弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
    被告人を懲役1年6月に処する。
    未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 A及びBと共謀のうえ,平成13年8月17日午前2時ころから同日午前3時ころまでの間,
和歌山県那賀郡a町b番地所在のC株式会社D線E駅2番線ホームにおいて,同社が所有し,同社D
支社支社長Fが管理する同日午前5時同駅発G駅行き普通列車(2両編成電車)に,その側面に縦約
2.3メートル,横約38.65メートルにわたって,そのフロントガラスに縦横約1.1メートル
にわたって,銀色,黒色及び白色などの塗料を吹き付け,前記D支社運転士Hらが行う前記列車の運
行を著しく困難にし,もって,前記列車を損壊(損害額143万1797円相当)するとともに,威
力を用い前記D支社の業務を妨害し,
第2 Aと共謀のうえ,同年10月25日午前2時ころから同日午前3時ころまでの間,前記E駅2
番線ホームにおいて,前同様の所有,管理にかかる同日午前5時同駅発G駅行き普通列車(2両編成
電車)に,その側面に縦約2.3メートル,横約28.3メートルにわたって,銀色,緑色及び黒色
などの塗料を吹き付け,前記D支社運転士Iらが行う前記列車の運行を著しく困難にし,もって,前
記列車を損壊(損害額138万5460円相当)するとともに,威力を用い前記D支社の業務を妨害

たものである。
(法令の適用等)
 被告人の判示各所為のうち,各器物損壊の点はいずれも刑法60条,261条に,各威力業務妨害
の点はいずれも同法60条,234条にそれぞれ該当するところ,これらはそれぞれ1個の行為が2
個の罪名に触れる場合であるから,同法54条1項前段,10条により1罪としていずれも犯情の重
い威力業務妨害罪の刑でそれぞれ処断することとし,各所定刑中いずれも懲役刑を選択し,以上は同
法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の重い判示第1の罪の刑に法
定の加重をした刑期の範囲内で,被告人を懲役1年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数
中90日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担
させないこととする。
(量刑の事情)
1 本件は,被告人が,2回にわたり,列車(2両編成電車)の一方の側面のほぼ全体に塗料を吹き
付けるなどしてその列車を損壊するとともにその列車の運行を著しく困難にしたという器物損壊及び
威力業務妨害の事案である。
2 被告人は,美術専門学校に通い出したころから,建造物等に落書きをするいわゆるグラフティラ
イターに興味を持ち,スプレーで塗料を吹き付けて文字等を書く行為(以下「落書き行為」という)
を繰り返すようになり,平成13年2月13日には,店舗の壁に落書き行為をした建造物損壊罪2件
により懲役10月(執行猶予3年)に処せられた。しかしながら,被告人は,そのわずか1か月後に
は落書き行為を再開し,前記執行猶予期間中であるにもかかわらず,単独であるいは知人とともに,
建造物や橋脚等への落書き行為を繰り返すようになり,これまでも列車の落書きに興味を持っていた
が,雑誌で列車の側面全体にわたり落書きされている写真と記事を見たことなどから,列車に落書き
することを計画し,共犯者を誘い,判示第1の犯行に及び,
それが満足のいく出来映えでなかったことから,共犯者とともにもう一度列車に落書きをすることと
し,判示第2の犯行に及んだものである。被告人は,自己の落書き行為によって被害者等が迷惑を被
ること,それが犯罪であることを十分承知のうえ,自己の欲望の赴くままに落書き行為を繰り返した
ものであり,その動機は極めて自己中心的であって酌量の余地はない。
  本件は,予めスプレーなどを用意し,深夜に警備が厳重でない場所を物色するなど,計画的かつ
大胆な犯行である。そして,被告人は,共犯者を誘うなど本件において主導的な役割を果たしてい
る。
  本件落書き行為は,公共性の高い列車を対象にし,しかも,2両編成電車の一方の側面のほぼ全
体にわたって塗料を吹き付けるという悪質なものであり,容易に消去することができないことから,
合計約281万円もの多額の損害を生じさせ,また,本件各列車の運行を中止せざるを得なかったこ
とから,乗降客に対し多大な影響を与えたのであり,さらには,列車運行業務に対する信頼を失わせ
るなどの影響も否定できないところであって,本件による結果は重大である。
3 以上のような本件の動機,態様,結果等に照らせば,本件は単純な落書きというようなものでは
なく,悪質な犯罪行為であり,被告人の刑事責任は軽視できない。したがって,被告人が,本件を反
省し,二度と同様の行為をしない旨誓っていること,本件による前記損害額については全額弁償され
ていることなど,被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,主文の刑はやむを得ないところで
ある。
平成14年7月8日
和歌山地方裁判所
裁判官   小  川  育  央

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