弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件控訴を棄却する。
控訴人の当審における新請求を却下する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
○ 事実及び理由
控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人東京都港区監査委員Aが控訴人に対し昭和
五五年二月二二日付でなした東京都港区職員措置請求についての処分はこれを取消
す。被控訴人東京都港区長は監査委員の監査結果の取消でその后の措置について附
随的に責任を負う。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決
を求める。
よつて、按ずるに、当裁判所も控訴人の本件訴えは不適法でその欠缺を補正するこ
とができないものとして却下すべきものと判断するものであるが、その理由は原判
決の理由と同一であるからこれを引用する(なお控訴人は、被控訴人監査委員に対
し、原審においては請求の趣旨として監査結果ないしその通知の無効確認を求める
のに対し、当審においては控訴の趣旨としてその取消の判決を求めるものである
が、右に述べた理はそれが取消請求の場合でも全く同一である。また控訴人の被控
訴人港区長に対する請求は、原審の請求の趣旨に照らせば、原審同様、同被控訴人
が責任を負うことの確認を求めるものと認められる。)。
そうすると、控訴人の本件訴えを却下した原判決は相当であつて、控訴人の本件控
訴は理由がない。
よつて、民訴法二〇二条の準用により口頭弁論を経ないで控訴人の本件控訴を棄却
し、控訴人の当審における新請求を却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴
法七条、民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 田中永司 宮崎啓一 岩井康倶)
(原裁判等の表示)
○ 主文
本件訴えを却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
○ 理由
一 請求の趣旨及び原因は別紙記載のとおりである。
二 よつて検討するに、請求の趣旨第1項は原告が昭和五五年一月一〇日付東京都
港区職員措置請求書をもつてした住民監査請求に対し、港区監査委員が同年二月二
二日付五四港監第一一七号をもつてした右監査請求を棄却する旨の監査結果ないし
その通知の無効確認を求めるものであるが、仮に右請求部分に関する訴えが地方自
治法第二四二条の二に定める住民訴訟として提起されたものであるとすると、右訴
訟は住民監査請求の対象たる違法な行為又は怠る事実につき同条第一項第一号ない
し第四号に定める内容の請求を認めるものであるから前記監査結果ないしその通知
がこれに当たらないことは明らかであるし、かかる訴えをその他の民衆訴訟として
許容する法律上の根拠もないから、これを住民訴訟もしくは民衆訴訟として許容す
ることはできないものといわねばならない。また右訴えが抗告訴訟として提起され
たものであるとしても、住民監査請求の制度は普通地方公共団体の住民に対し自己
の法律上の利益にかかわらない住民としての資格に基づき、監査委員に対し監査そ
の他一定の必要な措置を講すべきことを請求することを認めたものであるから、右
監査請求に対して監査委員が地方自治法第二四二条第三項所定の監査を行うか否か
は当該住民の個人的な権利義務ないし法的地位に何ら影響を与えるものではなく、
また同項が監査の結果を請求人に通知すべき旨を規定したのも、請求人に右結果を
了知させ住民訴訟提起の判断資料とするためであり、右規定から請求人たる住民に
対し適法に行つた監査請求につき監査委員の監査を受けるという手続上の利益をそ
の個人的な権利ないし法律上の利益として保障したものと解することはできない。
したがつて、前記監査結果ないしその通知は行政事件訴訟法第三条の「行政庁の処
分その他公権力の行使に当たる行為」にも「審査請求、異議申立てその他の不服申
立てに対する行政庁の裁決、決定その他の行為」にも該当せず、本件訴えは抗告訴
訟としても許されないものといわねばならない。
次に請求の趣旨第2項についてみると、原告の主張するところは、原告の監査請求
は港区監査事務局職員に対する超過勤務手当の違法支出に関するものであるとこ
ろ、地方自治法第二〇一条により準用される同法一五四条によれば監査委員は事務
局職員に対し指揮監督の責任を負うものであり、前記事項の監査については同法第
一九九条の二の規定により利害関係事件として関与を禁止されているものと解すべ
きであるから、被告港区長は原告の住民監査請求権を保障するために原告並びに原
告の指定する者に監査を行なわせるべき行政上の責任があることの確認を求めると
いうにある。
そうすると、原告の右請求に関する部分の訴えは、地方自治法第一九九条の二を適
用する結果生ずる監査委員の欠缺につき住民監査請求権を保障するため被告港区長
が適切な措置をとるべき義務があることの確認を求めるものであるが、かかる訴え
が地方自治法第二四二条の二に定める住民訴訟に該当しないことは明らかである
し、住民監査請求が住民たる資格に基づいて認められるものであることは既に説示
したとおりであるから、住民監査請求権の保障なるものが原告個人の権利ないし法
的地位に係わるものではなく、したがつて、かかる訴えは行政事件訴訟法第五条に
定める民衆訴訟に含まれるものと解されるがこれを許容する法律上の根拠はない。
そうすると、原告の請求の趣旨第2項に関する請求部分の訴えも不適法といわねば
ならない。
なおこのように解したとしても、監査結果に不服の請求人はさらに裁判所に対し当
該違法な行為又は怠る事実につきその是正を求め得るのであるから住民監査請求権
が不当に侵害されたとまでいうことができないことは明らかである。
三 以上の次第であるから、本件訴えは不適法でその欠缺を補正することができな
いから行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第二〇二条によりこれを却下することと
し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して
主文のとおり判決する。
別紙 請求の趣旨
1 被告A監査委員が五四年港監第一一七号昭和五五年二月二二日付監査結果甲証
第二号証は無効であることを確認する。
2 被告B港区長は前記の結論に従つて生ずる処理について責任を負うことの確
認。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
請求の原因
一 原告の昭和五五年一月一〇日付東京都港区職員措置請求書甲第一号証に基き通
知のあつた甲第二号証は地方自治法第一九九条の二に違反するので無効の行政行為
である。
甲第三号証を証拠書類として提出する。
二 前記一は地方自治法第二〇一条準用規定で同法第一五四条に基き監査委員の固
有の権限に基き職員の指揮監督の責を負うので自明である。
三 住民による監査請求は地方自治法第二四二条に基き保証さるべきである。
四 前記一、三は地方自治法第五章直接請求第七五条に依るも処理は不可能であ
る。
五 前記一の行政行為は監査委員としては法が及ばないので地方自治法第八六条に
より処理の出来ることはない。
六 依つて三による保証は原告並原告の指定する者に監査事務を執行させるべきで
ある。
七 被告B港区長は前記六の実施に伴う行政上の処理に責任を果すべきである。
八 よつて「請求の趣旨を命ずる」判決を求める。

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