弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告は何れもこれを棄却する。
         理    由
 被告人A、同Bの上告趣旨は別紙上告趣意書と題する書面記載の通りであるか
ら、その第一點乃至第三點につき順次これを按ずるに、
 第一點、 職權を以て調査するに、山口縣におけるなつみかんの販賣債格の統制
額については、他の都道府縣における同統制額と同時に、物價統制令第四條の規定
に基き昭和二十一年七月二十日大藏省告示第五百八十一號を以てその統制額が指定
せられたが、昭和二十二年十年二十七日物價廳告示第九百二十九號によつて右大藏
省告示による統制額の指定は全面的に廢止せられこれが即日施行せられたことは明
かであり、また、原審判決は昭和二十二年十二月九日宣告されたことは記録によつ
て明瞭である。そして原判決認定の事實は、被告人兩名は何れも法定の除外事由が
ないのに拘らず營利の目的を以て犯意を繼續して(一)被告人Aは昭和二十二年四
月二十四日頃から同年五月上旬頃迄の間自宅においてCその他に對し、なつみかん
約百七十三貫を昭和二十一年七月二十日大藏省告示第五百八十一號(同年七月二十
二日[四月二十二日とあるのは誤記と認める]山口縣告示第三百二十二號)を以て
指定せられた消費地小賣業者の販賣價格の統制額から金一萬五千五百七十圓超過し
た金一萬七千三百圓で販賣し(二)被告人Bは昭和二十二年四月二十四日頃から同
年五月上旬頃迄の間自宅においてDその他に對しなつみかん約百五十貫を前記指定
の統制額から金一萬五百二十圓超過した金一萬二千二十六圓で販賣したというので
あつて、原審判決舉示の證據によれば優に右事實を認めることがで<要旨>き、そし
て原審判決は前記なつみかんの統制額指定の大藏省告示の廢止があつたに拘らず敢
て免訴の言渡を爲さなかつた理由については特に解説して居ないけれども、
其の刑事訴訟法第三百六十三條第二號の規定を適用しなかつた理由は、畢竟すると
ころ、物價統制令前記大藏省告示等は孰れも特殊の限時的、暫行的性格を有するも
のであるから、事後における該告示の廢止はその効力存續中に犯された行爲の可罰
性に影響を及ぼすものでないという法律的見解に基くものであることが窺われ、か
ゝる暫行的刑罰法令に違反した行爲は、その改廢があつても、これがために俄に遡
つてその處罰價値を失うベき理由はないから、かゝる違反行爲に對しては、暫行法
令改廢後においても、特段の反對規定のない限り、なほ、行爲當時の法令に照して
處罰を行ふべきであるというのは、昭和十五年七月一日の大審院第二刑事部判決、
同年七月十八日同第一刑事部判決、昭和十六年五月二十日同第四刑事部判決、昭和
二十二年四月五日同刑事聯合部判決の一貫して堅持する法令解釋の見解であつて、
原審が右見解に則り上告人等の本件犯行に對し所論のような免訴の言渡をしなかつ
たのは相當であり、これと異る見解に基き原判決を非難する上告論旨は到底これを
採用することができない。(その他の判決理由は省略する。)
 仍て刑事訴訟法第四百四十六條に則り主文の通り判決する。
 (裁判長判事 三瀬忠俊 判事 柴原八一 判事 藤堂眞二)

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