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平成20年6月10日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成20年(ワ)第2149号商標権に基づく差止請求権不存在確認等請求事件
口頭弁論終結日平成20年4月11日
判決
原告株式会社エコリカ
訴訟代理人弁護士溝上哲也
岩原義則
江村一宏
被告有限会社人と地球社
主文
1原告による別紙原告標章目録記載の標章を付したリサイクルボックス
を使用した使用済みプリンター用インクカートリッジの再生及び当該再
生を呼びかける別紙広告目録記載の広告につき,被告が,商標第473
0609号及び第4520130号の商標権に基づく差止請求権を有し
ないことを確認する。
2原告のその余の請求を棄却する。
3訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の,その余を被告の各負担と
する。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1請求の趣旨
(1)主文第1項と同旨
(2)被告は原告に対し,10万円及びこれに対する平成20年2月26日
(訴状送達の日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)訴訟費用は被告の負担とする。
(4)(2)につき仮執行宣言
2請求の趣旨に対する答弁
(1)原告の請求をいずれも棄却する。
(2)訴訟費用は原告の負担とする。
第2当事者の主張
1請求原因
(1)当事者
原告は,インクカートリッジのリサイクル事業を行っている株式会社であ
り,被告は,書籍の出版及びその販売等を目的とする有限会社である。
(2)差止請求権不存在確認について
ア被告の有する商標権
被告は,下記(ア),(イ)の商標権(以下,併せて「被告商標権」といい,
その登録商標を「被告商標」という。また,被告商標を各別に指称すると
きは,それぞれ「被告商標(ア)「被告商標(イ)」という)を有してい」。
る。
(ア)登録番号第4730609号
人と地球HITOTOCHIKYU
出願日平成13年10月2日
登録日平成15年12月5日
指定商品区分第16類
指定商品印刷物(書籍を除く)
(イ)登録番号第4520130号
人と地球(SP)HITO(SP)TO(SP)CHIKYU
出願日平成12年12月5日
登録日平成13年11月9日
指定商品区分第16類
指定商品雑誌,書籍,絵はがき,カレンダー
イ原告の行為
原告は,従来から「人と地球に貢献します」という文言を含む別紙原,
告標章目録記載の標章(以下「原告標章」という)を付したリサイクル。
ボックスを使用して,使用済みプリンター用インクカートリッジの再生を
行っており(甲3,4,平成19年9月3日,原告標章を用いて,上記)
再生を一般消費者に呼びかける目的の別紙広告目録記載の一面広告(以下
「本件一面広告」という)を朝日新聞に掲載した(甲5。。)
ウ被告の警告と原告の回答等
(ア)被告は,平成17年5月2日,原告に対し,ファックス文書により,
),被告商標権を侵害することのないように求める通知を行った上(甲6
同年11月23日,ファックス文書により「人と地球」の文字を含む,
インクカートリッジ等のリサイクルボックス(以下「本件リサイクルボ
ックス」という)を見たとして,被告商標権を侵害する旨の警告を行。
った(甲7。)
(イ)原告は,平成17年11月30日,被告に対し,内容証明郵便によ
り,被告商標と原告標章では文言も指定区分も異なるため,原告標章は
被告商標権を何ら侵害しておらず,被告の主張に根拠がないことを明確
に伝えたが(甲8,以降も,被告による根拠のない警告が繰り返され)
ていた(甲9ないし14。)
(ウ)被告は,平成19年9月4日,原告に対し,ファックス文書により,
本件一面広告について,原告標章に「人と地球」の文字が含まれており,
それが被告商標権を侵害すると主張して,6か月以内に原告標章を修正
するように請求した(甲15。)
(エ)原告は,被告に対し,平成19年10月1日付けの内容証明郵便に
より,原告標章は被告商標権を何ら侵害しておらず,かかる被告の要求
には根拠がないという原告の見解を伝えた上で,同月15日までに,被
告の主張を具体的根拠を示すか,さもなくば主張を撤回するように申し
)。伝え,同内容証明郵便は同月2日に被告に到達した(甲16の1・2
しかし,被告は,原告に対し,何ら回答を示さなかった。
(3)損害賠償請求について
ア被告の執拗な警告の繰返し
(ア)被告は,平成17年5月2日,原告に対し,原告が被告商標権を侵
害しないように求めるファックス文書を送信してきた(甲6。)
被告は,同年11月23日にも,原告に対し,ファックス文書により,
原告標章が表示された本件リサイクルボックスを見たとし,原告の商品
が粗悪品であると侮辱した上で,被告が粗悪品販売会社と提携があるよ
)。うに思われると困るとして,再度,商標権侵害を主張してきた(甲7
これに対し,原告は,同月30日,被告に対し,前記(2)ウ(イ)のと
おり,被告商標と原告標章とでは文言も指定区分も異なるため,被告の
商標権侵害の主張は根拠のないものであることを内容証明郵便により明
確に伝え,以降,原告に対して違法な侵害警告や信用毀損行為等をしな
いように警告した(甲8。)
(イ)原告の警告にもかかわらず,被告は,平成17年11月30日,原
告に対し,ファックス文書により,商標権侵害の具体的根拠を示さない
まま,今度は,原告の上記警告自体が不法行為であると主張してきた
(甲9。)
これに対し,原告は,同年12月6日,被告に対し,被告の主張の具
体的根拠を明らかにするように改めて伝え,被告の抽象的な主張の繰返
しが原告に対する営業妨害に当たる旨,再度,警告した(甲10。)
(ウ)しかし,被告は,平成17年12月6日,ファックス文書により,
前回同様の抽象的主張を繰り返した(甲11の1・2。それだけでな)
く,原告が文書は代理人事務所宛に送付するように伝えてあるにもかか
わらず,被告からのファックスは,直接原告本人に対し送付されている。
この点についての被告の言い分というのは,被告自身が作成し送付して
きた同年11月30日付けファックス文書の宛先表示が「株式会社エコ
リカ」ではなく「エコリカ株式会社」と誤っていたところ(甲9,同)
年12月6日にこれに対して原告代理人が回答したため,被告としては
原告代理人が「株式会社エコリカ」の代理人か「エコリカ株式会社」,
の代理人か不明である,というものであった(甲11の2。)
これに対し,原告は,平成17年12月13日,被告に対し,被告の
主張の具体的根拠を明らかにするか,主張を撤回するように催告した
(甲12。)
(エ)しかし,被告は,原告に対し,平成17年12月23日付け及び平
成18年12月6日付けファックス文書により,何ら具体的根拠を示さ
ないまま,抽象的な商標権侵害の主張を繰り返した(甲13,14。)
(オ)さらに,被告は,平成19年9月4日,原告に対し,ファックス文
書により,前記(2)ウ(ウ)のとおり,商標権侵害の警告をした(甲1
5。)
これに対し,原告は,被告に対し,平成19年10月1日付けの内容
証明郵便(同月2日に到達)により,前記(2)ウ(エ)のとおり,同月1
5日までに被告の主張の具体的根拠を示すか,さもなくば主張を撤回す
るように警告したが(甲16の1・2,被告は何ら回答を示さなかっ)
た。
イ原告の損害
以上のとおり,原告は,被告のためにも訴訟を回避すべく,再三,被告
に対する猶予を与え続けたにもかかわらず,被告の原告に対する度重なる
警告文書の送付により,原告は訴訟提起を余儀なくされた。このような被
告の行為は,原告に対する不法行為を構成する。
原告代表者,同取締役らは,知的財産訴訟に不慣れで必要な法律知識に
乏しく,被告の上記妨害行為をやめさせるには弁護士に委任せざるを得な
いことは明白であり,その弁護士費用の合計は,10万円を下らない。こ
れは,被告の上記不法行為によって生じた損害に当たる。
(4)結語
よって,原告は,原告による原告標章を付した本件リサイクルボックスを
使用した使用済みプリンター用インクカートリッジの再生及び当該再生を呼
びかける本件一面広告につき,被告が,被告商標権に基づく差止請求権を有
しないことの確認を求めるとともに,被告に対し,民法709条の不法行為
に基づく損害賠償金10万円及びこれに対する遅滞となった後であることが
明らかな訴状送達の日である平成20年2月26日から支払済みまで民法所
定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2請求原因に対する認否及び被告の主張
(1)原告の上記主張は争う。ただし,甲第6,第7,第9,第11号証の
1・2,第13号ないし第15号証が,被告が原告に対しファックス送信し
た文書であることは認める。
(2)被告が上記文書をファックス送信したのは,原告標章の中に,被告の社
名である「人と地球社」の「人と地球」という文字が含まれていて紛らわし
いので,原告が原告標章を使用することは好ましくないと考えたためである。
被告は,リサイクルに関して原告と全く反対の考えをもっており,安易にリ
サイクル運動をしないことを社是としている。原告が「人と地球」という文
字を含む原告標章を使用すると,原告を被告と誤認されてトラブルが発生す
る可能性があるので,上記文書を送付したのである。
ただし,原告標章が被告商標権を侵害するかどうか法的なことは被告には
わからないので,裁判所に判断してもらうべきだと考えている。
(3)その他の主張は,別紙答弁書記載のとおりである。
第3当裁判所の判断
1当事者について
請求原因(1)(当事者)の事実は,証拠(甲5)及び弁論の全趣旨によって
認められる。
2差止請求権不存在確認請求について
(1)請求原因(2)ア(被告の有する商標権)の事実は,証拠(甲1及び2の各
1・2)により,同イ(原告の行為)の事実は,証拠(甲3ないし5)及び
弁論の全趣旨により,それぞれ認められる。
(2)同ウ(被告の警告と原告の回答等)については,甲第6,第7,第9,
第11号証の1・2,第13ないし第15号証のファックス文書を被告が原
告に対し送付した事実は当事者間に争いがなく,この事実に,証拠(甲6な
いし16〔枝番を含む)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認〕
められる。
ア被告は,平成17年5月2日,原告に対し「当社(被告)は,貴社,
(原告)が当社商標を侵害することのないように求めます」と記載したフ
ァックス文書(甲6)を原告に送信し,次いで,同年11月23日,再度,
以下のとおり記載したファックス文書(甲7)を原告に送信した。すなわ
ち「当社(被告)は,2005年5月2日に,エコリカ株式会社へ貴社,
(原告)が当社の商標権を侵害することのないように伝達しました。本日,
ミドリ店にて『人と地球』の文字を含むインクカートリッジ等の貴社リ,
サイクルBOXを見ました『当社への商標権侵害』とは,当社が商標を。
使用するに妨害になる行為を含み,また,当社が粗悪品のリサイクル商品
を販売している業者と提携があるかのような誤解を生じせしめる表示であ
ります。当社は貴社の不法行為意思があるものと考えており,貴社の『人
と地球』なる文字を使用した印刷物等によっては,トラブルが起こるもの
と考えており,懸念しており」と。,
イ原告は,被告に対し,平成17年11月30日到達の「警告書」と題す
る内容証明郵便(甲8の1)により,原告標章は被告商標とは類似せず,
指定商品も異ることから,原告標章の使用は被告商標権を侵害していない
から,被告の商標権侵害の主張は,明確な法的根拠がないにもかかわらず
されているもので,これ自体不法行為による損害賠償等の法的責任が生ず
るものであって,今後このような違法な侵害警告や信用毀損行為等をしな
いよう警告する旨回答した。
これに対し,被告は,以下のとおりファックス文書を送信し続けた。
(ア)平成17年11月30日付けファックス文書(甲9)
上記ファックス文書(甲9)には,原告の上記内容証明郵便(甲8の
1)の「内容を検討しましたが,貴社(原告)は当社(被告)がFAX
にて言及していない内容にまで踏み込んでおり,…まったく当を得てい
ない内容であると当社は考えており,被告が上記ファックス文書(甲」
6,7)で「伝達したことは当然のことでありますので,当社としては
一切,貴社への不法行為責任が成立するとは考えていません。なお,当
社は貴社により,当社商標が使用できなくなった場合には,貴社の当社
への不法行為によるものであるとみなします」旨が記載されている。。
(イ)平成17年12月6日付けファックス文書(甲11の1・2)
上記(ア)のファックス文書(甲9)を受けて,原告訴訟代理人は,原
告代理人名義の「警告書」と題する平成17年12月6日付け書面に,
被告の主張は「法的根拠を欠く抽象的な主張の繰り返し」であり「そ,
れ自体,当社(原告)の営業妨害に該当しますので,その旨警告しま
す」と記載し,これを被告に送付したところ,被告がその返信として。
送信した上記ファックス文書(甲11の1・2)には「貴社(原告),
代理人の主張が当を得ているかどうかは裁判所が判断することであると
思います「当社(被告)は貴社代理人が当社に対して,同文書の内。」
容を伝達してくること自体が当社への不法行為ではないのか,と考えて
おり,公正なる裁判所の判断をあおぐ必要があります」と記載されて。
いる。
(ウ)平成17年12月23日付けファックス文書(甲13)
上記(イ)のファックス文書(甲11の1・2)に対し,原告訴訟代理
人は「貴社(被告)からは,未だに当社(原告)の行為が商標権侵害,
に該当することについて具体的な根拠を明示していただいていませんの
で,これを明示されるか,商標権侵害の主張を撤回されるか,回答され
るよう催告します」と記載した「通知書」と題する平成17年12月。
13日付け書面(甲12)を被告に送付したところ,被告は,上記甲第
11号証の1・2で伝達したような見解を有している旨記載したファッ
クス文書(甲13)を送付した。
(エ)平成18年12月6日付けファックス文書(甲14)
その後しばらく原告・被告間の連絡は途絶えたが,上記(ウ)のやり取
りから約1年を経過した上記ファックス文書(甲14)で,被告は,
「当社(被告)は貴社(原告)に対して,2005年12月6日にも,
当社商標を侵害しないように求める連絡をしました。当社商標の一般化
をさせる方法で,当社商標を使用できなくすることは当社への詐害行為
です」と記載して,原告に送信した。。
(オ)平成19年9月4日付けファックス文書(甲15)
さらに,上記(エ)のファックス文書(甲14)の送信をした後約9か
月を経過した上記ファックス文書(甲15)で,被告は「2007年,
9月3日朝日新聞掲載の御社(原告)広告(判決注・本件一面広告)を
見ました。人と地球なる文字を含む同広告に,A社のような広告を打つ
ことによる当社(被告)商標と混同を生じる可能性のあるA社みたいな
広告の文言中の人と地球を除去するか,出所の混同を生じた場合による
トラブルの除去をするための行為をすることによる当社のトラブルの経
費をA社みたいに御社に請求することになるので,6ヶ月以内に当社へ
自分のための商標であることを示し,出所の混同を除去するための商標
を検討の上,修正してください」と記載して,原告に送信した。。
これに対し,原告は,原告訴訟代理人名義の平成19年10月2日到
達の内容証明郵便(甲16の1)で,被告に対し,同月15日までに代
理人事務所宛に,今後同様の警告をしない旨を文書で回答するよう催告
し,上記期限までに回答をしないか,これまでと同様の対応を継続する
場合には,被告の主張が根拠がないことの確認と損害賠償を求めて訴訟
提起に及ばざるを得ない旨を記載して,被告に送付した。
これに対する被告の回答はなかった。
(3)上記(1),(2)の事実によれば,原告が,インクカートリッジ回収ボック
スに原告標章を表示し,また,本件一面広告に原告標章を表示したことにつ
いて,被告が,原告標章の上記態様での使用は被告商標権を侵害する旨を含
む主張を原告に対して行い,これを否定する原告との間で何回かファックス
文書等のやり取りがなされたものの,この点について原告・被告間で決着す
るには至らず,依然として被告の上記主張は維持されていることが認められ,
現に本件訴訟においても,商標権侵害の有無は裁判所によって判断されるべ
きである旨主張している。以上によれば,原告との間で原告標章の上記使用
が被告商標権を侵害するか否かについて原告と被告との間で争いがあるもの
と認められる。したがって,被告が原告に対し,被告商標権に基づく原告標
章の上記態様による使用の差止請求権を有するかを確定する法律上の利益
(確認の利益)がある。
(4)そこで,被告が原告に対し被告商標権に基づき,原告標章の上記態様で
の使用の差止請求権を有するか否かについて検討する。
被告が原告に対し上記差止請求権を有するというためには,被告商標の指
定商品と同一又は類似の商品に被告商標と同一又は類似の商標を付し,ある
いは,指定商品に関する広告に被告商品と同一の標章を付して展示するなど
したこと(商標法25条,2条3項,37条)について,被告に主張立証責
任があるところ,被告は,法的なことはよくわからないので裁判所の判断に
任せるとして,具体的な主張立証をしない。しかし,被告が被告商標権を有
すること,原告が原告標章を上記使用態様で使用しているという事実関係は,
本件口頭弁論に顕れているので,被告がこれを援用していないとしても,上
記事実を証拠に基づいて認定することは何ら妨げられないというべきである。
そこで,まず,指定商品の同一性又は類似性について検討する。被告商標
(ア)は第16類「印刷物(書籍を除く」を指定商品とし,被告商標(イ)は)
第16類「雑誌,書籍,絵はがき,カレンダー」を指定商品とするものであ
る。他方,原告標章は,本件リサイクルボックス及び本件一面広告に表示さ
れているものである。本件リサイクルボックスは,第16類「印刷物(書籍
を除く」や「雑誌,書籍,絵はがき,カレンダー」に当たらず,これに類)
似する商品でもないというべきである。また,証拠(甲5)及び弁論の全趣
旨によれば,本件一面広告は,リサイクルボックスを使用した使用済みプリ
ンター用インクカートリッジの再生を一般消費者に呼びかけることを目的と
して新聞に掲載されたものであって,原告の特定の商品に原告標章が付され
て広告宣伝がなされたものではない。したがって,上記いずれの使用態様に
おいても,原告標章が第16類「印刷物(書籍を除く「雑誌,書籍,絵)」
はがき,カレンダー」と同一又は類似の商品に付されたものとはいえない。
もっとも,本件リサイクルボックスを「印刷物」又はこれに類似する商品
と見得る余地が全くないわけではない。そこで,以下,原告標章と被告商標
との類否についても判断する。
被告商標(ア)は,標準文字で「人と地球HITOTOCHIKY
U」と書してなるものであり,被告商標(イ)は「人と地球(SP)HITO(S,
P)TO(SP)CHIKYU」と書してなるものであって,いずれも「ひととち
きゅう」との称呼を生じ「人と地球」すなわち,人間と地球との共生関係,
というような観念を生じさせるものである。
他方,原告標章は,木の幹を模した正方形状の略四角形の右上部に木の幹
から右上に伸びるように木の枝と葉を模した絵柄が描かれ,木の幹部分に横
書き手書き状の白抜き文字で2行にわたり「eco「rica」が縦に並」
列して記載され,その上部に「人と地球に貢献します」と丸ゴシック体で。
小さく横書きで書されていることが認められる。原告標章の上記使用態様に
よれば,被告標章の文字列を含む「人と地球に貢献します」なる部分は,。
原告標章の中でも比較的小さく表示され,しかも,環境保護のためにリサイ
クルを推進する原告の立場を表現する記述的表示というべきものであって,
それ自体は商品主体の識別力が高いものとはいえない。これに対し,原告の
社名でもある「eco「rica」と2行にわたり白抜きで比較的大きく」
表示された木の幹の部分の商品主体の識別力が相対的に高いと認められ,む
しろこの部分が原告標章の要部であると認められる。したがって,原告標章
は,その要部である「えこりか」との称呼を生じるものであり,被告商標と
は,外観,称呼,観念とも異なり,被告商標と類似するということはできな
い。
(5)そうすると,原告標章を上記使用態様で使用することは,被告商標権を
侵害するものではないというべきである。したがって,被告は原告に対し,
被告商標権に基づく原告標章の上記使用を差し止める権利を有しないことが
明らかである。被告のその余の主張を検討しても,上記判断を左右するもの
ではない。
3損害賠償請求について
(1)原告は,被告のためにも訴訟を回避すべく,再三,被告に対する猶予を
与え続けたにもかかわらず,被告の原告に対する度重なる警告文書の送付に
より訴訟提起を余儀なくされたのであって,被告のこのような行為は,原告
に対する不法行為を構成すると主張する。しかし,被告は,被告商標に関す
る商標権者なのであるから,被告商標権を侵害する者に対し,その差止めを
求める権利を有することは当然であり,被告による上記警告文書の送付自体
は,少なくとも外形上は被告商標権に基づく権利行使というべきものであっ
て,それ自体が直ちに権利行使を受けた者に対する不法行為を構成するとい
うことはできない。すなわち,権利行使の究極の形態ともいうべき訴えの提
起は,裁判を受ける権利(憲法32条)の保障の見地から,原則として正当
な権利行使として適法な行為とみるべきであって,提訴者が当該訴訟におい
て主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,同
人がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たの
にあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く
場合に限り,相手方に対する違法な行為となるものというべきである(最高
裁昭和60年(オ)第122号同昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集
42巻1号1頁。訴訟提起に至らない段階での権利主張においても,上記)
趣旨は十分尊重されなければならず,不正競争防止法2条1項14号の不正
競争行為(競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,
又は流布する行為)にわたるものでない限り,上記判断基準に即してその違
法性の有無を判断すべきである(本件においては,被告が上記不正競争行為
を行ったものではなく,原告もその旨の主張はしていない。。)
(2)そこで,本件における被告の行為の違法性の有無について検討する。上
記のとおり,被告は,被告商標に関する商標権者なのであるから,被告商標
権を侵害する者に対し,その差止めを求める権利を有するところ,一般に,
他人が,登録商標の一部を構成要素とする標章(結合標章)を商品又は役務
に使用等する場合,それが当該登録商標と同一又は類似するものであって,
その使用等が当該登録商標に係る商標権を侵害するものとして他人にその差
止めを求め得るか否かの判断は,上記2(4)で説示したとおり登録商標の一
部を主に商品主体識別機能を果たす要部と見得るか否かなど比較的高度な法
律知識を要するものといえる。本件における法的評価としては,上記2(4)
の説示のとおり,原告標章の使用等が被告商標権を侵害しないのであるが,
原告標章は「人と地球」の文言を含むものであって,商標法に関する知識,
に乏しい通常人がその部分だけをみれば,原告標章が被告商標を使用するも
のである,すなわち原告標章の上記態様での使用が被告商標権を侵害すると
みることも無理からぬところがあるというべきである。また,上記権利主張
(商標権侵害警告)を受けた原告も,原告標章の使用が被告商標権を侵害す
ることの主張立証責任が被告にあるとはいえ「原告標章は被告商標とは類,
似せず,指定商品も異なることから,原告標章の使用は被告商標権を侵害し
ていない」と,結論のみに等しいとも見える回答に終始しているところ,原
告は,法律専門家である弁護士を代理人として被告との交渉に当たらせてい
たのであるから,商標権侵害の意味を誤解している疑いが強い被告に対し,
原告標章の上記態様での使用が被告商標権を侵害するものではないことの具
体的な根拠を本判決が上記に説示した程度に具体的に説明しておくことも可
能であったと考えられる。そして,そのような対応をとっておれば,被告の
応答も異なっていた可能性があったことも否定できないというべきである。
また,被告は,原告標章の使用が被告商標権を侵害するとの主張のほかに,
被告の社名も「有限会社人と地球社」というものであり「人と地球」とい,
う文字列を含む原告標章が使用されると,原告が被告と混同されるおそれが
あるとの主張もしている。これは,必ずしも法律上確たる根拠を伴う主張と
はいい難いところもあるが,その趣旨自体は理解し得るものであり,それ自
体権利行使に藉口した不当な営業妨害行為と評価できるものではない。
その他,原告は,被告の警告行為は執拗である旨主張するが,上記認定の
とおり,被告の原告に対する警告行為は,平成17年中は4回に及んだもの
の,これは原告(訴訟代理人)との文書のやり取りの一環として行われたも
のであるし,その後はしばらく止み,同年中の最後の警告行為から1年近く
経過した平成18年12月6日に1回行われ,その次は,それからさらに約
9か月経過した平成19年9月に1回なされたのみである。その回数等から
すれば,被告の原告に対する警告行為が社会的相当性を逸脱するような執拗
さで行われたとはいえない。また,被告の上記警告の内容,態様も特に威迫
的なものではなく,比較的穏当というべきものである。その他本件に顕れた
一切の事情を考慮すると,被告の上記警告行為は,権利行使に藉口した社会
的相当性を逸脱する違法なものということはできず,原告にある程度の煩わ
しさを感じさせるものであったとしても,企業としての受忍限度の範囲内の
ものというべきであって,これをもって原告に対する民法709条の不法行
為を構成するということはできない。
(3)以上のとおり,被告に対し,弁護士費用相当の損害賠償を求める原告の
請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。
4結論
よって,原告の本件請求のうち,商標権に基づく差止請求権不存在確認を求
める請求は理由があるから認容し,不法行為に基づく損害賠償を求める請求は
理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官田中俊次
裁判官西理香
裁判官北岡裕章

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採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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