,それぞれ対応する接
続先とを接続し,その上で,①親機ロクラクのアドレスの設定,IP
②子機ロクラクの登録(その際,いったん親機ロクラクの接続をID
はずし,子機ロクラクを同様に接続し,子機ロクラクのを取得すID
る必要がある。),③自動時刻合わせ,④サーバーモードへの切換え
を行う必要がある。
ただし,通常,出荷時に,①について,により自動的に取得DHCP
するよう設定し,②について,対応する子機ロクラクのを登録し,ID
③について,による自動時刻合わせを設定していることからNTP
(甲39),このような場合には,それぞれの作業が不要となり,サ
ーバーモードへの切換えのみを行うこととなる。
b子機ロクラクについて(甲21,22,乙29)
子機ロクラクを接続して録画予約等を実行するためには,電源コン
セント接続用電源ケーブル,テレビ受像機への出力用ビデオケーブル
及びインターネット接続用イーサネットケーブルを用いて,子機ロク
ラクと,それぞれ対応する接続先とを接続し,その上で,①番組表の
取得,②録画予約を行う必要がある。番組表の取得については,親機
ロクラク設置場所の地域(被告作成のマニュアルによれば,東京都,
静岡県,大阪府,愛知県から選択する旨が説明されている(甲21,
「子ロクラクの設定⑤番組表の取得」の頁の左下部)。)を選択する
必要があり,録画予約を初めて番組表から行う場合には,まず,親機
ロクラク設置場所における受信チャンネル番号を各放送局ごとに入力
する必要があるが,これらの作業は,出荷時に設定済みの場合には不
要とされている。
ウ本件モニタ事業
(ア)本件モニタ事業
被告は,平成16年初めころ,無料のモニタを募集し,これらのモニ
タを対象として,親子機能を有するロクラクⅡビデオデッキのセットを
レンタルする本件モニタ事業を開始した(甲31)。
本件モニタ事業は,被告が設定した要領(甲30「ロクラクⅡビデオ
デッキ・レンタル無料モニタ申込書」別紙の「ロクラクⅡビデオデッキ
レンタル無料モニタ要領」,以下「本件モニタ要領」という。)を承諾
して申込みをした利用者について,実施された。その内容は,以下のと
おりである。
①本件モニタ事業の目的は,被告が,当時,将来的な実施を予定し
ていた「ロクラクⅡビデオデッキレンタル」という名称の賃貸事業
の試行であり,ロクラクⅡ2台を無料で貸し出すことを内容とする
ものであった(本件モニタ要領1項)。
②利用者は,1台のモニタ機器(子機ロクラク)を日本国外の手元
に設置し,もう1台のモニタ機器(親機ロクラク)を日本国内に設
置することが求められることになり,手元のモニタ機器から日本国
内のモニタ機器にメールを送信して,日本国内のモニタ機器を直接
操作することができ,私的使用目的の範囲内で,日本国内のテレビ
番組を録画予約し,録画した番組を手元のモニタ機器に送信して,
手元のモニタ機器で再生することができる(本件モニタ要領3項)。
③日本国内に設置するモニタ機器については,利用者から特に不要
である旨の申出がない限り,被告において設置場所を提供すること
となり,その場合,静岡県浜松市において通常受信できる放送のみ
を受信できる。この設置場所の提供には,番組受信ないしインター
ネット接続のための設備の提供も含まれるが,被告は,インターネ
ット通信回線及びテレビ放送受信アンテナなどの提供される設備に
関して,その品質や性能を保証しない(本件モニタ要領8項)。
また,本件モニタ事業の申込者は,住所を記載するとともに(住所記
載欄には,「」,「」,「」等の表示がされており,StreetCityZipCode
外国の住所を記載することが想定されている。),日本国外のモニタ機
器設置場所が上記住所と異なる場合や,日本国内に設置するモニタ機器
の被告による設置場所の提供を不要とする場合には,モニタ機器の設置
場所を記入することが求められ,申込書には,モニタ期間中の機器の移
動は認められない旨注意書きされていた(甲30)。
なお,被告サイトの,本件モニタ事業実施期間中に作成された,ロク
ラクⅡのレンタル事業のビジネスコンセプトについての説明部分には,
「海外駐在の日本人のみなさん。また海外在住の日本人のみなさん。皆
様が自分自身で『日本のテレビ番組を早く楽しみたい』というご要望を
実現する新たな事業が『ロクラクⅡビデオデッキレンタル』です。」と
の表示がある(甲3の20)。
(イ)親機ロクラクの設置場所及びその状況
本件モニタ事業実施時は,上記(ア)③のとおり,利用者からの特段の
申出がない限り,日本国内に設置するモニタ機器(親機ロクラク)は,
被告の提供する場所に設置されることとされていた。そして,実際には,
被告事業所内に設置され,保管されていた。その際の設置状況は,別紙
「親機ロクラクが被告事業所内にも設置されていた当時の設置状況」の
とおり,被告事業所のテレビアンテナ端子に分配機が接続され,分配機
の各出力端子と各親機ロクラクのアンテナ入力端子が,アンテナ接続ケ
ーブルで接続され,電源は,電源コンセントから供給され,各親機ロク
ラクと高速インターネット回線とは,ハブ及びルーターを介して接続さ
れていた(甲23,弁論の全趣旨)。
なお,被告は,本件モニタ事業から,本件サービスに移行する間の一
時期において,ハウジングセンターという名称で,被告事業所内の一部
分を親機ロクラクの設置場所として提供するオプショナル契約の導入を
検討したことがあり,一時期,被告サイトには,上記オプショナル契約
を含むレンタル規約の抜粋が掲載され,日本の自宅に置く場合と比較し
て,ハウジングセンターに設置する方が,ロクラクⅡの親子機能の利用
が簡便である旨を示す説明が掲載されていた(甲4の3,4の14)。
エ本件サービスについて
(ア)本件サービスの開始
被告は,平成17年2月ころ,同月末に本件モニタ事業を終了し,同
年3月ころから,同事業に代わり,有料で,親機ロクラク及び子機ロク
ラクのレンタルを行うサービス(以下,このサービスのみを意味する場
合には「本件サービス」という。)並びに子機ロクラクは販売し,A
親機ロクラクのみレンタルを行うサービス(以下,このサービスのみを
意味する場合には「本件サービス」という。)を開始することを決B
定し,それぞれの規約(甲2の12,2の14)を定めた上で,本件レ
ンタル規約に同意した利用者に対し,本件サービスを提供している(甲
9,31)。
(イ)本件サービスに関する被告サイト上の表示
被告サイトには,「ロクラクⅡビデオデッキレンタル」に関するペー
ジがあり,そこには,「海外出張でも日本のテレビ番組が毎日楽しめま
す。」,「ロクラクの親子ビデオ機能を使って日本のテレビ番組が楽し
めます。」との表示があり,その下に,「日本のロクラク親機」及び
「海外のロクラク子機」という表示とともに,テレビ番組が親機ロクラ
クによって録画されて子機ロクラクに送られる様子が図示されている
(甲24の1)。
また,本件サービス開始当初の被告サイトには,「代理店募集中た
だいま海外で『レンタルロクラク』の代理店を募集」との見出しの下に,
「世界中どんな場所でも,ブロードバンド環境されあれば(・ADSL
以上),レンタルロクラクビジネスが可能です。ご興味のある512Kbps
方はぜひお問い合わせください。」と記載され,代理店募集地域として,
「日本(成田国際空港周辺,中部国際空港周辺,関西国際空港周辺),
ヨーロッパ(ロンドン,パリ,その他),アジア(中国,日本,シンガ
ポール,バンコク,その他),オセアニア(ニュージーランド,シドニ
ー,その他),北米(アメリカ,カナダ,その他),南米(ブラジル,
ペルー,その他)」と記載されていた(甲2の17)。
なお,現在の被告サイト上,放送の受信・録画には,利用者がNHK
受信契約をすることが必要である旨,また,現在のファームウェアでは,
親機の設置場所として,東京周辺地区,名古屋周辺地区,静岡西部地区
の設定が可能である旨の説明がされている(甲24の2)。
さらに,取扱業者の広告においては,親機ロクラク設置場所の賃貸物
件の斡旋が行われている(甲1)が,同広告は,本件サービス開始後,
少なくとも平成18年4月ころまで,被告サイト内に構成され,被告の
サイト上(甲2の1)や子機ロクラクに表示される画面上に被告を示す
表示として用いられていた「」という標章(甲10)を用いていNYX
たりするなどしている(甲1)。
(ウ)本件レンタル規約の内容
本件レンタル規約には,以下のとおり規定されている。
a本件サービス(甲2の12,24の9)A
第5条(物件の買取予約,物件の交換)
⑵弊社は必要に応じて物件の交換を定期的に行えるものとします。
その場合の運送費用は弊社が負担致します。ただし,お客様が
予め買取予約をされている場合は,物件の交換を行うかどうか
をお客様が決められるものとします。買取予約をされているお
客様が物件の交換を承諾された場合には,交換後の物件が,買
取予約の対象となります。
第7条(物件のお引渡し)
⑶お客様は,本レンタル契約申込みの際に,物件の設置場所につ
き「物件設置場所1(親ロクラク設置場所)」「物件設置場所
2(子ロクラク設置場所)」として登録していただきます。な
お,物件設置場所の確保は,お客様の責任において行うものと
し,弊社は一切関与いたしません。また,お客様が登録しよう
とする設置場所につき,弊社が不相当と判断した場合には,お
客様は,弊社が相当と判断する,別の設置場所を登録しなけれ
ばなりません。
第10条(保証金)
⑴お客様は,初回費用とともに,レンタル契約成立時点のレンタ
ル料金表に基づく金額の保証金を,弊社に支払わなければなり
ません。
第19条(レンタル物件の返還)
⑴お客様は,本レンタル契約が終了する場合には,弊社と事前に
打ち合わせた上で,弊社に対し,レンタル期間終了日までに,
契約当初の受領時と同じ状態で,レンタル物件を返還するもの
とします。ただし,買取予約をされたお客様の物件は,レンタ
ルの終了と同時にお客様の所有となりますので,返還の必要は
ありません。
第23条(物件のメインテナンス)
⑴弊社は,物件につき,その性能や機能の維持向上を目的として,
弊社の定める方法及び内容によって,定期的に,1ヶ月にあた
り5日間程度の日数につき,メインテナンスを実施いたします。
親子ビデオ・ロクラクⅡレンタル(標準モデル)レンタル料金表
<初回費用>
保証金(預かり金):
50,000円(海外のご自宅の子ロクラク1台につき)
100,000円(日本側のご自宅の親ロクラク1台につき)
※親ロクラク保証金は,設置場所の安全度が弊社基準に適合
すれば不要です。詳しくはお問い合わせください。
初期登録料:3,000円(税込み:3,150円)
初回1か月分レンタル料金:8,500円(税込み:8,925
円)
<月額費用(翌月より)>
月レンタル料金:8,500円/月(税込み:8,925円)
お支払い:クレジットカード払い
b本件サービス(甲2の14)B
第6条(物件のお引渡し)
⑶お客様は,本レンタル契約申込みの際に,物件の設置場所につ
き登録していただきます。なお,物件設置場所の確保は,お客
様の責任において行うものとし,弊社は一切関与いたしません。
また,お客様が登録しようとする設置場所につき,弊社が不相
当と判断した場合には,お客様は,弊社が相当と判断する,別
の設置場所を登録しなければなりません。
第9条(保証金)
⑴お客様は,初回費用とともに,レンタル契約成立時点のレンタ
ル料金表に基づく金額の保証金を,弊社に支払わなければなり
ません。
第18条(レンタル物件の返還)
⑴お客様は,本レンタル契約が終了する場合には,弊社と事前に
打ち合わせた上で,弊社に対し,レンタル期間終了日までに,
契約当初の受領時と同じ状態で,レンタル物件を返還するもの
とします。
第22条(物件のメインテナンス)
⑴弊社は,物件につき,その性能や機能の維持向上を目的として,
弊社の定める方法及び内容によって,定期的に,1ヶ月にあた
り5日間程度の日数につき,メインテナンスを実施いたします。
親機・ロクラクⅡレンタル(標準モデル)レンタル料金表
<初回費用>
保証金(預かり金):
100,000円(ロクラク1台につき)
※レンタル物件の保証金は,設置場所の安全度が弊社基準に適
合すれば不要です。詳しくはお問い合わせください。
初期登録料:3,000円(税込み:3,150円)
初回1か月分レンタル料金:6,500円(税込み:6,825
円)
<月額費用(翌月より)>
月レンタル料金:6,500円/月(税込み:6,825円)
お支払い:クレジットカード払い
(エ)本件サービスの申込み
本件サービスの利用申込みは,通常,被告サイトから行われるが(甲
24の1,24の8),その際に利用申込者が被告に送信する情報の入
力画面は,以下のとおりである(甲24の9)。
「現在のご住所(子機設置場所)」として,国名,郵便番号,住所,
電話番号等の入力箇所が設けられ,また,「日本側親機設置場所」とし
て,「下記住所」や後日指定する旨を入力する箇所があり,「下記住
所」を選択した場合には,住所を入力する箇所が設けられている。
(オ)番組表を利用した録画予約
本件サービスにおいて,子機ロクラクを操作して親機ロクラクにより
番組録画の予約をする場合,番組表を取得して,それに基づいて操作を
行うが,その場合,「」と呼ばれるソニーが開発したインターネiEPG
ットでのテレビ番組予約方式を利用することとなる。対応の番組iEPG
表は,一般のウェブサイトにおいて取得することができ,親機ロクラク
は,このようなサイトにアクセスして,提供される番組表を取得する
(乙34)。
具体的な録画予約の手順としては,まず,子機ロクラクを操作して,
親機ロクラクにおいて番組表を取得するように指示を出すと,それに
従って親機ロクラクがウェブサイトにアクセスして番組表を取得する。
そして,子機ロクラクを操作して,親機ロクラクあてに番組表情報閲覧
請求のメールを送ると,親機ロクラクは,同請求に従い,閲覧を求めら
れている番組表を子機ロクラクに送り,同表を子機ロクラクにおいて閲
覧して,録画予約の操作を行う(乙34)。
(カ)親機・子機間の録画予約や番組データの送受信
親機ロクラクと子機ロクラク間の録画予約や番組データの送受信は,
プロトコルにより,被告の管理するサーバを経由して,1対1の個http
別対応関係をもって通信が行われている(甲18,乙34)。
(キ)親機ロクラク設置場所の賃料
平成17年夏ころ,本件サービスの申込みをしたある者は,当初,代
理店から,親機ロクラクを静岡県内において預かる場合には保証金が不
要である旨説明を受け,この取扱いに同意し,静岡県内で放送されるロ
ーカル番組を含むテレビ番組を視聴していたが,その後,子機ロクラク
の操作画面上にある「からのお知らせ」に,「不動NYXNustarSupply
産よりお知らせ」として,親機ロクラクの設置場所用のアパート賃貸情
報が送信された。当該利用者が,設置場所の賃借の申込みを同子機ロク
ラクの操作により行うと,それ以降,レンタル料とは別に,賃料分が,
既に被告に提供していたクレジットカード情報に係るクレジットカード
により決済され,「レントダイ」の名称の者に対して支NustarSupply
払われるようになった(甲10,13の2)。
このクレジットカード決済に用いられている名称(屋号名)は,一貫
して「レントダイ」であるところ,同名称でクレジットNustarSupply
カード決済を行っている事業者は,当初,被告であったが,平成18年
7月10日,日本コンピュータ社に変更された(甲13の1,13の
2)。その後,平成19年3月31日付けで,上記決済のための,ベリ
トランス社との収納代行サービス契約は解約された(乙16)。
なお,日本コンピュータ社は,本社事業所が静岡県浜松市<以下略>
に存在し,被告の事業所と同一建物内の同一階に所在しており,被告と
代表取締役を共通にし,他の2名の取締役も被告の役員が務めるほか,
被告にロクラクⅡの供給を行い,「録楽」,「ロクラク」,「ろOEM
くらく」及び「」の横書きの4つの単語を上から4段に重ROKURAKU
ねた商標の商標権者である(甲14∼17)。
(ク)被告事業所内に親機ロクラクがないこと
現在,本件サービスに利用されている親機ロクラクは,静岡県浜松市
の被告肩書住所に所在する被告事業所内又は同事業所と同一階に所在す
る日本コンピュータ社の事業所内には存在しない(乙9)。
オ先行仮処分決定後の状況について
(ア)静岡県内の親機ロクラクに関するやりとり
被告は,平成19年4月6日付けで,本件サービス取扱業者あてに,
「静岡県内の親機ロクラクの移動について」と題する書面を作成し,同
書面には,「仮処分決定履行のため4月末までに,以下の徹底をお願い
します。(再連絡)」,「依頼内容:静岡県内からの親機ロクラクの移
動(すでに依頼済み内容です)裁判所の差止め命令により,静岡県内
の地上波アナログ放送を親機ロクラクで録画することが禁止されました。
速やかに,静岡県内にあるすべてのお客様の親機ロクラクを静岡県外に
移動させて下さい。」との記載がある(乙10)。
また,社は,同月13日付けで,被告あてに,「親機ロクラクのDD
東京移動日程とお願い」と題する書面を作成し,同書面には,「弊社に
て,静岡県内に設置されていると判明した,全ての親機ロクラクは,4
月19日(木曜日)に,前回と同じ業者を使って東京都内に移動する予
定です。今回は,業者に移動実施過程詳細な書面報告を委託しましたの
で,移動後8日以内に,移動実施の過程を書面にてご報告致します。従
いまして報告期限の4月27日(金曜日)までは,一方的なレンタル契
約の解約をされないことを強く要望致します。」との記載がある(乙1
1)。
そして,同様に,社は,同月24日付けで,被告あてに,「親機DD
ロクラク東京移動のご報告」と題する書面を作成し,同書面には,東京
都豊島区<以下略>及び東京都渋谷区<以下略>に親機ロクラクを移動
した旨が記載されており(乙12),同月20日付けの,スカッシュ社
から社あての「デジタル家電機器・取外し・移動・設置・報告書」DD
と題する書面(以下「本件移動報告書」という。)には,写真とともに,
同月19日に,浜松においてレンタカーを手配し,浜松市内の2か所で
ロクラクⅡの取外し作業を行い,東京都内に移動して,東京都内の上記
2か所に設置した旨の説明が記載されている(乙13)。なお,本件移
動報告書は,スカッシュ社名義で作成されているが,実際にレンタカー
を手配して同レンタカーを運転したのは,日本コンピュータ社の従業員
であった(甲34の1,34の2,35)。
さらに,社を含む,本件サービス取扱業者5者は,同月23日付DD
けの,被告から取扱業者あての「親機ロクラクの静岡県内設置の有無に
ついてのご照会」と題する書面に書き込む形で,同日又は同月24日付
けで,被告あてに,同時点で,静岡県内に親機ロクラクを設置している
利用者がいない旨を回答する書面を作成した(乙15)。
(イ)静岡県内の設置場所について
原告の従業員は,平成19年6月14日付けで,「『ロクラTBS
ク』浜松現地調査報告書」と題する書面を作成し,同書面には,本件移
動報告書において静岡県内で親機ロクラクを取り外した場所として記載
された2か所を訪問し,そのうちの1つであるスター電子工業では,ロ
クラクⅡを預かったことはない旨の回答を事務員から得たこと,代表者
からは書面で質問されれば回答する旨伝えられたこと,他の場所である
スカッシュ社では,代表者から,ロクラクⅡを預かったことはなく,
社も知らない旨の回答を得たことが記載されている(甲32)。DD
スター電子工業は,被告代理人からの弁護士法23条の2第1項に基
づく照会に対し,平成20年3月に,平成18年1月から平成19年4
月までの間,ニュースターサプライという会社に事業所の一部を賃貸し,
そこにロクラクⅡが置かれていたこと,原告従業員が来訪した際TBS
は,会社の情報を軽々しく伝えることは避けたいと考えたがしつこく尋
ねられたので,書面で質問してほしい旨答えたことを回答した(乙33
の1∼33の3)。
また,スカッシュ社も,上記同様の照会に対し,平成20年3月に,
社からの要請でマレーシアの会社に自宅の一部を貸す仲介をし,平DD
成18年1月から平成19年4月までの間,自宅にロクラクⅡが置かれ
ていたこと,原告の従業員来訪の際は,会社の事情等から,ほとTBS
んどの質問について,知らない旨答えたことを回答した(乙32の1∼
32の3)。
(ウ)東京都内の設置場所について
原告テレビ朝日の従業員は,平成19年12月22日付けで,「『ロ
クラク』豊島区<以下略>現地調査報告書」と題する書面を作成し,同
書面には,本件移動報告書において東京都内の設置場所として記載され
た2か所のうちの1つである豊島区<以下略>所在のクロスワン社の代
表者から,同年6月ころに約1か月間,ロクラクⅡと思われる機器を5
0台ほど預かったが,箱から出して棚に並べていただけで,上記機器が
電源やテレビアンテナに接続されることはなかった旨の回答を得たこと
が記載されている(甲38)。
本件移動報告書において,東京都内の設置場所の2か所のうち,渋谷
区<以下略>の場所は,ホライズン社の所在地である旨記載されている
ところ,同社は,被告代理人からの弁護士法23条の2第1項に基づく
照会に対し,平成19年11月19日,同年10月1日から,ロクラク
Ⅱのハウジング業務を行っていること,同時点で700台程度のロクラ
クⅡが設置されていること等を回答した(乙26の1∼26の3)。
(エ)番組表の改変
被告は,先行仮処分決定後,暫定的な措置として,本件サービスの利
用者が取得できる番組表を改変して,先行仮処分決定において対象と
なった番組を複製することができない手段を講じた(甲24の1,弁論
の全趣旨)。
⑵検討
以上の事実に基づいて,被告が,本件番組及び本件放送に係る音又は影像
の複製行為を行っているといえるか否かについて検討する。
ア複製主体についての考え方
著作権法上の侵害行為者を決するについては,当該行為を物理的,外形
的な観点のみから見るべきではなく,これらの観点を踏まえた上で,法律
的な観点から,著作権を侵害する者として責任を負うべき主体と評価でき
るか否かを検討すべきであるから,事案に応じて,カラオケ装置を設置し
たスナック等の経営者について,客の歌唱についての管理及びそれによる
営業上の利益という観点から,演奏の主体として,演奏権侵害の不法行為
責任があると認めたクラブキャッツアイ事件最高裁判決等を踏まえ,問題
とされる行為(提供されるサービス)の性質に基づき,支配管理性,利益
の帰属等の諸点を総合考慮して判断すべきである。
被告は,上記最高裁判決は,直接的な利用行為を行っていない者を行為
主体とみなす判断をするに当たって十分な正当化根拠を示しておらず,そ
こで示されたカラオケ法理を一般化された法理として本件に援用すること
は許されるべきではない旨主張するが,行為の管理支配性や利益の帰属と
いう上記最高裁判決において示された要素を充足する者について,行為の
主体として評価し得る場合が存するのであるから,同判決等を踏まえつつ
行為の性質等の事情を総合的に考慮することは,規範的に行為の主体性を
検討する上で,有用かつ必要であると解され,被告の上記主張は採用でき
ない。
イ検討
(ア)本件サービスの目的
本件サービスの利用者は,上記第2,1⑷のとおり,手元に設置した
子機ロクラクを操作して,離れた場所に設置した親機ロクラクにおいて
地上波アナログ放送を受信し,これを録画することによりテレビ番組を
複製し,複製した番組データを子機ロクラクに送信させ,子機ロクラク
に接続したテレビ等のモニタに,当該番組データを再生して,複製した
テレビ番組を視聴することができることになる。用いられる親機ロクラ
クにおいて受信できるのが日本国内の地上波アナログ放送であることか
ら,親機ロクラクは,日本国内に設置されることが必要であるが,子機
ロクラクの設置場所については,ブロードバンドのインターネット環境
等が必要となるほかは,機器の機能及び設定環境による制約はなく,日
本国内外の設置が可能である。
しかしながら,上記⑴ウ(ア)のとおり,本件サービスの正式開始前の
本件モニタ事業において,本件モニタ要領上(同3項)も,利用者は,
1台のモニタ機器(子機ロクラク)を日本国外の手元に設置し,もう1
台のモニタ機器(親機ロクラク)を日本国内に設置することが求められ
るとされ,申込欄の住所記載欄の表示(甲30)も,子機ロクラクは日
本国外に設置することが当然の前提とされていたと解される。また,本
件サービスについては,上記⑴エのとおり,日本国外で日本のテレビ番
組を視聴することができる点を強調して広告が行われ,サービス内容の
説明においても,利用者が日本国外で利用する場合を想定した説明のみ
が行われ,利用申込欄の住所記載欄の表示も,国名の入力が求められて
いる。さらに,本件サービスに係る代理店の募集についても,見出しに
海外での代理店を募集する旨が明記され,募集地域も,日本国内の国際
空港周辺か世界各地域が列挙されており,アジア地域の一部として「日
本」が,場所も限定せずに記載されているのみである。
これらのことからすれば,本件サービスは,利用者において例外的に
異なる利用形態をとる場合があるとしても,日本国外にいる利用者が,
日本のテレビ番組を視聴することができるように,当該利用者に,日本
のテレビ番組の複製物を取得させることを目的として構築されたもので
あると解するのが相当であり,一連の操作において,日本のテレビ番組
を複製し,複製した番組データを日本国外に送信することが,重要な意
味を有するものということができる。
被告は,本件サービスの目的について,デジタル家電機器であるロク
ラクⅡを広く普及させ,利用を促進すること等であり,利用者に対し,
子機ロクラクのみにより録画,再生する方法,インターネットビデオを
ダウンロードして視聴する方法なども紹介している旨主張するが,被告
の指摘する事情によっても,上記の各事情からすれば,本件サービスの
主たる目的は上記のとおりであるというべきである。
(イ)親機ロクラクの設置場所及びその状況
a本件モニタ事業実施時の親機ロクラクの設置場所等について
本件モニタ事業実施時,被告が利用者に対しレンタルしていた親機
ロクラクは,上記⑴ウ(イ)のとおり,被告事業所内に設置されていた
が,そこでは,被告において,被告事業所のテレビアンテナ端子に分
配機が接続され,分配機の各出力端子と各親機ロクラクのアンテナ入
力端子が,アンテナ接続ケーブルで接続され,電源は,電源コンセン
トから供給され,各親機ロクラクと高速インターネット回線とは,ハ
ブ及びルーターを介して接続されていたのであって,本件サービスと
同様,本件モニタ事業において重要な意味を有する,親機ロクラクの
録画(複製)機能を発揮し得るように,被告によって管理されていた
ということができる。
b本件モニタ事業終了後の親機ロクラクの設置場所等について
()本件モニタ事業終了後,本件サービスが開始されたが,利用申a
込書において,上記⑴エ(ウ)のとおり,親機ロクラクの設置場所の
確保について被告が一切関与しない旨が示され,上記⑴エ(ク)のと
おり,現在,被告事業所内に,本件サービスに利用されている親機
ロクラクは存在しない。
()しかしながら,以下のような諸事情からすれば,被告は,親機b
ロクラク設置場所に一定の関与をしているものと認められる。
①まず,上記⑴エ(ア)のとおり,本件モニタ事業終了の決定から,
同事業を終了し本件サービスを開始するまでが,1か月に満たな
い短い期間であり,本件サービスの提供者である被告自身に,親
機ロクラクの設置場所の確保が強く求められていたものと推測さ
れる。すなわち,従前の本件モニタ事業の利用者の中には,同事
業終了後も親機ロクラクの移動先を指定せず,被告事業所内に親
機ロクラクを設置したままにしている利用者がいたことがうかが
えるが(甲9),大多数の利用者は,親機ロクラク設置場所確保
を検討し,被告自身や取扱業者や代理店に対して,その問合せや
確認をしていたことが推認される。また,取扱業者や代理店も,
自己の契約上の立場を維持するために,本件モニタ事業の利用者
であった者が本件サービスの申込みをして利用関係が継続される
ように努めていたと考えられる(被告も取扱業者等はこのような
立場にあることを認めている。甲39)ところ,海外の取扱業者
が,日本国内で直ちに適切な親機ロクラク設置場所を一定数確保
するのは困難であると解されるから,本件サービスの提供者であ
り親機ロクラクの所有者である被告自身に,親機ロクラクの設置
場所の確保が強く求められていたものと推測される。しかも,被
告によれば,取扱業者の規模や活動方法,活動状況などは様々な
のであり(甲31),小規模の事業者であるような場合には,一
層,被告に対する要請が強いものと解される。
②また,取扱業者の広告においては,親機ロクラク設置場所の賃
貸物件の斡旋が行われているが,同広告は,被告サイト内に構成
されているものであったり(甲1),被告サイト上(甲2の1
等)や子機ロクラクに表示される画面上に被告を示す表示として
用いられていた「」という標章(甲10)を,取扱業者をNYX
NYXINTERNATIONALPTE表示するものとして用いていたり(
による広告,甲1),被告サイトに用いられている説明図LTD.
面をそのまま利用したり(甲5の1∼3,5の6∼7)するなど,
親機ロクラクの設置場所の斡旋において,取扱業者と被告の関連
性が深いことをうかがわせる。
③さらに,社による親機ロクラク設置場所の賃貸に関する広NS
Nustar告が,本件サービス利用者の子機ロクラクに提供され,「
レントダイ」なる名称の者に対して,親機ロクラク設置Supply
場所の賃料が支払われ,その際,被告以外には伝えていないクレ
ジットカード情報に係るクレジットカードでの決済がされている
NustarSupply(甲10)などの事情も認められる。しかも,「
レントダイ」名義でクレジットカード決済を行っている事業者
は,当初,被告自身であり,その後,日本コンピュータ社に変更
された(なお,同決済に係るベリトランス社との収納代行サービ
ス契約は,平成19年3月31日に解約された。乙16)ところ,
日本コンピュータ社は,上記⑴エ(キ)のとおり,被告と人的結び
付き及び経済取引面において密接な関連を持つ会社である。
この点につき,被告は,上記クレジットカード決済は,社DD
からの依頼で「レントダイ」として決済の代行をNustarSupply
した旨主張するが,そうであれば,取扱業者である同社とのより
一層密接な関連がうかがえるところである。
④そして,親機ロクラクは,本件サービスにおける利用者の用に
供されているものの,その所有権は被告にあり,上記⑴エ(ウ)の
とおり,本件サービス開始に当たっては,設置場所の安全度が被
告の基準に適合しない限り,利用者に保証金の支払が求められ,
本件サービスでは,被告の都合による機器の交換も可能であA
り,定期的にメンテナンスが実施される上,本件サービス終了時
には返還が求められているものであるし,被告が,親機ロクラク
の設置場所を不相当と判断した場合には,別の設置場所を登録し
なければならないとされる。したがって,親機ロクラクがどのよ
うな場所に設置され,どのような環境に置かれているかは,被告
にとっての重大な関心事項であるとともに本件サービスの運営上
重要な情報であると解される。
被告は,親機ロクラク設置場所について,取扱業者扱いとする
旨の処理が選択される場合には,取扱業者において破損,盗難等
により生じた損失に責任を持ち,終了時にも返還の保証がされる
から,それ以上に設置場所を明らかにさせず,保証金の支払も求
めない運用をしている旨述べる。
しかしながら,取扱業者が親機ロクラクの損失に責任を持ち返
還を保証するとしても,被告が利用者に対して本件サービスを提
供する責任を負い,機器に対するメンテナンスも実施することと
されている以上,親機ロクラクの設置場所及び環境等は,当然,
被告にとって重大な関心事項であるとともに本件サービスを運用
する上で重要な情報であるというべきであり,例えば,親機ロク
ラクによる録画機能や送受信機能等に不具合が生じた場合には,
その不具合の原因が,被告の所有する親機ロクラクの機器自体に
あるのか,その設置場所や環境等にあるのかを判断して対処しな
ければならないのであるから,親機ロクラクに関する設置場所や
環境等を被告において把握できない事態は,明らかに不自然であ
るといわなければならない。
そうすると,被告は,取扱業者を介する申込みにおいても,親
機ロクラクの設置場所の選定,維持,環境整備等に関与している
ものと考えざるを得ないところである。
()これらのことからすれば,親機ロクラク設置場所の紹介等は取c
扱業者が行っているもので,被告は一切関与せず,設置場所も知ら
ないという被告の主張は,到底,採用し難いものといわなければな
らない。
c先行仮処分決定後の親機ロクラクの設置場所について
被告は,先行仮処分決定後,静岡県内に設置されている親機ロクラ
クの移動を取扱業者に要請し,それを受けて,社において,平成DD
19年4月19日に,静岡県内の2か所に設置していた親機ロクラク
を東京都内の2か所に移動した旨主張し,社が作業を委託したスDD
カッシュ社作成名義の本件移動報告書(乙13)を提出する。
しかしながら,静岡県内の設置場所として示されたスター電子工業
及びスカッシュ社については,被告代理人からの照会に対し,平成1
8年1月から平成19年3月までの間,ロクラクⅡが置かれていた旨
回答するが,原告の従業員に対する回答では,その点が明確にTBS
されなかったこと,回答内容が異なったことについて合理的な説明が
されているとは言い難いこと,電子機器の設置管理やハウジング業務
とは関係がないと思われるそれらの場所において,親機ロクラクの設
置が可能な環境が整備されていたか否か疑問がないではないことから,
実際に親機ロクラクが設置されていたのか否かは明らかではない。
また,スカッシュ社が東京都内への移動を行ったとしながら,実際
のレンタカー手配及び運転が日本コンピュータ社の従業員により行わ
れたという事実が認められ,原告らからこの矛盾点を指摘されている
にもかかわらず,被告から何らの説明もされていない。
そして,東京都内の設置場所として報告されている場所の1つであ
るクロスワン社は,平成19年6月ころに1か月程度預かったことが
あるが,電源やテレビアンテナに接続することはしていないと回答し
ている(甲38)ところ,この点の合理的な説明はされていない。親
機ロクラクが機能する環境を整えない以上,親機ロクラクにおいてテ
レビ番組を録画することはできず,当該親機ロクラクに対応する子機
ロクラクの利用者は,本件サービスの主たる目的としている内容を享
受することができないのであって,そのような事態を長期にわたって
生じさせることは,およそ考え難いものである。
さらに,東京都内のもう1つの設置場所として挙げられているホラ
イズン社は,実際に家電製品のハウジング業務を行っていることが認
められる(乙28の1∼28の9)ものの,ロクラクⅡを含めたハウ
ジング業務は平成19年10月1日から開始したものであり(乙26
の1∼26の3,乙28の6),同年4月19日に静岡県内から移動
されて,親機ロクラクとして機能していたか否かは,必ずしも明確で
はない(社の取締役の地位にある者において,社がホライズDDNS
ン社から場所を借り,その後,同年10月1日に同社に業務を引き継
いだ旨述べる(乙25)が,クロスワン社への移動に関する上記状況
や,静岡県内からの移動日とされる同年4月19日から同社が預かっ
たとされる6月までの間における保管状況及びそれ以降の移動,保管
等の状況が不明であることなども併せ考えると,設置状況が明確に示
されているとは言い難い。)。
そもそも,静岡県内から東京都内に親機を移動する場合,受信する
放送波が異なり,本件サービスの利用に当たっては,当該地域に対応
する番組表を取得して番組の録画予約をすることになり,上記⑴イ
(ウ)bのとおり,子機ロクラクにおいて,受信チャンネル番号を各放
送局ごとに入力する必要があると解されるが,そういった作業を利用
者に要請して,上記のような短期間のうちに移動することが可能であ
るのかについては,疑問が残るところであり,また,実際にそのよう
な要請がされたという事実を認めるに足りる証拠もない。
なお,被告は,取扱業者5者から被告あてに,平成19年4月23
日又は同月24日の時点で,親機ロクラクが静岡県内に存在しないこ
とを回答した書面(乙15)を提出するが,これらは,内容が抽象的
で,さほど高い信用性が認められない上,作成者が取扱業者のすべて
であるのかも明らかではなく,これらの書面のみから,上記時点で静
岡県内に親機ロクラクが存在しないと認めることはできない。
このようなことからすると,仮に,現在,ホライズン社において,
700台程度のロクラクⅡのハウジング業務を行っているとしても,
それは,静岡県内から移動されたものであるか否かは明らかでないと
いわざるを得ず,静岡県内からの移動についての被告主張は,採用し
難いものであるというべきである(ただし,ホライズン社が700台
程度のロクラクⅡのハウジング業務を行っているとした場合,それら
について,被告が支配し,管理していることを認めるに足りる証拠は
ない。)。
d先行仮処分手続以降の被告の対応
被告は,先行仮処分手続時点から,親機ロクラクの設置や設置場所
について一切関与していない旨主張し,本件モニタ事業実施時の状況
を踏まえ,裁判所又は原告らから,取扱業者が設置場所確保に関与し
た場合とそれ以外の場合との割合等も含めた親機ロクラクの設置状況
や,被告事業所内からの移動に関する事実関係を明確にすることを求
められても,上記のとおり回答するほか,被告代表者や取扱業者の作
成に係る,「取扱業者が依頼した人物が引取りに来たので渡した」旨
の,具体的な送り先,台数,業者名等を明らかにしない抽象的な内容
を述べる陳述書(甲39)や,その後の静岡県内からの移動に関する
上記⑴オに示した書面を提出するのみで,被告において実行が可能で
あると考えられる客観的な資料の提出を行わない(弁論の全趣旨)。
そして,被告は,被告が上記事実関係を明らかにすることによって,
原告らから,設置場所に関連する者に対し,無用な攻撃,妨害行為,
嫌がらせ等が想定されるから,これを回避すべく,親機ロクラクの設
置場所に一切関知しないという対応を徹底するために,事実関係を明
らかにしない旨を述べる(乙34)。
しかしながら,親機ロクラクが複製(録画)をすることは,上記
(ア)のとおり,本件サービスにおいて重要な意義を有するものであり,
録画の指示が利用者の手元にある子機ロクラクの操作によってされる
としても,それを受信し,実際に複製の機能を果たし得るようにする
という観点で,親機ロクラクの設置管理は,本件サービスの複製の主
体が誰であるかを法的に検討する上で極めて有力な要素であり,その
ことは,先行仮処分決定において示され,当裁判所によっても指摘さ
れているところである。しかも,本件サービスに先立つ本件モニタ事
業の実施時には,被告事業所内に親機ロクラクが設置されて被告が管
理していたという事実が認められる以上,被告において,親機ロクラ
クの移動及びその後の設置場所について,一定の客観的な資料をもっ
て明らかにすべき状況にあることは当然といえる。そして,上記bの
とおり,親機ロクラクの設置場所や状況は,被告にとって重大な関心
事項であって,本件サービスにおいても,重要な情報であると位置付
けられているのであるから,被告は,自ら,本件サービス契約時に利
用者から親機ロクラク設置場所の登録を受け,また,取扱業者から事
情を聴取するなどして,それらの事実関係を容易に把握することがで
き,また,実際に把握している可能性が高いというべきである。この
ような状況にあるにもかかわらず,上記の客観的事実関係を明らかに
しようとしない被告の対応は,本件訴訟の当事者として,極めて不相
当なものといわざるを得ない。
e小括
以上の,被告が主張する事実関係の不自然さや本件訴訟における対
応からすれば,利用者が被告とかかわりなく親機ロクラクを設置して
いるような例外的な場合を除いて,被告は,本件サービスにおいて,
親機ロクラクの設置場所の提供に関与し,親機ロクラクの保守,環境
整備等に関して,被告事業所内に親機ロクラクを設置していた場合と
同様に,その管理を継続しているものと考えざるを得ない。そして,
その場所については,上記⑴エ(イ)のとおり,被告が,親機の設置場
所として,東京周辺地区,名古屋周辺地区,静岡西部地区の設定が可
能である旨を説明していることからも,静岡県内及び東京都内のいず
れにも存在するというべきである。
そうすると,本件サービスに供されている被告所有の親機ロクラク
は,原則として,被告の実質的な支配下にあり,被告は,これらの親
機ロクラクを,本件サービスを利用するための環境の提供を含め,実
質的に管理しているものと解すべきこととなる。
(ウ)本件サービスにおける親機ロクラクの設置管理方法に関する選択の
仕組み
本件サービスにおいて,利用者による申込みがあり,被告において親
機ロクラクを取扱業者を通じて提供する場所に設置する場合には,10
万円の親機ロクラク保証金が不要となる(弁論の全趣旨)とともに,親
機ロクラクは,利用者の手を介さずに,当該場所に直接送付されること
となり,これらの点で,利用者が自ら機器を持ち込む場合と比較して,
本件サービスをより利用しやすいものということができる。特に,利用
者が日本国外において利用の申込みをする場合には,取扱業者を通じて
上記のような手配を行うのであって,その容易さは,購入機器を用いて
同様の機能を利用しようとする場合とは,大きく異なるものである(な
お,被告自身も,前記1⑴エ(イ)のとおり,本件サービス開始後少なく
とも平成18年4月ころまでの間,親機ロクラク設置場所の賃貸物件の
斡旋を行う取扱業者の広告を,被告サイト内においていたのであり,親
機ロクラクの設置場所を日本国内の自宅とするより管理者のいるアパー
ト(設置場所)とすることを推奨していたものといえる。)。
したがって,本件サービスは,日本国外の利用者にとって,自らが親
機ロクラクを設置するよりも,取扱業者を通じて被告の提供する場所に
親機ロクラクを設置させ,被告にそれを管理させるという方法を選択す
る方が,有利な点が多くなるような仕組みを採用しているものというべ
きである。
(エ)利用者の録画可能なテレビ番組
上記⑴エ(イ)のとおり,現在の本件サービスにおいて,親機の設置場
所は,東京周辺地区,名古屋周辺地区,静岡西部地区に限定されている
が,これは,利用者が親機ロクラクを地域による周波数の相違に対応さ
せる作業を行わなくとも,設置場所の地上波アナログ放送を受信できる
ように,被告によってあらかじめ親機ロクラクが調整されており,その
場所が上記3地区に限定されているからであると推認される。
(オ)本件サービスを利用する際の送受信の枠組み
本件サービスを利用する場合には,上記⑴イ(ウ)のとおり,被告にお
いて,ロクラクⅡに親子機能を持たせて利用する場合に,アドレスIP
をによって自動的に取得できる設定とし,また,親機ロクラクDHCP
に子機ロクラクのを登録して出荷していることから,利用者は,自ID
らアドレスの取得手続を経る必要がない。そして,録画予約,データ送
信等に用いられるメール通信のサーバは,被告の管理するメールサーバ
であり,本件サービスの利用者が,この利用についての手続を別途とる
ことも不要である。なお,メールサーバについては,被告の管理するメ
ールサーバのほかに,通信費用などの状況を踏まえて,随時他のメール
サーバが利用される場合もあるが,その場合も,利用者が,別途,メー
ル機能を利用するための手続をとることは不要である。
(カ)本件サービスによる利益の帰属
被告は,本件サービスによって,上記⑴エ(ウ)のとおり,「初期登録
料」及び「レンタル料」を取得している。
(キ)まとめ
以上の事情を総合考慮すれば,親機ロクラクは,本件サービスを成り
立たせる重要な意味を有する複製を行う機能を有する機器であるところ,
被告は,日本国外の利用者に日本のテレビ番組の複製物を取得させると
いう本件サービスの目的に基づき,当初,親機ロクラクの設置場所を提
供して管理支配することで,日本国外の利用者が格段に利用しやすい仕
組みを構築し,いまだ,大多数の利用者の利用に係る親機ロクラクを,
東京都内や静岡県内において管理支配しているものということができる。
この場合,上記の,本件サービスにおいて親機ロクラクの果たす役割か
らすれば,被告は,別紙サービス目録記載の内容のサービス,すなわち,
本件対象サービスを提供しているものということができ,本件番組及び
本件放送に係る音又は影像の複製行為を管理支配していると認めること
ができるとともに,それによる利益を得ているものと認められる(なお,
被告は,登録料やレンタル料は,親機ロクラクの管理に係る利益とはい
えない旨主張し,親機ロクラクの管理に係る賃料等を取得していない旨
の報告書(乙4)などを提出するところ,上記登録料等は,名目のいか
んにかかわらず,被告が本件対象サービスを提供することによって得る
経済的対価であるから,被告は,利益を得ているというべきであり,被
告の主張は採用できない。)。
ウ結論
以上から,被告は,本件対象サービスを提供し,本件番組及び本件放送
NHKに係る音又は影像の複製行為を行っているというべきであり,原告
及び東京局各社の本件番組についての複製権(著作権法21条)及び原告
らの本件放送に係る音又は影像についての著作隣接権としての複製権(著
作権法98条)を侵害するものといえる。
被告は,本件サービスが,あくまでも利用者個人がその私的使用目的で
賃借したロクラクⅡを利用する行為であって,その利用に関与するもので
はなく,利用者が賃貸機器を利用してテレビ番組を複製する行為の主体は,
利用者本人であり,被告ではあり得ない旨主張する。
しかしながら,被告は,上記判示のとおり,本件対象サービスにおいて,
自らが本件番組及び本件放送に係る音又は影像の複製行為を行っているの
であり,このことと,本件サービスの利用者によるテレビ番組の録画が,
私的使用目的で行われるか否か,あるいは,利用者の指示に基づいて複製
されるテレビ番組が選択されるか否かとは,直接関連するものではないか
ら,被告の上記主張は,失当といわなければならない。
2争点2(原告らの損害の有無及びその金額)について
⑴被告の責任
被告は,上記1⑵ウのとおり,本件対象サービスを提供して,本件番組及
び本件放送に係る音又は影像の複製行為を行っていると評価されるものであ
り,原告及び東京局各社の複製権(著作権法21条)及び原告らの著NHK
作隣接権としての複製権(著作権法98条)を侵害するものである。そして,
この侵害については,被告に,少なくとも過失があると認められる。
したがって,被告は,これによって原告らに生じた損害を賠償すべき義務
がある。
⑵逸失利益について
ア著作権法114条2項の適用について(主位的な主張)
原告らは,複製権(著作権法21条)又は著作隣接権としての複製権
(著作権法98条)の侵害による損害について,主位的に,著作権法11
4条2項が適用されるべきであるとして,被告が,平成17年3月10日
から平成19年4月18日まで(著作隣接権としての複製権の侵害につい
て)又は平成19年5月及び同年6月の2か月間(著作隣接権としての複
製権の侵害について),利用者500人から,初期登録料3000円のほ
かに,1か月当たり1万0500円の支払を受け,これに対する利益率9
0パーセントの割合による利益を受けていることを前提として,それを基
に計算した被告の利益の額が原告らの損害の額となる旨主張する。
しかしながら,本件対象サービスの利用者が何人存在するのか,その中
に,子機ロクラクを購入し,親機ロクラクのみをレンタルする本件サB
ービスの利用者がどの程度含まれるのか(本件サービスを利用する場B
合,1か月当たりの支払は6500円となる。),親機ロクラクの管理に
ついての対価はいくらか,本件対象サービスにおける被告の利益率がどの
程度かの諸点については,原告の上記主張を裏付ける証拠はなく(上記1
⑵イ(イ)cのとおり,ホライズン社が700台程度のロクラクⅡのハウジ
ング業務を行っているとした場合,それらについて,被告が支配し,管理
していることを認めるに足りる証拠はなく,同台数に対応する利用者が本
件対象サービスの利用者であると認めることはできない。),被告が本件
サービスによって受けている利益の金額を算定することができない。
そうすると,他の点について検討するまでもなく,著作権法114条2
項を適用して損害を算定することはできないことになる。
イ著作権法114条3項の適用について(予備的な主張)
そこで,著作権法114条3項により,原告らの損害額を計算すること
ができるかが問題となるが,本件対象サービスの利用者数,本件番組又は
本件番組の放送に係る音又は影像の複製回数等の事実関係については,上
記ア同様,何ら立証されておらず,原告らが受けるべき利益の額を算定す
ることはできないから,同項により損害の額を算定することもできないと
いわざるを得ない。
ウ著作権法114条の5による損害の算定
被告による本件番組及び本件放送に係る音又は影像の複製行為により,
原告らに損害が生じていることは認められるところ,上記ア及びイのとお
り,本件対象サービスの利用者数,複製回数等の事実関係が立証されてお
らず,損害額を立証するために必要な事実を立証することが当該事実の性
質上極めて困難であると認められるから,著作権法114条の5により,
口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて,損害額を認定すること
が相当である。
(ア)複製権(著作権法21条)の侵害について
a本件番組の複製権(著作権法21条)の侵害に係る損害を検討する
上で考慮され得る事情として,以下のような事実が認められる。
⒜本件番組の,平成16年1月1日から平成19年4月18日まで
(本件番組3については平成20年3月31日まで)の平均視聴率
は,本件番組1が10.0パーセント,本件番組2が0.7パーセ
ント,本件番組3が15.9パーセント,本件番組4が16.0パ
ーセント,本件番組5が7.4パーセント,本件番組6が13.2
パーセント,本件番組7が8.6パーセントである(甲41∼4
6)。
⒝東京局各社は,番組をインターネットを通じて配信しているが,
視聴が有償である場合があり,その際の料金として,1話につき1
05円ないし1050円のものがある(甲48の2∼48の4,5
0の2∼50の4,52の2,52の3,54,56の2,56の
3,なお,これらの配信を受ける場合,各番組ごとに,視聴可能時
間が設定されており,その時間内で何回でも視聴できる仕組となっ
ている。)。
⒞本件番組の,平成16年1月1日から平成19年4月18日まで
(本件番組3については平成20年3月31日まで)の放送回数は,
本件番組1が161回,本件番組2が488回,本件番組3が14
3回,本件番組4が163回,本件番組5が166回,本件番組6
が146回,本件番組7が139回である(甲41∼46)。
⒟上記1⑴オ(ウ)のとおり,ホライズン社は,ロクラクⅡ700台
程度についてハウジング業務を行っている旨回答している。
b以上の事情を踏まえ,本件の一切の事情も総合考慮し,本件対象サ
ービス開始後の平成17年4月から平成19年4月18日まで(本件
番組3については平成20年3月31日まで)の損害として,以下の
金額を認めるのが相当である。
本件番組15万円
本件番組21万円
本件番組38万円
本件番組48万円
本件番組54万円
本件番組66万円
本件番組74万円
(イ)著作隣接権としての複製権(著作権法98条)の侵害について
a本件放送に係る音又は影像についての複製権(著作権法98条)の
侵害に係る損害を検討する上で考慮され得る事情として,上記(ア)a
に掲げたもののほか,テレビの視聴時間に関して,株式会社ビデオリ
サーチ作成による「テレビ視聴率・広告の動向テレビ調査白書20
06」(甲40)では,1日1世帯当たり視聴時間として,2006
年度の平日平均が7時間41分,土曜日が8時間05分,日曜日が8
時間43分,週平均が7時間54分と報告されていること,他方,
レコーダー保有者を対象とした調査において,1週間にテレビHDD
をリアルタイムで見る時間が平均18.0時間,録画番組を見る時間
は7.5時間であったとの報告もある(乙31)ことがあげられる。
b以上の事情も踏まえ,本件の一切の事情を総合考慮し,著作隣接権
としての複製権(著作権法98条)の損害として,以下の金額を認め
るのが相当である。
原告200万円NHK
東京局各社各20万円
静岡局各社各80万円
エ小括
したがって,原告らの逸失利益の額は,以下のとおりであり,被告は,
以下の金額について,それぞれ,賠償する義務を負う。
原告206万円(万円+万円+万円)NHK51200
原告日本テレビ28万円(万円+万円)820
原告28万円(万円+万円)TBS820
原告フジテレビ24万円(万円+万円)420
原告テレビ朝日26万円(万円+万円)620
原告テレビ東京24万円(万円+万円)420
原告静岡第一テレビ80万円
原告80万円SBS
原告テレビ静岡80万円
原告あさひテレビ80万円
⑶弁護士費用
原告らが,本件訴訟の提起及び追行を,原告らの代理人に委任したことは
当裁判所に顕著であり,本件での逸失利益額,事案の難易度,審理の内容等
本件の一切の事情を考慮し,被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費
用としては,原告について20万円(複製権(著作権法21条)の侵NHK
害について1万円,著作隣接権としての複製権(著作権法98条)の侵害に
ついて19万円),東京局各社について各5万円(複製権(著作権法21
条)の侵害について1万円,著作隣接権としての複製権(著作権法98条)
の侵害について4万円),静岡局各社について各8万円と認めるのが相当で
ある。
⑷まとめ
以上から,被告は,以下の金額について,それぞれ賠償する義務を負う。
原告226万円(万円+万円)NHK20620
原告日本テレビ33万円(万円+万円)285
原告33万円(万円+万円)TBS285
原告フジテレビ29万円(万円+万円)245
原告テレビ朝日31万円(万円+万円)265
原告テレビ東京29万円(万円+万円)245
原告静岡第一テレビ88万円(万円+万円)808
原告88万円(万円+万円)SBS808
原告テレビ静岡88万円(万円+万円)808
原告あさひテレビ88万円(万円+万円)808
3争点3(原告らの請求は権利の濫用といえるか)について
被告は,原告らの本件請求は権利の濫用に当たる旨主張するが,上記1及び
2において認定したところによれば,本件請求が権利を濫用するものであると
いうことはできないし,他に,これを認めるに足りる証拠はない。
したがって,上記被告の主張は認められない。
第4結論
以上の次第で,①原告及び東京局各社の,本件番組を複製の対象とすNHK
ることの差止めの請求(なお,本件番組3を除く本件番組については,現在,
複製することができない措置がとられているが,同措置は暫定的なものである
から,侵害のおそれがあると認められる。),②原告らの,本件放送に係る音
又は影像を録音又は録画の対象とすることの差止め及び本件対象サービスに供
されているロクラクⅡの親機の廃棄の請求,③原告らの,複製権の侵害による
損害(弁護士費用を含む。)の賠償及び本訴状送達の日の翌日である平成19
年8月4日から,各支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損
害金の支払の請求のうち,主文記載の限度において(原告日本テレビの複製権
(著作権法21条)の侵害による損害並びに原告及び東京局各社の著作NHK
隣接権としての複製権(著作権法98条)の侵害による損害(弁護士費用を含
む。)については,損害の算定期間経過後である平成20年4月1日が遅延損
害金の起算点となる。),それぞれ理由があるからこれらを認容することとし,
その余は理由がないから,いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官清水節
裁判官國分隆文
裁判官山田真紀は,転補のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官清水節
(別紙)
当事者目録
東京都渋谷区<以下略>
原告日本放送協会
(以下「原告」という。)NHK
同訴訟代理人弁護士梅田康宏
同津浦正樹
同高木志伸
東京都港区<以下略>
原告日本テレビ放送網株式会社
(以下「原告日本テレビ」という。)
静岡市<以下略>
原告株式会社静岡第一テレビ
(以下「原告静岡第一テレビ」という。)
原告日本テレビ及び原告静岡第一テレビ訴訟代理人弁護士
松田政行
同齋藤浩貴
同山元裕子
同吉羽真一郎
同上村哲史
東京都港区<以下略>
原告株式会社東京放送
(以下「原告」という。)TBS
静岡市<以下略>
原告静岡放送株式会社
(以下「原告」という。)SBS
原告及び原告訴訟代理人弁護士TBSSBS
岡崎洋
同大橋正春
同前田俊房
同渡邊賢作
同新間祐一郎
東京都港区<以下略>
原告株式会社フジテレビジョン
(以下「原告フジテレビ」という。)
静岡市<以下略>
原告株式会社テレビ静岡
(以下「原告テレビ静岡」という。)
原告フジテレビ及び原告テレビ静岡訴訟代理人弁護士
前田哲男
同中川達也
東京都港区<以下略>
原告株式会社テレビ朝日
(以下「原告テレビ朝日」という。)
静岡市<以下略>
原告株式会社静岡朝日テレビ
(以下「原告あさひテレビ」という。)
原告テレビ朝日及び原告あさひテレビ訴訟代理人弁護士
伊藤真
同太田純
同清水琢麿
東京都港区<以下略>
原告株式会社テレビ東京
(以下「原告テレビ東京」という。)
同訴訟代理人弁護士尾崎行正
同飯塚孝徳
同上杉雅央
同岩知道真吾
同佐藤淳子
浜松市<以下略>
被告株式会社日本デジタル家電
同訴訟代理人弁護士岩崎政孝
同六波羅久代
同岡邦俊
同小林克典
同瀧谷耕二
(別紙)
サービス目録
被告の製造に係るハードディスクレコーダー「ロクラクⅡ」の親機を日本国
内の保管場所に設置し,同所で受信するテレビ放送の放送波を同親機に入力す
るとともに,同親機に対応する子機を利用者に貸与又は譲渡することにより,
当該利用者をして,日本国内で放送される放送番組の複製及び視聴を可能なら
しめるサービス
(別紙)
著作物目録
1番組名「バラエティー生活笑百科」
2番組名「福祉ネットワーク」
3番組名「踊る!さんま御殿!!」
4番組名「関口宏の東京フレンドパークⅡ」
5番組名「MUSICFAIR21」
6番組名「いきなり!黄金伝説。」
7番組名「ペット大集合!ポチたま」
(別紙)
放送目録
1原告が,日本国内において,放送事業者として,「総合テレビジョン」の名称NHKNHK
で行うすべての地上波テレビ放送(ただし,次に掲げる放送波を送信して行う地上波テレビ
放送を含み,かつ,これに限られない。)
(関東)
チャンネル地域(送信所名)周波数帯域()映像()音声()MHzMHzMHz
1909691.2595.75東京(芝公園)∼
(静岡)
チャンネル地域(送信所名)周波数帯域()映像()音声()MHzMHzMHz
1909691.2595.75芝川,清沢,本川根,南春野∼
29610297.25101.75春野∼
3102108103.25107.75東佐久間∼
4170176171.25175.75井川,玉川,清水小島,浜松∼
9198204199.25203.75静岡∼
10204210205.25209.75川根∼
26548554549.25553.75袋井三川∼
29566572567.25571.75下田稲梓∼
32584590585.25589.75天城湯ケ島∼
34596602597.25601.75函南畑毛,清水徳倉,伊東新井∼
35602608603.25607.75熱海錦ケ浦,伊東小室山∼
36608614609.25613.75南伊東,河津,湯ケ島松ケ瀬∼
37614620615.25619.75静岡瀬名,三ケ日,浜岡∼
38620626621.25625.75中川根,南伊豆湊∼
39626632627.25631.75磐田見付,伊東八幡野,小土肥∼
40632638633.25637.75静岡賤機,菊川,沼津静浦∼
41638644639.25643.75函南,掛川日坂,天竜熊,細江中川,沼津柳沢∼
42644650645.25649.75藤枝,森,相良∼
43650656651.25655.75朝比奈,島田伊太,焼津∼
44656662657.25661.75水窪,金谷,竜山,引佐奥山,天竜阿多古,天∼
竜二俣,浜松古人見
45662668663.25667.75佐久間浦川,天竜船明,白糸∼
46668674669.25673.75藤枝堀之内,芝川内房,佐久間矢島,水窪西∼
浦,河津見高浜,三島徳倉
47674680675.25679.75熱海,御殿場,静岡籠上,富士岩本,東伊豆白∼

48680686681.25685.75修善寺,清水和田島,静岡羽鳥,戸田,清水興∼
津,沼津内浦,中伊豆地蔵堂
49686692687.25691.75佐久間,中川根徳山,小笠,掛川桜木∼
51698704699.25703.75松崎,下賀茂,北竜山,引佐渋川,掛川原谷,∼
浜松都田
52704710705.25709.75富士宮,天竜横山,三倉,天竜西∼
53710716711.25715.75三島,東伊豆,玉川東,藤枝葉梨,静岡麻機,∼
天城船原,静岡大原,湯ケ島柿木,大田子,土
肥,伊東池,東伊豆大川
54716722717.25721.75妻良,伊東宇佐美,岡部,両河内,静岡丸子,∼
中伊豆冷川,伊東荻
55722728723.25727.75中伊豆∼
56728734729.25733.75島田,富士川∼
57734740735.25739.75天竜阿蔵,中川根上村∼
58740746741.25745.75由比∼
59746752747.25751.75下田,湖西知波田∼
60752758753.25757.75伊豆長岡,小山,掛川内田,小山竹之下,湯ケ∼
島茅野,中伊豆姫之湯
61758764759.25763.75芝川柚野∼
2原告が,日本国内において,放送事業者として,「教育テレビジョン」の名称NHKNHK
で行うすべての地上波テレビ放送(ただし,次に掲げる放送波を送信して行う地上波テレビ
放送を含み,かつ,これに限られない。)
(関東)
チャンネル地域(送信所名)周波数帯域()映像()音声()MHzMHzMHz
3102108103.25107.75東京(芝公園)∼
(静岡)
チャンネル地域(送信所名)周波数帯域()映像()音声()MHzMHzMHz
29610297.25101.75静岡,川根∼
3102108103.25107.75芝川,清沢,本川根,南春野∼
8192198193.25197.75井川,玉川,清水小島,浜松∼
9198204199.25203.75東佐久間,春野∼
18500506501.25505.75佐久間∼
31578584579.25583.75下田稲梓∼
32584590585.25589.75袋井三川,清水徳倉,伊東新井∼
34596602597.25601.75河津,湯ケ島松ケ瀬∼
36608614609.25613.75中川根,函南畑毛∼
37614620615.25619.75磐田見付,熱海錦ケ浦,伊東小室山,小土肥∼
38620626621.25625.75南伊東,静岡賤機,沼津静浦∼
39626632627.25631.75静岡瀬名,函南,三ケ日,浜岡,天城湯ケ島,∼
沼津柳沢
40632638633.25637.75相良,南伊豆湊∼
41638644639.25643.75伊東八幡野∼
42644650645.25649.75菊川∼
43650656651.25655.75掛川日坂,天竜熊,細江中川,掛川桜木∼
44656662657.25661.75藤枝,芝川内房,森∼
45662668663.25667.75朝比奈,島田伊太,焼津∼
46668674669.25673.75水窪,金谷,竜山,引佐奥山,天竜阿多古,天∼
竜二俣,浜松古人見
47674680675.25679.75佐久間浦川,天竜船明,芝川柚野∼
48680686681.25685.75佐久間矢島,水窪西浦,三島徳倉∼
49686692687.25691.75熱海,御殿場,松崎,静岡籠上,下賀茂,北竜∼
山,引佐渋川,掛川原谷,浜松都田,白糸,富
士岩本,東伊豆白田,河津見高浜
50692698693.25697.75修善寺,清水和田島,静岡羽鳥,天竜横山,三∼
倉,天竜西,戸田,清水興津,沼津内浦,中伊
豆地蔵堂
51698704699.25703.75三島,東伊豆,藤枝葉梨,静岡麻機,小笠,天∼
城船原,静岡大原,湯ケ島柿木,大田子,土
肥,伊東池,東伊豆大川
52704710705.25709.75妻良,藤枝堀之内,伊東宇佐美,岡部,両河∼
内,静岡丸子,掛川内田,中伊豆冷川,伊東荻
53710716711.25715.75中伊豆∼
54716722717.25721.75富士宮,島田∼
55722728723.25727.75玉川東,中川根徳山,天竜阿蔵∼
56728734729.25733.75由比∼
57734740735.25739.75下田∼
58740746741.25745.75伊豆長岡,小山,小山竹之下,湯ケ島茅野,中∼
伊豆姫之湯
61758764759.25763.75中川根上村,湖西知波田∼
62764770765.25769.75富士川∼
3原告日本テレビが次の放送波を送信して行う地上波テレビ放送
周波数:映像171.25MHz,音声175.75MHz
4原告が次の放送波を送信して行う地上波テレビ放送TBS
周波数:映像183.25MHz,音声187.75MHz
5原告フジテレビが次の放送波を送信して行う地上波テレビ放送
周波数:映像193.25MHz,音声197.75MHz
6原告テレビ朝日が次の放送波を送信して行う地上波テレビ放送
周波数:映像205.25MHz,音声209.75MHz
7原告テレビ東京が次の放送波を送信して行う地上波テレビ放送
周波数:映像217.25MHz,音声221.75MHz
8原告静岡第一テレビが次の放送波を送信して行う地上波テレビ放送
チャンネル地域(送信所名)周波数帯域()映像()音声()MHzMHzMHz
21518524519.25523.75下田稲梓∼
24536542537.25541.75藤枝,中伊豆,丸子∼
27554560555.25559.75富士宮∼
28556566561.25565.75賎機(旧静岡市)∼
30572578573.25577.75浜松,富士川∼
31578584579.25583.75静岡,南春野∼
33590596591.25595.75東伊豆∼
34596602597.25601.75藤枝堀之内,芝川内房∼
35602608603.25607.75佐久間(新浜松市)∼
36608614609.25613.75天竜二俣(新浜松市),水窪(新浜松市)∼
37614620615.25619.75東佐久間(新浜松市),天竜船明(新浜松∼
市),島田伊太
39626632627.25631.75籠上(旧静岡市),熱海∼
40632638633.25637.75修善寺,興津(新静岡市)∼
41638644639.25643.75御殿場,下田,小土肥,下賀茂∼
42644650645.25649.75竜山(新浜松市)∼
44656662657.25661.75河津∼
46668674669.25673.75中川根,岡部,相良∼
47674680675.25679.75春野,三ヶ日,清沢(旧静岡市)∼
48680686681.25685.75島田,瀬名(旧静岡市),森∼
51698704699.25703.75天竜阿蔵(新浜松市)∼
52704710705.25709.75伊豆長岡,湯ヶ島茅野∼
53710716711.25715.75芝川柚野,中川根徳山∼
57734740735.25739.75秋葉(新浜松市),小笠∼
59746752747.25751.75藤枝葉梨∼
60752758753.25757.75天竜横山(新浜松市)∼
61758764759.25763.75麻機(旧静岡市),三島,井川(旧静岡市),∼
浜岡,磐田見付,大原(旧静岡市),掛川桜木
62764770765.25769.75川根,本川根,玉川(旧静岡市),羽鳥(旧静∼
岡市)
9原告が,次の放送波を送信して行う地上波テレビ放送SBS
チャンネル地域(送信所名)周波数帯域()映像()音声()MHzMHzMHz
5176182177.25181.75本川根,春野∼
6182188183.25187.75浜松(旧浜松市),井川,玉川,清水小島∼
11210216211.25215.75静岡(旧静岡市),東佐久間(新浜松市),南∼
春野(新浜松市),中川根徳川
12216222217.25221.75芝川,川根∼
27554560555.25559.75下田稲梓∼
30572578573.25577.75藤枝堀之内∼
32584590585.25589.75函南畑毛・中伊豆・中川根∼
36608614609.25613.75龍山(新浜松市),天城湯ヶ島∼
38620626621.25625.75河津,菊川,相良∼
40632638633.25637.75天竜二俣(新浜松市),藤枝,森∼
41638644639.25643.75天竜船明(新浜松市),富士宮,焼津,浜岡,∼
島田伊太,三ヶ日,清沢,掛川桜木
42644650645.25649.75浜松古人見(旧浜松市),水窪(新浜松市),∼
水窪西浦(新浜松市)
43650656651.25655.75白糸∼
44656662657.25661.75佐久間矢島(新浜松市)∼
45662668663.25667.75熱海,御殿場,富士岩本,籠上,磐田見付∼
46668674669.25673.75賤機(旧静岡市),興津(新静岡市),修善寺∼
47674680675.25679.75小土肥,小笠,下賀茂∼
49686692687.25691.75藤枝葉梨∼
50692698693.25697.75芝川内房∼
51698704699.25703.75佐久間(新浜松市)∼
54716722717.25721.75天竜横山(新浜松市),瀬名(旧静岡市)∼
55722728723.25727.75麻機(旧静岡市),三島,天城船原,東伊豆,∼
芝川柚野,秋葉,大原
56728734729.25733.75羽鳥(旧静岡市),岡部∼
57734740735.25739.75丸子(旧静岡市)∼
58740746741.25745.75富士川∼
59746752747.25751.75天竜阿蔵(新浜松市),中川根上村∼
61758764759.25763.75下田∼
62764770765.25769.75小山,伊豆長岡,湯ヶ島,茅野,島田∼
10原告テレビ静岡が次の放送波を送信して行う地上波テレビ放送
チャンネル地域(送信所名)周波数帯域()映像()音声()MHzMHzMHz
25542548543.25547.75下田稲梓(下田市)∼
30572578573.25577.75中伊豆(伊豆市)∼
32584590585.26589.76佐久間(浜松市)∼
34596602597.25601.75浜松(浜松市)∼
35602608603.26607.76南春野(浜松市)∼
602608603.25607.75静岡(静岡市)∼
37614620615.26619.76白糸(富士宮市),東伊豆(加茂郡東伊豆町)∼
614620615.25619.75御殿場(御殿場市)∼
38620626621.24625.74藤枝(藤枝市),龍山(浜松市)∼
620626621.26625.76森(周智郡森町)∼
39,,626632627.25631.75島田伊太(島田市)富士宮(富士市)清沢(静岡∼
市)
626632627.26631.76焼津(焼津市)∼
40,632638633.25637.75水窪(浜松市)中川根徳山(榛原郡川根本町)∼
632638633.26637.76河津(賀茂郡河津町)∼
41638644639.25643.75東佐久間(浜松市)∼
42644650645.25649.75天竜二俣(浜松市)∼
43,,650656651.25655.75春野(浜松市)三ヶ日(浜松市)天竜船明(浜松∼
市)熱海(熱海市),
,650656651.24655.74磐田見附(磐田市)下田(下田市)∼
,650656651.26655.76下賀茂(賀茂郡南伊豆町)籠上(静岡市)∼
44,,656662657.25661.75中川根(榛原郡川根本町)修善寺(伊豆市)賤機∼
(静岡市)
656662657.26661.76興津(静岡市),相良(牧之原市)∼
45662668663.25667.75掛川桜木(掛川市),小土肥(伊豆市)∼
662668663.24667.74浜岡(御前崎市)∼
48680686681.26685.76芝川内房(富士郡芝川町)∼
52704710705.24709.74瀬名(静岡市)∼
55722728723.24727.74藤枝葉梨(藤枝市)∼
722728723.26727.76小笠(菊川市)∼
56728734729.25733.75本川根(榛原郡川根本町),伊豆長岡(伊豆の国∼
市)湯ヶ島茅野(伊豆市),
728734729.26733.76天竜横山(浜松市)∼
57734740735.25739.75川根(榛原郡川根町)∼
734740735.24739.74麻機(静岡市)∼
734740735.26739.76大原(静岡市),井川(静岡市)∼
58740746741.26745.76牧ノ原(島田市)∼
740746741.25745.75玉川(静岡市)∼
740746741.24745.74羽鳥(静岡市)∼
59746752747.24751.74芝川柚野(富士郡芝川町)∼
746752747.25751.75三島(熱海市),丸子(静岡市)∼
60,752758753.26757.76藤枝堀之内(藤枝市)富士川(庵原郡富士川町)∼
752758753.24757.74岡部(志太郡岡部町)∼
61758764759.24763.74秋葉(浜松市)∼
758764759.25763.75天竜阿蔵(浜松市)∼
11原告あさひテレビが次の放送波を送信して行う地上波テレビ放送
<浜松地区>
チャンネル局名中心周波数()周波数帯域()映像()音声()MHzMHzMHzMHz
28563560566561.26565.76浜松∼
53713710716711.26715.76佐久間∼
33593590596591.25595.75南春野∼
38623620626621.25625.75天竜二俣,水窪∼
39629626632627.25631.75東佐久間,天竜船明∼
40635632638633.24637.74龍山∼
45665662668663.25667.75三ケ日,春野∼
53713710716711.25715.75天竜阿蔵∼
58743740746741.26745.76天竜横山∼
59749746752747.24751.74秋葉∼
<静岡地区>
チャンネル局名中心周波数()周波数帯域()映像()音声()MHzMHzMHzMHz
33593590596591.24595.74日本平(静岡)∼
26551548554549.24553.74丸子∼
37617614620615.25619.75清沢∼
41641638644639.26643.76籠上∼
42647644650645.25649.75賤機∼
647643650645.26649.76興津∼
50695692698693.24697.74瀬名∼
59749746752747.24751.74麻機∼
749746752747.26751.76井川,大原∼
60755752758753.25757.75玉川∼
755752758753.24757.74羽鳥∼
<その他>
チャンネル局名中心周波数()周波数帯域()映像()音声()MHzMHzMHzMHz
23533530536531.25535.75下田稲梓∼
26551548554549.25553.75藤枝,中伊豆∼
28563560566561.25565.75藤枝堀之内∼
29569566572567.25571.75富士宮∼
32587584590585.26589.76富士川∼
587584590585.25589.75島田伊太∼
35605602608603.26607.76東伊豆∼
36611608614609.26613.76芝川内房∼
41641638644639.24643.74熱海∼
42647644650645.24649.74修善寺∼
647644650645.26649.76河津∼
647644650645.25649.75中川根∼
43653650656651.25655.75御殿場,小土肥∼
45665662668663.24667.74下田∼
665662668663.26667.76下賀茂∼
46671668674669.26673.76森∼
50695692698693.26697.76島田∼
51701698704699.25703.75中川根徳山∼
53713710716711.26715.76小笠∼
54719716722717.24721.74伊豆長岡∼
719716722717.25721.75湯ヶ島茅野∼
57737734740735.25739.75三島∼
737734740735.24739.74芝川柚野,藤枝葉梨∼
59749746752747.26751.26浜岡∼
749746752747.24751.74磐田見附∼
749746752747.26751.76掛川桜木∼
60755752758753.25757.75川根,本川根∼
755752758753.26757.76相良∼
62767764770765.24769.74岡部∼
(別紙)
物件目録
別紙サービス目録記載のサービスに供されている被告の製造に係るハードディス
クレコーダー「ロクラクⅡ」の親機
(別紙)
支払目録
原告支払金額
原告日本放送協会金226万円並びに内金7万円に対する平成19
年8月4日から,内金219万円に対する平成20
年4月1日から,それぞれ支払済みに至るまで年5
分の割合による金員
原告日本テレビ放送網株式金33万円及びこれに対する平成20年4月1日
会社から支払済みに至るまで年5分の割合による金員
原告株式会社東京放送金33万円並びに内金9万円に対する平成19年
8月4日から,内金24万円に対する平成20年4
月1日から,それぞれ支払済みに至るまで年5分の
割合による金員
原告株式会社フジテレビジ金29万円並びに内金5万円に対する平成19年
ョン8月4日から,内金24万円に対する平成20年4
月1日から,それぞれ支払済みに至るまで年5分の
割合による金員
原告株式会社テレビ朝日金31万円並びに内金7万円に対する平成19年
8月4日から,内金24万円に対する平成20年4
月1日から,それぞれ支払済みに至るまで年5分の
割合による金員
原告株式会社テレビ東京金29万円並びに内金5万円に対する平成19年
8月4日から,内金24万円に対する平成20年4
月1日から,それぞれ支払済みに至るまで年5分の
割合による金員
原告株式会社静岡第一テレ金88万円及びこれに対する平成19年8月4日
ビから支払済みに至るまで年5分の割合による金員
原告静岡放送株式会社金88万円及びこれに対する平成19年8月4日
から支払済みに至るまで年5分の割合による金員
原告株式会社テレビ静岡金88万円及びこれに対する平成19年8月4日
から支払済みに至るまで年5分の割合による金員
原告株式会社静岡朝日テレ金88万円及びこれに対する平成19年8月4日
ビから支払済みに至るまで年5分の割合による金員

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
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我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
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興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
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なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
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学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
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詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

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