弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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            主     文
本件上告のうち,被上告人Bに対する損害賠償請求に係る訴えに関する部分を却下
し,その余の上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
            理     由
 第1 上告人兼上告代理人兼上告補助参加代理人河野聡,同佐川京子,上告代理
人兼上告補助参加代理人瀬戸久夫,同津留雅昭,同大神周一,同城台哲,同山本晴
太,同植竹和弘,同椛島裕之,同宮原哲朗,同中西一裕の上告理由第二点,上告人
A1の上告理由,上告人A2の上告理由,上告人A3の上告理由,上告人A4の上
告理由について
 1 憲法は,20条1項後段,3項,89条において,いわゆる政教分離の原則
に基づく諸規定(以下「政教分離規定」という。)を設けている。元来,政教分離
規定は,いわゆる制度的保障の規定であって,信教の自由そのものを直接保障する
ものではなく,国家と宗教との分離を制度として保障することにより,間接的に信
教の自由の保障を確保しようとするものである。そして,憲法の政教分離規定の基
礎となり,その解釈の指導原理となる政教分離原則は,国家が宗教的に中立である
ことを要求するものではあるが,国家が宗教とのかかわり合いを持つことを全く許
さないとするものではなく,宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果
にかんがみ,そのかかわり合いが,我が国の社会的,文化的諸条件に照らし,信教
の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるも
のと認められる場合にこれを許さないとするものであると解すべきである。
 このような政教分離原則の意義に照らすと,憲法20条3項にいう宗教的活動と
は,およそ国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いを持つすべての行為を指
すものではなく,そのかかわり合いが上記にいう相当とされる限度を超えるものに
限られるというべきであって,当該行為の目的が宗教的意義を持ち,その効果が宗
教に対する援助,助長,促進又は圧迫,干渉等になるような行為をいうものと解す
べきである。そして,ある行為が上記にいう宗教的活動に該当するかどうかを検討
するに当たっては,当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく,当該行為の
行われる場所,当該行為に対する一般人の宗教的評価,当該行為者が当該行為を行
うについての意図,目的及び宗教的意識の有無,程度,当該行為の一般人に与える
効果,影響等,諸般の事情を考慮し,社会通念に従って,客観的に判断しなければ
ならない(最高裁昭和46年(行ツ)第69号同52年7月13日大法廷判決・民
集31巻4号533頁,最高裁平成4年(行ツ)第156号同9年4月2日大法廷
判決・民集51巻4号1673頁等)。
 2 そこで,以上の見地に立って,本件について検討する。
 原審が適法に確定した事実関係によれば,主基Dの儀は,天皇が皇祖及び天神地
祇に対して安寧と五穀豊穣等を感謝するとともに国家や国民のために安寧と五穀豊
穣等を祈念する儀式である大嘗祭に関連して行われる諸儀式の一つであり,神殿等
が設置された斎場において,神道の儀式にのっとり一定の祭具を使用して行われた
というのであるから,大分県の知事,副知事及び農政部長である被上告人らがこれ
に参列した行為は,宗教とかかわり合いを持つものといわざるを得ない。
 しかしながら,原審が適法に確定した事実関係によれば,(1) 大嘗祭は,7世
紀以降,天皇の即位に当たり行われるようになった儀式であり,一時中断された時
期はあるものの,皇位継承の際に通常行われてきた皇室の重要な伝統儀式であると
ころ,主基Dの儀は,大嘗祭の中心的儀式である主基殿供饌の儀において使用され
る新穀を収穫するための儀式であり,大嘗祭の一部を構成する一連の儀式の一つと
して大嘗祭挙行の際に欠かさず行われてきたものであって,天皇の即位に伴う皇室
の伝統儀式としての性格を有するものである,(2) 被上告人らは,宮内庁から案
内を受け,地元の農業関係者等と共に主基Dの儀に参列して拝礼したにとどまる,
(3) 主基Dの儀への被上告人らの参列は,その開催地において重要な公職にある
者の社会的儀礼として,地元で開催される天皇の即位に伴う皇室の伝統儀式に際し
,日本国及び日本国民統合の象徴である天皇の即位に祝意,敬意を表する目的で行
われたものであるというのである。【要旨】これらの諸点にかんがみると,被上告
人らの主基Dの儀への参列の目的は,地元で開催される天皇の即位に伴う皇室の伝
統的儀式に際し,日本国及び日本国民統合の象徴である天皇に対する社会的儀礼を
尽くすというものであると認められ,その効果も,特定の宗教に対する援助,助長
,促進又は圧迫,干渉等になるようなものではないと認められる。したがって,被
上告人らの主基Dの儀への参列は,宗教とのかかわり合いの程度が我が国の社会的
,文化的諸条件に照らし,信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係
で相当とされる限度を超えるものとは認められず,憲法上の政教分離原則及びそれ
に基づく政教分離規定に違反するものではないと解するのが相当である。
 以上の点は,前掲大法廷判決の趣旨に徴して明らかというべきである。これと同
旨の原審の判断は,正当として是認することができ,論旨は採用することができな
い。
 第2 その余の上告理由について
 論旨は,理由の食違いをいうが,その実質は事実誤認を主張するものであって,
民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しない。
 第3 本件上告のうち被上告人Bに対する損害賠償請求に係る訴えに関する部分
については,上告人らは上告理由を記載した書面を提出しないから,これを不適法
として却下することとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
    最高裁判所第三小法廷
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田昌道 裁判官 上田
豊三)

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