弁護士法人ITJ法律事務所

最高裁判例


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主文
被告人を懲役20年に処する。
未決勾留日数中230日をその刑に算入する。
理由
【犯行に至る経緯】
第116歳頃に家出をして親元を離れた被告人は,知り合ったA及びその交際相
手のBと行動を共にし,Aに誘われて3名で同居を始めており,被告人はAの
新しい交際相手の位置付けであった。Aは,Bにもそうであったように,被告
人に言いがかりをつけて暴力を振るうなどの横暴な態度を示すようになり,耐
えかねる被告人はBと共に逃げ出すも見つけられ,Aに連れ戻されてこもごも
暴力を振るわれるなどした。引き続き同居する中,BはAにより外出や単独行
動の自由を制限されたが,被告人は生活費を得るためにひとりで外に働きに出
るなどし,Aから必要な金銭の引き出しなどを任されていた。
第2平成23年頃,同様にAと知り合って誘われ,同居を始めたCは,些細な事
柄を理由にAから叱責され,暴力を振るわれ,Aに服従していたものであって,
自身が受給する障害年金もAに取り上げられるなどして横取りされていた。C
を含む4名の同居先が,大阪府堺市a区b町c丁d番e号所在の家屋(以下「b
町家屋」ともいう。)に移った平成24年頃以降,AはCを服従させる中,食事
や水分摂取を制限し,入浴のみならず排泄時のトイレの使用も制限し,おむつ
を着用させたまま排泄させるなどの虐待を加え,その虐待を被告人及びBも分
担した。よって,被告人は,平成25年頃から約4年間,Cに対し,後記第1
の監禁致傷を行うに至る。
第3並行して,平成28年9月頃以降,Aは,多額の飲食代金を負担させるなど
して支配的に接する交友者Dに家出をさせて親元から引き離し,b町家屋で同
居させ,運転をさせるなどの様々な指示に応じさせ,暴力を振るうほか,食事
や水分摂取を制限し,これらはDを外に連れて行くときにも同様であった。C
と同様に入浴や排泄関連の虐待を加え,そのような虐待を被告人及びBも分担
し,途中からはAの交友者であるE及びFもDに暴力を振るうなどして虐待に
加わった。よって,被告人は,平成28年9月頃から平成29年8月17日の
D死亡までの間,同人に対し,後記第2の監禁及び殺人を行うに至る。
【罪となるべき事実】
被告人は,
第1A及びBと共謀の上,平成25年頃から平成29年11月16日までの間,
前記のとおり同居先であったb町家屋の2階寝室において,自身を含むその3
名の暴力等を受けて畏怖し,抵抗できない状態のC(当時34ないし38歳)を
同寝室押入に入れて閉じ込め,その動静を監視カメラの映像及び直接の目視等
により監視するなどし,同人が同所から脱出するのを著しく困難にし,もって
監禁し,その際,同監禁行為に伴う長期臥床により,同人に加療約2か月間を要
する廃用症候群の傷害を負わせた。
第2Cに続いて同居を始めたDに対し,
1A及びBと共謀の上,平成28年9月頃から平成29年8月15日までの間,
b町家屋の2階和室において,自身を含むその3名の暴力等を受けて畏怖し,
抵抗できない状態のD(当時30ないし31歳)に対し,その動静を監視カメラ
の映像及び直接の目視等により監視するなどし,同人が同所から脱出するのを
著しく困難にし,もって監禁し
2前記のとおり行動の自由を奪われ,身体の生理機能を害される虐待を受け,
E及びFが加わった5名から暴力を振るわれるうちに細菌性肺炎を発症して衰
弱したDは,平成29年8月15日頃,集中治療室等の設備の下で医師による
適切な医療を受けるのでなければ死亡する危険が高い状態に陥ったところ,そ
の事情を認識した被告人,A,B,E及びFは,Dが病院に運ばれるのに伴って
上記の虐待や暴力等が発覚するのを恐れたことなどから,滋賀県内にある空き
家の状態のE所有家屋にDを移動させて監禁し,同医療を受けさせないで死亡
させる旨の謀議を行い,よって被告人は,A,B,E及びFと共謀の上,殺意を
もって,同日頃,b町家屋の2階和室から滋賀県近江八幡市f町g番地h所在
のE所有家屋(以下「f町家屋」ともいう。)まで,衰弱して身動きできないD
(当時31歳)を,A,E及びFの担当により自動車に乗せて連行し,同日頃か
ら同月17日までの間,同家屋において,監視カメラの映像及び直接の目視等
により監視するなどしてDが同家屋から脱出するのを著しく困難にし,もって
監禁するとともに,その間,医師による適切な医療を受けさせないでDを極度
に衰弱させ,病状を一層悪化させることにより,同日,同家屋において,細菌性
肺炎に基づいて同人を死亡させ,殺害した。
【争点に対する判断】
第1被告人及び弁護人の主張内容
被告人に見過ごせない程度の知的制約があることや,首謀格のAから激しい
暴力を振るわれ,性的行為を強要されるなどして屈服させられ,その関係性の
影響が続いていたことなどに照らし,各犯罪の成立要件は満たされていなかっ
た,と主張するものである。
具体的には,判示第1の監禁致傷について,Cに対する監禁を回避し又は取
り止めるなどの適法な対処について,当時の被告人にこれらを期待することは
できず,期待可能性を欠くから責任を負わせられない,という。
また,判示第2の監禁及び殺人について,被告人は,Dが死亡する危険が高
い状態に陥っている事情,及び,そのDを連行,監禁して医療を受けさせず,死
亡させる計画実行の事情のいずれも認識できていなかったから,殺意を備えて
おらず,共犯者との間で利用補充しあう関係を形成したともいえない以上,殺
人を共謀した事実もない,というのであり,併せて,Cの場合と同様,殺人を回
避するなどの適法な対処に係る期待可能性が欠けていた,というのである。
第2前提となるべき首謀格との関係性,及び知的制約の程度について
1関係証拠によれば,被告人は,判示のとおりBと共に逃げ出すも,連れ戻さ
れてAから暴力を振るわれ,これにとどまらず性的行為を強要されるなどの手
酷い仕打ちを受けたと認められる。また,被告人の手元に入る金銭はその後A
によって管理され,経済的にも同人の干渉が行き届くようになったと認められ
る。
2しかし,Aとの関係性を掘り下げて見ると,同人は非常に狡猾な人物であり,
利用価値のある者を巧妙に手元に取り込み,暴力を交えて支配し,反駁させな
いように徹底して監視するなどの行動傾向があると認められる。被告人及びB
がAに反駁して逃げ出した際もこの傾向が現れ,その後Bは行動や連絡の自由
を制限され,排泄のために単独でトイレに出向くことも許されず,Aの外出時
には足をくくられているなどの状態に貶められていたと認められる。他方の被
告人は,行動全般に強度の縛りを受けることはなく,同居生活の生活費を得る
ために外に働きに出てもおり,工場やコンビニエンスストア,たこ焼き屋の勤
務をこなし,必要な金銭を引き出すことについてもAから委ねられていた。通
常の通信機能を備える携帯電話機を1台保有し,Aと等しく保有するその携帯
電話機により,それらと接続する監視カメラの映像を見てBの動静を監視する
役割を分担していた。遅くとも,b町家屋に移転した平成24年頃以降,Aから
被告人に対する暴力は振るわれず,並行して被告人は上記のとおり行動の自由
を保持し,重要な役どころを任されるようになっていたと認められる。支配さ
れるだけの関係にはなく,むしろ,Aの意向に沿うように振る舞い,取り入るよ
うにして,まさに交際相手相応の地位を得ていたと認められる。
3被告人の地位は,その後,Dに対する虐待や監禁が行われる前後にも保持さ
れていたと認められ,このことは,関係者の認識や,客観的なやり取りの記録に
も根拠を見いだせる。E,F及びBは,被告人がAに屈服していたとは証言して
おらず,むしろ,被告人はAに対しても意向を表明できる立場にあった旨の供
述が,それら証言に含まれる。関係者間のLINEを用いたやり取りの記録等
を通覧すると,Aと被告人のやり取りは,交際中の対等な男女間のメッセージ
の交換とみられるものであって,そのうちには,D死亡の事実を省みるかのよ
うなAのメッセージに対し,これと真逆の,Dに対する敵意を表す意見を被告
人が述べ,Aが翻意するやり取りや,D死亡後に同人との関わり合いの証拠を
隠滅するに当たり,被告人からAに対し,隠滅対象の物品の取りこぼしがない
ように助言するやり取りが含まれる。以上によれば,Dとの関わり合いの中で
も,Aの傍らで被告人が築いた地位に変動はなく,補佐役ともいえる立場にあ
ったと認められる。
4そして,被告人が,本件の2名の被害者に対する監禁や虐待に際し,主導す
るAの手前,不本意ながら仕方なく追従したかといえば,肯定できない。Cの証
言によれば,Bは,A不在時であるなら幾らか温かみのある態度を示してくれ
たが,被告人にそのような節はなく,A不在時に独自にCに暴力を振るうこと
すらあったと認められる。Dに対する虐待の様子が記録された映像等によれば,
居合わせる被告人の言動や表情に不本意さや苦渋の心情をうかがわせるものは
なく,苦痛を受けるDの様子を見てあざ笑うような言動のほか,同人を罵り,あ
るいは更に痛めつけるように周囲にけしかける言動が随所にみられる。D死亡
後のメッセージの詳細を見ると,被告人は,自身の母親危篤の際のDの態度が
腹立たしかったから,死亡させたのもやり過ぎとは思わない,運転役の同人が
居ないと買い物は不便だが,かえってすっきりした,問題がなければ沖縄旅行
に近々出掛けられる,などとその心情を自発的に述べたと認められる。
総合すると,Aが主導した被害者2名の監禁や虐待について,被告人も是認
し,同調し,自らも加わって推し進める態度を示していたと認められるのであ
り,その態度は,Aに屈服させられて行動の自由を奪われる中で不本意ながら
示されたのではなく,むしろ,行動の自由を保持しつつAの補佐役ともいえる
立場にあって,任意に示された態度であったと認められる。
5併せて,知的制約の程度も検討し,関連の鑑定の結果を吟味した。被告人は
療育手帳の交付を受けており,平成20年に軽度知的障害の判定を,同25年
に中度知的障害の判定を受けていて,鑑定結果も,小学校低学年程度の認知能
力にとどまると結論付けた。鑑定結果によれば,被告人は,他者の置かれている
状況や時間的な展望の想像が困難であること,複数の事象を関連づけて統合す
るのが困難であること,抽象的な事柄が理解できないこと,パターンの繰り返
しはできるが急な変化には対応できないこと等々が指摘されており,これらが
影響を及ぼし,通常の統制が働かないまま各犯行に関与したと分析されていた。
しかし,各所に認定した被告人の言動のほか,単純とは言い難い職務内容の
職場で無難に働いていたとみられるその実績,狡猾で周到なAに取り入り,信
頼を得るに至った実績,証拠隠滅の場面等に現れたとおりの先の見通しの備え
等々のほか,育児の経験のない被告人が3歳以下のEの幼子2名をしばらく一
人で預かり,無難に監護を果たしたとみられるその実績を並べて評価すると,
鑑定結果の指摘は当を得ない。前提とすべき事実関係の欠落があるか,前提と
した事実関係の評価が誤っているか,いずれかの問題を孕んでいると考えられ
る。被告人の知的制約が深刻なものとはいえず,その制約が適法な振る舞いを
妨げ,犯行への関与をたやすく導いてしまったなどという見方はできない。
第3判示各犯罪の成立要件が満たされるかどうかについて
以上の検討結果を踏まえ,順に,犯罪の成否を判断する。
1判示第1の監禁致傷について
弁護人は,知的制約や,Aに支配された関係性の影響により,被告人に適法
な行為の期待可能性はなかったと主張するが,既に検討したところによれば,
Cの監禁を回避し,あるいは取り止めるという適法な行為の妨げになる程度の
知的制約や,支配関係の影響があったと疑う余地はない。十分に行動の自由と
判断力を保持していたと認められる被告人について,適法な行為の期待可能性
が欠けていたとはいえず,責任を負わせる要件に不足はない。共謀等の要件に
欠けるところもなく,判示第1の監禁致傷罪の共同正犯の成立が認められる。
2判示第2の1の監禁並びに同2の監禁及び殺人について
Dに対する判示第2の1の監禁について,弁護人は,前同様に適法な行為
の期待可能性がなかったと主張するが,既に検討したところによれば,この
主張は前同様に採用できない。共謀等の要件に欠けるところもなく,判示第
2の1の監禁罪の共同正犯の成立が認められる。
Dに対する判示第2の2の監禁及び殺人について,被告人に殺意及び共謀
の存在が認められるか否か,検討する。
ア関係証拠によれば,平成29年8月15日未明にb町家屋の2階和室から
運び出される直前のDは,軽度の意識障害が出現し,立ち上がることもでき
ず,食べ物や水を飲み下すことすら困難となるなど,著しく衰弱しており,
そのまま医師による適切な医療を受けさせないで放置すれば,近い時期に死
亡する危険性のある状態に陥っていたと認められる。A,E及びFがこのD
を自動車に乗せてf町家屋に連行し,同家屋で監禁するとともに,その間,
医師による適切な医療を受けさせなかった行為は殺人の実行行為に当たる
し,事態を認識して連行等に及んだA,E及びFには,それがDを死亡させ
る危険性が高い行為と認識して同行為を選択する意思,すなわち,殺意があ
ったと認められ,相互に共謀していたとも認められる。
イ被告人についても同様に殺意及び共謀があったか否かに関連して,被告人
の公判供述は当時の記憶がないと述べるものであり,弁護人も,被告人の当
時の居場所は不明であり,連行等の話し合いに加わった証拠はないと主張す
る。
しかし,Eは,その所有家屋にDを連行する計画に強く抵抗を覚えたため,
運び出しに先立ち,Aから全てを押しつけられている旨の愚痴をこぼしたと
ころ,居合わせる被告人が「A君にケツ拭かせる気か。」などと言い返し,A
に面倒を掛けないよう強く促してきた旨,証言した。当時,b町家屋の2階
寝室の押入内に監禁され,聞こえてくるAらの発言に敏感になっていたとみ
られるCも,Eとの会話の中で被告人が上記の発言をするのを聞き及んだ旨,
証言した。これらの証言内容の一致は,重視に値するのであり,他方で,被
告人の所在に関するF及びBの証言が不明瞭であることを踏まえても,着目
すべき積極証拠といえる。
関連して,b町家屋内を撮影していた映像と,関係者間のLINEのやり
取りを整合させると,同月14日の夜に同家屋内に来ていたEの幼子が,翌
朝には生活の本拠である別所に移動していたと認められ,この移動に付き添
えるのは被告人のほかに想定し難いことを併せれば,日付が変わる前後のb
町家屋の話し合いの場には,幼子と共に被告人も居合わせていたとみるのが
自然であり,この点でE及びCの証言は整合的である。
そもそも,Dの連行等の計画は,同人がb町家屋で死亡し,同人に係る虐
待はもとより,Cも監禁している事情等の全貌が発覚するのを防止するため,
狡猾で周到なAが立案した計画であるところ,連行等を担当するEの幼子の
子守りをする存在であり,また,従前,被害者2名の監禁に深く関与してい
た被告人に対し,Aが事前に計画を知らせないとは考えにくい。Aの傍らで
被告人が築いていた立場等にも照らし,Aは被告人に事情を伝えようとし,
これを実践したと推認できるのであり,この点でもE及びCの証言は整合的
である。事後のLINEのやり取りや通話の痕跡等を見ても,被告人に計画
が伝わっていなかったことをうかがわせるものはなく,推認は妨げられない。
E及びCの証言に依拠できるから,被告人はDの連行等の計画を事前に把
握していたと認められ,すなわち,衰弱して死亡する危険性が高い状態に陥
っている同人をf町家屋に連行して監禁し,医療を受けさせないで死亡させ
る事情につき,これらを認識して殺意を備え,その旨の意思疎通を判示共犯
者との間で交わしていたと認められる。
ウ続いて,共謀と評価できるほどの関与を果たしたか否か検討するに,関係
証拠によれば,被告人は,Dの連行等に際し,前記のとおりEに役割を果た
すよう強く促す働き掛けをした。また,f町家屋でDを監視し,その死亡ま
で同伴する予定であったとみられるEに代わって,幼子の子守りを引き受け
ており,Eに一層強く働き掛けることにもなる幼子関連のこの役割は重要性
が高く,不可欠であった。連行後のDの様子を,b町家屋にいるBがSky
peのモニターで監視できる装置の設置に当たっては,被告人が助言をして
完遂に至らせた。被告人は,LINEや通話を通じ,A及びEとDに関する
連絡を随時取り合って連携の維持に努めており,f町家屋からいったん戻っ
たAが再び出向いてDの死期を確かめる際には,被告人も同道して出向いて
おり,Aを補佐したとうかがわれる。Aのもう一つの気掛かりであったとみ
られるb町家屋のC及びBの動静は,被告人が監視を受け持っていたと認め
られる。D死亡後の証拠隠滅作業において,被告人はAの指示に応じ,ある
いは前記のとおり逆にAに助言を差しのべるなどし,自身が経営するたこ焼
き屋の2階にDが住んでいたように装う工作をしており,このような事後の
態勢を整えておくことで,計画の遂行に寄与したと認められる。
以上の認定ないし評価が関係証拠から導かれるところ,これらは,被告人
が手助けにとどまらず,まさに計画に加わる一員として,Aら共犯者との間
に意思疎通を交わし,相互に利用し補充し合う関係を形成し,その発現とし
ての重要な関与を果たしたことを示しており,その関与は,前記認定のとお
り被告人自身も加わって推し進める姿勢で果たされているから,被告人は,
殺意を備え,共犯者らと共謀して,Dの連行等を内容とする殺人の犯行を遂
げたと認められる。
エ殺意及び共謀の点に関してもなお,知的制約の影響から意思疎通を交わせ
ていなかったなどと指摘する弁護人の主張のうちに,採用できるものはない。
⑶弁護人は,Dに対する判示第2の2の監禁及び殺人の関係でも,前同様に
適法な行為の期待可能性がなかったと主張するが,既に検討したところによ
れば,この主張は前同様に採用できない。他の要件に欠けるところもなく,
判示第2の2の監禁罪及び殺人罪の共同正犯の成立が認められる。
3結論
そこで,判示第1の監禁致傷の共同正犯,同第2の1及び2の監禁及び殺人
の共同正犯の事実を認定し,他方で,期待可能性の欠如の指摘を含む被告人及
び弁護人の主張をいずれも排斥した次第である。
【法令の適用】
被告人の判示第1の所為は刑法60条,221条,220条,204条に,判
示第2の所為のうち,1及び2の監禁の点は継続する1個の監禁行為であるから
刑法60条,220条に,2の殺人の点は刑法60条,199条にそれぞれ該当
するところ,判示第2の2の監禁と殺人は1個の行為が2個の罪名に触れる場合
であるから,第2の1の監禁ともあわせて刑法54条1項前段,10条により以
上を1罪とした上,重い殺人罪の刑で処断し,判示第2の罪について所定刑中有
期懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,刑法47条本文,
10条により重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を
懲役20年に処し,刑法21条を適用して未決勾留日数中230日をその刑に算
入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担さ
せないこととする。
【量刑の理由】
1本件は,被告人が,共犯者らと共謀の上,被害者1名を監禁してこれにより傷
害を負わせ(監禁致傷),続いてもう1名の被害者に虐待を加えるとともに監禁し,
よって衰弱した同人を別の場所に移動させて死亡に至るまで監禁を続け,その間,
適切な医療を受けさせない態様の殺人を行った犯行(監禁,殺人)の事案である。
2最終的に行き着いた殺人の罪は,危険な凶器を用いて積極的に生命を奪う行為
等を内容としていないが,絶命に向かう被害者の様子を把握しながら見殺しにす
る態様であって,それ自体,生命を軽んじる態度が著しく現れている。何よりも,
その状態に至るまでに犯人らが様々な虐待を加え,監禁する行為が長く先行して
いたことが特徴であり,また,並行して別の被害者を長期間監禁しており,これ
らの犯罪の発覚を防止しようとする身勝手極まりない動機により,遂に殺人にま
で行き着いたところに大きな特徴を有するのであって,すこぶる悪質である。
3加えて,本件の各監禁の実態は,あまりにも酷いものであった。
先行の監禁は,屈服させた被害者を狭い押入内に閉じ込め,排泄のために出る
ことも許さず,寝ている間に自由に手足を動かすことも許さず,監視カメラを交
えてその動静を徹底して監視するものであった。おむつを着用したまま排泄せざ
るを得ない被害者は,食事も劣悪なものを与えられ,身体機能が低下して本件の
致傷を生じていた。その受給する障害年金の横取りのために閉じ込められ,生き
長らえさせられていたというべき実態であり,同人の尊厳は見るべくもなかった。
特筆すべきは監禁の期間が4年余りもの長期に及んだことであって,常軌を逸し
ている。被害者の心身に刻まれた爪痕は深く,軽い評価を当てはめようもない。
追加して始められた虐待及び監禁は,その被害者の行動の自由を奪う度合いこ
そ大きくなかったものの,奴隷ないし玩具のような扱いをするものであった。身
体を痛めつけたり辱めを負わせたりして反応を楽しむ虐待が,加害の大部分を占
める。逃げないようにするために就寝時は手足を拘束して睡眠薬を服用させてお
り,劣悪な内容の食事はやがて栄養も水分も満足に与えないものとなり,併せて
排泄に制限が加えられ,この被害者もおむつを使用させられており,尊厳は見る
べくもなかった。監禁の期間は約1年に及び,その長さ以上に,いたぶられ続け
た過酷さが際立つ。被害者がいよいよ衰弱し,死亡の危険を生じたところで翻意
して救命を図るのではなく,逆に見殺しを選択するという非情な犯行であった。
以上のとおりの非人道的な犯行につき,救い出された被害者が,また,救われ
なかった被害者の遺族が,それぞれ厳しい被害感情を吐露するのは当然である。
死亡した被害者が1名の事案の中にあって,例えば,終盤の監禁中に積極的な暴
行を加えるなどの更に悪質な態様も想定されるから,それらと同等の評価までは
できないが,本件は十分に重い評価が与えられるべき類型の事案である。
4そして,被告人は,長きに渡る各監禁ないし虐待の全般に関与しており,問わ
れるべき刑事責任には大きいものがある。
もとより,犯行を主導したのは,当初,被告人をもその支配下に置き,その他
の関係者も順に従わせてその頂点に位置した首謀格の共犯者であるから,比較す
れば被告人の寄与の度合いは抑えられたものであり,この事情はよく踏まえて考
慮に入れることとした。首謀格の支配に直面した際,被告人が年若い世代であっ
たことや,その知的制約の存在については,同様に考慮に入れることとした。
しかし,各犯行の頃の被告人は,支配されるだけの関係にはなく,補佐役とも
評価できる地位に至り,よって十分な行動の自由と判断力を保持していたのに被
害者らを救うのではなく,その苦痛に長く向き合っていながら関与を続けた。首
謀格による虐待等を是認し,同調し,自らも加わって推し進める態度を示してい
た。従属性を理由に非難を抑えるのには限度があり,知的制約の程度の考慮につ
いても同様である。殺人の犯行において被告人が様々に果たした役割は,最も密
に被害者の監禁を実行したEのそれに比べて大きく劣るものではなく,同等とも
評価できるから,この点で非難を抑えるのにも限度がある。そのほか,被告人に
前科がないことや,被害者らに詫びる言葉を述べていることなどについても検討
したが,同様に考慮は深まらなかった。
5総合すると,各犯罪の犯情が非常に悪質である上,これらに寄与した度合いに
も大きなものが認められる被告人の刑事責任は,首謀格の次に重い位置付けにあ
ることを明確に示すものとなるべきであるから,その評価を,検察官の科刑意見
にいう範囲に押しとどめることはできないと判断した。
よって,主文の刑を量定した次第である。
(求刑:懲役18年)
平成30年12月25日
大津地方裁判所刑事部
裁判長裁判官伊藤寛樹
裁判官髙橋里奈
裁判官加藤靖之

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