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平成20年6月26日判決言渡
平成20年(行ケ)第10025号審決取消請求事件
口頭弁論終結日平成20年5月29日
判決
原告ボン・テラ・ヴァイランド・
ゲゼルシャフト・ミット・
ベシュレンクテル・ハフツング
訴訟代理人弁理士廣江武典
同武川隆宣
同高荒新一
同西尾務
同神谷英昭
同服部素明
訴訟復代理人弁理士矢代加奈子
被告Y
訴訟代理人弁理士松井茂
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
日と定める。
事実及び理由
第1請求
特許庁が取消2007−300093号事件について平成19年9月26日
にした審決を取り消す。
第2争いのない事実
1特許庁における手続の経緯
原告は,別紙商標目録1(別紙審決書写し別掲〔本件商標〕も同じ。)記
載のとおりの構成からなり,指定商品を第19類「わら・ココヤシ繊維・そ
の他の有機繊維及び無機繊維製の土壌侵食防止用植生マット」とする登録第
3296689号の商標(平成6年3月9日登録出願,平成9年4月25日
設定登録,平成18年11月7日更新登録。以下「本件商標」という。)の
商標権者である。
被告は,平成19年1月29日,商標法50条に基づき,本件商標登録の
取消しの審判を請求し(取消2007−300093号事件,以下「本件審
判」という。),同請求は,同年2月14日,登録された(以下「本件予告
登録」という。)。
特許庁は,平成19年9月26日,「登録第3296689号商標の商標
登録は取り消す。」との審決(附加期間90日。以下「審決」という。)を
し,同年10月9日,その謄本を原告に送達した。
2審決の理由
別紙審決書写しのとおりである。要するに,審決は,下記(1)ないし(3)の
とおり,原告(被請求人)が本件審判の手続において提出した証拠(甲1な
いし6〔審決における乙1,乙1の2,乙2ないし乙5。〕)によっては,
本件商標が本件予告登録前3年以内に使用をされたと認めることはできず,
また,本件審判の請求が権利の濫用であるとすべき事情は認められないと判
断した。
(1)甲1(審決における乙1,以下「本件商品カタログ」という。)には,
本件商標と社会通念上同一の商標と認められる商標が表示され,本件商標
の指定商品に該当する商品が掲載されているものの,本件商品カタログ自
体及び甲2(審決における乙1の2)から本件予告登録前3年以内に用い
られたものとは認められず,また,本件商品カタログが本件予告登録前3
年以内において頒布された時期を特定し推認し得る証拠もない。
(2)甲3(審決における乙2,株式会社ウエスコット〔以下「ウエスコッ
ト」という。〕のウェッブサイトをプリントアウトしたもの)には,本件
商標と社会通念上同一の商標と認められる商標は表示されておらず,ま
た,本件予告登録よりも後の「打ち出しの日付」が見い出せるに止まり,
本件予告登録前3年以内に用いられたものと認めるに足りる証拠はない。
(3)甲4(審決における乙3,有限会社パンテックコーポレーション(〔以
下「パンテックコーポレーション」という。〕のウェッブサイトをプリン
トアウトしたもの)及び甲6(審決における乙5,原告のウェッブサイト
をプリントアウトしたもの)には,甲1と同様の商標及び商品が掲載され
ているが,いずれも本件予告登録よりも後の「打ち出しの日付」が見い出
せるに止まり,本件予告登録前3年以内に用いられたものと認めるに足り
る証拠はない。
第3当事者の主張
1取消事由についての原告の主張
本件商標は,本件予告登録前3年以内に日本国内において,通常使用権者
及び商標権者がその使用をしていたものであり,また,被告による本件審判
請求は権利の濫用であるから,これらを否定した審決は誤りであり,取り消
されるべきである。
(1)取消事由1(本件商標の使用の事実に関する認定の誤り)
ア本件商品カタログによる使用
審決は,本件商品カタログを用いることにより,本件商標が継続的に
使用されたとの事実を否定した。
しかし,以下のとおり,審決の上記認定は誤りである。
(ア)本件商標の指定商品は,長年にわたり,特段の変更を加えること
なく継続的に販売し,使用することができる特性を有するから,一度
作成した商品カタログも,長年にわたりそのまま継続して使用するこ
とができる。
そして,本件商品カタログは,①平成7年3月ころ,特許庁に提出
されていること(甲8),②株式会社ヘイレックス・ジャパン(以
下「ヘイレックス・ジャパン」という。)から取り寄せることができ
たこと(甲2〔審決における乙1の2〕)からすれば,本件商標の指
定商品の販売,販促活動,商品説明等が,本件商品カタログを用いる
ことにより,継続的にされていたと推認されるので,本件商標の使用
は,継続的にされていたというべきである。
(イ)ウエスコット(被告は,同社の法務担当の従業員である。)が,
本件商標の通常使用権者として,本件商標を使用してきたことは,甲
8(平成19年7月4日付け審判事件弁駁書)における「さらに,日
本国内においては,従来から現在に至るまで,株式会社ウエスコット
が総代理店として,本件商標を使用してきたのであって,ドイツの法
人である被請求人は,専ら外国で本件商標の使用をしていたに過ぎま
せん。このことは,平成7年3月頃に,特許庁へ商品カタログを提供
するに際して,被請求人が商品カタログ等を所有していなかったため
に,株式会社ウエスコットが商品カタログを提供して特許庁に提出し
た事実からも明らかです。」との被告の主張からも明らかである。
この点について,被告は,平成11年(1999年)に,ボンテラ
・アメリカ・インク(以下「ボンテラアメリカ」という。)が買収さ
れて消滅した後は,ウエスコットは本件商標の通常使用権者ではない
と主張する。しかし,ボンテラアメリカは,本件商標の商標権者であ
る原告の関連会社であり,原告の代表者であるAは,ボンテラアメリ
カの役員でもあった。ウエスコットが本件商標の使用を平穏に継続で
きたのは,商標権者の許諾を受けたことに起因するのであり,かかる
事情はボンテラアメリカの存続のいかんに関係しない。
イインターネット上のウェッブサイトによる使用
審決は,インターネット上のウェッブサイト(甲3,4,6〔審決に
おける乙2,3,5〕参照)により,本件商標が継続的に使用されたと
の事実を否定した。
しかし,以下のとおり,審決の上記認定は誤りである。
上記の各ウェッブサイトが,本件審判請求の後に作られたものである
との証左はなく,これらのサイトに掲載された写真からも,本件商標の
指定商品が継続して販売されており,本件商標が当該商品について継続
して使用されてきたことは明らかである。
ウその他の主張
ウエスコットが,「ボンテラアメリカの総代理店」として本件商標の
使用を継続的に行ってきたことは,被告の提出に係る乙5(国土交通省
が管理する新技術情報提供システム(NETIS)に登録された技術名
称「ボンテラ」の掲載ページ)の記載からも明らかである。
(2)取消事由2(権利濫用に関する判断の誤り)
審決は,本件審判の請求が権利の濫用であるとすべき事情は認められな
いと判断した。
しかし,以下のとおり,審決の上記判断は誤りである。
ウエスコットは,本件商標を付した商品を,「輸入総代理店(総輸入
元)」と称して,日本国内で販売し続けていたにもかかわらず,①ライセ
ンス料の支払を免れるとともに,②別紙商標目録2記載の構成の商標につ
いて,自ら商標登録を受けるため,登録出願(商願2007−5969
号,以下「別件出願」という。)をし(甲9),③原告による日本国内で
の商標の使用を妨げることを意図して,その従業員である被告に本件審判
を請求させたものであり,かかる行為は,公正な取引秩序を乱し,公序良
俗に反するものである。
したがって,被告の本件審判請求は,権利の濫用に該当するというべき
である。
なお,被告は,登録商標の不使用による取消審判は何人も請求すること
ができるから,権利の濫用に該当しない旨主張するが,上記のとおり,本
件審判請求については,これを権利の濫用とすべき格別の事情があるか
ら,被告の主張は失当である。
2被告の反論
(1)取消事由1(本件商標の使用の事実に関する認定の誤り)に対し
ア本件商品カタログによる使用の主張に対し
(ア)本件商品カタログは,平成7年に特許庁に提出された商品カタロ
グと同じものであって(審決書10頁24行∼27行),12年以上
前の商品カタログを一度も印刷し直すことなく使用し続けることは,
通常あり得ないこと,さらに,ウエスコットの所在地として,郵便番
号が3桁であったころの古い所在地が記載されていることからすれ
ば,本件商品カタログが,平成7年から現在まで継続して使用されて
いるとは,到底考えられない。なお,甲2(審決における乙1の2)
によれば,原告が,平成19年5月に,本件商品カタログ1部を,ヘ
イレックス・ジャパンから取り寄せたことがうかがわれるが,このよ
うな古いカタログが1部だけ現存していたからといって,本件予告登
録前3年以内に,本件商標が使用されていたことが証明されたとはい
えない。
(イ)原告は,ウエスコットが,本件商標の通常使用権者として,本件
商標を使用してきたと主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は誤りである。
aウエスコットは,平成8年(1996年)以前から,ボンテラア
メリカの総代理店として,日本国内で事業を行ってきたが,ボンテ
ラアメリカは,ウエスコットに対し,甲5(審決における乙4,ボ
ンテラアメリカのウエスコット宛て1996年1月24日付け書
簡)により,「BonTerraロゴおよび商標名」の使用を許諾
する旨を書面で明示した。
しかし,甲5において,使用を許諾したのは,ボンテラアメリカ
であって,商標権者である原告ではない。そして,ボンテラアメリ
カが,本件商標の専用使用権者として登録された事実はなく(乙
1),商標権者でも,専用使用権者でもないボンテラアメリカが,
ウエスコットに対し,通常使用権を許諾しても,効力が生ずること
はない(商標法30条4項で準用する特許法77条4項,商標法3
1条1項参照)。
したがって,ウエスコットは,当初から本件商標の通常使用権者
ではない。
b仮に,ボンテラアメリカが,平成8年(1996年)の時点で,
ウエスコットに対して,本件商標の通常使用権を許諾する権原を有
していたとしても,ボンテラアメリカがウエスコットにした使用許
諾は,平成11年(1999年)にボンテラアメリカが買収されて
消滅したことにより効力を失い,ウエスコットは本件商標の通常使
用権者ではなくなった。
この点は,原告が,平成17年4月18日,ウエスコット社に対
して,同社が許可なく,本件商標を使用しているとして,その差止
めを求める警告状を発したこと(乙2),また,原告が,平成19
年5月28日,パンテックコーポレーションに対して警告状を発
し(乙3),これに対してパンテックコーポレーションが,平成1
9年6月11日原告に対して回答書を送付した経緯からも明らかで
ある。
イインターネット上のウェッブサイトによる使用の主張に対し
インターネット上のウェッブサイトのプリントアウト(甲3,4,
6)は,いずれも本件予告登録前3年間に,通常使用権者又は商標権者
により,本件商標がその指定商品について日本国内において使用されて
いた事実を証明するものではない。
ウその他の主張に対し
乙5には,「技術名称ボンテラ」との記載はあるが,本件商標は用
いられていない。また,乙5における「技術名称ボンテラ」との記載
は,商標的使用とはいえない。
(2)取消事由2(権利濫用に関する判断の誤り)に対し
原告は,被告による本件審判請求が権利の濫用であると主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は失当である。
アウエスコットは,原告から,BonTerra商標の使用を停止する
旨の警告を受けた(乙2〔審決における甲3〕)ことから,ウエスコッ
トの法務担当者である被告が,ウエスコットのために,本件審判を請求
した。そもそも,商標法50条1項は,「何人も・・・審判を請求する
ことができる」と規定する。このような経緯で,被告がした本件審判請
求は権利の濫用に該当することはない。
イウエスコットは,本件商標の指定商品に係る施工技術に関し,国土交
通省の審査を受け,1999年には,同省が管理する新技術情報提供シ
ステム(NETIS)に,技術名称「ボンテラ」として登録されるに至
ったものであり,それ以来,ウエスコットによる施工実績件数は,国土
交通省関連のものが512件,その他の公共機関関連のものが784件
に達している(乙5)。本件商標は,日本国内では,当該分野におい
て,ウエスコットの出所表示として認識されている。本件商標は,遅く
とも平成7年3月頃から現在まで,日本国内で,原告によって全く使用
されていない。
したがって,本件商標について,本件審判請求をしたことによって,
被告に,日本国内での商標の使用を妨げる意図があると認めることはで
きず,公正な取引秩序を乱し,公序良俗に反するおそれがあるともいえ
ない。
また,ウエスコットの別件出願に係る商標の構成は,本件商標とは異
なる文字商標であり(甲9),通常使用権の許諾は,登録商標と類似の
商標(いわゆる禁止権の範囲)についてはすることができないから,別
件出願や本件審判請求が,ライセンス料の支払を免れる行為に該当する
とはいえない。
第4当裁判所の判断
当裁判所は,本件予告登録前3年以内に日本国内において,本件商標の通
常使用権者及び商標権者が本件商標の使用をしていたとは認められず,ま
た,被告による本件審判請求が権利の濫用ということもできないと判断す
る。その理由は,以下のとおりである。
1取消事由1(本件商標の使用の事実に関する認定の誤り)について
(1)ウエスコットによる本件商標の使用について
原告は,ウエスコットが,本件商標の通常使用権者であることを前提と
して,ウエスコットが,本件商品カタログ(甲1),ウエスコットのイン
ターネット上のウェッブサイト(甲3参照),国土交通省が管理する新技
術情報提供システム(NETIS)に登録された技術名称「ボンテラ」の
掲載ページ(乙5)において,本件商標を使用したと主張する。
しかし,以下のとおり,①ウエスコットは,本件商標の通常使用権者で
あるとは認められず,また,②ウエスコットが,本件予告登録前3年以内
に日本国内において,原告主張に係る本件商標を使用した事実も認められ
ない。したがって,原告の上記主張は失当である。
アウエスコットが本件商標の通常使用権者に当たるかについて
ウエスコットが本件商標の通常使用権者であったか否かについて,以
下のとおり判断する。
(ア)事実認定
下記証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
aウエスコットは,遅くとも平成7年ころから,原告の関連会社で
あったボンテラアメリカの総輸入元(総代理店)として,本件商標
や,「BonTerra」の文字,「ボンテラ」の文字などを用
い,本件商標の指定商品に該当するボンテラアメリカから輸入した
浸食防止用マットに関する事業活動(販売,販促活動,商品説明を
含む)を日本国内において開始した。同年3月ころには,本件商標
の登録出願の審査に供するため,ウエスコットが作成した本件商品
カタログと同一のカタログが特許庁に提出されたことがあった(甲
1,8)。
bボンテラアメリカは,平成8年(1996年)1月24日,ウエ
スコットに対し,①ウエスコットが日本におけるボンテラアメリカ
の独占的販売代理店であること,②パンフレット及び広告材料を開
発し,ウエスコット自身の関連商品を含むすべての種類の浸食防止
商品を日本において販売するために,ウエスコットが「BonTe
rraロゴ及び商標名」を使用することを許諾すること,③「Bo
nTerraロゴ及び商標名」は,原告の登録商標であるが,ボン
テラアメリカが日本における独占的使用権者となっていることなど
を内容とする通知を発したことがある(甲5)。しかし,ボンテラ
アメリカは,平成11年(1999年)に,買収されて消滅した。
c原告は,ボンテラアメリカがウエスコットに「BonTerra
ロゴ及び商標名」の使用を許諾したことについて,追認した事実は
なく,かえって平成17年(2005年)4月18日ウエスコット
に対し,ウエスコットが,原告の許諾なく,「BonTerra商
標」を使用していることを指摘し,「BonTerra商標」の使
用の停止を求める趣旨の警告書を発した(乙2)。また,原告は,
代理人を通して,平成19年5月28日,ウエスコットの代理店で
あるパンテックコーポレーションに対しても,本件商標に係る商標
権を侵害する可能性がある旨を通知した(乙3)。
(イ)判断
上記事実によれば,①原告が,ウエスコットに対し,本件商標の通
常使用権を許諾したこと,②ボンテラアメリカが,平成8年当時,本
件商標の通常使用権を許諾する権原を有していたこと,③原告が,ボ
ンテラアメリカのウエスコットに対する許諾を追認したことのいずれ
の事実も認めることはできない。かえって,原告がウエスコットに対
して,「BonTerra商標」の使用権限を否定し,その使用の差
止めを求めている事実に照らすならば,ウエスコットが本件商標の通
常使用権者でなかったと認定すべきである。
確かに,被告が,本件審判手続において,「日本国内においては,
従来から現在に至るまで,株式会社ウエスコットが総代理店として,
本件商標を使用してきた」と主張した経緯はあるが(甲8)が,同主
張は,単に総代理店として営業を行った被告の認識を述べたにすぎな
いのであって,前記認定及び判断を左右するに足りるものとはいえな
い。
したがって,ウエスコットが,本件予告登録前3年以内に,本件商
標の通常使用権者であったということはできない。
イウエスコットの本件商標の使用の事実について
ウエスコットは,本件商標の通常使用権者ではないが,以下のとお
り,同社が,本件予告登録前3年以内に日本国内において,原告主張に
係る経緯で本件商標を使用した事実も認められない。
(ア)本件商品カタログについて
a本件商品カタログには,その発行日を示す記載は見当たらない
が,同カタログは,平成7年に特許庁に提出された商品カタログと
同じものであり(甲8,弁論の全趣旨),その最終ページの右下に
は,「総輸入元」,「株式会社ウエスコット」,「東京都中野区中
野3−36−10中野ヒルサイドビル4階〒164」との記載が
あること(甲1)に照らせば,同カタログは,郵便番号が7桁化さ
れた平成10年2月より前に作成されたものと認められ,また,ウ
エスコットの所在地は,遅くとも平成17年4月18日以前に,本
件商品カタログの記載とは異なるものとなっていたことが認められ
る(乙2)。
そして,本件全証拠によるも,本件商品カタログが,本件予告登
録(平成19年2月14日)前3年以内に,使用されていたとの事
実は認められない。
bこの点に対し,原告は,本件商標の指定商品は,長年にわたり,
特段の変更を加えることなく継続的に販売し,使用することができ
る特性を有するから,一度作成した商品カタログも,長年にわたり
そのまま継続して使用することができるところ,本件商品カタログ
は,平成7年3月ころ,特許庁に提出され,また,ヘイレックス・
ジャパンから取り寄せることができたことからすると,本件商標の
指定商品の販売,販促活動,商品説明等が,本件商品カタログを用
いることにより,継続的にされていたと推認されるべきである旨主
張する。
しかし,ウエスコットによる平成11年以降の本件商標の指定商
品に係る施工実績件数は,国土交通省関連のものが512件,その
他の公共機関関連のものが784件に達し(乙5),その取引件数
は少なくないにもかかわらず,10年近くにわたって同一のカタロ
グを使用し続けることは不自然であり,また,郵便番号の7桁化や
所在地の移転があった場合に,作り直すこともせずにカタログを使
用し続けることは考えられないこと等の事実に照らすならば,本件
商品カタログが,本件予告登録前3年以内に,使用されていたとは
認められない。原告の主張は採用することできない。
(イ)ウェッブサイトのプリントアウトについて
ウエスコットのウェッブサイトのプリントアウト(甲3)及び国土
交通省が管理する新技術情報提供システム(NETIS)に登録され
た技術名称欄に「ボンテラ」との記載のある掲載ページ(乙5)の内
容を検討しても,本件商標又はこれと社会通念上同一の商標が表示さ
れているとは認められない。
また,甲3は平成19年5月9日に,乙5は平成20年2月7日
に,それぞれプリントアウトされたものと認められるところ,本件予
告登録前3年以内に,インターネット上のウェッブサイトに,甲3又
は乙5と同一のコンテンツが存在していたことを認めるに足りる証拠
もない。
(2)その他の使用の事実について
アパンテックコーポレーションのウェッブサイトのプリントアウトにつ
いて
本件全証拠によるも,パンテックコーポレーションが,本件予告登録
前3年以内に,本件商標の通常使用権者であったとは認められない。
また,甲4は平成19年5月21日にプリントアウトされたものと認
められるところ,本件予告登録前3年以内に,インターネット上のウェ
ッブサイトに,甲4と同一のコンテンツが存在していたことを認めるに
足りる証拠もない。
イ原告のウェッブサイトのプリントアウトについて
甲6に表示されているウェッブサイト上のアドレス(http://www.bont
erra.de/english/sites/produkt.htm)が我が国におけるものでないこ
と,同ウェッブサイトの表記が,日本語ではなく,英語であることから
すれば,同ウェッブサイトの存在は,本件商標が日本国内において使用
されたことを示すものとはいえない。
また,甲6は平成19年5月17日にプリントアウトされたものと認
められるところ,本件予告登録前3年以内に,インターネット上のウェ
ッブサイトに,甲6と同一のコンテンツが存在していたことを認めるに
足りる証拠もない。
(3)小括
以上検討したところによれば,本件予告登録前3年以内に日本国内にお
いて,本件商標の通常使用権者及び商標権者が本件商標の使用をしていた
とは認められず,原告主張の取消事由1は理由がない。
2取消事由2(権利濫用に関する判断の誤り)について
(1)登録商標の不使用による取消審判について
商標法50条1項は,「継続して3年以上日本国内において商標権者,
専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務につ
いての登録商標・・・の使用をしていないときは,何人も,その指定商品
又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求すること
ができる。」と規定している。
上記規定は,平成8年法律第68号による改正前の商標法において,登
録商標の不使用による取消審判の請求人適格について明示の規定がなかっ
たことから,その反対解釈として,利害関係人に限って同審判を請求する
ことができると解される余地が存在していたのを,「何人」にも認めるこ
ととし,その旨を法文上明示したものと解される。
したがって,登録商標の不使用による取消審判の請求が,専ら被請求人
を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情がない
限り,当該請求が権利の濫用となることはないと解するのが相当である。
(2)本件審判請求について
アこれを本件についてみるに,前記1(1)ア(ア)のとおり,ウエスコット
は,遅くとも平成7年ころから,原告の関連会社であるボンテラアメリ
カの総輸入元(総代理店)として,本件商標や,「BonTerra」
の文字,「ボンテラ」の文字などを用い,日本国内における本件商標の
指定商品の販売等を開始し,平成8年1月24日,ボンテラアメリカか
ら「BonTerraロゴ及び商標名」を使用することについて許諾を
受けて,その使用を継続していた。ところが,同社は,平成17年4月
18日,突然,原告から,原告の許諾なく,「BonTerra商標」
を使用しているとして,当該商標の使用の停止を求められたことが認め
られる。
そうすると,ウエスコットが,原告から,本件商標の通常使用権者で
あることを否定され,使用の停止を求められたため,ウエスコットの法
務担当者である被告が,同社のために,本件商標についてその登録の取
消しを求めて,本件審判請求に及んだのであって,被告ないしウエスコ
ットの行動は,自然かつ合理的なものであるから,何ら権利の濫用に該
当するものとはいえない。
イ原告は,ウエスコットが,①ライセンス料の支払を免れようとしたこ
と,②別件出願をしたこと,③原告による日本国内での商標の使用を妨
げることを意図したことを主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張はいずれも失当である。
すなわち,①前記1(1)のとおり,ウエスコットが本件商標の通常使用
権者であることを否定したのは,ウエスコットではなく,原告であるこ
と,また,甲5(ボンテラアメリカのウエスコット宛て1996年1月
24日付け書簡)には,ライセンス料に関する記載はないことからすれ
ば,ウエスコットが積極的にライセンス料の支払を免れようという意図
を有していたと認めることはできず,②ウエスコットが,ボンテラアメ
リカから「BonTerraロゴ及び商標名」を使用することについて
許諾を受け,その使用を継続してきたにもかかわらず,突然,原告から
本件商標の通常使用権者であることを否定されたことに鑑みると,ウエ
スコットが,自ら別件出願について登録を受ける可能性を試そうとした
ことは,直ちに著しく不当な行為とまではいえず,また,原告の有する
本件商標について,その登録の取消しを求めることは,公序良俗に反す
る行為とはいえず,③原告は,日本国内において,本件商標を使用した
こともなく,使用する計画があることもうかがわれない以上,ウエスコ
ットが原告による日本国内での商標の使用を妨げる意図を有していたと
認めることもできない。
(3)小括
以上検討したところによれば,被告による本件審判請求が権利の濫用と
いうことはできないから,原告主張の取消事由2は理由がない。
3以上のとおりであるから,原告の主張はいずれも理由がなく,他に審決を
取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,主
文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官飯村敏明
裁判官齊木教朗
裁判官嶋末和秀
別紙
商標目録1
商標目録2

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なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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