弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     当審に於ける未決勾留日数中一八〇日を本刑に算入する。
         理    由
 弁護人鍜治利一同笹原寿生及び被告人Aの上告趣意は末尾に添付した別紙書面記
載の通りである。
 弁護人鍜治利一、同笹原寿生上告趣意第一点について。
 按ずるに、Bに対する検事聴取書の供述記載は所論のとおりであるが、原判決は、
Bの右供述記載と原判決挙示の各証拠とを綜合して判示事実を認定したものである
ことは判文上明白である。そして、右証拠を綜合すれば、被告人はBに対し、直接
又は間接に判示申向けをして、判示の金員を喝取した事実を認め得るから、虚無の
証拠によつて判示事実を認定したという論旨は理由がない。
 同第二点について。
 しかし、憲法第三七条第二項に、刑事被告人はすべての証人に対し審問の機会を
充分に与えられると規定しているのは、裁判所の職権により、又は訴訟当事者の請
求により喚問した証人につき、反対訊問の機会を充分に与えなければならないと言
うのであつて、被告人に反対訊問の機会を与えない証人其他の者(被告人を除く)
の供述を録取した書類は、絶対に証拠とすることは許されないと言う意味をふくむ
ものではない。従つて、刑訴応急措置法第一二条において、証人其他の者(被告人
を除く)の供述を録取した書類は、被告人の請求があるときは、その供述者を公判
期日において訊問する機会を被告人に与えれば、これを証拠とすることができる旨
を規定し、検事聴取書の如き書類は、右制限内において、これを証拠とすることが
できるものとしても、憲法第三七条第二項の趣旨に反するものではない。
 論旨は公判において被告人に反対訊問の機会を与えたとしてもその訊問の結果を
証拠となし得るに止り、検事聴取書其ものは被告人に反対訊問の機会を与えて作成
したことにはならないから、これを証拠とすることはできないと主張するのである
が、右主張は、憲法第三七条第二項は被告人に反対訊問の機会を与えない証人の供
述録取書は絶対に証拠とすることは許されないことを意味すると言う、独自の見解
に基くものであるから、採用できない。検事聴取書は、いわば、原告官たる検事が
作成したものであるが、他の書類と同様一の訴訟資料として、公判において被告人
に読聞けられるものであり、もし被告人に不審不満の点があれば、憲法上の権利と
して、公費でしかも強制手続によつて其供述者の喚問を請求し、充分反対訊問をな
し、其内容を明らかにすることができるのであるから、裁判官の自由なる心証によ
り、これを証拠となし得るものとするも、被告人の保護に欠くるところはない、唯
無制限にこれを証拠となし得るものとすれば、憲法第三七条第二項の趣旨に反する
結果を生ずる恐れがあるから、刑訴応急措置法第一二条により、被告人の権益確保
につとめているのであつて、右措置法の規定は憲法第三七条第二項の旨を承けたも
のであり、たがいに杆格するものではなく、これを無効とすべき理由はない。従つ
て原判決において検事聴取書を証拠として、被告人に有罪を言渡したとしても、何
等違法はない。論旨は理由がない。
 同第三点について。
 しかし原判決において証拠として挙示した原審公判廷における被告人の供述によ
れば、所論五百円をCから受取つたことは明白である。ただ右五百円を受取つた日
時の点は被告人の右供述だけでは明らかではないが、原判決挙示の各証拠を綜合す
れば、右日時は昭和二二年一月乃至六月頃であることを推断し得られる。なお犯罪
の日時は罪となるべき事実でないから、処罰上特別の必要がない限り、必ずしも常
に正確に証拠によりこれを認めた理由を説明することを要しない。されば原判決が
「五月頃」と認定したのは証拠に基かないで事実認定をした瑕疵はあるが、この程
度の瑕疵は本件において判決に影響を及ぼさないことは明らかである。従つて論旨
は理由がない。
 同第四点について。
 すでに第一点及び第三点に説明した通り原判決は挙示の各証拠を綜合して判示事
実を認定したものであつて、被告人の自供を唯一の証拠としたものでないことは判
文上明白であるから、論旨は理由がない。
 同第五点について。
 原判決において証拠として挙示した原審証人Dの原審公判における供述によれば、
同人は被告人に対し、子分共を貸してくれと頼んだこともないのに子分共が一日延
六、七十人も右Dが経営していた展覧会場に出入して一般観客が恐ろしがつていた
事実、及び被告人は右Dに対し、今年一ぱいには相当のいきさつがあり、血の雨を
ふらせて俺が関東一の親分になるつもりだ、拳銃も機関銃も日本刀も用意してある
などと言つて、気勢を示した事実、判示金千円は右Dが被告人に対し、当然支払わ
なければならない金だと思つて支払つたものではなく、面倒な事ができて危険にな
つては困ると思つて出した事実を供述していることが明らかであつて、右Dの供述
を綜合すれば正に原判決の判示事実に照応するものである。論旨は被告人に都合よ
き部分のみを挙げているに過ぎないもので採用することはできない。論旨は理由が
ない。
 同第六点について。
 原判決において証拠として挙示した、被告人の原審公判における供述並に原審証
人Eの供述によつては、被告人の子分四、五人をEの両脇にすわらせて、同人に対
し判示事実を申向けた事実を認めることができないことは所論の通りである。(第
一審公判調書には被告人の子分四、五人が、Eの両脇に座つていた旨の記載がある)
しかし、原判決において証拠に挙示した原審証人Eの供述によれば、被告人がEを
被告人の自宅に呼びよせた際、同席した子分の数は幾人であるか、またその子分は
Eの両脇に座つていたか否かの点は明らかでないが、過激な言葉を使う子分を同席
させてEと対談し、被告人よりEに対し、判示事実を申向けた事は明らかであり、
右Eの証言と原審公判における被告人の供述とを綜合して判断すれば、判示金千円
を喝取した事実を認定し得るものである。論旨は理由がない。
 被告人Aの上告趣意について。
 論旨は結局原審の事実誤認を主張し、且つ寛大の処置を願うということに帰着す
るが、かような主張は、上告適法の理由とはならないものである。
 よつて刑事訴訟法施行法第二条、旧刑事訴訟法第四四六条により、主文の通り判
決する。
 以上は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 小幡勇三郎関与。
  昭和二四年五月一八日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   又   介

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