弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破毀する。
     本件を東京高等裁判所に差戻す。
         理    由
 弁護人小玉治行の上告趣意第五点及び弁護人島田武夫、小玉治行、平尾東策、亀
山慎一の上告趣意第三点、第八点、並に弁護人鍛治利一の上告趣意第五点について。
 原判決はその理由のなかで、被告人は昭和二三年四月二日D方に同人の病気見舞
旁々立寄つたところ、同人不在であつたため同家応接間で同人の事実上秘書同様の
事をして居り且知合のAと会談する裡、談期せずして政治上の問題に言及した際右
Aに対し「C君一派の日本自由党七、八名は終いには行くところがなくなつて仕舞
う、此際親父(Dの事)が口を利いて民主自由党に復帰する様にしたらよいではな
いか、そうすれば彼等の面目も立つではないか云々」等の意見を開陳しかつ暗に右
代議士C等の民主自由党え加盟斡旋方についてDに対する伝言方を慫慂し因て右A
をしてDの静養先において同人に其の旨伝言させ以て政治上の活動をしたものであ
ると判示している。そこで原判決が右判示事実を認定した挙示の証拠の一つである
原審第五回公判における証人Aの供述を原審記録について調べると次の通りである。
 裁判長は証人Aに対して「証人は検事に対し四月二日D邸でBが残留組はこの儘
では困るから、Dに復党方の口を利いて貰う様に頼んでくれと申したのに対し、証
人はそれは駄目だろうと云つたら、Bは君までその様なことを云つては駄目ではな
いかと云つて、伝言方をBが証人に頼んだ様に申して居り、法廷ではその時の話は
四角四面の話ではなくBは頼んだのではないが、私はその様なことをDにおせつか
いに伝えたと申しているが、これでは検事廷の証言と法廷の証言では全然違うでは
ないか」と尋ねたところ、右Aは「事実は法廷で証言した通りであります」「おや
ぢでも口を利いたらいゝではないか、そうすればC等の面目も立つと云う話をした
のでそれで私はおやぢに話して見ようと云う気になつたのです」と述べた。(記録
七六八丁)。次に右Aは検察官の尋問に対し「検事廷の証言は嘘という訳ではない
が、公判廷で申したことが正しいのであります」「公判廷の証言は検事廷の証言と
骨子に於ては相違ないということであります」と答えた。(記録七七〇丁)そこで、
裁判長は右証人の意見にも拘らず同人に対し「再度訊ねるが証人は検事廷と法廷に
於ては全然違う様に証言して居るが、只今検事廷も法廷も同じである様なことを申
しているがどうか」と念を押したところ右Aは「検事廷ではあゝだこうだと訊ねら
れて種々申上げている中にあの様な調書になつたのですが、検事廷でもあの通りに
申したのではなく結局種々申している中にあの様な文章にされたのであり、法廷で
申したことが正しいのであります」(記録七七一丁)と述べたのである。
 以上尋問の経過を見ると原審第五回公判におけるAの供述は結局原判決が証拠と
して挙示する第一審第三回公判における同人の供述を裏付けしたに帰するのである。
 然るに原判決には前記第五回公判における同人の供述は証拠として次の通りに摘
録されている。
 「検事廷ではあゝだこうだと訊ねられて種々申上げている中にあの様な調書にな
つたのですが、検事廷ではあの通り申したのではなく結局申している中にあの様な
文章にされたのであり法廷で申した事が正しいのであります(記録七七一丁)然し
検事廷における証言は別に嘘を申し上げたという訳ではないのであります、只骨子
においては違いがないと思うのであります、(七七〇丁)兎に角四月二日D邸でB
がC等の残留組はこの儘では困るからDに復党方の口を利いて貰う様に頼んで呉れ
と申したかどうかについてはBから伝えて呉れとは申しませんが親父でも口を利い
たらいゝではないかそうすればC等の面目も立つという趣旨にとれる話をしたので
夫れで自分は親父に話して見ようという気になつたのであります(記録七六八丁)
との旨の供述」
右原判決摘録のAの供述は、前掲原審記録の丁数で明なように、右Aが原審第五回
公判で尋問に応じて陳述した順序(記録丁数、七六八、七七〇、七七一)とは逆(
丁数七七一、七七〇、七六八)になつていて、その間右Aの「検事廷における証言
は別に嘘を申し上げたという訳ではないのであります、只骨子においては違がない
と思うのであります」。という陳述を挿入している。しかしこの陳述は同人が実験
した事実でも実験した事実によつて推測した事項でもなく(旧刑訴第二〇六条)、
同人の意見の表示に過ぎないものであつて、証拠にとれないものである。両者が相
違しているか否かは裁判所が裁断するところである。仍て裁判長は最後に此の点を
指摘し再度尋ねたのであつた。然るに原判決はその証拠説明中にかような証人の意
見に過ぎない陳述をも挿入しそれを「然し」という言葉で接続して、その前後の供
述の順序を変えて、記録に現はれた供述とは違つた趣旨の摘録をしている。原審第
五回公判で裁判長自らも前後二回に亘つて「全然違う」と云つた「法廷におけるA
の証言」即ち原判決が証拠として挙示する第一審第三回公判調書中におけるAの供
述及び前記原審第五回公判における同人の供述と「検事聴取書中における同人の供
述」とは互に相反する証拠である。前者は被告人BがC代議士等の民主自由党えの
加盟斡旋方の伝言を証人Aに頼んだのではないという事実であり、後者は右加盟斡
旋方の伝言を証人Aに頼んだという事実である。かゝる相容れない事実から、「B
が暗に(Aに)伝言方を慫慂し因て(Aをして)その旨伝言させた」と判示事実を
積極的に認定したのは証拠上の理由において齟齬あるものと言はなければならない。
 従つて論旨はその理由があつて原判決は破毀を免れない。
 よつて爾余の論旨に対する判断を省略し刑訴施行法第二条旧刑訴法第四四七条同
第四四八条ノ二に従い主文の通り判決する。
 右は裁判官全員の一致した意見である。
 検察官 長谷川瀏関与
  昭和二四年六月一三日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
 裁判官穂積重遠は出張につき署名押印することができない。
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義

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