弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
被告が昭和五二年七月四日付で別紙預金目録記載の預金債権に対してなした差押処
分を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者双方の申立
(原告)
主文同旨。
(被告)
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 当事者双方の主張
(請求原因)
一 エアロマスター株式会社(以下本件更生会社という)は、昭和五〇年二月一〇
日大阪地方裁判所において更生手続開始決定を受けた。原告は、昭和五一年一〇月
二六日、本件更生会社の更生管財人に選任された。
二 被告は、本件更正会社に対する別紙税額表記載の物品税及びその延滞税の滞納
処分として昭和五二年七月四日、原告の別紙預金目録記載の預金債権に対する差押
処分をした。
三 1本件更生会社は、更生手続中の昭和五一年一〇月二〇日及び同月二五日に振
出手形の支払ができず不渡とし、再倒産した。
2 本件更生会社の本件差押処分当時の実質資産は約金二九、〇〇〇万円であり、
共益債権は金一、六七五、七三七、五六九円であるから会社財産が共益債権の総額
を弁済するに足りないことが明らかな状況にある。
即ち受取手形は全て不渡となつており、その一部は相殺され、その余は回収不能で
ある。売掛金については、一部が相殺され、一部は相手方の倒産等により回収不能
であり、実質的残額は約金二〇〇万円余となつている。商品の大部分は担保として
差入れられており、残商品も倉庫業者に留置されており、又材料についても本件更
生会社に対する債権と相殺され、これらの実質的残高は約金二〇〇万円である。預
け金については、一部が相殺され、その余は相手方の倒産等により回収不能であ
る。土地、建物は国税局が差押えている。差入保証金は未払賃料等と相殺され、未
収還付金の内現実に還付可能なものはわずかである。したがつて本件更生会社の資
産の実質残高は約金二九、〇〇〇万円である。
これに対し、共益債権は、担保商品、預け材料、前払金等により清算してもなお金
一、六七五、七三七、五六九円となる。
3 したがつて、原告としては、会社更生法二一〇条により共益債権につき債権額
の割合に応じて弁済しなければならないことになるが、本件定期預金債権は、共益
債権者に対する弁済のための重要な資源となるものである。
本件差押処分を是認すれば、被告は、他の共益債権者に先だち優先的に弁済を受け
る結果となり、本件差押処分は会社更生法二一〇条に違反した処分である。
四 よつて原告は被告に対し、本件差押処分の取消を求める。
(答弁)
一 請求原因一、二項、三項1の事実、三項2の内土地、建物を国税局が差押えて
いることは認め、その余の請求原因事実は争う。
二 仮に本件更生会社の会社財産が共益債権の総額を弁済するに足りないことが明
らかな状況にあるとしても、次の理由により本件差押処分は適法である。
1 共益債権たる国税債権は、更生手続によらないで随時弁済を受け得るものであ
り(会社更生法二〇九条)、また、国税徴収法により付与された自力執行権の行使
も当然是認されるものであるから、右による弁済(納付)がされない場合、同法四
七条に基づき本件更生会社の財産に対して差押え得るものである。そして本件差押
処分は、差押えに係る滞納国税が共益債権に該当すること、及び差押執行時である
昭和五二年七月四日現在において、同法四七条一項一号規定の要件を充たしていた
ことを理由に執行されたものであり、右差押時において原告が主張するように、本
件更生会社が、会社更生法二一〇条にいう財産不足の状態にあつたとしても、右条
項は、この状態が明らかになつた場合における共益債権の弁済方法について定める
手続規定であり、共益債権を割合的弁済額まで減額する実体的規定と解すべきでは
ないから、本件差押処分はいずれにせよ適法な処分であることを失わないというべ
きである。
2 会社更生法二一〇条において、国税徴収法に基づく国税債権の優先性を否定し
ているとしても、強制執行等の続行に関して定める会社更生法二一〇条の二には、
その規定の体裁上明らかに国税徴収処分たる差押処分が除外されているところであ
り、(ちなみに滞納処分の中止・取消等が認められる場合にはその旨の明文があ
る。たとえば同法六七条)したがつて、その自力執行権までも否定しているとみる
ことはできない。又会社更生法二一〇条の二の三項の条文上、右財産の不足の状態
は、裁判所において、強制執行等の取消を命ずることができるとされるにとどま
り、必ずこれを取消すべきものとされていないところであるから、このことが行政
処分である本件差押処分の取消を招来する違法原因となるとは解し難い。けだし、
行政処分に違法原因が存在するときは一定の場合(行訴法三一条等)を除いて必ず
取消すべきことになるところ、もし、前記会社財産不足の状態をもつて差押処分の
取消原因たることを許容すると必ず取消されることとなるから、国税債権は、会社
更生法二一〇条の二の三項で処理されるべき一般強制執行債権等に比し、法律上の
根拠なくして、著しく不利益な地位に置かれることになり、不合理というべきだか
らである。
○ 理由
一 請求原因一、二項の事実は当事者間に争いがない。
二 1請求原因三項1の事実は当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第四号
証、証人Aの証言によれば本件更生会社は、昭和五一年一〇月の再倒産により事業
を継続することが不可能となり同年一一月二〇日頃、残務整理要員を残して他の従
業員全員を解雇して事業を中止したこと、そして当時の更生管財人が辞任したた
め、原告が、更正管財人に選任され、本件更生会社の残務整理に当ることとなつた
こと、又更正裁判所は、監査法人栄光会計事務所に同年一二月三一日現在の本件更
正会社の財産状況等の監査を命じたことが認められる。
2 成立に争いのない甲第一〇乃至一四号証、第一五号証の一、二、証人Aの証
言、原告本人尋問の結果によれば、昭和五一年一二月三一日現在における本件更正
会社の資産、負債は貸借対照表上は別紙資産負債表記載のとおりであつたこと、し
かし本件差押処分時においては次のとおり、修正されるべきこと。
(一) 資産
(1) 受取手形及び不渡手形
この内金一一二、三九五、一〇〇円は、不渡手形であり回収の見込はない。又残額
金一九、七八七、五四八円の内金一七、六三一、七〇〇円は株式会社興和振出のも
のであるが、これについては後記(三)(3)のとおりとなる。
(2) 売掛金
この内三一、〇七一、四一七円については共益債権と相殺されることとなる。又金
四四〇、四九八、一六七円は互陽産業株式会社に対するもの、金三三四、九〇八、
六九〇円は株式会社日本プロジエクトに対するものであるが、両会社は倒産してお
り、これらについては後記(三)のとおりとなる。株式会社協伸機器、熱水工業株
式会社、ワコー商事株式会社の三社は倒産しており、これらに対する売掛金合計金
六一、一二七、〇七七円は回収の見込はない。
(3) 商製品
これらは現実には貸借対照表に計上されているほどの価値はなく、その価値は右計
上額の半額にも満たないものである。そしてその内クーラーSD二三三二L(配管
キツトを含む)二、〇〇〇台金一三二、五六八、〇〇〇円(貸借対照表上の価額、
以下同じ)相当分は、本件更生会社の抹桑工業株式会社に対する支払手形金債務
(共益債権)の支払を担保するため、一台金三〇、〇〇〇円合計金六〇、〇〇〇、
〇〇〇円と評価し譲渡担保として同訴外会社に差入れられていたが、昭和五三年七
月、金型(金五、〇〇〇、〇〇〇円と評価)と共に金六五、〇〇〇、〇〇〇円の債
務の支払に代えて同訴外会社が取得する旨の合意が成立した。クーラーSF二三五
一LH三二五〇台金二二六、二七〇、〇〇〇円相当分は本件更正会社の日航商事株
式会社に対する支払手形金債務金一六一、三〇九、〇〇〇円(共益債権)の支払を
担保するため、一台金五〇、〇〇〇円合計金一六二、五〇〇円と評価し譲渡担保と
して同訴外会社に差入れられていたが、昭和五二年七月右債務全額の支払に代えて
同訴外会社が取得し、同訴外会社はその他の債権金三、〇九三、一四一円を放棄す
る旨の合意が成立した。そして右各クーラーは本件差押処分当時右各評価額程度の
価値であつた。又クーラーSD二三三二L四三四五台SF二三四一LE七五五台
(配管キツトを含む)金三一四、二一二、五〇〇円相当分は本件更正会社のBに対
する短期借入金債務金一四六、四四九、七〇〇円の担保として差入れられていた
が、右クーラーの本件差押処分当時の価値はほぼ右債務額と同等であつた。又クー
ラーSD二三二L一六二七台(配管キツトを含む)金一〇七、八四四、〇六八円相
当分は株式会社日本プロジエクトの三井物産住宅機器株式会社に対する買掛金債務
の支払を担保するため、譲渡担保として同訴外会社に差入れられていたが、昭和五
二年一二月右債務の支払に代えて同訴外会社が取得し、同訴外会社は清算金として
金一三、五〇〇、〇〇〇円を支払う旨の合意が成立した。したがつて本件差押処分
当時以上のクーラーについては右清算金に相当する金一三、五〇〇、〇〇〇円限度
で一般財産として一般の共益債権の支払に充てられうる状態にあつたこととなる。
又クーラーSD二三三二L三、〇〇〇台(配管キツトを含む)金一九七、五八三、
〇〇〇円相当分は株式会社興和に対する債務の担保として同訴外会社に差入れられ
ていたが、その価値は一台金三〇、〇〇〇円合計金九〇、〇〇〇、〇〇〇円程度で
あつたが、これについては後記(三)、(3)のとおりである。その余の金三五、
九八八、二二二円相当分は後記(13)のとおり売却されている。
(4) 材料
これについても現実には貸借対照表に計上されているほどの価値はない。そして内
約金三六、九八六、〇〇〇円相当分は北芝電気株式会社に、内約八、〇九五、〇〇
〇円相当分は宮寺石綿理化工業株式会社に、預託されていたが、他方本件更生会社
に対し北芝電気株式会社は金一五〇、七一八、七八〇円の、宮寺石綿理化工業株式
会社は金一六、四〇一、七六〇円の手形金債権等の共益債権を有していることか
ら、右預託された材料は留置権の対象となり、一般財産として一般の共益債権支払
のための財源とはならない。残余の約金六三、九二七、〇〇〇円相当分は後記(1
3)のとおり売却されている。
(5) 預け金
この内株式会社日本プロジエクトに対する金四、五一〇、〇〇〇円、互陽産業株式
会社に対する金三〇〇〇、〇〇〇円、株式会社興和に対する金四、九九〇、〇〇〇
円については後記(三)のとおりとなる。内金一九四三三、五四〇円は協伸機器株
式会社に対する債権であるが同会社は倒産しており回収不能である。
(6) 立替金
この内金七〇〇、六三三円は株式会社日本プロジエクトに対する債権であり、後記
(三)(2)のとおりとなる。
(7) 前払金
鎌倉部品工業株式会社に対する債権であり、同会社に対する手形債務金一〇、〇八
八、八〇八円と相殺されることとなるので、残額は金二、八二九、〇一〇円とな
る。
(8) 建物
この内富士工場の建物金七五、八四二、七八七円は後記(13)のとおり昭和五二
年五月に売却されている。
(9) 土地
この内福岡市所在の土地につき藤和不動産株式会社が金九五三、七三四円の更生債
権の担保として抵当権を設定しており(更正担保権)、その額に相当する部分につ
いては共益債権の支払に充てられない。
(10) 差入保証金
この内中央興業株式会社に対する金二、五五〇、〇〇〇円は同会社に対する未払賃
料と、又富士酸素工業株式会社に対する金五〇、〇〇〇円は同会社に対する手形金
債務とそれぞれ相殺されることとなる。
(11) 未収還付金等
これらは、国税、地方税等に関する還付金等であるが、他方本件更正会社には未納
の国税、地方税があり、これらに充当されることとなり、その結果残額は金七七、
三〇四、五三〇円となる。(なお甲第一四号証によれば、昭和五三年六月三〇日現
在国税局からの還付金として金二七六、九一〇、八〇〇円が計上されているが、甲
第一〇号証によれば本件更生会社は右金額を上まわる未納国税債務を負担している
ことが明らかであるので、結局右還付金も国税に充当されることとなるものと考え
られる。)
(12) 供託金及び未収利息
これらは、倉庫業者が本件更正会社に対する保管料債権の担保として留置していた
商製品を出庫するため、倉庫業者のため供託し、又は質権が設定された定期預金及
びその利息で更正担保権の対象となつており、その内京神倉庫株式会社についての
金二三、五六一、二一六円を除く金一八五、七七〇、二四九円は右保管料に充当さ
れることとなる。又京神倉庫についての分は同会社から更正債権(更正担保権)確
定の訴訟が提起されておりその訴訟の結果に左右されることとなる。
(13) 売却された資産
前記(8)記載の富士工場の建物、同工場内に存した工具、器具、備品、車輛運搬
具及び機械設備は昭和五二年六月に金二〇〇、〇〇〇、〇〇〇円で売却され、又そ
の頃同工場内にあつた商製品、材料等一切が金五〇〇〇〇、〇〇〇円で売却され
た。又、昭和五三年六月までの間(そのほとんどは本件差押処分時までに)その他
の商製品、材料、工具、器具、備品、車輛運搬具(前記担保商製品、預け材料を除
く)は約金五〇、〇〇〇円相当の備品を残し全て売却処分された。以上の建物その
他の物の売却代金は合計金二七八、六〇九、八九〇円である。
(二) 共益債権
(1) 支払手形
この内金三〇、六三〇、九一七円は、前記(一)(2)の売掛金の一部と、金一
〇、〇八八、八〇八円は前記(一)(7)の前払金と、金五〇、〇〇〇円は前記
(一)(10)の差入保証金の一部とそれぞれ相殺されることとなる。抹桑工業株
式会社に対する金一三二、三六八、二七六円の内金六五、〇〇〇、〇〇〇円、日航
商事株式会社に対する金一六一、一三〇、九〇〇円の各債務については前記(一)
(3)のとおり商製品が担保として差入れられているのでこれらは一般の共益債権
から除外することとなる。又株式会社協伸機器に対する金一二、三八三、七〇〇円
の債務については前記のとおり同会社に対し受取手形、売掛金及び預け金の合計金
一一三、五四三、六一七円の債権があるからこれと相殺されることとなる。又北芝
電機株式会社及び宮寺石綿理化工業株式会社は前記のとおり材料について留置権を
有しており両訴外会社の債権の内材料の前記価額に相当する額は一般共益債権から
除くこととなる。又互陽産業株式会社に対する金一七、九一九、六二二円について
は後記(三)(1)のとおりとなる。
(2) 買掛金
この内協伸機器株式会社に対する金七九〇、〇〇〇円の債務は前記債権と相殺され
ることとなる。株式会社日本プロジエクトに対する金三三、一九八、三四三円、互
陽産業株式会社に対する金二二五、〇〇〇円の各債務については後記(三)のとお
りとなる。
(3) 未払金
この内金二九〇、〇〇〇円は前記(一)(2)の売掛金の一部と、金一、六〇五、
九三〇円は前記(一)(10)の差入保証金の一部と又協伸機器株式会社に対する
金一四三、七〇〇円は同会社に対する前記債権とそれぞれ相殺されることとなり、
又名古屋市に対する租税債務金一七、六〇〇円は前記(一)(11)の未収還付金
等の一部により充当されることとなる。豊田産業株式会社に対する金四九一、〇九
九円の債務については昭和五二年一月に同訴外会社が債権を放棄した。又株式会社
互陽産業に対する金三六〇、六〇〇円、株式会社興和に対する金二、二二七、五〇
〇円の各債務は後記(三)のとおりとなる。
(4) 退職金
この内金一五九、五〇〇円は前記(一)(2)の売掛金と相殺されることとする。
(共益債権額と資産額との多寡を知るための計算方法として。)
(5) 短期借入金
この内Bに対する金一四六、四四九、七〇〇円の債務は前記(一)(3)の商製品
に対する担保権の存在により一般共益債権から除外され又株式会社興和に対する金
九五、〇〇〇、〇〇〇円、株式会社日本プロジエクトに対する金一、八五七、七八
〇円の各債務について後記(三)のとおりとなる。
(三) (1)互陽産業株式会社に対する債権債務関係
本件更生会社は、互陽産業株式会社に対し、売掛金四四〇、四九八、一六七円、預
け金三、〇〇〇、〇〇〇円の合計金四四三、四九八、一六七円の債権を有してお
り、他方支払手形金一七、九一九、六二二円、買掛金二二五、〇〇〇円、未払金三
六〇、六〇〇円合計金一八、五〇五、二二二円の債務(共益債権)を負担してい
る。
そして本件更生会社は長野県<地名略>所在の土地について売掛金中金二九二、五
〇〇、〇〇〇円を被担保債権とする抵当権を有しているが、右土地の価額は金一
一、七三七、〇〇〇円程度である。したがつて右債権債務を相殺することにより金
四二四、九九二、九四五円の債権が残ることとなる。しかし同訴外会社の一般財産
による債権回収の見込はなく、回収しうるのは前記抵当権の実行による金一一、七
三七、〇〇〇円のみである。
(2) 株式会社日本プロジエクトに対する債権債務関係
本件更生会社は、右訴外会社に対し、売掛金三三四、九〇八、六九〇円、預け金
四、五一〇、〇〇〇円、立替金七〇〇、六三三円合計金三四〇、一一九、三二三円
の債権を有しており、他方買掛金三三、一九八、三四三円、短期借入金一、八五
七、七八〇円合計金三五、〇五六、一二三円の債務(共益債権)を負担していた。
そしてその後同訴外会社から預け金の一部として金一、〇五八、八〇二円の支払を
受けた。したがつて右債権債務を相殺することにより金三〇四、〇〇四、三九八円
の債権が残ることになる。そして本件更正会社は、右債権の支払のため同訴外会社
から同訴外会社の有する債権合計金三四〇、〇五四、五一〇円の譲渡を受けてお
り、他の一般財産からの回収の見込はない。そして右譲受債権の内金三一六、三五
三、〇〇〇円は株式会社興和に対する債権であり、これについては後記のとおりと
なり回収可能なのは金二三、七〇一五一〇円である。
(3) 株式会社興和に対する債権債務関係
本件更生会社は右訴外会社に対し、受取手形金一七、六三一、七〇〇円、預け金
四、九九〇、〇〇〇円及び前記(三)(2)の譲受債権金三一六、三五三、〇〇〇
円合計金三三八、九七四、七〇〇円の債権があり、他方短期借入金九五、〇〇〇、
〇〇〇円、未払金二、二二七、五〇〇円合計金九七、二二七、五〇〇円の債務を負
担しており、右債務の担保として前記(一)(3)のとおり金一九七、五八三、〇
〇〇円相当の商製品を差入れている。したがつて右債権債務を相殺することにより
金二四一、七四七、二〇〇円の債権が残り、右担保物(価額九〇、〇〇〇、〇〇〇
円相当)の返還を求めうることとなる。しかし同訴外会社は本件差押処分当時は資
産はなく、その後倒産しており、右債権の回収の見込はなかつた。以上の事実が認
められる。
3 右認定の事実により、債権債務を相殺し、担保の対象となつている物件および
被担保債務を控除し、本件差押処分当時の本件更生会社の実質上の財産状態をみれ
ば、一般の共益債権の支払に充てることのできる一般財産の額は前記(一)(1
2)の京神倉庫株式会社関係の金二三、五六一、二一六円を加えても金六二六、九
四一、七三〇円であるのに対し、一般の共益債権の額は金一、四六九、三四一、二
五四円であり、会社財産をもつて共益債権の総額を弁済するに足りないことが明ら
かであつたものといわねばならない。
したがつて共益債権は、留置権、特別の先取特権、質権、抵当権のある債権を除
き、法令に定める優先権を考慮することなく債権額の割合に応じて弁済されること
となる(会社更生法二一〇条)、そして、このように担保権のある場合のほかは優
先権が考慮されないのであるから、本件差押処分の基となつた物品税等の国税も他
の共益債権と同様に取扱われ、何らの優先権を主張しうるものではない。このよう
に共益債権者への平等弁済を確保するためには、随時の弁済(同法二〇九条一項)
及びそれに伴う強制執行や滞納処分は許されなくなるものと解される。そうでなけ
れば一部の共益債権者への優先弁済を認める結果となり、債権額に応じた平等弁済
を実行することは不可能になつて、共益債権者間の公平が保たれなくなるからであ
り、又そのために同法二一〇条の二第三項は、更生裁判所が簡易な決定手続により
強制執行等の取消を命ずることができる旨を定めているものである。同法二一〇条
の二第三項では取消しうる対象として滞納処分が除かれているが、これは右の更生
裁判所による簡易な手続による取消の対象から除外したにすぎず、通常の手続即ち
国税通則法七五条以下の定めによる異議申立等及び行政訴訟による取消を禁じたも
のとは解し得ない。
以上により本件差押処分は会社更生法二一〇条に違反した処分でありその取消は免
れない。
三 よつて、原告の本訴請求は理由があるのでこれを認容し、訴訟費用の負担につ
き行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 荻田健治郎 寺崎次郎 近藤壽邦)
(預金目録等)(省略)

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