弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成20年7月10日判決言渡同日原本交付裁判所書記官
平成19年(ワ)第14984号商標権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日平成20年5月16日
判決
原告株式会社御菓子司鶴屋徳満
訴訟代理人弁護士拾井央雄
被告株式会社萬勝堂
被告有限会社千代の舍竹村
被告株式会社萬々堂通則
被告ら訴訟代理人弁護士西田正秀
中村悟
馬場勝也
戸城杏奈
被告ら訴訟代理人弁理士小林良平
主文
1原告の請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
1被告株式会社萬勝堂は,菓子又は菓子の包装に別紙被告標章目録1記載又は
同4記載の標章を付してはならない。
2被告株式会社萬勝堂は,菓子又は菓子の包装に別紙被告標章目録1記載又は
同4記載の標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡又は引渡しのために展
示してはならない。
3被告株式会社萬勝堂は,菓子に関する宣伝用カタログ,パンフレット,看板
その他の広告に別紙被告標章目録1記載又は同4記載の標章を付して展示若し
くは頒布し,又は菓子に関する情報に同標章を付してウェブサイトで提供して
はならない。
4被告株式会社萬勝堂は,別紙被告標章目録1記載又は同4記載の標章を付し
た菓子,菓子の包装,袋,宣伝用カタログ,パンフレット,看板を廃棄し,ウ
ェブサイトにおける同標章を付した菓子の情報から同標章を削除せよ。
5被告有限会社千代の舍竹村は,菓子又は菓子の包装に別紙被告標章目録2記
載又は同4記載の標章を付してはならない。
6被告有限会社千代の舍竹村は,菓子又は菓子の包装に別紙被告標章目録2記
載又は同4記載の標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡又は引渡しのた
めに展示してはならない。
7被告有限会社千代の舍竹村は,菓子に関する宣伝用カタログ,パンフレット,
看板その他の広告に別紙被告標章目録2記載又は同4記載の標章を付して展示
若しくは頒布し,又は菓子に関する情報に同標章を付してウェブサイトで提供
してはならない。
8被告有限会社千代の舍竹村は,別紙被告標章目録2記載又は同4記載の標章
を付した菓子,菓子の包装,袋,宣伝用カタログ,パンフレット,看板を廃棄
し,ウェブサイトにおける同標章を付した菓子の情報から同標章を削除せよ。
9被告株式会社萬々堂通則は,菓子又は菓子の包装に別紙被告標章目録3記載
又は同4記載の標章を付してはならない。
10被告株式会社萬々堂通則は,菓子又は菓子の包装に別紙被告標章目録3記載
又は同4記載の標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡又は引渡しのため
に展示してはならない。
11被告株式会社萬々堂通則は,菓子に関する宣伝用カタログ,パンフレット,
看板その他の広告に別紙被告標章目録3記載又は同4記載の標章を付して展示
若しくは頒布し,又は菓子に関する情報に同標章を付してウェブサイトで提供
してはならない。
12被告株式会社萬々堂通則は,別紙被告標章目録3記載又は同4記載の標章を
付した菓子,菓子の包装,袋,宣伝用カタログ,パンフレット,看板を廃棄し,
ウェブサイトにおける同標章を付した菓子の情報から同標章を削除せよ。
13被告株式会社萬勝堂は,原告に対し,金300万円及びこれに対する平成1
9年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
14被告有限会社千代の舍竹村は,原告に対し,金300万円及びこれに対する
平成19年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
15被告株式会社萬々堂通則は,原告に対し,金300万円及びこれに対する平
成19年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
16訴訟費用は被告らの負担とする。
17仮執行宣言
第2事案の概要等
1事案の概要
本件は,被告らが菓子及びその包装等に後記標章を付してこれを販売等して
いる行為が原告の商標権を侵害しているとして,原告が被告らに対し,商標法
36条1項に基づき,上記標章を菓子及びその包装に付し,また上記標章を付
した菓子及びその包装の譲渡等並びに菓子に関する宣伝用カタログ等の広告に
おける同標章の使用の各差止めを求め,同条2項に基づき,同標章を付した菓
子,菓子の包装及び宣伝用カタログ等の広告の廃棄等を求めるとともに,商標
権侵害の不法行為に基づく損害賠償として被告らそれぞれに対し300万円及
びこれに対する各訴状送達の日の翌日である平成19年12月15日から支払
済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
末尾に証拠を掲記したものを除き,当事者間に争いが2争いのない事実等(
ない。)
(1)当事者
原告及び被告らは,いずれも菓子の製造販売業者である。
(2)原告の商標権
原告は,次の商標権(以下「本件商標権」といい,その登録商標を「本件
商標」という。甲1)を有しており,和三盆と葛粉で短冊型に打ち固めた干
菓子に本件商標を付してこれを販売している。
登録番号第2283425号
出願年月日昭和61年8月30日
登録年月日平成2年11月30日
存続期間の更新登録年月日平成12年9月26日
登録商標別紙原告商標目録記載のとおり
商品の区分第30類
指定商品和三盆と葛粉で短冊型に打ち固めた干菓子
(3)被告らの使用する標章
ア被告株式会社萬勝堂(以下「被告萬勝堂」という。)
被告萬勝堂は,遅くとも平成12年ころから現在まで,菓子及びその包
装並びにパンフレット,ウェブサイト及び看板等の広告に別紙被告標章目
録1記載の標章(以下「被告標章1」という。)又は同目録4記載の標章
(以下「被告標章4」という。)を付して,同菓子を販売している。
イ被告有限会社千代の舍竹村(以下「被告竹村」という。)
被告竹村は,遅くとも平成12年ころから現在まで,菓子及びその包装
並びにパンフレット,ウェブサイト及び看板等の広告において,別紙被告
標章目録2記載の標章(以下「被告標章2」という。)又は被告標章4を
付して,同菓子を販売している。
ウ被告株式会社萬々堂通則(以下「被告萬々堂」という。)
被告萬々堂は,遅くとも平成12年ころから現在まで,菓子及びその包
装並びにパンフレット,ウェブサイト及び看板等の広告において,別紙被
告標章目録3記載の標章(以下「被告標章3」という。)又は被告標章4
を付して,同菓子を販売している。
(4)本件商標権の指定商品と被告らが販売する菓子との同一性
被告らが販売する上記各菓子は,いずれも本件商標権の指定商品である
「和三盆と葛粉で短冊型に打ち固めた干菓子」に含まれる。
(5)「青丹よし」の販売
原告及び被告らは,遅くとも昭和28年5月8日から現在に至るまで,
「和三盆と葛粉で短冊型に打ち固めた干菓子」に「青丹よし」という名称を
付してこれを販売してきた(甲24,25,弁論の全趣旨)。
3争点
(1)被告標章1ないし4(以下これらを合わせて「被告各標章」ともい
う。)が本件商標と類似するか(争点1)。
(2)被告らは被告各標章の使用について,先使用権(商標法32条1項)を
有するか(争点2)。
(3)原告の本件商標登録は商標法4条1項10号の規定に違反してなされた
ものか(争点3)。
(4)損害額(争点4)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(本件商標と被告各標章との類似性)について
(1)原告の主張
被告各標章と本件商標とは,いずれもその要部に「青丹よし」の文字を含
んでおり,「アオニヨシ」の称呼を生じ,同一又は類似である。
(2)被告らの主張
ア「青丹よし」という名称が出所識別機能を有しないこと
青(緑)と赤の短冊型の干菓子を「青丹よし」と呼ぶようになったのは,
江戸時代末期のことであり,この名称は有栖川熾仁親王が命名したもので
ある。そして,明治時代には既に奈良の多数の菓子業者が「青丹よし」と
称する干菓子を作っていた。
100年以上にわたり「青丹よし」と称する干菓子が奈良の複数の業者
により販売されてきた結果,奈良の菓子業者及び消費者において「青丹よ
し」といえば,青と赤の短冊型の干菓子を指す普通名称又は慣用名称とな
っている。
よって,「青丹よし」というだけでは,その出所が原告であると識別す
ることはできず,原告の本件商標は,「青丹よし」という書体及び花形の
紋章,「鶴屋徳満」の店名を合わせて初めて有効なものである。
イ本件商標と被告各商標とが類似しないこと
本件商標は,左下に「鶴屋徳満」の社名が記載されたものであって,こ
れと「青丹よし」の文字が一体となって商標登録されている。前記のとお
り,「青丹よし」は普通名称又は慣用名称であるから,他の業者との識別
力を有する「鶴屋徳満」の社名と一体として本件商標を捉えるべきである。
被告標章1は,「青丹よし」の書体につき,本件商標とは異なり,毛筆
体風ではなく,明朝体風のものを使用している。また,被告標章1に鶴屋
徳満と誤認させるような文字を配置していない。よって,被告標章1と本
件商標は類似しない。
被告標章2は,本件商標に比して,商標の店名そのものと店名の配置が
異なる。そのため,本件商標と被告標章2とは類似しない。
被告標章3には,鶴屋徳満と誤認させるような文字を配置していない。
本件商標と出所混同の危険はないので,本件商標と被告標章3とは類似し
ない。
(3)被告らの主張に対する原告の反論
被告らは,「青丹よし」といえば,青と赤の短冊型の干菓子を指す普通名
称又は慣用名称であって,その名称には出所識別機能がない旨主張するが,
以下のとおり理由がない。
ア一般的な日本人の語彙力を超過するといえる小型の国語辞書には「青丹
よし」との語は採録されていない。さらに,一般的な日本人の語彙力を遙
かに凌駕し,一度収録された単語は容易に削除されない広辞苑や大辞林に
さえも,「青丹よし」の語について菓子を示唆する記載は何らされていな
い。したがって,平均的日本人は,「青丹よし」という名称から「青と赤
の短冊型の干菓子」を容易に想起できない。また,原告の主張によっても,
「青丹よし」なる菓子が指称する菓子については,せいぜい干菓子あるい
は落雁の一種という社会通念しか形成されておらず,普通名称性を議論す
るまでの商品カテゴリーは形成されていない。
原告と被告らは,昭和26年2月3日に,共同で「青丹よし」について
商標登録出願し,昭和28年5月8日に登録されて以来,昭和58年5月
8日に存続期間満了により登録が抹消されるまで,30年間にわたり商標
権を維持し,被告らもその商標を独占使用してきたのであり,しかも,被
告らは,かかる登録商標が抹消された以降も,「青丹よし」の文字に「登
録商標」との表示を付して使用を続けていたのである。被告らがこのよう
な表示を用いていたのは,「青丹よし」が識別力のある名称だからこそで
ある。
被告らは,パンフレット,ウェブサイト等において,「青丹よし」がど
のような材料で作られたどのような菓子であるかの説明をしているが,こ
れは「青丹よし」が普通名称として通用しておらず,その表示だけではど
のような物か分からないからである。
以上のとおり,「青丹よし」が普通名称として一般に使用されている事
実はない。
イ現在,「青丹よし」の名称を使用して「青と赤の短冊型の干菓子」を製
造販売しているのは,原告及び被告らの4業者のみである。「青丹よし」
を商標の一部として「青と赤の短冊型の干菓子」に使用する業者もない。
しかも,前記のとおり,原告と被告らは「青丹よし」について,共同で
商標登録し,その名称を排他的に使用してきた結果,同名称で同干菓子を
製造販売する新規参入業者はいない。
「青丹よし」が「青と赤の短冊型の干菓子」について複数の業者に使用
されてきたといっても,それは原告及び被告らが排他的・閉鎖的に使用し
てきたのであって,同業者間で慣用的に自由に使用されてきたわけではな
い。
以上のとおり,「青丹よし」が慣用的に自由に使用されている事実はな
い。
2争点2(被告らは,被告各標章の使用について,先使用権(商標法32条1
項)を有するか)について
(1)被告らの主張
被告らはいずれも,遅くとも本件商標の出願日前である昭和9年から現在
に至るまで,日本国内において,青と赤の短冊型の干菓子を製造してきてお
り,その菓子に「青丹よし」という標章を使用してきた。
被告竹村は,本件商標の出願直前である昭和60年当時,「青丹よし」の
名称を用いて干菓子を販売し,需要者の間に広く知られていた。また,同時
期に被告萬勝堂及び被告萬々堂も「青丹よし」の名称を用いて干菓子を販売
して需要者の間に広く知られていた。
原告は,被告らが「登録商標」との表示を付して販売していたことをもっ
て不正競争の目的があったと主張するが,原告も本件商標が登録される前に
同様の行為を行っていたのであり,不正競争の目的があったとはいえない。
よって,被告らには被告各標章につき先使用権がある。
(2)原告の主張
被告らが,本件商標登録出願日前から被告各標章を使用していたとか,出
願の際に需要者の間に広く知られていたとはいえない。
また,被告らは,被告各標章が登録商標ではないにもかかわらず,「登録
商標」の表示を付し,消費者を欺瞞する態様で「青丹よし」を使用してきた
のであり,不正競争の目的で使用してきたというべきである。
3争点3(原告の本件商標登録は商標法4条1項10号の規定に違反してなさ
れたものか)について
(1)被告らの主張
原告の本件商標登録は,昭和61年8月30日当時,既に青と赤の短冊型
の干菓子について広く認識されていた「青丹よし」という商標を登録しよう
とするものであるから,商標法4条1項10号に反して登録されたものであ
る。
また,前記のとおり,原告と被告らは,過去に共同で「青丹よし」という
商標登録を行っており,原告はこれを認識していたのであるから,原告は被
告らの商標使用を知りつつ独占的に「青丹よし」の呼称を使用しようとした
ものであり,不正競争の目的で商標登録を受けたといえる。
よって,本件商標登録は,商標登録無効審判により無効にされるべきもの
であるから,商標法39条1項において準用する特許法104条の3第1項
により,原告は被告らに対し,その権利を行使することができない。
(2)原告の主張
否認ないし争う。
4争点4(損害額)について
(1)原告の主張
被告萬勝堂は,平成16年以降,被告標章1を付した菓子の販売によって,
1年間当たり少なくとも300万円の利益を得ている。よって,被告萬勝堂
の商標権侵害による原告の損害額は,3年間で900万円を下らない。
被告竹村は,平成16年以降,被告標章2を付した菓子の販売によって,
1年間当たり少なくとも300万円の利益を得ている。よって,被告竹村の
商標権侵害による原告の損害額は,3年間で900万円を下らない。
被告萬々堂は,平成16年以降,被告標章3を付した菓子の販売によって,
1年間当たり少なくとも300万円の利益を得ている。よって,被告萬々堂
の商標権侵害による原告の損害額は,3年間で900万円を下らない。
(2)被告らの主張
いずれも否認する。
第4当裁判所の判断
1争点1(本件商標と被告各標章との類似性)について
(1)本件商標の構成は,別紙原告商標目録記載のとおりであり,中央に大き
く縦書き毛筆体で「青丹よし」と大きく表示され,その右側上方に比較的小
さく縦書きで「元祖登録商標」と,左側下方に比較的小さく縦書きで「鶴
屋徳満」とそれぞれ毛筆体で書され,上記「青丹よし」の文字の真上に,小
さく毛筆体で「献上銘菓」という文字を十字に配して草の模様で囲った図形
(以下「上部図形」という。)を配し,さらに上記各文字及び図形の外周を
略長方形で囲ったものである。
被告各標章は,後記構成を有し,いずれも「青丹よし」との文字を含むも
のであるところ,原告は,本件商標における「青丹よし」との部分そのもの
を要部と捉えて,被告各標章はその要部において本件商標と同一又は類似で
あるから全体としても本件商標と同一又は類似である旨主張する。そこで,
まず「青丹よし」が本件商標における要部であるかどうかについて検討する。
ア以下の各項末尾に掲記した証拠及び弁論の全趣旨によれば,「青丹よ
し」という名称について,以下の事実が認められる。
「大和百年の歩み政経編」(昭和45年8月20日発行)という書(ア)
籍において,「青丹よし」の由来について,「幕末嘉永のころ,下御門
町東側に興福寺の大乗院や中宮寺の御用をつとめていた菓子屋藤原直次
がいた。粳米を炒(い)って粉にし砂糖をまぜてかため,四角にきった
炒米糖,おなじようなものにゴマをかけた真砂糖という菓子をつくって
いた。たまたま有栖川熾仁親王が中宮寺で,これらの菓子の妙味をほめ,
これからは青と赤の二色をつくり,白雲(雪あるいは霞との説もある)
を入れて短冊形にせよ,菓子名は『青丹よし』とすることを教えられた
という。直次はさっそくそのような菓子をつくり,南都はもちろん京都
でも好評を得た。」との記載があり,明治時代には奈良の多くの菓子屋
において製造されており,「青丹よし」について「明治19年,南玉堂
は登録商標を申請したが,もうそのころは奈良の町の多くの菓子屋でつ
くられていたため許可されないありさまであった。」と記載されている
(乙1)。
「日本の名菓」(昭和60年2月1日発行),「和菓子の一流品年鑑(イ)
’90」(平成2年発行)及び「美味探訪日本のお菓子」(同年発
行)という各雑誌並びに京菓子協同組合事務局が開設するウェブサイト
においても,「青丹よし」は,有栖川宮が命名した銘菓として,また被
告竹村の製造販売する菓子として紹介されている(乙4,13,14,
15)。
(ウ)「日本国語大辞典第二版」(平成12年発行)において,「青丹
よし」が「菓子の名。片栗と砂糖を原料として,短冊形に押し固め,表
面に斜めに白いかすり引きの模様をつけたもの。奈良の名物。」と説明
されている(乙6)。また,「角川茶道大事典(普及版)」(平成14
年発行)において,「青丹よし」が「奈良の枕詞として詠まれる『青丹
よし』を銘とする菓子。昔は白色で,江戸中期,有栖川宮が中宮寺に御
仮泊の時献上したもの。青と紅の二色に白い雲が散らされている。」と
説明されている(乙8)。
(エ)昭和9年当時,奈良市内の菓子製造業者は,いずれも「青丹よし」
という名称を使用して「青ト赤トノ二色ヲ一組トナシタル落雁ト同種ノ
干菓子」を販売していた(乙2)。
(オ)今日に至るまで,「青丹よし」という名称そのものについて商標登
録が認められた例はない(甲24,25,乙2,9∼11)。
イ上記認定した事実によれば,「青丹よし」は,幕末又は江戸時代中期に
有栖川熾仁親王ないし有栖川宮が命名したものと伝えられ,その後,主と
して奈良市内において複数の菓子業者によって広く製造販売されてきた
「青と赤との二色を一組にした落雁と同種の干菓子」であり,その名称は
奈良において製造販売されるこの種の干菓子に広く付せられてきたもので
ある。そして,「青丹よし」という名称そのものについて商標登録が認め
られた例はないことからすれば,「青丹よし」という名称そのものが特定
の業者の製造した上記干菓子を表示する機能を有しているとは認め難い。
まして,原告の製造販売する上記干菓子として出所識別力を獲得したと認
めるに足りる証拠は全くない。
この点,原告は,原告と被告らは,昭和26年に共同で「青丹よし」に
係る商標登録出願し,昭和28年5月8日に登録されて以降,昭和58年
に至るまで商標権を維持してきたことをもって,「青丹よし」には出所識
別力があると主張する。しかしながら,証拠(甲24,25)によれば,
当該登録に係る商標は,「青丹よし」の文字のみではなく,その上部に
「南都名産」との文字を十字に配して草の模様で囲った図形と相まって成
る商標であり,「青丹よし」そのものに出所識別力が認められたわけでは
ないのであるから,原告の主張は採用できない。
ウ以上のとおり,「青丹よし」との部分の出所識別力はきわめて弱いとい
わざるを得ない。したがって,被告らの主張するように「青丹よし」が普
通名称又は慣用名称とまで認められるか否かはともかく,同部分は本件商
標の要部たり得ないことは明らかであって,同部分と「献上銘菓」という
文字を十字に配して草の模様で囲った図形(上部図形)及び「鶴屋徳満」
という製造元の表示等と相まって初めて出所識別力が生じるものというべ
きである。また,本件商標において商品の出所を識別するものとして需要
者の注意を引くのも,これらの部分にあるといえる。したがって,本件商
標の要部は,本件商標全体又は本件商標中央部の「青丹よし」の文字に加
えて,上部図形及び左下部の「鶴屋徳満」の文字の全体にあると解するの
が相当である。
(2)以上を前提に,以下,被告各標章について,本件商標と類似するかどう
かを検討する。
ア被告標章1について
被告標章1は,「青丹よし」との明朝体風の文字を斜体で縦に配したも
ののみで構成されるところ,本件商標における毛筆体風の「青丹よし」と
字体が異なる上,被告標章1には本件商標における上部図形及び「鶴屋徳
満」との部分が存在しない。よって,外観において被告標章1と本件商標
とは類似しない。
被告標章1は「あおによし」との称呼を生ずるのに対し,本件商標は,
「けんじょうめいかがんそとうろくしょうひょうあおによしつる
やとくまん」又は「けんじょうめいかあおによしつるやとくまん」な
どとの称呼を生ずるものであるから,称呼において被告標章1は本件商標
と類似しない。
被告標章1の観念は,単に「青丹よし」というのみであるところ,本件
商標からは「鶴屋徳満が製造した青丹よしという銘菓」という観念を生じ
させるから,観念においても,被告標章1は本件商標と類似しない。
このように,被告標章1は,本件商標と,外観・称呼・観念のいずれも
類似しない。
イ被告標章2について
被告標章2は,中央に大きく「青丹よし」という文字を配し,その上部
に「南都名産」という文字を十字に配して草の模様で囲んだ図形を配し,
「青丹よし」の文字の右上には比較的小さく毛筆体で「御銘」と,左下に
比較的小さい文字で長方形で囲った中に「登録商標」との文字を配してい
るものである。このように,被告標章2は,同図形中の文字の配置及び模
様の外観において本件商標の上部図形と類似する部分があることが認めら
れ,また,毛筆体で書した「青丹よし」や,被告標章2の左下部に文字が
配されている点は,本件商標と同様の構成を取っているものといえる。
しかしながら,被告標章2は,その上部にある草模様に囲まれた文字が
「南都名産」であり,本件商標の「献上銘菓」とは異なる上,「青丹よ
し」の左右に配された文字が本件商標とは異なるから,本件商標と外観に
おいて類似しているとはいえない。
本件商標は,「けんじょうめいかがんそとうろくしょうひょうあ
おによしつるやとくまん」又は「けんじょうめいかあおによしつる
やとくまん」などとの称呼を生ずるのに対し,被告標章2は,「なんとめ
いさんおんめいあおによしとうろくしょうひょう」又は「なんとめ
いさんあおによし」などという称呼を生じるから,称呼において類似し
ているともいえない。
また,被告標章2では,製造者の表記がなされていないので,その観念
は「南都名産である青丹よし」というにすぎず,本件商標における「鶴屋
徳満が製造した青丹よしという銘菓」という観念とは異なるといわざるを
得ない。
このように,本件商標と被告標章2とは,外観において一部共通点が認
められるものの,称呼及び観念において全く異なり,出所の誤認混同を生
じる余地はないというべきである。よって,被告標章2が本件商標と類似
するとは認められない。
ウ被告標章3について
被告標章3は,「青丹よし」という文字を毛筆体風に縦に配したものの
みから成り立っていて,本件商標における「青丹よし」との部分と外観上
共通するところがある。しかし,被告標章3には,本件商標における上部
図形も「鶴屋徳満」との文字もないことから,外観において本件商標と類
似しているとはいえない。
被告標章3の称呼は「あおによし」であるのに対し,本件商標の称呼は,
「けんじょうめいかがんそとうろくしょうひょうあおによしつる
やとくまん」又は「けんじょうめいかあおによしつるやとくまん」で
あるから,称呼において被告標章3と本件商標とは類似しない。
被告標章3の観念は,単に「青丹よし」というのみであるところ,本件
商標の観念は「鶴屋徳満が製造した青丹よしという銘菓」というものであ
るから,観念においても本件商標とは類似しない。
このように,本件商標と被告標章3とは,外観・称呼・観念のいずれも
類似せず,両者には出所の誤認混同を生じ得る余地はない。よって,被告
標章3が本件商標と類似するとは認められない。
エ被告標章4について
被告標章4は,色彩,字体を問わず,「青丹よし」なる文字のみを指す
ものであるところ,被告標章3と同様,本件商標とは外観(被告標章3の
「青丹よし」は本件商標と同様に毛筆体であるのに対し,被告標章4の
「青丹よし」は色彩,字体を問わないというのであるから,その類似性の
隔たりは被告標章3よりも大きい。)・称呼・観念とも類似しないことが
明らかである。したがって,被告標章4が本件商標と類似するとは認めら
れない。
(3)以上からすれば,被告各標章は,いずれも本件商標と類似するものとは
いえないから,これを菓子又はその包装に付し,また,これを付した菓子又
はその包装を販売等する被告らの行為は本件商標権を侵害するものとは認め
られない。
2結語
以上の次第で,原告の請求はその余の点について判断するまでもなくいずれ
も理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第21民事部
田中俊次裁判長裁判官
西理香裁判官
北岡裕章裁判官

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛