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平成20年5月20日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成16年(ワ)第1091号損害賠償等請求事件(第1事件)
平成16年(ワ)第13231号著作権侵害差止等請求事件(第2事件)
平成18年(ワ)第6554号著作権侵害差止等請求事件(第3事件)
口頭弁論終結日平成20年2月21日
判決
第1事件原告・第2事件被告株式会社アールビィシィ
第2事件被告X1
第3事件被告X2
第3事件被告X3
第3事件被告X4
第3事件被告X5
第3事件被告X6
第3事件被告X7
第3事件被告X8
上記9名訴訟代理人弁護士山上和則
同繪川長昭
同森正博
同雨宮沙耶花
同井口敦
上記9名補佐人弁理士吉田稔
第1事件被告・第2事件原告・第3事件原告
株式会社ケイシィエス
第1事件被告Y1
上記2名訴訟代理人弁護士門間秀夫
同大東恭治
同辻本希世士
同田中崇公
上記2名補佐人弁理士窪田雅也
同上野康成
第3事件原告株式会社ケイシィエス補佐人弁理士
辻本一義
同神吉出
同森田拓生
【当事者名の略称】
以下,当事者名の表示を次のとおりとする。
1RBCら
第1事件原告・第2事件被告株式会社アールビィシィを「」という。RBC
第2事件被告X1を「,第3事件被告X2を「,同X3を「,X1X2X3」」」
同X4を「,同X5を「,同X6を「,同X7を「,同X8X4X5X6X7」」」」
を「」という。X8
X2ら7名X1X1ら8第3事件被告ら7名を併せて「,これにを併せて「」
」といい,とを併せて「」という。名RBCX1ら8名RBCら
2KCSら
」,第1事件被告・第2事件原告・第3事件原告株式会社ケイシィエスを「KCS
第1事件被告Y1を「」といい,両名を併せて「」という。Y1KCSら
主文
1は,に対し,連帯して220万円及びこれに対するは平成KCSらRBCKCS
16年2月6日から,は同月7日から,各支払済みまで年5分の割合による金Y1
員を支払え。
2は,それぞれ別紙1「謝罪文送付先目録」記載の者に対し,別紙2「謝KCSら
罪文」記載の謝罪文を内容証明郵便により送付せよ。
3の第1事件に係るその余の請求を棄却する。RBC
4の第2事件及び第3事件に係る請求をいずれも棄却する。KCS
5訴訟費用は,第1事件ないし第3事件を通じ,に生じた費用の10分の1RBC
をの負担とし,に生じた費用の10分の9と及びにRBCRBCX1ら8名KCS
生じた費用の全部をの負担とし,に生じた費用の全部をの負担とすKCSY1Y1
る。
6この判決の第1項は仮に執行することができる。
第1請求
1第1事件
(1)は,に対し,連帯して3741万7000円及びこれに対すKCSらRBC
るは平成16年2月6日から,は同月7日から,各支払済みまで年5KCSY1
分の割合による金員を支払え。
(2)は,それぞれ別紙1「謝罪文送付先目録」記載の者に対し,別紙2KCSら
「謝罪文」記載の謝罪文を内容証明郵便により送付せよ。
2第2事件
(1)及びは,が販売している「ミスターアドバンス「Mr.レRBCX1RBC」
ンタル「TeamS」と称するソフトウェア(以下「RBCソフト」と総称」,
する)を複製・頒布・翻案してはならない。。
(2)及びは,別紙3「営業秘密目録」(1)記載の開発方針(以下「本件RBCX1
開発方針」という)及び同(2)記載のプログラム作成に関する情報(以下「本件。
。,プログラム作成情報」という)を,RBCソフトの作成・製造・販売に使用し
又はこれを開示してはならない。
(3)及びは,RBCソフト,本件開発方針及び本件プログラム作成情RBCX1
報の記録された書類を廃棄し,電子的記録を削除せよ。
(4)及びは,に対し,連帯して1億円及びこれに対する平成1RBCX1KCS
6年11月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3第3事件
(1)は,が販売している「ミスターアドバンス「Mr.レンタX2ら7名RBC」
ル「TeamS「TeamD「TeamM「TeamV「Tea」」」」」
mF」と称するソフトウェア(以下,これらのソフトウェアを総称する場合
も上記2(1)で定義した場合と区別することなく「RBCソフト」という)を。
複製・頒布・翻案してはならない。
(2)は,別紙3「営業秘密目録」(1)記載の開発方針(本件開発方針)X2ら7名
及び別紙3「営業秘密目録」(3)記載のプログラム作成に関する情報(以下,同
情報を指称する場合も上記2(2)で定義した場合と区別することなく「本件プロ
グラム作成情報」という)を,RBCソフトの作成・製造・販売に使用し,又。
はこれを開示してはならない。
(3)は,RBCソフト,本件開発方針及び本件プログラム作成情報のX2ら7名
記録された書類を廃棄し,電子的記録を削除せよ。
(4)は,に対し,連帯して1億円及びこれに対する平成16年X2ら7名KCS
11月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1第1事件
が,に対し,以下のとおり主張し,(1)不正競争防止法4条又RBCKCSら
は民法709条に基づく損害賠償(第1事件の訴状送達の日の翌日から支払済みま
で民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む)を求めるとともに,(2)不。
正競争防止法14条に基づく信用回復の措置を求めた事案である。
(1)が別紙4記載の「御取引先各位」と題する文書(以下「本件文書1」KCS
という。甲1)及び別紙5記載のパンフレット(以下「本件文書2」という。甲
2)をとの競合取引先宛てに送付した行為及びが別紙6記載の「商標RBCY1
権侵害会社のお知らせ」と題する文書(以下「本件文書3」という。甲3の1)
をとの競合取引先等に宛てて送付した行為は,不正競争防止法2条1項1RBC
4号所定の不正競争又は民法709条の不法行為に該当する。
Y1KCSRBCR(2)及びの意を受けた従業員はとの競合取引先等に対して,
の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知した。及びの従業員のBCY1KCS
かかる行為は,不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争又は民法709条
の不法行為に該当する。
2第2事件
が,及びに対し,以下のとおり主張し,(1)著作権法112KCSRBCX1
条1項及び2項に基づき,RBCソフトの複製・頒布・翻案の差止め及び廃棄を求
め,(2)不正競争防止法3条1項及び2項に基づき,本件開発方針及び本件プロ
グラム作成情報の使用・開示の差止め及び廃棄を求め,(3)著作権侵害の不法行
為,不正競争防止法4条及び民法709条の不法行為に基づく損害賠償(第2事件
の訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
を含む)を求めた事案である。。
(1)著作権侵害
ア(に対し)RBC
(ア)(貸出君新版プログラムに対する著作権侵害)
RBCソフトのプログラム(Windows版〔以下「Win版」とい
う〕とビジネスサーバ版がある。以下,Win版とビジネスサーバ版を併。
せて「RBCプログラム」という)は,が開発したソフトウエア。KCS
「貸出君forwin廉価版」及び「貸出君ASP新版(以下,両者を併せて」
「貸出君新版」という)のプログラム(以下「貸出君新版プログラム」と。
いう)に対するの著作権(複製権ないし翻案権)を侵害する。。KCS
(イ)(貸出君プログラムに対する著作権侵害)
RBCプログラムは,が販売しているソフトウェア「貸出君(WKCS」
in版とビジネスサーバ版〔オフコン版,ASP版ともいう。以下「ビジネ
スサーバ版」又は「ASP版」という〕がある)のプログラム(以下「貸。。
出君プログラム」という)に対するの著作権(翻案権及び二次的著。KCS
作物の原著作物の著作者の権利)を侵害する。
(ウ)(貸出君forwin廉価版」の表示画面に対する著作権侵害)「
RBCプログラム(Win版)は「貸出君forwin廉価版」の表示画面,
に対するの著作権(複製権及び翻案権)を侵害する。KCS
(エ)(貸出君ASP新版」のプログラム及び貸出君プログラム(ASP版)「
の開発用書類に対する著作権侵害)
aRBCプログラム(ビジネスサーバ版)は「貸出君ASP新版」のプ,
ログラムの開発用書類(乙23)に対するの著作権(翻案権)を侵KCS
害する。
bRBCプログラム(ビジネスサーバ版)は,貸出君プログラム(ASP
版)の開発用書類(乙49,58)に対するの著作権(翻案権及びKCS
二次的著作物の原著作物の著作者の権利)を侵害する。
cRBCプログラム(ビジネスサーバ版)の開発用書類(甲20)は,
KC「貸出君ASP新版」のプログラムの開発用書類(乙23)に対する
の著作権(複製権及び翻案権)を侵害する。S
dRBCプログラム(ビジネスサーバ版)の開発用書類(甲20)は,貸
KC出君プログラム(ASP版)の開発用書類(乙49,58)に対する
の著作権(複製権及び翻案権)を侵害する。S
(オ)(貸出君forwin廉価版」及び貸出君プログラム(Win版)のオペ「
レーションマニュアルに対する著作権侵害)
aRBCプログラム(Win版)のオペレーションマニュアル(甲96)
は「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュアル(乙9)に対,
するの著作権(複製権ないし翻案権)を侵害する。KCS
bRBCプログラム(Win版)のオペレーションマニュアル(甲96)
は,貸出君プログラム(Win版)のオペレーションマニュアル(甲8
7)に対するの著作権(複製権ないし翻案権)を侵害する。KCS
イ(に対し)X1
は,の代表者として,上記アの著作権侵害を実行した。X1RBC
(2)不正競争
ア(に対し)X1
は,から示された本件開発方針及び本件プログラム作成情報を不X1KCS
正の競業その他の不正の利益を得る目的で又はに損害を加える目的で使KCS
用し開示した。
の上記行為は不正競争防止法2条1項7号の不正競争に該当する。X1
イ(に対し)RBC
は,不正開示行為であることを知って本件開発方針及び本件プログラRBC
ム作成情報を取得し使用した。
の上記行為は不正競争防止法2条1項8号の不正競争に該当する。RBC
(3)民法709条の不法行為
及びは,貸出君新版プログラム及び貸出君プログラム並びにこれらRBCX1
プログラムに係る表示画面,開発用書類,オペレーションマニュアル等の資料
(以下「貸出君関連成果物」と総称する)をデータその他の媒体で持ち出し,。
が10年以上かけて開発・改良してきたソフトウェア(以下「KCSソフKCS
ト」という)に適宜修正を加えることによって極めて短期間にRBCソフトを。
完成させ,これをの顧客に販売し利益を得ている。KCS
及びの上記行為は民法709条の不法行為に該当する。RBCX1
3第3事件
が,に対し,以下のとおり主張し,(1)著作権法112条1KCSX2ら7名
項及び2項に基づき,RBCソフトの複製・頒布・翻案の差止め及び廃棄を求め,
(2)不正競争防止法3条1項及び2項に基づき,本件開発方針及び本件プログラ
ム作成情報の使用・開示の差止め及び廃棄を求め,(3)著作権侵害の不法行為,
不正競争防止法4条及び民法709条の不法行為に基づく損害賠償(第2事件の訴
状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含
む)を求めた事案である。。
(1)著作権侵害
は,のために,共謀して,貸出君関連成果物を複製及び翻案X2ら7名RBC
して,RBCプログラム及びその関連成果物を作成した。
よって,は,による前記2(1)アの著作権侵害について共同X2ら7名RBC
して責任を負う。
(2)不正競争
は,から示された本件開発方針及び本件プログラム作成情報X2ら7名KCS
を不正の競業その他の不正の利益を得る目的で又はに損害を加える目的でKCS
使用し開示した。
の上記行為は不正競争防止法2条1項7号の不正競争に該当する。X2ら7名
(3)民法709条の不法行為
,,及びは,に対する各種背任行為に及んだ中心人物X2X3X4X5KCS
であり,貸出君関連成果物を持ち出してRBCプログラム及びその関連成果物を
作成し,RBCソフトとして販売し,の取引先を不正に奪うことを中心にKCS
なって共謀していた首謀者であり,,,,及びは,RBCX3X4X6X7X8
ソフトの開発行為に関わった者らである。
よって,は,による前記2(3)の不法行為について共同してX2ら7名RBC
責任を負う。
第3前提事実
次の事実は,末尾に証拠を掲記したものを除き,当事者間に争いがない。
1当事者
RBCら(1)
RBCア
は,建機等リース管理に関するコンピュータハード及びソフトの制RBC
作・販売を業とする会社であり,平成15年3月6日にの元従業員によKCS
って設立された。
X1ら8名イ
は,いずれもの元従業員である。X1ら8名KCS
(ア)は,から,平成15年3月31日,懲戒解雇の意思表示を受X1KCS
けた。
は,設立に伴い,その代表取締役に就任した。X1RBC
(イ)は,在籍当時,専務取締役の地位にあったが,平成14年1X2KCS
2月6日開催の株主総会において,取締役に再任されなかった。
は,設立に伴い,その相談役に就任した。X2RBC
(ウ)は,在籍当時,システム開発の責任者の地位にあったが,平X3KCS
成15年1月6日,を退職した。KCS
は,設立に伴い,その取締役に就任した。X3RBC
(エ)は,から,平成15年3月31日,懲戒解雇の意思表示を受X4KCS
けた。
は,設立に伴い,その取締役に就任した。X4RBC
(オ)は,から,平成15年3月31日,懲戒解雇の意思表示を受X5KCS
けた。
は,設立に伴い,その取締役に就任した。X5RBC
(カ)は,に対し,平成15年1月15日,退職届を提出した。X6KCS
(キ)は,に対し,平成15年1月20日,退職届を提出した。X7KCS
(ク)は,に対し,平成15年2月28日,退職届を提出した。X8KCS
KCSら(2)
KCSア
は,建機等リース管理に関するコンピュータハード及びソフトの制KCS
作・販売を業とする会社である。
Y1イ
は,の代表取締役であったY2の次男であり,平成14年9月2Y1KCS
0日開催のの臨時株主総会において,その取締役に選任され,以来今日KCS
までその地位にある。
2RBCソフト等
(1)RBCソフト
は,その設立後「Mr.Advance/ミスターアドバンス」の名RBC,
RB称で建機・仮設レンタル業向けのソフトウェアの販売を開始した。その後,
は,上記ソフトウェアの名称を「建機・仮設レンタルシステム」に変更し,更C
に「Mr.レンタル「TeamS」等に変更した。」,
(2)RBCプログラムのソースコード
ア甲第123ないし第125号証は,RBCプログラム(Win版)のソース
コードの一部である。
イ甲第128,第129号証は,RBCプログラム(ビジネスサーバ版)の
ソースコードの一部である。
(3)RBCプログラムの開発用書類
甲第20号証は,RBCプログラム(ビジネスサーバ版)の開発用書類の一部
である。
(4)RBCプログラムのオペレーションマニュアル
甲第96号証は,RBCプログラム(Win版)のオペレーションマニュアル
である。
3KCSソフト等
(1)KCSソフト
は,平成2年ころから「貸出君」の名称で建機・仮設レンタル業向けKCS,
のソフトウェアを販売している。
(2)KCSプログラムのソースコード
ア乙第76ないし第78号証は,貸出君プログラム(Win版)のソースコー
ドの一部である。
イ乙第81ないし第82号証(枝番を含む)は,貸出君プログラム(ASP。
版)のソースコードの一部である。
(3)KCSプログラムの開発用書類
乙第49,第58号証(枝番を含む)は,貸出君プログラム(ASP版)の。
開発用書類の一部である。
(4)KCSプログラムのオペレーションマニュアル
甲第87号証は,貸出君プログラム(Win版)のオペレーションマニュアル
である。
4の商標権KCS
(1)ミスターアドヴァンス商標
は,平成15年4月23日「ミスターアドヴァンス/MISTERKCS,
ADVANCE」の文字から成る商標(ミスターアドヴァンス」の文字列を横「
書きにして上段に配し「MISTERADVANCE」の文字列を横書きに,
して下段に配した商標)について,商標登録出願を行い,同商標は,平成15年
11月21日,商標登録された(登録された上記商標を,以下「本件登録商標」
という。なお,本件登録商標の「指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区
分」は,第9類,電子計算機用プログラムを記憶させたフロッピーディスク及び
コンパクトディスク,その他の電子応用機械器具及びその部品等である。。)
(2)貸出君商標
は「貸出君」の標準文字から成る商標の商標権者である。KCS,
5本件文書1の送付
は,平成15年3月29日,との競合取引先約350社に対し,本KCSRBC
件文書1(別紙4記載の「御取引先各位」と題する文書)を送付した。本件文書1
には,次の記載がある。
(1)「弊社が懲戒解雇した社員が独自に会社を設立し」
(2)「弊社権利を侵害している会社と取引されますと法的な差止請求される可能
性があります」
6本件文書2の送付
は,平成15年10月,との競合取引先多数に対し,本件文書2KCSRBC
(別紙5記載のパンフレット)を送付した。本件文書2には,次の記載がある。
(1)「ミスターアドヴァンスがさらにバージョンUPして《貸出君Person
al》遂にデビュー!!」
(2)「貸出君・ミスターアドヴァンスは,㈱ケイシィエスの登録商標または商標
です」。
7本件文書3の送付
は,平成15年12月4日,との競合取引先多数及びファイナンス会Y1RBC
社多数に対し,本件文書3(別紙6記載の「商標権侵害会社のお知らせ」と題する
文書)に,がに送付した警告文の写し(甲3の2・3,本件登録商KCSRBC)
標の商標登録証の写し(甲3の4)及び「貸出君」の商標登録証の写し(甲3の
5)を添付して,送付した。本件文書3には,次の記載がある。
(1)「貸出君『ミスターアドヴァンス』は,全国で500社近くのユーザ様(『』,)
でお使い頂いている」
(2)「貸出君『ミスターアドヴァンス』は弊社にて開発,販売を行っており,(『』,)
著作権を有し」
(3)「この建機・仮設資材レンタル業向けアプリケーションソフトウェアの商標
が下記会社に侵害されております」。
第4第1事件の争点
1本件文書1の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該当するか
(1)本件文書1の記載(1)(弊社が懲戒解雇した社員が独自に会社を設立し)の「」
虚偽性の有無
(2)本件文書1の記載(2)(弊社権利を侵害している会社と取引されますと法的「
な差止請求される可能性があります)の虚偽性の有無」
2本件文書2の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該当するか
(1)本件文書2の記載(1)(ミスターアドヴァンスがさらにバージョンUPして「
《貸出君Personal》遂にデビュー!!)の虚偽性の有無」
(2)本件文書2の記載(2)(貸出君・ミスターアドヴァンスは,㈱ケイシィエス「
の登録商標または商標です)の虚偽性の有無。」
3本件文書3の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該当するか
(1)本件文書3の記載(1)(貸出君『ミスターアドヴァンス』は,全国で5「(『』,)
00社近くのユーザ様でお使い頂いている)の虚偽性の有無」
(2)本件文書3の記載(2)(貸出君『ミスターアドヴァンス』は弊社にて開「(『』,)
発,販売を行っており,著作権を有し)の虚偽性の有無」
(3)本件文書3の記載(3)(この建機・仮設資材レンタル業向けアプリケーショ「
ンソフトウェアの商標が下記会社に侵害されております)の虚偽性の有無。」
4のリコーリースP2に対する発言は不正競争防止法2条1項14号所定の不Y1
正競争に該当するか
5従業員の中村建機P3に対する発言は不正競争防止法2条1項14号所定KCS
の不正競争に該当するか
6従業員の川嶋機械工業所P4に対する発言は不正競争防止法2条1項14KCS
号所定の不正競争に該当するか
7本件文書1ないし3の送付並びに前記4ないし6のらの発言は民法709条Y1
の不法行為を構成するか
8の被った損害の額RBC
9不正競争防止法14条所定の信用回復措置の要否
第5第2事件及び第3事件の争点
1RBCプログラムは貸出君新版プログラムに対するの著作権を侵害するかKCS
(そもそも貸出君新版プログラムはの著作物として存在するか。仮に存在すKCS
るとしてその内容はいかなるものか)
2RBCプログラムは貸出君プログラムに対するの著作権を侵害するかKCS
(1)貸出君プログラムの著作物性の有無
(2)貸出君プログラムに対する依拠性の有無
3RBCプログラム(Win版)は「貸出君forwin廉価版」の表示画面に対す
るの著作権を侵害するかKCS
(1)表示画面の著作物性の有無
(2)表示画面に対する依拠性の有無
4RBCプログラム(ビジネスサーバ版)及びその開発用書類(甲20)は「貸出
君ASP新版」の開発用書類及び貸出君プログラム(ASP版)の開発用書類(乙
49,58)に対するの著作権を侵害するかKCS
5RBCプログラム(Win版)のオペレーションマニュアル(甲96)は「貸出
君forwin廉価版」のオペレーションマニュアル及び貸出君プログラム(Win
版)のオペレーションマニュアル(甲87)に対するの著作権を侵害するかKCS
6本件開発方針及び本件プログラム作成情報について,は不正競争防止法RBCら
2条1項7号,8号所定の不正競争をしたか
(1)本件開発方針の営業秘密該当性の有無
(2)本件プログラム作成情報の営業秘密該当性の有無
(3)の不正競争行為の有無RBCら
7貸出君関連成果物を持ち出したことを理由とする民法709条の不法行為の成否
8の被った損害の額KCS
第6第1事件の争点に関する当事者の主張
1争点1(本件文書1の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該
当するか)の(1)〔本件文書1の記載(1)(弊社が懲戒解雇した社員が独自に会社「
を設立し)の虚偽性の有無〕について」
【の主張】RBC
本件文書1の記載(1)「弊社が懲戒解雇した社員が独自に会社を設立し」との記
載のうち,,及びを「弊社が懲戒解雇した社員」という点は,同人らX5X1X4
はいずれも平成15年3月5日にに退職届を提出しているから,同人らにつKCS
いては,同日から2週間を経過した平成15年3月20日には任意退職の効力が生
じており,による懲戒解雇は,意味をなさないので,本件文書1の記載(1)KCS
は,この点において虚偽である。
【の主張】KCSら
の従業員の一部は,平成14年8月ころから,専務取締役のを中心とKCSX2
X5X1X4KCSKして,,及びらが首謀者となって,の代表者であるY2から
の経営権を奪おうと企てた。これらの者は,経営権の奪取に失敗するや,新会CS
社()を設立し,がその相談役に就任したほか,が取締役,がRBCX2X5X1
代表取締役社長,が取締役に就任した。は,上記首謀者のうち,,X4KCSX5
及びの3名を平成15年3月31日付けで懲戒解雇した。X1X4
したがって,が,これら懲戒解雇された元従業員によって設立されRBCKCS
た会社であることは事実であるから,本件文書1の記載(1)は虚偽ではない。
2争点1(本件文書1の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該
当するか)の(2)〔本件文書1の記載(2)(弊社権利を侵害している会社と取引さ「
れますと法的な差止請求される可能性があります)の虚偽性の有無〕について」
【の主張】RBC
本件文書1の記載(2)中の「弊社権利を侵害している会社」の部分は,その前段
の「貸出君』は,弊社にて開発,販売を行っており弊社が著作権を所有し,商標『
登録しております」を受けて,受け手において「貸出君の著作権と商標権を侵害し
ている」との意味に受け取られる。RBC
しかし,本件文書1が送付された平成15年3月29日当時が「ミスターRBC
アドバンス」の商品名で販売していたソフトは「貸出君」とは全く異なる発想で,
が新たに開発したものであり「貸出君」に係るの著作権を侵害するRBCKCS,
ものではない。この点については,後記第7(第2事件及び第3事件の争点に関す
る当事者の主張)の1ないし5の【の主張】において詳述する。RBCら
また,が「ミスターアドヴァンス」について商標登録出願をしたのは平成KCS
15年4月23日であり,商標登録がされたのは同年11月21日であって,本件
文書1が送付された同年3月29日時点では未だ,は「ミスターアドヴァンKCS
ス」の商標権を有していなかった。
したがって,はの著作権及び商標権のいずれも侵害していないから,RBCKCS
本件文書1の記載(2)中の「弊社権利を侵害している会社」の部分は虚偽であり,
したがってまた「差止請求される可能性があります」の部分も虚偽である。,
【の主張】KCSら
(1)本件文書1が送付された当時は,の元従業員によってが設立さKCSRBC
れて間もない時期であり,ととを混同し,がの業務をKCSRBCRBCKCS
引き継いだのではないかと誤解する取引先が存在した。このような状況からすれ
KCSKCSRば,本件文書1の趣旨は,その受け手であるの取引先をして,と
BCKCSRBが別の会社であり「貸出君」は名実ともにのソフトであって,,
を含む他社のソフトではないことを確認させることに尽きるものである。C
したがって,本件文書1の記載(2)の意味は「とが無関係である,KCSRBC
こと「が引き続き『貸出君』の著作権及び商標権を有すること「貸出」」『KCS
KCS君』という商標を用いたソフトの販売や『貸出君』の複製・翻案等を行う
以外の会社と取引をすると,による差止等の対象になること」であると解KCS
釈されるところ,これらはすべて真実である。
(2)仮に,本件文書1の記載(2)の意味を主張のように解釈するとしても,RBC
は「貸出君」に係るの著作権及び商標権を侵害しているから,同記RBCKCS
載は真実である。著作権侵害の点については,後記第7(第2事件及び第3事件
の争点に関する当事者の主張)の1ないし5の【の主張】において詳述すKCS
る。
3争点2(本件文書2の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該
当するか)の(1)〔本件文書2の記載(1)(ミスターアドヴァンスがさらにバー「
ジョンUPして《貸出君Personal》遂にデビュー!!)の虚偽性の有」
無〕について
【の主張】RBC
は「ミスターアドヴァンス」の名称のソフトを自ら開発したり,販売しKCS,
たことはない。は,当時が「ミスターアドバンス」の商品名で販売KCSらRBC
KCSKCSKCしていたソフトはの元従業員が在職中に開発したものであるから
に著作権がある旨主張するが,その主張に理由がないことは,後記第7(第2事S
件及び第3事件の争点に関する当事者の主張)の1ないし5の【の主張】RBCら
のとおりである。また,が「ミスターアドヴァンス」をバージョンアップしKCS
たことがないことも,以上より明らかである。
そうすると「ミスターアドヴァンスがさらにバージョンUPして《貸出君Pe,
RBrsonal》遂にデビュー!!」との記載は,その受け手においては,当時
が「ミスターアドバンス」の商品名で販売していたソフトは古いものとなってしC
まっており,の新しい「貸出君」に変更されたと認識することになるが,こKCS
れは明らかに虚偽である。
【の主張】KCSら
争う。
4争点2(本件文書2の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該
当するか)の(2)〔本件文書2の記載(2)(貸出君・ミスターアドヴァンスは,㈱「
ケイシィエスの登録商標または商標です)の虚偽性の有無〕について。」
【の主張】RBC
は,自らは一度も使用したことのない商標である「ミスターアドヴァンKCS
ス」について,の未申請を奇貨として平成15年4月23日に商標登録出願RBC
した。その商標登録がされたのは同年11月21日であって,本件文書2が送付さ
れた同年10月時点では,未だは「ミスターアドヴァンス」の商標権を有しKCS
ていなかった。したがって「ミスターアドヴァンス」がの「登録商標また,KCS
は商標です」との記載は虚偽である。
【の主張】KCSら
本件文書2では「貸出君「ミスターアドヴァンス」の順に対応する形で,それ,」
らがの「登録商標「商標」であるというように,言葉が使い分けられていKCS」
る。したがって,本件文書2の記載(2)の意味は,は「貸出君」の商標を登KCS
録済みであり「ミスターアドヴァンス」については登録に至っていないというこ,
とになるが,本件文書2が送付された平成15年10月当時の状況は,まさにこの
ような状況であったから,本件文書2の記載(2)は真実である。
5争点3(本件文書3の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該
当するか)の(1)〔本件文書3の記載(1)(貸出君『ミスターアドヴァンス』「(『』,)
は,全国で500社近くのユーザ様でお使い頂いている)の虚偽性の有無〕につ」
いて
【の主張】RBC
「貸出君『ミスターアドヴァンス』は,全国で500社近くのユーザ様で(『』,)
お使い頂いているコンピュータソフトウェアです」との記載は,が「ミス。KCS
ターアドヴァンス」という名称のソフトウェアを販売し,その販売先500社がそ
れを使用している,と読み手が受け取ることは明らかである。しかし,はKCS
「ミスターアドヴァンス」という名称のソフトウェアを販売したことはないから,
本件文書3の記載(1)は虚偽である。
【の主張】KCSら
争う。
6争点3(本件文書3の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該
当するか)の(2)〔本件文書3の記載(2)(貸出君『ミスターアドヴァンス』「(『』,)
は弊社にて開発,販売を行っており,著作権を有し)の虚偽性の有無〕について」
【の主張】RBC
「ミスターアドヴァンス」をが開発,販売したという事実はない。また,KCS
「ミスターアドヴァンス」は,従業員が在籍中に開発したものでもなRBCKCS
い。したがって「ミスターアドヴァンス」をが開発,販売し,がそ,KCSKCS
の著作権を有するとの上記記載は虚偽である。
【の主張】KCSら
争う。
がRBCプログラムの著作権を有することは,後記第7(第2事件及び第KCS
3事件の争点に関する当事者の主張)の1ないし5の【の主張】のとおりでKCS
ある。
7争点3(本件文書3の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該
当するか)の(3)〔本件文書3の記載(3)(この建機・仮設資材レンタル業向けア「
プリケーションソフトウェアの商標が下記会社に侵害されております)の虚偽性。」
の有無〕について
【の主張】RBC
(1)は,本件文書2が出回っていることを知り,平成15年10月20日RBC
ころインターネットで調べたところ,が商標登録出願中であることが判明KCS
した。そこで,は,弁理士の指導を受けて,同年11月1日以降「ミスRBC,
ターアドヴァンス」の標章の使用を中止した。
(2)権利の濫用
仮に,が過失により「ミスターアドヴァンス」の標章を使用したことがRBC
あったとしても,は,がの商標権を侵害している旨の主張KCSらRBCKCS
をすることはできず,本件文書3の送付は違法行為となる。
RBCKCすなわち「ミスターアドヴァンス」というソフトは,の関係者が,
退職後の平成15年1月以降開発に着手した独自のものであって,が開SKCS
発,販売をしたものではなく,には,商標である「ミスターアドヴァンKCS
ス」がの商品であることの出所を示すべき商品そのものがない。がKCSKCS
平成15年4月23日に「ミスターアドヴァンス」の商標登録を申請したのは,
もっぱらが「ミスターアドヴァンス」という標章で建機リースソフトを販RBC
売することを妨害するためである。
ところで,商標法の立法趣旨は,一般需要者の信頼を保護するために商標の出
所識別機能を保護することにある。しかるに,は,による上記ソフKCSRBC
RBCトの販売開始からあまり日数を経過していない平成15年4月23日に,
が商標登録申請をしていないのを奇貨として,による販売活動の妨害だけRBC
を目的として商標登録を申請したのであり,による登録商標の取得は,商KCS
標の出所識別機能の保護を目的とする商標法の立法趣旨に著しく反するものであ
る。
したがって,がに対して「ミスターアドヴァンス」の使用を止めKCSRBC
るよう警告する行為そのものが権利の濫用であり,顧客に対して「商標権侵害会
社」などと流布する行為は,不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に該
当する。
(3)の主張に対する反論KCSら
アは,RBCプログラムの著作権はが有しており,本来「ミスKCSらKCS
ターアドヴァンス」の名称でソフトを販売することができたのもであるKCS
旨主張するが,はRBCプログラムの著作権を有していない。この点にKCS
ついては,後記第7(第2事件及び第3事件の争点に関する当事者の主張)の
1ないし5の【の主張】において詳述する。RBCら
イは,いわゆるポパイ事件判決(最高裁判所平成2年7月20日)及KCSら
びウィルスバスター事件判決(東京地方裁判所平成11年4月28日)の解釈
として,両判決は,商標の著名性に着目して権利濫用の法理を適用したもので
あるところ「ミスターアドヴァンス」は著名性がないから権利濫用の法理を,
適用できないと主張する。しかし,両判決が権利濫用の法理を適用したのは,
商標権を主張する者の権利行使が,主観的要素を加味してその行使方法に反社
会性があると認めたからである。したがって,の上記主張は理由がなKCSら
い。
【の主張】KCSら
(1)本件文書3では「商標権侵害会社のお知らせ」というタイトルのもとに,,
「商標権が侵害されている「商標権侵害の疑いがございましたら」という言葉」
を用いて商標権侵害に対する注意喚起が行われ,商標権侵害についての警告書と
商標登録証の各写し(甲3の2∼5)が添付されている。したがって,本件文書
3の趣旨は,その受け手をして,が有する商標権の内容を確認させ,商標KCS
権侵害を行うことのないように注意を喚起することにあるというべきである。ま
た,本件文書3で「この件について「その商標権侵害」として引用されている」
件の警告書(甲3の2)にはのパンフレット(乙3)が具体的に引用されRBC
ている一方,本件文書3には「が『貸出君』と『ミスターアドヴァンス』RBC
の双方の商標権侵害に及んでいる」などとは一言も記載されていないことからし
て,具体的に摘示されるの商標権侵害は「ミスターアドヴァンス」に対すRBC
るものである。したがって,本件文書3の趣旨は,が「貸出君」と「ミスKCS
ターアドヴァンス」の商標権を有することの確認と,による「ミスターアRBC
ドヴァンス」の使用に加わることのないようにするための注意喚起である。そし
て,本件文書3を送付した平成15年12月当時,は「ミスターアドヴァKCS
ンス」の商標権を有していた。よって,本件文書3の記載(3)は真実である。
(2)仮に,本件文書3の記載(3)の意味を主張のように解釈するとしても,RBC
は,が「ミスターアドヴァンス」の商標登録を受けた平成15年1RBCKCS
1月21日より後の同月26日に,朝日リース株式会社に対して「Mr.Adv
ance」の標章を付したシステムの提案書(乙21)を提示し,の商標KCS
権を侵害しているから,同記載は真実である。
(3)権利濫用の主張に対する反論
ア後記第7(第2事件及び第3事件の争点に関する当事者の主張)の1ないし
5の【の主張】のとおり,はRBCプログラムの著作権を有してKCSKCS
おり,本来「ミスターアドヴァンス」の名称でソフトを販売することができた
のもなのであって,が「ミスターアドヴァンス」の商標登録を受KCSKCS
け,その商標権に基づきに対して警告を行ったことは正当な権利行使でRBC
あって,権利の濫用には当たらない。
イいわゆるポパイ事件判決(最高裁判所平成2年7月20日)及びウィルスバ
KCスター事件判決(東京地方裁判所平成11年4月28日)に照らしても,
がに対して商標権侵害の警告を行ったことが権利の濫用とされる余地SRBC
はない。
すなわち,ポパイ事件判決は,商標権者が著名な名称にただ乗りして商標登
録を受けた場合に,当該商標についての権利行使が権利の濫用に当たるとした
ものである。これに対し,本件の場合は「ミスターアドヴァンス」の名称に,
よってが連想されるような状況にはなく,出願時において「ミスターアRBC
ドヴァンス」の著名性はなかった。
また,ウィルスバスター事件判決は,登録商標が商標としての機能を有して
いない状況で,著名になっている被告商標の使用に対して,原告商標権に基づ
いて権利行使を認めることは商標法の趣旨に反するとして権利の濫用に当たる
としたものである。これに対し,本件の場合は,が本来「ミスターアドKCS
ヴァンス」の名称でソフトを販売できたにもかかわらず従業員らによるRBC
プログラム等の持ち出しによりやむを得ず販売の延期を余儀なくされていたも
RBCKCのにすぎないし,また,の商標に著名性は全く認められないから,
が商標権に基づきに対して警告を行ったことが権利の濫用とされる余SRBC
地はない。
8争点4(のリコーリースP2に対する発言は不正競争防止法2条1項14号Y1
所定の不正競争に該当するか)について
【の主張】RBC
(1)発言内容
は,平成15年12月12日,リコーリース株式会社(以下「リコーリーY1
ス」という)名古屋支社を訪問し,同社のP2氏に電話で次のような事実を告。
RBげた。すなわち「株式会社日成工業所(以下「日成工業所」という)は,,。
のソフトが稼動できず機械が使用できる状態でないにもかかわらず,リース料C
金を支払っている。日成工業所は,がソフトウェア稼動に係るフォローをRBC
全く行っていないため,非常に立腹していた。そのようなことは至るところで発
生しており,ある客先では,リース会社と同行の上契約検収を行い,リース会社
が帰った後に機器を持ち帰りその後納品を行わないという詐欺のような販売を行
っている」と(甲6の2。。)
(2)虚偽性
日成工業所は,平成15年12月15日付けで,リコーリースに対し「同年,
3月にのシステムを導入し,10月に最後のテストを完了,11月から本RBC
稼動を始めた。今後も十分に活用することはもちろん,とも長いお付き合RBC
いをするつもり」との,に好意的な手紙(甲8)を出している。RBC
この手紙からも明らかなように,は,日成工業所で既に平成15年11月Y1
から稼動しているシステムについて,同年12月時点でまだソフトが稼動できず
機械が使用できる状態でないとの虚偽の事実,また,がソフトウェア稼動RBC
に係るフォローを全く行っていないとの虚偽の事実を述べたのである。
また,のソフトが稼動できず機械が使用できる状態でないということ,RBC
がソフトウェア稼動に係るフォローを全く行っていないことが至るところRBC
で発生しているとの点も虚偽である。
【の主張】KCSら
が平成15年12月12日にリコーリース名古屋支社を訪問し,同社のP2Y1
と電話で話をしたことは認め,その余は否認ないし争う。
日成工業所は,の元営業社員であるP5が平成15年3月20日に退職すKCS
KCSKCるまで頻繁に訪問していた企業であり,在職中にリコーリースに対し,
の商品に関し,日成工業所とのファイナンスリース契約の可否についての事前審S
KCSRB査依頼を行っていた経緯もあった。ところが,P5はその後を退職して
に入社し,その後日成工業所についてはリコーリースがの商品のファイナCRBC
Kンスリース契約を締結するに至った。一方,P5が乙第1号証に見られるように
在職中からの名前での取引先に見積書を提出していたこともわかCSRBCKCS
った。そこで,は,日成工業所のリース契約の事実関係を確かめるために平成Y1
15年12月12日リコーリース名古屋支社を訪問して同社与信グループリーダー
と面談の上,担当者のP2から宛てに電話をもらうよう依頼したところ,同日Y1
P2より電話があり「から『が事前審査依頼した物件とが日,,RBCKCSRBC
成工業所に納入するソフトとは全く別業務のソフトである』という説明を受けたの
で,問題なくファイナンスリース契約を締結した」旨の説明を受けた。。
9争点5(従業員の中村建機P3に対する発言は不正競争防止法2条1項1KCS
4号所定の不正競争に該当するか)について
【の主張】RBC
(1)発言内容
の営業担当社員P6は,平成16年1月6日,中村建機株式会社(以下KCS
「中村建機」という)のP3氏を訪問し,次の事実を告げた(甲9。。)
アのユーザーではトラブルばかりで,稼動しているところはまだない。RBC
特に広島の顧客は未だに稼動していない。
イが納入しているソフトは,にあった「貸出君」を持ち出し,修RBCKCS
正を加えて販売している。著作権はにあるので,今後使えなくなる。KCS
ウへ行った元社員は,退職時に書類などを持ち出していった。RBC
エのらが,在職中に中古機等のアルバイト的なことを行っていた。RBCX2
(2)虚偽性
上記(1)のアについては,前記8の日成工業所の件でもわかるとおり,平成1
6年1月6日現在のソフトは稼動中であり,稼動しているところがないとRBC
いうのは事実に反する(平成16年1月現在,広島における顧客は,長浜産業株
式会社(以下「長浜産業」という)1社のみであるが,同社はの対応に。RBC
満足している(甲10。)
上記(1)のイについては,のソフトが「貸出君」の著作権を侵害していRBC
ないこと,及びの従業員が在職中に作ったものでないことは,後記RBCKCS
R第7(第2事件及び第3事件の争点に関する当事者の主張)の1ないし5の【
の主張】のとおりである。BCら
上記(1)のウ及びエについては,による悪意に満ちた中傷であり,事KCSら
実無根である。
【の主張】KCSら
の営業担当社員P6が平成16年1月6日に中村建機を訪問し,P3社長KCS
と面談したことは認め,その余は否認ないし争う。
P6は,平成16年1月6日を含め数回同社を訪問しているが,あくまでユー
ザー企業への表敬とリプレイス商談推進を目的としたものであり,P3社長との面
談において主張の事実を述べた事実はない。RBC
10争点6(従業員の川嶋機械工業所P4に対する発言は不正競争防止法2KCS
条1項14号所定の不正競争に該当するか)について
【の主張】RBC
(1)発言内容
の従業員であるP7及びP6は,平成16年3月31日ころ,株式会社KCS
川嶋機械工業所(以下「川嶋機械工業所」という)を訪問し,同社のP4氏に。
,。対し「については社員がどんどん退職しており,人手不足の状態であるRBC
あの会社はいつまで続くかわからないのでメンテに問題がある。とは(取RBC
引を)止めておいた方がよい」との事実を告げた(甲11の1ないし3。。)
(2)虚偽性
では社員が大量に退職した事実はなく,また人手不足でもない。メンテRBC
ナンスも誠実に行っている。P7及びP6の上記発言内容は虚偽である。
【の主張】KCSら
(1)発言内容
の従業員であるP7及びP6が平成16年3月31日を含め3回川嶋機KCS
械工業所を訪問し,同社のP4専務と面談したことは認め,その余は否認ないし
争う。
両名の訪問は,ユーザー企業に対する表敬と商談を目的とするものであり,そ
の中でのシステム提案に関する話はしたが,他社の信用を害する発言はしKCS
ていない。
(2)虚偽性
で社員が大量に退職した事実はないとのの主張は,否認ないし争RBCRBC
う。
の調査によれば,に入社したの元従業員等26名中,14KCSRBCKCS
名が既に退職しており,大量退職の事実は明らかである。
11争点7(本件文書1ないし3の送付等は民法709条不法行為を構成するか)
について
【の主張】RBC
本件文書1ないし3の送付並びに前記8ないし10のらの発言は,のY1RBC
信用を毀損するものであり,不法行為に該当する。
【の主張】KCSら
争う。
12争点8(の被った損害の額)についてRBC
【の主張】RBC
(1)営業上の損害
アA社ないしC社との商談解消
による前記不正競争ないし不法行為により,は別紙7「損害KCSらRBC
一覧表」記載のとおり,A社ないしC社から合計2693万円の商談を解消さ
れた。このうちハード代金については1割5分が粗利,ソフトについては全額
がその粗利である。よって,その損害額は2541万7000円である。
イセンターリース及び友清商店との商談解消
上記アのA社ないしC社の会社名については,(特に)によるKCSらY1
営業妨害が続いている現在,これを明らかにすると,各社に思わぬ迷惑がかか
るため,これを明らかにすることはできない。そこで,これに代えて,次の2
社との商談解消による損害について主張する。これら2社との商談の解消問題
は,第1事件訴え提起時には未だ現実化していなかったが,その後のKCSら
営業妨害により,結局商談が解消されたものである。
(ア)売買契約締結
は,次のとおり,株式会社センターリース(以下「センターリーRBC
ス」という)及び株式会社友清商店(以下「友清商店」という)との間で,。。
コンピューターのいわゆるハードおよびソフトの売買契約を締結した(リー
ス契約を介するため,形式は賃貸借契約になっている。)
aセンターリース(甲93,94)
ハード代金92万円
ソフト代金210万円
契約締結日平成15年12月8日
納入予定日平成15年12月末日
リース会社尼信リース
b友清商店(甲95。なお,値引をした結果,ハード,ソフトの各代金の
割り振りは,次のとおりとしている)。
ハード代金50万円
ソフト代金240万円
契約締結日平成15年12月中旬ごろ
納入予定日平成15年12月20日
リース会社九州リース
(イ)契約解消
ところが,は,の取引先やリース(ファイナンス)会社にKCSらRBC
対し,本件文書3を送付したため,リース(ファイナンス)会社の中には,
との契約を拒むものが続出した。RBC
aセンターリースとの契約について
は,センターリースとの間で,平成15年12月に契約を締結し,RBC
リース会社を尼信リースとすることになっていた。そして,尼信リースは
に対して注文書(甲98)を発行するまでに進んでいた。しかるに,RBC
の営業妨害のため,尼信リースから解約を申し込まれるという事KCSら
態に至り,センターリースとの契約が白紙となった。
b友清商店との契約について
は,友清商店との間で,平成15年商談に入り,同年12月15RBC
日付けの見積書にて導入を決定するとの口頭での約束を取り付けた。そし
て,友清商店の顧問税理士の紹介で,九州リースにファイナンスを申し込
んでいた。しかるに,から営業妨害のための書類が送付されていKCSら
るとの理由で,最終的に友清商店との契約は白紙に戻されることになった。
(ウ)の損害RBC
上記各契約によって,が得べかりし粗利は,ハード代金についてはRBC
1割5分,ソフト代金についてはその全額であった。
したがって,はの前記不法行為により,少なくとも(上記RBCKCSら
アの損害が認められないとしても)471万3000円〔92万円+50(
万円)×0.15+(210万円+240万円〕の損害を被ったものであ)
る。
(2)無形損害
の前記不正競争ないし不法行為により,は,取引先からのこれKCSらRBC
に関する問合せが多数寄せられ,また多数の取引先及び多数のファイナンス会社
に釈明,善処を求めることに忙殺された。
これにより,の信用は大きく失墜することとなり,会社としての名誉もRBC
RBCK毀損されるばかりか,多大な業務遂行上の支障が生じたものであり,が
の不法行為により被った無形損害は1000万円を下らない。CSら
(3)弁護士費用
の不法行為により,は本件訴訟を提起せざるを得ず,その弁護KCSらRBC
士費用は200万円と見積もられる。
(4)の損害RBC
は,の前記不正競争ないし不法行為によって,上記(1)ないしRBCKCSら
(3)の合計3741万7000円の損害を被った。
【の主張】KCSら
否認ないし争う。
の主張(1)のイ(センターリース及び友清商店との商談解消)について,RBC
甲93ないし95によっても,の行為によってセンターリース及び友清商KCSら
店との契約が解消された事実は何ら立証されていない。
(1)センターリースとの契約(甲93,94)について
ファイナンスリース会社とファイナンスリース契約を行う場合,事前にファイ
ナンスリース会社において納入先に対する与信が可能か否かの与信審査を行い,
その結果について,与信審査結果書という書面で回答がなされる。しかるに,セ
ンターリースについては,見積書と約定書が提出されるのみで,上記の与信審査
結果書が提出されていないため,そもそもファイナンスリース会社の与信審査の
結果自体明らかでない。
また,仮にファイナンスリース会社が与信審査の結果,センターリースに対す
る与信を不可としたとしても,その理由がの行為によるものとはいえなKCSら
い。なぜなら,センターリースについては,が商談を行い,平成14年9KCS
月24日,株式会社日本ビジネスリースにリース審査を依頼した経緯がある(乙
27。それに対し,同社からは,同日,与信を不可とする回答がなされた(乙)
),28。この事実に照らせば,仮に,ファイナンスリース会社が与信審査の結果
センターリースに対する与信を不可としたことが事実だとしても,その理由は,
の行為によるものではなく,センターリース自体の信用不足その他別のKCSら
理由によるものと推認されるからである。
(2)友清商店との契約(甲95)について
友清商店については,単に見積書が提出されたのみで,与信関係の証拠書類は
KCSらRもちろん,約定書すら提出されていない。甲95は,の行為によって
が契約を解消された事実を証するものといえないことは明らかである。BC
13争点9(不正競争防止法14条所定の信用回復措置の要否)について
【の主張】RBC
の一連の不法行為は,虚偽の事実を通告・流布することにより,競争関KCSら
係にあるの営業活動を不当に妨害することを目的とした極めて悪質かつ違法RBC
性の強いものである。また,の行為によりの名誉・信用が著しく毀KCSらRBC
損されている。したがって,判決により謝罪文送付を強制することがの名誉RBC
を回復するために必要不可欠である。
【の主張】KCSら
争う。
第7第2事件及び第3事件の争点に関する当事者の主張
1争点1(RBCプログラムは貸出君新版プログラムに対するの著作権を侵KCS
害するか)について
【の主張】KCS
RBCプログラムは,が開発した貸出君新版プログラム(貸出君forwiKCS「
n廉価版」及び「貸出君ASP新版」のプログラム)をの関係者が持ち出し,RBC
これを複製ないし翻案して作成したものであり,貸出君新版プログラムの著作権
(複製権ないし翻案権)を侵害するものである。以下詳述する。
(1)設立前の準備行為RBC
ア貸出君新版の開発経緯
(ア)貸出君新版の開発に至る経緯
は,昭和54年に設立された後,種々のシステム開発・販売を主KCS
たる業務としてきたが,平成元年ころから,建機・仮設レンタル業用に特
化したシステム開発・販売を行うようになった。は,平成2年ころKCS
から,建機・仮設レンタル業用システムに「貸出君」というブランドを付
し,自社の主力商品として,営業活動を強化していった「貸出君」はAS。
P(オフコン)版で開発されたが,平成9年ころからWin版でも開発さ
れ,より多くの需要者を得るようになっていった。
具体的には,次のとおりである。なお,ASPとは,オフコンを稼動さ
せるために必要な富士通社製OSの商品名のことであり,社内ではKCS
オフコン版のことをASP版と呼んできたものである。
昭和63年ころ建機レンタル業用システムを開発(ASP版,建機・)
仮設レンタル業向けシステムを開発(ASP版)
平成2年ころ建機・仮設レンタル業向けシステムを「貸出君」と
ネーミングし,の主力商品として販売KCS
平成3年ころ「貸出君」システムの業種拡大を図りシステム開発
(ASP版)
平成5年ころ「貸出君」システムをリニューアルして開発(ASP
版)
平成9年ころ「貸出君」システムのWin版を開発
平成12年ころ「貸出君」ASP版をリニューアルして開発「貸出,
君」Win版をリニューアルして開発
平成13年ころ「貸出君」ASP版の拡充を図りシステム開発
平成14年ころ「貸出君」Win版廉価バージョンの開発に着手「貸,
出君」ASP版入力簡素化バージョンの開発に着手
(イ)貸出君新版の開発計画
は,第23期(平成13年9月∼平成14年8月)には,を課KCSX4
長とする開発課において「貸出君」のWin版廉価バージョン(貸出君fo,「
rwin廉価版)とASP版入力簡素化バージョン(貸出君ASP新版)の」「」
開発を計画し,順次これに着手した。
このことは,平成13年9月1日に(当時専務取締役)が作成X2KCS
した「第23期(上)を迎えて」と題する文書(乙5,同月8日に(当)X4
時開発課長)が作成したマル秘扱いの「23期上期開発部方針(乙6,平」)
成14年3月2日にが作成した「第23期(下)を迎えて」という文書X2
(乙7,同日が作成した「23期下期開発計画(乙8)の記載からも)」X4
明らかである。
すなわち,乙第5号証の2頁の「貸出君」の欄に「⑥ASP版のWeb
化」とあり,乙第6号証の「2.商品化計画」の⑥「ASPシステムのWe
b化」の欄に「画面の見映えを強化して行きます」と記載されているが,こ。
れが「貸出君ASP新版」に該当する。そして,乙第7号証の2頁に「AS
P版の入力画面の大幅変更」と書かれ,乙第8号証の「1.商品化計画」の
⑥にも「ASP貸出君の入力画面の変更」として「入出庫の画面を伝票形式
に対応し入力の簡素化及び画面イメージを良くする」と書かれていることか。
らも,ASP版を入力簡素化して商品化していく計画が立てられていたこと
は明らかである。
また「貸出君forwin廉価版」については,乙第5号証の2頁の「貸出,
君」の欄に「Win版廉価バージョン」を開発していくこと,乙第6号証の
「2.商品化計画」の欄にも,①に「貸出君forwin廉価版」のことが記載
されている。また,乙第6号証の3頁には「貸出君forwin廉価版」の開,
発計画まで記載されている。また,乙第7号証と乙第8号証にも「貸出君f,
orwin廉価版」の開発を引き続き進めていくことが記載されている。
そして,上記の開発計画については,Y2が客観的資料(乙5ないし乙
8)の記載と完全に一致した証言をしている。これに対し,は「貸出君X4,
forwin廉価版」につき,開発を引き続き進めていくことが記載されている
のにもかかわらず計画倒れになった旨証言し「貸出君ASP新版」につき,,
入力簡素化のことが記載されているにもかかわらず利用料金が廉価になる計
画であった旨証言しており,客観的事実に完全に反する証言をしている。
その後,Y2は「貸出君ASP新版」や「貸出君forwin廉価版」の開,
発状況を常に気にかけ,随時,に進捗状況を尋ねていたが,は,後X2X2
記イ(ア)のころから,同進捗状況を隠匿するようになっていった(乙51。)
イらによる不正な企てX2
(ア)設立準備行為RBC
は,平成14年ころからの経営権を不正に奪取しようと企てX2KCS
始め,平成14年7月に社内改善委員会なる組織をやに作らせるX3X5
などして,Y2やに対し理由もなく一方的に辞任を迫るようになったY1
(乙34ないし乙36,乙51。また,は,平成14年9月にHIK)X2
基金(,,の頭文字)という名前の基金を作り(乙31,同X5X2X3)
月11日にを退職したP8を代表者にし,有限会社エムエスシィなKCS
る会社を設立して(乙32,設立資金の受け皿とし,の従業)RBCKCS
員に対して上記基金等にできるだけ多額の出資をするよう促すとともに,
本来であればが取得するはずの代金を横領することにより,着々とKCS
資金集めを進めていった(乙34ないし乙36,乙51。さらに,ら)X2
は,なるべく大量の従業員をに移籍させてを倒産に追い込むRBCKCS
べく,2週間に1度の割合で秘密裏にミーティングを重ねた(乙34ない
し乙36。)
Y2やにも,らの動きは明らかに不審に映ったため,は,Y1X2X2
平成14年12月6日の株主総会では取締役に選任されず,を退社KCS
することになった(乙51。)
,なお,は上記のような準備行為の事実を否定しようと試みるがRBCら
らは,対外的にも「専務と共に新たな出発を開始します「数十X2X2,」
人の社員が出資する予定です」などと記載した文書を平然と配布しており
(甲108,もはや疑う余地はない。さらに,は,退職後にミスター)X3
アドバンスの開発を1人で始めた旨証言するが,開発に加わる者の人数や
コンピュータ開発における専門分野につき全く不透明な状態で,1人で開
発を始めるなど一見して虚偽であることは明白である。
(イ)ミスターアドバンスの開発
a開発当初の状況とネーミング
らは,設立後に販売するソフト(貸出君ASP新版」やX2RBC「
「貸出君forwin廉価版」として開発が予定されていたソフト)の開発
についても着々と準備を進めており,実際の作業はが課長を務めてX4
いた開発課を中心に行われた。
,当時のの組織構成は乙第68号証の組織図記載のとおりでありKCS
「貸出君ASP新版」の開発担当は及びなどで「貸出君forwX4X3,
in廉価版」の開発担当は及びP9などであった。X4
KCSR当時開発に従事していた従業員はほとんど全員がを退職して
に移籍してしまい(乙68,成果物もほとんどが持ち去られてしまBC)
ったために,の社内に残る資料はごくわずかである。それでも,KCS
社内において開発が順調に進められていたこと,開発中にすでにKCS
「ミスターアドバンス」という名前が決定していたことは,たとえばP
10(当時システム部課長補佐。以下「P10補佐」という)が明確に。
説明するとおりである(乙63。)
すなわち,P10補佐は,平成14年11月23日に行われたミーテ
ィングで,から新しいソフトウェアの名前が「ミスターアドバンX2
ス」であるとの説明を受けたものであるし,平成15年1月11日に行
われたミーティングでは,から,新ソフトのエントリー画面の開発X4
はほぼ終了したとの説明を受けた。
なお「ミスターアドバンス」という名称がどんなに遅くとも平成1,
5年1月10日までに決定されていたことは,が提出したプロRBCら
グラム定義書(甲20の5。によれば作成日付「平成15年1RBCら
月10日)のユーザー名欄に「Mr.Advance」と明記されているとおり」
であって,これに反するの主張は自らが提出する証拠の記載とRBCら
も完全な齟齬を来たしている。
bオペレーションマニュアル(乙9)の作成
(a)らは,平成15年1月ころまでに「貸出君forWin廉価版」X4
K及び「貸出君ASP新版」の両バージョンの開発をほぼ完成させ,
のインストラクター職の地位にあったP11(以下「P11」とCS
いう)に対し「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュア。,
ルを2週間程度でとりあえず作成するよう指示した。これを受けて,
P11は,平成15年1月22日から同年2月7日にかけて,開発済
みの「貸出君forwin廉価版」のシステムを実際に稼動させながら,
の指示どおりに,同システムのマスタの一部と稼動・販売・問いX4
合わせの部分のオペレーションマニュアル(乙9の1の1,乙9の2
の1,乙9の3の1,乙9の4の1。以下,これらを総称して「乙第
9号証」又は「乙9」という)を作成し,KOサーバーの中の「業務。
課「インスト「マニュアル「forwin」というフォルダに」」」
「とりあえず○○」というファイル名で保存した。
(b)は,乙第9号証は偽造されたものであると主張するが,RBCら
その作成経緯はP11が当時の経験をありのまま証言するとおりであ
って,その証言態度はきわめて素直で自然であり,またその証言の内
容も事実に即しているからこその具体性を備えている上,不自然な点
もなく,他の証拠とも符合している。
は,が本件訴訟のために乙第10号証を作成したRBCらKCSら
と主張し,その根拠として甲第29号証を提出する。しかし,乙第1
0号証は,の記録に残っていたものをそのままプリントアウトKCS
したものである。むしろ,甲第29号証こそ,による持ち出RBCら
しの事実を裏付ける証拠である。すなわち,甲第29号証は,乙第1
0号証の更新日時だけでなくサイズまで全て同一であるが,通常,両
,号証のような規模の文書を作った場合,文書自体をコピーしない限り
RBCらサイズ(バイト数)まで全く同じ文書はできない。つまり,
は,P11が作成したオペレーションマニュアル(乙9)をデータの
形で持っていてそれをコピーしたからこそ,甲第29号証のようにサ
イズまで全く同じ文書(のプロパティ)を作成することができたので
ある。なお,乙第10号証のフォルダ名は,が今回の訴訟用にY1
「貸出君forwin新版マニュアル」という名前を付けて保存したもので
ある。
さらに,P11の作業日報(乙54の1∼12)も,同人がオペ
レーションマニュアルの作成に携わっていたことを示している。この
作業日報も当時作成されたものである。なお,上司の確認印が押印さ
れていないが,では,作業日報提出後に上司の確認印をもらうKCS
という手順は踏まれていなかったため,何ら不自然なものではない。
このことは側のも認めるところである。RBCらX6
(c)また,は,P11が入社後1年も経っていないことを理RBCら
由にオペレーションマニュアルを作成する能力がなかったなどとも主
張するが,マニュアルの改訂作業は,旧マニュアルを参照しながら,
新しい画面の内容や動きをチェックしながら適宜項目を追加したり入
力内容の説明を行ったりという修正を加えていくものであり,P11
でも十分可能な作業である。実際,P11は,平成14年10月中旬
から同年12月中旬にかけて,P30係長と2人で貸出君ASP版の
マニュアル改訂作業を行った経験もあった「貸出君forWin廉価。
版」のオペレーションマニュアルについても,P11は,わからない
ことについては開発課のP12やP13に聞きながら作成作業に当た
ったものであって,作成能力に何ら問題はない。
(ウ)各種資料等の持ち出し
a各種資料の持ち出し及びの対応KCS
は,平成15年3月6日に,の営業所が存在するビルの管Y1KCS
理人から,従業員がの書類等を大量に持ち出しており,とKCSKCS
りわけ,においては,休日に届出もせずに出社して大量の資料を持X4
ち出していた,との報告を受けた。そこで,において調査したとKCS
ころ,が管理しているはずの「貸出君forwin廉価版」と「貸出君X4
ASP新版」の成果物が存在せず,その他(当時営業部長)が管理X5
しているはずの顧客名簿・契約書・顧客に納入した各システムの仕様書
等営業秘密に関する重要書類も全て持ち出されていることが判明した。
そこで,は,同日に朝礼を開き,全従業員に対しての書類Y1KCS
等を持ち出した社員がいることを伝えた。そうしたところ,P14(当
時係長。以下「P14係長」という)が平成11年8月以前の注文書控。
えや平成13年9月以前の営業月報等を持ち出したとして,P14係長
とがこれらの書類のみを返却したが,最も重要な「貸出君forwinX5
廉価版」と「貸出君ASP新版」の成果物や直近の顧客名簿等の資料の
返却はなかった。このため,は,大阪府警東警察署に被害届を提KCS
出して同署の捜査に委ねることとしたところ,同署からP14係長に対
して任意出頭するよう要請があり,同人に対する取調べまで行われた。
以上の事実は,において,盗難届(乙37の1)の日付とも完全Y1
に一致した具体的かつ詳細な供述をしていることから,もはや疑いの余
地はない。
bドキュメントのコピー
さらなる調査で,平成15年1月,がP11にの取引先数X1KCS
社に関するプログラム仕様書,ファイル仕様書,議事録などのドキュメ
ントのコピーを指示して持ち出し,業務課のフォルダ内のマニュアル全
部,ソフト見積書その他社内資料のコピーを指示していたことが判明し
た。これらの事実はP11が明確に証言し,同人の作業日報(乙53の
1ないし3)にも記録が残っているとおりである。
さらに,はP10補佐に対し,平成14年9月ころから,同人がX2
担当していた全取引先のドキュメントファイルをコピーするよう指示し
(乙34の4頁,着々との資料収集を進めていた。)KCS
cK6900のへの持ち込みRBC
で貸出君の開発に使用されていた富士通製オフコン「K690KCS
X4RBC0(以下「K6900」という)を,が,KIT社(現在」。
の協力会社)に返還しなければならなくなったとの虚偽の説明を弄して
(乙60)からレンタカーで持ち出して宅に運び込み,そのKCSX2
後に運び込んで使用していたことは,P15(以下「P15」とRBC
いう,P10補佐,P16,P17,P18らが陳述書で明確に説明。)
X6X2するとおりである(乙62,63,65ないし67。ですら同)
。宅からにコンピュータを運んだ事実自体は認める証言をしているRBC
実際,当時が使用したレンタカーの走行距離は52kmに上ってX4
KCSおり(乙61の1,KIT社(当時大阪市北区(省略)所在)と)
(当時大阪市中央区(省略)所在)との往復距離とは符合しない。実際
,にはKIT社ではなくの自宅車庫に運び込んだからである。この点X2
X4KはKIT社ではなく尼崎辺りの倉庫に持ち込んだ旨証言するが,
がレンタカーの走行距離の不自然さを指摘したことから何とか辻CSら
褄を合わせようと思いついた虚偽の説明にすぎない。
(2)持ち出された成果物等とミスターアドバンスの一致
以上のとおりの経緯で,は,社内から貸出君関連の成果物等RBCらKCS
KCSを各種の媒体で持ち出し,ミスターアドバンスとして完成させた上で,
の取引先に対して営業活動を行うようになったものであるが,貸出君関連の成
果物等とミスターアドバンスが一致していることの主な根拠として,次の各点
を改めて確認しておく。
ア「ミスターアドバンス」のパンフレットの記載事項が「貸出君forwin廉
価版」のオペレーションマニュアルの記載事項と一致すること
社内には「貸出君forwin廉価版」についてはそのオペレーションKCS
マニュアル(乙9)がかろうじて存在するが,が発行した「ミスターRBC
アドバンス」のパンフレット(乙3,乙11の2)に記載されている各種図
表・説明の多くは,同マニュアルに記載されている事項と一致する(乙11
の1。とりわけ「貸出君forwin廉価版」の最大の特徴は,従前は別にな),
っていた入庫画面と出庫画面の統一化であり,このことはが打ち出したX4
方針であるところ(乙6「ミスターアドバンス」のパンフレットでも「入),
出庫が同一画面で登録可能」として強調されている(乙3・乙11の2頁中
段左,乙11の1。)
イ「ミスターアドバンス」の仕様書が「貸出君ASP新版」の仕様書と同一
内容であること
「ミスターアドバンス」の仕様書(甲20)は社内に残る「貸出君KCS
ASP新版」の仕様書(乙23)と同一内容であることが本件審理の中で明
らかとなった。
既に説明したとおり,平成15年3月までに「貸出君forwin廉価版」と
「貸出君ASP新版」の成果物その他顧客名簿・契約書・顧客に納入した各
システムの仕様書等営業秘密に関する重要書類のほとんどがの元従業KCS
員によって持ち出されてしまったが,わずかに残る資料の中で,の福KCS
岡営業所のパソコンに残存していたのが,乙第23号証の仕様書(現場マス
タメンテナンス)である。
乙第23号証は,当時の福岡営業所に勤務していたP19(以下KCS
「P19」という)が平成15年1月以前に発見し,に報告したもので。Y1
あるが(乙48,この乙第23号証と甲第20号証を比較すれば,両者が同)
一のシステムの仕様書であることは誰の目にも明らかである。
たとえば,甲第20号証の16・17として提出されている取引先マスタ
のファイル仕様と乙第23号証の7枚目及び8枚目として提出されている取
引先マスタのファイル仕様書とを比較対照すれば,直ちに両者が書式はもち
ろん,項目名,形式,桁数,バイト数,桁位置に至るまで全くの同一内容で
あることがわかるからである。
がこれまで頑なに主張してきたように,平成15年1月以降「ミRBCら
スターアドバンス」を独自に開発したというのであれば,のパソコンKCS
に,が甲第20号証として提出する「ミスターアドバンス」の仕様RBCら
書(得意先マスタメンテナンス)と同一内容の仕様書(現場マスタメンテナ
ンス)が残っているはずがない。が,において開発された成果RBCKCS
KCSRBCら物をそのまま利用したからこそ,の保有する乙第23号証と
が提出する甲第20号証とが同一の内容なのである。
他にも,たとえば乙第23号証の8枚目の左上部「ファイル名取引先マス
タ」の右の「1/2」という表示は,7枚目から続く取引先マスタ2枚中の2
枚目であるので,本来「2/2」と表示すべきものの誤記である。そして,甲
第20号証の17においても全く同様の誤記がなされている(正しい表示がな
されているものとして,たとえば甲21の19と20参照。両者が同一のも)
のであり,がにおいて開発された成果物をそのまま利用しているRBCKCS
からこそ,両者は誤記に至るまで共通しているのである。
は,乙第23号証は,がを退職した後の平成15年2RBCらX6KCS
月下旬から3月下旬の間に,福岡営業所のP20に送付したものだというが
(甲92,先にも述べたとおりP19は平成15年1月には乙第23号証を)
発見しており,の主張は虚偽である。RBCら
そもそも,平成15年1月以降に,とは一切関係なく「一から」開KCS
発したというミスターアドバンスの開発作業を,の従業員であるP2KCS
0に依頼すること自体矛盾している。しかも,によれば,ミスターRBCら
アドバンスの開発にあたっては,特にの貸出君の権利侵害とならないKCS
よう注意していたというのであるから,そのような細心の注意を払っていた
というが,の従業員に対し,かつの福岡営業所のパソRBCらKCSKCS
コン宛てに開発資料を送るなどということはあり得ないことである。
が何らの疑問も感じることなくの従業員であるP20に対し,X6KCS
かつの所有物であるパソコン宛てに乙第23号証を送付したのは,そKCS
れが「の開発資料」ではなく,で開発中のソフトウェアの開発RBCKCS
資料だったからにほかならない。
ちなみに,乙第23号証は新規開発を指示する仕様書ではなく,開発済み
のプログラムに対する修正を指示する仕様書であるから,乙第23号証の作
成以前にその元となった新規開発を指示する仕様書が作成されプログラムが
開発されていたはずであり,においても乙第23号証の送信日が平RBCら
成15年2月から3月であったと主張し(平成16年9月9日付準備書面(4)
9頁,もこれに沿う証言をする。しかしながら,甲第116号証(ビジ)X6
ネスサーバ版プログラム履歴リスト)の22には,は現場マスタメンRBC
テナンスのプログラム開発を2003年4月11日に着手した旨記載されて
おり(担当者はP20,自らの主張及び証人の証言と証拠の整合性すら全く)
とれていない。
(3)の弁解が不合理であることRBCら
アプログラムの数
(ア)プログラム数に関する主張立証に矛盾があること
は,裁判所からの指示に反し,明らかに虚偽の弁解を繰り返しRBCら
つつ,Win版及びビジネスサーバ版の双方につき,大半のプログラム及
びその作成経過を提出しておらず,とりわけ,ビジネスサーバ版のプログ
ラムについては,平成16年6月14日の段階で作成されているもののみ
で214本存在すると陳述した上に(甲13,は平成17年12月1)X3
5日の時点でもその事実は正しい旨の証言をしているにもかかわらず,改
めて作成履歴等の提出を求められるやいなや一転して30数本しか存在し
ないなどと強弁し始めており(甲115,もはや主張整理の結果として,)
RBCソフトのうち自らが作成したプログラムは僅かであり,残りの大半
はのプログラムを流用したことが明らかになっている。KCS
(イ)甲第115号証及び甲第117号証のプログラム一覧は一部にすぎな
いこと
aASP版プログラム
KCSRBCR別紙8「13準・別表1」は,代表者自らが説明した
のASP版プログラム一覧(甲13)と,がようやく提出BCRBCら
するに至ったプログラム一覧(甲115の1及び2)の比較表である。
甲第13号証のプログラム一覧においてマスキングのために項目名が
明らかでない部分を除いた合計162本のうち,実に125本のプログ
ラムは甲第115号証の1・2のプログラム一覧には記載がない(甲1
3のプログラム一覧でマスキングされている部分を含めると,さらに1
00本前後のプログラムにつき甲115の1・2のプログラム一覧には
記載がないことになる。は,少なくとも,上記125本のプ。)RBCら
ログラムについては,自らが作成したものではないことを自認している
のである。なお,甲第115号証の1・2において記載があり甲第13
号証においては記載の有無が明らかでない14本のプログラムは,恐ら
く甲第13号証においてマスキングされているプログラムの一部である
と推定される。
もっとも,かかる詳細な分析なくしても,甲第13号証のプログラム
一覧と甲第115号証の1・2のプログラム一覧を見れば,がRBCら
今般提出してきたプログラムがごく一部にすぎないことは,一目瞭然で
ある。
また,真に甲第115号証の1・2のプログラムしか存在しないとい
うのであれば,が販売しているソフトは,受注入力も,引取入力RBC
も,商品移動入力も,その他別紙8(別表1)で×印が付された機能は
全て存在しない,全く無価値なソフトを販売し続けていることになる。
かかる観点からも,の説明は,客観的に,誰がどう見ても,明RBCら
らかに虚偽である。
bWin版プログラム
別紙9「13準・別表2」は,代表者自らが顧客に販売KCSRBC
したソフトのオペレーションマニュアル(甲96)に記載されている機
能から存在すると断定できるプログラムと,今般,がようやくRBCら
。提出するに至ったプログラム一覧(甲117の1∼3)の比較表である
甲第96号証に記載されている機能を実現するためには,別紙9(別
表2)に記載した51本のプログラムが最低限度必要なはずであるが,
このうち甲第117号証の1∼3に記載されているプログラムは,わず
か19本にすぎない。の主張を前提とすれば,は,プロRBCらRBC
グラムなしに勝手に思うままに稼動してくれるソフトを開発販売したと
いうことになる。
また,真に甲第117号証の1∼3のプログラムしか存在しないとい
うのであれば,が販売しているソフトは,メニューも,得意先照RBC
会も,名称照会も,その他別紙9(別表2)で×印が付された機能は全
て存在しない,全く無価値なソフトを販売し続けていることになる。か
かる観点からも,の説明は,客観的に,誰がどう見ても,明らRBCら
かに虚偽である。
(ウ)甲第115号証と甲第116号証との間に齟齬が生じていること
プログラム履歴リスト(甲116の1∼26)によると,は,RBCら
自らが苦し紛れに編み出したプログラム本数の数え方に従うようにして,
わざわざIDごとに作成修正の履歴を説明しているが,真にそのような数
え方をするのであれば,自らが提出したプログラム一覧(甲115の1・
2)を前提にしても,200本以上のプログラムの作成修正履歴が記載さ
れていないと辻褄が合わない。たとえば,出庫入力だけで5つの作成修正
履歴が記載されるべきところ,MA0102AとMA01020の2つの
RBCら作成修正履歴しか記載されていない(甲116の1∼4,25。)
は,自らが苦し紛れに編み出したプログラム本数の数え方を維持するため
に,同時に提出したプログラム一覧表(甲115の1・2)と作成修正履
。歴(甲116の1∼26)との間に,齟齬を来たしてしまったのであろう
イ開発期間に関する矛盾
は,平成15年1月から同年2月にかけてを退職した者らRBCらKCS
が順次「ミスターアドバンス」の開発を開始し,同年3月に販売を開始した
と主張するが(甲5,僅か1か月や2か月で「ミスターアドバンス」のよう)
な規模のソフトの開発ができるはずがなく,このことは自身も「業RBCら
界状況を熟知したシステムエンジニアーが120人/月の人力が必要」と主
張することによって認めている(平成16年5月11日付準備書面第1の5
(4)。)
ところが,甲第15号証によれば,Win版システム及びASP版システ
ムのいずれをとってみても,が「開発・発売」を開始したと主張すRBCら
る平成15年3月の時点から1年が経過した平成16年3月20日の時点に
至ってもなおが投入したシステムエンジニアーの延べ工数は,WiRBCら
n版で25人/月,ASP版で47人/月にすぎない。これは,がRBCら
システム開発に必要と主張する120人/月のわずか5分の1から3分の1
にしか達していない数字である。
すなわち,の提出する甲第15号証は,真にが平成15RBCらRBCら
年1月10日からシステム開発に着手したのであれば平成16年3月20日
の時点においてですらシステム完成にはおよそほど遠い状況にしかなりえな
いことを如実に示しているのである。
ウ開発スケジュールに関する矛盾
(ア)仮に「ミスターアドバンス」の開発経緯に関するの主張(甲RBCら
15)が事実だとすれば,Win版システム及びASP版システムのいず
れについても,の元従業員が開発を開始したという平成15年1月KCS
の時点から1年以上が経過した平成16年3月20日の時点に至ってもな
おシステムエンジニアーの延べ工数が,がシステム開発に必要とRBCら
主張する120人/月のわずか5分の1から3分の1にしか達していない
ことは既に指摘したとおりである。
上記事実のみに照らしてもを退職したが平成15年1月に開KCSX3
発に着手したというの主張が虚偽であることは明白であるが,平RBCら
成15年1月から開発を開始したことを前提とする「開発スケジュール」
(甲14)が架空のものであることもまた明らかである。
開発スケジュール(甲14)については,は,当該スケジューRBCら
ルに沿って開発がなされたと主張していたにもかかわらず,実際には実態
に即さないものであることは自身自白している。しかも,甲第14号X3
証に代わる実際の開発経緯についてはついに明らかにされなかった。
ちなみに,百歩譲って,甲第14号証の「開発スケジュール」どおりに
開発が進んだと仮定しても,は開発開始後わずか2か月,マスターRBC
系プログラムしかできていない状態で「ミスターアドバンス」の販売に成
,功したことになる。しかもによれば営業用のパンフレット(乙3RBCら
乙11の2)は平成15年7月1日以降に作成したというのであるから,
営業用のパンフレットすら存しない状況での販売ということになる。
しかしながら,現在のソフトウェア業界の常識としてそのような販売活
動は不可能といわざるをえない。なぜなら,確かに,ソフトの構築前にソ
,フトを販売することが可能であった時期もあるがはるか以前のことであり
現在のように各種ソフトが氾濫し,現実に競合ソフト(たとえば「パワフ
ル建機「レン太郎」など)が販売されていて購入先が競合ソフトウェアを」
体感することができる状況においては,最低限デモンストレーションを行
うことができなければソフトを販売することなどできないからである。
これを甲第14号証の「開発スケジュール」に当てはめるとすれば,最
低限「入出庫稼動プログラム(の主張によればその完成は平成1」RBCら
5年4月末)が完成していなければデモンストレーションを行うことすら
できない。競合ソフトが現に販売されているなかで,デモンストレーショ
ンもできず,営業用パンフレットすら存しないソフトを販売することなど
不可能である。
ところが,実際には,は会社設立直後の平成15年3月13日にRBC
は,早くもの納入先であった日成工業所との間で「ハードウェア一KCS
式238万円「ソフトウェア一式260万円」など具体的な金額まで確定」
した契約を締結している(甲70。)
上記の契約は,の元従業員が平成15年1月に開発を開始したソKCS
フトではなく,においてほぼ開発が完成していたソフト(ミスターKCS
アドバンス)の成果物を利用し,さらに従業員による背任行為ないKCS
。しは営業混同行為にあたる営業活動を行ったからこそなし得たものである
具体的には,上記契約は,の営業社員であったP5が在職中KCSKCS
にの名義で行ったのである。RBC
しかも,以上は,甲第14号証どおりに開発が進んだと仮定しての話で
あり,まして,自身が,同号証の開発スケジュールどおりに開発が進X3
まなかったと自白しているのであるから,ミスターアドバンスが平成15
。年1月以降に開発を開始したソフトウェアでないことはさらに明白である
,ちなみに,の弁解を前提にすると,ミスターアドバンスにつきRBCら
の証言によれば「まだごくほんの入り口の部分」しか完成していなかX3
ったにもかかわらず,日成工業所から毎月のリース料を取得し続けていた
ことになるが,機能しないソフトのために毎月のリース料を何のクレーム
もなしに支払い続ける顧客が存在するはずもなく(しかも,リース残存期
間は次第に少なくなっていく,の弁解は一見して虚偽である。)RBCら
(イ)は,RBCソフトを平成15年3月に販売した事実からRBCRBCら
プログラムが貸出君新版プログラムに依拠して作成された事実が推認される
ことを妨げるため,RBCプログラムが請負型であることを強調する。しか
しながら,は,自らのホームページにおいて,RBCソフトであるTRBC
eamシリーズにつき「システムパッケージ製品として結晶化しました」と
積極的に広報しており(乙119,その主張が虚偽であることは一目瞭然)
である。
ちなみに,は,のホームページ(甲230)を根拠としてRBCらKCS
KCSソフトが請負型であるなどと断定するが,同ホームページの記載によ
って請負型であると断定できる合理的理由は全く存在しない。KCSソフト
がパッケージ型であることに間違いはなく,顧客ごとに異なる商品コードの
桁数等に対応するために,導入までには数回の打合せが必要になるにすぎな
い。
このように,請負型であることを前提とするの主張は明らかな虚RBCら
偽である。そもそも,現在においては,少なくともデモンストレーションが
できる状態にまでソフトが完成していない限りソフト販売が不可能であり,
も,結局は,RBCソフトの相当部分がパッケージ化されているこRBCら
と自体は認めている。そうだとすれば,は,その設立時の平成15RBCら
年3月には,少なくともデモンストレーションができる状態にまでソフトを
完成させていたからこそ,ソフトを「販売」できたとしか考えられず,そし
て,KCSプログラムに依拠したのでない限り,同月時点で,少なくともデ
モンストレーションができる状態にまでソフトを完成させることはできなか
ったのである。
以上の観点からも,RBCプログラムが貸出君新版プログラムに依拠して
いる事実は明らかである。
【の主張】RBCら
が開発に着手していたと主張する貸出君新版プログラム(貸出君forwKCS「
KCSらin廉価版」及び「貸出君ASP新版」のプログラム)などは存在せず,
の捏造であることは以下の理由から明白である。
まず,の主張は,開発した貸出君新版の成果物も書類も全ての元KCSKCS
従業員が持ち去ったというものであるが,2年以上も行ってきたという開発に関
する証拠を全て持ち去るというのはおよそ不可能であり,主張自体荒唐無稽であ
る。
次に,貸出君新版の成果物というものが存在するのであれば,会社財産として
最重要であるにもかかわらず,警察への盗難届(乙37の1)にも,その後の退
職従業員への持ち去った物の返還を要求する手紙(甲217)にも,貸出君新版
の成果物を記載しておらず,不自然である。
そもそも,本件訴訟の発端であるによる不正競争行為は,RBCシスKCSら
テムがKCSシステムの著作権及び商標権を侵害しているという取引先等への文
書(甲1)であるが,システム自体が持ち出されたのであれば,かかる事実(虚
,偽ではあるが)を記載すればの著作権法違反の理由が明らかとなるためRBCら
Kシステム自体の持ち出しについて強く主張するのが合理的である。しかるに,
は,抽象的に著作権を侵害するとしか記載せず,その後においては著作権でCS
はなく商標権のみの主張となっている(甲2,3。)
これらの点からみれば,の主張する「貸出君新版の持ち出しによる著作KCS
権法違反」は,本件訴訟が開始してからの主張であることが明らかであり,全く
信用性がない。したがって,貸出君新版などというものがの捏造であり実KCS
際には存在せず,RBCシステムは貸出君新版に関する著作権法違反とはならな
いことは明らかである。
以下詳述する。
(1)新会社設立の経緯
アの歴史KCS
は,昭和54年9月に株式会社内田洋行(以下「内田洋行」といKCS
う)とキング商事株式会社が合弁で設立した会社であり,Y2の独裁体制で。
あったキング商事株式会社の体質を継承していた。
昭和56年7月21日に内田洋行から出向者としてを受け入れ,そのX2
後はに転籍し,の発展に寄与し,Y2は企業活動には何らX2KCSKCS
関心を示さなかったが,金銭管理だけはに任さず,経営者としての実権X2
を握り続けていた。
イの問題Y1
,Y1は,もともとは内田洋行で勤務していたのであるが,平成5年ころに
内田洋行からで引き取るよう強い要請があり,の東京営業所でKCSKCS
勤務することになった。ところが,の常軌を逸する言動や自己中心的なY1
態度に対し東京営業所の社員からは不満の声が常に上がり,平成11年ころ
にが東京営業所の責任者になると,の態度はますます酷くなっていY1Y1
き,は,平成14年5月,東京に出張していたに対し,社員の見守Y1X2
る中で突然暴言を浴びせかけ,あまりの不遜な態度に,はに即刻退X2Y1
社を勧告した。しかし,Y2より上記の件については不問に付して欲しいと
依頼を受け,やむを得ず1週間後,の現場復帰を認めたが,の態度Y1Y1
,は改まるどころか,何をしても辞めさせられることはないという自信からか
いっそう不遜なものとなった。そして,ついに,東京営業所社員一同から同
年6月20日に辞表が提出された。
東京営業所社員一同の辞意は,によって押しとどめられたが,はX2X2
の経営の危機を深く感じ,やの処遇について,Y2に対しKCSKCSY1
話合いを提案したが,Y2はこれを拒否した。
ウ不正経理問題
の問題で社内が揺れる中,平成14年7月,経理担当事務員P21にY1
より,Y2の不正経費使用が明らかにされた。それによると,Y2の不正経
費の額は年間3000万円にも及び,妻がデパートの食料品売場で購入した
惣菜等までが会社経費として計上されていた。このことに対し社員はY2に
対し強い不満を抱くに至り,幹部社員全員で話し合った結果,正常な企業環
境を取り戻す方策を具体化する社内改善委員会なる組織を立ち上げ,結束を
図り改善する方向を模索しようとの結論になり,同年8月より隔週土曜日に
会合を持ち,改善案を話し合うことを決定した。社内改善委員会では,今後
ののあり方やY2の不正経費流用を防ぐ方策が検討されたが,まずはKCS
経営上影響の強い内田洋行に改善の助力を願おうということになり,甲第1
08号証を作成し,内田洋行に持参することとなった。
エY2の専横
が平成14年8月23日に内田洋行へ甲第108号証を持参し説明をX2
行なった後,Y2は社内改善委員会の存在を知り,同月30日に緊急役員会
議を開き,の解任のための臨時株主総会の開催の案内を行なった。このX2
事実を知った社内改善委員会のメンバーは,Y2らの不遜な態度に,もはや
を見限るしかないと憤慨した。また,内田洋行からも話合いをすべきKCS
であるとの要請があり,Y2も社内改善委員会との間で話合いを開始するこ
ととした。
ところが,Y2との話合いは難航し,最後には社内改善委員会の要求とは
ほど遠い内容の合意書案が出来上がってしまった。
そして,社内改善委員会がまず初めに要望したことが,前述の8月30日
開催の取締役会議議事録にある退任の臨時株主総会の開催中止であり,X2
Y2は,開催しない旨を伝達して話合いを進めていたが,その兄であるP1
と両名で開催したことにし,退任こそ決議しなかったものの,の取X2Y1
締役就任を決定した。このことを事後的に知った社内改善委員会は,Y2の
ことなど信用できないとし,合意書に捺印を拒むという結果になり,Y達と
の対立は冷戦状態となった。
は,社内改善委員会の場でらが新会社設立を話し合い,HIKKCSX2
基金に不正な金を入金していたと主張する。たしかに,新会社を設立しよう
という話が出たり,万一に備えて資金を集めておくことを目的にHIK基金
ができたのは事実であるが,平成15年1月までは新会社設立を本気で話し
合ったことはないし,HIK基金の入金はそれぞれの資金であり不正な金な
どは全くなかった(甲218)。誰でも,危険を冒して新会社を設立するより
も,同じ会社にいたいのは当然であり,問題が解決してに在籍し続けKCS
ることを第一の希望としていたのであるが,それが不可能だった場合の保険
としてHIK基金を設けたに過ぎず,新会社を具体的に計画などしていなか
った。
,他方で,は,顧客や社員のために企業の存続は絶対必要であると考えX2
平成14年10月末,営業責任者,システム責任者に対し,すべての問題は
一時期棚上げし,業績回復のため,一層努力するよう要請し,営業活動をも
う一度立て直すべく活動しだした矢先の平成14年12月6日,今までは形
式的にしか開催していなかった株主総会において,欠席のまま,Y2らX2
,はの取締役就任を否決し,を社長に就任させたのである。はX2Y1KCS
単なる任期満了で再任しなかっただけだと主張するが,長年の発展にKCS
寄与してきたを就任させないというのはまさに「解任」というべき事態X2
であり,Y一族のこのような卑劣な謀略により,社員の人心が離反するばか
りであった。
しかも,取締役就任拒否の連絡を東京営業所で受け取ったは,同月7X2
日に帰阪し,Y2に対し,せめて同月20日までの間,長年お世話になった
各顧客や関係筋に挨拶に行きたい旨を伝えたが,一切の出社を認めないとの
。返事であり,社員や顧客への挨拶はおろか,私物の整理すら許されなかった
また,平成15年1月6日には,Y2が社内改善委員会の責任者であり,
システム開発の責任者であるに対し,任意退職を余儀なくさせるというX3
事態を生じさせた。
オ新会社設立
は,予想だにしていなかった事態になり,途方に暮れたが,と話X3X2
し合い,これを機に,使いやすい新たなプログラムを開発し,新会社を立ち
上げようと決意した。自身も,在籍時から貸出君に不満を持ってX3KCS
いたが,新たなプログラムにすると,過去のプログラム資産が全く使用でき
なくなるため,在籍中では変更できなかったのである。KCS
資金繰りも覚束ない新会社を立ち上げるにあたっては,少数精鋭にすべき
であるのは当然であるが,やはYらに対する社員の不満を嫌というX2X3
ほど分かっており,来る者は拒まずというスタンスをとったため,思いがけ
ず大人数となったのであって,が従業員を無理に引き抜いたとRBCKCS
いうような事実は全くない。なお,を退職してに入社した者のKCSRBC
中には,主体的に考えてに移ったのではなく,皆が移るからという理RBC
由で移ったというような者もおり,こういった者の中には,が資金繰RBC
りが苦しく,開発を急いでいたため,多忙なを辞めてに戻ったRBCKCS
者もいる。また,平成15年3月にはからの嫌がらせの手紙(甲21KCS
9)が相次いだため,同年4月には8人が辞め,同年12月にはがフKCS
ァイナンス会社に商標権侵害であるとの手紙(甲3の1)を出したためにフ
ァイナンス会社からの入金が止まり,給与が払えないような状況に追い込ま
れ,から7人が辞めた。このように,は,からの退職者RBCKCSRBC
RBCKCSらが多いとして,こそが悪質な会社であると主張しているが,
の所為により退職しているのがほとんどなのである。
カの悪質性KCSら
の悪質性は,が取引先やの従業員に宛てた手紙KCSらKCSらRBC
(甲1∼3,217,219)でも分かる。
また,は,自ら開発したわけでも,使用したわけでもない「ミスKCS,
,ターアドヴァンス」という商標を,が使用していることを知りながらRBC
が登録していないことを奇貨として自ら登録するという悪質極まりなRBC
KCSKCSい行為を行っている。この点,は「ミスターアドヴァンス」は,
で開発したシステムで,名称も決まっていたと主張するが,が開発しKCS
たシステムでないことは後に述べるとおりであり,使用していないにもかか
わらず登録していることには変わりがない。
キ結論
以上のとおり,は,の不当な行為により,緊急避難的に設RBCKCSら
立されたものである。
(2)RBCシステムの特徴(新開発であること)
RBCシステムの特徴につき,以下説明し,RBCシステムがKCSシステ
ムとは全く異なる新たなシステムであることを明らかにする。
ア新システム開発の決意及びその基本的な考え方
(ア)上述のとおりを自主退職することを余儀なくされたは,平KCSX3
成15年1月7日,と話し合い,新会社を設立することにした。X2
そして,において長年KCSシステムの開発,バージョンアップKCS
等に携わってきた経験を生かし,建設機械等のリース・レンタル業界向け
のソフトを開発し販売することを決意した(甲220)。
したがって,がRBCシステムの開発を決意した時点は平成15年X3
1月7日であり,これ以前にRBCシステムの開発が進んでいたわけでは
決してない。
(イ)KCSシステムには,ビジネスサーバ版とWin版とで原因こそ異な
るものの,双方とも,①処理スピードが遅い,②操作性が悪い,③ネット
ワークに弱いという大きな欠陥があり,平成14年ころの社員の日KCS
常業務の大半がトラブル解決に費やされているような状態であった。
(ウ)そして,KCSシステムのバージョンアップ等ではこれらのトラブル
を解決することは不可能であり,これらのトラブルを解決するためには,
全く新しいシステムとする必要があった。
しかしながら,KCSシステムのファイル構造を作りかえ,全く新たな
システムとすると,KCSシステムを開発して以来蓄積されてきた多くの
プログラム資産が全て使用できなくなることに加え,トラブル処理に追わ
れてプログラム開発の十分な時間すらとれない中で,そのような全く新し
いシステムを作ることは不可能であった。
(エ)以上のような経緯から,は,においてKCSシステムのメX3KCS
ンテナンス等をする中で最も痛感していた欠点を克服する全く新たなシス
テム,すなわち,①処理スピードの向上,②操作性の向上,③ネットワー
クの強化を基本的な考え方とする全く新たなシステムを開発しようとした
(甲220)。
イビジネスサーバ版について
(ア)総論
RBCシステムのビジネスサーバ版は,①処理スピードの向上,②操作
性の向上,③ネットワークの強化という3つの基本的な考え方を具体化し
たものであり,その結果KCSシステムとは全く異なる新たなシステムと
なったほか,KCSシステムのビジネスサーバ版と比較した場合に,プロ
グラムの組み方が全く異なるという特徴がある。
以下,詳述する。
(イ)各論
RBCシステムにおいて3つの基本的な考え方をどのように具体化した
かを,KCSシステムが有していた欠陥と対比することにより,説明する
とともに,併せて,RBCシステムとKCSシステムが全く異なるもので
あることを説明する。
a処理スピードの向上
(a)KCSシステムの有していた欠陥について
①第1に,KCSシステムは,ファイルを構成している項目を増加
することができないために,別ファイルを追加しなければならない
という欠陥があり,ファイル構造が肥大化して処理スピードが遅く
なっていた(甲220別紙1・第1)。
②第2に,KCSシステムでは,各ファイルにおける各レコードレ
ングスが長く設計されている為に,処理スピードが極めて低下して
いた(レコードレングス」の意味については,甲220別紙2。「)
これは,各レコードレングスが長いとファイルの中のデータが増え
る結果処理スピードが遅くなるからである。
(b)RBCシステムにおける「処理スピードの向上」の具体化
①上記第1の欠陥に対し,RBCシステムにおいては,たとえば,
初期設計段階において,商品マスタ(商品名などの固定情報)と商
品ランク単価マスタ(単価項目毎のランク情報)とを分けて設計する
,ということを随所で行い,ファイル上不要な項目が出ない設計とし
処理スピードの向上を実現した。
この結果,ファイルが短くかつ不要な項目もないため,処理ス
ピードが向上し,ファイルを追加することもなく,同一ファイルの
項目の使い回しもなくなったために,バグの大幅な減少が実現され
た。
②さらに,上記第2の欠陥に対しては,甲220別紙3記載のとお
り,各々のファイルのレコードレングスを短く設計したことによっ
ても,処理スピードの向上を実現した。これは,各レコードレング
スを短く設計すれば,各ファイルの中のデータが減少し処理スピー
ドが向上するからである。
ハード性能の向上と相まって,多くの機能を保存させるためにレ
コードレングスを長くすることが多い中で,レコードレングスを短
く設計するという発想自体が大胆であるが,加えて,レコードレン
グスが異なれば,全く異なるファイルとなるため,無論,KCSシ
ステムにおいて開発された種々のプログラムをRBCシステムに流
用することなど全くできない(甲220別紙4)。
b操作性の向上
(a)KCSシステムの有していた欠陥について
KCSシステムは,①画面構造上1伝票の入力明細行数が6行しか
表示されず使用上不便であり,更に,1行毎に入力を行った後に,明
細表示部へ移行させるという手間のかかる画面構造上の不便さという
欠点があった。また,②入力する際に,入力に必要の無い画面項目に
カーソルが移動し,キーボード入力のタッチ回数が多く操作性が悪い
という欠点,③オフコン端末使用になっており,オフコン用キーボー
ド配列のキー操作が必要で操作性が悪いという欠陥があった(甲22
0別紙1・第2)。
(b)RBCシステムにおける「操作性の向上」の具体化
RBCシステムでは,①画面上に伝票形式の明細行数が10行表示
されており,しかも,各行へ直接入力する方式を採用している上,②
,不要な動作なしに任意に入力したい欄に入力することも可能で,かつ
③パソコン用キーボード仕様となっており,これらによって操作性の
向上を実現した(甲220)。
cネットワークの強化
(a)KCSシステムの有していた欠陥について
KCSシステムでは「処理スピードの向上」の点で記載したとおり,,
ファイルのレコードレングスが長く,かつファイルが重複等していた
ので重く,本店営業所間等のネットワークに弱いソフトであった。
(b)RBCシステムにおける「ネットワークの強化」の具体化
この点,RBCシステムでは「処理スピードの向上」の点で記載し,
たとおり,①ファイルのレコードレングスを短くし,しかも,②ファ
イルを分けて作成してファイル構造を分割するという方式をとったこ
とにより,ネットワーク上のデータ量を軽くする設計を行うことによ
り,ネットワーク上のスピードの向上を実現した。
dまとめ
以上のとおり,RBCシステムは,①処理スピードの向上,②操作性
の向上,及び③ネットワークの強化という基本的な考え方を具体化した
KCSシステムとは全く異なる新しいシステムである。
もちろん,画面設計においても『得意先マスタメンテナンス画面(ビ,
ジネスサーバ版』(甲134の1ないし3別紙図面1。RBCシステム))
と『得意先マスタメンテナンス画面(ビジネスサーバ版』(甲134の)
4。KCSシステム)『出庫入力画面(ビジネスサーバ版』(甲135,)
の1別紙図面2)を比較すれば明らかであるが,RBCシステムとKCS
システムでは全く異なる。
(ウ)小括
以上より,RBCシステムは,上記の3つの基本的な考え方を具体化し
たもので,その結果,KCSシステムとは全く異なる新たなシステムとな
っているのである。
しかも,プログラムの組み方という極めて根本的な点で両者は相違して
いる。すなわち,RBCシステムは「構造化プログラム」といわれる方法,
でプログラムを組んでいるが,KCSシステムは「非構造化プログラム」,
といわれる方法でプログラムを組んでおり,両者はその名前から明らかな
ように全く異なるのである(甲220別紙5)。
ウWin版について
(ア)総論
RBCシステムのWin版は,ビジネスサーバ版と同様,①処理スピー
ドの向上,②操作性の向上,③ネットワークの強化という3つの基本的な
考え方を具体化したものであり,その結果,KCSシステムのWin版と
は全く異なる新しいシステムとなった。
また,KCSシステムのWin版は,KCSシステムのビジネスサーバ
版をもとに作られたシステムであるため,上記同様に,多くのシステム構
造上の欠陥や操作上の問題を抱えていた。
(イ)各論
RBCシステムにおいて,上記の(ア)の基本的な考えをどのように具体
化したかについて,KCSシステムの有していた欠陥と対比する形で説明
し,併せて,両者が全く異なるものであることを説明する。
a処理スピードの向上
(a)KCSシステムの有していた欠陥について
KCSシステムには入力データを同じファイル内で保存していく,
というファイル構造に,大きな欠陥があった。
つまり,KCSシステムの場合は,入力データファイルが,1月
度・2月度・3月度と入力すればするほどデータが溜まっていくとこ
ろ,通常,この入力データファイルに保存されたデータを呼び出して
きて請求書を発行する仕様となっているため,処理スピードが遅くな
るのである(甲220別紙8)。
(b)RBCシステムにおける「処理スピードの向上」の具体化
これに対し,RBCシステムにおいては,入力データファイルは1
か月間だけにして,過去のデータは必要に応じて取り出しができるよ
うに別ファイル(累積データファイル)として切り分けする全く新た
な構造とし,処理スピードの向上を実現した。
このように別ファイルとすれば,入力データとして呼び出されるの
は,常に1か月分であるため,請求書発行等の処理スピードは格段速
くなる。
b操作性の向上
(a)KCSシステムの有していた欠陥について
KCSシステムのWin版は,KCSシステムのビジネスサーバ版
をもとにしたシステムであるので,KCSシステムのビジネスサーバ
版における欠陥が同様に存在する。
,すなわち,画面構造上1伝票の入力明細行数が6行しか表示されず
使用上不便であり,さらに1行毎に入力を行った後に,明細表示部へ
移行させるという手間がかかる画面構造上の不便さという欠点が同様
に存在していた。
また,KCSシステムにおいては,リース単価変更時の仕様に欠陥
があり操作性が悪いこと,期間貸し(シーズン貸し)の時にリース期間
の自動延長ができず操作性が悪いという欠陥も存在していた(甲220
別紙8②)。
(b)RBCシステムにおける「操作性の向上」の具体化
RBCシステムのビジネスサーバ版と同様,画面上に伝票形式の明
細行数が10行表示されており,しかも,各行へ直接入力する方式を
採用し,操作性の向上を実現した。
また,上記のようなKCSシステムにおける操作性が悪いという欠
陥は,RBCシステムでは存在しない。
cネットワークの強化
(a)KCSシステムの有していた欠陥について
KCSシステムでは,営業所コードが存在しないことにより,支
店・営業所単位での処理が出来ず,営業所間のネットワークに対する
対応が弱いという欠陥があった。
(b)RBCシステムにおける「ネットワークの強化」の具体化
RBCシステムでは,取引先マスタ(得意先マスタ)上に,営業所
コード(5桁)を採用し,営業所を複数管理している顧客が営業所単
位で業務処理を行うことが可能で,ネットワークが強化されている。
dまとめ
以上のとおり,RBCシステムは,①処理スピードの向上,②操作性
の向上,及び③ネットワークの強化という基本的な考え方を具体化した
KCSシステムとは全く異なる新しいシステムである。
もちろん,画面設計においても『得意先マスタメンテ画面(Win,
版』(甲135の2別紙図面3)『入出庫入力・出庫入力画面(Win),
版』(甲135の3別紙図面4)を比較すれば明らかなごとく,RBCシ)
ステムとKCSシステムでは全く異なる。
その結果,当然ではあるが,RBCシステムとKCSシステムには多
数の相違点が存在している(甲220別紙9)。
(ウ)小括
以上より,RBCシステムのWin版は,上記3つの基本的な考え方を
具体化した結果,KCSシステムとは全く異なる新たなシステムとなって
いる。
エ結論
以上のとおり,RBCシステムは,ビジネスサーバ版,Win版ともに,
KCSシステムとは全く異なる新しいシステムであることが明らかである。
(3)RBCシステムの開発状況及び顧客へのサポート状況
アはじめに
(ア)設立当初の顧客のうち,最初に契約に至った8社について,契約日,
代金入金日,各業務ソフトの納入日などを下表に示す。
aビジネスサーバ版の早期受注4社契約及びサポート各工程完了日
日成工業南海建設興業ベストレンタ長浜産業
所ル
販売契約日平15.3.13平15.4.23平15.5.28平15.4.9
関係入金日平15.3.31平15.4.30平15.6.30平15.6.20
業務平15.5.30
ソフシステム分析スタート日平15.3.13平15.4.2平15.5.26平15.4.3
ト納マスター業務納入日平15.4.10平15.7.22平15.7.10平15.4.17
入日稼動業務納入日平15.5.8平15.7.23平15.9.24平15.7.8
販売業務納入日――――
請求業務納入日平15.5.21平15.8.22平15.9.末日平15.10.2
平15.11.平16.4.10平15.10.144
末日平15.11.
末日
売掛業務納入日――平15.10.末日平16.1.28
――――在庫管理業務納入日
仕入業務納入日――――
統計業務納入日――平15.11.末日―
ネットワーク業務納入――平15.9.6平15.9.12

受注業務納入日――――
(随時業務納入
日)
修理業務納入日――――
稼動請求業務開始日平15.12.1平16.4.13平15.10.12平15.12.1
開始平16.1.1
日稼動確認取得日平16.5.17平16.7.14平16.1.30―
bWin版の早期受注4社契約及びサポート各工程完了日
鈴建輸送名晶興産興南機械中村建機
販売契約日平15.4.18平15.6.19平15.6.23平15.8.2
関係入金日平15.3.28平15.7.25平15.7.16平15.10.1
業務平15.4.25
ソフシステム分析スタート日平15.3.14平15.6.13平15.6.25平15.8.28
ト納マスタ業務納入日平15.3.14平15.7.1平15.7.30平15.9.4
入日稼動業務納入日平15.4.18平15.7.1平15.8.1平15.9.6
平15.5.13平15.11.5平15.10.2
販売業務納入日―平15.7.1――
請求業務納入日平15.5.30平15.7.1平15.8.1平15.9.18
平15.9.18平16.11.2平15.11.末日
売掛業務納入日―平15.7.1――
――――在庫管理業務納入日
仕入業務納入日――――
統計業務納入日――――
ネットワーク業務納入――――

受注業務納入日――――
(随時業務納入
日)
修理業務納入日――――
稼動請求業務開始日平15.11.20平16.2.1平16.1.1平16.1.1
開始稼動確認取得日平16.9.9平18.1.16平16.11.16―

(イ)RBCシステムは,そもそも,各顧客のニーズに応じたカスタマイズ
部分を含む商品であり,商品の販売時点において,既にシステムが完成し
ているということがあり得ないことは,前記のとおりである。
これに加えて,本件においては,を設立して直ちに売上げを上げRBC
る必要があったことから,RBCシステムの開発をすると同時に,顧客に
対しても同時進行で同システムを販売し,完成している部分から順次導入
していったものであり,各顧客との契約時点,代金受領時点においてRB
Cシステムが全て完成していたものでは全くない。は,相応の労力RBC
をかけてRBCシステムを開発していったものである。
この点を明らかにするために,以下,ビジネスサーバ版,Win版双方
につきシステム開発の経緯を説明するとともに,各々について,設RBC
立後,最初に契約に至った4社に対するシステムの導入状況を説明する。
イビジネスサーバ版について
(ア)RBCシステムの開発状況
は,主要なマスタ業務(得意先・商品・機械マスタ)については,RBC
平成15年1月10日から同2月20日ころの期間に完成させた(甲22
0)。
次に,稼動業務,販売業務については,同月25日ころから同年4月1
日ころの期間に完成させた(甲220)。
請求業務については,同年3月10日から開発に着手し,同年5月上旬
ころに一応完了させた(甲220)。
その他の業務ソフトは,これ以降,マスタ業務,稼動業務,販売業務,
請求業務において多数発生したバグへの対応や不具合の修正に追われる中
で,少しずつ開発していった(甲220)。
(イ)顧客へのサポート状況
設立後,RBCシステムのビジネスサーバ版において最初に契約RBC
に至った4社は,日成工業所,南海建設興業株式会社(以下「南海建設興
業」という,長浜産業及びベストレンタル株式会社(以下「ベストレン。)
タル」という)である。。
以下,この4社につき,契約時期,契約代金の受領時期を明らかにする
とともに,RBCシステムのどの業務機能をいつ入れて,いつどのような
指導を行い,最終的にいつ稼動したのかを説明する。
a日成工業所について
(a)契約日,入金日
日成工業所とは,平成15年3月13日に契約を締結し,同月31
日,契約代金全額を受領した。
日成工業所との契約時点においては,RBCシステムのデモ画面等
は無論完成しておらず,これらは提示していないが,営業社員RBC
と日成工業所担当者との信頼関係により受注に至った(甲221)。
(b)契約時のRBCシステムの開発状況
平成15年3月13日時点では,RBCシステムは,マスタ業務し
か完成しておらず,基本的な事項すら完成しておらず,RBCシステ
ムは使用できるものではなかった。
それにもかかわらず,この時点で契約に至ったのは,会社を設立し
て早急に資金を必要とした側の事情もあるが,主要マスタの開RBC
発が一応完了していたことから,日成工業所にはマスタの登録業務を
しばらく行ってもらうことにより,時間を稼ぎ,その間に順次,早急
に他のプログラムを完成させていく方針であったこともある。
なお,顧客としても,当方のシステムが完全に立ち上がるまでは旧
来の方法で請求業務等を行うことから,不都合を生じるものではなか
った。
(c)サポート状況
日成工業所では,平成15年3月13日にシステム分析を開始し,
マスタ業務ソフトは同年4月10日に納品したものの,それ以降のソ
フトについては,開発でき次第納品していった。
すなわち,稼動業務ソフトについては同年5月8日に納品し,請求
業務については同月21日に基本ソフトを納品し,カスタマイズをし
て,同年11月末日に日成工業所の要望に沿ったソフトを再納品して
いる。
そして,同年12月1日,ようやく,RBCシステムを本格稼動さ
せて請求業務を開始することができ,平成16年5月17日に顧客の
要望に沿ったカスタマイズが全て終了したことを双方で確認して稼動
確認書を取得した。
b南海建設興業について
(a)契約日,入金日
南海建設興業とは,平成15年4月23日に契約し,同月30日,
同年5月30日契約代金を受領した。
(b)契約時のRBCシステムの開発状況
この時点においても,マスタ業務,稼動業務,販売業務までしかで
きておらず,請求業務はできていない状態であり,ソフトとしては基
本的動作ができず,全く使い物にならない状態であった。
デモ画面等は無論存在せず,営業社員と客先との人的信頼関RBC
係等により,成約に至った(甲221)。
(c)サポート状況
南海建設興業とは,契約に先立ち,平成15年4月2日よりシステ
ム分析を開始し,既に完成していたマスタ業務,稼動業務につき,そ
れぞれ同年7月22日,同月23日に納品している。
そして,請求業務については,基本ソフトを平成15年8月22日
。に納品し,カスタマイズをして,平成16年4月10日に再納品した
以上の経過で,同月13日にRBCシステムを稼動させて請求業務
を開始することができ,同年7月14日には稼動確認書を取得した。
c長浜産業について
(a)契約日,入金日
長浜産業とは,平成15年4月9日に契約をし,同年6月20日,契
約代金を受領した。
(b)契約時のRBCシステムの開発状況
ソフトとして基本的な動作ができていない状態であったことは南海
建設興業との契約の点で記載したとおりであり,デモ画面等は無論存
在せず,営業社員と客先との人的信頼関係等により成約に至っRBC
た(甲221。)
(c)サポート状況
契約に先立ち,平成15年4月3日システム分析を開始し,同月1
7日にマスタ業務を納品している。そして稼動業務を同年7月8日に
納品した。請求業務については,基本ソフトを同年10月24日に納
品し,同年11月末日にカスタマイズ品を納品した。
また,長浜産業ではネットワークを構築する必要があり,同年9月
12日にネットワーク業務を納品している。
長浜産業は2段階に分けてRBCシステムを稼動させたため,同年
12月1日,平成16年1月1日の2段階でRBCシステムを稼動し
請求業務を開始した。
そして,同月28日に売掛業務を納品する等し,同年4月15日に
稼動確認をしたが,稼動確認書は取得しないままとなった。
dベストレンタルについて
(a)契約日,入金日
ベストレンタルとは,平成15年5月28日に契約をし,同年6月
30日契約代金を受領した。
(b)契約時のRBCシステムの開発状況
ベストレンタルとの契約時点では,請求業務までが一応完成しつつ
あり,ソフトとして最低限基本的な事項が完成しつつあり,ようやく
不完全なものではあるがデモ画面が完成し,同画面を示して説明が可
能となった(甲221。)
(c)サポート状況
平成15年5月26日よりシステム分析を開始し,同年7月10日
マスタ業務を,同年9月24日稼動業務を納品した。
請求業務については,同月末日に基本ソフトを納品し,同年10月
14日,カスタマイズしたソフトを納品した。
そして,ネットワークを構築する必要があったため,同年9月6日
にネットワーク業務を納品し,同年10月12日より本格稼動し,請
求業務を開始した。
なお,システム稼動確認書を取得したのは平成16年1月30日で
ある。
ウWin版について
(ア)RBCシステムの開発状況
主要なマスタ業務(得意先・商品・機械マスタ)については,平成15
年1月21日から同年2月10日ころの期間に完成させた。
次に,稼動業務,販売業務については,同月12日から同年3月26日
までの間で完成させた。
請求業務については,同月11日から同年5月ころまでの間で完成させ
た。
,そのほかの業務ソフトは,ビジネスサーバ版の開発同様に,マスタ業務
稼動業務,販売業務,請求業務において多数発生したバグへの対応や不具
合の修正に追われる中で,少しずつ開発していった(甲221。)
(イ)顧客へのサポート状況
設立後,RBCシステムのWin版において最初に契約に至ったRBC
4社は,鈴建輸送株式会社(以下「鈴建輸送」という,名晶興産株式会。)
社(以下「名晶興産」という),有限会社興南機械(以下「興南機械」とい
う,及び中村建機である。。)
以下,この4社につき,契約時期,契約代金の受領時を明らかにすると
ともに,RBCシステムのどの業務機能を,いつ入れて,いつどのような
指導を行い,最終的にいつ稼動したのかを説明する。
a鈴建輸送について
(a)契約日,入金日
鈴建輸送とは,平成15年4月18日契約をし,同年3月28日,
同年4月25日に契約代金を受領した。
(b)契約時のRBCシステムの開発状況
契約時点では,請求業務が完成しておらず,RBCシステムは基本
的動作すらできない状態であり,デモ画面等も出来上がっていなかっ
たが,人間関係を基礎として契約に至った(甲221)。
(c)サポート状況
契約に先立ち,平成15年3月14日,システム分析を開始し,同
日マスタ業務を納品した。
,そして,稼動業務については,基本ソフトを同年4月18日納品し
カスタマイズしたものは同年5月13日に納品した。
請求業務についても,同月30日に基本ソフトを納品し,同年9月
18日にカスタマイズ品を納品した。
そして,同年11月20日にRBCシステムの本格稼動ができ,請
求業務を開始し,平成16年9月9日に稼動確認書を取得した。
b名晶興産について
(a)契約日,入金日
平成15年6月19日契約し,同年7月25日に契約代金を受領し
た。
(b)契約時のRBCシステムの開発状況
契約時点では,RBCシステムは,基本的動作が可能な程度には完
成していた。したがって,一応のデモ画面が完成していたために,そ
れを見せて契約している(甲221)。
(c)サポート状況
平成15年6月13日にシステム分析を開始し,同年7月1日に,
マスタ業務,稼動業務,販売業務,請求業務,売掛業務を納品した。
。そして,同年11月2日に,カスタマイズ後の請求業務を納品した
平成16年2月1日には,RBCシステムを本格稼動させ,請求業
務を開始し,平成18年1月16日になって,ようやく稼動確認書を
取得した。
c興南機械について
(a)契約日,入金日
契約日は平成15年6月23日で,契約代金入金日は同年7月16
日である。
(b)契約時のRBCシステムの開発状況
同時点においても,既にRBCシステムは一応基本的動作はできる
状態であったため,不完全ながら一応のデモ画面を見せて契約した(甲
221)。
(c)サポート状況
平成15年6月25日にシステム分析を開始し,同年7月30日,
マスタ業務を納品した。稼動業務については同年8月1日に基本ソフ
トを納品し,カスタマイズ品を同年11月5日に納品した。
請求業務についても,同年8月1日に基本ソフトを納品し同年11
月末日にカスタマイズ品を納品した。
平成16年1月1日,RBCシステムを本格稼動させ請求業務を開
始し,同年11月16日稼動確認書を取得した。
d中村建機について
(a)契約日,入金日
契約日は平成15年8月2日で,契約代金入金日は同年10月1日
である。
(b)契約時のRBCシステムの開発状況
契約時において,RBCシステムは基本的動作ができる程度には一
応完成しており,不完全ながらも一応のデモ画面を見せて契約した。
(c)サポート状況
平成15年8月28日システム分析を開始し,同年9月4日にマス
タ業務を,同月6日に稼動業務を納品した。稼動業務についてはカス
タマイズがあり,同年10月27日にカスタマイズ品を納品した。
請求業務については,同年9月18日に納品した。
そして,平成16年1月1日からRBCシステムは本格稼動を開始
し,請求業務を開始した。なお,同年後半に稼動確認を行ったが,稼
動確認書を取得しておらず,正確な日時は不明である。
エまとめ
,以上から明らかなごとく,は,RBCシステムを開発するにあたりRBC
ビジネスサーバ版であれば約1年,Win版でも,7か月から3年を費やし
ているものであって,RBCシステムとKCSシステムが根本的に相違する
ことから当然のことではあるが,RBCシステムの開発に相応の期間をかけ
ている。
要するに,KCSシステムを剽窃・流用して,RBCシステムの開発期間
を短縮した,という事実はないのである。
(4)の主張(1)(設立前の準備行為)に対する認否・反論KCSRBC
アの主張(1)ア(貸出君新版の開発経緯)についてKCS
(ア)の主張(1)ア(ア)(貸出君新版の開発に至る経緯)についてKCS
が平成14年ころ「貸出君」のWin版廉価バージョン(貸出君KCS「
forwin廉価版)とASP版入力簡素化バージョン(貸出君ASP新」「
版)の開発に着手したとの点は否認する。」
(イ)の主張(1)ア(イ)(貸出君新版の開発計画)についてKCS
が第23期(平成13年9月∼平成14年8月)に,を課長とKCSX4
する開発課において「貸出君forwin廉価版」と「貸出君ASP新版」の
開発を計画し順次これに着手したとの点は否認する。
a平成13年9月1日付「第23期(上)を迎えて」と題する書面(乙
5)及び平成14年3月2日付「第23期(下)を迎えて」と題する書面
(乙7)は,がの専務取締役在職中に作成したもので,また平X2KCS
成13年9月8日付「23期上期開発部方針」と題する書面(乙6)は,
乙第5号証の方針内容を受けが作成したものである。X4
これらはが,の成長,業績,拡大のために,組織内システムX2KCS
の確立・改善を実践したものに関連して作成されたもので,決算会議と呼
ばれる年2回開催の会議で発表された方針を示す文書である。
は,この中で各担当部門に対し,今後6か月間に実践してもらいたX2
い内容を記載していた。しかし,現実には,達成できなかった年度もかな
りあった。
b乙第5号証によれば,2頁目「商品施策」欄に記載のとおり「Win,
版廉価バージョン」の商品化が求められており,これが第23期(上)の
商品施策の大きな目標の1つとなっていた。これを受けてが,乙第6X4
号証のとおり,開発部方針のひとつとして「貸出君forwin廉価版」の,
商品化を策定したのである。
の主張によれば,この「貸出君forwin廉価版」が「ミスターKCS
アドバンス」であるということになるが,荒唐無稽な主張というほかはな
い。
第23期(上)当時,が販売の主としていたものは「貸出君」KCS,
のASP版とWin版の両者であったが,実際には,この当時の販売実績
の中心は,ASP版であった。その理由は,当時のWin版がかなり重大
な欠陥を有しており,顧客より多くのクレームが発生していたためである。
そのため,これに対処することが,第23期上期の商品施策の1つとなっ
ていた(乙5,2頁目。)
しかし,上記欠陥の内容は「貸出君」Win版で使用されているデー,
タベース,SQLサーバの基本的な条件設計の誤りによるものであり,こ
の商品を,今後改善,改良を加えるということは,新しいものを一から作
り直す程の時間と費用をかけなければならない状況であった。
cそこで,とりあえず「貸出君forwin廉価版」というものを新しく開,
発することを計画したのであり,その内容は,OSにWindows20
00,データベースにオラクルを使用するというものであった(乙5。)
ところが,この「貸出君forwin廉価版」は全く開発できないまま,
半年後の第23期(下)を迎えてしまったのである。このことは,乙第7
号証にも明記されていることである(2頁目,中段。)
また,乙第7号証の記載内容から明らかなように,結局,その2頁中段
(Ⅰ(小文字「貸出君」Win版の改良や,同(Ⅳ(小文字「貸出君))))
,forwin廉価版」の開発を諦め,Linuxにその軸足を移し,同時に
もう一方の主力商品であるASP版に力点を置く計画に変更したのである。
dこのように上期における方針が,わずか半年後の下期において変更され
たのは,前記のように「貸出君」Win版は,欠陥商品としてのイメー,
ジが強く,対処療法ではあるが一部修正も終わったので,一から新商品を
開発する程度の費用と時間を費やすぐらいならば,今後市場にて主力とな
るであろうLinuxを使った新たな「貸出君」を作る方が得策と判断す
るに至ったからである。
しかし,第24期(上)に至っても,結局,Linux版プロトタイプ
はできず,またもや計画倒れとなってしまった。
それは,前記のように,第23期(上,下)における多数のクレーム発
生で,その対応に多大な時間と戦力を費やさざるを得なかったためである。
なお,は,ASP版入力簡素化バージョンを,平成13年9月にKCS
開発したと主張しているが,乙第5,第6号証のどこにもそのようなもの
の記載はない。
e以上,要するに「貸出君forwin廉価版」なるものは,OSをWin,
dows2000とし,データベースをオラクルとして,開発する計画で
あったが,結局,開発できなかった(なお,現在,にもにもKCSRBC
データベースにオラクルを使用している商品はなく,の現在の販売RBC
商品もデータベースは「SQLサーバ2003」を使用している。。)
このように,において開発できなかったものが「ミスターアドKCS,
バンス」になったとするの主張は事実に反している。KCS
イの主張(1)イ(らによる不正な企て)についてKCSX2
(ア)の主張(1)イ(ア)(設立準備行為)についてKCSRBC
が平成14年ころからの経営権を不正に奪取しようと企て始め,X2KCS
Y2やに理由もなく一方的に辞任を迫るようになったとの点,本来であY1
ればが取得するはずの代金を横領することにより着々と資金集めを進KCS
めていったとの点,なるべく大量の従業員をに移籍させてを倒RBCKCS
産に追い込むべく秘密裏にミーティングを重ねたとの点は否認する。
。RBC設立の経緯は前記(1)(新会社設立の経緯)で述べたとおりである
(イ)の主張(1)イ(イ)(ミスターアドバンスの開発)についてKCS
aの主張(1)イ(イ)a(開発当初の状況とネーミング)についてKCS
らが,在職中に設立後に販売するソフトの開発の準備X2KCSRBC
を進めていたとの点,開発中に「ミスターアドバンス」という名前が決定
したとの点は否認する。
「ミスターアドバンス」は,が平成15年3月設立時に「前貸RBC,
し」を意味する「アドバンス」に「ミスター」を付けて名付けたものであ
る。
これに対し,は,作成日付が平成15年1月10日となっていKCS
RBる甲第20号証の5に「Mr.Advance」と書かれており,
の上記主張と矛盾すると主張する。Cら
この点,甲20号証の5は,プログラム定義書であり,当該プログラ
ムを作成したのが平成15年1月10日であることは間違いないが,甲
第20号証の5自体の作成は同日ではない。すなわち,当該プログラム
を開発した当初は数名で開発を行っており,きちんとした定義書など作
成する暇もなく,メモ書き程度を残して,次々とプログラムを開発して
KCSRBCいた。その後,順次を退職した人間が手伝うようになり,
を設立して人数が増えると,ようやくにも余裕ができ,過去に作成X3
したプログラムについてメモを見ながら定義書を作成する作業ができる
ようになった。そして,甲第20号証の5を実際に作成したときには,
ミスターアドバンスという名称が決まっていたため,同名称を入力した
のである。
bの主張(1)イ(イ)b(オペレーションマニュアル(乙9)の作成)KCS
について
否認する。
(a)は,がP11にオペレーションマニュアル(乙9)の作成KCSX4
を指示したと主張するが,事実に反する。の主張を前提にすると,KCS
次のような矛盾が生じる。
①P11に作成能力がないこと
P11は,平成14年4月にに入社し,同年6月ころインストKCS
ラクターとして就業した。本来,インストラクターは,顧客に納入した
ソフトウェアの操作を指導することがその職務内容である。では,KCS
インストラクターは「貸出君」というソフトウェアの操作説明をするこ
とになるが,そのためには,自分自身がこのソフトウェアの機能,動作
を理解していることが前提となる。すなわち,乙第9号証のようなオペ
レーションマニュアルを作成するためには,そのソフトの機能・動作等
を十分に理解していなければならない。しかし,平成15年1,2月当
時のP11は,入社してまだ1年未満であり「貸出君」の中身の全体,
を熟知しておらず,それまで,一度として操作指導等のために顧客を訪
問したことはなかった。
そのP11が,仮に乙第9号証を作成したとすると,文章をWord
X4で単純に入力して作ったとした場合,下書き原稿が必要となるが,
はもちろんのこと,誰もP11に対して入力の指示をしたり原稿を渡し
たりなどしていない。存在しないソフトウェアのオペレーションマニュ
アルの原稿など,作成できたはずがない。
②作成期間が短すぎること
それでは,原稿がないまま乙第9号証を作成したと仮定してみる。こ
のように原稿がない場合のオペレーションマニュアルの作成は,まず,
インストラクターにソフトウェアの内容を知悉させるため操作練習及び
操作・機能説明を行ない,インストラクターはこれに基づいて自ら下書
き原稿を作成し,Wordを使ってオペレーションマニュアルを完成す
る,という手順をとる。甲第14号証の「開発スケジュール」を例にと
ると,インストラクターは,まず,平成15年3月10日ころ,操作練
習及び操作・機能説明を受ける。そして,最初に,マスター系のオペ
レーションマニュアルの下書き原稿を作成し,このマニュアルを完成さ
せる。次に,平成15年4月末ころから入出庫稼動等の操作練習及び操
作・機能説明を受け,下書き原稿を作成し,このマニュアルを完成させ
る,という手順になる。
ところが,の主張によると,これらを平成15年1月30日かKCS
KCSら平成15年2月7日までの期間に一挙に作成したことになる。
によれば,乙第9号証の1の1は「②マスタ登録業務」のオペレーショ
ンマニュアル,同号証の2の1は「③稼動業務」のオペレーションマ
ニュアル,同号証の3の1は「④販売業務」のオペレーションマニュア
ル,同号証の4の1は「問合せ」のオペレーションマニュアル,という
ことであり,同号証の各1の2,2の2,3の2,4の2には,各オペ
レーションマニュアルを作成したとする日が記載されている(P11の
署名捺印あり。これらには作成期間が記載されておらず,作成したと)
する日が1日だけ記載されているが,各オペレーションマニュアルを1
日で作成したなどということはあり得ない。たとえば,乙第9号証の3
の1は,平成15年1月30日に作成したとされているが(乙9の3の
2,Wordを使用し,画面の切り取り,張り付け等の作業を行なわ)
ねばならず,これを1日で仕上げるなど考えられない。
そこで,各オペレーションマニュアルの作成と説明に一定期間を要す
るとの前提で考える。乙第9号証の2の1と同号証の4の1は,いずれ
も平成15年2月4日に作成したとされている(乙9の2の2,乙9の
4の2。これらについて,同号証の3の1(上記のとおり平成15年)
1月30日に作成したとされている)の作成完了後,直ちに作成作業。
に取り掛かったとすれば,その作業期間は,平成15年1月31日,2
),月3日,2月4日の3日間となる(2月1日,2日は土,日。しかし
3日間でこれらを仕上げることなど極めて困難である。また,同号証の
1の1(平成15年2月7日に作成したとされている〔乙9の1の
2)に至っては,2月5日,2月6日,2月7日の3日間で作成され〕。
たことになるが,このようなことはおよそ不可能である。
ところで,が原稿を作成し,P11がそれに基づいて入力作業をX4
行なったとすると,両者の間で,原稿の内容及びマニュアルの全体イ
メージ,構成等についての協議がなされ,P11からに対して質問X4
が発せられたはずである。しかし,これらのことをに気付かれないY1
ように行うことは不可能である。また,P11は,2月4日に乙第9号
証の4の1を作成し,2月7日に同号証の1の1を作成したと記載して
いるが,は,2月4日と2月5日は沖縄へ出張しており,大阪に不X4
在であった。P11は誰に質問をし,誰によって解決しながらこのマ
ニュアルを作成したというのであろうか。
③作成順序が不自然であること
ここで強調すべきは,P11が述べている乙第9号証の作成順序が極
めて不自然であるということである。
コンピュータソフトの開発は,マスター系を開発することがまず最初
の手順である。これは,たとえば,建物を建築する時の基礎工事と同様
で,これなくしてソフトはできない。したがって,本来なら「②マス,
タ登録業務(乙9の1の1)が最初に作成され,次に「③稼動業務」」
(乙9の2の1「問合せ(乙9の4の1「④販売業務(乙9の3),」),」
の1)の順に作成されるはずである。
ところが,P11によれば,最後に作成されるべき「④販売業務」
(乙9の3の1)が最初(1月30日)に作成されたことになっており,
逆に,まず最初に作成されるべき「②マスタ登録業務(乙9の1の」
1)が最後(2月7日)に作成されたことになっている。このようなこ
とは,の依頼によるものだとすれば,あり得ないことである。X4
④作成の必要性がないこと
そもそも,平成15年3月にを退職する従業員が,何のためにKCS
同年1,2月の時点で内で危険を冒してまでオペレーションマKCS
ニュアルを作る必要があったのか不自然極まりない(が退職届を提X4
出したのは平成15年3月6日であるが,同人は,同年2月初旬には既
に退職の意思を固めていた。。)
オペレーションマニュアルは,顧客に納入した後,各業務毎に提供す
るものであり,P11が述べる作成期間を前提にするなら,乙第9号証
は,10日間もあれば作成できることになるから,らは,をX4KCS
退職した後に作成しても十分間に合うはずである。平成15年2月当時
は,同じフロア−でが毎日常在しており,内で誰が何をしてY1KCS
いるか見張っていたのであり,しかも,このころ,は,の東Y1KCS
京営業所において不始末が発覚したと大騒ぎしていた時期であり,P1
1が乙第9号証作成のため連日入力作業を行い,と何度も話合いをX4
行なっていたのであれば,が気付かないはずがない。このような時Y1
期に,内で危険を冒してまで,P11に命じてオペレーションマKCS
ニュアルを作成する必要性など全くなかった。
⑤乙第10号証について
は,乙第10号証は,乙第9号証が平成15年1月から2月にKCS
かけて作成された事実を証明するものと主張するが,乙第10号証もま
た,によってごく最近になって作成されたものであり,何の証KCSら
拠にもなり得ない。
Rこのような文章フォルダを作成することはいとも簡単なのである。
も,乙第10号証と同じ内容の文章フォルダ(甲29)を作成しBCら
た(ただし,乙10中の「とりあえず」の文言を,甲29では敢えて
「完成された」と打ち直して作成した。。)
⑥作業依頼書が作成・提出されていないこと
乙第7号証の4頁の組織図にあるとおり,平成15年1,2月当時,
P11は業務課(課長補佐)に配属されており,は開発課の課X1X4
長であった。当時,他の課に仕事を依頼するには,依頼元の課長が「作
業依頼書」を手書きで作成して捺印し(サインの場合も多い,依頼先。)
に提出するのがルールとなっていた。したがって,がP11にオペX4
レーションマニュアルの作成を依頼するのであれば,がに「作X4X1
業依頼書」を提出することになるが,はこれを受領したことがなく,X1
も提出したことがない。X4
(b)乙第9号証は,が各顧客に「オペレーションマニュアル」としRBC
て渡したものをが入手し,あるいは他の方法で手に入れて,本件KCSら
訴訟用に変造したものである。このことは,次のとおり,乙第9号証の表
紙のデザインが,の貸出君のマニュアル(甲87)の表紙のデザイKCS
ンと同じことから明らかである。
①「オペレーションマニュアル」は顧客に配布するためのものなので,
それなりの体裁が整えられており,通常,まず目次があり,各章毎に章
の表紙を付けている。その表紙のデザインには,簡素ではあるが,多く
の場合,作成者のセンスに応じ,ロゴが付されている。
乙第9号証の1の2の「②マスタ登録業務」とある表紙にも,小さな
葉のようなロゴが付けられている。
ところが,このロゴは,が,平成14年にも,平成15年にもKCS
顧客に配布していた「オペレーションマニュアル(甲87)の表紙に」
使われているものと全く同じものである。
②の主張によれば,乙第9号証は,が,を退職する1KCSX4KCS
か月程前に,現在ののために,部下を使って作成させたというのRBC
であるが,もしそうであれば,既に,が表紙に使っていたものとKCS
同一のロゴを使用することなどおよそあり得ない。
しかも,このロゴは,以下に述べるように,独自のもので,一KCS
般化されていないものである。は,マイクロソフト社製のWorRBC
dという文章作成ソフトを利用しているが,このソフトには,約300
0種のロゴ,カット絵等が「クリップアート」として標準装備されてお
り,Word上で簡単に使用できるものである。ところが,の使KCS
用している前記表紙のロゴは,この標準には入っておらず,独自のもの
である。もし仮に,が,の主張のとおり,平成15年1月3X4KCS
0日から同年2月7日までの約10日間の短期間に,乙第9号証のよう
なものを代表者やに内密で作成するとすれば,前記ソフトのKCSY1
標準に入っていない特殊なロゴをわざわざ真似るようなことをせず,簡
単に作成し得る別のクリップアートを使用していたはずである。
③このロゴの部分を含め,甲第87号証の各章毎の表紙は乙第9号証の
1の2,2の2,3の2と全く同じデザインで作られている(番号の②,
③,④の形状まで同一である。)
前記のとおり,が,今後,自分たちで販売するつもりの商品のオX4
ペレーションマニュアルを作成したとするなら,当時が使用してKCS
いた表紙のデザインを用いることなど,これまたあり得ない。
(c)乙第9号証は,作成の「ミスターアドバンス」のオペレーショRBC
ンマニュアル(甲96)を変造したものであるが,そのため,両者には異
なる箇所が多々ある。これをまとめたものが別紙10「乙9・甲96対比
表」である。
他方,上記対比表の「異なる点」の欄で指摘したとおり,乙第9号証は,
作成の「貸出君」のオペレーションマニュアル(甲87)と多くのKCS
点で類似している。
すなわち,は「貸出君」のオペレーションマニュアル(甲8KCSら,
7)を基本にして「ミスターアドバンス」のオペレーションマニュアル,
(甲96)に変造を加えて,本件訴訟に提出しているのである。
(d)乙第9号証では,次のとおり異なるコード表示がなされており,そも
そもプログラムが正常に稼動しない。
①コンピュータシステムを創るには,まずマスタを決定し,その後,
必要な業務処理に関し,多数のプログラムを構築していく。そのマス
タは,業種や業界によりその特徴が表わされる。そして,一旦,マス
,タにおいて決定された各項目の条件(たとえば,得意先コードの桁数
仕入先コードの桁数,区分コードNO等)は,同じコンピュータシス
テム内においては,統一して使用される。
②ところが,乙第9号証の1の1(マスタ登録業務)を注視してみる
と,ページにより,条件が不統一,不一致となっている記載を多数確
認することができる。これをまとめたものが別紙11「乙9不統一・
不一致表」である。すなわち,乙第9号証には,得意先コード7桁の
プログラムと6桁のプログラムが混在していることになっており(表
1,仕入先コードも同様に異なる桁数が記載されている(表2。ま))
た「仮設」という商品区分が頁によってB,Kという異なる記号で表,
現されており(表3,項目の名称も表示画面により異なった表現とな)
っている(表4)など,同一のソフトならおよそあり得ない事態とな
っている。
ちなみに,甲第114号証の1∼9は,大塚商会が販売しているレ
ンタル業界向けコンピューターソフトの「運用オペレーションマニュ
アル」の一部であるが,得意先コードはどの頁も6桁であり,仕入先
コードもどの頁をみても6桁で,それぞれが統一されている(得意先
コードが,ある頁では5桁などということにはなっていない。)
③そこで,乙第9号証において異なるコード表示がなされていること
の理由を改めて分析すると,2種類のシステムの一部ずつ張り合わせ
て作成されたためであることが明らかとなる。は,2種類のKCSら
オペレーションマニュアルの根本的な違い(コードの桁数など)を見
逃して乙第9号証を作成したため,このような破綻を示したものとい
える。
(e)乙第9号証は,およそオペレーションマニュアルとしてはあり得ない
ものである。
すなわち,乙第9号証は,各種マスタプログラムについてのオペレー
,ションマニュアルである。たとえば,同号証の1の1の頁(2−1)に
「得意先マスタ登録・修正・削除」というマスタプログラムが存在する
ことを前提として,頁(2−1)から(2−4)までが,そのプログラ
,ムの内容の説明ということになっている。ところが,詳細に検討すると
。「型式マスタ・登録・修正・削除」という別異の表現が随所にみられる
その記載箇所を一覧にしたものが,次の表である。
(表)乙9の1の1に「型式マスタ・登録・修正・削除」という語彙
が記載されているページ
頁行数
2−4上から17行目
2−26下から4行目
2−27下から3行目
2−28最下行
2−45最下行
2−49最下行
2−54下から8行目
2−55下から4行目
これによると「型式マスタ・登録・修正・削除」という名称のプログ,
ラムが,同号証の1の1内に存在することになる。しかし,このような
プログラムはこのオペレーションマニュアルのどこにも存在しない。
前記のとおり,同号証の1の1は,KCSソフトのオペレーションマ
ニュアル(甲87)から20数頁をそのままコピーし,他のオペレー
ションマニュアルと合成して作り上げたものであるために,このような
矛盾に満ちたものになってしまったのである。
(f)小括
は,乙第9号証はP11がから指示されて作ったオペレーKCSX4
ションマニュアルであり,実際にシステムを稼動させながら,平成15
年1月22日から同年2月7日にかけて作成したと主張する。
しかし,前記(d)(e)のとおり,桁数が同じでなければならない部分
が違う桁になっていたり,存在しない「型式マスタ登録修正削除」とい
う項目が何度も出てきたりしており,乙第9号証のとおりのシステムで
あれば稼動しないことが明らかである。
いかに「とりあえず」作っておいてくれと言われたからといって,シ
ステムを稼動させながら作っていたのであれば,ここまで間違いだらけ
のマニュアルを作ることはない。
そして,からのこの指摘に対して,からは何ら反論がRBCらKCS
なされていない。また,P11は,証人尋問において,同期が全員辞め
るという異常な事態にもかかわらず,会社内の雰囲気に何も感じなかっ
たと述べたり,覚えていないと述べたりするなど,その尋問態度は不自
然であり,到底信用できない。
(ウ)の主張(1)イ(ウ)(各種資料等の持ち出し)についてKCS
aの主張(1)イ(ウ)a(各種資料の持ち出し及びの対応)にKCSKCS
ついて
元従業員が書類等を大量に持ち出したとの点は否認する。KCS
(a)そもそも「貸出君forwin廉価版」と「貸出君ASP新版」なる
成果物などは存在せず,このようなものをが主張する平成13年KCS
9月から開発などしていたら,に現在在籍している従業員も当然KCS
その成果物を見ているはずである。
(b)が休日に届出もせず出社していたのは,当時は通常のことで,X4
その多くはトラブル顧客の解決のためであった。すなわち,平成13年,
X4平成14年当時は,トラブルを持つ顧客が多数存在し,その対応に
を含むシステム担当者も,日々忙殺されていたのである。
(c)また,当時のの顧客はの現在の営業担当従業員がすべKCSRBC
て販売していたものであり,個人記録帳で十分に間に合うから,らX4
が顧客名簿,契約書など持ち出す必要など全く存在しない。
この点に関し,P14係長は,在職の過去10年間の自分の作KCS
成した書類は自分の保有物と思い込み,それらを持ち出したことはある
が,それらがのものであるとの説明を受け全部返却している。まKCS
たこのことで,東警察署に事情聴取を受けたことも事実である。
しかし,警察による事情聴取の内容(つまり,警察の主な関心)は,
専らの人格についてのものばかりで,P14係長が,警察から,何Y1
を聞かれたかについて現在記憶しているのは,そのことだけである。
(d)はの主張する資料や「貸出君」のソースプログラムRBCKCS,
等を所持する必要など全くないものであり,したがってから成果KCS
物を持ち出したことはない。
ソースプログラム等は多くの顧客のコンピュータシステム内に存在し
ており,そのようなものを持ち出す必要性などまったく存在しない。
bの主張(1)イ(ウ)b(ドキュメントのコピー)についてKCS
争う。
cの主張(1)イ(ウ)c(K6900のへの持ち込み)についKCSRBC

否認する。
K6900は,KITシステムズが,リース期間終了後に廃棄する際
(平成13年9月ころ,当時に在籍していたが,KITシス)KCSX4
テムズのP22より,できるだけ早く返還,廃棄することを前提に貸与さ
れたものである(なぜなら,当該オフコンは,ファイナンス会社の所有物
で,KITシステムズが廃棄することを請け負ったものである。)
貸与の条件は,KITシステムズの顧客那覇鋼材のシステムチェックで
あったが,機械の不足を補うために他のメンバーも使用していた。そのた
めは,在籍中,当該オフコンを使い,那覇鋼材のシステムの細X4KCS
かなチェックを行っていた。平成15年2月,が,を退社するX4KCS
ことを決定した後に,責任上,KITシステムズに連絡し,当該オフコン
の内部のデータすべてを抹消して,廃棄の手続を行ったものである。した
がって,に所有権などが存在するものではない。KCS
は,P18,P17に「内で見た「使用した」と虚偽のKCSRBC,」
陳述をさせている。P18,P17とも,在籍期間1か月程度であり,当
該オフコンを使用することなどあり得ない。すなわち,両名とも,卒業後
に入社した在籍中に,それぞれWindowsやLinuxを中心KCS
とした仕事に従事しており,オフコンなど使用したこともなく,また使用
できる技術力は全くなかった。
(5)の主張(2)(持ち出された成果物等とミスターアドバンスの一致)に対KCS
する反論
アの主張(2)ア(ミスターアドバンス」のパンフレットの記載事項がKCS「
「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュアルの記載事項と一致す
ること)について
乙第9号証が,のオペレーションマニュアル(甲87)を基本にし,KCS
のオペレーションマニュアル(甲96)に変造を加えたものであることRBC
は,前記(4)イ(イ)bのとおりである。
したがって「ミスターアドバンス」のパンフレットの記載事項が乙第9号,
証の記載事項と一致するからといって,これによって,によって開発KCS
されていた「貸出君forwin廉価版」がの元従業員によって持ち出さKCS
れて「ミスターアドバンス」として販売されたことを裏付けることにはなら
ない。
イの主張(2)イ(ミスターアドバンス」の仕様書が「貸出君ASP新KCS「
版」の仕様書と同一内容であること)について
(ア)とは,に在籍中,プログラム定義書を作る作業に従事しX3X6KCS
ていた。そして,P20(当時福岡営業所勤務で福岡に居住)は,プKCS
ログラム定義書に基づいて,実際に作動するプログラムを作成する業務に従
事していた。
(イ)は平成15年1月6日,は同年1月20日にを退職した。X3X6KCS
同年2月中旬ごろ,は,同年2月20日に福岡営業所を閉鎖すY1KCS
る方針を打ち出したが,P20,P10,P19に対し,同年3月20日付
で解雇するが,それまで同営業所で残務整理するように命じた(それ以外の
者は直ちに解雇された。なお,上記方針どおり,2月20日に同営業所は閉
鎖された。)
(ウ)前記のとおり,同年1月にを退社していたとは,同年2KCSX3X6
月末日ごろ,P20(母子家庭)に対し,夜間や土,日曜の時間帯を利用し
て,やが作成する定義書に基づいて,生活費の足しにするためアルX3X6
バイトとしてプログラムを作ることを依頼し,そのために必要なオフコンを
P20の家に置いた。ところが,自宅のオフコンに対しては定義書を送信す
ることができないため,同年2月末か3月初めころ,は,大阪からP2X6
0が残務整理をしていた福岡営業所のパソコンに定義書を送信した。それが
残ってしまったのが,乙第23号証の2枚目以降である。
すなわち,これは,を退職した後に,,が作成したもので,KCSX3X6
(残務整理とはいえに在籍していたP20に対して送信したことは不KCS
適当ではあるが)在籍中職務上に作成されたものではない。KCS
なお,乙第23号証の1枚目の送付書にあたる部分は,が作成したもX6
のであるが,上記のとおり同年2月末か3月初めころ作成されたものである。
(エ)は,この送付書から送信日が分かる部分を切り取ってコピーしKCS
(すなわち,同年2月末か3月初めに作成された送付書を変造し,本件訴)
訟用に乙第23号証を作り「平成15年1月以前」に作成されたものと主,
張しているのである。
(オ)の証拠説明によると,乙第23号証の作成日は「平成15年1KCSら
月以前」という曖昧なものであるが,本書自体には日付が一切記載されてい
ない。この種の書類は,Excelという表作成用のソフトウエア(マイク
ロソフト社製)を用いて作成されるが,その際には,必ずツディー(toda
,y)処理を行なっているので,その処理をした日付が記載される。ところが
乙第23号証に全く日付が記載されておらず,特に,必ず送信された日付が
強制的に入るようになっている発信文書にも,日付の記載がない。このよう
な奇怪ともいうべき文書である乙第23号証は,において,本件訴KCSら
訟用にのメールから日付を消去し,切り取って変造して作成されたものX6
であることは明らかである。
(カ)したがって「ミスターアドバンス」の仕様書が「貸出君ASP新版」,
の仕様書と同一内容であるからといって,これによって,によってKCS
開発済みの「貸出君ASP新版」プログラムがの元従業員によってKCS
持ち出され「ミスターアドバンス」として販売されたことを裏付けること,
にはならない。
(キ)は,乙第23号証の内容が開発済みのプログラムに対する修正をKCS
指示する仕様書であるとして,この時点以前に現場マスタメンテナンスの開
発が開始されているはずであり,甲第116号証の22で現場マスタメンテ
ナンスの開発開始が平成15年4月11日というのは矛盾すると主張する。
確かに,乙第23号証のみを見れば,そのようにも思える。しかし,実は,
同号証を送付する直前に,現場マスタメンテナンスの開発を指示する仕様書
を送付しており,同号証は,その仕様書についての変更を指示したものなの
である。すなわち,同号証が送付された時点では,現場マスタメンテナンス
のプログラムは未だ開発されていなかった。そして,P20は,もともと土
日と夜間のみのアルバイトの予定であったが,結局は在職中は忙しくKCS
て開発することができず,退職してからの開発となったため,開発開始は平
成15年4月11日としているのである。
(6)の主張(3)(の弁解が不合理であること)に対する反論KCSRBCら
アの主張(3)ア(プログラム数)についてKCS
(ア)の主張(3)ア(ア)(プログラム数に関する主張立証に矛盾があるKCS
こと)について
甲第13号証の別紙は,今後作成する予定のプログラムまで全て含んだ一
覧であり,同号証提出時における作成本数と矛盾しない。同号証別紙は開発
予定のプログラム一覧であるが,プログラムID等の番号は,予め決めてお
いたのである。
甲第115号証は,専門委員の判断に必要な限度で提出した書面であり,
全てを出したわけではないから,プログラムの一部にすぎなくとも当然であ
る。が提出したプログラムが少ないのは,営業秘密であるから全てRBCら
を出すことができないことや,専門委員による創作性・類似性の判断のため
には,全てを出す必要がなく,専門委員に伺った上で,提出プログラムを絞
ったからである。
(イ)の主張(3)ア(イ)(甲115及び甲117のプログラム一覧は一KCS
部にすぎないこと)について
上記のとおり,甲第115号証は,専門委員の判断に必要な限度で提出し
た書面であり,全てを出したわけではないから,プログラムの一部にすぎな
くとも当然である。
(ウ)の主張(3)ア(ウ)(甲115と甲116との間に齟齬が生じていKCS
ること)について
甲第116号証は,修正履歴であるが,メインプログラムのみを修正し,
それ以外の部分は一度作ったら修正不要であるため,メインプログラムのみ
に修正履歴があるのである。したがって,甲第115号証と甲第116号証
は矛盾しない。
修正が不要なプログラムについてまで本数に含まれるのが慣例であるのは,
プログラマーが,自分が開発した本数を多く見せたいという気持ちからだと
思われる。
イの主張(3)イ(開発期間に関する矛盾)についてKCS
(ア)「120人/月」に関する当事者の主張の経緯
aは,平成16年3月18日付け準備書面(1)7頁において,KCS
「原告()の従業員らは,被告()に在籍していた平成1RBCKCS
3年ころから貸出君の新バージョンの開発に従事しはじめ,15年1月
ころにはこれを完成させた。原告()の従業員らはこのプログラRBC
ム及びドキュメントを社外に持ち出して原告()のソフトを完成RBC
させた」と主張した。
bこれに対し,は,社内で,の貸出君の新バーRBCらKCSKCS
ジョンを完全に新しくカスタマイズさせるとすれば,そのような短期間
,(平成13年から平成15年1月)ではできないことを指摘するために
平成16年5月11日付け準備書面(2)において「そもそも一企業の,
存続を決定するほどの規模のパッケージシステムを造るとすれば,業界
状況を熟知したシステムエンジニアーが120人/月の人力が必要であ
り,在籍中に誰も知られずに大きなシステムを造ることなどできKCS
るはずがない」と反論したのである。
ここでが,在籍中に誰も知られずに大きなシステムをRBCらKCS
RBC造ることなどできるはずがない,と述べていることから見れば,
の反論は,社内で貸出君の新バージョンを完全に新しくカスタマKCS
イズさせるには120人/月の人力が必要であり,が主張するそKCS
のような短期間(平成13年から平成15年1月)ではなし得ない,と
反論していることが明白である。換言すれば,がミスターアドRBCら
バンスを開発するために,120人/月の人力が必要であると主張した
ものでないことも,また明白である。
なお,プログラムの業界においては,通常「人/月」とは,1人の人,
間が1日8時間で23日働いた労力を指すため,このときもその意味で
使用している。また「システムエンジニアー」と記載しているが,顧客,
に対して見積もりを出すときにシステムエンジニアーとプログラマーを
分けて記載しないのが通常であり,プログラマーも含む趣旨で使用して
いる。
cしかるに,は,以後の準備書面(平成16年6月16日付け,KCS
同年8月6日付け)において,がミスターアドバンスを開発すRBCら
RBCるには120人/月の人力が必要であることを自認している,と
の主張の真意を,敢えての都合のよい意味にすり替えた。すならKCS
わち,は,がミスターアドバンスを開発するに必要な数KCSRBCら
字として述べたものでないことを,あたかもがそのような趣旨RBCら
で述べたように誤って主張したものである。
(イ)のシステムを作成するに必要な「人力」RBC
aは,甲第15号証から,平成16年3月においても,Win版KCS
で25人/月,ASP版で47人/月の人力しかかかっていないと主張
する。
(a)しかし,が平成15年1月から平成16年3月までにシスRBC
テム開発に要した人力は,別紙12「甲15の説明表」のとおりであ
る。すなわち,
①Win版システム:58人/月の人力(15年1月から平成1
6年3月迄)
②ASP版のシステム:83人/月の人力(15年1月から平成1
6年3月迄)
となる。したがって,の主張とは相違する。KCS
(b)の主張が,別紙12「甲15の説明表」とは異なるのは,KCS
がシステムエンジニアーの担当部分だけを取り上げ,プログラKCS
マーの担当部分を除外しているが,前記のとおり,の主張すRBCら
る「人/月」はプログラマーも含むものだからである。
(c)また,甲第15号証記載の月数は,1日8時間労働で23日勤務
で換算したものではなく,単純な延べ月数であるが,は短期RBCら
間で開発するために全員が一丸となって開発を進めていたため,1日
,の労働時間は8時間をはるかに超えていたし,休みもなく働いており
「人/月」計算に換算すれば2倍近くなると思われる。
しかし,労働時間の記録はなく,1日8時間労働で23日勤務に換
算しての人力の主張は不可能なため,単純な延べ月数での主張にとど
める。
bそれでは,RBCシステムは一体どのくらいの人力をかければ完成す
るかということであるが,これは,RBCシステムは顧客ごとにカスタ
マイズを予定していて,常に半製品であり,パッケージソフトのような
「完成」形態というものは存在しない。また,顧客ごとに「完成」とい
う時点はあるが,顧客によってプログラム数も異なり,かかる人力も異
なってくる。
したがって,RBCシステムが何人/月で「完成」するかは,顧客ご
とに異なってくるといえるが,複数の顧客のシステムを同時並行的に開
発しているため,各顧客ごとの工数を出すのは極めて困難である。
そこで,最初の販売先の稼動確認ができた時点で,一応の完成と定義
づけ,この時点での工数を出すことにするが,そうすると,Win版で
は平成16年9月に稼動確認し,ASP版では同年1月に稼動確認して
いるため,Win版においては,平成16年9月までの人力,ASP版
においては,同年1月までの人力が,完成までに必要な人力となる。
別紙13は平成16年1月までのASP版の人力を,別紙14は同年
,9月までのWin版の人力を,それぞれ表にしたものである。すなわち
①Win版システム:103人/月の人力(15年1月から平成
16年9月迄)
②ASP版のシステム:89人/月の人力(15年1月から平成1
6年1月迄)
となる。
当然,このときも,他の顧客の作業も含まれているため,最初の販売
先のみにかかった工数というわけではないし,前述したとおり,残業時
間や休日勤務まで含んでいるため,正確な「人/月」ではない。
なお,最初の「販売」ができた平成15年3月の人力も念のため表に
すると,別紙15のとおりとなり,
①Win版システム:4人/月の人力(15年1月から平成1
5年3月迄)
②ASP版のシステム:12人/月の人力(15年1月から平成1
5年3月迄)
となるが「販売」ができた時点で「完成」とはいえないことは,後記ウ,
のとおりである。
cよって,RBCシステムの完成を稼動確認時と定義すると,完成に必
要な人力は,Win版で103人/月,ASP版で89人/月となる。
(ウ)以上のように,が「原告()はミスターアドバンスの開KCSRBC
発に120人/月の人力が必要と認めておきながら,16年3月時点でそ
の1/3∼1/5にあたる,25人/月の人力,47人/月の人力でミス
ターアドバンスを開発したと主張していることは,平成16年3月時点に
おいてすらシステムの完成にほど遠いことを表している」と主張している
のは,前提問題をすり替えた空論である。
ウの主張(3)ウ(開発スケジュールに関する矛盾)についてKCS
(ア)RBCシステムは請負型であること
aコンピュータソフト開発業者が顧客との間で顧客の要求を分析すると
いう作業から仕事を始め,その顧客の要求に応じたシステムの基本設計
を行い,合意に達した内容を基に具体的なプログラミング作業を行い,
検収の上納入するという方式を一般的に「ソフト請負方式」と呼んでい
る。洋服や住宅の例でいえば,完全なオーダーメイド服や完全な注文住
宅というものが,コンピュータ業界のソフト請負方式となる。
ソフト請負方式の利点は,顧客の要求に沿ったソフトであるために顧
客の満足度が高いという長所があるが,欠点としては,開発までの期間
が長く,開発費用が高額になってしまうということが挙げられる。大企
業は,ソフト請負方式による開発を依頼することが多いが,一般的に中
小企業は,ソフト開発に高額を投じることが難しいのが現状である。
bこれに対し「完全パッケージ方式」のソフトも存在し,長所としては,
安価なこと,短所としては自由度が全くないことが挙げられ,ソフト請
負方式とは正反対となる。洋服や住宅の例でいえば,既製服や建売住宅
ということになる。
完全パッケージ方式のソフトは,全く同じ内容ソフトを相当数販売す
るから,安価で販売しても開発コストを回収できるのであり,需要が多
くなければならないし,販売に先行して開発するコストをコンピュータ
開発業者が負担しなければならないため,よほど力のあるコンピュータ
開発業者でなければ不可能である。また,押し着せのソフトでは満足で
。きない顧客も多く,個別の要望を取り入れて欲しいという声が多かった
cそこで大手コンピュータメーカーは,昭和50年ころより,多数の中
小企業向けにコンピュータを販売するためにはソフトの安さが必須であ
るとの考えから,ソフトの「基本パッケージ化」という考え方を取り入
れたのである。
この考え方は,顧客要求のうち共通化できる部分は,一度開発したも
のを他の顧客にも用いることで,比較的低価格でコンピュータソフトが
販売できるというものであり,共通した部分を「基本パッケージ」と呼
ぶ。また,その他の顧客要求は個別に開発を進めるため,個々の要望に
も対応できるのである。すなわち「基本パッケージ「販売」などとい,」
う用語は使用するものの,その実態は請負型である。
基本パッケージ方式は,開発の工数が軽減されるために完全請負方式
に比べて早く完成し,安価である上,顧客の要望も取り入れることがで
きるという長所を持っていて,ソフト請負方式と完全パッケージ方式の
長所を併せ持つ上「販売」という名称を用いるために,契約時に金銭を,
回収してから個別開発をすすめることができるというメリットもあり,
何種類かの基本パッケージ方式のソフトが大手コンピュータメーカーか
ら発売された。
,dしかし,大手が販売を開始した基本パッケージでカバーできる業務は
企業形態として比較的多数存在する物販業者(商事会社)やアセンブル
業者(製造業)などに限られ,その他多くの業種の事業形態にはこのよ
うな方式は取り込めない状態が続いていた。
そこで,平成元年ころ,に在籍していたが中心となり,当KCSX2
時全く手付かずであった市場規模の小さな建設機械のレンタル業者向け
のコンピュータソフトを開発するにあたり,この業界独自の基本パッ
ケージ化を着想しソフトを開発,販売し始めたのが「貸出君」である。
「貸出君」においては,従業員が在籍中に「可変システRBCKCS
ム」という表現を思いつき「可変システム」であることを強調していた。,
Rしたがって「貸出君」は基本パッケージ方式として請負型に属し,,
も,基本パッケージ方式で「ミスターアドバンス」を開発販売してBC
今日に至っており,いずれも請負型である。
そして,RBCシステムは,請負型であるため,平成15年1月から
開発を開始し,同年3月の会社設立と同時に販売(契約)することが可
能だったのである。
(イ)の主張KCS
は,RBCシステムが平成15年1月に開発を開始して同年3月KCS
に「販売」可能になることはあり得ないと主張しているが,この主張は,
RBCシステムやKCSシステムが請負型ではないということを前提にし
ている。
そして,は,KCSシステムの販売には,変動経費はかからないKCS
と主張し,その理由として「一度プログラムが完成してしまえば,1つ追,
加的に販売するために,原材料の仕入れ等の追加的費用が必要となる訳で
はない」としているところ,請負型であれば,販売ごとに開発経費がかか。
,るのであるから,の上記主張は,KCSシステムが請負型ではなくKCS
完全パッケージ型であるという趣旨である。
また,は,が,販売時からリース料を受け取っていたことKCSRBC
に対し「機能しないソフトのために毎月のリース料を何のクレームもなし,
に支払い続ける顧客が存在するはずもなく,の弁解は一見して虚RBCら
偽である」と主張する。以下,の上記各主張について反論する。KCS
(ウ)のウェブサイトKCS
は,自らのホームページにおいて「貸出君導入手順イメージ」とKCS,
して「現状調査分析「基本設計「詳細設計」が必要であることを明記し,」」
ている(甲230の1。このことは,請負型のソフトであるということを)
自認している。
この「貸出君導入手順イメージ」には,マスタ原票の作成・登録・指導
の後に,詳細設計が置かれているが,これはが,マスタープログラRBC
ムの主要部の開発後に要望事項を順次開発納品するという手順と全く同じ
である。また,従業員が在籍中に考えた「可変システム」とRBCKCS
いう表現もそのまま使い続けている(甲230の2。)
(エ)の顧客KCS
は,が信用誹謗行為をしているとして,大東建機株式会社KCSRBC
の担当者からのメール(乙117)を提出したが,その大東建機株式会社
は,から「貸出君」を購入し,ファイナンスを利用して支払を実施KCS
したにもかかわらず,からプログラムの納入を受けることができなKCS
かったという損害を被っている(甲232。したがって,があり得)KCS
ないと主張する,ソフトが機能していない状態でリース料を払い始めると
いうことは,においても当然のごとく行われていたものである。KCS
Rこのように,ソフトが機能していないのに契約金額を受領するのは,
もも,資金が潤沢にある大手企業ではなく,開発にかかる経費BCKCS
を先に回収するというスタイルをとらざるを得ず,そのことを顧客にも理
解してもらい,きちんと最後まで完成させるということを信頼してもらっ
ているからである。
ところが,は,ソフトを完成させることができなかったのであっKCS
て,顧客に大変な損害を与えているのである。
(オ)小括
以上のとおり,RBCシステムが請負型であるため,開発が完了していな
くても,平成15年3月にRBCシステムの販売を開始することが可能だっ
た。
2争点2(RBCプログラムは貸出君プログラムに対するの著作権を侵害すKCS
るか)の(1)(貸出君プログラムの著作物性の有無)について
【の主張】KCS
(1)判例上の基準
プログラムが著作権法上の保護対象である著作物に当たるというためには,
思想,感情を創作的に表現したものであることが必要であるが,創作的に表現
したものというためには,当該表現が,開発者の個性が発揮されたものであれ
ば十分であり,厳密な意味で独創性のあることまで要求されるわけではない。
すなわち,プログラムは,具体的記述において,開発者の何らかの個性が表現
されていれば,著作物として著作権法上の保護対象となる(東京地判平成15
年1月31日判時1820−127。)
また,プログラムが著作権法上保護対象である著作物に当たるというために
は,特別に高度の創作性が必要とされる訳でもなく,制御用プログラム等にお
いて,指令の組み合わせがハードウェアに規制されるために誰が作成しても本
来的に同様にならざるを得ない場合や,極めて一般的な指令の組み合わせを採
用しているにすぎないような場合に限り,創作性が否定され得るにすぎない
(東京高決平成元年6月20日判時1322−138。)
(2)貸出君プログラム
貸出君プログラムは,Win版にしても,ビジネスサーバ版にしても,制御用
プログラムのようなものではなく,パーソナルコンピュータやオフコンで実行
されるアプリケーションプログラムであり,ハードウェアの規制により表現方
,法が限定されるということはない。しかも,ソースコードは膨大な量からなり
開発のために相当な人員と期間を要しており,プログラム言語の文法等の制限
があるにせよ,誰が作成しても同様な記述となり得るものではなく,開発者の
個性が表現されたものであることが明らかで,著作物性を有していることはい
うまでもない。また,乙第84号証等において赤色で着色した貸出君プログラ
ムとRBCプログラムとの共通部分は,貸出君プログラムの一部であるが,こ
の部分だけをとっても,以下に説明するとおり,開発者の個性が表れており,
著作物性を有していることが明らかである。
アWin版
(ア)貸出君プログラムのWin版のソースコードは,プログラム言語Vi
sualBasicで記述されたものであるが,VisualBasic
では,プログラムをサブルーチンの組合せとして記述する。すなわち,ま
ず,行おうとする処理を機能ごとに分割して全体構成を考え,そして各機
能を担うサブルーチンを作成することによってプログラムが構成される。
サブルーチンは「PrivateSub」∼「EndSub」まで,
のまとまりであり,各サブルーチンにどのような機能を持たせるか,各サ
ブルーチン内に実行される命令語をどのように記述するかは,開発者が自
由に決定することができる。つまり,各サブルーチンにどのような機能を
担わせるか,そしてサブルーチンをどのような順序で配置するかという全
体構成の点,並びに各サブルーチンにおいて機能を実現するための命令語
を具体的にどのように記述するかの点で,開発者の個性が表れることとな
る。
乙第84号証の得意先マスタ登録のソースコードのうち,赤色に着色し
たRBCプログラムと共通性のある部分には多数のサブルーチンが含まれ
ているが,この部分は,得意先マスタ登録の表示画面において,表示され
た個々の項目に対するユーザーからのキー入力やマウスのクリックが行わ
れたとき等の,イベントが発生した場合に実行される処理内容を記述した
。ものであり,各イベントに対応するサブルーチン群として構成されている
。そして,この着色した部分のサブルーチンの個数は100個を超えている
パーソナルコンピュータやオフコンで実行されるアプリケーションプロ
グラムにおいては,画面に表示される項目や,ユーザーの操作方法,それ
,に対応するコンピュータの処理内容には無限の組合せがあり,項目の選択
各処理を担うサブルーチンの並び順や個々のサブルーチンの記述内容は,
開発者が自由に設定することができ,ハードウェアやプログラム言語上の
制限,処理目的等によって一律に定まるわけではない。
サブルーチンが100個もあれば,その並び順(単純計算では100の
階乗通りという無数の組み合わせが可能)や個々の記述内容において十分
に開発者の個性が表れたものとなることは明らかである。
したがって,貸出君プログラムのWin版のソースコードにおけるRB
Cプログラムとの共通部分は,誰が作成しても同様な表現となり得るよう
なものではなければ,本来的に同様な表現とならざるを得ないようなもの
,でも,極めて一般的な指令の組み合わせを採用しているものでもないため
著作物性が認められる。
(イ)貸出君プログラムの得意先マスタ登録に関するWin版ソースコード
(乙76)におけるRBCプログラムとの共通部分(乙84)は,以下の
①∼⑦の部分を有している。
①ComboBoxコントロールに対する操作を行うサブルーチン群を
記述した部分(乙76の37頁∼47頁)
乙第76号証の37頁∼47頁には「PrivateSubAd,
d_cboSEIK_KR_PRT()∼EndSub「Pr」,
ivateSubAdd_cboTOMT_PAYM_KB()
∼EndSub」等,名称に「Add_」が含まれているサブルー
チンが多数存在するが,これらはVBのComboBoxコントロール
に対する操作を行うものである。
ComboBoxコントロールは,ユーザーがキーボード等から入力
可能なテキストボックスを備えているとともに,その右端の▼のボタン
を押すと,選択肢のリストを表示し,その中から1つ又は複数の項目を
選択できるようになっている。
ComboBoxコントロールは,開発者が編集画面において配置す
るものであり,その個数やそれぞれの位置,大きさ,プロパティ等は自
由に設定することができる。貸出君プログラムのソースコードの一部で
ある乙第76号証の第1頁∼第36頁第25行目には,ComboBo
xコントロールやその他の画面上に配置されるコントロールの情報が記
述されている。
各ComboBoxコントロールには「cboSEIK_KR_PR,
T「cboTOMT_PAYM_KB」等の固有の名称が付されてい」,
るが,前記共通部分において,これらの名称の前に「Add_」を付し
た名称を含むサブルーチンは,対応するComboBoxコントロール
に,項目の追加を行うものとなっている。
たとえば「PrivateSubAdd_cboSEIK_KR,
_PRT()∼EndSub」というサブルーチンにおいては,
「WithcboSEIK_KR_PRT∼EndWith」
の構文中において,2つの「AddItem」というメソッドにより,
「cboSEIK_KR_PRT」という名称のComboBoxコン
トロールに対して,リストに”0−あり”及び”1−なし”の2つの項
目を追加している。
そして,これ以外にも「Add_」を付した名称を含むサブルーチン
は多数存在するが,それらはいずれも「With〔ComboBox,
コントロールの名称〕∼EndWith」の構文を使用すること
により,記述形式の統一がなされている。さらに,これらComboB
oxコントロールに項目を追加する操作を行うサブルーチンを,連続的
に配置している点で,表現上の特徴を有する。
なお,サブルーチンの記述のうち「PrivateSub」や「E,
ndSub」は定型的なものであるが「Add_」等の記述は定型的,
なものではなく,開発者が任意に決定できる。
②出庫・入庫・売上・入金の各データに関するチェックを行う関数(F
unction)を記述した部分(乙76の47頁∼49頁)
次に,前記①の後に「PrivateFunctionData,
_Check()∼EndFunction」という関数が配置
されている。この関数には’出庫データをチェック’入庫データをチ,’,
ェック’売上データをチェック’入金データをチェック’という項’,’,
目が存在するが,これらはいずれも「SQL=」で始まる段落と「r,,
c=」で始まる段落とで構成されている。
各項目の「SQL=」で始まる段落では,データベースへの問合せ言
語で記述した”SELECT得意先CD・・・”というデータベース
への指示内容を文字変数SQLに格納し「rc=」で始まる段落におい,
て,前記指示内容を共通関数「DB_Sub_Select(SQL」)
に渡して実行し,その値をrcに代入し,rcの値が真なら「Msg_
Err」の項へ飛び,Sub_Table.EOFの値が真なら「Ms
g_Print」の項へ飛び,そしてSub_Tableファイルを閉
じるという処理を行う。
以上のように,この関数は‘出庫データをチェック‘入庫データを,’,
チェック‘売上データをチェック‘入金データをチェック’という’,’,
項目について,データベースへの問合せとその後の処理に関し,統一し
た記述形式が繰り返されている点で,表現上の特徴を有する。
③ComboBoxコントロールがクリックされた場合に実行されるサ
ブルーチンとフォーカスされたときに実行されるサブルーチンの組の群
を記述した部分(乙76の49頁∼60頁)
次に,前記②の後に「PrivateSubcboAUTO_C,
ALC_KB_Click()∼EndSub,それに続いて」
「PrivateSubcboAUTO_CALC_KB_Got
Focus()∼EndSub」というように,ComboBo
xコントロールの名称に「_Click(」が付されたサブルーチンと,)
同じComboBoxコントロールの名称に「_GotFocus(」)
が付されたサブルーチンの組が,複数連続的に配置されている。
「_Click(」が付されたサブルーチンは,当該ComboBo)
xコントロールがクリックされた場合に行う処理内容を記述したもので
あり「Chang_Flg=True」によってデータ変更フラグをセ,
ットする「_GotFocus(」が付されたサブルーチンは,当該。)
ComboBoxコントロールがフォーカス,すなわち入力可能な状態
にされた場合に行う処理内容を記述したものであり「NowTabIn,
dex=cboAUTO_CALC_KB.TabIndex」による
Tabキーが押された場合の入力位置の設定「CallDispGu,
ide(cboAUTO_CALC_KB,Me」によるガイド表示と,)
「CallIME_OFF(ActiveContorol」による)
日本語入力の設定のオフの処理を行う。
このように,複数のComboBoxコントロールについて,それぞ
れクリックされた場合に行う処理と,フォーカスされた場合に行う処理
について,統一した記述形式が繰り返されている点で表現上の特徴を有
する。
④CommandButtonコントロール「cmdEntry」が操
作された場合の処理を行うサブルーチン群を記述した部分(乙76の6
0頁∼61頁)
次に,前記③の後に「PrivateSubcmdEntry_,
Click()∼EndSub「PrivateSubc」,
mdEntry_GotFocus()∼EndSub「Pr」,
ivateSubcmdEntry_LostFocus()∼
EndSub「PrivateSubcmdEntry_M」,
ouseDown(ButtonAsInteger,Shif
tAsinteger,XAsSingle,YAs
Single)∼EndSub」の各サブルーチンが続く。
これらのサブルーチンは,CommandButtonコントロール
である「cmdEntry」が操作された場合の処理について記述した
ものである。前記各サブルーチンは,乙第76号証の第3頁で記述され
ている「cmdEntry」というCommandButtonコント
ロールについて,クリックされたとき(_Click)に得意先レコー
ドの更新処理を行うこと,さらに,フォーカスされたとき(_GotF
ocus,フォーカスを失ったとき(_LostFocus,マウス))
ボタンが押されたとき(_MouseDown)に,それぞれ行われるT
ABキーのエミュレーション(擬制)についての設定が記述されたもの
であり,これらのサブルーチンの順序等の配置の点で,表現上の特徴を
有する。
⑤TABキーのエミュレーション,入力された文字の桁数チェック,初
期化処理,終了処理のそれぞれに関するサブルーチン群を記述した部分
(乙76の61頁∼63頁)
次に,前記④の後で,サブルーチン「PrivateSubFo
rm_KeyDown(KeyCodeAsInteger,S
hiftAsInteger)∼EndSub」により,E
nterキーが押された場合のTABキーのエミュレーションの処理を
行い,サブルーチン「PrivateSubForm_KeyPr
ess(KeyAsciiAsInteger)∼EndS
ub」により,入力された文字の桁数チェックを行い,サブルーチン
「PrivateSubForm_Load()∼EndS
ub」により初期化処理を行い,サブルーチン「PrivateSu
bForm_QueryUnload(CancelAsInt
eger,UnloadModeAsInteger)∼E
ndSub」及び「PrivateSubForm_Unloa
d(CancelAsInteger)∼EndSub」に
より終了処理を行うようにしており,これらのサブルーチンの配置の点
で,表現上の特徴を有する。
⑥Labelコントロールがクリックされたときに実行されるサブルー
チン群を記述した部分(乙76の63頁∼71頁)
次に,前記⑤の後に「PrivateSublbl_MARU_,
KB_Click()∼EndSub」のように,名称に「lb
,l_」及び「_Click」が含まれているサブルーチンが多数続くが
これらはVBのLabelコントロールがクリックされたときに行う処
理内容を記述したものである。Labelコントロールは,タイトルや
項目の名称を表示する部分である。
たとえば「PrivateSublbl_MARU_KB_Cl,
ick()∼EndSub」では,乙第76号証の第30頁で記
述されている「lbl_MARU_KB」というLabelコントロー
ルがクリックされた場合に,当該Labelコントロールに対応するC
omboBoxコントロール「cboMARU_KB」を「cboMA,
RU_KB.SetFocus」によりフォーカスさせるという処理を
行うようにしたものであり,これらのサブルーチンの配置の点で,表現
上の特徴を有する。
⑦Menuコントロールがクリックされたときに実行されるサブルーチ
ン群を記述した部分(乙76の71頁∼73頁)
次に,前記⑥の後に「PrivateSubMnu_Edit_,
Clear_Click()∼EndSub」のように,名称に
「Mnu_」及び「_Click」が含まれているサブルーチンが多数
続くが,これらはVBのMenuコントロールがクリックされたときに
行う処理内容を記述したものである。Menuコントロールは,一般の
アプリケーションソフトに見られる「ファイル」メニューや「編集」,
メニューのような,個別に選択可能な選択肢を含むポップアップメ
ニューを実現するものである。
たとえば「PrivateSubMnu_Edit_Clear,
_Click()∼EndSub」では,乙第76号証の第35
頁で記述されている「Mnu_Edit_Clear」というMenu
コントロールがクリックされた場合に「IfMsgBox(Msg_,
Clear・・・」によりユーザーに対して画面をクリアするかしない
かを問い合わせるメッセージボックスを表示し「CallInt_W,
indow」によりウィンドウを初期化し「DoEvent(制御を,」
オペレーティングシステムに渡す命令)によりタイミング調整を行い,
「CallInt_Value」により変数を初期化し,画面先頭項
目にカーソルを移動するため「CalltxtTOMT_CD_Go,
tFocus」によりサブルーチン「txtTOMT_CD_GotF
ocus」を呼び出し「txtTOMT_CD.SetFocus」に,
より,乙第76号証の第21頁で記述されている「txtTOMT_C
D」というMaskEdBoxコントロールにフォーカスを移すという
,処理を行うようにしたものであり,これらのサブルーチンの配置の点で
表現上の特徴を有する。
以上,乙第84号証に示した貸出君プログラムのWin版のソースコー
ドにおけるRBCプログラムとの前記共通部分は,前述の①∼⑦の部分か
ら構成されているが,各部分は処理内容及び記述形式が相互に異なるもの
で,これらの組合せによって一の結果が得られるプログラムを構成してい
る。そして,これらの部分の配置順序等の組合せ方は,開発者の独自の思
,想に基づくものであり,プログラム言語の規約やハードウェアによる制限
あるいはプログラムの使用目的や要求される機能から必然的ないし機械的
に導かれたものではない。また,各部分の記述を個別的に見ても,それぞ
れ構文の形式の統一性や機能ごとのまとまり等を考慮した構成となってい
るなど,処理内容を実現するために使用した命令語や組込み関数の選択,
配置に関して独自性がある。
また,この分野のプログラムは,他に2つ程度存在するのみであり(甲
137,138,当然,これらのソースコードが公開されていたわけでは)
なく,貸出君プログラムが他社のプログラムのソースコードを参考にして
作成されたものでないことも明らかである。
したがって,前記共通部分は,開発者の個性が表れたものであって,あ
,りふれたものではなく,著作物性が認められることが明らかである。また
同様に,乙第86号証に示した共通部分についても,著作物性が認められ
る。
イビジネスサーバ版
(ア)貸出君プログラムのビジネスサーバ版のソースコードは,プログラム
言語COBOLで記述されたものであるが,COBOLのプログラムは,
①「IDENTIFICATIONDIVISION(見出し部,②」)
「ENVIRONMENTDIVISION(環境部,③「DATA」)
DIVISION(データ部,④「PROCEDUREDIVIS」)
ION(手続き部)の4つのDIVISIONで構成されるもので,具体」
的に実行される命令語を記述するのは④「PROCEDUREDIVI
SION」である。
「PROCEDUREDIVISION」においては,開発者が自由
,に段落や節を設置し,命令語を記述することができ,これらの点において
開発者の個性が表れることとなる。
乙第87号証の受注入力に関するプログラムのソースコードにおいて,
赤色に着色したRBCプログラムとの共通性のある部分には「日数セッ,
ト「日数セット1「終了日セット」という注釈が付された3つの段落」,」,
(サブルーチン)が順に記述された箇所があるが,これと同じ機能を実現
するためのプログラムは,このような構成に限定されるわけではなく,こ
れとは異なる段落の分け方も可能である。
また,各段落の記述内容についても,たとえば,期間の日数の計算を行
うことを処理内容とする「日数セット」は,貸出君プログラム及びRBC
プログラムでは,カレンダーマスタのデータベースをアクセスしてそのレ
コード数をカウントするという手順を表現したものとなっているが,同様
の処理は,たとえば乙第90号証の1のような記述内容とすることによっ
ても行うことができる。
また,同じ日数の計算処理であっても,処理速度を重視して,データ
ベースを利用しない方法を採用することも可能であり,その場合は,たと
えば乙第90号証の2のような記述内容とすることができる。
したがって,貸出君プログラムのビジネスサーバ版のソースコードにお
けるRBCプログラムとの共通部分は,誰が作成しても同様な表現となり
得るようなものではなければ,本来的に同様な表現とならざるを得ないよ
うなものでもなく,極めて一般的な指令の組み合わせを採用しているもの
でもないため,著作物性が認められる。
(イ)貸出君プログラムの受注入力に関するビジネスサーバ版ソースコード
(乙81の1)におけるRBCプログラムとの共通部分(乙87)は,以
下の①「日数セット,②「日数セット1,③「終了日セット」の3つの」」
部分を有している。
①日数セット
日数セットは「XNISU「XNISU−02「XNISU−,.」,.」,
EX」の3つのセクションから構成されている。.
「XNISU」セクションでは,期間日数を表す変数WDAYと,開.
始日を表す変数MO01−Kの初期化を行い,次の「XNISU−0
2」セクションで読み込むファイル「MOFL」の読み込み位置を設定.
する。次に「XNISU−02」セクションでは,ファイル「MOF,.
L」から読み込んだレコードの数を変数WDAYに加え,それが完了す
ると「XNISU−EX」セクションに移行する。そして「XNIS,.,
U−EX」セクションにより処理を終了する。.
各セクションの具体的な記述内容は次のとおりである。
「XNISU」セクションでは,2つのMOVE文により,変数WD.
AYにZERO(0)を,変数MO01−Kに変数ST−YMDの値
(開始日の年月日)をそれぞれ代入して初期化する。そして,STAR
T文により,カレンダーマスタである「MOFL」という名称のファイ
ルの読み込み位置を「KEYIS>=MO01−K」で変数MO,
01−Kの値以上という条件を満たすものに設定し,この条件を満たす
ものが存在しない場合は「INVALIDGOXNISU−E,
X」により「XNISU−EX」セクションに移行する。..
「XNISU−02」セクションでは,READ文によりファイル.
「MOFL」を読み込み,既に読込み済みであった場合は「ATEN
D「GOXNISU−EX」により「XNISU−EX」セクショ」..
ンに移行する。もし,変数MO01−Kが終了日を表す変数ED−YM
Dより大きければ,IF文により「XNISU−EX」セクションに移.
行する。前記2つの場合の「XNISU−EX」セクションへの移行が.
なければ,COMPUTE文により,変数WDAYに1を加え,そして
「GOXNISU−02」により「XNISU−02」セクション.,.
を繰り返し実行する。
そして「XNISU−EX」セクションでは,EXIT文により,,.
日数セットの処理を終了する。
このように,日数セットの部分は,2つのMOVEと1つのSTAR
T文で構成される,初期設定に関する「XNISU」セクション,RE.
AD文,IF文,COMPUTE文及びGO文で構成される,繰返しの
計算処理に関する「XNISU−02」セクション,そしてEXIT文.
により処理を終了する「XNISU−EX」セクションを,順に配置し.
ている点で表現上の特徴が認められる。
②日数セット1
日数セット1は,前述の日数セットと大部分が共通しているが,次の
点で異なっている。
(a)日数セットの各セクションの名称「XNISU「XNISU−.」,
02「XNISU−EX」が,それぞれ「XNISU1「XN.」,..」,
ISU1−02「XNISU1−EX」となっている。.」,.
(b)「XNISU1−02」セクションにおいて,IF文により,変.
数MO05−Kが4でないときに限り,COMPUTE文が実行され
るようになっている。
すなわち,変数MO05−Kは日数計算の対象の期間の属する年度が
,うるう年か否かを判定するためのものであり,その値が4である場合に
①の日数セットの例外(うるう年)としての処理を行うものであり,こ
の点で①とは異なる表現上の特徴が認められる。
③「終了日セット」
終了日セットは「XNISU2「XNISU2−02「XNI,.」,.」,
SU2−SET「XNISU2−EX」の4つのセクションから構.」,.
成されている。
「XNISU2」セクションでは,変数ED−YMD,WDAY,M.
O01−Kの初期化を行い,次の「XNISU2−02」セクションで.
読み込むファイル「MOFL」の読み込み位置を設定する。次に「XN,
ISU2−02」セクションでは,ファイル「MOFL」から読み込ん.
だレコードの数を変数WDAYに加え,それが完了すると「XNISU,
2−SET」セクションに移行する「XNISU2−SET」セク.。.
ションでは,変数ED−YMDに変数MO01−Kの値を代入する。そ
して「XNISU2−EX」セクションにより処理を終了する。,.
各セクションの具体的な記述内容は次のとおりである。
「XNISU2」セクションでは,2つのMOVE文により,変数E.
D−YMD,WDAYにZERO(0)を,変数MO01−Kに変数S
T−YMDの値をそれぞれ代入して初期化する。そして,START文
により,ファイル「MOFL」の読み込み位置を「KEYIS>=,
MO01−K」で変数MO01−Kの値以上という条件を満たすもの
に設定し,この条件を満たすものが存在しない場合は「INVALID,
GOXNISU2−EX」により「XNISU2−EX」セク..
ションに移行する。
「XNISU2−02」セクションでは,READ文によりファイル.
「MOFL」を読み込み,既に読込み済みであった場合は「ATEN
D「GOXNISU2−SET」により「XNISU2−SET」」..
セクションに移行する。前記「XNISU2−SET」セクションへの.
。移行がなければ,COMPUTE文により,変数WDAYに1を加える
もし,変数NISUの値が変数WDAYの値と一致する場合は,IF文
により「XNISU2−SET」セクションへ移行する。そして「GO.
XNISU2−02」により「XNISU−02」セクションを繰.,.
り返し実行する。
「XNISU2−SET」セクションでは,MOVE文により,変数.
ED−YMDに変数MO01−Kの値を代入する。
,.,そして「XNISU2−EX」セクションでは,EXIT文により
終了日セットの処理を終了する。
このように,終了日セットの部分は,2つのMOVE文と1つのST
ART文で構成される,初期設定に関する「XNISU2」セクション,.
READ文,COMPUTE文,IF文,及びGO文で構成される,繰
り返しの計算処理に関する「XNISU2−02」セクション,1つの.
MOVE文で構成される「XNISU2−SET」セクション,そして.
EXIT文により処理を終了する「XNISU2−EX」セクションを,.
順に配置している点で表現上の特徴が認められる。
以上のとおり,乙第87号証に示した貸出君のビジネスサーバ版のソー
スコードにおけるRBCプログラムとの前記共通部分は,前述の①∼③の
部分から構成されており,Win版の場合と同様に,プログラム言語の規
約やハードウェアによる制限,あるいはプログラムの使用目的や要求され
る機能から,必然的ないし機械的に導かれたものではなく,開発者の個性
が表れたものであって,ありふれたものではなく,著作物性が認められる
ことが明らかである。また,乙第88号証に示した共通部分は,①日数セ
ットと③終了日セットの2つの部分から構成されているが,これについて
も,同様に著作物性が認められる。
(3)の主張に対する反論RBCら
アは,貸出君のWin版及びビジネスサーバ版の各ソースコードのRBCら
RBCプログラムとの共通部分について,プログラム言語が規定する命令語
や関数が大半を占めるため,著作物性がない旨主張する。
しかし,プログラムにおいて,プログラム言語が規定する命令語等が大半
を占めるのは当たり前のことである。プログラムは「電子計算機を機能させ
て一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたもの
として表現したもの」であって「指令(命令語や関数)の選択や組合せ方,」
において著作物性が認められるのである。
また,は,前記共通部分が全体の中に占める割合の小さいことをRBCら
理由に著作物性を有しない旨主張するが,全体の中の一部分であっても,思
想・感情の表現において開発者の何らかの個性が発揮されたものであれば著
作物性は認められる。著作物全体の中のごく一部の複製・翻案であっても,
著作権侵害が成立し得ることは,キャンディ・キャンディ事件判決(最判平
成13年10月25日)等からも明らかである。
プログラム言語が規定する命令語が大半を占め,かつプログラム全体の中
の一部分であっても,著作物性が認められることは,東京地判昭和62年1
月30日(判例時報1219号48頁)においても示されている。当該判決
では,ザイログ社製8ビットCPU「Z80」用のアセンブリ言語で記述さ
れた合計229ルーチンで構成されるプログラムのうちの,わずか18ステ
ップからなる1つのルーチン(アドレス3CECから3D11までの38バ
イト)について,著作物性が認められている。前記ルーチンで使用された命
令語(ニーモニック)は,CALL,JP,RST,INC,DEC,PU
SH,LD,CP,POPの9種類で,当然これらはいずれもZ80の命令
セットの一部として規定されたものである。アセンブリ言語は,機械語とほ
ぼ1対1に対応した低級言語で,その命令語や文法はCPUのハードウェア
構成に強く依存しており,VBやCOBOLのような高級言語に比べて,文
法やハードウェアによる制限が遥かに多い。にもかかわらず,前記ルーチン
に著作物性が認められたのである。
貸出君のソースコードにおける貸出君プログラムとの共通部分は,アセン
ブリ言語よりも自由度の高いVBやCOBOLで記述され,前記ルーチンよ
りもステップ数が多く,しかも,ハードウェアに依存しない高度な処理を行
うものであることから,著作物性が認められることは当然である。
なお,は,画面構成や操作方法,付加機能の相違を主張しているRBCら
,が,これらはプログラムの著作物性とは直接関係がない。また,はRBCら
前記共通部分の記述は,プログラム言語の規約に従えば誰が行っても同じに
なるかのように主張するが,乙第90号証に示したように,命令語や関数の
選択・組合せ方は多様であり,誰が行っても同じになるものではない。
イ(ア)Win版について
乙第84号証のソースコードにおいて赤字で示した箇所は,前記のとお
り,互いに異なる記述パターンで記述された①∼⑦の部分から構成されて
いる点で表現上の特徴がある。
は,前記①∼⑦の各部分について,必然的なものであるとか,RBCら
VB言語において当然の記述であるなどと主張するが,所定の機能を実現
するためのプログラムは,開発者の思想に基づいて,各構成部分の内容や
構成部分の数を自由に設定することができるのであり,乙第84号証の赤
字で示した箇所のプログラムを前記①∼⑦の7つの部分で構成することは
何ら必然的ではなく,VB言語によって自動的に前記①∼⑦の部分の記述
内容が生成されたりその配置が決まったりするわけでもない。
また,は,RBCプログラム中に貸出君プログラムと一致するRBCら
部分があるのは,RBCプログラムの開発者の中に貸出君プログラムの開
発を経験した者が含まれているからであると主張する。しかし,貸出君プ
ログラムの著作権侵害とならないように貸出君プログラムと同じ機能を実
現するプログラムを記述することは可能であり,貸出君プログラムの開発
を経験した者であれば,当然にそのような配慮を行うべきである。貸出君
プログラムの開発を経験したことは,RBCプログラムの作成において貸
出君プログラムの複製・翻案となる行為を無断で行うことが許容される理
由とはならない。
(イ)ビジネスサーバ版
乙第87号証のソースコードにおいて赤字で示した箇所は,前記のとお
り,互いに異なる記述パターンで記述された「日数セット」等の①∼③の
部分から構成されている点で表現上の特徴がある。
は,前記①∼③の各部分について,一般的に用いられているロRBCら
ジックを利用したものであるとか,①の「日数セット」について,甲第1
60号証の例題プログラムサンプルと同様な記述方法であるなどと主張す
る。しかし,貸出君プログラムのロジックが一般的なものであるとか必然
なものであるとするの主張には根拠がない。貸出君プログラムのRBCら
「日数セット」について,これとは全く別のロジックにより同じ機能を実
現できることは,乙第90号証の1,2で説明したとおりである。
さらに,甲第160号証の例題プログラムサンプルは,金額を計算して
順次改行しながら印字する処理を行うものであり,貸出君プログラムとは
全く目的の異なるものであって,いくつかの行における命令語の用法等,
プログラム言語の規約に関して一致する部分があるにすぎず,前記①∼③
の3つの部分からなる貸出君プログラムの構成とも全く異なっており,具
体的な記述内容において相違している。
また,所定の機能を実現するためのプログラムは,開発者の思想に基づ
いて,各構成部分の内容や構成部分の数を自由に設定することができるの
であり,仮にプログラムの基本的なロジックが同じであったとしても,プ
ログラムの表現の仕方は多様であり,乙第87号証の赤字で示した箇所の
プログラムを前記①∼③の3つの部分で構成することは何ら必然的なもの
ではない。
また,は「日数セット1」のサブルーチンにおける変数MO0RBCら,
5−Kに関するの主張の誤りを指摘し,RBCプログラムのサブKCS
ルーチンはとは全く異なった目的の処理を行うもので,独自の設計KCS
仕様に基づき作成されたものであると主張する。しかし,RBCプログラ
ムの日数計算方式のロジックが貸出君プログラムと一致していることは,
も認めるところであり,しかも,記述形式においても一致していRBCら
るのであるから,RBCプログラムが独自の設計仕様に基づき作成された
ものでないことは明らかである。
(4)結論
以上により,Win版及びビジネスサーバ版のいずれにおいても,貸出君プ
ログラムとRBCプログラムとで共通する部分につき,貸出君プログラムは著
作権法上の保護対象となるために要求される創作性を備えており,著作物性が
ある。
【の主張】RBCら
(1)の主張(1)に対する反論KCS
ア判例上の基準
は,プログラムの著作物性に関する判例上の基準につき,東京地裁KCS
平成15年1月31日判決及び東京高裁平成元年6月20日決定を掲げ,独
自の見解を述べているが,上記東京地裁判決がプログラムの著作物性につい
て判示するところは,プログラムの性質上,その創作性の認定を限定的に行
うべき旨を判示している。また,上記東京高裁決定は,債権者による侵害事
実の疎明,あるいは債務者の非侵害事実の疎明の十分,不十分を主要な論点
として決定を下しているにすぎず,プログラムの著作物性について正面から
基準を提示しているのではなく,むしろ,同決定の原審決定では,プログラ
ム記述において,他に違った表現をし得る余地があったとしても,通常のプ
ログラマーであれば同様のプログラムを組む可能性が高い場合には,創作性
を否定するべきことが説示されているのである。
イ貸出君プログラムの著作物性
(ア)Win版
aは,乙第84号証の「得意先マスタ登録」のソースコードを例KCS
にとり,着色した部分のサブルーチンの個数が100個を超えているた
,めに,その並び順が100の階乗通りという無数の組合せが可能であり
また,個々の記述内容においても十分に開発者の個性が表れたものとな
ることから,貸出君プログラムのWin版のソースコードにおけるRB
Cプログラムの共通部分には著作性が認められると主張する。
しかしながら,乙第84号証においてが共通と主張する割合はKCS
30%にすぎず,しかも,それらのほとんどの部分は使用プログラム言
語上の命令や規約に関するものであるから,著作権法上創作性のある著
作物として保護され得ないものであり(著作権法10条3項,実質的な)
比較対象となる「項目名称」についても同一分野のレンタル業務上の必
然により,同一の内容となるものが使用されているのであり,結局貸出
君プログラムには保護するべき著作物性がない。
乙第84号証に表れた着色部分(が共通と主張する部分)に係KCS
るサブルーチンのいくつかについて,ソースコードの意義を検証してみ
ると,要旨次のとおりである。
(a)「Private動産補償AsInteger」について
(甲147)
『動産補償という項目を整数型で定義します』という意味で通常用
いる文法である。
「動産補償」という用語は建設機械のレンタル業務を行う上で,一
般的に用いられる用語である。
(b)「PrivateSubAdd_cboSEIK_KR_P
RT(」について(甲147))
アプリケーションソフトを活用する上で必要となる請求繰越印字の
項目に対して「あり,なし」をユーザが選択できるようにしたサブ,
ルーチンである。
非表示にしておいて表示したい値を再セットし,再表示するという
手法はコンピュータを扱う者にとってはごく当然の流れであり,この
サブルーチンの指令の組合せは,ほとんど全体が文法として一般的に
誰が作成しても同様の構造となる。
仮に,指令の順序を変更してVisible=True(再表
示)をVisible=False(非表示)の前に入れると,画
面中に内容が表示されず,これではプログラム・エラーとなってしま
う。
(c)「PrivateSubAdd_cboKIHN_KB
(」について(甲148))
アプリケーションソフトを活用する上で必要となる基本料区分の項
目に対して,標準,先取り,後取り,または,なしの項目をユーザが
選択できるようにしたサブルーチンである。
非表示にしておいて表示したい値を再セットし,再表示するという
手法はコンピュータを扱う者にとってはごく当然の流れであり,この
サブルーチンの指令の組合せは,ほとんど全体が文法として一般的に
誰が作成しても同様の構造となる。
仮に,指令の順序を変更してVisible=True(再表
示)をVisible=False(非表示)の前に入れると,画
面中に内容が表示されず,これではプログラム・エラーとなってしま
う。
(d)「PrivateSubcboTANK_KB_clic
k(」について(甲149))
単価管理区分の領域にマウスでクリックされた時に実行されるサブ
ルーチンである。
データが変更された後に,登録しないで終了しようとすると『値が
変更されていますが,終了して良いですか』とのメッセージを出力で
きるように目印(フラグ)を付けているのであり,この程度のサブ
ルーチンは,商品販売上の処理としてごく当たり前のことである。
(e)「PrivateSubcboTANK_KB_GotFo
cus((甲149)について)」
単価管理区分の領域にカーソルが位置付けられた時に実行されるサ
ブルーチンである。
この一連の動きも商品としてユーザの使用に供するにあたり,必要
最小限の処理である。
上記したサブルーチンは得意先マスタ登録のほんの一部であるが,レ
ンタル業務処理上必要な各処理を,業界における通常の項目名称を使用
しながら,ユーザの使い勝手や効率に配慮しつつ,できるだけ少ないス
テップで記述されるものである。そして,プログラム上表現する記号が
限定され,文法も厳格であることから,同一又は類似する処理を企図す
れば,指令の組合せが類似することが免れないことが少なくない。この
ようなことから,著作権法10条3項は,プログラムにおける解法は保
護しないことを明記しているのであり,このことはまた,上記した東京
地裁判決,あるいは東京高裁決定(特にその原決定)の説示するところ
とも一致する。
bは「パーソナルコンピュータやオフコンで実行されるアプリKCS,
ケーションプログラムにおいては,画面に表示される項目や,ユーザの
操作方法,それに対応するコンピュータの処理内容には無限の組合せが
あり,項目の選択,各処理を行うサブルーチンの並び順や個々のサブ
ルーチンの記述内容は,開発者が自由に設定することができ,ハードウ
ェアやプログラム言語上の制限,処理目的等によって一律に定まるわけ
ではない」という。。
しかしながら,同一業界のレンタル業務を行うためのプログラムの作
成にあたり,サブルーチンの並び順は入力操作をするユーザにとって理
解しやすく,効率的な順とするべきであり,かつ,各サブルーチンにお
いても,厳格な文法のもとでできるだけステップ数を少なくし,プログ
ラム・エラーがでないようにすべきことを考慮すると,甲第147ない
し第149号証について上記したように,目的の処理を行うサブルーチ
ンとして,誰が作成しても同一,又は類似のものとなるのであり,少な
くともその可能性が大きいのである。
cはまた「サブルーチンが100個もあれば,その並び順(単純KCS,
計算では100の階乗通りという無限の組み合わせが可能)や個々の記
述内容において十分に開発者の個性が表れたものとなる」ともいう。
しかしながら,RBCプログラムのサブルーチンの並び順が貸出君プ
ログラムのサブルーチンの並び順と一致しているわけではないし,上記
したように,サブルーチンの並び順は,無限にあるのではなく,入力操
作するユーザが理解しやすいように,あるいは効率的な処理を行うこと
を考慮すれば,自ずと適正な処理順が定まるのである。
(イ)ビジネスサーバ版
は,乙第87号証の「日数セット」に係るサブルーチンにつき,KCS
同様の処理は乙第90号証の1,あるいは同号証の2のような記述内容と
することが可能であるから,創作性のある著作物性が認められると主張す
る。
しかしながら,レンタル業務の処理を行うプログラムにおいて,日数計
算サブルーチンは必須であり,また,①日数セットとして,物件を貸し出
す場合に貸出日から返却日までの日数を計算する場合,②日数セット1と
して,貸出期間中に貸し出した物件を使用しない日数をその期間より自動
的に差し引く場合(日曜,休日などが決められている,③終了日セットと)
して,貸出日から物件の使用期日が決められている場合に返却日を逆計算
する場合が必要とされているのであり,いわゆるカレンダーマスタを利用
することを選択した場合,これらのサブルーチンはCOBOL言語による
典型的な命令記述となるのである。そうして,乙第87号証のサブルーチ
ンは,日数計算に係る典型的な解法を記述したものにすぎないともいうこ
とができ,著作権法10条3項の規定により,保護され得ない。
乙第90号証の1のプログラム記述は,実質的には乙第87号証の解法
と同じく,カレンダーマスタを参照しつつ1日ずつ加算してゆくロジック
である。なお「>=」を『GREATERTHANOREQUA,
L』に変更しているが,わざわざこのような記述に変更するプログラマー
は少ないと思われる。また,できるだけ少ないステップ数で効率のよい処
理をするべくプログラムを作成するのが通常であることにかんがみると,
,13行程度の記述で済むものをわざわざ21行も費やして記述することは
考えにくい。このように,乙第90号証の1は,プログラミングの常識か
らしてあり得ない例にすぎず,したがって,同号証のような記述内容とす
ることが可能であるが故に乙第87号証のプログラム記述に著作物性があ
るというの主張は失当である。KCS
乙第90号証の2のプログラム記述は,カレンダーマスタを使用しない
例であり,カレンダーマスタを利用したプログラム記述とは,全く別物で
ある。は,プログラム記述の簡略化,処理の効率化の観点から,カRBC
レンダーマスタを使用した日数計算ロジックを選択しているのであり,そ
れは,も同様であろう。同号証のプログラムによっても,たしかにKCS
日数計算が可能ではあろうが,このような煩雑かつ行数の多いプログラム
を採用する者は,ほとんどないと思われる。このように,同号証のプログ
ラム記述もまた,プログラミングの常識からしてあり得ない例にすぎず,
したがって,そのような記述内容とすることが可能であるが故に乙第87
号証のプログラム記述に著作物性があるというの主張もまた,失当KCS
である。
(2)の主張(2)に対する反論KCS
アWin版
は,乙第84号証について,前記【の主張】(2)ア(イ)①∼⑦KCSKCS
の部分に分けて,それらの記述が著作物性を有すると主張するが,すべて失
当である。
(ア)①の部分について
a①の部分は,得意先マスタ登録において「請求繰越印字のセット」,
「回収月区分と区分名のセット「回収方法と区分名のセット「基本料」」
区分と区分名のセット「休日区分と区分名のセット「月極自動日割区」」
分と区分名のセット」等,得意先ごとに,料金回収に関する各種の属性
をセットできるようにしたプログラムである。これらは,レンタル業務
を行うにあたり,当然に必要な作業であり,それらの属性のセットが可
能とすること自体に著作物性があるわけではない。また,コンボボック
スを用いて属性をセットできる手法もまた,VBベーシックにおいて普
通に行われることである。
bはまた「Add_」を付した名称を含むサブルーチンはいずれKCS,
も「With[ComboBoxコントロールの名称]∼EndWi
th」の構文を使用することにより記述形式の統一がなされていること
及びComboBoxコントロールに項目を追加する操作を行うサブ
ルーチンを連続的に配置している点で表現上の特徴を有する,とも主張
する。
しかし,ComboBoxコントロールの名称については,当然に必
要な作業項目をいわゆるハンガリアン記法で記述すれば,近似した表記
,になり得ることは,がこれまでに主張したとおりである。またRBCら
サブルーチンの順序に関しても,任意に設定できるとはいえ,料金回収
に係る項目において,より重要なものからそうでないものの順に並べる
のが通常である。したがって,の上記主張は失当である。KCS
RBCプログラムと貸出君プログラムの該当部分の構文中において,
たしかに「Add_」との記述が存在するが,そのことをもってして,
RBCプログラムが貸出君プログラムに依拠し,それを翻案したもので
あるとの証拠とならないことは明白である。
(イ)②の部分について
は,②の部分について‘出庫データをチェック‘入庫データをKCS,’,
チェック‘売上データをチェック‘入金データをチェック’という項’,’,
目について,データベースへの問合せとその後の処理に関し,統一した記
述形式が繰り返されている点で表現上の特徴を有すると主張するが,失当
である。
同部分の処理は,データベース上に該当するコード(得意先コード)が
あるかどうかの存在チェックを行うものであり,レンタル業務において通
常行う処理の流れにすぎない。そうして,データベース上の該当コードの
存在チェックを行うに当り、データ量の発生頻度が多いデータベース(出
庫・入庫・売上・入金)を順に処理することが望ましいと考えるのが通例
である。すなわちレンタル業界においては、出庫,入庫に関しては,貸出
(出庫データ)の発生及び継続(請求締切日までに返却されない物)が
データベース上存在する情報としては他のファイルから比べて必然と多く
なる。また,売上,入金については,この順とするべきは自然なこととい
うべきである。そうして,それぞれのチェック項目の処理において表現が
統一されるのも,VBベーシックにおいて当然である。
(ウ)③ないし⑦の各部分について
,同部分について,は,統一した記述形式が繰り返されている点やKCS
サブルーチンの順序等の配置の点で表現上の特徴を有すると主張する。
銘記しておかねばならないことは,VB言語を使って作成されたプログ
ラムはアルファベット順に自動配置され記述されるということである。た
とえば③のような場合は,アルファベット順に配置すると「Click・」
「GotFocus」の順番になる。また,④のような場合では「Cli
ck・GotFocus・LostFocus・MouseDow」「」「」「
n」の順番に配置される。同じように⑤では「keyDown・key」「
」「」「。Press・QueryUnload・UnLoad」の順番になる
このように,VB言語を用いたプログラムでは,プログラム開発者が任
意の順序で記述した内容が構文の形式の統一性や機能ごとのまとまった構
成(アルファベット順)に自動配置される。
したがって,VB言語を用いたプログラムにおいて,サブルーチンの配
列にのいう独自性など全くない。KCS
(エ)は,独自に設計した仕様に基づき,RBCプログラムを開発しRBC
たのであって,貸出君プログラムに依拠したのではない。仮に,RBCプ
ログラムにおいて,任意に設定できる表現の一部に貸出君プログラムの表
現と一致する部分があったとしても,プログラム全体としてはごくわずか
である。
そうして,RBCプログラムの中に,貸出君プログラム中の項目名等に
表現の一致する部分があったとしても,それは,RBCプログラムの開発
者のなかに,の従業員として,同種のプログラム開発を経験した者KCS
が含まれているからである。すなわち,の従業員であった者が,同KCS
一業界のためのレンタル業務プログラムを全く別の設計仕様に基づいて開
発をするにあたり,蓄積された経験の発露として項目名や一部の命令語と
してかつて使用したことのある用語を使用することは,むしろ普通のこと
であろう。
しかし,そのようなわずかなことで,RBCプログラム全体を著作権侵
害としてしまうことは,あまりに不合理であるというべきである。
イビジネスサーバ版
は,乙第87号証について「日数セット「日数セット1「終了KCS,」,」,
日セット」の3つの部分はそれぞれセクションの配置の点で表現上の特徴が
あると主張するが,以下のとおり,すべて失当である。
(ア)乙第87号証は受注入力のCOBOLプログラムのソースリストの一
部(サブルーチン)であり,このプログラムはカレンダーマスタ(ファイ
ル)を利用して,日数計算を行うロジックである。
(イ)は,日数計算を行うロジックを作成するに当たり,基本設計段RBC
階において,ステップの簡略化やロジック作成の効率を図ることからカレ
ンダーマスタ(ファイル)を利用することを決定した(社内規約。)
,またのコンピュータソフトはレンタル業界向けに作成されておりRBC
この業界の特徴として日数計算の方式には下記①∼③のロジックを組み上
げることが必然である。
①「日数セット」として,物件を貸出する場合に貸出日から返却日までの
日数を計算する場合
②「日数セット1」として,貸出期間中に貸出した物件を使用しない日数
をその期間より自動的に差し引く場合(日曜,休日などが決められてい
る)
③「終了日セット」として,貸出日から物件の使用期日が決定されている
場合に返却日を逆計算する場合
(ウ)熟練したCOBOLプログラム作成者によれば,上記のロジックは,
以下のとおり,自ずと近似したものとなるのである。
たとえば,甲第160号証(らくらく突破COBOL)においては,フ
ァイルを用いて単価と数量から金額を求めるロジックが例題プログラムと
して紹介されている。この場合は単価と数量を乗じるという例であるが,
の日数を計算するという加算のロジックとは処理において共通したRBC
ものである。
通常,COBOLにてプログラムを作成するという手順は,まずデータ
フロー(処理フロー)の作成を行うことから始め,順次ロジック作成へと
進んでゆく。そこでファイルを利用してロジックを作成するための伝統的
,なデータの流れが甲第160号証に紹介されている処理フロー(123頁
金額計算)である。
の処理フロー(日数計算)を記載すると別紙16のとおりとなるRBC
が,この処理フローは,甲第160号証に紹介された処理フローと全く同
一となる。
まず,甲第160号証(123頁・3例題の流れ図)のロジックの組立
て方を説明すると,最初にファイル読込み(データファイルの読込み)を
行い,次に条件判断(行カウンタ>24)を行った上で,加算処理(行カ
ウンタ+1→行カウンタ)した後,最初のデータファイルの読込みに戻る
ロジックになっていることが理解できる。
次に上記処理フロー(日数計算)を説明すると,同じく最初にファイル
読込み(データファイルの読込み)を行い,次に条件判断(日数比較)を
行った上で,加算処理(WDAY+1→WDAY)した後,最初のデータ
ファイルの読込みに戻るロジックになっていることが理解できる。
よって,上記処理フロー(日数計算)と甲第160号証(123頁・3
例題の流れ図)の構造化されていない伝統的な流れ図は全く同じ処理の流
れであり,ごく一般的に用いられている手法(ロジック)である。
(エ)ここで乙第87号証(日数セット)のサブルーチンであるプログラム
ソースリストに記載された命令と甲第160号証(125頁・例題プログ
ラムサンプル)を比較して説明すると下記のようになる。
前記処理フローのとおり,まず初めに甲第160号証(125頁・例題
プログラムサンプル)の処理命令では,
“MOVE25TOLINE-CTR”…[①‐1]
はLINE-CTR項目に数字の25を初期値セットする命令であり,次に
“READCD-FILEATEND・・・”…[②‐1]
ではデータファイルの読込み命令を行っている。続いて条件判断である,
“IFLINE-CTR>24・・・”…[③−1]
命令後,加算処理である
“ADD1TOLINE-CTR”…[④−1]
の命令の最後に最初のデータファイルの読込みに戻る処理命令が
“GOTOMAIN”…[⑤−1]
と記述されていることが理解できる。
(オ)次に乙第87号証(日数セット)のプログラムソースリストに記述し
た命令を説明すると,同じく最初に
“MOVEZEROTOWDAY”…[①−2]
ではWDAY項目に数字の0を初期値セットする命令であり,次に
“READ―NEXTRECORDATEND・・・”
…[②−2]
ではデータファイルの読込み命令を行っている。続いて条件判断である
“IF―>ED‐YMD・・・”…[③−2]
命令後,加算処理である
“COMPUTEWDAY+1”…[④−2]
の命令(ADD命令と同様の機能である)の最後に最初のデータファイルの
読込みに戻る処理命令が
“GOTOXNISU‐02”…[⑤−2]
と記述されていることが理解できる。
(カ)このことから,上記①−1と①−2,②−1と②−2,③−1と③−
2,④−1と④−2,⑤−1と⑤−2の各々は,互いにCOBOL文法上
同様の命令なのであり,一般的に用いられる記述方法なのである。
(キ)結局,レンタル業界において通常必要な「日数セット「日数セット」
1「終了日セット」のロジックを組めば,COBOLについての初歩的な」
参考書にも示されているのと同様の手法により,誰が作成しても同様のも
のとなるのであり,このことはまた,貸出君プログラムに独自性がないこ
とにもつながるのである。
,(ク)ところで,の主張によれば,「日数セット1」のサブルーチンはKCS
変数MO05‐Kは日数計算の対象の期間の属する年度がうるう年か否か
を判断するためのものであり,その値が4である場合に「日数セット」の例
外(うるう年)として処理を行うものであるとのことであるが,乙第58
号証の14(のカレンダーマスタのファイル仕様書)によれば,上KCS
記変数MO05‐Kは,天気情報であり,変数4の区分は暴風である。
RBCシステムのサブルーチンはとは全く異なった目的の処理でKCS
あり,カレンダーマスタを用い,変数4は連休以外の日数を計算するもの
である。このことからも,RBCシステムは,独自の設計仕様に基づき作
成されたものであることがわかる。
3争点2(RBCプログラムは貸出君プログラムに対するの著作権を侵害すKCS
るか)の(2)(貸出君プログラムに対する依拠性の有無)について
【の主張】KCS
RBCプログラムは貸出君プログラムに依拠している。
(1)ソースプログラム
RBCプログラムのソースプログラムと貸出君のソースプログラムを比較す
れば,デッドコピーされている部分が存在することが一目瞭然である(乙84
∼88。)
(2)開発用書類
たとえば,貸出君のファイル仕様書(乙49)とミスターアドバンスの取引
先マスタ(甲20の16・17)は,レイアウトがほとんど同一で行数やセル
の幅は完全に一致しており,貸出君のファイル仕様書を複製・翻案したもので
あることは明らかである(乙55参照。その他,ミスターアドバンスの仕様書)
が貸出君のファイル仕様書(乙58)を複製・翻案したものであることは,乙
第57号証で明らかにしたとおりである。
(3)オペレーションマニュアル
貸出君のオペレーションマニュアル(甲87)とミスターアドバンスのオペ
レーションマニュアル(甲96)とは酷似しており,たとえば,アスタリスク
(*)の数が全く同一であることの一事をもってしても,がKCSソフRBC
トのオペレーションマニュアルを複製・翻案して甲第96号証を作成したこと
は明らかである。
【の主張】RBCら
(1)ソースプログラムについて
ア乙第84ないし第88号証について
(ア)甲第123号証と乙第76号証の類似点に関する指摘に対して(乙8
4)
a乙第84号証は,乙第76号証の37頁から74頁ののソースKCS
コードと甲第123号証のRBCソースコード(Win版「得意先マス
KCSタメンテナンス」のソースコード)とを比較したものであるが,
は両者の8割以上が同一と指摘している。ら
しかしながら,プログラムにおいて著作物性が肯定されるためには創
作性が必要であるところ,が同一と指摘する部分のほとんどは,KCS
著作物性が否定されるべき単なる命令や関数に係るものである。
(a)側,側の得意先メンテナンスのソースコードの総行RBCKCS
数を計算すると甲139の表①,②のとおりとなる。ここで総行数の
数値の差(総行数4557−総行数2163=239KCSRBC
4)は前述の画面項目のソースリストや注釈がが提出したRBCら
ソースコードには存在しないためであるから,翻案となるか否かを検
討するにあたっては何ら問題ない。
(b)そこでが8割以上と指摘している赤字行部分を計算し全体KCS
行数と比較すると,赤字行の行数は649行であり,全体行数(甲1
23,2163行)の30%にすぎない。
(c)さらにの指摘する赤字行部分(翻案と指摘する部分)の内KCS
容を子細に検討すると,VB(ビジュアルベーシックプログラム)の
文法や命令,関数がその大半を占めている。このようなVBの文法や
命令,関数が著作物性を有し得ないのはいうまでもない。
,仮に,VBの命令や関数を使用することが翻案であるとするならば
VBで記述する全てのコンピュータソフトが翻案となる結果となり,
不合理である。
(d)甲第140号証(表⑨)は,乙第84号証の赤字部分649行を
抜き出し,表としたものであり,この649行中には同一命令(たと
えばPrivateSub,EndSub等)が何度も使用さ
れる関係から,それぞれ使用された数(命令,関数が629行存在す
,る)を各命令ごとに計算しているところ,そこに記載されているのは
すべてVBでプログラムを組むために使用しなければならない命令,
関数や文法であり,甲第141号証(表⑩)はVBというソフトを購
入すると,その命令についての説明として付属しているもののリスト
である。
甲第141号証(表⑩)には,乙第84号証に赤字行となっている
部分に含まれるすべての命令,関数が含まれているのがわかる。
(e)VBを利用して作成したコンピュータソフトが命令,関数,文法
等において同一となるのは当然である。
そして,甲第140号証(表⑨)より,乙第84号証中の赤字行数
649行のうち,単に命令,関数が同一であるものが629行もある
ということがわかる。
(f)このように,乙第84号証中の赤字行の行数は649行であり,
全体(甲123,2163行)の30%にすぎないのであるから,そ
の時点で,乙第76号証の37∼74頁と甲第123号証とが8割以
上が同一であるとのの指摘は失当であり,同一であるとする6KCS
49行についてみても,そのうちの629行が単に命令,関数につい
て同一であるにすぎず,著作物としての地位を有さず,翻案かどうか
の比較の対象とはなり得ないものなのである。
bところで,乙第84号証中の赤字行のうち,命令,関数,文法以外の
行は,わずかに以下の表現を含む20行(1行のみ重複)にすぎない。
以下においては,それぞれの意味(項目名称)を右辺に参考的に記載し
ている。
①SEIK_KR_PRT請求繰越印字
②TO(MT)_PAYM_KB回収月
③TO(MT)_PAY_KB回収方法
④MARU_KB丸め区分
⑤KIHN_KB基本料区分
⑥KYUU_KB休日区分
⑦TUKI_HIWA_KB月極自動計算
⑧TUKI_NISU_KB月極設定日数
⑨TUKI_CHOU_KB月極調整区分
⑩GENB_KB現場管理区分
⑪GENB_UZEI_KB現場別消費税区分
⑫AUTO_CALC_KB自動計算
⑬TANK_KB単価管理区分
⑭TANP_LESS_KBレス対応区分
⑮HIGI_TUKI_KB日極自動計算
⑯HSYO_KB保証区分(重複)
⑰HIWA_KB日割自動計算
⑱TOMT_UZEI_KB消費税区分
⑲DHSY_NM代表者名
乙第89号証の「陳述書(4」では,上記①,②の表現を含む次の2)
行を摘示している。
PrivateSubadd−cboSEIK−KR−PRT
(・・・・①)
PrivateSubadd−cboTOMT−PAYM−KB
(・・・②)
は,とラインの部分が類似していると主張するKCSら
が,ライン部分のadd−cbo中,addは加えるという一般
に用いる慣用語であり,cboはコントロールボックスの略語である。
この表記方法は一般的にハンガリアン記法と呼ばれ,その後に続く項目
名の前にコントロールのタイプを表わす表現で接頭辞として組み込まれ
る一般的なものである。
その後のライン部分はプログラム上の項目名称を略字で表現し
ているものである。
,c乙第84号証は「得意先マスタ登録」というプログラムの一部であり
,甲第123号証のソースリスト,得意先マスタメンテ登録,修正,削除
,というプログラムと対比されるものである。上記プログラムソース行①
②は画面の各項目名称を表現しているもので,たとえば①のSEIK−
KR−PRT()はRBCソフトによる画面上の「請求繰越印字」と表
現されている項目名称を表わしている。
このような項目名称は,その業界や業種の種類により決定されている
固定項目名(業界の共通の呼称)を使用する関係でプログラム表現もよ
く似た略語を用い,開発企業内では統一した表現を用いるのが常識とさ
れている。
もまた,当業界の業務で必要な固定項目名称をプログラム上でRBC
表現する場合の取り決めを行ない,社内の誰が見ても関連が理解できる
ようにしている。
dすなわち,上記プログラムソース行①のSEIK−KR−PRT()
RBは画面上の「請求繰越印字」という項目を示すソース記述であり,
内ではローマ字のseikyu・kuRikoshiの略語でSEIC
K−KRと記述方法を統一し,さらに印字については英単語のprin
tを略してprtと記述することとしている。
また,上記プログラムソース行②のTOMT―PAYM―KB()は
RBCソフトによる画面上の「回収月」という項目を示すソース記述で
あり,同様にローマ字表記のTokuisaki,英単語のmaste
rをもって「得意先マスタ」をTOMTと表現し,英単語のPAYと,
英単語の月を表わすmonthlyのMを使ってPAYMと表現し「区,
分」を意味するKBを付加することで上記ソース記述をすることとし,
社内規約上の記述方法と決定したものである。
eこのような項目名称のプログラムソース上での記述は,項目名称自体
が同一業界で用いられるビジネスソフト上では必然的に近似すること,
そして,ソース上の記述は,同一企業内である程度意味が判別できるよ
うに慣用的に略記されることから,近似してしまうことが多分にあり得
る。
fは,上記のようにして項目名称のソース上の記述を統一していRBC
るのであって,たまたま,項目名称に関するソース上の記述がのKCS
ものと近似したものが一部含まれているからといって,RBCプログラ
,ムが貸出君プログラムソース上の記述を翻案したものなどということは
到底できない。
gまた,仮に,のソース上の項目名称の記述にのソース上RBCKCS
の項目名称の記述と類似するものが存在したとしても,それは,甲第1
23号証の総行数2163行のうちの,わずか20行なのであり,しか
も,それは業界での限定的記述方法が同一であるにすぎず,これをもっ
て,RBCプログラムが貸出君プログラム全体を翻案したとすることな
ど,到底できない。
(イ)共通関数が類似するとの指摘に対して(乙85)
a共通関数(規約)は,アプリケーションプログラム上で使用するDL
L(dynamiclinklibrary)の共通処理を予め命
名し,データベースにアクセスする時に共通のモジュールを一定関数と
して表現方法を定義しておく規約であり,事後に誰がその表現を見ても
何を意味しているものかを容易に連想できる文言(表現)を用いること
が多い。
は市販されているビジュアルベーシックコントロール関数編RBC
(かんたんプログラムVisual・Basic6甲142)を参考
に表現を定義した。
たとえば,RBCプログラムのDLL内に存在するIME_SWとい
う関数についていえば,IMEとはwindowsの日本語切換を表現
する共通の機能名(甲142の51頁,322参照)であって,一般的
に使用されるものであり,この機能名にSW(スウィッチ)との表現を
付加したものである。
貸出君プログラムにおいてもIME_ON,IME_OFFと似かよ
った表現の共通関数が用いられているが,VBという同一プログラムを
用いたコンピューターシステムの共通関数としては,上記のように意味
を容易に連想できる表現を採用するのが通常である以上,似かよった表
現が採択されることは当然にあり得るのである。
bさらには,RBCプログラムに含まれるccurd,cdated,
,cdbled,clntd,clngd,cstrd,などについても
甲第142号証の312頁,313頁に紹介された関数表現を応用して
いるにすぎず,貸出君プログラムの表現などを利用したものではない。
また上記ccur,clng・・・・等はもともとVB上で用意され
ている関数であり,windowsを使用してプログラムを作成する時
に一般的に用いられる表現である。さらにDSN(データソースネーム
の略)Retry(リトライ)YMD(イヤー,マンス,デイ)はすべ
て変数であり,国際的標準機能に準じた表現を用いたものであり,甲第
142号証の245頁ではyyyy/mm/ddと表現されている。こ
れは年を表わすyが4桁,西暦という意味であり,mは2桁で月を表わ
し,dの日付も2桁という意味である。
その他の文字表現については,英単語をそのまま利用して共通の関数
として用いているだけのものであり,表現はきわめて一般的なものと理
解できるものである。
cこのように,事後において誰が見ても判断が可能である表現を採用す
るのが,DLL仕様の共通関数表現の常識である。
dしたがって,関数表現の一部に似かよった表現が採用されているから
といって,それが直ちに貸出君プログラムに基づいたものであるという
ことはできないし,RBCプログラムが貸出君プログラムを翻案したと
の主張を基礎づけるものとはならない。
(ウ)甲第125号証と乙第78号証の類似点に関する指摘に対して(乙8
6)
a甲第143号証(表⑫)は,甲第140号証(表⑨)と同様にして乙
第86号証の分析結果をまとめたものである。甲第139号証の表④か
らわかるように,全807行中,84行が赤字行となっているが,その
すべてがVB上の命令,関数であることから,乙第86号証が,RBC
プログラムが貸出君プログラムを翻案したものであることを証拠づける
ものではないことは明白である。
bそもそもVB言語(ビジュアルベーシックはプログラムが実行した操
作(イベント)に対応して処理を行うプログラムの実行形式である)を
利用してプログラミングを行えば文法上誰が記述しても決まった記述と
なる。
たとえば,OptionExplicit(VB6という機能の初
期値)あるいは“PrivateSub・・・・・EndSub”,
と記述した命令が頻繁に記述されているが,これはサブルーチンを記述
すれば文法上決まった命令となる。
そのサブルーチン内で”OnErrorResumeNext
“との記述についてはエラーを無視して次の処理に進むという命令であ
り,これ以外の記述方法はない。
キーボードのキーを押した時に発生するイベントは,Private
SubForm_Keydown(keycodeAsInte
ger,ShiftAsInteger)と記述する方法以外に
はない。
文字キーを押した時に発生するイベントはPrivateSub
Form_KeyPress(keyAsciiAsIntege
r)と記述する以外にない。
cVBプログラム記述は,それぞれの動作に応じた記述方法が文法とし
て約束されていることが多い。
たとえば,
・PrivateSubForm_Queryunload(Can
celAsInteger,UnloadmodeAsIn
teger(フォームが破棄される直前に発生するイベント,))
・PrivateSubForm_Unload(CancelA
)),sInteger(フォームが破棄された時に発生するイベント
・PrivateSubForm_load(フォームを読み込ん)
だ時に発生するイベント,)
といったもののほか,Int(整数型へ型変換,date(日付型へ型)
変換,YMD_Format,等の記述命令は一般に利用されている書)
籍及びインターネット上に公開されている記述であり,そもそも創作性
のある著作物に該当しないのである。
KCSdこのように,甲第125号証と乙第78号証の類似点に関する
の指摘もまた,全く意味のない主張である。
(エ)甲第128号証と乙第81号証の類似点に関する指摘に対して(乙8
7)
aは要するに,ビジネスサーバ版について,貸出君プログラムのKCS
受注入力ソースコードの総ステップ数14,243のうち,42のステ
ップがRBCプログラムと類似すると指摘している(甲139の表⑤及
び表⑥参照。しかしながら,かかる42のステップは,以下に説明する)
ように,単なるCOBOL上の命令にすぎず,創作性のある著作物に該
当するものではない。
b甲第144号証(表⑬)は,乙第87号証の分析結果をまとめたもの
であり,表⑬中には,甲第145号証(表⑭)の「標準COBOLプロ
グラミング」や甲第146号証の1ないし10(表⑮)のインターネッ
ト上のCOBOL命令語説明サイトが参照されている。
c受注入力の日数計算に使用しているサブルーチンのソースコードのほ
とんど一字一句が同じであるとは指摘するが,このソースコードKCS
は,COBOLにおける定型的な命令記述であり,単位行について,命
令記述が同じとなる場合があるのは当然である。
dは,RBCプログラムと貸出君プログラムとの同一命令行を探KCS
し出し,それをもってして,RBCプログラムが貸出君プログラムの翻
案であると指摘しているように見受けられるが,上記のとおり,行単位
で同じ命令を記述すれば,同一となる行が存在するのは当然である。
e甲第144号証(表⑬)に示すように,たとえば,COBOLプログ
ラミングで最も頻度の高い「転記命令」は“MOVE(一意名1)○,
○TO(一意名2”と記述する。)
「START命令」は,ファイルのキーインデックスに位置付ける命
令であり“START()ファイル名1KEYIS>=(デー
タ名1)INVALIDKEY(無条件文1”と記述する。)
「READ命令」は,ファイルを読み込む処理であり“READ
(ファイル名1)NEXTRECORDATEND(無条件
文2”と記述する。)
「IF命令」は,ある条件判断をする命令であり“IF(条件1)
THENNEXTSENTENNCE”と記述する。
「COMPUTE命令」は,数値項目を計算する場合に利用し“CO
MPUTE(一意名1”と記述する。)
「GOTO命令」は,次の見出し項目に移行するための命令であり“
GOTO(手続き名1”と記述する。)
そして,サブルーチンと呼ばれる副プログラムを終了するための命令
としては“EXIT”と記述する。,
このようにしてみると,が同一と指摘する42行の約9割がCKCS
OBOL言語の命令なのである。
また,日数等の表現はXNISU又はXNISUUと記載するのが一
般的である(甲146の1ないし10(表⑮)の資料③参照。)
エンド日付の表現はED−YMDと記載するのが一般である(甲14
6の7ないし10(表⑮)の資料②参照。)
さらに,ワークエリアの日付などはWDAYと記載している書物が一
般的である(甲146の1ないし10(表⑮)参照。)
これらの文字表現についてもCOBOLにおける一般的な表現をその
まま利用しているものであり,の表現を利用したものとはいえなKCS
いし,このような表現が一致するからといって,プログラムの翻案に該
当するはずがない。
fこのようにRBCプログラム(ビジネスサーバ版)は,COBOL言
語を利用してレンタル業界の特徴である日数計算及びレンタルの期間等
の情報を構築するために,年間のカレンダーを利用して貸出期間,すな
わちレンタルの開始日より終了日までの日数を算出したり,逆に日数よ
りレンタルの終了日の値を求めたりしている。
そして,このような仕様上の取り決めに従ってプログラムの命令等が
文法上決まった形でソースコードとして記載される。これは,上記の仕様
どおりCOBOL言語を利用してソースコードを記載すれば誰が行って
も同じように記載することになるのである。
(オ)甲第129号証と乙第82号証の類似点に関する指摘に対して(乙8
8)
は,要するに,ビジネスサーバ版について,貸出君プログラムのKCS
出庫入力ソースコードの総ステップ数16,085のうち,30のステッ
プがRBCプログラムと類似すると指摘している(甲139の表⑦および
表⑧参照。しかしながら,かかる30のステップは,単なるCOBOL上)
,の命令にすぎず,創作性のある著作物に該当するものではない。この点は
甲第128号証と乙第81号証との類似点に関するの指摘に対してKCS
反論したのと同様である(甲144(表⑬)参照。)
(カ)まとめ
RBCプログラムが貸出君プログラムと同一であるとが指摘する部KCS
分の割合は,乙第84号証に関して30%,乙第86号証に関して10%,
乙第87号証に関しては0.23%,乙第88号証に至っては0.18%に
すぎない(甲139の表②,④,⑥,⑧参照。しかも,同一と指摘する部)
,分のほとんどは,使用プログラム言語上の命令や規約に関するものであり
著作権法上,創作性のある著作物として保護され得ないものである。
そうすると,Win版について「項目名称」に関するVBプログラム上,
の記述のみが実質的な比較の対象となるが,この「項目名称」は,同一分
野のレンタル業務上の必然により,同一の意味となるものが使用されるの
は当然である。
そして「項目名称」の略示記述としてのVB上の記述方法は,その意味,
が容易に連想できるように,たとえばハンガリアン記法により記述するた
め表現が似かよることは当然ありうるのであり,使用する「項目名称」の
すべてについて企業内で統一的に決定するのが通常である。また,その作
業は,他のプログラムを参照するまでもなく,レンタル業務について通常
の知識を有するプログラマーにとって容易になし得る程度のものというべ
きである。
さらには「項目名称」は,そのすべてがRBCプログラムと貸出君プロ,
グラム間で完全に一致しているわけではなく,RBCプログラムは,独自
の基本設計部分やデータの流れをもって作成されているのである。
したがって,Win版について「項目名称」に関するVB上の記述に貸,
出君プログラムと似かよったものが部分的に存在するからといって,その
似かよった「項目名称」に関するプログラム上の記述が貸出君プログラム
に依拠したものということは到底できない。
また「項目名称」に関する記述の割合は,プログラム全体からみてわず,
かな部分を占めるにすぎないから,そのことをもって,RBCプログラム
全体が貸出君プログラムに依拠したものであるとのの主張は,失当KCS
である。
ビジネスサーバ版については,そもそも一致すると指摘する部分の全体
に対する割合が1%にも満たないのであり,しかも,その一致する部分は
COBOL言語における命令として一般的なものや,文字表現として一般
的なものにすぎないから,RBCプログラムが貸出君プログラムに依拠し
たものであるとするの主張は,全て根拠がない。KCS
イRBCプログラムは,貸出君プログラムとは全く異なる設計仕様によって
組み立てられている。このことは,Win版についてはの受注入力プKCS
ログラム(乙77)とこれに対応するの受注入力プログラム(甲12RBC
4)の各照会画面を表示する部分の機能を比較し,ビジネスサーバ版につい
てはの受注入力プログラムソースリスト(乙81の2)とこれに対応KCS
,するの随時入力プログラムソースリスト(甲128)とを対比すればRBC
以下のとおり明らかである。
(ア)Win版(甲124と乙77)
aまず,RBC受注入力プログラム(甲124)とKCS受注入力プロ
グラム(乙77)の照会画面を表示する部分の機能を比較する。これら
を簡単に図で表すとそれぞれ別紙17「甲124・乙77対比表①」の
図A,Bとなる。
RBCシステムでは,上記対比表の図A及びその説明に示すように,
照会機能を使用するとメインプログラムはサブプログラムコントロール
マスタのデータベースを検索して照会プログラムを起動し画面に表示し
ている。
他方,KCSシステムでは,上記対比表の図B及びその説明に示すよ
うに,照会機能を使用するとメインプログラムはDLL(共通プログラ
ム)を検索して照会プログラムを起動し画面に表示している。
このように,RBCシステムはコントロールマスタのデータベースを
検索するため,顧客の要望に応じてプログラムの変更を行わずに,任意
で起動する照会プログラムを変更することができるようになっているの
に対し,KCSシステムはプログラム内のDLL(共通プログラム)に
起動するプログラムが組み込まれているため,プログラムの変更を行わ
なければ起動するプログラムを変更することができない。
RBCシステムとKCSシステムは,照会という同一機能ではあるが
機能ロジックが全く異なった仕様により作成されていることが明白であ
る。
b次にRBC受注入力プログラム(甲124)とKCS受注入力プログ
ラム(乙77)の画面構成及びその機能を比較する。これらを簡単に図
で表すと別紙18「甲124・乙77対比表②」の図C,Dとなる。
RBCシステムでは,図C及びその説明に示すように,画面構成はヘ
ッダー部,明細部,フッダー部の3つに大きく分けることができ,上か
ら順に入力することになる。当然どの項目においても該当フィールドに
カーソルを位置づければ入力可能になる。
他方,KCSシステムでは,図D及びその説明に示すように,画面構
成はヘッダー部,入力域,明細部に分かれており,入力は,ヘッダー部
と入力域でしか行うことができない。明細部は表示のみの領域としての
機能であり,明細部の表示明細を修正する場合は毎回入力域にその明細
を移行しなければならない。
このように,画面構成とその機能においても,RBCプログラムは,
貸出君プログラムとは全く異なった仕様により作成されている。
(イ)ビジネスサーバ版(甲128と乙81の2)
RBC随時入力プログラムソースリスト(甲128)とKCS受注入力
プログラムソースリスト(乙81の2)の構造を簡単に図で表すと,それ
ぞれ別紙19「甲128・乙81の2対比表」の図E,Fとなる。
RBCシステムは,図E及びその説明に示すように,プログラムが開始
すると,条件判断によりサブルーチン①の処理を行い,その処理が終了す
ると再度,条件判断を行い,サブルーチン②,③・・・に流れるロジック
になっており,プログラムの構造化が実現されている。
他方,KCSシステムは,図F及びその説明に示すように,プログラム
が開始すると,サブルーチン①の処理を行い,その処理が終了すると②,
③・・・と単に上から下に流れるロジックになっている。
このメインロジックの違いから理解できるように,RBCプログラムは
貸出君プログラムとはプログラムの構造自体が全く異なったものになって
いる。
ウまた,自身も,RBCプログラムが貸出君新版プログラムの持ち出KCS
しであるとの主張の際,次のように主張していることから明らかなように,
RBCプログラムと貸出君プログラムが全く異なるものであることは自認し
ている。すなわち「原告()販売ソフトは被告()内で開発さ,RBCKCS
Kれていたプログラム及びドキュメントから構成されたものであり,被告(
)が従前から販売していた「貸出君」のプログラムに変更や修正を加えCS
たものではないから,被告()の商品である貸出君と原告()KCSRBC
販売ソフトのプログラムを比べても意味がない。原告()は,このこRBC
とを知悉しつつ,敢えてこの両者を比較し,そのプログラムが異なるという
当然の結果を得ることによって,あたかも自己に権利侵害の事実がないと周
囲に誤解させようと企むものであり,その行為は極めて巧妙かつ悪質であ
る(被告第1準備書面4頁)と。」
(2)開発用書類について
ア乙55について
は,両プログラムの共通点として,「『DB』欄等のある行に続く4KCS
1行に記入された項目の内容の多くが取引先マスタRHMTOMTと一致し
ている」と指摘する(乙55)が,これも似ざるを得ない部分である。この
点を具体的に整理すると,次のとおりとなる。
№桁数レコー№桁数レコーRBCKCS
ドド
デザイン項目デザイン項目
名名
34担当者コード24担当者コード
67取引先コード35得意先コード
74現場コード該当なし
920取引先名420得意先名
1010略称名510得意先略名
162締日コード122締日コード
191集金方法151回収方法
223地区コード183地区コード
235ランク211得意先ランク
は,上記のとおり,RBCプログラムと貸出君プログラムのレコーKCS
ドデザイン項目が類似していることをもって,RBCプログラムが貸出君プ
ログラムの翻案であると主張している。
しかしながら,コンピュータソフトを作る場合には,同一業種や同一業務
においては,それぞれ決められた範囲の処理や同一用語・類似用語が用いら
れているのが当然であり,さらに,ソフトを作る言語そのものが限られた指
令の組合せが必然的に発生するものであり,当然,類似することを免れない
部分が少なくない。
そして,上記表に挙がっている項目は,全て必要不可欠な項目である。
このことは,及びとは全く関係のない応研株式会社が販売しRBCKCS
ている販売管理ソフト「販売大臣2003」の得意先マスタのレコードデザイ
ン(甲227)と,同じくピーシーエー株式会社の販売管理ソフト「PCA商
管7V.2」の得意先マスタのレコードデザイン(甲228)においても,次
のとおり,同様の項目があることから明白である。
№桁数販売大臣№桁PCA商管
2003項目名数V.2項目名
115コード13得意先コード
250名称140得意先名1
331名称220得意先名2
715請求先コード13請求先コード
81請求管理1実績管理
98担当者コード3主担当者コー

163請求締日2請求締日
172回収予定日3回収予定日
イ乙57ないし59の19について
は,開発用書類についても,行数やセルの幅まで一致していることKCS
から,そのデータに上書きされていることが明らかであることを指摘する
(乙57∼59の19。)
確かに,ファイル仕様書のデザインは,で使用していたものと同じKCS
であるが,これは固有のデザインなどではなく,に著作権もなKCSKCS
ければ秘密管理性もないものである。
すなわち,このファイル仕様書は,内田洋行が考案し,グループ会社の教
育用にグループ会社全てで使用されているものであり,当初は手書きで,途
中からExcelで作成されたのである。
したがって,ファイル仕様書のデザインが同一でも,のデータを上KCS
書きしたという証明にはならない。
(3)オペレーションマニュアルについて
は,とのオペレーションマニュアル(甲87,甲96)KCSRBCKCS
がアスタリスクの数や具体的な一字一句の表現まで一致しているから,データ
上書きは明らかであると主張する。
,しかし,オペレーションマニュアル作成に使用するWordというソフトは
,「ページ設定」という機能によって,文字数と行数,余白の大きさを指定でき
「フォント」という機能によって文字のフォント,サイズを指定することがで
きる。そして,アスタリスクは,左端の文字入力位置から入力した単語の右側
から用紙右端の余白までの間に印字されているのであるから,左側の余白,右
側の余白,1行の文字数,文字のサイズ,単語の文字数が同じであれば,アス
タリスクの数も同じになる。
そして,これらの文字数やサイズなどは個々人の好みによって決めるのであ
るが,設定は簡単であるから,自分で決めた書式を常に使用する人もいるし,
その一手間が面倒だとしてあまりこだわりがなくWordの初期設定のままの
人もいる。Wordの初期設定では文字数の指定はなく,行数は40行が指定
されており,余白は上が35mm,左と下と右が30mm,文字はMS明朝,
大きさは10.5ポイントとなっている。そして,自分で決めた書式を使いた
い場合においては,過去に自分が作成した文書を利用する場合と,新たにWo
rdの文書を新規作成し,書式を設定する場合とがある。
そして,とのオペレーションマニュアルは同一人物がデザインRBCKCS
したものであるから,同じ書式が使用されていても何ら不思議ではない。しか
も,同一業界のシステムであることから用いられる単語も同じである。したが
って,余白,文字数,文字の大きさ,単語の文字数が同じとなり,アスタリス
クの数が一致するという現象が生じるのも全く不思議ではない。
以上より,同一の書式を使えば一致することはむしろ当然であり,同じ作成
者が同一の書式を使うことは自然なことであるため,アスタリスクの数の一致
は,がオペレーションマニュアルのデータを上書きしたことの証明にはRBC
ならない。
(4)以上のとおり,RBCプログラムは貸出君プログラムに依拠したものではな
い。
4争点3(RBCプログラム(Win版)は「貸出君forwin廉価版」の表示画
面に対するの著作権を侵害するか)の(1)(表示画面の著作物性の有無)にKCS
ついて
【の主張】KCS
のオペレーションマニュアル(乙9)に掲載された「貸出君forwin廉KCS
価版」の表示画面は,従来のこの種のプログラムにおいては別々の画面に分かれ
ていた出庫の伝票入力を行う出庫画面と,入庫の伝票入力を行う入庫画面とを統
一化した「入出庫入力画面」を備えたものである。
この統一化した画面は,1つのディスプレイ上に出庫画面と入庫画面が単純に
並列表示されるようにしたというものではなく,入庫画面,出庫画面,そして入
庫と出庫の伝票入力をともに行える入出庫画面の3種類の画面が,左上部にある
」「」「,「出庫・入庫・入出庫」の選択ボタンの操作によって切り替わるようにした
全く新しい創作的表現となっている。
また,前記入出庫画面は,それ自体従来にない全く新しいものであり,ワーク
シート状の入力欄への明細の入力の際に「出庫数「入庫数」の欄がともに入力,」
可能な状態で表示されるという,従来のこの種のプログラムの画面からは全く予
測できない表現上の特徴を有するものとなっている。
したがって「入出庫入力画面」に著作物性が認められることは明らかである。,
さらに「入出庫入力画面」は「得意先マスタ修正登録画面「現場マスタ修,,」,
正登録画面「商品マスタ修正登録画面「機械マスタ修正登録画面「入出庫」,」,」,
問合せ画面「械稼動問合せ画面「止日入力画面」等の各画面と牽連関係にあ」,」,
り,これらの集合体としての表示画面も一つの著作物として保護されるものであ
る。
【の主張】RBCら
争う。
において「貸出君forwin廉価版」なるソフトが開発されたことがないKCS
ことは,前記のとおりである。
5争点3(RBCプログラム(Win版)は「貸出君forwin廉価版」の表示画
面に対するの著作権を侵害するか)の(2)(表示画面に対する依拠性の有KCS
無)について
【の主張】KCS
RBCプログラムの商品説明用リーフレットには,前記各画面と同一の表示画
面が掲載されており(乙11の1,入出庫入力画面からの操作により他の画面が)
呼び出されるなど牽連関係があることも記載されている。
したがって,RBCプログラムは「貸出君forwin廉価版」の表示画面に依,
拠して作成されたものであることが明らかである。
【の主張】RBCら
争う。
において「貸出君forwin廉価版」なるソフトが開発されたことがないKCS
ことは,前記のとおりである。
6争点4(RBCプログラム(ビジネスサーバ版)及びその開発用書類(甲20)
は「貸出君ASP新版」の開発用書類及び貸出君プログラム(ASP版)の開発用
書類(乙49,58)に対するの著作権を侵害するか)についてKCS
【の主張】KCS
(1)RBCプログラム(ビジネスサーバ版)は「貸出君ASP新版」のプログ,
ラムの開発用書類(乙23)に対するの著作権(翻案権)を侵害するもKCS
のである。
(2)RBCプログラム(ビジネスサーバ版)は,貸出君プログラム(ASP版)
の開発用書類(乙49,58)を翻案して作成した二次的著作物ないしそれを
利用した物であり,の著作権(翻案権及び二次的著作物の原著作物の著KCS
作者の権利)を侵害するものである。
(3)RBCプログラム(ビジネスサーバ版)の開発用書類である甲第20号証
(得意先マスタメンテナンス)について,同号証の16,17(取引先マス
タ)が,乙第23号証の7枚目と8枚目(取引先マスタ)と全く同一内容であ
ること,甲第20号証の17と乙第23号証の8枚目に共通した誤記(左上部
の表示「1/2」は,本当は「2/2)があること等からすると,甲第20号」
証が乙第23号証に依拠して作成されたものであることが明らかであり,RB
Cプログラム(ビジネスサーバ版)の開発用書類は「貸出君ASP新版」のプ
。ログラムの開発用書類(乙23)を複製ないし翻案したものというべきである
(4)RBCプログラム(ビジネスサーバ版)の開発用書類(甲20)は,貸出君
プログラムの開発用書類(乙49,58)を複製ないし翻案したものである。
【の主張】RBCら
争う。
7争点5(RBCプログラム(Win版)のオペレーションマニュアル(甲96)
は「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュアル及び貸出君プログラム
(Win版)のオペレーションマニュアル(甲87)に対するの著作権を侵KCS
害するか)について
【の主張】KCS
(1)RBCプログラム(Win版)のオペレーションマニュアル(甲96)は,
「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュアル(乙9)を複製ないし
翻案したものである。
(2)RBCプログラム(Win版)のオペレーションマニュアル(甲96)は,
貸出君プログラム(Win版)のオペレーションマニュアル(甲87)を複製
ないし翻案したものである。
【の主張】RBCら
争う。
8争点6(本件開発方針及び本件プログラム作成情報について,は不正競RBCら
争防止法2条1項7号,8号所定の不正競争をしたか)の(1)(本件開発方針の営
業秘密該当性の有無)について
【の主張】KCS
(1)乙第6号証(開発方針書)は,入庫画面と出庫画面とを統一化すること等が
記載された事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られて
いないものである。
また,上記開発方針書は,平成13年8月に行った決算会議のために作成され
た書類であるが,新製品の開発方針など極めて重要な会社方針が記載されている
ため,社外秘扱いとされ「秘」の印が押されている。また,は,内田洋,KCS
行との間で秘密保持契約を締結している(乙29。そして,決算会議の参加者)
と同数しか作成されず,参加者に対しては,社外秘の機密書類であることを説明
したうえ上で,コピー禁止と説明してあり「秘」の押印もなされているため,,
参加者は上記開発方針書に記載された情報が営業秘密であることは当然認識して
いた。
したがって,上記開発方針書に記載されている本件開発方針もまた,有用であ
りかつ非公知の情報であって,秘密管理性を有するものである。
(2)は「貸出君forwin廉価版」の開発方針である「入庫画面と出庫RBCら,
画面の統一化」は一般通常に流布されている概念であると主張するが,そのよう
な事実はない。
仮に,が主張するように,レンタル業界からの開発の要望があったとRBCら
しても「入庫画面と出庫画面の統一化」を初めとする「貸出君forwin廉価,
版」のにおける具体的な開発計画が公然と知られていないことに変わりはKCS
ない。
【の主張】RBCら
(1)「入庫画面と出庫画面の統一化」は,レンタル業界から時折開発の要望もあ
り,何も独自の情報などではなく,一般通常に流布されている概念(情KCS
報)である。
(2)上記開発方針書のようなの開発方針を記載した書面は,年2回の決算KCS
会議に合わせて従業員全員に配布するものであって,これに「秘」の印を押して
あるのは,次のような事情による。
上記決算会議は,毎回,内田洋行(との資本関係もあり,最大の仕入先KCS
でもある)の会議室を借りて行われていた(同社の複写機を使って,当該文書を
50部位コピーもしていた。その理由は,費用が不要であり,会議終了後に行)
う懇親会も,同社内の大きな社員食堂を利用できるからである。
これらの際に,各従業員が,会議室内に書類を置き忘れたり,乱雑に取り扱っ
たりするのを防ぐため,会議を実質的に切りもりしていたの指示により,X2
「秘」の印を押すことにしたものである。
この文書内容については,内田洋行には説明していたぐらいで(内田洋行の従
業員も会議に参加することがあり,懇親会にも参加していた,営業秘密どころ。)
か,積極的に,顧客や見込客に対し,このようなものを開発しているとか,開発
したいと考えているとかを報告・説明し,営業用に利用していた。このように,
各従業員は,計画発表を受ければ,即日でも顧客や見込客に話していくものであ
って,秘密として管理されていたものでは全くない。
9争点6(本件開発方針及び本件プログラム作成情報について,は不正競RBCら
争防止法2条1項7号,8号所定の不正競争をしたか)の(2)(本件プログラム作
成情報の営業秘密該当性の有無)について
【の主張】KCS
乙第23号証は,建機・仮設資材レンタル業向けパッケージソフトウェア「貸出
君ASP新版「貸出君forwin廉価版」の設計書類であり,営業秘密であること」
は明らかである。
ソフトウェアの開発・販売を業とするにとって,本件プログラム作成情報KCS
が極めて重要な営業秘密であることは,従業員全員が当然に認識し,社外に流出し
ないように管理されていた。
【の主張】RBCら
争う。
10争点6(本件開発方針及び本件プログラム作成情報について,は不正RBCら
競争防止法2条1項7号,8号所定の不正競争をしたか)の(3)(の不正RBCら
競争行為の有無)について
【の主張】KCS
(1)は,と競争関係にある事業を行って不当な利益を図る目的X1ら8名KCS
で,本件開発方針及び本件プログラム作成情報を持ち出してこれを使用,開示し
たものであるから,同人らの行為は,不正競争防止法2条1項7号に該当する。
(2)は,上記の事実を全て知りながら,本件開発方針及び本件プログラムRBC
KCS作成情報に基づき「ミスターアドバンス」等のソフトを完成させ,これを
の取引先に販売したのであり,と競争関係にある事業を行って不当な利益KCS
を図る目的で営業秘密を使用したものであるから,の行為は,不正競争防RBC
止法2条1項8号に該当する。
【の主張】RBCら
争う。
11争点7(貸出君関連成果物を持ち出したことを理由とする民法709条の不法
行為の成否)について
【の主張】KCS
(1)判例上の基準
近時,著作権法等による保護対象となる利益であるか否かにかかわらず,自
由競争を逸脱するような情報の不正利用行為につき,裁判例において不法行為
責任(民法709条)が認められている。
これらの裁判例においては,競業他社が多大な労力または資本を投下して完
成させた物や情報に依拠した製品を創作し,当該競業他社と競合する地域で当
該コピー製品を販売するような行為は,当該物や情報が著作権その他の知的財
産権の保護対象に該当するか否かを問わず,当該競業他社の営業活動上の利益
を不正に侵害するものとして,不法行為(民法709条)に該当すると判示さ
れている。
(2)の不法行為の内容RBCら
ア不法行為の概要
「貸出君」は,が多大な労力及び資本を投入して昭和63年ころかKCS
ら開発・改良を重ねてきたの営業活動の根幹をなすソフトウエアであKCS
り,同ソフトウエアに関連して完成された物としては,Win版及びビジネ
スサーバ版の各プログラム(ソース・オブジェクトの両者を含む,表示画面,)
オペレーションマニュアル,各種開発用書類(貸出君関連成果物)がある。
しかるに,今般,は,を設立するに際し,が10年RBCらRBCKCS
以上をかけて開発及び改良を重ねてきた貸出君関連成果物をデータその他の
媒体で持ち出し,適宜,コピー及び上書きすることによって「ミスターアド,
RBCヴァンス「ミスターレンタル「TeamS」等として完成させ,」」
のソフトとして,元来自らがの従業員の立場として営業活動を行ってKCS
いたの顧客に対し,これらのソフトを販売し続けるに至っている。KCS
イデータ等持ち出しについて
が貸出君関連成果物をデータその他の媒体で持ち出していたことRBCら
は,たとえば,ソースプログラムについては,RBCプログラムと貸出君プ
ログラムを比較すればデッドコピーされている部分が存在することが一目瞭
然であり(乙84ないし乙89,なお,乙65も参照,オペレーションマ)
ニュアルについては,その内容に加え,アスタリスクの数や具体的な一字一
句の表現まで一致している部分があることからして,そのデータに上書きが
施されていることが明らかであり(甲87,甲96,調書41頁以下X3
〔同証人でさえデータ上書きの事実を否定していない,調書18頁以〕X4
下,開発用書類についても,その内容に加え(乙57ないし59の19,))
行数やセルの幅まで完全に一致していることからしても,そのデータに上書
きが施されていることが明らかである(調書40頁以下〔同証人でさえX3
データ上書きの事実を否定していない。さらに,の元従業員らは,〕)RBC
KCSRBCが開発用に使用していた富士通製K6900というオフコンを
が自らの事務所に搬入して使用していたことを認めている(乙62,乙6ら
3,乙65ないし乙67,調書42頁以下〔同証人でさえオフコン持ちX3
出しの事実を否定していない。〕)
そして何より,は,裁判所からの指示に反し,明らかに虚偽の弁RBCら
解を繰り返しつつ,Win版及びビジネスサーバ版の双方につき,大半のプ
ログラム及びその作成経過を提出しておらず,とりわけ,ビジネスサーバ版
のプログラムについては,平成16年6月14日の段階で作成されているも
ののみで214本存在すると陳述した上に(甲13,平成17年12月15)
日の時点でもその事実は正しい旨の証言をしているにもかかわらず(調X3
書35頁,改めて作成履歴等の提出を求められるやいなや一転して30数本)
しか存在しないなどと強弁し始めており(甲115,もはや主張整理の結果)
として,RBCソフトのうち自らが作成したプログラムは僅かであり,残り
の大半はのプログラムを流用したことが明らかになっている。KCS
ウの悪質な営業方法についてRBCら
は,ミスターアドバンス開発の基本理念として「貸出君の持つ肥RBCら
大化された非効率性を解決する」ことを挙げ,このことをの顧客らにKCS
広報し(甲5の2頁,しかも,に在籍中にその顧客から「貸出君」を)KCS
RBCら受注した事実を故意に隠匿していた(乙18ないし20。さらに,)
,は,の顧客をしてと混同させるような行為にも及んだ上(乙1KCSRBC
KCSR2,46,56,挙句の果てには,において受注し作業した代金を)
にて取得するなど(乙38ないし45,悪質極まりない行動を繰り返しBC)
ていた。
RBCX3は,かかる極めて悪質な営業活動により,その設立直後から(
の退職から起算しても僅か2か月で,ミスターアドバンスの注文を受けるこ)
とに成功しているのである(甲70。)
エの不法行為の内容X2ら7名
(ア),,,についてX2X3X4X5
の社内改善委員会(甲108)を設立し,Y2やに対して辞KCSY1
任を迫り,に対する各種背任行為に及んだ中心人物であり,貸出君KCS
,に関する各種関連成果物を持ち出してミスターアドバンスとして完成させ
のソフトとして販売していき,の取引先を不正に奪うことをRBCKCS
中心になって共謀していた首謀者である(共謀の具体的様子などは乙34
ないし乙36等からも明らかである。。)
及びにおいては,在籍中からミスターアドバンスの具体X3X4KCS
的な開発行為に及んだ人物でもある。
(イ),,についてX6X7X8
ミスターアドバンスの開発行為に関わった者らである。
は,詳細設計書(乙23等)の作成及びスルーチェックを行うととX6
もに(甲15,訴訟においては,の違法行為の隠匿に協力するよう)RBC
な証言に終始していた。また,は,K6900の運搬に関わったことX6
を認めている(調書19頁。X6)
及びは,ASP版のプログラム開発に従事した者であり(甲1X7X8
5,甲20の3等,のために使用されることを知悉しつつ貸出君A)RBC
SP新版のプログラム開発に及んでいた。また,旧貸出君のプログラムを
複製・翻案して,ミスターアドバンスのソースコードを作成していった。
(3)小括
以上のとおり,は,が10年以上かけて開発・改良してきたソRBCKCS
フトに適宜修正を加えることで,極めて短期間に自らのソフトを完成させ,同
ソフトを利用しての顧客らに対して営業活動を行い,不当な利益を獲得KCS
し続けている。
そして,の行為は明らかに故意に基づいている。RBCら
RBCらRBの行為が上記各裁判例の基準に当てはまることは明白であり,
はに対し,各種著作権侵害の法的責任とは無関係に不法行為責任をCらKCS
負うものである。
【の主張】RBCら
否認ないし争う。
前記第7の1【の主張】のとおり,①は不法な目的で設立されたRBCらRBC
ものではなく,むしろ,の不当な行為により緊急避難的に設立されたものでKCS
ある。また,②RBCシステムはKCSシステムとは全く異なる新たなシステムで
あり,は,RBCシステムを開発するに当たり,ビジネスサーバ版であれRBCら
ば約1年,Win版でも7か月から3年を費やしているものであって,RBCシス
テムの開発期間に相応の期間をかけているものである。要するに,KCSシステム
を剽窃・流用してRBCシステムの開発期間を短縮したという事実はない。
12争点8(の被った損害の額)についてKCS
【の主張】KCS
は,の違法行為によって被った損害につき,著作権侵害の不法行KCSRBCら
為,不正競争防止法4条又は民法709条に基づき,次のとおり損害金の支払を求
める。
(1)著作権法114条1項又は不正競争防止法5条1項による損害額(以下「1
項損害」という)の算定。
アソフト販売に関する逸失利益
(ア)の譲渡等数量RBC
設立後にが販売したソフトは,の違法行為がなけRBCRBCRBCら
れば全てが販売できたはずである。そして,は,現在に至るKCSRBC
までの間,少なくとも73社にソフトを販売した(乙92,乙93。)
(イ)単位数量当たりの利益の額
aは,が設立された平成15年3月より前3年分の決算期KCSRBC
において「貸出君」1つ販売するにあたり平均約550万円の利益を得,
ていた(乙91の1ないし3。)
b変動費について
「貸出君」のソフトは,一度プログラムが完成してしまえば,1つ追
加的に販売するために原材料の仕入れ等の追加的費用が必要となるわけ
ではない(ハードとともに販売する場合はハードの代金が仕入原価に該
当するが,この分については原価金額に含めて利益額から差し引いて計
算している〔乙91の1ないし7,乙97の1ないし7。なお,顧客ご〕
,とにのSEプログラマーがカスタマイズ作業を行うことがあるがKCS
SEプログラマーの人件費は内での開発作業等に関するものであKCS
り「貸出君」1つ追加的に販売するために必要となる費用には該当しな,
い。。)
cの主張についてRBCら
(a)は「貸出君」1つ当たり販売するにつきが得ていRBCらKCS,
た利益額につき,過去12年分の平均値を基準にするべきであると主張
するが,主力商品化してから売上げが軌道に乗るまでの期間や10年以
上の期間における業界内の相場の変動等を考慮すれば,主力商品化して
からの全期間の平均値を基準にしてしまうと,問題となっている平成1
5年3月以降にが被った損害額(逸失利益額)を著しく過小に評KCS
価してしまうことになる。は,平成15年3月より前3年間,安KCS
定的に平均550万円以上の利益を得ていたのであるから(乙91の1
ないし3,の違法行為なしに営業活動を継続していれば,同)RBCら
月以降も同様のペースで利益を上げていたことは容易に予測される。し
たがって,の損害額が1件当たり少なくとも550万円の利益をKCS
得たことを基準として算定されるべきは当然である。
(b)は,の粗利益率は4割9分にすぎないと主張するが,RBCらKCS
本件直近の第23期の粗利益率は66%であり(甲169,平成に入)
ってからの第10期から第19期までの10期の平均粗利益率は5割を
超えている(甲168の7。)
(ウ)損害額
したがって,RBCソフトの販売によりがソフトにつき被った逸KCS
失利益分の損害額は,4億0150万円(550万円×73社)である。
なお,とは完全に競業関係にあり,営業先も完全に一致するRBCKCS
ことから,の元ユーザであるか否かにかかわらず,現在ののKCSRBC
ユーザに対するソフトの販売分は,全ての損害額の算定の基礎に含KCS
まれる。
イソフトに付随する商品の販売等による逸失利益
(ア)リモート保守料収入
は「貸出君」のソフトの販売に付随して,ユーザとの間で「貸出KCS,
君」のソフトのリモート保守契約を締結し,同ユーザからリモート保守料
を取得することもあったが,同ユーザの中には,からソフトを購入RBC
KCSRBしたことを受けて,とのリモート保守契約を終了させ,新たに
との間でリモート保守契約を締結した企業も存在する。は「貸出CRBC,
君」につき著作権侵害・営業秘密侵害・不法行為に及んだ結果「Mr.A,
dvance」等のソフトを完成させ,同ソフトにつきの元ユーザKCS
等との間でリモート保守契約を締結の上リモート保守料収入を得るように
なったところ,の違法行為がなければ,がのユーザRBCらKCSKCS
との間でリモート保守契約を締結の上がリモート保守料収入を得るKCS
ことができたはずである。そして,が失ったリモート保守料は,少KCS
なくとも月額40万1000円(年額481万2000円)に達する(乙
94。)
したがって,RBCソフトの販売によりがリモート保守につき被KCS
った逸失利益分の損害額は,平成15年3月以降少なくとも年額481万
2000円(月額40万1000円)の割合で算定される金額である(ち
なみに,平成19年2月を基準とすると1924万8000円〔481万
2000円×4年〕となる。)
(イ)印刷物の販売による収入
は「貸出君」のソフトの販売に付随して,ユーザに対し,同ソフKCS,
トの利用に必要な各種帳票類を販売し,同ユーザから同販売代金を取得す
ることもあったが,同ユーザの中には,からソフトを購入したことRBC
に伴い,から各種帳票類を仕入れることを取りやめ,から仕KCSRBC
入れるようになった企業も存在する。は「貸出君」につき著作権侵RBC,
害・営業秘密侵害・不法行為に及んだ結果「Mr.Advance」等の,
ソフトを完成させ,同ソフトの利用に必要な各種帳票類を販売して同販売
RBCらKCS代金を得るようになったところ,の違法行為がなければ,
がのユーザに対して各種帳票類を販売してが販売代金を得るKCSKCS
ことができたはずである。そして,が失った各種帳票類の販売代金KCS
の粗利益は「貸出君」の元ユーザに対する販売分のみに限定しても,少な,
くとも年額60万1400円に達する(乙95。)
したがって,RBCソフトの販売によりが印刷物の販売につき被KCS
った逸失利益分の損害額は,平成15年3月以降少なくとも年額60万1
400円の割合で算定される金額である(ちなみに,平成19年2月を基
準とすると240万5600円〔60万1400円×4年〕となる。)
ウ結論
(ア)上記ア及びイに記載の合計額(平成19年2月を基準とすると,4億
2315万3600円)がの違法行為によりが被った逸失RBCらKCS
利益分の損害額(1項損害)である。そして,同金額の1割に相当する弁
護士費用が損害額として加算されるべきである。
(イ)上記損害額は,の一般不法行為と相当因果関係のある損害額RBCら
でもある。
(2)著作権法114条2項又は不正競争防止法5条2項による損害額(以下「2
項損害」という)の算定。
アの売上高RBC
(ア)から提出された総勘定元帳(甲205)を分析し,の第1RBCRBC
期の売上をRBCソフトに関連するものとそうでないものに分類した結果に
よれば,平成16年1月までの10か月間におけるRBCソフトに関連する
売上は,3億1208万7302円である。これを年額(12か月)に換算
すると,3億7450万4762円となる。
(イ)なお,は,RBCソフトに関する売上げのうち相当部分を「売上RBC
取消」という形で取消処理しているが,その多くは実際に契約が取り消され
たのではなく「未成工事受入金」あるいは「預り金(帳簿閲覧時のの,」X2
説明による)への振替処理をして翌期に繰り越されたにすぎないもの(す。
なわち,既に受注・入金済みであり,たまたま完成が翌期にずれ込んだだけ
のものを翌期に繰り越しているだけ)であるため,損害額から控除すべきも
のではない。したがって,実際に契約が取り消されたものと考えられる九州
リース分と尼信リース分についてのみ売上げから控除した。
イの利益率RBC
の上記売上高に対する利益率は6割を下らない。RBC
ウ損害額
よって,が得た利益は2億2470万2857円を下らない。これらRBC
は全てに生じた損害と推定されるべきものである(2項損害。KCS)
(3)予備的主張
,,KCSは「貸出君forwin廉価版」及び「貸出君ASP新版」開発のため
平成13年9月(乙6)から設立の平成15年3月までの間,少なくとRBC
も合計金9910万2156円の人件費を支出したが(乙96,同支出の成果)
として作成された各種資料をに不正に持ち出され,のソフトのRBCらRBC
ために利用された結果,上記人件費については全く無駄な出費を強いられたこ
ととなった。
企業は,最低限度,投下した支出を上回る売上げを得る見込みがあるからこ
Kそ,多額の費用を投下して商品開発にあたるのであり,当然のことながら,
の場合も「貸出君forwin廉価版」及び「貸出君ASP新版」の営業活動CS
により,少なくとも上記人件費の支出を上回る利益を得る見込みで,同支出に
及んだものである。
かかる観点からすれば,に対しては最低限度上記人件費の合計金99KCS
K10万2156円の損害が填補されるべきであり,万一,上記(1)に記載した
の逸失利益が同人件費合計額よりも少額であると算定される場合においてCS
は,同人件費合計額をもっての損害額として認められるべきである。なKCS
お,この場合においても,同金額の1割に相当する弁護士費用が損害額として
加算されるべきである。
(4)まとめ
よって,はに対し,著作権侵害の不法行為,不正競争防止法KCSRBCら
4条又は民法709条に基づき,連帯して,第2事件提訴前に発生していた損
害額である2億1200万円のうち1億円及びこれに対する第2事件の訴状送
達の日の翌日である平成16年11月27日から支払済みまで年5分の割合に
よる遅延損害金の支払を求める。
【の主張】RBCら
(1)の主張KCS
の損害額の主張は,①著作権法114条1項又は不正競争防止法5条KCS
1項に基づく損害(1項損害,②民法709条に基づく損害,③著作権法11)
。4条2項又は不正競争防止法5条2項に基づく損害(2項損害)に分けられる
(2)1項損害について
ア変動経費についての一般論
(ア)著作権法114条1項や不正競争防止法5条1項においては,侵害者
の販売数量に,著作権者の単位数量当たりの利益を乗じた額を損害と推定
,するとされているが,この利益は粗利益ではなく,①得べかりし純利益に
②真正品販売により回収することができたはずの固定経費を合算した金額
になり,③販売していた場合の経費増加分である変動経費は含まれない。
そして,この金額は,粗利益から仕入原価以外の変動経費を控除した金額
と一致する。
(イ)は,の単位数量当たりの利益として粗利益を主張し,変KCSKCS
動経費を控除することは不要であると主張する。
しかし,RBCシステムもKCSシステムも,1度完成したら追加費用
が不要というようなものではなく,営業活動が必要であり,そのための費
。用や,販売後のサポート費用や納入の際の交通費や搬送費等が必要となる
したがって,変動経費が一切発生しないということはおよそ考えられな
い。
イ本件の特殊事情
(ア)ところで,一般的に,変動経費に人件費や販売管理費が含まれない理
由としては,権利者は,侵害されている製品を販売するために既に人件費
や販売管理費を支出しており,製造数が増加しても,人件費や販売管理費
はほとんど増加しないことが多いからである。
これに対し,権利者が追加製造するにあたっても追加の人件費や販売管
理費が必要となる場合には,当然に変動経費となる。
KCSKCSRBCR(イ)そして,の従業員らがを退社してが設立され,
においてRBCシステムの開発,営業活動,カスタマイズが行われたBC
という事情のもとにおいては,は人件費や販売管理費を全く負担しKCS
ていないのであるから,RBCシステムを販売するためには必ず追加の人
件費や販売管理費が発生するものといえる。
したがって,本件においては,変動経費はが支出した金額全てでRBC
あり「利益」はむしろ営業利益と一致するのである。,
ウの利益率についてKCS
(ア)は,1つ当たりの利益が550万円だと主張するが,のKCSKCS
10期から23期までの売上高と営業利益を平均化すると,1年で6億4
871万8000円の売上高に対し1098万円の営業利益にすぎない。
また,会社推移一覧表(甲168の7)によれば,粗利益は4割9分にす
ぎず,営業利益に至っては0.126%にすぎない。
(イ)は,1件あたりの利益額として,過去全てを基準にすべきではKCS
なく,平成に入ってからの粗利益率は5割を超えているし,直近である2
3期の粗利益率は66%であると主張するが,そもそも,粗利益を「利益
率」とすることはできず,変動経費を控除しなければならないことや,変
。動経費控除後の利益率が営業利益と一致することは,前述のとおりである
エの能力KCS
著作権法114条1項や不正競争防止法5条1項は,算定された逸失利益
額は権利者の利用の能力の範囲内であることを要しているし,数量の全部又
は一部を権利者が販売できない事情がある場合にはその額を控除すると規定
している。
そして,は,平成15年3月に,従業員の大多数が退社したのであKCS
るから,RBCシステムをが販売することなど到底できなかった。KCS
,よって,が主張する損害額は,の能力の範囲を超えているしKCSKCS
の販売数量全部をが販売できない事情があったといえる。RBCKCS
オまとめ
KCSKC以上のとおり,単位数量当たりのの利益額を550万円とする
SKCSKCの主張は認められないし,の利益額がいくらであれ,その額は
の能力を超えているし,による販売は不可能であったのだから「1SKCS,
項損害」は成立しない。
(3)2項損害について
ア変動経費について
著作権法114条2項や不正競争防止法5条2項は,侵害者の利益を損害
と推定する規定であるが,この利益についても「1項損害」の場合と同様に,,
粗利益ではなく,粗利益から仕入原価以外の変動経費を除外したものであっ
て,売上高から仕入原価を含む変動経費を除外した金額と一致する。
そして,においては,RBCシステム販売以外の売上げは1割程度RBC
にすぎず,それ以外は全てRBCシステムのための経費であるから,固定経
費である家賃以外の経費の9割がRBCシステムに係る変動経費である。
したがって,第1期の変動経費は,仕入高1億1783万6552円と家
賃を除いた販売費・一般管理費9086万7571円の合計である2億87
0万4123円の9割の1億8783万3710円である。
イの売上高についてRBC
(ア)は,のミスターレンタル(旧ミスターアドヴァンス)に関KCSRBC
する第1期の売上高を3億1208万円と主張するが,事実に反する。第1
期の売上高は,1億7904万5002円である。
すなわち,総勘定元帳には売上計上されていても,①契約解除された3
024万円(主張の九州リース及び尼信リース分を含む,②ファKCS。)
イナンス会社を利用することになって売上先を変更したために二重計上さ
れている売上3170万7900円,③未入金のまま売上計上したが,倒
産した東興機械の売上げ294万円,④志摩機械への取消分34万650
,0円,⑤RBCシステムとは無関係の売上げである2189万2500円
⑥未成工事受入金のうち,RBCシステムの売上分である4591万54
00円を控除すべきである。
(イ)「未成工事受入金」をの売上高から控除すべきことRBC
第1期の未成工事受入金5999万8008円のうち,RBCシステム売
RBC上分である4591万5400円については,次のとおり,第1期の
のRBCシステムの販売による利益からは除外すべきものである。
a「未成工事受入金」の意義
未成工事受入金とは,売上げとして計上すべき金員は決算時点におい
て完成した工事に相当する割合の金額である必要があることから,決算
時点において未完成である部分に関しては,既に代金を受領していたと
しても売上げから除外するために,未成工事受入金として翌期に繰り延
べるものである(甲226)。
についても,RBCシステムを販売した場合のように,システRBC
ム開発を請け負った場合には,契約時に契約代金全額を一括で全額受領
するものの,システム開発は契約時から数年かけて完了することから,
受領した契約代金を30%,30%,30%及び10%に4分割し,決
算時におけるシステム開発の進捗状況に応じて,未完成の部分について
は未成工事受入金として売上げから除外しているのである。
KCSRBCKCSなお,に在籍していた当時の従業員の経験より,
においても,KCSシステムを販売した場合には,ソフト前受金勘定と
名目こそ異なれ,全く同じ処理をしている事実が明らかである。
b第1期の未成工事受入金
第1期の未成工事受入金として決算報告書にあがっている金額は,7
374万973円である(甲222,負債の部【流動負債。】)
この内訳は,三洋電機クレジットからの売掛金回収1374万296
5円及び未成工事受入金5999万8008円である(甲224。)
そして,上記未成工事受入金のうち,RBCシステムの販売分につい
てのものの合計額が4591万5400円である(甲216[黒色部分
が未成工事部分である])。。
この未成工事受入金4591万5400円については,第2期(平成1
6年2月1日及至平成17年1月31日)の決算時点においては,システ
ム開発を終了したために,同期に売上げとして計上した結果,第2期の
未成工事受入金としては計上されていない(甲225)。
c上記4591万5400円を除外すべき理由
(a)上述のとおり,著作権法114条2項や不正競争防止法5条2項
における「利益」は,粗利益から仕入原価以外の変動経費を除外した
ものであって,売上高から仕入原価を含む変動経費を除外した金額と
一致するものに他ならない。
(b)そして,未成工事受入金は,第1期の決算期時点においては,シ
ステム開発が未完成の部分に相当する金員であるから,当然,第1期
のRBCシステムの販売による利益からは差し引かれるべきものであ
る。
実際にも,未成工事受入金に相当する部分については,未だRBC
システムの開発は完了していないのであって,これにかかる経費等も
未だ支出していないことから,未成工事受入金も第1期の売上げに計
上されるとすれば,未成工事受入金相当額については販売金額そのも
のを「利益」とみなされるに等しい結果となり,妥当性を欠く。
(c)なお,では,平成19年6月に第1回税務調査を受けていRBC
るが,無論,未成工事受入金を含む第1期ないし第4期の決算処理に
ついても何ら指摘がなされていない。
(d)以上より,未成工事受入金4591万5400円については,控
除されるべきものである。
ウまとめ
よって,の第1期のRBCシステムに関連する売上高は1億790RBC
4万5002円であり,RBCシステムに関連する経費は1億8783万3
710円であるから,には利益は存在しない。RBC
(4)民法709条に基づく損害について
は,1項損害は民法709条にも基づいていると主張し,また,ソフKCS
ト販売以外の逸失利益や,ソフト開発にかかった人件費を民法709条に基づ
いて損害としている。
しかし,従業員が大量に退職したが,RBCシステムを販売することKCS
など不可能だったのであるから,1項損害については,の行為との間RBCら
に相当因果関係はない。
同様に,保守料や印刷物販売もの行為との間に相当因果関係を欠くRBCら
し,そもそも,保守料や印刷物販売は,ソフト販売をすれば必ず発生するなど
とはいえないため,この点からも相当因果関係を欠く。
そして,人件費については,開発業務をしていない人間についてのものも含
まれているし,が支出した人件費は,RBCシステムの開発に充てられKCS
たものではなく,KCSシステムのバグの修正やサポートのための費用である
から,損害とはいえない。
(5)損害論のまとめ
以上より,著作権法114条1項,2項,不正競争防止法5条1項,2項,
民法709条に基づく損害は,全て認められない。
第8争点に対する当裁判所の判断
1判断の大要
RBCKCSらKCSRBC当裁判所は,のに対する第1事件に係る請求及びの
に対する第2事件及び第3事件に係る請求について,大要,以下のとおり判断すら
る。
まず,のに対する第1事件に係る請求については,がしたRBCKCSらKCS
本件文書1,本件文書2の競合取引先に対する各送付,がした本件文書3の競Y1
合取引先に対する送付,のリコーリース(P2)に対する発言及び従業Y1KCS
員の中村建機P3に対する発言に限り,いずれもの営業上の利益を侵害するRBC
虚偽の事実の告知又は流布及びの信用を毀損する不法行為と認められる。しRBC
たがって,の上記行為はいずれも不正競争防止法2条1項14号の不正競KCSら
争及び民法709条の不法行為に当たり,同不正競争及び不法行為と相当因果関係
にあるの無形損害及び弁護士費用相当損害のうち,220万円及びこれに対RBC
する第1事件の訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定利率による遅延損害
金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないと判断する。
第2事件及び第3事件については,(1)貸出君新版プログラム(貸出君forw「
in廉価版」及び「貸出君ASP新版」のプログラム)は(を除X1ら8名X2
く)が在職中の平成15年1月ころの時点ではにおいて開発されて。KCSKCS
おらず,そもそも存在したとは認められないから,が職務著作に係る著作物KCS
として貸出君新版プログラムの著作権を有することを前提とし,RBCプログラム
KCSが貸出君新版プログラムに依拠し,これを複製又は翻案したものであるとの
の主張は理由がない(第2事件及び第3事件の争点1。同様の理由により,Rら)
KBCプログラム(Win版)は「貸出君forwin廉価版」の表示画面に対する
の著作権を侵害するとのの主張は理由がなく(同争点3,RBCプCSKCSら)
ログラム(ビジネスサーバ版)及びその開発用書類(甲20)は「貸出君ASP新
版」の開発用書類(乙23)及び貸出君プログラム(ASP版)の開発用書類(乙
49,58)に対するの著作権を侵害するとのの主張も理由がないKCSKCSら
(同争点4。また,(2)RBCプログラムは当時が販売していた貸出君プ)KCS
ログラムに依拠し,これを複製又は翻案したものとは認められない(同争点2。)
そして,RBCプログラム(Win版)のオペレーションマニュアル(甲96)は
「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュアル(乙9)及び貸出君プロ
グラム(Win版)のオペレーションマニュアル(甲87)に対するの著作KCS
権を侵害するとのの主張も理由がない(同争点5。以上より,がKCSらKCS)
に対し,著作権法112条1項及び2項に基づきRBCソフトの複製・頒RBCら
布・翻案の差止め及び廃棄並びに損害賠償を求める請求は理由がない。さらに,
(3)本件開発方針に関する情報は,秘密管理性を欠くから不正競争防止法2条6
KCS項所定の営業秘密には当たらず,また,本件プログラム作成情報はそもそも
の営業秘密ではないから,不正競争防止法3条,4条に基づき,本件開発方針及び
本件プログラム作成情報を,RBCソフトの作成・製造・販売に使用し又はこれを
開示することの差止め,本件開発方針及び本件プログラム作成情報の記録された書
類の廃棄・電子的記録の削除並びに損害賠償を求める請求は理由がない。(4)ま
た,貸出君関連成果物の持出し等について民法709条の不法行為に基づく損害賠
償を求める請求も理由がない。
以下,その理由を詳述することとするが,第2事件及び第3事件が本件紛争の中
核をなすものと認められることから,まず,第2事件及び第3事件について判断し,
次いで,第1事件について判断することとする。
2第2事件及び第3事件に対する判断
(1)らがを退職するまでのプログラム開発経緯等X1KCS
KC以下においては,まず,争点に対する判断の前提となる事実,すなわち,
における貸出君新版プログラムの開発の有無,経緯,RBCソフトの開発の経S
緯及びRBCソフトの内容についての前提事実を概括的に認定しておくこととす
る。証拠(甲33∼70,101,103∼105,108,154∼156,
220,221,乙5∼8,30,51〔一部,証人,同)及び弁論〕X3X4
の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。証拠(乙51)中,以下の認定に
反する部分は採用できない。
ア貸出君新版プログラムの開発の経緯
(ア)の販売する「貸出君」ASP版とWin版KCS
は,内田洋行との合弁によるキング商事株式会社からの電算部門のKCS
独立という形で昭和54年9月に設立され,その後,酒販販売用システム,
化粧品販売用システム等,種々のシステム開発・販売を主たる業務としてき
たが,平成元年ころから,建機・仮設レンタル業用に特化したシステム開
発・販売を行うようになり,平成2年ころから,独自に開発した建機・仮設
レンタル業用システムに「貸出君」というブランド(その後商標登録)を付
し,これを自社の主力商品として,営業活動を強化していった。
は,当初「貸出君」をASP版(ASP」とは,オフコンを稼動KCS,「
させるために必要な富士通社製OSの商品名であり,では,オフコンKCS
版のことをASP版と呼んでいた)で開発したが,平成8,9年ころから。
Win版での開発にも着手した。
(イ)平成13年から14年ころの状況
aWin版について
(a)上記のとおり,は,平成8,9年ころから「貸出君」WinKCS
版の開発に着手したが完成に至らず,ようやく1社に対して平成9年度
末の完成を見越して契約締結にこぎつけ,一応納品したものの,結局稼
動できないまま契約は終了した。その後,は,Win版の手直しKCS
を行い,同年9月から11月ころにかけて別の1社との間で契約を締結
し納品したが,これも稼動せず,また,平成10年2月から3月ころに
かけてさらに別の1社との間で契約を締結して納品したものも,結局稼
動しないまま契約終了に至った。その後,は,Win版の修正にKCS
尽力し,平成10年夏ころ1社に納品し,不十分ながら稼動するソフト
を開発するに至った。
KCSWin版については上記のとおり不具合が続発したことから,
では,不具合に悩まされるWin版より,ASP版を販売した方がよい
との営業方針の下で,Win版の販売には積極的でない状況のまま推移
した。とはいえ,顧客からWin版を求められることがあり,とKCS
しても,Win版の販売を完全に止めてしまうわけにもいかず,Win
版の販売実績は,平成11年ころ以降,年間3ないし4台という状況で
推移していた。
ところが,平成13年ころ,過去に納品したWin版について,顧客
から,データが累積されるとスピードが遅い,更新時間がかかりすぎる
等のクレームが多発するようになり,では,その対応に時間を取KCS
られるようになった。ちょうどそのころ,営業部門から開発部門に対し
て,もっと安価に販売できるWin版を,データベースをオラクルにし
て開発して欲しいとの依頼があった。
そこで,当時,の専務取締役であったは,平成13年9月KCSX2
ころ,Win版の廉価版の開発を企図して,これをの第23期上KCS
期(平成13年9月1日から平成14年2月末日まで)の商品施策の1
つとして掲げ,開発部門においてもその商品化を計画した。
すなわち,が専務取締役として作成した社内向け資料である乙第X2
5号証(平成13年9月1日付け「第23期(上)を迎えて」と題する
書面)には,貸出君に関する商品施策として,以下の事項を掲げた。
①「Win版の早期完成→アプリケーション内容の整備,充実(23
期上」)
②「ASP版のWeb化→Webによるネットワーク完成」
③「画像データ処理の開発→デジカメ,iモードで画像の提供」
④「Win版廉価バージョン」
⑤「単品管理システムの確立→タグとの連動システム」
⑥「貸出君ナビゲーションの完成」
そして「Win版廉価バージョン(の開発販売」を目標として掲げ,)
た。
また,(当時KCSシステム開発部課長)が作成した社内向け資X4
料である乙第6号証(平成13年9月8日付け「23期上期開発部方
針」と題する書面)には,上記乙第5号証を受けて「商品化計画」の1,
つとして「①For・Win廉価版」を挙げ「現行のWin版の機能を,
継承するが出庫・入庫入力を一体化し,出入庫した伝票及び出庫のみ入
庫のみの伝票入力が1画面で対応できるように変更。また,システム範
囲としては,売掛管理までとし,カスタマイズ一切なし単品管理なしか
つ,伝票及び請求書は指定で運用を行う。伝票及び請求書のパKCS
ターンとしては,建機バージョン・仮設バージョンと分けてプリンタは
ドットプリンタ,レーザープリンタ対応の計4パターンを用意する」と。
説明している。
(b)は,第23期下期(平成14年3月1日から同年8月末日まX2
で)の商品施策を発表するに当たり,平成14年3月2日作成日付け
の「第23期(下)を迎えて」と題する社内向け資料(乙7)に次の
とおり記載した。
「ソリューションビジネスの世界においては,何もかもwindo
wsを利用するという前提条件がエンタープライズ市場では大幅に見
直しがかけられ,Linuxを中心としたOSをベースにそれぞれの
アプリケーションが考えられ,定着してゆこうとした動きになってい
,る。windowsの限界と,利用目的を十分に調査することにより
windowsの利用の範囲が今後ますます限定的なものになってく
るはずであり,当社もLinuxにおけるアプリケーション開発体制
の整備を今後2年間程度の間で進めてゆく必要がある」。
そして,貸出君について,第23期上期の開発計画にあった商品施
策のうち,上期に完成に近いものは「ASP版のweb化「画像デー」
タ処理の開発「単品管理システムの確立」及び「貸出君ナビゲーショ」
ンの完成」の4システムであり「今後この商品を積極的に販売してゆ,
きたいと考えている」とした上,下期の開発計画においては「Ⅰ(小。
文字)ASP版の入力画面の大幅変更「Ⅱ(小文字)ASP版の仕入」
管理システム改良版完成「Ⅲ(小文字)Linux版プロトタイプの」
完成」及び「Ⅳ(小文字)ASP版と財務システムの連動(ERP化
に向けて」のみが挙げられ「win版の早期完成「win版廉価),」
バージョン」には触れなかった。も,平成14年3月2日付けのX4
「23期下期開発部方針(乙8)において,Win版廉価バージョ」
ン等については何ら触れていない。
bASP版について
(a)は,第23期上期(平成13年9月1日から平成14年2月末X2
日まで)の商品施策を発表するに当たり,前記「第23期(上)を迎え
て(乙5)において「当社も今後は…ネットワーク化(イントラネッ」,
ト,エクストラネット)の方向を目標をはっきり持ち,商品のバリエー
ションを広げ,向上させてゆかねばならない」として,上記aのとおり
「ASP版のWeb化」を商品施策の1つとして掲げ,開発部門におい
ても,が前記「23期上期開発部方針(乙6)の「商品化計X4」
画」の中で「ASPシステムのWeb化」を挙げ「ASPのV17よ,
りWeb機能が強化されましたので,大規模システムでのWeb化され
たVRシリーズの提供を行っていきます。特に,回線インフラがブロー
ドバンドでかつ安価でできていますので,セキュリティ面及び画面の見
映えを強化して行きます」と説明している。。
上記説明のとおり「ASP版のWeb化」とは「貸出君」のASP,,
版をインターネット網を使って動かすという意味であり,具体的には,
従来ネットワーク上では高額の電話料金がかかっていたのが,インター
ネット(ブロードバンド)網を使うことによって,料金が数段安くなる
というメリットがあるところ,ASPではバージョン17からWeb機
能が強化され,かつ,通信についてインターネット網が使えるものにな
ったことから「貸出君」のASP版についても同バージョンを採用す,
る,という意味である。
(b)ところが,では,ASPのバージョン17を使用してテストKCS
を行ったが「貸出君」ASP版のプログラムは,同バージョン上で動,
くには動くもののスピードが追い付かなかった。第23期下期(平成1
4年3月1日から同年8月末日まで)の開始に際し,が作成した前X2
記「第23期(下)を迎えて」と題する書面(乙7)には「ASP版,
のweb化」が「上期の残し仕事」であると位置づけられるとともに,
X4次の計画として「ASP版の入力画面の大幅変更」等が掲げられ,
が作成した前記「23期下期開発部方針(乙8)にも「ASP貸出」,
君の入力画面の変更」として「入出庫の画面を伝票形式に対応し入力,
の簡素化及び画面イメージを良くする。またWeb化対応のビジュアル
を進める」と記載された。。
イの退職及び設立の経緯X1ら8名RBC
(ア)の成り立ちとの出向・転籍KCSX2
前記のとおり,は,昭和54年9月に設立された会社であるところ,KCS
は,昭和56年7月に内田洋行からに出向し,の業務運営X2KCSKCS
の中核を担うようになり,平成元年にに転籍した。は,平成13,KCSX2
14年当時はの専務取締役の地位にあり,(を除KCSX1ら8名X2
く)は,の従業員であった。。KCS
(イ)を巡る問題Y1
Y1KY2の次男であるは,内田洋行で勤務した後,平成5年ころから,
の東京営業所で勤務するようになったが,の態度が自己中心的であCSY1
るとして東京営業所の社員の間で不満が表明されるようになった。は,Y1
平成11年ころ,東京営業所の責任者に就任したが,その態度が改まらない
まま平成14年6月20日に至り,同営業所社員との対立が深まり,同営業
所社員全員から辞表が提出されるという事態に至った。
は,同営業所社員一同の辞意を押しとどめる一方,Y2との間で,とX2
りあえずをの社外に出す方向で何度か話合いを持ったものの,あY1KCS
くまでをかばうY2との間で意見が対立し,同人及びととの間Y1Y1X2
の溝は深まっていった。
(ウ)不正経理問題
上記社内紛争のさなかの平成14年7月,経理担当事務員が,Y2の不正
経費使用につき,その証拠となる出金伝票のコピーを持参してこれをにX2
訴え出た。それによると,Y2の不正経費の額は年間3000万円にも及び,
同人の妻がデパートの食料品売場で購入した惣菜の代金など明らかにY2の
個人的な経費までがの会社経費として計上されていた。このように,KCS
Y1Kの問題に加え,Y2による不正経理問題が明るみに出たことにより,
の社内は著しい混乱に陥った。CS
(エ)社内改善委員会の立ち上げ
ら幹部社員は,上記不正経理問題やをめぐる社内の著しいX2Y1KCS
混乱を収束させ,主として上記不正経理問題についてのY2の責任を追及し,
正常な企業環境を取り戻すことを目的として,が代表となって「社内X3,
改善委員会」なる組織を立ち上げ,同年8月から隔週土曜日に会合を持ち,
改善案を話し合うこととした。
社内改善委員会の会合では,に対して強い影響力を持つ内田洋行にKCS
社内改善のための助力を願おうということになり,同社代表取締役宛てに,
平成14年8月23日付けで「株式会社ケイシィエス社内改善委員会」
(代表ののほか,,,P10補佐,,P23,P15の連X3X5X1X4
名)名義で文書(甲108)を作成した。同文書には,Y2が長年にわたり
裏金として運用したノートA・Bのコピーや同人が私物化した経費使用の伝
票類のコピーと称する資料を添えて,Y2の不正経理の実態に具体的に触れ,
今後,Y2に対し,刑事告訴,民事上の責任追及,税務署への通報,代表取
締役退任要求を行い,Y2が退任しない場合は,とともに新たな出発をX2
する意向であり,内田洋行の支援を要請する旨が記載されていた。は,X2
同文書を内田洋行に持参してその説明を行い,上記社内紛争が内田洋行の知
るところともなった。他方,Y2は,らの上記行動をの経営権をX2KCS
自分から奪おうとする策謀であるととらえ,その首謀者と目されたに対X2
する反感を募らせた。
(オ)の取締役就任Y1
Y2は,社内改善委員会の上記活動を嫌い,その首謀者と目されたのX2
取締役解任を企て,平成14年8月30日に臨時取締役会を開き,同年9月
20日に解任のための臨時株主総会を開催することを決めた。社内改善X2
委員会のメンバーからこの報告を受けた内田洋行は,社内の上記混乱KCS
を重く見て,Y2に対し,社内改善委員会との間で話合いを行うことを要請
し,これを受けて,Y2と社内改善委員会との間で話合いが行われるように
なった。社内改善委員会は,まず,平成14年9月20日の退任の臨時X2
株主総会の開催中止を要請し,Y2は,これを受け入れる旨を伝えて社内改
善委員会との間で上記話合いを進めていたが,その一方で,兄であるP1と
両名で臨時株主総会を開催したことにし,退任こそ決議しなかったものX2
の,の取締役就任を決議するに至った。Y1
なお,そのころ,Y2及びは,社内の混乱を収めるため,互いX2KCS
に「この度の企業が混乱に成ったことに深く反省し再びこの様な企業危機に
ならない様業務に専念し企業繁栄に努力する事を誓約いたします」との記。
載のある平成14年9月20日付けの誓約書(甲103,104,乙30)
を差し出した。
(カ)の取締役不再任X2
Y2らは,平成14年12月6日開催の株主総会において,の取締役X2
任期満了に伴う取締役就任(再任)を否決した。は,福岡営業所や東京X2
営業所への出張のため,上記株主総会には出席していなかったところ,取締
役再任否決の連絡を出張先の東京営業所で受けた。は,同月7日に帰阪X2
し,Y2及びとの間で取締役不再任によるの退職に伴う処理Y1X2KCS
事項について協議し,同月18日,Y2及びに対し「1連帯保証免除Y1
の件(X2氏の「2X2氏保有の㈱ケイシィエスの株の件の買取につい)」
て「3X2の退職慰労金の額について「4X2氏の私物及び公物の双」」
方確認の件」について申し入れ,同人らから,同月25日までに回答する旨
の返答を得た(甲105。また,X2は,同日,宛てに「X2は今)KCS
後㈱ケイシィエスのビジネスに対し足を引っぱるような行為はいたしませ
ん」と記載した書面(乙33)を提出した。。
(キ)に対する退職勧告X3
Y2は,平成15年1月6日,システム開発の責任者(システム部次長)
であるに対し,年明けの出社早々任意退職を強く勧奨し,に任意退X3X3
職を余儀なくさせた。
(ク)の設立RBC
を退職したは,と話し合い,新会社を立ち上げることとしKCSX3X2
た。その後,(開発課所属)が平成15年1月15日にを退職し,X6KCS
次いで(開発課所属)が同月20日にを退職して,新会社に移るX7KCS
ことになった。また,(営業部課長,(業務課課長,(開発X5X1X4))
部課長)らも,同年3月5日又は6日に退職届を提出し,新会社に移ること
になった。
こうして,平成15年3月6日,を代表取締役として,が設立X1RBC
された。
ウRBCプログラムの開発経緯及び販売・サポート状況
(ア)ビジネスサーバ版について
aRBCプログラム(ビジネスサーバ版)の開発状況(甲220)
RBCプログラムの主要なマスタ業務(得意先・商品・機械マスタ)は,平
成15年1月10日から同年2月20日ころの期間に完成した。
次に,稼動業務,販売業務は,同月25日ころから同年4月1日ころの
期間に完成した。
請求業務は,において,同年3月10日から開発に着手し,同年RBC
5月上旬ころに一応完了させた。
その他の業務ソフトについては,これ以降,マスタ業務,稼動業務,販
売業務,請求業務において多数発生したバグへの対応や不具合の修正を行
いながら,少しずつ開発していった。
b顧客への販売・サポート状況
設立後,RBCプログラムのビジネスサーバ版において最初に契RBC
約に至った4社は,日成工業所,南海建設興業,長浜産業及びベストレン
タルである。
(a)日成工業所について
Ⅰ販売状況
は,日成工業所との間において,平成15年3月13日に契RBC
約を締結し,同月31日,契約代金全額を受領した。
平成15年3月13日時点では,RBCプログラムは,マスタ業務
しか完成しておらず,その他の基本的な事項すら完成していなかった
ので,RBCプログラムは使用できるものではなかった。また,デモ
画面も完成していなかった。
しかし,においては,主要マスタの開発を一応完了させておRBC
り,日成工業所がマスタの登録業務を行う間に順次早急に他のプログ
ラムを完成させていく方針を立てて,日成工業所の了承を得た。なお,
日成工業所としても,新たなプログラムが完全に立ち上がるまでは,
従前の方法で請求業務等を行うことができたため,業務に支障が生じ
るものでもなかった。
Ⅱサポート状況
は,日成工業所について,平成15年3月13日にシステムRBC
分析を開始し,マスタ業務ソフトは同年4月10日に納品し,それ以
降のソフトについては,開発でき次第納品していった。すなわち,稼
動業務ソフトについては同年5月8日に納品し,請求業務については
同月21日に基本ソフトを納品し,カスタマイズをして,同年11月
末日に日成工業所の要望に沿ったソフトを再納品した。
以上の経過で,平成15年12月1日にRBCプログラムを本格稼
動させて請求業務を開始することができ,平成16年5月17日に顧
客の要望に沿ったカスタマイズが全て終了したことを双方で確認し,
は日成工業所から稼動確認書を受領した。RBC
(b)南海建設興業について
Ⅰ販売状況
は,南海建設興業との間において,平成15年4月23日にRBC
契約を締結し,同月30日,同年5月30日契約代金を受領した。
この時点では,未だ,マスタ業務,稼動業務,販売業務までしかで
きておらず,請求業務はできていない状態であり,ソフトとしては基
本的動作ができず,全く使い物にならない状態であった。また,デモ
画面も完成していなかった。
Ⅱサポート状況
は,南海建設興業について,契約締結に先立ち,平成15年RBC
4月2日にシステム分析を開始し,既に完成していたマスタ業務,稼
動業務につき,同年7月22日,同月23日に納品した。そして,請
求業務については,基本ソフトを同年8月22日に納品し,カスタマ
イズをして,平成16年4月10日に再納品をした。
以上の経過で,平成16年4月13日にRBCプログラムを稼動さ
せて請求業務を開始することができ,は南海建設興業から同年RBC
7月14日に稼動確認書を受領した。
(c)長浜産業について
Ⅰ販売状況
は,長浜産業との間において,平成15年4月9日に契約をRBC
締結し,同年6月20日に契約代金を受領した。
この時点では,未だソフトとして基本的な動作ができていない状態
であったことは,南海建設興業との契約の場合と同様である。デモ画
面も存在しなかった。
Ⅱサポート状況
は,長浜産業について,契約締結に先立ち,平成15年4月RBC
3日にシステム分析を開始し,同年4月17日にマスタ業務を納品し,
同年7月8日に稼動業務を納品した。請求業務については,基本ソフ
トを同年10月24日に納品し,同年11月末日にカスタマイズ品を
納品した。
また,長浜産業については,ネットワークを構築する必要があり,
同年9月12日にネットワーク業務を納品した。
そして,長浜産業では,平成15年12月1日と平成16年1月1
日の2段階に分けてRBCプログラムを稼動させ請求業務を開始した。
は,平成16年1月28日に売掛業務を納品し,平成16年RBC
4月15日に稼動確認をしたが,稼動確認書は受領していない。
(d)ベストレンタルについて
Ⅰ販売状況
は,ベストレンタルとの間において,平成15年5月28日RBC
に契約を締結し,同年6月30日に契約代金を受領した。
ベストレンタルとの契約時点では,請求業務までが一応完成しつつ
あり,ソフトとして最低限基本的な事項が完成しつつあり,ようやく
不完全なものではあるがデモ画面が完成し,同画面を示して説明が可
能となっていた。
Ⅱサポート状況
は,ベストレンタルについて,平成15年5月26日にシスRBC
テム分析を開始し,同年7月10日にマスタ業務を,同年9月24日
に稼動業務を納品した。請求業務については,同年9月末日に基本ソ
フトを納品し,同年10月14日,カスタマイズをしたソフトを納品
した。
また,ネットワークを構築する必要があったため,平成15年9月
6日にネットワーク業務を納品し,同年10月12日から,本格稼動
し,請求業務が開始した。
はベストレンタルから平成16年1月30日に稼動確認書をRBC
受領した。
(イ)Win版について
aRBCプログラム(Win版)の開発状況
主要なマスタ業務(得意先・商品・機械マスタ)は,平成15年1月2
1日から同年2月10日ころの期間に完成した。
次に,稼動業務,販売業務は,同月12日から同年3月26日までの間
で完成した。
請求業務については,において,同月11日から同年5月ころまRBC
での間に完成させた。
そのほかの業務ソフトは,ビジネスサーバ版の開発同様に,マスタ業務,
稼動業務,販売業務,請求業務において多数発生したバグへの対応や不具
合の修正を行いながら,少しずつ開発していった。
b顧客への販売・サポート状況
設立後,RBCプログラムのWin版において最初に契約に至っRBC
た4社は,鈴建輸送,名晶興産,興南機械及び中村建機である。
(a)鈴建輸送について
Ⅰ販売状況
は,鈴建輸送との間において,平成15年4月18日に契約RBC
を締結し,同年3月28日,同年4月25日に契約代金を受領した。
契約時点では,請求業務が完成しておらず,RBCプログラムは基
本的動作すらできない状態であり,デモ画面も完成していなかった。
Ⅱサポート状況
は,鈴建輸送について,契約締結に先立ち,平成15年3月RBC
14日にシステム分析を開始し,同日マスタ業務を納品した。そして,
稼動業務については,基本ソフトを同年4月18日納品し,カスタマ
イズしたものを同年5月13日に納品した。請求業務についても,同
年5月30日に基本ソフトを納品し,同年9月18日にカスタマイズ
品を納品した。
以上の経過で,同年11月20日にRBCプログラムの本格稼動が
でき,請求業務を開始し,は鈴建輸送から平成16年9月9日RBC
に稼動確認書を受領した。
(b)名晶興産について
Ⅰ販売状況
は,名晶興産との間で,平成15年6月19日に契約を締結RBC
し,同年7月25日に契約代金を受領した。
平成15年6月時点では,RBCプログラムは,基本的動作は可能
な程度に完成はしており,一応のデモ画面も完成していたため,それ
を見せて契約を締結した。
Ⅱサポート状況
は,名晶興産について,平成15年6月13日にシステム分RBC
析を開始し,同年7月1日に,マスタ業務,稼動業務,販売業務,請
求業務,売掛業務を納品した。そして,平成16年11月2日に,カ
スタマイズ後の請求業務を納品した。同年2月1日には,RBCプロ
グラムを本格稼動させ,請求業務を開始した。は名晶興産から,RBC
平成18年1月16日になってようやく稼動確認書を受領した。
(c)興南機械について
Ⅰ販売状況
は,興南機械との間で,平成15年6月23日に契約を締結RBC
し,同年7月16日に契約代金を受領した。
同時点において,既にRBCプログラムは一応基本的動作はできる
状態であったため,不完全ながら一応のデモ画面を見せて,契約を締
結した。
Ⅱサポート状況
は,興南機械について,平成15年6月25日にシステム分RBC
析を開始し,同年7月30日にマスタ業務を納品した。稼動業務につ
いては同年8月1日に基本ソフトを納品し,カスタマイズ品を同年1
1月5日に納品した。請求業務についても,同年8月1日に基本ソフ
トを納品し,同年11月末日にカスタマイズ品を納品した。平成16
年1月1日,RBCプログラムを本格稼動させ,請求業務を開始し,
は興南機械から同年11月16日稼動確認書を受領した。RBC
(d)中村建機について
Ⅰ販売状況
は,中村建機との間において,平成15年8月2日に契約をRBC
締結し,同年10月1日に契約代金を受領した。
契約時においては,RBCプログラムは基本的動作ができる程度に
は一応完成しており,不完全ながらも一応のデモ画面を見せて契約し
た。
Ⅱサポート状況
は,中村建機について,平成15年8月28日にシステム分RBC
析を開始し,同年9月4日にマスタ業務を納品した。稼動業務につい
ては同月6日に基本ソフトを納品し,カスタマイズ品を同年10月2
7日に納品した。請求業務については,同年9月18日に納品した。
そして,平成16年1月1日からRBCプログラムは本格稼動を開
始し,請求業務を開始した。なお,は,中村建機について,平RBC
成16年後半に稼動確認を行ったが,稼動確認書は受領していない。
(2)争点1(RBCプログラムは貸出君新版プログラムに対するの著作権KCS
を侵害するか)について
アはじめに
は,RBCプログラムはが開発した貸出君新版プログラムKCSらKCS
(貸出君forwin廉価版」及び「貸出君ASP新版)をの関係者が「」RBC
持ち出し,これを複製ないし翻案して作成したものであるから,貸出君新版プ
ログラムに対するの著作権(複製権ないし翻案権)を侵害すると主張すKCS
る。
の上記主張が認められるためには,①の主張する貸出君新版KCSらKCS
プログラムなるものがの社内でを含む元従業員によっKCSX1ら8名KCS
て開発され,(を除く)がに在職中の平成15年1月X1ら8名X2KCS。
ころまでにほぼ開発行為が完了して,貸出君新版プログラム(貸出君forwi「
n廉価版」及び「貸出君ASP新版)の開発に係る成果物(貸出君関連成果」
物)が社内に存在していたこと,②が退職に際して上記成果KCSX1ら8名
物を社外に持ち出し,これを利用して,貸出君新版プログラムを複製ないし翻
案したRBCプログラムを作成し,これを使用したRBCソフトを販売したも
のであること,以上の事実が立証される必要があるところ,その立証責任はこ
れを主張するにある。そこで,以下,上記事実の立証ができているか否KCS
かという観点から検討する。
イ貸出君新版プログラムは社内において開発されていたかKCS
(ア)証拠関係
上記のとおり,は,RBCプログラムは社内で開発されてKCSらKCS
いたという貸出君新版プログラムを複製又は翻案したものであると主張する。
これに対し,は,貸出君新版プログラムなるものは開発されておRBCら
らず,内には存在しなかったのであって,がこれを複製又はKCSRBCら
翻案等することはあり得ない旨主張する。
ところで,の主張によれば,が複製又は翻案の対象にしKCSらRBCら
たという貸出君新版プログラムの開発に係る成果物(貸出君関連成果物)は
すべてほかの元従業員が持ち出してしまったもので,その現物はX2KCS
には存在しないというのであり,上記成果物の存在及び内容を直接立KCS
証する証拠は提出されていない。は,上記主張を裏付ける証拠ないKCSら
し根拠として,以下の①ないし⑥の各点を挙げる。
①平成13年9月1日付けでが作成した「第23期(上)を迎えて」X2
と題する文書(乙5,同月8日付けでが作成した「第23期上期開)X4
発部方針(乙6,平成14年3月2日付けでが作成した「第23期」)X2
(下)を迎えて」と題する文書(乙7,同日付けでが作成した「第)X4
23期下期開発部方針(乙8)の各記載によれば,が第23期」KCS
(平成13年9月1日から平成14年8月末日まで)において貸出君新版
プログラムの開発に着手していたことが明らかであること。
②は,遅くとも平成15年1月10日までには,そのソフトの名称KCS
を「ミスターアドバンス」とすることを決定していたこと(甲20の5,
乙63。)
③は,インストラクター職の地位にあったP11に対して「貸出君fX4
orwin廉価版」のオペレーションマニュアルを2週間程度で作成するよ
う指示し,これを受けてP11は,平成15年1月22日から同年2月7
日にかけて「貸出君forwin廉価版」のシステムを実際に稼動させなが
ら,の指示どおりに「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマX4
ニュアルの一部(乙9)を作成したこと(証人P11。)
④しかるに,の元従業員が,平成15年3月までに貸出君新版プロKCS
グラム,表示画面,開発用書類,オペレーションマニュアル等の成果物
(貸出君関連成果物)を持ち出したこと(乙37の1。)
⑤上記貸出君関連成果物の持出し後に,の福岡営業所のパソコンにKCS
残存していた「貸出君ASP新版」の仕様書(乙23)は,福岡営業所に
勤務していたP19が平成15年1月以前に発見し,にその旨報告をY1
していたものであること(乙48。)
RBCらRBC⑥の主張に係るRBCプログラムの開発期間等からして,
が貸出君新版プログラムに依拠し,これを複製・翻案しないでRBCプら
ログラムを独自に開発することは不可能であること。
そこで,以下,上記各点について順次判断し,これらの証拠等から,貸出
君新版プログラムなるものが平成15年1月ころまでに社内で開発さKCS
れていたことが認定し得るか否かについて検討することとする。
(イ)第23期上期・下期の開発方針等について
aは,が第23期(平成13年9月1日から平成14年8KCSらKCS
月末日まで)において貸出君新版プログラムの開発に着手していたことは,
平成13年9月1日にが作成した「第23期(上)を迎えて」と題すX2
る文書(乙5,同月8日にが作成した「第23期上期開発部方針」)X4
(乙6,平成14年3月2日にが作成した「第23期(下)を迎え)X2
て」と題する文書(乙7,同日が作成した「第23期下期開発部方)X4
針(乙8)の記載から明らかであると主張する。」
b証拠(甲101,乙5∼8,証人)及び弁論の全趣旨によれば,乙X4
第5号証ないし乙第8号証は,当時で半年に1度の割合で行われてKCS
いた「決算会議」と呼ばれる会議において,社長以下5名の幹部社員が発
表するための資料として作成されたものの一部であること,この会議には,
本社(大阪)の従業員は全員出席することとされていたことが認められる。
そして,乙第5号証ないし乙第8号証には,前記(1)ア(イ)に認定したと
おりのことが記載されている。これを再掲すれば,以下のとおりである。
(a)乙第5号証(第23期(上)を迎えて)は,専務取締役のが「」X2
作成したもので,第23期上期(平成13年9月1日から平成14年2
月末日まで)における商品施策,組織体制及び営業本部の基本方針につ
いて記載されているものである。そして,貸出君に関する商品施策とし
て,以下の事項を掲げた。
①「Win版の早期完成→アプリケーション内容の整備,充実(23
期上」)
②「ASP版のWeb化→Webによるネットワーク完成」
③「画像データ処理の開発→デジカメ,iモードで画像の提供」
④「Win版廉価バージョン」
⑤「単品管理システムの確立→タグとの連動システム」
⑥「貸出君ナビゲーションの完成」そして「Win版廉価バー,
ジョン(の開発販売」を目標として掲げた。)
(b)乙第6号証(23期上期開発部方針)は,上記(a)でが示した「」X2
商品施策を受けて,開発部課長のが作成したもので,上記商品施策X4
を実行するための具体的な活動方針が記載されている。
すなわち,乙第6号証には,乙第5号証を受けて「商品化計画」の,
1つとして「①For・Win廉価版」が挙げられ「現行のWin版,
の機能を継承するが出庫・入庫入力を一体化し,出入庫した伝票及び出
庫のみ入庫のみの伝票入力が1画面で対応できるように変更。また,シ
ステム範囲としては,売掛管理までとし,カスタマイズ一切なし単品管
理なしかつ,伝票及び請求書は指定で運用を行う。伝票及び請求KCS
書のパターンとしては,建機バージョン・仮設バージョンと分けてプリ
ンタはドットプリンタ,レーザープリンタ対応の計4パターンを用意す
る」との説明がされている。。
(c)乙第7号証(第23期(下)を迎えて)は,が作成したもの「」X2
で,第23期下期(平成14年3月1日から同年8月末日まで)におけ
る商品施策及び組織体制について,次のとおり記載されている。
「ソリューションビジネスの世界においては,何もかもwindo
wsを利用するという前提条件がエンタープライズ市場では大幅に見
直しがかけられ,Linuxを中心としたOSをベースにそれぞれの
アプリケーションが考えられ,定着してゆこうとした動きになってい
,る。windowsの限界と,利用目的を十分に調査することにより
windowsの利用の範囲が今後ますます限定的なものになってく
るはずであり,当社もLinuxにおけるアプリケーション開発体制
の整備を今後2年間程度の間で進めてゆく必要がある。
・OSWindows,ASP→Linux
・データベースSQL,DB6000→オラクル
・プログラム言語VB,コボル→JAVA」
そして,貸出君について,第23期上期の開発計画にあった商品施
策のうち,上期に完成に近いものは「ASP版のweb化「画像デー」
タ処理の開発「単品管理システムの確立」及び「貸出君ナビゲーショ」
ンの完成」の4システムであり「今後この商品を積極的に販売してゆ,
きたいと考えている」とされており,下期の開発計画においては「Ⅰ。
(小文字)ASP版の入力画面の大幅変更「Ⅱ(小文字)ASP版の」
仕入管理システム改良版完成「Ⅲ(小文字)Linux版プロトタイ」
プの完成」及び「Ⅳ(小文字)ASP版と財務システムの連動(ER
P化に向けて」のみが挙げられ「win版の早期完成「win版廉),」
価バージョン」には触れられていない。
(d)乙第8号証(23期下期開発部方針)は,乙第7号証でが示「」X2
した商品施策を受けてが作成したもので,上記商品施策を実行すX4
るための具体的な活動方針が記載されているが,乙第8号証には,W
in版廉価バージョン等については何ら触れられていない。
cは,第23期上期・下期の開発方針を定めた(a)ないし(d)の記KCSら
載のうち,ASP版については,①乙第5号証の「2.商品施策」の「貸
出君」の欄に「ASP版のWeb化」との記載があること,乙第6号証の
「2.商品化計画」の⑥に「ASPシステムのWeb化」として「画面の
見映えを強化して行きます」との記載があるが,これが貸出君ASP新。
版のことであり,また,乙第7号証の「2.商品施策」の「貸出君」の欄
に「ASP版の入力画面の大幅変更」との記載があること,乙第8号証の
「1.商品化計画」の⑥に「ASP貸出君の入力画面の変更」として「入
出庫の画面を伝票形式に対応し入力の簡素化及び画面イメージを良くす
る」との記載があることからして,ASP版を入力簡素化して商品化し。
ていく計画が立てられていたことは明らかであると主張する。また,Wi
n版についても,①乙第5号証の「2.商品施策」の「貸出君」の欄に
「Win版廉価バージョン」との記載があること,②乙第6号証の「2.
商品化計画」の①に「For・Win廉価版」との記載があり,また,
同号証の3頁に「ForWin廉価版」の開発スケジュールが記載さ
れていることを挙げ,ではそのころ(平成13年9月ころ)貸出君KCS
新版プログラムの開発が着手された旨主張する。
dしかし,上記cで挙げた第23期開発方針(乙5ないし8)の記載から
は,ASP版についてWeb化が計画されたこと,Win版について廉価
バージョンの開発が計画されたことが読み取れるものの,これらの計画が
実際に実行に移され,貸出君新版プログラムが実際ににおいて開発KCS
に着手され,完成に近いことについての記載はなく,このことを推認する
に足りる記載もない。
そもそも「ASP版のWeb化」とは,前記(1)ア(イ)bのとおり,,
「貸出君」のASP版をインターネット網を使って動かすという意味であ
り,具体的には,従来ネットワーク上では高額の電話料金がかかっていた
のが,インターネット(ブロードバンド)網を使うことによって,料金が
数段安くなるというメリットがあるところ,ASPではバージョン17か
らWeb機能が強化され,かつ,通信についてインターネット網が使える
ものになったことから「貸出君」のASP版についても同バージョンを,
採用する,という意味にすぎず,これをもって新たなプログラムとしての
「貸出君ASP新版」プログラムといえるかどうかは甚だ疑問である。こ
の点はさておくとしても,第23期下期開発方針(乙7,8)には,上記
bのとおり「完成に近いものは『ASP版のweb化」としながら,下,』
期の開発計画として「ASP版の入力画面の大幅変更」を挙げており,こ
のことからは「ASP版のWeb化」といっても,第23期下期開始の段
階においても,開発着手に至っていたかどうか甚だ疑わしい段階にとどま
っていたことがうかがえる。また,第23期下期の開発方針として「ソ
リューションビジネスの世界においては,何もかもwindowsを利用
するという前提条件がエンタープライズ市場では大幅に見直しがかけられ,
Linuxを中心としたOSをベースにそれぞれのアプリケーションが考
えられ,定着してゆこうとした動きになっている。windowsの限界
と,利用目的を十分に調査することにより,windowsの利用の範囲
が今後ますます限定的なものになってくるはずであり,当社もLinux
におけるアプリケーション開発体制の整備を今後2年間程度の間で進めて
ゆく必要がある」などとして,Windows,ASPからの脱却とLi
nuxへの移行の必要性が強調されているところである上「win版の,
早期完成「win版廉価バージョン」には触れられていないことなどを」
考慮すると,そのころ「貸出君forwin廉価版」の開発に着手していた
か甚だ疑問があり,まして相当程度開発が進んでいた状態であったとは到
底認められないものというべきである。
eこの点について,は,Win版に関する第23期当時の開発計画のX4
立案及び開発状況について,その陳述書(甲101)及び証人尋問におい
て,要旨次のとおり供述している。
貸出君Win版は,平成8年ころから開発を始めたが,平成9年になっ
ても完成しなかった。平成9年度末に漸く1社に納品するに至ったものの,
稼動できずに契約が終了してしまった。その後,Win版の手直しを行い,
平成9年9月から11月ころ1社に納品したが,これも稼動せず,更に平
成10年2月から3月ころ1社に納品したが,これも稼動しなかった。そ
の後更に修正を加えて,平成10年夏ころ1社に納入したものは何とか稼
動できる状況になったが,Win版については上記のような不始末が続発
したことから,としては,ASP版を販売した方が顧客に迷惑をかKCS
けないで済むため,としては,Win版の販売には積極的ではなかKCS
った。それでも,顧客からWin版を求められることがあり,平成11年
ころ以降,Win版の販売は継続したが,販売実績は,年間3ないし4台
程度で推移した。ところが,平成13年ころ,過去にWin版を納入した
顧客から,データが累積されるとスピードが遅い,更新時間がかかりすぎ
る等のクレームが多発し始め,その対応に時間を取られるようになった。
ちょうどそのころ,営業部門から,もっと安く販売できるWin版を,
データベースをオラクルにして開発して欲しいとの依頼があり,Win版
の廉価版の開発を計画した。これが,が主張する「貸出君forwKCSら
in廉価版」であり,乙第6号証の「2.商品化計画」の①の欄に記載の
ある「For・Win廉価版」のことである。しかし,Win版に対する
クレームが続発したため,その対応を急がなければならず,廉価版の開発
に着手できるような状況にはなく,第23期上期においては,廉価版は,
開発に着手すらできなかった。また,Win版の廉価版については,第2
3期下期における継続案件にはならなかった。このことは,乙第7号証に
明示し,乙第8号証にも記載してあるとおりである。Win版の廉価版が
継続案件とならなかったのは,第23期下期の開発方針として,Win版
やASP版よりも,Linux版を開発した方が企業としてのイメージア
ップを図ることができ,システム開発のオピニオン的存在ともなることが
できるとの考えによるものである。また,貸出君Win版の修正も完了し,
顧客からのクレームも終息したことから,今更同じWin版を作る必要も
ないとの判断が働いたこともある,と。
の上記証言は,乙第5号証ないし第8号証の記載にも符合するものX4
であり,その内容も合理的で不自然なところが見当たらないから,信用性
が高いものというべきである。そうすると,乙第5号証ないし第8号証に,
の上記証言及び弁論の全趣旨を総合すれば,貸出君Win版についてX4
は,平成13年ころから顧客からのクレームが多発し,ではその対KCS
応に時間を取られるなどして,結局,第23期上期においては,Win版
廉価版の開発に着手することができなかったこと,また,第23期下期の
開発方針としても,Win版やASP版からLinux版に開発の重点を
移すことを決めたことや,貸出君Win版の修正が完了して顧客からのク
レームが終息したことなどから,Win版廉価版については継続開発案件
とはならなかったことが認められ,結局,は「貸出君forwin廉KCS,
価版」なる名称のプログラムについては,開発に着手したとは認められず,
まして開発が相当程度進んで平成15年1月ころには完成に近かったなど
ということは認められない。
なお,は,乙第7号証及び乙第8号証には「貸出君forwinKCSら
廉価版」の開発を引き続き進めていることが記載されていると主張する。
の上記主張は,乙第7号証については「2.商品施策」の「貸出KCSら
君」の欄に「上期に開発計画の予定が次のアプリケーションであった」,。
として「Ⅳ(小文字)win版廉価バージョン」の記載があり,これに続
けて「上期に完成に近いものは(Ⅱ(小文字(Ⅲ(小文字(Ⅴ(小)),)),
文字(Ⅵ(小文字)の4システムであり,今後この商品を積極的に販)),)
売してゆきたいと考えている。…次に下期の開発計画であるが,上期の残
し仕事を完成さす事と同時に次の計画を実現する」との記載があり「下。,
期の開発計画」として「上期の残し仕事」の1つである「Ⅳ(小文字),
win版廉価バージョン」を「完成」させる旨が記載されており,乙第8
号証については「I.活動方針」の冒頭に「商品化計画に基づく商品の,
完成。上期に計画した商品化計画8つに対し,実績としましては,4つに
終わってしまいました。下期も引継ぎ行っていくと同時に新たな商品化計
画も行って参ります」として,上期に計画しながら実績のなかった商品。
化計画について,下期も引き続き行っていく旨が記載されている,との主
張と解される。
しかし,Win版廉価版の開発については,乙第7号証及び乙第8号証
のいずれにも具体的な計画は一切記載されておらず,上記のような記載を
もって,Win版廉価版の開発計画が具体化していたということはできな
いし,まして,Win版廉価版の開発に着手していたことを認めることは
できない。
fまた,は,ASP版に関する第23期当時の開発計画の立案及び開X4
発状況について,証人尋問において要旨次のとおり証言している。
「ASP新版」というのは,この訴訟になって初めて聞いた名前である。
「ASPのWeb化」とは,貸出君ASP版をインターネット網を使って
動かすという意味であり,具体的には,ASP(富士通が出しているO
S)がバージョン17から通信についてインターネット網が使えるものに
なったことから,ASP版について,ASPのバージョン17を使用する
ことを計画したことを指す。従来ネットワーク上では高額の電話料金がか
かっていたのが,インターネット網を使うことによって料金が数段安くな
るというメリットがあるためである。そして,では,ASPのバーKCS
ジョン17を使用して実際にテストを行ったが,動くには動いたものの,
スピードが全く追い付かず使用に耐えないことから,その時点でASP版
のWeb化は断念した,と。
の上記証言は,乙第5号証ないし第8号証の記載に符合するものでX4
あり,信用性が高いと認められ,の上記証言に,乙第8号証の「1.X4
商品化計画」の⑥の欄に「Web化対応のビジュアルを進める」との記。
載があることからすれば,乙第8号証が作成された平成14年3月時点に
おいても未だ「Web化対応のビジュアル」化さえ完成していなかったこ
と,すなわち,Webを介しての操作性が確保された状態にさえ至ってい
なかったことが認められる。その他弁論の全趣旨を併せ考慮すれば,貸出
君ASP版については,第23期において「ASP版のWeb化,すな」
わち,ASP(富士通が出しているOS)のバージョン17の採用を計画
し,実際にバージョン17を使用してテストも行ったが,その結果,使用
に耐えないことが判明し,平成14年3月時点においても未だ「Web,
対応のビジュアル」というWeb化のためのごく初期の開発さえ完成して
いなかったことが認められる。そして,その後が「Web対応のビKCS
KCSジュアル」化に着手したことを認めるに足りる証拠はなく,他に,
が平成15年1月ころまでに「貸出君ASP新版」プログラムをほぼ完成
させていたことを認めるに足りる証拠はない。
g以上のとおり,平成15年1月当時,元従業員らにより貸出君新KCS
版プログラムがほぼ完成していたことはおろか,その開発に着手していた
とも認めることはできない。
(ウ)「ミスターアドバンス」の名称が定められた時期
aは,遅くとも平成15年1月10日までには,においてKCSらKCS
新たに開発した貸出君新版の名称を「ミスターアドバンス」とすることが
決まっていたとして,この名称に対応する貸出君新版プログラムが開発さ
れていたと主張し,その根拠として,①平成14年11月23日に行われ
たミーティングの席上,当時システム部課長補佐であったP10補佐が,
から,新しいソフトの名称は「ミスターアドバンス」であるとの説明X2
を受けたとのP10補佐の陳述書(乙63)の記載,②「ミスターアドバ
ンス」のプログラム定義書(によれば作成日付平成15年1月1RBCら
0日。甲20の5)のユーザー名欄に「Mr.Advance」と明記さ
れていること,以上の2点を挙げる。仮に,の上記主張どおりでKCSら
あるとすれば,RBCプログラム発売前の遅くとも平成15年1月10日
の段階で,社内において新しいソフトが開発されており,しかもそKCS
の名称がRBCプログラムの初期の名称と同じ名称が考えられていたこと
X1になり,貸出君新版プログラムが既に開発されていたばかりでなく,
が貸出君関連成果物を持ち出したことを示す有力な間接事実になりら8名
得る。
そこで,上記①及び②の根拠について順次検討する。
b①について
乙第63号証(P10作成の陳述書)には「平成14年11月23日,
X2に有限会社エムエスシィの事務所で行われたミーティングにおいて,
から,で開発しているパッケージソフトウェアが『ミスターアドバKCS
。,ンス』という名前で開発が進んでいると聞いた」旨の記載がある。また
同号証には「貸出君の新しいソフトウェアの開発に関しては,開発課方,
針で概要は把握していたが,具体的な開発状況は,を中心とする十数X2
回行われたミーティングで説明を受けていた」旨の記載もある。。
しかし,P10補佐は,当時のシステム部課長補佐であったとこKCS
ろ,十数回行われたミーティングで貸出君新版プログラムの具体的な開発
状況について説明を受けていたと言いながら,上記乙第63号証には説明
を受けていたという具体的な開発状況の内容に関する記載はなく,甚だ漠
然としている。また,具体的な開発状況について説明を受けたのなら配布
されていてしかるべき具体的な開発状況を記載したミーティング資料等の
裏付け証拠も提出されていない。そして,平成14年11月23日(この
日は祝日〔勤労感謝の日〕であるが)に有限会社エムエスシィの事務所内
で何らかのミーティングが行われたことは認め得るとしても,その際に開
発中のパッケージソフトウェアの名称が「ミスターアドバンス」であると
聞かされたという点は,これも甚だ漠然とした内容にとどまり,その際に
上記ソフトウェアがどのような開発段階にあったのか「ミスターアドバ,
ンス」なる名称がいかなる経緯でいかなる理由により採用されることにな
ったのか,そのような話がどのような文脈で出たのかなど,当時の具体的
な状況に関する陳述は一切ない。また,その状況を記載したミーティング
資料等の裏付け証拠も提出されていないことは上記同様である。したがっ
て,がこれらの事実を否認している以上,上記陳述記載を裏付けRBCら
る証拠もない状況の下で,上記陳述書の漠然とした記載のみをもって平成
14年11月23日にを含むの元従業員らが「ミスターX1ら8名KCS
アドバンス」の名前で貸出君新版プログラムの開発を進めていたとの事実
が認定できるものではない。
c②について
甲第20号証の5は,が開発したプログラムのプログラム定義RBCら
書としてが証拠として提出したものであり「作成日」欄に「平RBCら,
成15年1月10日「ユーザー名」欄に「Mr.Advance」との」,
各記載がある。
上記プログラム定義書の記載は,同プログラム定義書が平成15年1月
10日に作成され,その時点で既に同プログラム定義書に係るプログラム
に「Mr.Advance」の名称が付されていたを示すものである。
この点に関し,は,上記プログラム定義書に係るプログラムのRBCら
作成を開始したのは「作成日」欄の記載どおり平成15年1月10日で,
あること,しかし,上記プログラム定義書自体が作成されたのは,それよ
りもずっと後の時点であること,すなわち,RBCプログラムの開発につ
いては,開発当初は,ら数名で開発を行っており,きちんとしたプロX3
グラム定義書を作成する余裕がなく,メモ書き程度のものを残して次々と
プログラムを開発していたこと,その後,順次を退職した従業員がKCS
プログラム開発を手伝うようになり,を設立して開発担当者が増えRBC
てくるとにも余裕ができ,過去に作成したプログラムについて,残しX3
ておいたメモを見ながらプログラム定義書を作成する作業ができるように
なったこと,そして,甲第20号証の5のプログラム定義書を実際に作成
したのは,平成15年1月10日よりもずっと後の時点であり,その時に
は既にソフトの名称が「Mr.Advance」と決まっていたため,
「ユーザー名」欄にこの名称を入力したと主張する。
この主張内容は,プログラム定義書の実際の作成手順としてあり得ない
ものではない。上記プログラム定義書の「作成日」の記載は,プログラム
自体の作成日かそのプログラム定義書の作成日かの2通りの読み方が可能
であるが,前者の読み方が可能であり,プログラム定義書の作成日を指す
ものではないとすれば,上記プログラム定義書記載の「作成日」の記載の
みから,同プログラム定義書自体が平成15年1月10日に作成されたと
認めることはできない。そして,上記プログラム定義書が綴られている
「得意先マスタメンテナンス(MAMAA1A」と題する書面(甲20)
の1∼23)の2枚目(甲20の2)及び3枚目(甲20の3)はソース
リストであるところ,これら両ページには,同プログラム定義書に係るプ
ログラムの作成日を示す「新規作成」の日付欄に「030121」の記載
があるところ,この記載から読みとることのできる日付は平成15年1月
21日であって,同プログラムの作成開始日が平成15年1月10日であ
るとのの上記主張に沿うものである。RBC
したがって,甲第20号証の5に主張の記載があることをもっKCSら
て,遅くとも平成15年1月10日までににおいて新たに開発したKCS
貸出君新版ソフトの名称を「ミスターアドバンス」とすることが決まって
いたものとはいえない。
d以上によれば,遅くとも平成15年1月10日までには,においKCS
て新たに開発した貸出君新版の名称を「ミスターアドバンス」とすること
が決まっていたとのの上記主張事実は認められない。KCSら
(エ)「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュアル(乙9)につ
いて
aの主張及び証拠関係KCSら
は,乙第9号証は「貸出君forwin廉価版」のオペレーショKCSら
ンマニュアルであると主張し,これについて,要旨,次のとおり主張する。
すなわち,らは,平成15年1月ころまでに「貸出君forwin廉価X4
版」の開発をほぼ完成させ,はのインストラクターの地位にあX4KCS
ったP11に指示して,そのオペレーションマニュアルを作成させた。P
11は,同月22日から同年2月7日にかけて「貸出君forwin廉価,
版」のシステムを実際に稼動させながらそのマニュアルを作成した。この
マニュアルが乙第9号証である,と。P11は,当審における証人尋問で
同旨の証言をするところ,仮にP11の証言どおり,P11が同月22日
から同年2月7日にかけて「貸出君forwin廉価版」のシステムを実際
に稼動させながら乙第9号証を作成したのだとすれば「貸出君forwin,
廉価版」に関する限り,遅くとも平成15年1月22日までにはシステム
として完成していたことになり,これは,RBCプログラムが,のRBC
関係者が持ち出した「貸出君forwin廉価版」を複製ないし翻案して作
成したものであるとのの主張を裏付ける有力な間接事実になり得KCSら
るものである。そこで,P11の上記証言の信用性を中心に検討する。
b乙第9号証のオペレーションマニュアルに「貸出君forwin廉価版」
として記載されたプログラムは正常に稼動するものか
上記のとおり,P11は「貸出君forwin廉価版」のシステムを実際,
に稼動させながらその乙第9号証を作成したと証言する。しかし,そうで
あるとすれば,当然「貸出君forwin廉価版」なるプログラムが乙第9,
号証に記載されたとおりのプログラムとして,正常に稼動したはずである。
それが正常に稼動しないプログラムであれば,それを稼動させながらオペ
レーションマニュアルを作成することなどできるはずがないからである。
ところが,以下のとおり「貸出君forwin廉価版」なるプログラムとし,
て乙第9号証に記載されたプログラムは,正常に稼動することがあり得な
いものと認められ「貸出君forwin廉価版」なるプログラムを「実際に,
稼動させながら」乙第9号証を作成したとのP11の証言部分は真実に反
することになり,信用性を欠くことになるというべきである。その理由は
次のとおりである。
(a)異なるコード表示
Ⅰ証拠(甲13,33,150,証人)及び弁論の全趣旨によれX3
ば,コンピュータシステムの開発手順としては,まずマスター系を開
発し,その後,処理が必要とされる業務について順次プログラムを構
築していくものであり,マスターの内容は業種や業界によって特徴が
あるが,いずれにしろ一旦マスターにおいて決定された各項目の条件
(たとえば,得意先コード及び仕入先コードの桁数,区分コード№,
項目の名称等)は,同じコンピュータシステム内のプログラムでは同
一のものが使用される必要があり,たとえば,給与計算のコンピュー
タシステムの例において,給与受給者(従業員「山田太郎」のコー)
ド№を一旦「2222」と4桁で決定すれば,この「山田太郎」の毎
月の給与明細書には常に「2222」というコード№が表示され,あ
る月の給与明細書には「2222」という4桁のコード№が表示され
たが,別の月の給与明細書にはたとえば「66」のような2桁のコー
ド№が表示されるということは起こり得ないことが認められる。
Ⅱところで,乙第9号証の1の1は,その表紙に記載のあるとおり
「マスタ登録業務」についてのオペレーションマニュアルとされるも
のであるから,各プログラムは,このマスタ上で規定された桁数,区
分を表す記号,項目の名称などの条件によって作成されているはずで
あり,同一のコンピューターシステム内において,マスタ上で規定さ
れた桁数がページによって異なったり,同じ区分を示す記号がページ
によって異なったり,同じ項目を示す名称がページによって異なった
りすることはないはずである。
しかるに,乙第9号証の1の1を見ると,同じであるべき桁数,同
じであるべき区分№,同じであるべき名称が異なる例が散見される。
すなわち,①「得意先コード」の桁数についてみると「得意先マス,
タ登録・修正・削除」のプログラムでは7桁となっている(2−「
1」ページ)のに対し「得意先別単価マスタ一覧表」のプログラム,
では同じ得意先コードの桁数が6桁になっており(2−46」ペー「
ジ「掛率マスタ一覧表」のプログラムでも得意先コードの桁数が6),
桁になっている(2−53」ページ。また,②「仮設」という商品「)
区分を示す記号についてみると「商品マスタ登録・修正・削除」,
のプログラムでは「B」となっている(2−16」ページ)のに対「
し「修理マスタ登録・修正・削除」のプログラムでは「K」とな,
っている(2−54」ページ。さらに,③項目の名称についてみる「)
と「機械マスタ登録・修正・削除」のプログラム(2−21」,「
ページ)において「機械マスタ「商品コード「レンタルNo」と」,」,
いう名称が付されている各項目について「単品マスタ一覧表」のプ,
ログラム(2−24」ページ)では「単品マスタ「型式コード,「」,」
「リースNo」という名称が付されており,統一がとれていない。
(b)存在しないプログラム
Ⅰ乙第9号証の1の1は「マスタ登録業務」についてのオペレー,
ションマニュアルとされるものであり,その構成は,たとえば「2,
−1」ページの最上段に記載された「得意先マスタ登録・修正・削
除」というマスタプログラムが存在することを前提として「2−,
1」ページから「2−4」ページにおいてプログラムの内容が説明さ
れている。したがって,乙第9号証の1の1中にプログラム名の記載
があれば,同じ乙第9号証の1の1中にその名称のプログラムの内容
が説明されたページが存在するはずである。
Ⅱしかるに,乙第9号証の1の1を見ると,存在するはずのプログラ
ムについて,その内容が説明されたページが存在しないものがある。
すなわち,乙第9号証の1の1には「型式マスタ登録・修正・,
削除」という記載がある(2−4」ページ上から17行目「2−2「,
6」ページ下から4行目「2−27」ページ下から3行目「2−2,,
8」ページ最下行「2−45」ページ最下行「2−49」ページ最,,
下行「2−54」ページ下から8行目「2−55」ページ下から3,,
行目)から,乙第9号証の1の1中に「型式マスタ登録・修正・削
除」という名称のプログラムの内容が説明されたページが存在するは
ずであるが,乙第9号証の1の1中にはそのようなページは存在しな
い。
(c)上記(a)(b)のとおり,乙第9号証の1の1について見ただけでも,
桁数が同じでなければならない部分が違う桁数になっていたり,存在し
ない「型式マスタ登録・修正・削除」という項目が何度も出てくるな
ど,乙第9号証のマニュアルどおりのプログラムが存在するとしても,
そのようなプログラムは稼動するものではないことが明らかである。
P11の証言によれば,平成15年1月22日から同年2月7日にか
けて「貸出君forwin廉価版」プログラムを実際に稼動させながらそ,
のオペレーションマニュアル(乙9)を作成したというのであるところ,
乙第9号証のマニュアルどおりのプログラムでは実際に稼動しないこと
が明らかであるから,P11の証言はこの点において不自然,不合理と
いわざるを得ない。もっとも,P11が稼動し得る正常なプログラムを
稼動させながら,マニュアルに誤った記載をしたにすぎない可能性も考
えられないではない。しかし,P11は証言中でそのような可能性に何
ら触れていないし,上記食い違いは単なる転記ミスではあり得ない致命
的なものであり,単純な転記ミス等の可能性は低く,依然としてP11
の上記証言には重大な疑問を差し挟まざるを得ない。
(d)なお,は,乙第9号証のオペレーションマニュアルが平成KCSら
15年1月22日から同年2月7日にかけて作成されたことは,同マ
ニュアルが保存されているファイルの更新日(乙10)によって明らか
であると主張する。なるほど,乙第10号証の画面の「更新日時」欄を
見ると,乙第9号証に係るファイルの更新日として,2003年(平成
15年)1月30日から同年2月7日までの日が表示されている。
しかし,証拠(甲29,証人)及び弁論の全趣旨によれば,乙第X4
10号証のような画面,すなわち「更新日時」欄のみならず「サイ,
ズ」欄についても,作成者の意図した表示がなされるような画面を作成
することは困難なことではないことが認められる。現には,乙RBCら
第10号証に対する反証とするために「更新日時」欄及び「サイズ」,
欄の表示が乙第10号証と同一の画面(甲29)を作成してみせている。
は,が乙第9号証をデータの形で持っていてそれをコKCSらRBCら
ピーしたからこそ,甲第29号証の作成が可能であった旨主張するが,
甲第29号証に表示されているファイルが乙第9号証と同一内容のもの
であるとする証拠はなく,採用することができない。したがって,乙第
10号証も,甲第29号証と同様,が本件訴訟で使用するためにKCS
意図的に作成されたものである疑いを払拭できない。
(e)なおまた,は,P11の作業日報(乙54の1∼12)もKCSら
同人が乙第9号証のオペレーションマニュアルの作成に携わっていたこ
とを示していると主張する。
P11の作業日報(乙53の1∼3,乙54の1∼12)の「作業内
容」欄を見ると,乙第9号証のオペレーションマニュアルの作成と関連
があると思われる記載は「オペマニ修正(乙53の3,乙54の1∼」
9)のみであるところ「オペマニ修正」との記載だけでは,何のオペ,
レーションマニュアルの修正作業を行っていたのか明らかではなく,こ
の記載が乙第9号証の作成(修正)のことを指しているかどうかが明ら
KCSらKCSかでない。また,の主張によっても,RBCソフトは,
内で開発されていたプログラム及びドキュメントから構成されたもので
あり,が従前から販売していた「貸出君」のプログラムに変更やKCS
修正を加えたものではないというのであるから(第1事件のの平KCS
成16年3月18日付け準備書面(1)4ページ「作成」ではなく「修),
正(修正」とは取りも直さずが当時販売していた「貸出君」の」「KCS
プログラムを修正したという意味であると解される)と記載している。
ことも不自然である。したがって,乙第53,第54号証(枝番を含
む)の記載から,P11が「貸出君forwin廉価版」のオペレーショ。
ンマニュアル(乙9)の作成作業に従事していたことを認定することは
できない。
(f)は,P11にはオペレーションマニュアルの作成能力がなKCSら
かった等のの主張に対し,マニュアルの改訂作業は,旧マニュRBCら
アルを参照しながら,新しい画面の内容や動きをチェックしながら適宜
項目を追加したり,入力内容の説明を行ったりという修正を加えていく
ものであり,P11でも十分可能な作業であるなどと主張する。しかし,
「貸出君forwin廉価版」プログラムが内で開発されていたプKCS
ログラム及びドキュメントから構成されたものであり,RBCプログラ
ムはこれを複製・翻案したものであって,が従前から販売していKCS
Kた「貸出君」のプログラムに変更や修正を加えたものでないことは,
の自認するところであるから,乙第9号証は,当時が販売CSらKCS
していた「貸出君」に単純な変更や修正を加えたにすぎないものではな
く,プログラム構造の異なる新たなプログラムとして構成された「貸出
君forwin廉価版」プログラムのオペレーションマニュアルとして作
成されたものということになる。そうだとすれば,の指摘するRBCら
とおり,その開発者から具体的な説明を受けることなく,また,開発に
関するドキュメント等をみせられることのないまま,単にプログラムを
稼動させた画面を見ただけで,かかる短期間のうちに乙第9号証を完成
させたというのは,P11の経験年数を考慮すると,やはり不自然であ
るとの疑問を払拭し得るものではない。
c小括
以上によれば,乙第9号証は,実在するプログラムないしソフトとして
の「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュアルであると認め
ることはできず,この認定に反する証人P11の証言は上記のとおり不自
然で信用できないから,乙第9号証の存在及びP11の証言をもってして
も,P11がからオペレーションマニュアル(乙9)の作成を命じらX4
れたという平成15年1月下旬ころに「貸出君forwin廉価版」が開発
され,その成果物が社内に存在していたことを推認することはできKCS
ない。
d乙第9号証は何に基づいて作成されたものであるか
上記のとおり,乙第9号証のオペレーションマニュアルは,実在するソ
フトウエアである「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュア
ルとして作成されたものとは認められない。そうであれば,乙第9号証は
果たして何に基づいて作成されたものであるかが疑問として残る。この点
については,本件においては傍論になるものの,若干の検討をしておくこ
ととする。
前記bの(a)及び(b)で認定した事実に,次の(a)ないし(c)で認定する事
実を併せ考慮すると,以下のとおり,乙第9号証は,が当時販売しKCS
ていた「貸出君forWindowsver3.0」のオペレーションマニュア
ル(甲87。以下,単に「甲第87号証」又は「甲87」ともいう)を。
基本にしつつ,甲第87号証に記載のない点については,販売のソRBC
フト「TeamS」のオペレーションマニュアル(甲96。以下,単に
「甲第96号証」又は「甲96」ともいう)の該当する部分を合体して。
作成したものである疑いがあるものというべきである。
(a)乙第9号証の表紙のデザインが甲第87号証と同じであること
証拠(甲87,乙9の1の1,乙9の2の1,乙9の3の1)及び弁
論の全趣旨によれば,乙第9号証の1の2の「②マスタ登録業務」と記
載された表紙には,小さな葉のようなロゴが記されていること,このロ
ゴは,が,平成14年から15年当時顧客に配布していたオペKCS
レーションマニュアル(甲87)の表紙に使われていたものと全く同じ
ものであること,このロゴは,が使用しているワープロソフトWRBC
ordの「クリップアート」で標準装備されておらず,独自のもKCS
のであること,その他,乙第9号証の各章ごとの表紙(乙第9号証の1
の1,2の1,3の1の各1枚目)のデザインが,甲第87号証の各章
ごとの表紙のデザインと全く同じであること,以上の事実が認められる。
は,乙第9号証は,がを退職する1か月程前に現在RBCらX4KCS
ののために部下を使って作成させたというのであるとすれば,既RBC
に,が表紙に使っていたものと同一のロゴを使用することなどおKCS
よそあり得ない旨主張する。しかし,から作成の指示を受けたP1X4
1が,の意図を察知せずにのソフトのオペレーションマニュX4KCS
アルとして乙第9号証を作成したものであるとすれば,ロゴが同じであ
っても不自然ではない。したがって,この点は,P11の証言を減殺す
る事情ということはできず,の上記主張は理由がない。RBCら
(b)マスタ登録関係のプログラムについて
マスタ登録関係のプログラムについて,乙第9号証に記載のあるプロ
グラムを見ると,甲第87号証に乙第9号証と同一の記載があるプログ
ラムが多数記載されており,甲第87号証に記載されていないプログラ
ムは,これに該当するプログラムが甲第96号証に記載されていること
が認められる。具体的には次のとおりである。
Ⅰ「?単品マスタ一覧表」と「機械マスタリスト」
乙第9号証の1の1の「2−24」ページには「?単品マスタ一覧
表」という名称のプログラムについての記載があるが,甲第96号証
には「?単品マスタ一覧表」という名称のプログラムについての記載
はなく,甲第96号証においてこれに該当するのは「機械マスタリ,
スト」という名称のプログラムである(2−25」ページ。「)
これに対して,甲第87号証には「単品マスタ一覧表」という名,
称のプログラムについての記載がある(2−24」ページ。「)
Ⅱ「?セット物マスタ登録・修正・削除」と「?セット商品マスタ
メンテナンス登録・修正・削除」
乙第9号証の1の1の「2−27「2−28」ページには「?セ」,
ット物マスタ登録・修正・削除」という名称のプログラムについて
の記載があるが,甲第96号証には「?セット物マスタ登録・修
正・削除」という名称のプログラムについての記載はなく,甲第96
号証においてこれに該当するのは「セット商品マスタメンテナンス,
登録・修正・削除」という名称のプログラムである(2−28,「」
「2−29」ページ。両プログラムは,画面の項目名及びデザイン)
が異なり,その他説明内容も異なる。
これに対して,甲第87号証には「セット物マスタ登録・修,
正・削除」という名称のプログラムについての記載があり(2−2「
7「2−28」ページ,乙第9号証の1の1と,画面の項目名及」,)
びデザインが同一であり,また,説明内容も同一である。
Ⅲ「?締日コントロールマスタ登録・修正・削除」と「締日マス
ターメンテナンス登録・修正・削除」
乙第9号証の1の1の「2−29「2−30」ページには「?締」,
日コントロールマスタ登録・修正・削除」という名称のプログラム
についての記載があるが,甲第96号証には「?締日コントロールマ
スタ登録・修正・削除」という名称のプログラムについての記載は
なく,甲第96号証においてこれに該当するのは「締日マスタメン,
テナンス登録・修正・削除」という名称のプログラムである(2「
−39」ページ。両プログラムは,画面の項目名が異なり,その他)
説明内容も異なる。
これに対して,甲第87号証には「締日コントロールマスタ登,
録・修正・削除」という名称のプログラムについての記載があり
(2−29「2−30」ページ,乙第9号証の1の1と,画面の「」,)
項目名が同一であり,説明内容も同一である。
Ⅳ「?仕入締日コントロールマスタ登録・修正・削除」
乙第9号証の1の1の「2−31「2−32」ページには「?仕」,
入締日コントロールマスタ登録・修正・削除」という名称のプログ
ラムについての記載があるが,甲第96号証には「?仕入締日コント
ロールマスタ登録・修正・削除」という名称のプログラムについて
の記載はなく,これに該当するプログラムに関する記載も存在しない。
これに対して,甲第87号証には「仕入締日コントロールマスタ,
登録・修正・削除」という名称のプログラムについての記載があり
(2−31「2−32」ページ,乙第9号証の1の1と,画面の「」,)
項目名その他説明内容が同一である。
Ⅴ「名称マスタ一覧表」
乙第9号証の1の1の「2−35」ページには「名称マスタ一覧
表」という名称のプログラムについての記載があるが,甲第96号証
には「名称マスタ一覧表」という名称のプログラムについての記載は
なく,これに該当するプログラムに関する記載も存在しない。
これに対して,甲第87号証には「名称マスタ一覧表」という名,
称のプログラムについての記載があり(2−35」ページ,乙第9「)
号証の1の1と,画面の項目名その他説明内容が同一である。
Ⅵ「担当者マスタ一覧表」
乙第9号証の1の1の「2−38」ページには「担当者マスタ一覧
表」という名称のプログラムについての記載があるが,甲第96号証
には「担当者マスタ一覧表」という名称のプログラムについての記載
はなく,これに該当するプログラムに関する記載も存在しない。
これに対して,甲第87号証には「担当者マスタ一覧表」という,
名称のプログラムについての記載があり(2−38」ページ,乙第「)
9号証の1の1と,画面の項目名その他説明内容が同一である。
Ⅶ「得意先別単価マスタ登録・修正・削除」と「得意先別単価マス
タメンテナンス登録・修正・削除」
乙第9号証の1の1の「2−42」∼「2−45」ページには「得
意先別単価マスタ登録・修正・削除」という名称のプログラムにつ
いての記載があるが,甲第96号証には「得意先別単価マスタ登
録・修正・削除」という名称のプログラムについての記載はなく,甲
第96号証においてこれに該当するのは「得意先別単価マスタメン,
テナンス登録・修正・削除」という名称のプログラムである(2「
−42「2−43」ページ。両プログラムは,画面が異なり,そ」,)
の他説明内容も異なる。
これに対して,甲第87号証には「得意先別単価マスタ登録・,
修正・削除」という名称のプログラムについての記載があり(2−「
42」∼「2−45」ページ,乙第9号証の1の1と,画面その他)
説明内容が同一である。
Ⅷ「得意先別単価マスタ一覧表」
乙第9号証の1の1の「2−46」ページには「得意先別単価マス
タ一覧表」という名称のプログラムについての記載があるが,甲第9
6号証には「得意先別単価マスタ一覧表」という名称のプログラムに
ついての記載はなく,これに該当するプログラムに関する記載も存在
しない。
これに対して,甲第87号証には「得意先別単価マスタ一覧表」,
という名称のプログラムについての記載があり(2−46」ペー「
ジ,乙第9号証の1の1と,画面その他説明内容が同一である。)
Ⅸ「仕入先別単価マスタ登録・修正・削除」
乙第9号証の1の1の「2−47」∼「2−49」ページには「仕
入先別単価マスタ登録・修正・削除」という名称のプログラムについ
ての記載があるが,甲第96号証には「仕入先別単価マスタ登録・
修正・削除」という名称のプログラムについての記載はなく,これに
該当するプログラムに関する記載も存在しない。
これに対して,甲第87号証には「仕入先別単価マスタ登録・,
修正・削除」という名称のプログラムについての記載があり(2−「
47」∼「2−49」ページ,乙第9号証の1の1と,画面その他)
説明内容が同一である。
Ⅹ「仕入先別単価マスタ一覧表」
乙第9号証の1の1の「2−50」ページには「仕入先別単価マス
タ一覧表」という名称のプログラムについての記載があるが,甲第9
6号証には「仕入先別単価マスタ一覧表」という名称のプログラムに
ついての記載はなく,これに該当するプログラムに関する記載も存在
しない。
これに対して,甲第87号証には「仕入先別単価マスタ一覧表」,
という名称のプログラムについての記載があり(2−50」ペー「
ジ,乙第9号証の1の1と,画面その他説明内容が同一である。)
XⅠ「得意先別現場別単価掛率マスタ登録・修正・削除」
乙第9号証の1の1の「2−51「2−52」ページには「得意」,
先別現場別単価掛率マスタ登録・修正・削除」という名称のプログ
ラムについての記載があるが,甲第96号証には「得意先別現場別単
価掛率マスタ登録・修正・削除」という名称のプログラムについて
の記載はなく,これに該当するプログラムに関する記載も存在しない。
これに対して,甲第87号証には「得意先別現場別単価掛率マス,
タ登録・修正・削除」という名称のプログラムについての記載があ
り(2−51「2−52」ページ,乙第9号証の1の1と,画面「」,)
その他説明内容が同一である。
XⅡ「掛率マスタ一覧表」
乙第9号証の1の1の「2−53」ページには「掛率マスタ一覧
表」という名称のプログラムについての記載があるが,甲第96号証
には「掛率マスタ一覧表」という名称のプログラムについての記載は
なく,これに該当するプログラムに関する記載も存在しない。
これに対して,甲第87号証には「掛率マスタ一覧表」という名,
称のプログラムについての記載があり(2−53」ページ,乙第9「)
号証の1の1と,画面その他説明内容が同一である。
XⅢ「修理マスタ登録・修正・削除」と「修理マスタメンテナンス
登録・修正・削除」
乙第9号証の1の1の「2−54「2−55」ページには「修理」,
マスタ登録・修正・削除」という名称のプログラムについての記載
があるが,甲第96号証には「修理マスタ登録・修正・削除」とい
う名称のプログラムについての記載はなく,甲第96号証においてこ
れに該当するのは「修理マスタメンテナンス登録・修正・削除」と,
いう名称のプログラムである(2−30」ページ。両プログラム「」)
は,画面の項目名が異なり,説明内容も異なる。
これに対して,甲第87号証には「修理マスタ登録・修正・削,
除」という名称のプログラムについての記載があり(2−54,「」
「2−55」ページ,乙第9号証の1の1と,画面その他説明内容)
が同一である。
(c)業務関係のプログラムについて
業務関係のプログラムについては,マスタ登録のプログラムとは逆に,
乙第9号証に記載のあるプログラムについて甲第87号証に記載のない
ものが多く,このようなプログラムについては,甲第96号証に乙第9
号証とほぼ同一の記載があるプログラムが多数記載されている。具体的
には次のとおりである。
Ⅰ「入金入力」
乙第9号証の3の1の「2−6「2−7」ページには「入金入」,,
力」という名称のプログラムについての記載があり,甲第96号証に
も「入金入力」という名称のプログラムについての記載がある(4「
−8「4−9」ページ。両者は,画面の項目の配置及び説明内容」,)
に若干異なる部分があるが,大半の部分は共通している。
これに対して,甲第87号証にも「入金入力」という名称のプロ,
グラムについての記載があるが(4−9」ページ,乙第9号証の1「)
の1とでは,画面及び説明内容とも,かなりの部分が相違する。
Ⅱ「レンタルNo.問合せ」と「レンタルNO貸出照会」
乙第9号証の4の1の「2−4」ページには「レンタルNo.問,
合せ」という名称のプログラムについての記載があり,甲第96号証
には「レンタルNO貸出照会」という名称のプログラムについての記
載がある(3−18」ページ。両者は,入力項目一覧表の記載が一「)
部異なるが,大半の部分は共通している。
これに対して,甲第87号証には「レンタルNo.問合せ」に該,
当するプログラムについての記載はない。
Ⅲ「未:入出庫問合せ」と「入出庫参照」
乙第9号証の4の1の「2−5」ページには「未:入出庫問合,
せ」という名称のプログラムについての記載があり,甲第96号証に
は「入出庫参照」という名称のプログラムについての記載がある
(3−11」ページ。両者は,入力項目一覧表の記載が一部異なる「)
が,大半の部分は共通している。
これに対して,甲第87号証には「未:入出庫問合せ」に該当す,
るプログラムについての記載はない。
Ⅳ「販売明細問合せ」と「販売明細照会」
乙第9号証の4の1の「2−6」ページには「販売明細問合せ」,
という名称のプログラムについての記載があり,甲第96号証には
「販売明細照会」という名称のプログラムについての記載がある
(4−6「4−7」ページ。両者は,入力項目一覧表の記載等が「」,)
一部異なるが,大半の部分は共通している。
これに対して,甲第87号証には「販売明細問合せ」に該当する,
プログラムについての記載はない。
Ⅴ「入金明細問合せ」と「入金明細照会」
乙第9号証の4の1の「2−7」ページには「入金明細問合せ」,
という名称のプログラムについての記載があり,甲第96号証には
「入金明細照会」という名称のプログラムについての記載がある
(4−12」ページ。両者は,大半の部分が共通している。「)
これに対して,甲第87号証には「入金明細問合せ」に該当する,
プログラムについての記載はない。
(d)まとめ
以上によれば,乙第9号証のオペレーションマニュアルは,マスタ登
録関係プログラムにおいては,甲第87号証に乙第9号証と同一の記載
があるプログラムが多数記載されており,甲第87号証に記載されてい
ないプログラムはこれに該当するプログラムが甲第96号証に記載され
ている一方,業務関係プログラムにおいては,これとは逆に,乙第9号
証に記載のあるプログラムについて甲第87号証に記載のないものが多
く,このようなプログラムについては,甲第96号証に乙第9号証とほ
ぼ同一の記載があるプログラムが多数記載されているという特徴がある。
そうすると,その体裁からは,乙第9号証は,まず,が当時販売KCS
していた「貸出君forWindowsver3.0」のオペレーションマ
ニュアル(甲87)に依拠しつつ(このこと自体はも同旨の主KCSら
張をしている,マスタ登録関係プログラムについては,甲第87号証。)
に記載のないプログラムについての販売するソフトウエアであるRBC
「TeamS」のオペレーションマニュアル(甲96)のうちから該
当するプログラムの部分を取り出してこれを合体して作成したものであ
り,他方,業務関係プログラムについては,従来の貸出君プログラムに
はなかったプログラムが多かったことから,甲第96号証に記載のもの
を借用して作成したものと推認するのがより合理的であると認められる。
そして,の販売するソフトウエアである「TeamS」のオペRBC
レーションマニュアルである甲第96号証が作成されたのは,平成15
年8月ないし9月ころのことであるから,乙第9号証は,本件訴訟が提
起された後に,同年1月ころに「貸出君forWindows廉価版」が
社内で既に開発されていたことを証明するために,ことさら作成KCS
されたものである疑いがあるものというべきである。
(オ)貸出君関連成果物の持出し等
a貸出君関連成果物の持ち出し
は,の元従業員が,平成15年3月までに貸出君新版プKCSらKCS
ログラム(貸出君forwin廉価版」及び「貸出君ASP新版」のプログ「
ラム)及び貸出君プログラム並びにこれらプログラムに係る開発用書類等
(貸出君関連成果物)を持ち出したと主張し,証拠(乙52,本人)Y1
はこれに沿う。
しかし,証拠(乙52,本人)中,の上記主張に沿う部分Y1KCSら
は信用できない。その理由は以下のとおりである。
(a)は,が貸出君関連成果物等の盗難被害の事実を知っKCSらKCS
たのは,が平成15年3月6日にの営業所が存在するビルのY1KCS
管理人から,従業員がの書類等を大量に持ち出しており,KCSKCS
とりわけ,においては,休日に届出もせずに出社して大量の資料をX4
持ち出していたとの報告を受けたことによる旨主張し,は同趣旨のY1
供述をする。
(b)盗難届について
証拠(乙37の1)及び弁論の全趣旨によれば,は,平成15年Y1
3月7日,大阪府東警察署長に盗難届を提出したこと,同届出に係る
「盗難届受理証明書(乙37の1)には「被害状況」として「申請者」,
は,平成15年2月から同年3月7日の間,申請者が取締役社長をつと
める株式会社ケイシイエス事務所内より同会社営業月報綴り等会社資料
を窃取されるという被害に遭い,被害届を提出したものである」との。
記載があり「被害金品」としては「営業月報綴り「週間訪問活動予,,」,
定表綴り「注文書綴り「ソフト開発資料綴り」がこの順に記載され」,」,
ていることが認められる。
(c)被害品返還要求書について
また,証拠(甲217)及び弁論の全趣旨によれば,は,平成KCS
15年3月12日付けで,の元従業員らに対し,同人らが持ち出KCS
した物を返還するよう要求する旨を記載した文書(甲217はその一例
である。以下「被害品返還要求書」という)を送付したこと,返還を。
要求するものとして被害品返還要求書に記載されているものは,平成1
4年9月1日から平成15年2月20日までの営業部員の引継書であり,
具体的には「1.業務日報の月別に綴ったものの6ヶ月分「2.週,」,
間行動計画月別の6ヶ月分「3.月別デモのユーザ及び見込み客リ」,
スト「4.顧客管理訪問先及び顧客の状況の月別リスト「5.見積」,」,
り提出のつずり「6.受注内訳及び約定書6ヶ月分「7.売掛残」,」,
明細及び入金予定「8.クレイム明細とその推移並びに結果明細,」,」
「9.3から8までの内容が月次報告にあれば省略していいです「1」,
0.9月∼2月の6ヶ月の月次報告書「11.その他の報告事項」で」,
あって,貸出君関連成果物に関すると思われる記載はない。
さらに,証拠(乙37の2)によれば,は,平成16年2月10Y1
日,代表者として,を被告訴人として告訴したが,その告訴KCSX5
受理証明書には,被害状況として「被告訴人X5は,平成14年12,
月24日から平成15年3月31日までの間,コンピュータソフト開発
等を業務とする上記申請人の実父が経営する株式会社ケイシィエスの営
業部長であったものであるが,取引先である志摩機械株式会社がケイシ
ィエスに発注したパソコン端末及び補償料対応プログラム一式につき,
会社の販売実績を促進・向上させるという自己の任務に背き,自己が設
立した株式会社アールビィシィの利益を図る目的で,発注先をアールビ
ィシィに変更させ,平成15年4月2日ころ,アールビィシィの預金口
座にその代金として86万9160円を振り込ませたことにより,告訴
。,人会社のケイシィエスに同額の損害を加えたものである」旨を記載し
同額を被害金品としていることが認められる。
(d)ところで,の主張によれば「貸出君forwin廉価版」及KCSら,
び「貸出君ASP新版」のプログラムは,いずれも平成15年1月まで
にはほぼ完成していたというのであるから,その開発用書類を含む貸出
君関連成果物なるものは,にとって極めて貴重な会社財産というKCS
べきであったから,真に貸出君関連成果物が盗難被害に遭ったのであれ
ば,被害日時及び行為者を具体的に特定すべく,まず,において,Y1
自己に報告をしたというビルの管理人から詳しい事情を聴取をした上で
届出をするのが通常とるべき対応であると考えられる。
しかるに,盗難届受理証明書には「被害日時」として「平成15年,
2月ごろから同年3月7日午前8時30分ごろまでの間」という,相当
幅のある記載しかなく,このことからすると,において,ビルの管Y1
理人から,具体的な被害日時について事情を聴取したのか疑問である。
あるいは,においてビルの管理人から事情聴取をした結果,同管Y1
理人から,被害日時は「平成15年2月ごろから同年3月7日午前8時
30分ごろまでの間」であった旨の回答があったものと見る余地もない
ではないが,そうだとすると,平成15年2月ころから同年3月6日こ
ろまでの間,ビルの管理人は,の従業員による大量の書類等の持KCS
ち出しの事実を知りながらその他の関係者に報告しなかったY1KCS
ということになるのであって,このようなこともまたいささか不自然で
あり疑問である。
また,は,ビルの管理人から,が大量の書類を持ち出していY1X4
たとの報告を受けたと供述しているが,盗難届受理証明書には,行為者
として特定の従業員の氏名は記載されておらず,このことから見ても,
においてビルの管理人から,具体的な行為者が誰であるかについてY1
事情を聴取したのか疑問である。このような事実からは,が主KCSら
Y1X4KC張するように,が果たして真実,ビルの管理人からを始め
の元従業員がの資料を大量に持ち出していた旨を聞いたのかどSKCS
うかにも少なからず疑問があるものというべきである。
また,真にが貸出君関連成果物の盗難被害に遭ったのであれば,KCS
被害品返還要求書にも,貸出君関連成果物の記載があってしかるべきで
あるが,上記のとおり,そのような記載はない。
(e)認定事実に基づく判断
上記(d)の事実からすると,は,盗難届を提出した平成15年3Y1
月7日当時,ビルの管理人から事情を聞いて,が貸出君関連成果KCS
物について盗難被害に遭ったとの認識を有していたとはにわかに認め難
い。もっとも,前記盗難届受理証明書(乙37の1)の「被害金品」欄
には「ソフト開発資料綴り」が掲記されており,これに貸出君関連成果
物が含まれると解する余地もある。しかし,貸出君新版プログラムに関
する成果物が存在していたとすれば,その財産的価値は極めて高いもの
と認められるのに,盗難届受理証明書の「被害金品」欄には最も下位に
記されていることや,被害品返還要求書には貸出君関連成果物に関する
記載はなく,を被告訴人とする告訴受理証明書にも,が発注X5KCS
を受けたパソコン端末等をが発注を受けたことにして,その代金RBC
86万9160円をの預金口座に振り込ませたという背任の事実RBC
のみが告訴事実とされており,より犯情の重い貸出君関連成果物の窃取
の事実が告訴事実に挙げられていないこと,さらに,を原告とし,X2
を被告とする別件訴訟(大阪地裁平成17年(ワ)第195号事KCS
件)の平成17年9月27日付け被告()準備書面(甲106)KCS
には「被告()において平成15年2月頃から同3月7日頃ま,KCS
での間,約定書原本を綴じていた注文書綴りを含め,顧客情報に関する
書類一切を窃取されるという盗難事件が発生した(乙13。それ自体)
に財産価値の乏しいこうした書類一式のみ(下線は判決注)が盗難に遭
うなどということは,一般的な盗難事件とは考えられず,こうした書類
について利用価値があるのは原告()らそして訴外株式会社アールX2
ビィシィだけであり,被告()から取引先を簒奪するために窃取KCS
したとしか考えられない」との記載がある。同記載によれば盗難に遭っ
たのは上記顧客情報関係書類一式のみであり,そのほかに貸出君関連成
果物が持ち出されたとの主張は一切していない。以上によれば,上記告
訴当時,が貸出君関連成果物が持ち出されたとの認識を有していたY1
とは考え難く,これに反するの供述は信用できない。したがって,Y1
平成15年3月当時,の従業員によって持ち出されたとが認KCSY1
識していたのは,被害品返還要求書に記載された物のみであったと認め
られる。
(f)小括
以上によれば,貸出君新版プログラムはもとより,貸出君プログラム
等の貸出君関連成果物なるものをの元従業員が持ち出した事実は,KCS
これを認めるに足りない。
なお,証拠(証人)によれば,が休日に届出もせず出社してX4X4
いたのは,平成15年当時は通常のことであったことが認められ,この
ことをもって,貸出君関連成果物を持ち出したことを認定する根拠とす
ることはできない。
bドキュメントのコピー
(a)は,平成15年1月にがP11にの取引先に関KCSらX1KCS
するプログラム仕様書等のドキュメントのコピーを指示して持ち出し,
業務課のフォルダ内のマニュアル全部等のコピーを指示していたと主張
する。この主張に沿う証拠として,P11証人は,から指示されてX1
1社当たりパイプファイルで3,4冊程度のドキュメントをファイルし
た旨証言し(同証人尋問調書3∼4頁,実際,P11の作業日報(乙)
53の1∼3)には,P11が,平成15年1月8日,同月10日及び
同月14日の3日間,ドキュメントのコピー作業に従事した旨の記載が
ある。また,の従業員P10作成の陳述書(乙34)には,P1KCS
0補佐は,平成14年9月ころから,の指示もあり自分の取引先のX2
ドキュメントファイルをコピーしたとの記載がある。
(b)しかし,上記証拠からは,P11がから指示されて数社分の何X1
らかのドキュメントのコピーを指示され,そのコピー作業に従事したこ
と,P10補佐もから指示を受けて自分の取引先のドキュメントフX2
ァイルをコピーしたことが認められるにとどまり,そのドキュメントな
いしドキュメントファイルの内容は明らかではないから,上記証拠のみ
によっては,がP11に対して貸出君関連成果物のコピーを指示しX1
たということも,P11がの指示を受けて貸出君関連成果物をコX1
ピーしたということも認めるに足りず,まして,が貸出君関連成果X1
物をコピーしたものを持ち出したとの事実を認めることはできない。ま
た,P10補佐がの指示を受けて貸出君関連成果物をコピーした事X2
実も認めることはできない。
(c)その他,を含むの元従業員が貸出君関連成果物をX1ら8名KCS
コピーして持ち出したとの事実を認めるに足りる証拠はない。
cK6900のへの持込みRBC
(a)は,で「貸出君」の開発に使用していたK6900KCSらKCS
(富士通製オフコン「K6900)をが持ち出し,に持ち」X4RBC
込んだと主張する。そして,の従業員P15作成の陳述書(乙6KCS
2)には「平成15年2月ころがK6900をに持ち込む,X4RBC
ためにに偽り,持ち出して,その後の事務所に持ち込んだKCSRBC
。,と思う」旨の記載があり,P10作成の陳述書(乙63)には,要旨
KCSX「平成15年2月22日に,もともとにあったコンピュータを
の自宅車庫からの本社事務所に持ち込む作業に従事した。その2RBC
中にK6900があった。K6900は,がで使用するためX4RBC
から持ち出し,大阪府羽曳野市にあるの自宅車庫に保管してKCSX2
いた。は,K6900に入っているソフトウェア,データを消去せX4
ずに持ち込んだと思う。平成15年2月22日の作業は,午前1RBC
X2X6X5X0時にの自宅車庫前に,P24,,P16,P14,,
,P25,P5,P26,P27,P28,私(P10)が集合して1
積み込み作業を行い,午前11時半に事務所に,P15,PRBCX3
29,P9,,が集合し,先のメンバーと一緒に12時半ころX7X8
から事務所への搬入作業を行った」との記載がある。RBC。
しかし,そもそもK6900にのいう貸出君新版プログラムKCSら
その他これに関連する成果物が入っていたと認めるに足りる証拠はない
から,仮にが主張するように,K6900をが持ち出し,KCSらX4
これをに持ち込んだとしても,これをもって,が上記RBCX1ら8名
成果物を持ち出し,これをに開示したと認定することはできない。RBC
(b)ちなみに,は,当審における証人尋問で,要旨次のとおり証言X4
する。すなわち,K6900は,KITシステムズ(川商インフォメー
ション)がファイナンス会社からリースを受けていたもので,平成13
年9月ころ,リース期間終了に伴い,KITシステムズにおいて廃棄す
ることになっていたものである。当時,ではシステムチェックのKCS
ためにオフコンが必要であり,が,KITシステムズの担当者から,X4
できるだけ早い時期に返還又は廃棄することを前提として貸与を受け,
これをにおいて使用していた。は,を退職することをKCSX4KCS
決めたことから,KITシステムズにK6900を返還することとし,
平成15年2月6日,KITシステムズの指示により,その関連会社で
ある三菱物流センター(尼崎と伊丹の間辺りにある)にK6900を。
持ち込み返還した,と。そして,乙第61号証の1(株式会社トヨタレ
ンタリース大阪作成の「請求明細書兼領収書」と題する書面)には,K
6900をKITに返還するために名義で借りたレンタカーの貸KCS
渡日が平成15年2月6日であるとの記載があり,また,同号証の2
(作成の出金伝票)には,上記レンタカーの借受けに関し「2KCS,
/6川商貸出マシーン返却の為」との記載があり,これらはいずれも
の上記証言に符合するものである。X4
(c)は,がK6900の持ち込みのために名義で借KCSらX4KCS
りたレンタカーの走行距離が52kmに上っており(乙61の1,K)
ITシステムズ(大阪市北区(省略)と(当時大阪市中央区)KCS
(省略)との往復距離と符合しないとして,の供述は信用できな)X4
い旨主張する。なるほど,主張のレンタカーの請求明細書兼領KCSら
収書(乙61の1)には「メーター」欄に「20,488∼20,5,
40」との記載があり,走行距離が52kmであったことが認められる。
しかし,上記走行距離は,の証言するように,尼崎と伊丹の間辺X4
りに所在するという三菱物流センターに返却したとしても矛盾はなく,
の他の証言部分にも特段不自然不合理な点はない。X4
他方,P10作成の上記陳述書(乙63)中の,がの自宅にX4X2
K6900を運び込んだとの記載,及び平成15年2月22日にのX2
自宅から運び出したパソコンの中にK6900が含まれていた旨の記載
については,これを裏付ける的確な証拠はなく,直ちに採用することは
できない。
その他,が,K6900をの自宅に運び込んだことを認めるX4X2
に足りる証拠はない。
(カ)「貸出君ASP新版」の仕様書(乙23)について
aは,乙第23号証について,要旨次のとおり主張する。すなわKCSら
ち,乙第23号証は「貸出君ASP新版」プログラムの仕様書(現場マ,
Kスタメンテナンス)であって「貸出君ASP新版」の成果物の大半が,
の元従業員によって持ち出される中で,わずかにの福岡営業所CSKCS
Kのパソコンに残っていたものである。乙第23号証は,平成15年当時
CSY福岡営業所に勤務していたP19が平成15年1月以前に発見し,
にその旨報告したものである,と。は,上記事実から「貸出1KCSら,
君ASP新版」プログラム仕様書(現場マスタメンテナンス)が平成15
年1月以前に作成されており,同プログラムもそのころ完成していたと主
張するものと解される。そして,証拠(乙52,本人)はこれに沿う。Y1
bしかし,証拠(甲102,証人)及び弁論の全趣旨によれば,次のX6
事実が認められる。
(a)とは,においてプログラム定義書を作成する作業にX3X6KCS
従事していたが,両名とも平成15年1月中にを退職し,その後KCS
は,に移籍し,RBCプログラムの仕様書等の作成に従事していRBC
た。
(b)P20は,かねての福岡営業所に勤務し,プログラム定義書KCS
に基づいてプログラムを作成する作業に従事していたが,平成15年2
月中旬ごろ,から,同月20日に福岡営業所を閉鎖するため同年3Y1
月20日付で解雇する旨の通告を受けるとともに,同日までの間,同営
業所で残務整理をするよう命じられた。そして,福岡営業所は予定どお
り同年2月20日に閉鎖された。
(c)平成15年1月にを退社していたとは,同年2月末KCSX3X6
日ごろ,閉鎖後の福岡営業所で残務整理に従事していたP20に対し,
P20が母子家庭であったことから生活費の足しにするためのアルバイ
トとして,夜間や土曜日曜の時間帯を利用して,やがのX3X6RBC
ために作成したプログラム仕様書に基づいてプログラムを作成するよう
依頼することとし,作成作業のために必要なオフコンをP20の自宅に
送った。
(d)そして,らは,P20に対し,現場マスタメンテナンスのプロX3
グラムの作成を依頼し,そのための仕様書をMOに保存し,P20に宛
てて送付した。その後,現場マスタメンテナンスの機能を追加するため
にプログラムの修正が必要となり,は,そのために必要なプログラX6
ム仕様書をP20に送るため,平成15年3月ころ,エクセルで作成し
た仕様書をメールに添付して,の福岡営業所に設置されていたパKCS
ソコンに宛ててメール送信した。が上記仕様書をの福岡営業X6KCS
所に設置されていたパソコンにメール送信したのは,P20に送ったプ
ログラムの作成作業に必要なオフコンにはメールを受信する機能がなか
ったため,残務処理中の福岡営業所に設置されたメール受信機能KCS
を有するパソコンを借用したものである。福岡営業所に設置されKCS
たパソコンにメール送信されたエクセルで作成した仕様書が乙第23号
証の2枚目以降である。
なお,乙第23号証の1枚目の送信書に当たる部分もが作成したX6
ものであるが,同号証の1枚目には,送信書に本来あるはずの送信日の
表示部分がない。
c上記のとおり,は,乙第23号証は平成15年1月以前に発見KCSら
されたと主張する。
しかし,乙第23号証は,上記認定のとおりメール送信されたものであ
り,送信書には送信日の表示があるから,送信日が平成15年1月以前で
あることを立証するためには,送信日の表示部分を含めて証拠提出すれば
足りることである。しかるに,は敢えて送信日の表示部分を提出KCSら
せず,送信日の表示部分がないもの(乙23の1枚目)を証拠提出してい
る。このような訴訟態度からは,が発見したという乙第23号証KCSら
のメールの送信文には,の主張と異なる日付が送信日として印字KCSら
されていた疑いが強く(なお,乙第23号証に押捺された公証人による確
定日付は,平成16年6月23日である,証拠(乙52,本人)中,。)Y1
の上記主張に沿う部分は裏付けを欠くものというほかなく,直ちKCSら
に採用できない。
dは,乙第23号証は新規開発を指示する仕様書ではなく,開発KCSら
済みのプログラムに対する修正を指示する仕様書であるから,乙第23号
証の作成以前にその元となった新規開発を指示する仕様書が作成されプロ
グラムが開発されていたはずであると主張する。
なるほど,乙第23号証の作成以前にその元となった新規開発を指示す
る仕様書が作成されていたことは,前記b認定のとおりである。しかし,
そのことから直ちに,新規開発を指示する仕様書に基づくプログラムが,
乙第23号証の作成以前に開発済みであったということはできない。
e以上のとおりで,の上記aの主張は採用できない。KCSら
なお,乙第23号証は,現場マスタメンテナンスの新規開発を指示する
仕様書ではなく,新規開発を指示する仕様書の修正を指示する仕様書であ
るところ,上記b認定事実及び弁論の全趣旨によれば,乙第23号証が送
付された平成15年3月時点では未だ現場マスタメンテナンスのプログラ
ムは完成していなかったこと,甲第116号証の22(プログラム履歴リ
スト)には,現場マスタメンテナンスの「新規作成」として「担当者」欄
に「P20「着手日」欄に「20030411」との記載があるが,こ」,
れによれば,P20の在職中にはプログラムが完成していなかったKCS
ことから,において「平成15年4月11日」を開発着手日としRBC,
て入力したものであることが認められる。
(キ)RBCプログラムの開発期間その他がの主張の矛盾点とKCSらRBC
して指摘する点について
a開発期間について
(a)は,要旨,次のとおり主張する。すなわち,は,KCSらRBCら
RBCプログラムの開発のためには,業界状況を熟知したシステムエン
ジニアーが120人/月の人力が必要と主張している(平成16年5月
11日付け準備書面第1の5(4)。ところが,甲第15号証によれば,)
RBCソフトについては,Win版システム及びASP版システムのい
ずれも,が開発・発売を開始したと主張する平成15年3月のRBCら
R時点から1年が経過した平成16年3月20日の時点に至ってもなお
が投入したシステムエンジニアーの延べ工数は,Win版で25BCら
人/月,ASP版で47人/月にすぎない。これは,がプログRBCら
ラム開発に必要と主張する120人/月のわずか5分の1から3分の1
RBにしか達していない数字である。すなわち,甲第15号証は,真に
が平成15年1月10日からシステム開発に着手したのであれば平Cら
成16年3月20日の時点においてですらシステム完成にはおよそほど
遠い状況にしかなり得ないことを示している,と。
(b)の上記主張は「が,RBCプログラムの開発のたKCSらRBCら,
めに120人/月の人力が必要であることを認めている」ことを前提と
するものであるが,が平成16年5月11日付け準備書面第1RBCら
の5(4)で主張しているのは,RBCプログラムの開発のために120
人/月の人力が必要である,という趣旨ではなく,のした以下のKCS
主張,すなわち,の従業員らがに在籍していた平成13年RBCKCS
ころから『貸出君』の新バージョンの開発に従事し始め,平成15年1
月ころにはこれを完成させた,の従業員らはこのプログラム及びRBC
ドキュメントを社外に持ち出してRBCソフトを完成させた,との主張
(平成16年3月18日付け準備書面(1))に対し,これを否KCSら
認する理由として,そもそも一企業の存続を決定するほどの規模のパッ
ケージシステムを作成するとすれば,業界状況を熟知したシステムエン
ジニアーが120人/月の人力が必要であり,在籍中に誰も知らKCS
れずに大きなシステムを作成することなどできるはずがない,と主張し
たものというべきである。
したがって,の上記主張は,が「RBCプログラムKCSらRBCら
を開発するために必要な人力は120人/月である」との主張をしてい
Rることを前提とし,これを基にRBCプログラムの開発状況に関する
の主張を非難する点で誤りがある。BC
(c)また,は,甲第15号証の記載から,平成15年1月からKCSら
平成16年3月までにRBCプログラムの開発に要した人力について,
①Win版で25人/月,②ASP版で47人/月と主張する。
しかし,弁論の全趣旨によれば,は,システムエンジニアーKCSら
の担当部分だけを取り上げ主張していることが認められるところ,プロ
グラマーの担当部分も含めると,平成15年1月から平成16年3月ま
でにRBCプログラムの開発に要した人力は,①Win版で58人/月,
②ASP版で83人/月となることが認められる。
したがって,この点においても,の主張はその前提を欠くとKCSら
いうべきである。いずれにしてもの上記主張は理由がない。KCSら
(d)なお,RBCプログラムの完成時期について,最初の販売先の稼動
確認ができた時点で一応の完成と定義するとすれば,前記認定のとおり,
Win版では平成16年9月に鈴建輸送の稼動確認を取得し,ASP版
では同年1月にベストレンタルの稼動確認を取得していることから,W
in版では平成16年9月をもって一応の完成時期と見ることができ,
ASP版では同年1月をもって一応の完成時期と見ることができる。
そして,は,RBCプログラムの完成(完成時期の定義は上RBCら
記のとおり)までに必要な人力は,①Win版で103人/月,②AS
P版で89人/月であると主張するところ,これは,上記認定の,①平
成15年1月から平成16年3月までにRBCプログラムの開発に要し
た人力と,②RBCプログラムの完成時期の関係から見て,合理的に説
明できる数字であるというべきである。
b開発スケジュールについて
(a)は,要旨,次のとおり主張する。すなわち,の元従KCSらKCS
業員は,遅くとも設立時である平成15年3月には,少なくともRBC
デモンストレーションができる状態にまでRBCソフトを完成させてい
たはずである。なぜなら,現在のように各種ソフトが氾濫し,競合ソフ
トが販売されていて購入先が競合ソフトを体感することができる状況に
おいては,最低限デモンストレーションを行うことができなければソフ
トを販売することができないからである。しかるところ,は,平RBC
成15年3月13日には日成工業所との間で契約を締結し,それ以降,
日成工業所から毎月リース料を取得している。機能しないソフトのため
に毎月リース料を支払し続ける顧客が存在するはずはないから,平成1
5年3月時点でこのような契約を締結できたのは,その時点までに,デ
モンストレーションができる状態にまでRBCソフトが完成していたか
らである。また,は,RBCソフトは請負型であるからソフトRBCら
の構築前でもソフトを販売することが可能である旨,また,KCSソフ
トも請負型である旨主張するが,両ソフトとも請負型ではなく,パッ
ケージ型である,と。
(b)しかし,証拠(甲33,150,230の1・2)及び弁論の全趣
旨によれば,コンピューターソフト開発業者によるソフトの販売方式等
について,次の事実が認められる。
Ⅰソフトの販売方式は,大まかに次の2種類に分類することができる。
1つは,一般に「ソフト請負方式」と呼ばれるものである。これは,
コンピューターソフトの開発業者が,まず,顧客との間で顧客の要求
を分析するという作業から始め,その顧客の要求に応じたシステムの
基本設計を行い,合意に達した内容を基に具体的なプログラミング作
業を行い,検収の上納入するというものである(洋服や住宅の例でい
えば,完全なオーダーメイドの服や完全な注文住宅がこれに当た
る。。)
「ソフト請負方式」の対極にあるのが「完全パッケージ方式」と,
呼ばれるものである(洋服や住宅の例でいえば,既製服や建売住宅が
これに当たる。。)
Ⅱ「ソフト請負方式」の場合,顧客の要求に沿ったソフトを構築する
ため,顧客の満足度が高いという長所があるが,反面,開発までの期
間が長く,開発費用が高額になってしまうという欠点がある。一般に,
大企業は,ソフト開発に高額を投じることができるため,ソフト請負
方式による開発を依頼することが多いが,中小企業は,ソフト開発に
高額を投じることが難しいのが現状である。
これに対し「完全パッケージ方式」のソフトは,顧客の側から見,
れば,安価であるという長所がある反面,顧客の個別の具体的要求に
応じた自由度がないという欠点がある。また「完全パッケージ方,
式」のソフトは,開発業者の側から見れば,全く同じ内容のソフトを
相当数販売するから,安価で販売しても開発コストを回収できる反面,
それだけ需要が多くなければならないし,また,販売に先行して開発
コストをコンピュータ開発業者が負担しなければならないため,資金
面で力のあるコンピュータ開発業者でなければ採用が不可能な販売方
式でもある。
Ⅲそこで,大手のコンピュータメーカーは,中小企業向けに,価格が
安く,かつ,顧客の個別の具体的要求もある程度取り入れ得るソフト
を開発・販売するため,昭和50年ころから「ソフトの基本パッ,
ケージ化」という考え方を取り入れた。この考え方は,顧客の要求の
うち共通化できる部分は,一度開発したものを他の顧客にも用いるこ
とによりコストを下げ,比較的低価格でコンピュータソフトを販売す
ることができるというものである。この共通化した部分を「基本パッ
ケージ」と呼び,顧客に対して「基本パッケージ」を「販売」すると
いうような表現が用いられるが「基本パッケージ」以外の,顧客の,
その他の要求については個別に開発を進めるものであり,このような
実態をとらえれば,前記の分類上では「請負型」に属するといえる,
ものである。
「基本パッケージ方式」は,開発の工数が軽減されるため「ソフ,
ト請負方式」に比べて早く完成し,安価である上,顧客の要望も取り
入れることができるという長所を持っていて「ソフト請負方式」と,
「完全パッケージ方式」の長所を併せ持つ上,ソフト開発業者にとっ
ては「販売」という表現を用いることによって,契約時に代金を回,
収してから個別開発を進めるという代金回収方式を採用することにつ
いて,顧客の理解が得やすいというメリットがあり,大手コンピュー
タメーカーから何種類かの「基本パッケージ方式」のソフトが発売さ
れている。
Ⅳしかし,大手コンピュータメーカーが販売を開始した「基本パッ
ケージ」でカバーできる業務は,物販業者(商事会社)やアセンブル
業者(製造業)など,事業形態として比較的多数存在する業務に限ら
れ,その他多くの業種の事業形態には「基本パッケージ方式」は取り
込めない状態が続いた。
そこで,では,平成元年ころ,らが中心となり,当時全KCSX2
くの手付かずであった市場規模の小さな建設機械のレンタル業者向け
のコンピュータソフトを開発するに当たり,同業界独自の基本パッ
ケージ化を着想して「貸出君」を開発し,販売し始めた「貸出君」。
の販売に当たっては「貸出君」が「可変システム」であること,す,
,。なわち「基本パッケージ方式」によるソフトであることを強調した
なお,は,そのウェブサイト(平成20年2月12日時点)KCS
において「現状調査分析「基本設計「詳細設計」が必要である,」,」,
こと,また「貸出君」が「可変システム」を用いたものであること,
を明記している(甲230の1・2。)
RBCプログラムも,これに倣って開発された各顧客の個別的要求
に応じ得るカスタマイズ部分を含む商品であり,その性質上,商品の
販売時点において,既にプログラムが完成しているということはない。
は,その設立当初は資金繰りも覚束ない状況であり,早急に売RBC
上げを上げる必要があったことから,プログラムを開発すると同時に,
顧客に対しても同時進行でプログラムを販売し,完成している部分か
ら順次導入していった。したがって,RBCプログラムは,各顧客と
の契約時点,代金受領時点において全て完成していたというものでは
ない。
(c)上記認定のとおり,RBCソフトは「基本パッケージ方式」による
ソフトであり,上記の分類に従えば「ソフト請負型」を基本としたも,
のということができる。
したがって,の上記主張,すなわち,RBCソフトがパッKCSら
ケージ型であることを前提として,平成15年3月までにはデモンスト
レーションができる状態にまでRBCソフトが完成していたはずである
旨の主張は理由がない。
また,は,機能しないソフトのために毎月リース料を支払いKCSら
続ける顧客が存在するはずはないとも主張するが,それは,ソフト開発
業者と顧客との信頼関係の有無・程度,及びそれに基づく契約内容次第
であるというべきであって,現に,において,ソフトが機能するRBC
より前の段階で顧客から代金を回収していたことは,前記認定のとおり
である(は,証人尋問において,未だソフトとしての基本的な動作X3
ができない状態のまま納品したことがあるが,これはの営業担当RBC
者と取引先の営業担当者との人的信頼関係によるものである趣旨の証言
をするが,それは上記趣旨において理解し得るところであり,それ自体
が不自然不合理とはいえない。また,証拠(甲232)及び弁論の全。)
趣旨によれば,においても,同様の方式を採用していたことが認KCS
められる。したがって,の上記主張もまた採用できない。KCSら
cプログラム数について
(a)は,要旨,次のとおり主張する。すなわち,は,KCSらRBCら
RBCプログラムのうちビジネスサーバ版のプログラムについて,平成
16年6月14日の段階で作成されているもののみで214本存在する
と陳述し(甲13,は,平成17年12月15日時点でもその事)X3
実は正しい旨の証言をしている。それにもかかわらず,甲第115号証
では一転して30数本しか存在しないと主張しており,その主張に矛盾
がある,と。
しかし,の主張によれば,甲第115号証は,が,RBCらRBCら
専門委員からプログラムの創作性・類似性の判断資料としてRBCプロ
グラムの提出を求められたが,において,RBCプログラムがRBCら
営業秘密に該当すると考え,専門委員の判断に必要と思われるものに絞
って提出したというのである。の上記主張は,直ちに首肯し得るRBC
ものでないことは否定できないが,逆に,同主張が虚偽であると認める
に足りる証拠はなく,同主張自体に矛盾その他不自然なところはない。
したがって,甲第115号証で挙げられているプログラム数が少ないこ
とをもって,が独自に開発したプログラム数が少ないということRBC
はできない。
(b)は,要旨,次のとおり主張する。すなわち,甲第13号証KCSら
のプログラム一覧と甲第115号証のプログラム一覧(ASP版プログ
ラム)を見れば,甲第115号証に記載されているプログラムはごく一
部にすぎない。同様に,甲第13号証のプログラム一覧と甲第117号
証のプログラム一覧(Win版プログラム)を見れば,甲第117号証
に記載されているプログラムもごく一部にすぎない,と。
しかし,甲第117号証の1ないし3も甲第115号証の1・2と同
様に,が専門委員の創作性・類似性の判断に必要と思われるもRBCら
のに絞って提出したものであるとのの主張を排斥できないとすRBCら
れば,甲第115号証の1・2及び甲第117号証の1ないし3に記載
されたプログラムが,甲第13号証に記載されたプログラムのうちの一
部であることは当然であり,これをもっての主張の矛盾点と断RBCら
定することはできない。
(c)は,要旨,次のとおり主張する。すなわち,甲第115号KCSら
証の1・2(ビジネスサーバ版プログラム一覧表)を前提とすると,た
とえば出庫入力だけで5つの作成修正履歴が記載されるはずなのに,実
際には,MA0102A(甲116の1∼4)とMA01020(甲1
16の25)の2つの修正履歴しか記載されておらず,齟齬を来してい
る,と。
これに対して,によれば,メインプログラムのみを修正し,RBCら
それ以外の部分は一度作ったら修正不要であると弁解する。この弁解は
一応合理的であり,これを一概に虚偽として排斥し得るだけの証拠はな
い。そうであるとすれば,メインプログラムのみに修正履歴があること
となり,甲第115号証と甲第116号証が矛盾しているということは
できないことになるから,の上記主張は理由がない。KCSら
d小括
以上によれば,開発期間,開発スケジュール及びプログラム数に関する
の主張には矛盾があるとして,RBCプログラムはの元従RBCらKCS
業員がを退職後に新たに開発に着手したものであるとののKCSRBCら
主張は不合理であるとするの主張は,すべて理由がない。KCSら
(ク)争点1(RBCプログラムは貸出君新版プログラムに対するの著KCS
作権を侵害するか)に対する結論
以上のとおり,①乙第5号証ないし乙第8号証(第23期の開発計画・開
発状況を記載した文書)によっては,平成15年1月ころまでに貸出君新版
プログラムの開発がほぼ完成していたとのの主張事実を認めるにはKCSら
足りず,②遅くとも平成15年1月10日までには,で開発中のソフKCS
トの名称が「ミスターアドバンス」と決定していたとの事実を認めるにも足
りず,③が「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュアKCSら
ルであると主張する乙第9号証は,実際に稼動し得るプログラムのオペレー
ションマニュアルではあり得ず,において,が従来販売してKCSらKCS
いた「貸出君」のオペレーションマニュアルである甲第87号証とRBCソ
フトのうち「TeamS」のオペレーションマニュアルである甲第96号
証とを合体させて作成した疑いがあり,④が「貸出君ASP新版」KCSら
のプログラムの仕様書であると主張する乙第23号証は,がを退X6KCS
職後に開発作業に着手したRBCプログラムの仕様書であることが認められ,
⑤の元従業員が貸出君関連成果物等を持ち出したとの事実もこれを認KCS
めるに足りない。また,がの主張の矛盾点として指摘するKCSらRBCら
諸点も,上記①ないし⑤の認定判断を覆すに足りない。
結局,の主張,すなわち,の元従業員が在職中の第KCSらKCSKCS
23期(平成13年9月1日から平成14年8月末日までの期間)に貸出君
新版プログラムの開発に着手し,かつその在職中である平成15年1月ころ
までに開発をほぼ完成させていたとの事実は認めるに足りないというべきで
ある。また,の元従業員が,貸出君新版プログラム及び貸出君プロKCSら
グラム並びにこれらプログラムに係る表示画面,開発用書類,オペレーショ
ンマニュアル等の資料(貸出君関連成果物)を持ち出したとの事実も,また
認めるに足りないというべきである。
KCSしたがって,RBCプログラムは,貸出君新版プログラムに対する
の著作権を侵害するものではなく,これをいうの主張は理由がない。KCSら
(3)争点2(RBCプログラムは貸出君プログラムに対するの著作権を侵KCS
害するか)について
アはじめに
は,RBCプログラムと貸出君プログラムの①ソースコード,②開KCSら
発用書類,③オペレーションマニュアルを比較し,RBCプログラムは貸出君
プログラムに依拠し,これを複製又は翻案したものであると主張する。
ところで,これまでにも度々引用してきたように,は,平成16年KCSら
3月18日付けのの準備書面(1)において,の元従業員が貸出KCSらKCS
君新版プログラムやそのドキュメントを持ち出してRBCソフトを完成させた
RBCらRBC旨を主張し,が,この主張を引用しつつ,RBCプログラムは
が独自に開発したものであって,が著作権を有する貸出君プログラムらKCS
に依拠し,これを複製ないし翻案したものではないから,同著作権を侵害する
ものではないと主張したのに対し「販売ソフトは内で開発され,RBCKCS
ていたプログラム及びドキュメントから構成されたものであり,が従前KCS
から販売していた『貸出君』のプログラムに変更や修正を加えたものではない
から,の商品である貸出君と販売ソフトのプログラムを比べてもKCSRBC
意味がない。は,このことを知悉しつつ,敢えてこの両者を比較し,そRBC
のプログラムが異なるという当然の結果を得ることによって,あたかも自己に
権利侵害の事実がないと周囲に誤解させようと企むものであり,その行為は極
めて巧妙かつ悪質である(同準備書面4頁)と主張し,RBCプログラムは」
KC貸出君プログラムに依拠して,これに修正・変更を加えたものではなく,
の元従業員が開発していたという,貸出君プログラムとはプログラムの異なS
る貸出君新版プログラムに依拠して,これを複製又は翻案したものであって,
RBCプログラムと貸出君プログラムは異なるものであることを自認していた
KCSらKCものである。の上記準備書面(1)における主張と争点2における
の主張がどのような関係に立つのか必ずしも明らかではないが,その点はSら
しばらく措き,の主張する上記①ないし③の点について順次検討するKCSら
こととする。
イソースコードについて
(ア)は,RBCプログラムのソースコードと貸出君プログラムのKCSら
ソースコードを比較すれば,デッドコピーされている部分が存在することが
一目瞭然であり,特に,Win版については,調査した箇所において8割以
上が同一であったと指摘している。
(イ)しかし,証拠(甲123,125,128,139,140,142∼
145,146の1∼10,乙76)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実
が認められる。
a同一部分の割合
RBCプログラムが貸出君プログラムと同一であるとが指摘すKCSら
る部分の割合(RBCプログラムの全行数に対する,RBCプログラム内
において貸出君プログラムと同一であるとが指摘する部分が存在KCSら
する行の数の割合)は,次のとおりである。
(a)乙第84号証(Win版の対比)
乙第84号証(乙76[貸出君Win版の得意先マスタ登録のソース
コード]の37頁から74頁について,甲123[RBCプログラムW
in版の得意先マスタメンテナンスのソースコード]の同一箇所を調査
KCSらKCSらしたとしてが提出した資料)に関して,同一であると
が指摘する部分は,約30%である。
(b)乙第86号証(Win版の対比)
乙第86号証(乙78[貸出君Win版の請求データ作成のソース
コード]の10頁から22頁について,甲125[RBCプログラムW
in版の請求金額計算処理のソースコード]の同一箇所を調査したとし
てが提出した資料)に関して,同一であるとが指摘すKCSらKCSら
る部分は,約10%である。
(c)乙第87号証(ビジネスサーバ版の対比)
乙第87号証(乙81の2[貸出君ビジネスサーバ版の受注入力]の
102頁について,甲128[RBCプログラムビジネスサーバ版の随
時入力のソースコード]の同一箇所を調査したとしてが提出しKCSら
た資料)に関して,同一であるとが指摘する部分は,約0.2KCSら
3%である。
(d)乙第88号証(ビジネスサーバ版の対比)
乙第88号証(乙82の1[貸出君ビジネスサーバ版の出庫入力]の
119頁から120頁について,甲129[RBCプログラムビジネス
KCサーバ版の出庫入力のソースコード]の同一箇所を調査したとして
が提出した資料)に関して,同一であるとが指摘する部分SらKCSら
は,約0.18%である。
b同一部分の記載事項
RBCプログラムと貸出君プログラムが同一であるとが指摘すKCSら
る部分の記載事項は,具体的には次のとおりである。
(a)乙第84号証(Win版の対比)
が同一であると指摘する部分を含む行の数は649行あるが,KCSら
このうち629行は,VBでプログラムを組むために使用しなければな
らない命令,関数又は文法のいずれかであって,創作性が認められない。
は,貸出君Win版で使用している共通関数(乙85)と類KCSら
似すると指摘するが,共通関数は,事後に誰がその表現を見ても何を意
味しているのかを容易に連想できる表現を採用するのが通常であり,似
通った表現が用いられることはままあるものというべきである。
次に,命令,関数又は文法以外の行は20行(1行重複)あるが,い
ずれも画面の各項目名称を表現するものである。このような項目名称に
は,そのプログラムが対象とする業界ないし業種の種類によって決定さ
れている固定項目名(業界の共通の呼称)が使用されるため,同一業界
ないし同一業種で用いられるビジネスソフトでは,項目名称自体が近似
する。また,プログラムを開発した企業では,項目名称のプログラム表
現にもよく似た略語を用いるのが一般であり,かつ,開発企業内では統
一した表現が用いられるのが通常である。
(b)乙第86号証(Win版の対比)
が同一であると指摘する部分はすべて,VB上の命令,関数KCSら
である。
(c)乙第87号証(ビジネスサーバ版の対比)
が同一であると指摘する部分は,単なるCOBOL言語の命KCSら
令にすぎず,創作性が認められない。
(d)乙第88号証(ビジネスサーバ版の対比)
が同一であると指摘する部分は,単なるCOBOL言語の命KCSら
令にすぎず,創作性が認められない。
(ウ)以上のとおり,Win版について,が同一であると指摘する部KCSら
分の割合はRBCプログラム全体の30%ないし10%であるところ,その
大半が創作性のない命令,関数又は文法であり,それ以外の部分は,項目名
称であって,同一業界ないし同一業種で用いられるビジネスソフトでは,項
目名称自体が近似する上,プログラムを開発した企業では,項目名称のプロ
グラム表現にもよく似た略語を統一的に用いるのが一般であることに照らせ
ば,乙第84号証及び乙第86号証における対比対象プログラムにおいて,
RBCプログラムが貸出君プログラムに依拠して作成されたものとは到底認
められず,他にRBCプログラムが貸出君プログラムに依拠したものである
ことを認めるに足りる証拠はない。
また,ビジネスサーバ版については,そもそもが同一であると指KCSら
摘する部分の割合がRBCプログラム全体の1%にも満たず,同一であると
指摘する部分の記載内容もCOBOL言語における命令にすぎず創作性が認
められないものであるから,乙第87号証及び乙第88号証における対比対
象プログラムにおいて,RBCプログラムが貸出君プログラムに依拠して作
成されたものとは到底認められず,他にRBCプログラムが貸出君プログラ
ムに依拠したものであることを認めるに足りる証拠はない。
ウRBCプログラムの開発経緯及びその内容について
前記のとおり,の指摘する貸出君新版プログラムなるプログラムはKCSら
存在せず,RBCプログラムがこれに依拠したものとは認められないところ,
証拠(甲220)及び弁論の全趣旨によれば,RBCプログラムの開発経緯及
びその内容に関し,以下の事実が認められる。
(ア)は,を退職後,において長年「貸出君」のプログラムX3KCSKCS
開発,バージョンアップ等に携わってきた経験を生かし,建設機械等のリー
ス・レンタル業界向けのソフトを開発し販売することを決意した。
すなわち「貸出君」プログラムには,ASP版とWin版の双方とも,,
その原因はそれぞれ異なるものの,①処理スピードが遅い,②操作性が悪い,
③ネットワークに弱いという欠陥があり,平成14年ころ,の開発部KCS
門の従業員は,日常業務の大半がそのトラブル解決に費やされているような
状態であった。これらのトラブルを抜本的に解決するためには,従来のプロ
グラムのバージョンアップ等,既存のプログラムを修正することによっては
不可能であり,全く新しいプログラムを開発する必要があったが,既存のプ
ログラムのファイル構造を作り替え,全く新たなプログラムを開発すること
になれば,従前において開発して蓄積してきた多くのプログラム資産KCS
が全て使用できなくなる上,開発部門においては,トラブル処理に追われて
プログラム開発の十分な時間がとれない状況にあり,において,そのKCS
ような全く新しいプログラムを一から作ることは不可能な状況であった。
そこで,は,に移籍するに際し,において「貸出君」プX3RBCKCS
ログラムのメンテナンス等をする中で最も痛感していた欠点を克服する全く
新たなシステム,すなわち,①処理スピードの向上,②操作性の向上,③ネ
ットワークの強化を基本的な考え方とする全く新たなシステムを開発するこ
とを決意した。
(イ)ビジネスサーバ版について
aRBCプログラムのビジネスサーバ版は,①処理スピードの向上,②操
作性の向上,③ネットワークの強化という3つの基本的な考え方を具体化
したものである。その詳細は,次のとおりである。
b各論
(a)処理スピードの向上
Ⅰ貸出君プログラムの有していた欠点について
①貸出君プログラムでは,ファイルを構成している項目を増加する
ことができないために,別ファイルを追加しなければならないとい
う欠点があり,ファイル構造が肥大化して処理スピードが遅くなっ
ていた(甲220別紙1・第1)。
②貸出君プログラムでは,各ファイルにおける各レコードレングス
が長く設計されているために,処理スピードが極めて低下していた
(レコード」とは,データベースにおいて,1件分のデータを表「
す単位であり,各項目で定義されたデータを集めたものをいい,
「レコードレングス」とは,レコードの長さを意味し,各項目のサ
イズの合計を指す。甲220別紙2。これは,各レコードレング)
スが長いとファイルの中のデータが増える結果処理スピードが遅く
なるからである。
ⅡRBCプログラムにおける「処理スピードの向上」の具体化
①上記Ⅰの①の欠点に対し,RBCプログラムにおいては,たと
えば,初期設計段階において,商品マスタ(商品名などの固定情
報)と商品ランク単価マスタ(単価項目毎のランク情報)とを分け
て設計するということを随所で行い,ファイル上不要な項目が出
ない設計とし,処理スピードの向上を実現している。
,この結果,ファイルが短くかつ不要な項目もないため
,処理スピードが向上し,ファイルを追加することもなく
同一ファイルの項目の使い回しもなくなったために,バ
グの大幅な減少が実現されている。
②上記Ⅰの②の欠点に対しては,各々のファイルのレコードレン
グスを短く設計したことによっても,処理スピードの向上を実現
している(甲220別紙3。これは,各レコードレングスを短く)
設計すれば,各ファイルの中のデータが減少し処理スピードが向
上するからである。
(b)操作性の向上
Ⅰ貸出君プログラムの有していた欠点について
貸出君プログラムには,次のような欠点があった(甲220別紙
1・第2)。
①画面構造上1伝票の入力明細行数が6行しか表示されず使用上
不便であり,更に,1行毎に入力を行った後に明細表示部へ移行
させるという手間がかかり画面構造上不便である。
②入力する際に,入力に必要の無い画面項目にカーソルが移動し,
キーボード入力のタッチ回数が多く操作性が悪い。
③オフコン端末使用になっており,オフコン用キーボード配列の
キー操作が必要で操作性が悪い。
ⅡRBCプログラムにおける「操作性の向上」の具体化
RBCプログラムでは,貸出君プログラムの上記各欠点の解決が
図られている。
①画面上に伝票形式の明細行数が10行表示されており,しかも,
各行へ直接入力する方式を採用した。
②不要な動作なしに,任意に入力したい欄に入力することを可能
とした。
③パソコン用キーボード仕様とした。
(c)ネットワークの強化
Ⅰ貸出君プログラムの有していた欠点について
貸出君プログラムでは,ファイルのレコードレングスが長く,か
つファイルが重複していたので重く,本店・営業所間等のネット
ワークに弱かった。
ⅡRBCプログラムにおける「ネットワークの強化」の具体化
RBCプログラムでは,①ファイルのレコードレングスを短くし,
しかも,②ファイルを分けて作成してファイル構造を分割するとい
う方式をとって,ネットワーク上のデータ量を軽くする設計を行う
ことにより,ネットワーク上のスピードの向上を実現した。
(d)プログラムの組み方
加えて,プログラムの組み方においても,RBCプログラムは,
「構造化プログラム」といわれる方法でプログラムが組まれているの
に対し,貸出君プログラムは「非構造化プログラム」といわれる方,
法でプログラムが組まれている点で相違している(甲220別紙5)。
(e)まとめ
以上のとおり,RBCプログラムのビジネスサーバ版は,貸出君
プログラムのASP版に存在した欠点を克服するため,①処理ス
ピードの向上,②操作性の向上,及び③ネットワークの強化という
基本的な考え方を具体化したプログラムである。
画面設計においても,RBCプログラムの「得意先マスタメンテ
ナンス」の画面(甲134の1∼3)と,貸出君プログラムの「得意
,先マスタ登録・修正・削除」の画面(甲134の4)を比較し,また
RBCプログラムの「出庫入力画面」(甲135の1,上段)と,貸
出君プログラムの「出庫入力画面」(甲135の1,下段)を比較す
れば,両者の画面設計は全く異なっている。
また,プログラムの組み方に関しても,貸出君プログラムが「非
構造化プログラム」という方法でプログラムが組まれているのに対
し,RBCプログラムは「構造化プログラム」という方法でプログ
ラムが組まれている。
このように,RBCプログラムのビジネスサーバ版は,上記の3
つの基本的な考え方を具体化した結果,貸出君プログラムのASP
版とは異なる新たなプログラムとなっているものといえる。
(ウ)Win版について
aRBCプログラムのWin版は,ビジネスサーバ版と同様,①処理ス
ピードの向上,②操作性の向上,③ネットワークの強化という3つの基本
的な考え方を具体化したものである。
また,貸出君プログラムのWin版は,貸出君プログラムのASP版を
もとに作られたプログラムであるため,前記のような,構造上の欠点や操
作上の問題を抱えていた。
b各論
(a)処理スピードの向上
Ⅰ貸出君プログラムの有していた欠点について
貸出君プログラムには,入力データを同じファイル内で保存してい
くというファイル構造に,大きな欠点があった。
すなわち,貸出君プログラムの場合は,入力データファイルが,1
月度・2月度・3月度と入力すればするほどデータが溜まっていくと
ころ,通常,この入力データファイルに保存されたデータを呼び出し
てきて請求書を発行する仕様となっているため,処理スピードが遅く
なる(甲220別紙8)。
ⅡRBCプログラムにおける「処理スピードの向上」の具体化
RBCプログラムでは,入力データファイルは1か月間分だけにし
て,過去のデータは必要に応じて取り出しできるように別ファイル
(累積データファイル)として切り分けるという全く新たな構造とし,
処理スピードの向上を実現した。
すなわち,このように別ファイルとすれば,入力データとして呼び
出されるのは,常に1か月分だけであるため,請求書発行等の処理ス
ピードは格段に速くなる。
(b)操作性の向上
Ⅰ貸出君プログラムの有していた欠点について
①貸出君プログラムのWin版は,貸出君プログラムのASP版を
もとにしたプログラムであるので,貸出君プログラムのASP版に
おける欠点を併せ有している。すなわち,画面構造上1伝票の入力
明細行数が6行しか表示されず,使用上不便であり,更に1行毎に
入力を行った後に,明細表示部へ移行させるという手間がかかる画
面構造上の不便さという欠点が同様に存在していた。
②貸出君プログラムにおいては,リース単価変更時の仕様に欠陥が
あり操作性が悪いこと,期間貸し(シーズン貸し)の時リース期間の
自動延長ができず操作性が悪いことという欠陥も存在していた(甲
220別紙8②)。
ⅡRBCプログラムにおける「操作性の向上」の具体化
①RBCプログラムのビジネスサーバ版と同様,画面上に伝票形式
の明細行数が10行表示されており,しかも,各行へ直接入力する
方式を採用し,操作性の向上を実現した。
②上記Ⅰ②のような,貸出君プログラムにおける操作性が悪いとい
う欠点は,RBCプログラムには存在しない。
(c)ネットワークの強化
Ⅰ貸出君プログラムの有していた欠点について
貸出君プログラムでは,営業所コードが存在しないことにより,支
店・営業所単位での処理ができず,営業所間のネットワークに対する
対応が弱いという欠点があった。
ⅡRBCプログラムにおける「ネットワークの強化」の具体化
RBCプログラムでは,取引先マスタ(得意先マスタ)上に,営業
所コード(5桁)を採用し,営業所を複数管理している顧客が営業所
単位で業務処理を行うことが可能であり,ネットワークが強化されて
いる。
(d)まとめ
以上のとおり,RBCプログラムのWin版は,貸出君プログラム
のWin版に存在した欠点を克服するため,①処理スピードの向上,
②操作性の向上,及び,③ネットワークの強化という基本的な考え方
を具体化したプログラムである。
画面設計においても,RBCプログラムの「得意先マスタメンテナ
ンス」の画面(甲135の2,上段)と,貸出君プログラムの「得意先
マスタ登録」の画面(甲135の2,下段)を比較し,また,RBCプ
ログラムの「入出庫入力画面」(甲135の3,上段)と,貸出君プロ
グラムの「出庫入力画面」(甲135の3,下段)を比較すれば,両者
の画面設計は異なっている。そして,その結果,RBCプログラムと
。貸出君プログラムには多数の相違点が存在している(甲220別紙9)
以上のとおり,RBCプログラムのWin版は,上記の3つの基本
的な考え方を具体化した結果,貸出君プログラムのWin版とは異な
る新たなプログラムとなっているものというべきである。
エ開発用書類及びオペレーションマニュアルについて
は,RBCプログラムと貸出君プログラムの開発用書類が,その内KCSら
容に加え,行数やセルの幅まで完全に一致していること,オペレーションマ
ニュアルについても,その内容に加え,アスタリスク(*)の数や具体的な一
字一句の表現まで一致している部分があることからして,データの上書きがな
されていることが明らかであるとして,RBCプログラムが貸出君プログラム
に依拠して作成されたものである旨主張する。
しかし,RBCプログラムが貸出君プログラムとは異なる設計仕様によって
作成されたものであることは,上記説示のとおりであって,両プログラムの開
発用書類及びオペレーションマニュアルにおける記載に上記の程度の共通点が
あるからといって,RBCプログラムが貸出君プログラムに依拠して,これを
複製又は翻案されたものということはできない。
オ争点2に対する結論
上記のとおり,ビジネスサーバ版,Win版ともに,RBCプログラムは,
貸出君プログラムとは異なる新しいプログラムであり,両者に同一性は認めら
れない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,RBCプログ
ラムは,貸出君プログラムに対するの著作権を侵害するものではなく,KCS
これをいうの主張は理由がない。KCSら
(4)争点3(RBCプログラム(Win版)は「貸出君forwin廉価版」の表示
画面に対するの著作権を侵害するか)KCS
K前記(2)イで判示したとおり「貸出君forwin廉価版」なるプログラムが,
社内で開発されたことはなく,そのようなプログラムはそもそも存在しないCS
から,その表示画面なるものもまた存在しないことになる。
よって,その余の点について判断するまでもなく,RBCプログラムが「貸出
君forwin廉価版」の表示画面に対するの著作権を侵害するものではなKCS
く,これをいうの主張は理由がない。KCSら
(5)争点4(RBCプログラム(ビジネスサーバ版)及びその開発用書類(甲2
0)は「貸出君ASP新版」の開発用書類(乙23)及び貸出君プログラムビジ
ネスサーバ版の開発用書類(乙49,58)に対するの著作権を侵害するKCS

アは,次のとおり主張する。すなわち,①RBCプログラム(ビジネKCSら
スサーバ版)は「貸出君ASP新版」プログラムの開発用書類(乙23)に,
対するの著作権(翻案権)を侵害する。②RBCプログラム(ビジネスKCS
サーバ版)は,貸出君プログラム(ASP版)の開発用書類(乙49,58)
に対するの著作権(翻案権及び二次的著作物の原著作物の著作者の権KCS
利)を侵害する。③RBCプログラム(ビジネスサーバ版)の開発用書類(甲
K20)は「貸出君ASP新版」プログラムの開発用書類(乙23)に対する
の著作権(複製権及び翻案権)を侵害する。④RBCプログラム(ビジネCS
スサーバ版)の開発用書類(甲20)は貸出君プログラム(ASP版)の開発
用書類(乙49,58)に対するの著作権(複製権及び翻案権)を侵害KCS
する,と。
Kイしかし,上記①及び③の主張については,前記(2)イで判示したとおり,
において貸出君新版プログラムなるものは開発されておらず存在しないもCS
のであるから,理由がないことが明らかである。
ウまた,上記②及び④の主張については,前記(3)で認定説示したとおり,R
BCプログラムは貸出君プログラムとは異なる設計仕様によって作成されたも
のであるから,貸出君プログラムの開発用書類に依拠して作成したものとは認
められず,かえって,これとは別のRBCプログラム独自の開発用書類に基づ
いて作成されたものであると認められる。
したがって,RBCプログラム及びその開発用書類(甲20)が貸出君プロ
グラムの開発用書類(乙49,58)に依拠して作成されたものでないことは
明らかである。
エよって,その余の点について判断するまでもなく,RBCプログラム(ビジ
ネスサーバ版)及びその開発用書類(甲20)は「貸出君ASP新版」の開発
用書類(乙23)及び貸出君プログラムビジネスサーバ版の開発用書類(乙4
KCSKC9,58)に対するの著作権を侵害するものではなく,これをいう
の上記主張はいずれも理由がない。Sら
(6)争点5(RBCプログラム(Win版)のオペレーションマニュアル(甲9
6)は「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュアル(乙9)及び貸
K出君プログラム(Win版)のオペレーションマニュアル(甲87)に対する
の著作権を侵害するか)についてCS
アは,①RBCプログラムのオペレーションマニュアル(甲96)はKCSら
「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュアル(乙9)を複製ない
し翻案したものである,②RBCプログラムのオペレーションマニュアル(甲
96)は貸出君プログラムWin版のオペレーションマニュアル(甲87)を
複製ないし翻案したものであると主張する。
イしかし,上記①の主張については,前記(2)イで判示したとおり「貸出君f,
orwin廉価版」なるプログラムは社内で開発されたとは認められず,KCS
そもそも存在しないものであるから,そのオペレーションマニュアルも存在し
ないものというほかない(そもそもプログラム自体が存在しないオペレーショ
ンマニュアルなど観念することもできない。乙第9号証が「貸出君forwin。)
廉価版」のオペレーションマニュアルとはいえないことも,前記(2)イ(エ)で
認定説示したとおりである。したがって,RBCプログラムのオペレーション
マニュアル(甲96)が「貸出君forwin廉価版」のオペレーションマニュ
アル(乙9)に依拠してこれを複製又は翻案して作成したものであると認めら
れないことは明らかであって,これをいうの上記主張には理由がない。KCSら
ウまた,上記②の主張については,前記(3)で判示したとおり,RBCプログ
ラムは貸出君プログラムとは異なる設計仕様によって作成されたものと認めら
れる。オペレーションマニュアルは,プログラムの操作方法について記載した
ものであるから,異なる設計仕様に基づいて作成されたプログラムのオペレー
ションマニュアルは,その性質上,他方のオペレーションマニュアルに依拠し
て作成され得るものではない。したがって,RBCプログラム(Win版)の
オペレーションマニュアル(甲96)が貸出君プログラムWin版のオペレー
ションマニュアル(甲87)に依拠して作成されたものとは認められず,かえ
ってこれとは別のRBCプログラム独自の開発用書類に基づいて作成されたも
のであると認められる。したがって,の上記主張もまた理由がない。KCSら
(7)争点6(本件開発方針について,は不正競争防止法2条1項7号,RBCら
8号所定の不正競争をしたか)について
アは「23期上期開発部方針(乙6)の「2.商品化計画」の①KCSら,」
項に記載された「貸出君forwin廉価版」の開発方針(本件開発方針)が不
正競争防止法2条6項所定の「営業秘密」に当たると主張し「営業秘密」で,
あることが認められるための要件の1つである秘密管理性について,要旨次の
とおり主張する。すなわち,乙第6号証は,平成13年9月に行った決算会議
のために作成された書類であり,新製品の開発方針など極めて重要な会社方針
,,が記載されているため,社外秘扱いとされ「秘」の印が押捺されているほか
は,内田洋行との間で秘密保持契約を締結している(乙29。乙第6KCS)
号証については,決算会議の参加者と同数しか作成されず,参加者に対しては,
社外秘の機密書類であることを説明した上で,コピー禁止と説明してあり,
「秘」の押印もなされているため,参加者は乙第6号証に記載された情報が営
業秘密であることは当然認識していたはずである,と。
イしかし,証拠(乙6,証人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認X4
められる。
(ア)乙第6号証には,冒頭に「秘」の印が押捺されており「貸出君forwi,
n廉価版」の開発方針(本件開発方針)として,次のとおり記載されている。
「For・Win廉価版
現行のWin版の機能を承継するが出庫・入庫入力を一体化し,出
入庫した伝票及び出庫のみ入庫のみの伝票入力が1画面で対応出来る
ように変更。また,システム範囲としては,売掛管理までとし,カス
タマイズ一切なし単品管理なしかつ,伝票及び請求書は指定でKCS
運用を行う。伝票及び請求書のパターンとしては,建機バージョン・
仮設バージョンと分けてプリンタはドットプリンタ,レーザープリン
タ対応の計4パターンを用意する」。
(イ)上記決算会議は,毎回,内田洋行の会議室を借りて行われており,大阪
本社の従業員は全員これに出席することとされていた。
(ウ)乙第6号証は,が第23期上期の開始に当たり,同会議で発表するX4
ために作成したもので,出席者全員に配布された。は,同会議の席上にX4
おいて,乙第6号証に基づいて説明を行い,また,は,内田洋行に対しX2
その内容を説明していた。乙第6号証には,上記のとおり冒頭に「秘」の印
が押捺されていたが,これとともに配布された乙第5号証には「秘」の印が
押捺されておらず,第23期下期に配布された同趣旨の資料(乙第7,第8
号証)にも「秘」の印が押捺されていなかった。また,各用紙にナンバリン
グを付したり,配付枚数を記録するなどの部数管理までは行われておらず,
散会後は内田洋行のビルにある社員食堂でパーティを行った後,各自持ち帰
ることを許していた。
(エ)上記決算会議に出席した従業員は,本件開発方針を含め乙第6号証に記
載された内容を踏まえて営業活動を展開しており,が今後開発し発売KCS
する予定のソフトについても顧客や見込み客に積極的に説明していた。
ウ上記イ認定の事実によれば,乙第6号証にはその冒頭に「秘」の印が押捺さ
れているものの,同時に配布された乙第5号証や,第23期下期の開始にあた
り開催された決算会議で配布された資料(乙7,8)には「秘」の印が押捺さ
れていなかったのであり,の上記資料に関する秘密管理体制は一貫したKCS
ものではなかったことがうかがえる上,会議終了後はパーティの後各自持ち帰
っていて,その際ににおいて機密資料として取扱いに注意するよう求めKCS
るなどの措置を執っていた形跡はない。また,本件開発方針を含め乙第6号証
Kに記載された内容を踏まえて出席従業員による営業活動が展開されていて,
が今後開発し発売する予定のソフトについても顧客や見込み客に積極的にCS
説明していたというのであるから,の従業員をして,乙第6号証その他KCS
の開発方針に関する資料の記載内容がの営業秘密であることを認識させKCS
るような措置が執られていたとは認められない。
エ以上によれば,本件開発方針は秘密管理性を欠き,不正競争防止法2条6項
所定の「営業秘密」には当たらない。したがって,本件開発方針に係る不正競
争防止法に基づくの請求(差止め・廃棄,損害賠償)はいずれも理由KCSら
がない。
(8)争点6(本件開発方針及び本件プログラム作成情報について,は不RBCら
正競争防止法2条1項7号,8号所定の不正競争をしたか)について
アは,貸出君プログラムの仕様書(乙23,49,58)に記載されKCSら
たプログラム作成に関する情報(本件プログラム作成情報)は不正競争防止法
2条6項所定の「営業秘密」に当たるところ,がこれを持ち出してX1ら8名
に開示し,はこれを利用してRBCプログラムを作成しRBCソRBCRBC
フトを販売したと主張する。
KCSイしかし,まず,乙第23号証は,前記(2)イ(カ)で判示したとおり,
の元従業員がを退職後にのために作成したものと認められ,そもKCSRBC
そもの保有に係る情報ではないから,が秘密として管理しているKCSKCS
営業秘密に当たらない。
ウ次に,乙第49号証及び第58号証は,貸出君プログラムの開発用書類であ
るが,前記(2)イ(オ)で判示したとおり,の元従業員が貸出君プログラKCS
ムの開発用書類を持ち出した事実は認められない。
エしたがって,本件プログラム作成情報に係る不正競争防止法3条,4条に基
づくの請求(差止め・廃棄,損害賠償)はいずれも理由がない。KCSら
(9)争点7(貸出君関連成果物を持ち出したことを理由とする民法709条の不
法行為の成否)について
アは,はが長年かけて開発・改良してきた貸出君関連KCSらRBCらKCS
成果物を持ち出し,適宜修正を加えることで,極めて短時間にRBCソフトを
完成させ,これをの顧客に販売して不当な利益を上げており,このようKCS
なの行為はに対する不法行為を構成する旨主張する。RBCらKCS
イしかし,において貸出君関連成果物を持ち出したと認められないこRBCら
と,また,において貸出君プログラムに依拠してRBCプログラムをRBCら
作成したことがないことは,既に認定説示したとおりである。においRBCら
ては,前記(3)ウ認定のとおり,独自にプログラムを開発しRBCソフトを作成
したものであって,において,に対する不法行為を構成するとRBCらKCS
目すべき行為を行ったとは認められない。
ウよって,のに対する不法行為に基づく請求はいずれも理由がKCSRBCら
ない。
3第1事件に対する判断
(1)争点1(本件文書1の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争
に該当するか)について
ア記載(1)(弊社が懲戒解雇した社員が独自に会社を設立し)の虚偽性「」
KCS(ア)本件文書1(別紙4記載の「御取引先各位」と題する文書)は,
が平成15年3月29日にとの競合取引先約350社に対して送付しRBC
たものであるところ,本件文書1の記載(1)は,その後に続く「…この度,
弊社が懲戒解雇した社員が独自に会社を設立し弊社御客様に案内しているよ
うですが,弊社とは一切無関係です。…日頃からご愛顧頂いています建機・
仮設資材レンタル業向けアプリケーションソフト『貸出君』は,弊社にて開
発,販売を行っており弊社が著作権を所有し,商標登録しております。弊社
権利を侵害している会社と取引されますと法的な差止請求される可能性があ
りますので御注意お願いします。…」という文脈の中で記載されているから,
本件文書1を受け取った者(との競合取引先)は,上記部分がRBCKCS
「が懲戒解雇をした社員がを設立し,はの著作権KCSRBCRBCKCS
及び商標権を侵害している」ことを意味していると認識するものと認められ
る。
(イ)は,はが平成15年3月31日付けで懲戒解雇しKCSらRBCKCS
た,及び3名らが首謀者となって設立したものであるから,本X5X1X4
件文書1の記載(1)は虚偽ではないと主張する。
しかし,が本件文書1を送付したのは平成15年3月29日であり,KCS
その時点では,は未だ上記懲戒解雇の意思表示をしていなかったのでKCS
あるから,本件文書1の記載(1)は同時点において虚偽であることは明らか
である。
X5X1X4また,証拠(甲101)及び弁論の全趣旨によれば,,及び
は,いずれも平成15年3月5日にに退職届を提出したことが認めらKCS
れるから,それから2週間を経過した同月20日は既に任意退職の効果が発
生している(民法627条1項)以上,その後にした懲戒解雇の意思表示は
無効である。
したがって,いずれにしても本件文書1の記載(1)は虚偽であり,また,
その内容自体,を懲戒解雇されるほどの非行を行った元従業員KCSKCS
によりが設立されたものである旨のの社会的信用を失墜させるRBCRBC
ような内容を含み,かつ,同記載がなされている文脈に照らせば,同記載は
の営業上の信用を害するものであると認められる。RBC
(ウ)よって,上記記載(1)を含む本件文書1を送付したの行為は,不KCS
正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に当たる。そして,上記記載
(1)の内容,告知流布の態様等を考慮すれば,上記不正競争が少なくとも過
失に基づくものであることが優に認められる。
なお,は,の上記行為は民法709条の不法行為をも構成すRBCKCS
KCSRるかのような主張をするが,その主張内容は,結局,の上記行為が
の信用を毀損するものであるとの主張に尽きるものであり,不正競争防BC
止法2条1項14号の不正競争に該当するとの主張に含まれるものと認めら
れるので,の上記行為が不正競争防止法2条1項14号の不正競争にKCS
該当するか否かの判断とは別に,それがに対する信用毀損行為であるRBC
として,民法709条の不法行為に該当するか否かについて(争点7)は判
断しない。この点は,下記イ,(2)ないし(7)においても同様である。
イ記載(2)(弊社権利を侵害している会社と取引されますと法的な差止請求さ「
れる可能性があります)の虚偽性」
(ア)本件文書1の記載(2)は「…日頃からご愛顧頂いています建機・仮設資,
材レンタル業向けアプリケーションソフト『貸出君』は,弊社にて開発,販
売を行っており弊社が著作権を所有し,商標登録しております。弊社権利を
侵害している会社と取引されますと法的な差止請求される可能性があります
ので御注意お願いします。…」という文脈の中で記載されているから,本件
RBCKCSR文書1を受け取った者(との競合取引先)は,上記部分が「
は『貸出君』についてが有する著作権及び商標権を侵害していBCKCS,
るので,と取引をすると差止請求権を行使される可能性がある」ことRBC
を意味していると認識するものと認められる。
(イ)しかし,RBCプログラムが,貸出君プログラム等についてが有KCS
する著作権を侵害するものでないことは,既に認定説示したとおりである。
RBCKしたがって,本件文書1の記載(2)中「が『貸出君』について,,
が有する著作権を侵害している」旨の部分は,の営業上の信用をCSRBC
害する虚偽の事実に当たるものと認められる。
(ウ)また,が「ミスターアドヴァンス/MISTERADVANCKCS
E」の文字から成る商標(本件登録商標)について商標出願をしたのは平成
15年4月23日であり,その商標登録がされたのは同年11月21日であ
る。これに対し,が本件文書1を送付したのは同年3月29日であり,KCS
その時点では,は未だ本件登録商標について商標権を有していなかっKCS
たのであるから,本件文書1の記載(2)は同時点において虚偽であることは
明らかである。
なお,は「貸出君」の標準文字から成る商標の商標権者であるが,KCS
が同商標の指定商品に同商標と同一又は類似の標章を使用したなど,RBC
同商標権を侵害した事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件文書1の記載(2)中「が,が有する商標権,RBCKCS
を侵害している」旨の部分は,の営業上の信用を害する虚偽の事実にRBC
当たるものと認められる。
(エ)さらに,本件文書1の記載(2)中「と取引をすると差止請求権を,RBC
RBCKC行使される可能性がある」旨の部分については,そもそもが仮に
の有する著作権又は商標権を侵害していたとしても,差止請求権を行使さS
れる可能性のある製品があるのはであって,その取引先である本件文RBC
書1の受取人ではないから,上記部分もまた,取引先ととの取引を不RBC
当に委縮させるものとして,の営業上の信用を害する虚偽の事実に当RBC
たるものと認められる。
(オ)以上によれば,上記記載(2)を含む本件文書1を送付したの行為KCS
は,不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に当たる。そして,上記
記載(2)の内容,告知流布の態様等を考慮すれば,上記不正競争が少なくと
も過失に基づくものであることが優に認められる。
(2)争点2(本件文書2の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争
に該当するか)について
ア記載(1)(ミスターアドヴァンスがさらにバージョンUPして《貸出君Pe「
rsonal》遂にデビュー!!)の虚偽性」
(ア)本件文書2(別紙5記載のパンフレット)は,が平成15年10KCS
月にとの競合取引先多数に対して送付したパンフレットであるところ,RBC
本件文書2を受け取った者は,本件文書2の記載(1)が「において従KCS
前『ミスターアドヴァンス』を販売していたが,これが既に古いものとなっ
てしまったので,これをバージョンアップし『貸出君Personal』,
として販売することになった」ことを意味していると認識するものと認めら
れる。
(イ)しかし,が平成15年10月以前に「ミスターアドヴァンス」をKCS
販売した事実を認めるに足りる証拠はなく,また「貸出君Persona,
l」が「ミスターアドヴァンス」をバージョンアップしたものであることを
認めるに足りる証拠もない。
したがって,いずれにしても本件文書2の記載(1)は虚偽であり,また,
本件文書2の送付当時は「ミスターアドバンス」の名称のソフトを販RBC
売していたから(当事者間に争いがない,これが既に古いものになってし。)
まったことをも意味する上記記載は,の営業上の信用を害するものでRBC
あると認められる。
(ウ)よって,上記記載(1)を含む本件文書2を送付したの行為は,不KCS
正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に当たる。そして,上記記載
(1)の内容,告知流布の態様等を考慮すれば,上記不正競争が少なくとも過
失に基づくものであることが優に認められる。
イ記載(2)(貸出君・ミスターアドヴァンスは,㈱ケイシィエスの登録商標ま「
たは商標です)の虚偽性。」
(ア)本件文書2を受け取った者は,本件文書2の記載(2)が,同記載(1)
(ミスターアドヴァンスがさらにバージョンUPして《貸出君Perso「
nal》遂にデビュー!!)と相まって「貸出君』及び『ミスターアド」,『
ヴァンス』のいずれもの登録商標又は商標である」ことを意味していKCS
ると認識するものと認められる。
は,本件文書2の記載(2)においては「貸出君「ミスターアドKCSら,」
ヴァンス」の順に対応する形で,それらがの「登録商標「商標」でKCS」
KCSあるというように,言葉が使い分けられているから,同記載(2)は,
は「貸出君」の商標を登録済みであり「ミスターアドヴァンス」について,
は登録に至っていないことを意味する旨主張する。しかし,上記記載(2)か
ら直ちに主張の対応関係を直ちに読み取ることはできない。したがKCSら
って,の上記主張は採用できない。KCSら
K(イ)そうすると,本件文書2の記載(2)は「ミスターアドヴァンス』は,『
の登録商標である」ことをも意味することになる。CS
しかし「ミスターアドヴァンス/MISTERADVANCE」の文,
字から成る商標(本件登録商標)について商標登録がされたのは平成15年
11月21日であるのに対し,が本件文書2を送付したのは同年10KCS
月ころであり,その時点では,は未だ本件登録商標について商標権をKCS
有していなかった。また,が平成15年10月以前に「ミスターアドKCS
ヴァンス」をの商標として使用した事実を認めるに足りる証拠はない。KCS
したがって,本件文書2の記載(2)は虚偽であり,また,本件文書2の送
付当時は「ミスターアドバンス」の名称のソフトを販売していたからRBC
(当事者間に争いがない,これがの登録商標であることをも意味す。)KCS
る上記記載は,の営業上の信用を害するものであると認められる。RBC
(ウ)よって,上記記載(2)を含む本件文書2を送付したの行為は,不KCS
正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に当たる。そして,上記記載
(2)の内容,告知流布の態様等を考慮すれば,上記不正競争が少なくとも過
失に基づくものであることが優に認められる。
(3)争点3(本件文書3の送付は不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争
に該当するか)について
ア記載(1)(貸出君『ミスターアドヴァンス』は,全国で500社近く「(『』,)
のユーザ様でお使い頂いている)の虚偽性」
(ア)本件文書3(別紙6記載の「商標権侵害会社のお知らせ」と題する文
書)は,が平成15年12月4日にとの競合取引先多数及びファY1RBC
イナンス会社多数に対して送付したものであるところ,本件文書3を受け取
った者は,本件文書3の記載(1)は「が『ミスターアドヴァンス』とKCS
いう名称のソフトウェアを販売しており,その販売先は500社に上る」こ
とを意味していると認識するものと認められる。
(イ)しかし,が平成15年12月4日以前に「ミスターアドヴァンKCS
ス」という名称のソフトウェアを販売した事実を認めるに足りる証拠はない。
したがって,本件文書3の記載(1)は虚偽であり,また,は平成1RBC
5年11月ころまで「ミスターアドバンス」の名称のソフトを販売していた
から(当事者間に争いがない。なお,の商標登録時までのの上KCSRBC
記販売行為自体はの商標権を何ら侵害するものではなく,かつ,前記KCS
のとおり著作権を侵害するものでもない,同記載(1)は,の営業上。)RBC
の信用を害するものであると認められる。
(ウ)よって,上記記載(1)を含む本件文書3を送付したの行為は,不KCS
正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に当たる。そして,上記記載
(1)の内容,告知流布の態様等を考慮すれば,上記不正競争が少なくとも過
失に基づくものであることが優に認められる。
イ記載(2)(貸出君『ミスターアドヴァンス』は弊社にて開発,販売を「(『』,)
行っており著作権を有し)の虚偽性」
(ア)本件文書3を受け取った者は,本件文書3の記載(2)は「が『ミKCS
スターアドヴァンス』を開発し販売しており,その著作権を有している」こ
とを意味していると認識するものと認められる。
(イ)しかし,が平成15年12月4日以前に「ミスターアドヴァンKCS
ス」を開発し販売した事実を認めるに足りる証拠はない。また「ミスター,
アドバンス」を含むRBCプログラムが,の元従業員がを退職KCSKCS
後にのために開発し作成したものであることは,既に認定説示したとRBC
おりであり,は「ミスターアドバンス」について著作権を有していKCS,
たことはない。
(ウ)したがって,本件文書3の記載(2)は虚偽であり,また,は平成RBC
15年11月ころまで「ミスターアドバンス」の名称のソフトを販売してい
たから(当事者間に争いがない,同記載(2)は,の営業上の信用を。)RBC
害するものであると認められる。
(エ)よって,上記記載(2)を含む本件文書3を送付したの行為は,不KCS
正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に当たる。そして,上記記載
(2)の内容,告知流布の態様等を考慮すれば,上記不正競争が少なくとも過
失に基づくものであることが優に認められる。
ウ記載(3)(この建機・仮設資材レンタル業向けアプリケーションソフトウェ「
アの商標が下記会社に侵害されております)の虚偽性。」
(ア)本件文書3の記載(3)は「…弊社の建機・仮設資材レンタル業向けアプ,
リケーションソフトウェア『貸出君『ミスターアドヴァンス』は,全国で』,
500社近くのユーザ様でお使い頂いているコンピューターソフトウェアで
す『貸出君『ミスターアドヴァンス』は弊社にて開発,販売を行ってお。』,
り著作権を有し,商標登録しております。この建機・仮設資材レンタル業向
けアプリケーションソフトウェアの商標が下記会社に侵害されております。
…商標権侵害会社株式会社アールビィシィ…」という文脈の中で記載され
ているから,本件文書3を受け取った者は,本件文書3の記載(3)は,少な
くとも「が,本件登録商標に対してが有する商標権を侵害してRBCKCS
いる」ことを意味していると認識するものと認められる。
(イ)確かに,は,本件登録商標(ミスターアドヴァンス/MISTKCS「
ERADVANCE」の文字から成る商標)について,平成15年4月2
3日に商標出願を行い,本件登録商標は同年11月21日に商標登録された
ものであるところ,証拠(乙21)及び弁論の全趣旨によれば,は,RBC
同月26日ころ,朝日リース株式会社に対し「Mr.Advance」の,
標章を付したシステム提案書を提示したことが認められるから,は本RBC
件登録商標に対しての有する商標権を侵害したもののようにも見える。KCS
(ウ)しかし(甲24∼28)及び弁論の全趣旨によれば,は,本件,RBC
文書2が出回っていることを知り,平成15年10月20日ころインターネ
ットで商標登録の出願・登録状況等について調査したところ,が本件KCS
登録商標について商標出願中であることを知り,弁理士の指導を受け,同年
11月1日以降「ミスターアドバンス」の標章の使用を中止する方針をとり,
「建機・仮設レンタルシステム(甲24,26「建機レンタル業向け販」),
売管理システム(甲25「リース・レンタルシステム(甲27,28)」),」
の標章を使用するようになったこと,しかし「ミスターアドバンス」標章,
の使用中止の方針が充分に徹底されていなかったため,上記システム提案書
RBCKを提示してしまったことが認められ,これにより,は,過失により
の上記商標権を侵害したものであることは否定できない。CS
他方,は,本件登録商標について商標出願を行った平成15年4月KCS
23日以前に「ミスターアドヴァンス」ないし「ミスターアドバンス」の名
称の商品を販売したことはなかったし,そのような名称の商品の販売計画も
なかったこと,は同年3月に「ミスターアドバンス」の名称でRBCRBC
ソフトの販売を開始したこと,は,同月29日付けで,との競KCSRBC
合取引先多数に対して「が懲戒解雇をした社員がを設立し,,KCSRBC
はの著作権及び商標権を侵害している」ことを意味する記載をRBCKCS
含む本件文書1を送付したこと,以上の事実に照らせば,が本件登録KCS
商標について商標出願をしたのは,もっぱら,によるRBCソフトのRBC
販売活動の妨害を目的としたものと推認することができ,この推認を左右す
るに足りる証拠はない。
以上の事実を併せ考慮すれば,がに対し,本件登録商標に係KCSRBC
る商標権に基づく権利主張をすることは,権利の濫用に当たり,許されない
ものというべきである。
しかして,本件文書3の記載(3)は,がに対して本件登録商KCSRBC
標に係る商標権に基づく権利主張をすることが許されないにもかかわらず,
これが許されることを前提としてされたものであるから,同記載は虚偽の事
実を記載したものというべきであり,同記載がの営業上の信用を害すRBC
るものであることは明らかである。
(エ)よって,上記記載(3)を含む本件文書3を送付したの行為は,不KCS
正競争防止法2条1項14号所定の不正競争に当たる。そして,上記記載
(3)の内容,告知流布の態様等を考慮すれば,上記不正競争が少なくとも過
失に基づくものであることが優に認められる。
(4)争点4(のリコーリースP2に対する発言は不正競争防止法2条1項1Y1
4号所定の不正競争に該当するか)
ア発言内容
証拠(甲6の1・2)及び弁論の全趣旨によれば,は,平成15年12Y1
月12日,リコーリース名古屋支社を「商標権侵害会社のお知らせ(甲3の」
1)及び「警告書(甲3の2)の写しを持参して同社のP2を訪問したが,」
RBC同人が不在であったため,後刻電話で同人に対し「①日成工業所は,,
のソフトが稼動できず機械が使用できる状態でないにもかかわらず,リース料
金を支払っている。②日成工業所は,がソフトウェア稼動に係るフォRBC
ローを全く行っていないため,非常に立腹していた。③そのようなことは至る
ところで発生しており,ある客先では,リース会社と同行の上契約検収を行い,
リース会社が帰った後に機器を持ち帰りその後納品を行わないという詐欺のよ
うな販売を行っている」旨告げたことが認められる。。
イ発言内容の虚偽性
,(ア)上記①については,前記2(1)ウ認定のとおり,日成工業所においては
平成15年12月1日からのシステムを本格稼動している。したがっRBC
て,上記①は事実と異なる。
(イ)上記②については,証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば,日成工業
所は,平成15年12月15日付けで,リコーリースに対し「同年3月に,
のシステムを導入し,10月に最後のテストを完了,11月から本稼RBC
動を始めた。今後も十分に活用することはもちろん,とも長いお付きRBC
合いをするつもり」旨の手紙を出していることが認められる。したがって,
上記②は事実と異なる。
(ウ)上記③については,平成15年12月12日当時,のソフトが稼RBC
動できず機械が使用できる状態ではなかったということ,がソフトウRBC
ェア稼動に係るフォローを全く行っていないということ,このような事態が
至るところで発生していたことを認めるに足りる証拠はない。このことに弁
論の全趣旨を併せると,上記③も事実と異なるものと認められる。
(エ)上記①ないし③の発言は,いずれの営業上の信用を害するものでRBC
あることが明らかである。
ウ小括
したがって,の上記アの発言は,不正競争防止法2条1項14号所定のY1
不正競争に当たる。そして,上記発言の内容,告知の態様等を考慮すれば,上
記不正競争が少なくとも過失に基づくものであることが優に認められる。
(5)争点5(従業員の中村建機P3に対する発言は不正競争防止法2条1KCS
項14号所定の不正競争に該当するか)について
ア発言内容
証拠(甲9)及び弁論の全趣旨によれば,の営業担当社員P6は,KCS
平成16年1月6日,中村建機代表取締役のP3を訪問し,同人に対し「①,
のユーザーではトラブルばかりで,稼動しているところはまだない。RBC
,特に広島の顧客は未だに稼動していない。②が納入しているソフトはRBC
にあった「貸出君」を持ち出し,修正を加えて販売している。著作権KCS
はにあるので,今後使えなくなる。③へ行った元社員は,退職KCSRBC
時に書類などを持ち出していった。④のらが,在職中に中古機等RBCX2
のアルバイト的なことを行っていた」旨告げたことが認められる。。
イ発言内容の虚偽性
(ア)上記①については,前記2(1)ウ認定のとおり,平成16年1月6日当
時は既に,ベストレンタル,鈴建輸送,日成工業所,長浜産業,興南機械及
び中村建機においてのシステムは稼動中であった。また,証拠(甲1RBC
RBC0)及び弁論の全趣旨によれば,平成16年1月現在,広島における
の顧客は,長浜産業1社のみであったこと,長浜産業はの対応に満足RBC
していることが認められる。したがって,上記①は事実と異なる。
(イ)上記②については,RBCプログラムが「貸出君」プログラムの著作権
を侵害するものではないこと,また,RBCプログラムはの元従業員KCS
が在職中に作ったものではなく,がその著作権を有するものでKCSKCS
ないことは,前記認定のとおりである。したがって,上記②は事実と異なる。
(ウ)そして,上記①及び②は,いずれもの営業上の信用を害するものRBC
であることが認められる。他方,上記③及び④は,いずれも発言内容に具体
性を欠き,の営業上の信用を害する事実の告知とまでは認められない。RBC
ウ小括
以上によれば,従業員P6の上記ア①及び②の発言は,不正競争防止KCS
法2条1項14号所定の不正競争に当たる。そして,上記発言の内容,告知の
態様等を考慮すれば,上記不正競争が少なくとも過失に基づくものであること
が優に認められる。
(6)争点6(従業員の川嶋機械工業所P4に対する発言は不正競争防止法KCS
2条1項14号所定の不正競争に該当するか)について
ア発言内容
証拠(甲11の1∼3)及び弁論の全趣旨によれば,の従業員であるKCS
P7及びP6は,平成16年3月31日ころ,川嶋機械工業所を訪問し,同社
のP4に対し「については社員がどんどん退職しており,人手不足の,RBC
状態である。あの会社はいつまで続くかわからないのでメンテに問題がある。
とは(取引を)止めておいた方がよい」旨告げたことが認められる。RBC。
イ発言内容の虚偽性
上記発言は,退職者の数や割合,人手不足により現実にメンテナンスにおい
て生じた支障等,具体的な事実の告知を伴うものでないから,の営業上RBC
の信用を害する虚偽の事実の告知とまでは認められない。
ウ小括
よって,従業員P7及びP6の上記アの発言は,不正競争防止法2条KCS
1項14号所定の不正競争に当たるとはいえず,かつ,民法709条の不法行
為を構成するともいえない。
(7)争点8(の被った損害の額)についてRBC
ア営業上の損害
(ア)証拠(甲93∼95,98)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認
められる。
aは,センターリースとの間で,平成15年12月8日,RBCソRBC
フト等の売買契約を代金302万円(内訳ハード92万円,ソフト21
0万円)で締結した。また,同契約においては,リース会社を尼信リース
とすることが合意され,尼信リースは,に対し,同月15日,上記RBC
物件を同額で買い受ける旨の注文書を発行した。
ところが,は,第1事件の訴え提起後,センターリースから,上RBC
記契約を解消された。
bは,友清商店との間で,平成15年12月中旬ころ,RBCソフRBC
ト等の売買契約を代金290万円(ハード50万円,ソフト240万円)
で締結した。また,同契約については,九州リースに対し,ファイナンス
の申込みをした。
は,第1事件の訴え提起後,友清商店から,上記契約を解消されRBC
た。
(イ)上記認定事実によれば,は,センターリース及び友清商店との間RBC
Kの上記各契約を第1事件の訴え提起後に解消されたものであるが,それが
による本件文書1ないし3の送付等,前記認定の不正競争ないし不法CSら
行為によるものであるとの点は,本件全証拠をもってしても認めるに足りな
い。すなわち,本件においては,上記各契約が解消されたことやその理由に
関する証拠(例えばセンターリースや友清商店が上記各契約が解消した理由
を記載した解除通知書や陳述書等)が提出されていないところ,上記契約が
解消される理由としてはの債務不履行,信用不安その他種々の理由がRBC
考えられるところであり,上記証拠が提出されていない状況の下においては,
契約解消の理由がこれらの理由ではなく,による前記不正競争に起KCSら
因するものとは断定できない。
そうすると,が被ったと主張する上記各契約の解消に伴う営業上のRBC
損害は,による前記不正競争と相当因果関係のあるものとの立証がKCSら
されていないことになるから,同損害の賠償を求めるの請求は理由がRBC
ない。
なお,は,の上記不正競争により,上記2社とは別に,別RBCKCSら
紙7「損害一覧表」記載のとおり,A社ないしC社から合計2693万円の
商談を解消され,2541万7000円の営業上の損害を被った旨主張する。
しかし,A社ないしC社が具体的にどこを指すのかが明らかでないことはさ
ておくとしても,は,A社ないしC社との各契約内容のほか,同各RBCら
契約がの上記不正競争によって解消されたものであることについて,KCSら
何ら証拠を提出せず,上記事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,
A社ないしC社に係る上記損害の賠償を求めるの請求も理由がない。RBC
イ無形損害
本件文書1ないし3の送付先及びその数,記載内容,等の前記発言の内Y1
容に加え,弁論の全趣旨を併せ考慮すれば,は,による前記不RBCKCSら
正競争により,営業上の信用を害されたことが優に認められ,かつ,多数の取
引先及び多数のファイナンス会社に釈明,善処を求めることに忙殺されたこと,
その他上記行為により,業務遂行上多大な支障が生じたものと認められる。
上記事実その他本件に顕れた事情を総合考慮し,なお,後記(8)のとおり,
本件では不正競争防止法14条所定の信用回復措置が執られることをも併せ考
慮して,がの不正競争等により被った無形損害は200万円をRBCKCSら
下らないものと認められる。
ウ弁護士費用
の不正競争等により,は本件訴訟を提起せざるを得なかったKCSらRBC
こと,その他本件訴訟の経緯等に照らすと,弁護士費用相当損害金として20
万円を認めるのが相当である。
エの損害RBC
の不正競争等によってが被った損害の額は,上記イ及びウのKCSらRBC
合計220万円となる。そして,前記不正競争等のうちが直接の行為主体Y1
となっていないもの(本件文書1及び2の送付,従業員による虚偽の事KCS
実の告知)についても,の取締役社長であるが関与していたものとKCSY1
推認されるから,による前記不正競争については,及びがKCSらKCSY1
連帯して上記220万円の損害賠償義務を負うものというべきである。
(8)争点9(不正競争防止法14条所定の信用回復措置の要否)について
の上記一連の不正競争は,虚偽の事実を告知ないし流布することによKCSら
RBCRBCり,競争関係にあるの営業上の信用を害するものである。ただし,
が謝罪文の送付を請求しているのは,本件文書3のみについてであるところ,そ
の内容は,受け手をして,①が「ミスターアドヴァンス」という名称のソKCS
フトウェアを販売しており,その販売先は500社に上ること,②が「ミKCS
スターアドヴァンス」を開発し販売しており,その著作権を有していること,③
が,本件登録商標に対してが有する商標権を侵害していることをそRBCKCS
れぞれ意味していると認識させるものである。しかし,上記事実はいずれも虚偽
であり,とりわけ「ミスターアドヴァンス」なる商品名はが創案し,そのRBC
プログラムはが作成したものであるにもかかわらず,においてそのRBCKCS
販売実績もないのに販売先が500社にも上るとか「ミスターアドヴァンス」,
の著作権を有するとか,に対し商標権の行使が権利濫用となり認められなRBC
いのにが「ミスターアドヴァンス」なる登録商標の商標権を侵害するなどRBC
と事実無根の内容を告知又は流布したものであり,その内容及び告知流布の態様
等に照らせば,がに対し無形損害に基づき上記金額の損害賠償請RBCKCSら
求権が認められるとしてもそれによる信用回復の程度は十分とはいい難いから,
の信用を回復するため,に対し別紙2記載の謝罪文の送付を命じRBCKCSら
る必要があると認められる。
(9)結論
以上によれば,の第1事件に係る請求は,に対し,不正競争防RBCKCSら
止法4条及び民法709条に基づく損害賠償(無形損害及び弁護士費用相当損
害)として220万円及びこれに対する第1事件の訴状送達の日の翌日である,
は平成16年2月6日から,は同月7日から,各支払済みまで民法所KCSY1
定の年5分の割合による遅延損害金の支払及び不正競争防止法14条に基づく信
用回復措置を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないか
らこれを棄却する。また,の第2事件及び第3事件に係る請求は,いずれKCS
も理由がないから棄却する。
よって,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官田中俊次
裁判官西理香
裁判官高松宏之は,転任のため署名押印することができない。
裁判長裁判官田中俊次

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