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平成20年6月24日判決言渡
平成20年(ネ)第10006号損害賠償等請求控訴事件
(原審東京地方裁判所平成17年(ワ)第23171号)
平成20年4月24日口頭弁論終結
判決
控訴人グレートインフォメーション株式会社
訴訟代理人弁護士工藤勇治
同田中敏夫
同西口徹
同横山康博
同安部井上
同川上詩朗
同杉浦正敏
同茶谷豪
被控訴人株式会社テレパーク
訴訟代理人弁護士柏木薫
同松浦康治
同今井浩
同柏木秀一
同福井琢
同黒河内明子
同小林利男
同古屋正典
同黒田貴和
同遠山秀
同山縣敦彦
主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人は,控訴人に対し,1億2000万円及びこれに対する平成17年
12月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被控訴人は,別紙文書内容目録記載の各内容を含む文書を頒布してはならな
い(ただし,原判決別紙文書内容目録1.に「本件特許」とあるのを「特願。,
平11−248617号及び特願2001−361236号の特許出願に係る
発明」と訂正する)。
4訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
5第2項につき仮執行宣言
第2事案の概要及び争点に関する当事者の主張
(原判決の略語表示は当審においてもそのまま用いる)。
1事案の概要
本件は,控訴人(原審原告。以下「原告」という)が,被控訴人(原審被。
告。以下「被告」という)に対し,()被告が原告の営業秘密を不正に使用し。1
た行為が原被告間の秘密保持契約等に違反するとともに,不正競争防止法2条
1項7号の不正競争行為に当たり(下記①ないし④,()被告が原告と競合す)2
るサービスを開始する意図を秘して原告の営業秘密の開示を受けた行為が不正
競争防止法2条1項4号の不正競争行為に当たるとともに,情報の詐取として
不法行為に当たり(下記⑤,⑥,()被告が原告と競合するサービスを開始す)3
る意図を秘して秘密保持契約を合意解除して業務提携交渉を打ち切った行為が
継続的な契約関係の不当な破棄として不法行為に当たり(下記⑦,()被告が)4
文書を配布して虚偽の事実を告知した行為が不正競争防止法2条1項14号の
不正競争行為に当たるとともに,原告の信用を毀損する不法行為に当たる(下
記⑧,⑨)と主張して,損害賠償金の一部として1億2000万円の支払及び
上記虚偽の事実を記載した文書の配布の差止を求めた事案である。
,()原判決は①不正競争防止法2条1項7号所定の不正競争の成否について
被告において,本件営業秘密(技術上,営業上の秘密情報)を使用したことを
認めるに足りる証拠はなく,不正競争防止法2条1項7号所定の不正競争があ
ったものと認めることはできず,この主張に基づく原告の請求は理由がない,
②(本件秘密保持契約違反の成否について)被告において本件営業秘密を使用
したことを認めるに足りる証拠はないから,被告において本件営業秘密に包含
される本件秘密保持契約(原告と被告が平成16年2月16日ころ同日付け秘
密保持契約書(甲8)によって締結した秘密保持契約)上の本秘密情報(株式
会社ココストア並びに九州コンビニエンスシステムズ株式会社におけるバーコ
ード・タッチパネルによるプリペイドカードのカードレス発券事業に関する事
業提携の可能性につき検討を行うために開示された情報)を本件被告サービス
(カードレスプリペイドサービス)のために目的外使用したことを認めること
はできず,被告が本件秘密保持契約に違反したとの主張に基づく原告の請求は
,()理由がない③原被告間の黙示の合意に基づく守秘義務違反の成否について
原被告間に,本件秘密保持契約上の本秘密情報に該当しない本件営業秘密につ
いても被告が本件秘密保持契約と同様の守秘義務に服するという黙示の合意が
成立したことを認めるに足りる証拠はなく,原被告間の黙示の合意による守秘
義務違反の主張に基づく原告の請求は理由がない,④(本件売買基本契約違反
の成否について)被告が本件売買基本契約(原被告間で平成17年2月15日
ころ,平成16年12月1日付け商品売買基本契約書(甲50)によって締結
された商品売買基本契約)上の秘密保持義務その他の義務に違反したことを認
めることはできず,本件売買基本契約違反の主張に基づく原告の請求は理由が
ない,⑤(不正競争防止法2条1項4号所定の不正競争の成否について)被告
,,による本件秘密保持契約の締結が原告の有する本件営業秘密を不正に取得し
将来自らが行う同種サービスにこれを使用することを目的としたものであると
は認めることができず,被告が架空の事業提携を持ち出し,原告から本件営業
秘密を詐取したとの不正競争防止法2条1項4号に基づく原告の主張は理由が
ない,⑥(情報の詐取としての不法行為の成否について)被告が本件営業秘密
を使用したことを認めるに足りる証拠はなく,情報の詐取による不法行為の主
張に基づく原告の請求は理由がない,⑦(継続的な契約関係の破棄としての不
法行為の成否について)被告に競業の意図があったとしても,被告が本件秘密
保持契約を原告と合意して終了させ,原告との事業提携交渉を打ち切ったこと
が違法であるということはできないから,原告の継続的契約の破棄としての不
,,法行為の主張は採用することができずこれに基づく原告の請求は理由がない
⑧(不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争の成否について)被告が平
成17年4月28日,サークルKサンクスのAに,原告による本件先行特許出
願及び本件特許出願について特許性がなく,特許査定がされる見込みがない旨
記載された本件文書(プリペイドPINデータ販売における商材・商流・ベ「
ンダー選定に関します件」と題する文書,甲10)を手渡したことは,少なく
とも本件先行特許出願について,競争関係にある原告の営業上の信用を害し得
る虚偽の事実の告知であったものと認められるが,本件先行特許出願について
は既に特許登録がされているため,特許登録される見込みがないとの本件文書
と同趣旨の記載をした文書を第三者に配布するおそれは認められず,したがっ
て本件先行特許出願に関する本件文書の頒布行為の差止請求は理由がなく,ま
た,被告による本件文書の交付が原告の営業上の利益を害し,原告に具体的な
損害を与えたものと認めることはできないから,損害賠償請求も理由がない,
⑨(信用毀損としての不法行為の成否について)被告による本件文書の交付に
よって,原告の社会的評価を低下させたとの損害を生じたことを認めることは
できない,として,原告の請求をいずれも棄却した。
原告は,原判決を不服として,本件控訴を提起した。
2前提となる事実及び本件における争点
次のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の
概要」の「1前提となる事実等」ないし「2本件の争点(原判決2頁2」
5行∼11頁1行)記載のとおりであるから,これを引用する。
()原判決9頁9行目の後に行を改めて次のとおり加える。1
「ケ請求項の数7」
()原判決10頁16行目の後に行を改めて次のとおり加える。2
「()本件先行特許権については,平成19年8月8日,株式会社ローソ8
ンが無効審判を請求したが,特許庁は,平成20年3月24日,本件先行
特許権に係る特許の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効と
するとの審決をした(乙23」)。
3争点に関する当事者の主張(当審における当事者の補足的主張を含む)。
次のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「3争点に関
する当事者の主張(原判決11頁2行∼48頁23行)記載のとおりである」
から,これを引用する。
()原判決22頁21行目の後に行を改めて次のとおり加える。1
「)本件では,原告から直接本件営業秘密の開示を受けたE自身が,被告q
によるカードレスプリペイドサービスの開始に携わっている。また,新
規事業に参入するか否かを判断するためには,売上,コスト,利益等を
試算し,市場の競争環境,新規開拓の余地などを検討するマーケティン
グ分析をしなければならないところ,その際,既に同一のサービスを開
始していて参入後は直接の競争相手となる原告の販売実績や商品別の利
益率,コンビニエンスストアチェーンとの交渉状況などを現に知ってい
ながら,これらを一切判断の材料とせずにマーケティング分析を行うこ
とはあり得ない。さらに,被告が提供しているカードレスプリペイドサ
ービスのシステムを初めから開発するには数か月の期間を要するはずで
あるところ,Eが「被告はカードレスプリペイドサービスを開始する,
平成17年春ころまで一切システム開発を行った事実はない」と証言す
る一方で,被告は,平成16年12月までにイ号システム,ロ号システ
ムを策定しており,被告がイ号システム,ロ号システムを策定すること
ができたのは,本件営業秘密を目的外に使用したためである。これらの
事情に照らすと,仮に,本件営業秘密が,それらを使用しなければ被告
が提供しているカードレスプリペイドサービスを構築することが絶対に
不可能であるというものではないとしても,被告が本件営業秘密を被告
が提供するカードレスプリペイドサービスのために使用したことは明ら
かである」。
()原判決28頁20行目の後に行を改めて次のとおり加える。2
「)原告は,本件営業秘密の内容を具体的に特定していないし,本件営業q
秘密の開示を受けたEらの本件営業秘密の使用行為につき何ら具体的な
事実を主張していない。
Eは「被告はカードレスプリペイドサービスを開始する平成17年,
春ころまで一切システム開発を行った事実はない」と証言したことはな
く「サーバ開発前にイ号システム及びロ号システムを設定した」旨を,
述べたにすぎない。イ号システム及びロ号システムは,シンプルな仕組
みであって,当業者であればこれを容易に設定することができる。被告
は,原告から得た何らかの秘密情報又は営業秘密を使用してイ号システ
ム及びロ号システムを設定したものではない」。
()原判決37頁18行目の後に行を改めて次のとおり加える。3
「)サークルKサンクスがカードレスプリペイドサービスを開始するに当g
たり,既に導入していたウェルネット社の「ケータイ決済」のシステム
を利用することは当初から決定されていたことであり,それ自体は,P
INコードの仕入窓口を被告に一本化することの理由とはならない。そ
して,サークルKサンクスと原告の関係は良好であったこと,PINコ
ードの仕入窓口を被告に一本化することは被告の利益にはなるがサーク
ルKサンクスの利益にはならないこと,サークルKサンクスは携帯電話
のPINコード以外の商材の仕入先を原告にする旨決めていたことから
すると,PINコードの仕入窓口を被告に一本化する話は,サークルK
サンクスの方から被告に持ちかけたものではなく,被告が原告を外して
利益を独占するためにサークルKサンクスに働きかけたことによるもの
である。
Fは原告の担当者として被告との窓口業務を行っており,退職前に被
告に開示された営業秘密をすべて知っていた。Fは契約社員として被告
に雇用され,契約社員の採用権限はEが有していたこと,Fは被告への
入社後短期間内に正社員になったこと,被告がFの採用を原告に秘匿し
ていたことに照らすと,被告は,EがFに対して被告への入社を勧誘し
た平成16年9月の時点で,カードレスプリペイドサービスを開始する
意図を有していたものである。したがって,被告が平成16年9月以降
原告から情報の開示を受けたことは,情報の詐取に当たる」。
()原判決40頁7行目の後に行を改めて次のとおり加える。4
「)原告代表者とサークルKサンクスの担当者であるAとの間に密接な関e
係があったとしても,サークルKサンクスと原告の関係が良好であった
とは直ちにはいえない。PINコードの仕入窓口を被告に一本化するこ
とは,サークルKサンクスの利益にもなることであり,また,サークル
Kサンクスが携帯電話のPINコード以外の商材を原告から仕入れるこ
ととは関係がない。
原告がFが知っていたと主張する原告の営業秘密は特定されていない
し,被告がFを正社員でなく時給制の契約社員として雇用したことは,
被告が原告の情報を詐取する目的でFを雇用したことと相容れないか
ら,被告が,Fに被告への入社を勧誘した平成16年9月の時点でカー
ドレスプリペイドサービスを開始する意図を有していたことはない。
(),被告が平成16年9月以降に原告から開示を受けた情報甲28は
単に,原告と被告が事業提携を行うこととなった場合に予定される将来
の費用・収益の分配条件を商品別に示したものであり,原告が被告に対
して原告の希望を告知・提案したものにすぎず,上記情報の内容及び送
付の趣旨に照らせば,被告がこれを取得したことにより不法行為が成立
することはない。
Fが被告に入社したのは平成16年11月1日であるが,正社員とな
ったのは1年8か月後の平成18年7月1日付けであり,所定の手続に
沿ってFの能力と資質を評価した結果,Fは被告の正社員となったもの
である。
Fは,カードレスプリペイドサービスのシステム開発ではなく営業に
携わっていたにすぎず,また,原告が被告に開示した情報はもともと限
られたものであった」。
()原判決40頁10行目の冒頭に「)」と加える。5a
()原判決40頁24行目の後に行を改めて次のとおり加える。6
「)被告は,既に単独でカードレスプリペイドサービスを開始していた原b
告に共同事業を持ちかけ,ほぼ一方的に情報の開示を受け,見込み顧客
に対して共同事業であることをアピールして営業活動を行っていた。と
ころが,被告は,本件秘密保持契約の効力が存続し,サークルKサンク
スに対して共同事業として売り込みを行っている最中であるにもかかわ
らず,原告に何ら断ることなく,サークルKサンクスに対してカードレ
スプリペイドサービスを採用させるための交渉を行っており,カードレ
スプリペイドサービスに関する事業を開始していた。そして,被告は,
サークルKサンクスから,PINコードの仕入窓口を被告に一本化する
という連絡を受けると,それを秘した上で原告に本件秘密保持契約の終
了を持ちかけ,原告との事業提携交渉を打ち切った。被告は,サークル
Kサンクスから単独でPINコードの仕入を受注できなければ原告との
共同事業を継続しようとする意図を有していたため,カードレスプリペ
イドサービスを開始する意思をもった後も直ちには本件秘密保持契約を
終了することはなかった。被告は,単独で受注できるという確信を得た
,。,後になってようやく本件秘密保持契約を終了させるに至った原告は
仮にこのような事情を知っていたならば,本件秘密保持契約の終了に合
意することはなかった。
原告と被告の継続的な契約関係は,本件秘密保持契約書に定められた
「株式会社ココストアならびに九州コンビニエンスシステムズ株式会社
におけるバーコード・タッチパネルによるプリペイドカードのカードレ
ス発券事業」に関する「事業提携の可能性につき検討を行うこと」とい
う目的を超えて,ココストアについては本件売買基本契約を締結し,サ
ークルKサンクスにも共同で売込みをしていた。このような経緯に照ら
すならば,本件秘密保持契約は,被告が競業行為を行わない趣旨と解す
るのが自然であり,終了後3か月が経過すれば,当然に本件営業秘密を
自由に使用して単独で競合事業を始めることが許される趣旨と解するこ
とはできない。したがって,被告が本件秘密保持契約を発端とする継続
的契約関係を破棄してカードレスプリペイドサービスを開始した行為
は,不法行為を構成する。
被告は,原告のビジネスに関心があるように装って共同事業を持ちか
けておきながら,他方で自ら単独で同一のビジネスを計画し,原告から
情報を取り,更には担当者も引き抜くなどして準備を整えた上で,その
事実を秘したまま共同事業を一方的に破棄した。しかも,共同事業を破
棄するや,それまで一緒に営業活動を行っていたサークルKサンクスに
虚偽の本件文書を送るなどして被告の信用を毀損したものであり,被告
の一連の行為は,ビジネスの世界における信義誠実の原則を逸脱するも
のである。
()原判決40頁26行目の冒頭に「)」と加える。7a
()原判決41頁7行目の後に行を改めて次のとおり加える。8
「)本件秘密保持契約は競業避止義務を当事者に課していないから,被告b
がカードレスプリペイドサービスを開始することは,不法行為を構成し
ない」。
()原判決42頁15行目の後に行を改めて次のとおり加える。9
「)本件文書を被告から交付されたサークルKサンクスがその内容を鵜呑c
みにすることがなかったとしても,本件文書は,一見して虚偽であるこ
とが明らかなものではなく,弁理士による鑑定書を引用したもっともら
しいものであって,本件文書を被告から交付されたサークルKサンクス
も,原告に対する疑念を生じ,原告に対して事実確認をしたから,被告
が本件文書をサークルKサンクスに交付したことにより,原告の営業上
の利益は害され,原告に具体的な損害が生じた。
本件文書に記載された事項は,本件先行特許出願及び本件特許出願の
登録可能性に関するものであり,被告が弁理士に依頼して作成した鑑定
書の鑑定事項である,イ号システム,ロ号システムがそれらの出願に係
る発明の技術的範囲に属するか否かということとは無関係である」。
()原判決43頁25行目の後に行を改めて次のとおり加える。10
「)本件文書の主眼は,特許出願をしていることを理由に原告に対して便d
宜を図る必要はないという結論部分にあること,本件文書は,原告が特
許出願の存在を理由にサークルKサンクスに対して行っていた営業上の
働きかけに対する牽制として交付されたものであること,本件文書は,
イ号システム及びロ号システムが本件先行特許出願に係る発明の技術的
範囲に属さないという弁理士の意見書を前提として作成されたこと,本
件先行特許出願に係る特許については,設定登録がされたが,進歩性が
ないとの理由で無効審決がされたことからすれば,本件文書に記載され
た事実は,原告の営業上の信用を害するおそれがあるということはでき
ない。また,サークルKサンクスのAから本件文書の内容について真偽
を尋ねられた原告代表者が,Aに対し,それが真実でない旨を説明し,
99.9%という数字などについて互いに笑ったというのであるから,
被告が本件文書を原告に交付したことによって原告に具体的な損害が発
生したことはない」。
第3当裁判所の判断
当裁判所も,原告の本訴請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判
断する。
その理由は,次のとおり訂正付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄
の「第3当裁判所の判断(原判決48頁24行∼64頁11行)に記載の」
とおりであるから,これを引用する。
1()原判決55頁14行目の後に行を改めて次のとおり加える。1
「もっとも,Eは,原告から本件営業秘密の開示を受けた後の時期に本件
被告サービスの開始に携わっていた(乙17,22,証人E。また,一)
般的に,新規事業に参入するか否かを判断するために,売上,コスト,利
益等を試算し,市場の競争環境,新規開拓の余地などマーケティング分析
をする場合のあることは否定し得ない。
しかし,前記のとおり,本件営業秘密中の営業に関する情報のうち,契
約条件や商品別販売手数料率・利益率などの情報は,契約の当事者により
変動するものであり,また,原告は既にカードレスプリペイドサービス事
業を開始しているのに対し,被告は事業への参入の可否を検討している段
階であって状況が異なることや,原告と被告とでは,会社の規模,経営状
態,経済的環境,顧客との関係,事業展開の予定等において大きく異なる
などの諸事情を考慮すると,原告の販売実績や商品別の利益率,コンビニ
エンスストアチェーンとの交渉状況などの情報は,それ自体が,被告にと
って,マーケティング分析を行う際に,常に必要な情報であるとまで解す
ることはできない。
上記の事実,及び被告が,既に,カードレス方式ではないもののプリペ
イドサービス事業を実施して,ある程度の知識経験を持っていたものと考
えられることに照らすならば,原告から本件営業秘密の開示を受けたEが
本件被告サービスの開始に携わることによって,原告の販売実績や商品別
の利益率・コンビニエンスストアチェーンとの交渉状況などを知ったとし
ても,そのような情報を活用することなく,マーケティング分析を行うこ
とは十分あり得るといえる。したがって,原告の主張は採用することがで
きない。また,被告が原告から開示された営業秘密のうち,どの部分をど
のように使用したかについていずれも具体的な主張立証があるとはいえな
い以上,被告が本件営業秘密を本件被告サービスのために使用したと認め
ることはできない。
さらに,乙5の1,2及び弁論の全趣旨によれば,弁理士による鑑定の
対象となったイ号システム,ロ号システムは,POSレジを用いたプリペ
イドサービスの構成の概要を抽象的に示したにとどまるものであり,その
内容に照らすと,当業者であれば,その作成にはそれほど多くの時間を要
しないものであると認められ,平成16年12月の時点で上記のイ号シス
テム,ロ号システムが作成されていたとしても,そのことから,イ号シス
テム,ロ号システムや,本件被告サービスに実際に使用されたシステムの
作成のために本件営業秘密が使用されたものと認めることはできない」。
()原判決58頁22行目の後に行を改めて次のとおり加える。2
「()ア前記()のとおり,被告は,平成16年12月13日ころ本件覚書32
により本件秘密保持契約を終了させる以前から,原告と事業提携する
ことなくサークルKサンクスのカードレスプリペイドサービスのPI
Nコードの仕入窓口となるために,同社と情報交換を行ったり,同社
に営業活動を行っていた。また,PINコードの仕入窓口を被告に一
本化することは,被告がPINコードの販売による利益を得られるの
で,被告にとって利益になるものと認められる。さらに,前記1()1
セのとおり,サークルKサンクスは,実際は最終的に携帯電話のPI
Nコードを被告から仕入れ,それ以外の商材を原告から仕入れること
にした。加えて,Eの証言によれば,Fは契約社員として被告に入社
し,Eが契約社員の採用権限を有していたことが認められ,Fの証言
によれば,EがFの再就職に関して最初にFと接触したのは平成16
年9月中旬以降であったことが認められる。
イしかし,被告が本件被告サービスの開始について会社として明確な
意思決定をした時期や,本件被告サービスに実際に用いられているシ
ステムの開発を行った時期は明らかではなく,それらが平成16年9
月以前であったと認めるに足りる証拠はなく,前記アの事実を考慮し
ても,被告が同月の時点で本件被告サービスを開始する意図を有して
いたことは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。した
がって,被告が平成16年9月以降原告から情報の開示を受けたこと
が情報の詐取に当たるという原告の主張は,採用することができな
い」。
()原判決58頁23行目冒頭の「()」を「()」と改める。334
()原判決59頁10行目の後に行を改めて次のとおり加える。4
「原告と被告は,カードレスプリペイドサービスの事業提携を検討するこ
ととし,平成16年2月16日,本件秘密保持契約を締結し,コンビニエ
ンスストアチェーンに同行して営業活動を行うなどし,被告は原告から本
件営業秘密の少なくとも一部の開示を受けた。しかし,被告は,平成16
年10月ころ,サークルKサンクスから,既にウェルネットがサークルK
サンクスに導入している「ケータイ決済」の仕組みを使ってカードレスプ
リペイドサービスを行うことを検討している旨の情報を取得し,その後同
年12月13日ころ本件覚書によって本件秘密保持契約を終了させるまで
の間に,原告と事業提携することなくサークルKサンクスのカードレスプ
リペイドサービスのPINコードの仕入窓口となるために同社と情報交換
を行ったり,同社に営業活動を行っていた。また,被告は,原告において
カードレスプリペイドサービスの営業を担当していたFを,平成16年1
1月1日付けで採用し,Fは,被告においてもカードレスプリペイドサー
ビス事業に関与していた。そして,原告は,上記の被告によるサークルK
サンクスに対する営業活動等やFの転職などの事情を知らされることな
く,これらの事情を知らないまま,被告との間の本件秘密保持契約を終了
させ,事業提携は成立するに至らなかった。
このような経緯に鑑みると,原告として,事業提携に対する期待が裏切
られ,被告のビジネスの進め方が原告の抱いた信頼に背くものと感じるの
は無理からぬ面があり,商道徳上,被告の行為に問題があると解する余地
のあることは否定し得ない。
しかし,本件秘密保持契約(甲8)には,その目的について,カードレ
スプリペイドサービス事業に関する原被告間の事業提携の可能性につき検
討を行う旨規定されており(第1条,本件秘密保持契約の締結により相)
互にカードレスプリペイドサービス事業を行う義務を何ら負うものではな
いことを確認する旨規定されている(5条)から,本件秘密保持契約を締
結することによって被告が事業提携をする義務を負うものではない。そし
て,その後の経緯に鑑みても,被告が事業提携をする義務を負い,また競
業避止義務を負うと認めるに足りる根拠はないし,原告の期待に反して事
業提携が成立しなくても,そのことをもって被告の違法行為と認めるに足
りる根拠はない。Fについても,原告に対して競業避止義務を負っていた
とは認められず,被告がFを採用したことについて,違法と認めるに足り
る根拠はない。したがって,この点からしても,原告の継続的契約の破棄
としての不法行為の主張は採用することができず,これに基づく原告の請
求は理由がない」。
()原判決60頁13行目から17行目を次のとおり改める。5
「ア本件文書(甲10)には,本件先行特許出願,本件特許出願の出願後
の具体的な審査状況を摘示した上で,これらの特許出願について特許査
定や設定登録がされるかどうかについて「上記2件の特許申請は,審,
査過程だけを見ても,各々拒絶通知を受け,それに対し補正を入れると
いう,極めて苦しい状況にあります。また,その補正及び意見書内容に
目を向けると,各々刊行物提出書(所謂第三者による情報提供)の存在
により,審査官の判断を待たずとも,特許性が無きものであることが誰
の目にも明白であります。また,特許事務所からは最も信頼性のある,
,,延べ100頁以上にも渡る特許鑑定書を作成して戴きその内容からも
同社の特許申請が取得は99.9%以上と表現出来る程に不可能である
こと。また,補正・意見書提出が,審査中という実態を営業に生かすた
めの時間引き延ばし策であるとの結論に至りました」と記載されてい。
る。特許査定や設定登録がされるかどうかは,特許庁による具体的な処
分等がされるまでは明らかでないから,出願の手続や内容が一見して不
適法であるような場合は別として,本件のような場合に,特許査定や設
定登録がされるかどうかについて見解を述べることは,事実を述べるも
のではなく,供述者の予想や評価を述べるものであると認められる。し
たがって,本件文書の上記部分は,本件先行特許出願,本件特許出願に
ついて特許査定や設定登録がされる可能性が乏しいという被告による予
想や評価を記載したものであり,事実を記載したものではないと認めら
れる。
ところで,本件先行特許出願については,平成18年3月17日に設
定登録がされたが(原判決第2,1(),上記のとおり,本件文書は,6)
特許査定や設定登録がされるかどうかについて,その可能性が乏しいこ
となど被告の予想や評価を記載したものにとどまるから,実際に設定登
録がされたとしても,その記載が虚偽の事実であるとは認められない。
そうであるとすると,被告が本件文書をサークルKサンクスに交付した
ことは,虚偽の事実の告知には該当しないものと認められる」。
()原判決61頁12行目から15行目を次のとおり改める。6
「しかし,前記のとおり,被告が本件文書をサークルKサンクスに交付した
ことは,虚偽の事実の告知には該当しないものと認められるから,競争関
係にある原告の営業上の信用を害し得る虚偽の事実の告知があったとは認
められない」。
()原判決61頁24行目から25行目を次のとおり改める。7
「前記のとおり,本件文書は,本件先行特許出願,本件特許出願について
特許査定や設定登録がされる可能性が乏しいという被告による予想や評価
を記載したものであり,事実を記載したものではないと認められ,本件先
行特許出願について設定登録がされたことを考慮しても,被告が本件文書
をサークルKサンクスに交付したことは,虚偽の事実の告知には該当しな
いものと認められる。しかし,仮に本件文書が,本件先行特許出願に特許
性がなく,特許取得の見込みがないとの虚偽の事実を記載したものである
として,被告が本件文書をサークルKサンクスに交付したことにより原告
に損害が生じたか否かについて,更に検討する」。
()原判決61頁26行目の冒頭の「しかし」を削除する。8,
()原判決63頁10行目から11行目にかけての「以上によれば,本件文9
書の前記記載は,本件先行特許出願については原告の営業上の信用を害し得
る虚偽の事実の告知に当たるものであるものの」との部分を「以上によれ,
ば,仮に本件文書の前記記載が,本件先行特許出願について原告の営業上の
信用を害し得る虚偽の事実の告知に当たるものであるとしても」と改める。
2結論
以上によれば,原告の被告に対する本訴請求をいずれも棄却すべきものとし
,,,た原判決は相当であり本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし
主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官飯村敏明
裁判官中平健
裁判官上田洋幸
(別紙)
文書内容目録
1.特願平11−248617号及び特願2001−361236号の特許出願
に係る発明は,審査官の判断を待たずとも,特許性が無きものであることは誰
の目にも明白である
2.原告の特許取得は99.9%以上と表現できる程に不可能である
3.原告が補正・意見書を提出しているのは,審査中という実態を営業に活かす
ための時間引き延ばし策である

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