弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各再上告を棄却する。
         理    由
 本件訴訟の原記録は、すべて滅失して現存していない。本件について再上告が申
立てられ、当裁判所が訴訟記録の送付を受け書記課でこれを保管中、全記録は何者
かに盗取されて滅失してしまつた。(本件被告人Aは、この窃盗事件の被告人とし
て起訴され、現に東京地方裁判所で審理中である)現在、当裁判所に存する記録の
主なるものは、弁護人の謄写にかゝる公判請求書並びに第一審判決書の写、第二審
判決書の認証謄本及び上告審判決書の原本と、再上告に関する弁護人提出の再上告
趣意書の副本である。しかしながら、本件は、東京高等裁判所が上告審としてした
判決に対し、旧刑訴応急措置法第一七条によつて右判決が憲法に適合しないものと
して当裁判所に更に上告をしたいわゆる再上告事件である。すなはち、本件の公訴
事実については、事実審たる第一審第二審裁判所の各審判を経て、法律審として東
京高等裁判所の審判がなされ、その判決が言渡されて同条第二項により判決の確定
した事件である。されば、本件については、憲法適否の問題を除いたその他の事実
上及び法律上の問題のすべては、東京高等裁判所の言渡した判決の既判力によつて
確定しているのである。従つて、訴訟要件はそのすべてが具備されているものと認
めなければならない。そして、当裁判所に対する再上告の提起は適式であつたので
あるから、以上、各弁護人の再上告趣意について次の通り判断する。
 被告人A弁護人岡井藤志郎、同今泉源吉、同須々木平次の再上告趣意第一点及び
同被告人弁護人岡井藤志郎同今泉源吉再上告趣意第五点について。
 第二審判決が証拠として引用している被告人Aの(一)第二審裁判所たる甲府地
方裁判所の公判廷における供述(二)第一審裁判所の第一回公判調書記載の供述(
三)検事の第一回聴取書記載の供述及び甲府地方裁判所の公判廷における(一)B、
C、D、Eの各供述(二)Fの供述並びに第一審裁判所の第三回公判調書記載のG
の供述、昭和二一年押第七五号の六として掲げられている昭和二〇年一一月一四日
附神奈川県引継物資管理部H事務官よりA総務課長宛の書面の記載(以上の証拠の
内容は第二審判決書に記載されたところによつて判断する)によつて、被告人Aの
犯罪事実として第二審判決に示されている第一の事実を認定することは、すこしも
経験上又は論理上の法則に反するものではない。従つて、原上告審判決が第二審判
決挙示の証拠によると被告人Aに関する判示事実を証明することができると説明し
且つ「記録に徴しても原判決に重大な事実の誤認があることを疑うを得ない」と判
断したことは違法ではない。その他の点についても原上告審判決は、所論のように
論旨に対する判断をしなかつたものでもなく、又良心に反し公平を欠いたものでも
ない。それゆえ、原上告審判決は憲法の所論条規に違反するものではないから、論
旨は理由がない。
 被告人A弁護人岡井藤志郎、同今泉源吉、同須々木平次の再上告趣意第二点、第
三点、同被告人弁護人岡井藤志郎、同今泉源吉、の再上告趣意第二点、第三点、第
四点、同被告人弁護人鈴木喜三郎、同須々木平次の再上告趣意第一点、同被告人弁
護人樋口俊美の再上告趣意第一点、第二点、同被告人弁護人福永福雄、同村川保蔵
の再上告趣意について。
 日本国憲法は、その補則において別段の定めを設けていないのであるから、憲法
に掲げられた所論の条規は、憲法施行の日からその効力を生じ、その当時裁判所に
繋属しているすべての訴訟事件に適用せらるべきことは当然である。それゆえ、日
本国憲法の施行前に終結した弁論に基いて憲法施行後に言渡された第二審判決に対
して原裁判所に上告された本件について、原上告裁判所が憲法の所論条規の適用が
ないものと判断したことは失当である。よつて、第二審裁判所がその判決において
被告人等の供述を証拠としたことが憲法第三八条第二、三項に違反するかどうかを
次に検討してみる。さて、第二審判決が被告人Aの犯罪事実を認定するために引用
した証拠は、冒頭の論旨の説明において示した通りであつて、被告人Aに対する検
事の聴取書以外は、すべて第一審又は第二審裁判所の公判廷における被告人等又は
証人の供述と書証とである。これら公判廷における被告人等の供述は、反対の確証
のない限り強制、拷問若しくは脅迫にる自白でないものと推認するを相当とする。
そして、被告人Aに対する検事の聴取書の供述も第二審判決が摘録するところによ
れば、同判決挙示の被告人Aの第一審公判廷の供述とその内容に精粗の差はあるが、
犯行を認めている趣旨は同一であつて、この聴取書についても強制等による自白と
は認められない。次に、被告人等の供述が不当に長く拘禁された後の自白であるか
どうかの点は、弁護人等の上告趣意書記載の事実に基いて判断すれば次の通りであ
る。被告人Aの拘禁は、弁護人樋口俊美の上告趣意書によれば、昭和二一年二月二
日谷村警察署に引致されてから同年八月二四日保釈されるまで六ケ月二二日間であ
り、同年五月三日同被告人が検事に自白した日までは三ケ月一日、同年七月二六日
同被告人が第一審公判廷で自白した日までは五ケ月二四日である。そして、弁護人
鈴木喜三郎同須々木平次の原審に対する上告趣意書によれば、被告人Aのみならず
本件のすべての被告人等は警察署、検事廷、裁判所における取調を通じ第一審判決
言渡までは自白していたというのである。また、本件事案が複雑であつたことは、
第二審判決に記載された犯罪事実の内容並びに弁護人等の原審及び当審に対する各
上告趣意書の内容、前記上告趣意書から判明する第二審で十回に亘り公判を開廷し
たこと等から推測することができる。これらの事情から判断すると、第二審判決が
証拠とした被告人Aの自白と被告人の拘禁との間には因果関係のなかつたことが明
らかと認められるから、右の自白は不当に長く拘禁された後の自白に当らないもの
と言うべきである。(昭和二二年(れ)第二七一号同二三年六月二三日大法廷判決
参照)さらに、第二審判決は前記のようにAの供述のほか、補強証拠と認められる
他の証拠をも引用しているのであるから、被告人Aの自白を唯一の証拠としたもの
でもない。されば、第二審判決は憲法第三八条第二、三項に違反したものではない
から、同条項に違反すると主張する論旨を排斥した原上告裁判所の判断は結局にお
いて正当であつて、再上告の本論旨は採用することができない。
 被告人A弁護人岡井藤志郎、同今泉源吉、同須々木平次の再上告趣意第四点、同
被告人弁護人樋口俊美の再上告趣意第三点について。
 証人申請の採否は、一般に裁判所の裁量によつて適当に決することができるので
あつて、所論の憲法第三七条第二項は裁判所がその必要を認めて訊問を許可した証
人について規定しているものと解すべきであることは、当裁判所の判例とするとこ
ろである(昭和二三年(れ)第八八号同年六月二三日大法廷判決)。されば、第二
審裁判所が所論Iに対する証人訊問の請求を却下したとしても、それは裁判官の恣
意によつたものではなく、その必要を認めなかつたからに外ならないものと認むべ
きであつて、その一事により直ちに憲法第三七条第一項にいう「公平な裁判所」で
なかつたということはできない。この点についても、すでに当裁判所に同趣旨の判
例がある(昭和二二年(れ)第二五三号昭和二三年七月一四日大法廷判決)。なお、
憲法第二項にも違反するものではなく、その他憲法の所論条規に違反するところは
ないから、論旨は理由がない。
 被告人A弁護人岡井藤志郎、同今泉源吉、同須々木平次の再上告趣意第五点につ
いて。
 以上の論旨について説明したように、原上告審裁判所の判断は所論のように憲法
の条規に違反するものではないから、本論旨も理由がない。
 被告人A弁護人鈴木喜三郎、同須々木平次の再上告趣意第二点について。
 昭和二二年法律第一二四号刑法の一部を改正する法律によつて、刑の執行猶予に
関する条件が変更されたことが刑の変更には当らず又旧刑訴法第四三四条第二項を
準用すべき場合でもないことは当裁判所の判例とするところであるから(昭和二二
年(れ)第二四七号昭和二三年一一月一〇日大法廷判決)、論旨は理由がない。
 被告人J弁護人三輪秀文の上告趣意第一点、第二点について。
 論旨において主張するところは、いずれも第二審裁判所の被告人Jに関する本件
の審判が旧刑訴法の定ある手続に違反したものであり、そのことが直ちに憲法第三
一条、第三二条、第九九条等の違反であるというのである。しかしながら、論旨に
指摘するような事由があつたとしても、それは旧刑訴法に違反するかどうかの問題
であつて、それをもつて憲法違反の問題とすることはできない。されば、論旨は再
上告適法の理由として認め難いのである。
 よつて、旧刑訴法第四四六条に従い主文の通り判決する。
 以上は、被告人A弁護人鈴木喜三郎、同須々木平次の再上告趣意第二点について
真野裁判官の反対意見あるほか、裁判官全員の一致した意見であつて、真野裁判官
の反対意見は当裁判所昭和二二年(れ)第二四七号同二三年一一月一〇日大法廷判
決に記載する通りである。
 検察官 宮本増蔵関与
  昭和二四年七月一三日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    沢   田   竹 治 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介

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