弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主       文
被告人Aを懲役2年に,被告人Bを懲役1年6月に各処する。
被告人Bに対し,この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予する。
         理       由
(罪となるべき事実)
被告人Aは,平成10年6月1日から平成13年9月30日までの間,長野
市・・・に事務所を置く財団法人C協会連合会の専務理事として,同連合会の会務
全般を掌理し,金銭の出納管理等の業務に従事していたもの,被告人Bは,平成1
0年4月1日から平成12年3月31日までの間,同連合会参事・経理部長兼経理
課長,同年4月1日から平成13年5月31日までの間,同連合会嘱託職員・参
事・経理部長としてそれぞれ勤務し,同連合会の経理事務全般を統括するととも
に,金銭の出納管理等の業務に従事していたものであるが,
第1 被告人両名は,共謀の上,同連合会のために管理していた同市・・・株式会
社D銀行a支店に開設の同連合会の普通預金口座(財団法人C協会連合会一般会計
会長E名義)の預金を払い戻して横領しようと企て,別紙犯罪事実一覧表記載のと
おり,平成12年4月12日から平成13年3月27日までの間,前後9回にわた
り,現金合計893万3496円を払い戻し,これをそれぞれ同連合会のため業務
上預かり保管中,いずれもそのころ,上記連合会事務所において,自己らの用途に
充てる目的で,ほしいままに着服して横領した
第2 被告人Aは,かねてから上記連合会が保有する現金300万円を業務上預か
り保管中,これを横領することを企て,平成12年5月1日,同市・・・株式会社
D銀行本店において,自己の用途に充てる目的で,ほしいままに,同現金を,情を
知らないF銀行株式会社(現G銀行株式会社)渉外業務担当員Hを介して,東京都
千代田区・・・同銀行本店営業部の被告人A名義の定期預金口座に振込入金させ,
もって横領した
ものである。
(法令の適用)
罰   条 被告人両名の判示第1の所為につき包括して刑法60条,253条
被告人Aの判示第2の所為につき刑法253条
併合罪加重 被告人Aにつき刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の重い判
示第1の罪の刑に法定の加重)
執行猶予 被告人Bにつき刑法25条1項
(量刑の理由)
本件は,財団法人C協会連合会(以下「連合会」という。)の専務理事をしていた
被告人Aと,同連合会の経理部長をしていた被告人Bとが,業務上保管していた同
連合会の金員を横領することを企て,共謀して893万円余を,被告人Aが単独で
300万円を,それぞれ横領したという事案である。
連合会は,長野県内の交通の安全と円滑のため,交通道徳の普及高揚を図るととも
に,交通秩序を確立し,交通に起因する障害の防止を図り,もって交通の健全な発
達と安全な交通社会の実現に寄与することを目的とし,交通道徳の高揚及び交通安
全に関する各種資料の刊行及び配布,交通安全のための自動車運転者等の教育訓練
等を事業内容としているものであって,歴代の長野県知事,長野県警察本部長が顧
問となってきた公益法人である。
被告人Aは,長野県警察に警察官として長く勤務し,警視正として長野県b警察署
長を歴任し,その経歴から,連合会の常勤者の中の最高責任者である専務理事に就
任していたものであり,被告人Bは,長野県警察に事務職員として長く勤務し,長
野県警察本部c課長を歴任し,その経歴から,連合会の経理担当の責任者である経
理部長に就任していたものである。
このような立場にある被告人両名は,県民からは,犯罪とは全く無縁の人物である
と信頼されていたものといえるのであって,本件各犯行の県民に与えた衝撃は大き
く,C協会加入率が1割近く減少していることにも影響しているものと見られる。
連合会のような公益を図る組織内で,業務上横領に及んだことは,私的な企業にお
ける業務上横領とは質的に異なるものがあり,厳重な処罰が要請される。
被告人両名の共謀の横領の犯行動機,態様を見ると,被告人Aは,被告人Bから連
合会の簿外資金として約1000万円の公社債投資信託が存在することを聞き,そ
れを取り崩して横領しても,発覚することはないと判断するや,この金員の横領を
企て,被告人Aからその計画を持ちかけられた被告人Bも,空席であった事務局長
になる予定者が着任してから話を決めるように提案したものの,これを拒否される
と,被告人Aの意向に沿えば,分け前が得られるものと考えてこれに応じ,普通預
金に振り替えた上,通常の経理事務を装って端数を付けて払い戻し,被告人両名で
合計893万円余を着服しているのであって,被告人両名の犯行動機に酌量の余地
は全くなく,その態様も巧妙悪質である。
また,被告人Aの単独の300万円の横領は,平成11年3月に退任した事務局長
から,簿外資金として引き継ぎを受けた現金を,これを横領しても発覚しないと考
えて蓄財のために横領したものであり,その犯行動機に酌量の余地は全くない。
従前から連合会に簿外資金が存在していたことが本件犯行を誘発した原因となった
ことがうかがえるが,簿外資金も連合会の資金であることに変わりはなく,連合会
のために活用することが要求されるものであって,被告人らが,その経歴から期待
されるものを無視し,連合会と無関係な私的な用途のために横領した本件犯行は,
悪質極まりないものというべきである。
被告人Aについて見ると,同被告人は,本件犯行を主導的な立場で敢行したもので
あり,単独犯行分を含め,合計1193万円余の内,816万円余を取得している
のであって,取得額も高額であり,その刑責を軽く見ることはできない。
そうすると,被告人Aが,本件各犯行によって取得した816万円余と,これに併
せて退職金107万円余を連合会に支払っていること,同被告人が,警察署長や,
連合会専務理事として勤務してきており,前科前歴がないこと,本件各犯行を反省
していること,持病をかかえて通院中であること,妻が更生に協力する旨証言して
いること等の事情を総合勘案しても,同被告人を実刑に処することは避けられない
ものと思料し,それらの有利な事情を考慮して,主文1項の刑に処することとす
る。
被告人Bについて見ると,同被告人は,上司である被告人Aから持ちかけられたと
はいえ,経理責任者の立場にありながら,これに応じて本件犯行に及んでおり,本
件犯行の893万円余の内377万円余を得ているのであって,その刑責は被告人
Aより軽いとはいえ,軽視することはできない。
一方,被告人Bは,本件犯行によって取得した377万円余及びこれに併せて退職
金186万円余を連合会に支払っていること,同被告人が,警察職員や,連合会経
理部長として勤務してきており,前科前歴がなく,本件犯行を反省していることな
どの事情があるので,これらを総合考慮して,主文1項の刑を量定し,同2項のと
おりその刑の執行を猶予することとする。
(求刑 被告人Aにつき懲役3年,被告人Bにつき懲役2年)
平成15年7月3日
長野地方裁判所刑事部
裁判官   青木正良

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