弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
       事実及び理由
第1 控訴の趣旨
 主文同旨
第2 事案の概要(略語等は,以下,原判決に従う。)
1 本件は,被控訴人が,事業用普通自動二輪車に乗車してバス専用通行帯を走行
したとして通行帯違反を理由に交通反則告知を受け,これに付される基礎点数を累
積点数とされて,控訴人から運転免許取消処分を受けたことについて,通行帯違反
の事実はないと主張して,運転免許取消処分の取消しを求めた事案である。
 原審は,被控訴人の請求を認容した。
2 当裁判所は,後記判示のとおり,被控訴人の請求を棄却すべきであると判断す
る。
3 事実関係は,原判決の事実及び理由の「第二 事案の概要」に記載のとおりで
あるから,これを引用する。ただし,当審における控訴人の主張を次項のとおり加
える。
4 当審における控訴人の主張
(1) 道路交通法(以下「法」という。)制定の趣旨及び目的に照らせば,車両
の交通方法が法に違反するか否かについての判断は,その交通方法についての外形
を標準として,客観的,統一的,定型的,画一的に決せられるべきものであって,
車両の運転者の内心は問題とすべきでない。法20条3項は,同条1項及び2項の
適用を受けず,指定通行帯以外の通行帯を通行できる事由の一つとして,「車両が
左折するとき」(法34条1項)を定めるが,その方法としては,あらかじめその
前からできる限り道路の左側端に寄り,かつ,できる限り道路の左側端に沿って徐
行し、左折しようとする地点の手前30mの地点に達したときから左折が終わるま
で左折の合図を継続しなければならない(法34条1項,53条1項,法施行令2
1条)。被控訴人車の走行状況等は,原判決11頁10行目ないし14頁6行目で
適示された控訴人の主張のとおりであり,仮に,原判決の認定を前提としても,被
控訴人は,約80mにわたり,時速約30kmで,左折の合図もすることなくバス
専用通行帯を走行しており,「車両が左折するとき」と認められる場合に当たらな
い。
(2) 仮に,違反の有無につき,車両運転者の主観を考慮すべきであるとして
も,被控訴人は,左折できなかったのではなく,そもそも左折する意思を有してい
なかった。仮に,原判決認定のように,被控訴人が,左折すべき路地を探しつつ
走行したとしても,左折する路地を探すための走行が左折の規定により道路の左側
帯に寄るときに当たると解することはできず,被控訴人の走行は,法20条3項の
除外事由に当たらない。
(3) 法20条3項が同条2項の適用を除外する場合として掲げる,左折すると
きに走行することが許される距離は,30m程度が相当であり,本件においては,
第1通行帯は路線バス等の専用通行帯と指定されて閑散としており,第2通行帯を
走行しながら自車の左側のサイドミラーにより第1通行帯の安全確認ができるこ
と,左折すべき路地について明確な認識がないのであれば,確実に左折することが
できるよう徐行すべきであったこと(本件当時,第2通行帯は渋滞しており,徐行
することによる他車への迷惑,妨害はなかった。),普通自動二輪車は,普通乗用
車に比べ,車線変更も機敏かつ円滑に行うことができること等からすれば,仮に,
被控訴人が,左折すべき路地を探しつつ走行していたとしても,第1通行帯を走行
する距離は30m程度で足りた。
(4) 法施行令別表第1における違反行為の意味の定め方は,「○○条の規定に
違反する行為」というものと,「○○条の規定の違反となるような行為」というも
のに大別されているが,公安委員会が取消処分等を行う場合,処分理由となる違反
行為の存否について認定を行う上での裁量の幅は,前者に比べ,後者がより広いも
のと解される。通行帯違反については,「法20条の規定の違反となるような行
為」と定められており(法施行令別表第1の備考2項31号),これに関する控訴
人の判断が違法になるのは,当該行為について,裁量権の行使として著しく妥当性
を欠いた認定をした場合に限られる。しかるに,違反行為の存否についての控訴人
の裁量権について全く考慮することなく,控訴人に代置して直接違反行為の存否に
ついて判断した原判決の判断手法は違法である。
第3 当裁判所の判断
1 事実経過
(1) 警視庁世田谷警察署のa巡査部長他6名は,平成11年8月30日午前7
時30分ころから,本件道路において通行帯違反等について本件取締りを実施し,
本件道路上の図面(原判決別紙図面をいう。以下同じ)B地点渋谷側の歩道上(▲
地点)にb巡査長が立ち,違反車両を発見し,図面ア地点のa巡査部長に連絡する
任務を担当していた(乙5,6,原審a証人)。
(2) 被控訴人は,同日午前9時前ころ,横浜方面から東京
都世田谷区αにある配達先に荷物を配達するため,被控訴人車を運転して本件道路
を走行していた。被控訴人は,付近に何度か配達したことがあり,当日の配達先に
は本件道路の三宿交差点の手前で一方通行の路地に左折するのが好都合と考えてい
たものの,左折すべき路地の位置については明確な認識を有していなかった。被控
訴人は,本件道路の第3通行帯又は第2通行帯を走行し,図面B地点の少なくとも
50m以上手前で,渋滞していた第2通行帯から第1通行帯に車線変更し,b巡査
長の立っていた図面B地点を通過し,同地点より渋谷側にある最初の一方通行路を
左折することなく,また,左折の合図(ウィンカーの点滅)をすることもなく,第
1通行帯を走行し続けた。(以上につき,乙5,6,原審a証人)
(3) a巡査部長は,b巡査長から,前記態様で第1通行帯を走行する被控訴人
車につき,違反車両として連絡を受け,図面イ地点付近において,被控訴人車に対
して停車を命じる合図を送った。被控訴人は,これに気づき,図面C地点付近で,
渋滞していた第2通行帯を進行する車両と車両の間に被控訴人車の前部を割り込ま
せて停止した後,本件告知場所(図面参照)に誘導された。(以上につき,乙5,
原審a証人,原審被控訴人本人)
(4) 被控訴人は,本件告知場所において,左折するために第1通行帯を走行し
たにすぎず,通行帯違反を犯していないと申し述べたが容れられず,c巡査から,
免許証の提示及び違反時刻を同日午前8時58分と記載された本件通行帯違反の取
締原票(乙1)への署名及び押印を求められ,同日午前9時38分ころ,これに署
名及び押印をした(乙1,原審被控訴人本人)。
2 被控訴人の原審における主張及び供述について
(1) 被控訴人は,要旨,左折に備えて図面B地点から第1通行帯を走行した
が,左折すべき道路を行き過ぎ,なおも左折すべき道路を探しながら走行中,次に
交差するのは左折することのできない道路であることに気づき,図面C地点付近で
第2通行帯に車線変更し,その後,a巡査部長から停止を命じられ,同日午前8時
40分ころ取締原票が作成され,同9時10分ころ違反告知を受けたと主張し,こ
れにそう供述をする。
(2) しかしながら,被控訴人が第2通行帯から第1通行帯に移動したのが,図
面B地点(被控訴人の主張)付近であるか,その50m手前付近(前記認定)であ
るかを別にしても被控訴人が
図面B地点付近から最初の左折可能な道路を左折することなく,これを行き過ぎて
なお,第1通行帯を走行したことは前記認定のとおりであり,そうである以上,通
行帯違反の事実は明らかである。被控訴人の主張し,供述するとおり,第1通行帯
の走行を継続した意図が左折すべき道路を探すためであったとしても,通行帯違反
を犯す者の内心は問うところではなく,被控訴人が主張し,供述する通行帯違反を
犯した動機又は内心の故に違反の事実が否定できるものでもない。被控訴人が通行
帯違反を現認され,停止を求められるまで,左折の合図をすることもなく走行して
いたなどの前記認定の事実経過を踏まえると,被控訴人が左折の意図の下に第1通
行帯を走行したとの事実自体疑わしいというべきである。また被控訴人主張のころ
は,c巡査は他の違反者について取締原票を作成中であり(乙8,9),被控訴人
について違反が現認され,他に取締原票が作成されたとする前記認定の時刻を左右
するに足りる証拠はない。
3 控訴人の当審における主張について
(1) 控訴人は,車両はその30m手前から左折の合図をすることを要するとす
る法令の規定を根拠にして,本件においても,左折すべき道路の30m手前からの
み,第1通行帯を走行することが許されるかのように主張する。走行する車線から
左折するときは,30m手前から左折の合図をすべきことは法令の定めるところで
ある。しかしながら,本件におけるように,車線変更の上で左折する場合において
も,左折の合図を要する地点まで車線変更が禁止されるとするに等しい控訴人の主
張は,法令の誤解に基づくものである。車両は,予め車線を変更し,左折すべき道
路の30m手前で左折の合図をし,左折すべきなのであり,通行を禁止されている
通行帯を30m以上走行することが当然に禁止されるものでもない。
(2) 取締当局において,通行帯違反に関して走行距離について一定の基準を定
め,これに基づいて通行帯違反の事実を判断することは,通行帯違反の事実の認定
を確実にする方策として十分合理性のあることである。しかしながら,通行帯違反
という法令違反の事実の有無に関しては,裁判所が事実を確定し,行政庁の法の適
用の正当性を判断すべきものであって,これについて,行政庁に裁量権を行使させ
る余地もなく,裁量権の行使として著しく妥当性を欠く場合にのみ,裁判所が行政
庁の判断を是正することができ
るとする主張も,裁量権の判断についての誤解に基づくもので採用の限りではな
い。
第4 結論
 以上によれば,被控訴人の請求は失当として棄却すべきである。
 被控訴人の請求を認容した原判決は不当であるから,これを取り消し,被控訴人
の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官 江見弘武
裁判官 岩田眞
裁判官 原啓一郎

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