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            主     文
        原判決を破棄する。
        本件を東京高等裁判所に差し戻す。
            理     由
 第1 事案の概要
 1 本件は,上告人がオランダにおいて設立した100%出資の子会社であるD
社が,その発行済株式総数の15倍の新株を上告人の関連会社であるEファンド社
に著しく有利な価額で発行したことに関して,被上告人が,上告人の有するD社株
式の資産価値のうち上記新株発行によってEファンド社に移転したものを,上告人
のEファンド社に対する寄附金と認定して,上告人の平成6年10月1日から同7
年9月30日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税の増額更
正及びこれに係る過少申告加算税賦課決定をしたことから,上告人が,上記更正の
うち申告額を超える部分及び上記賦課決定(以下「本件各処分」という。)の取消
しを求める事案である。
 2 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 上告人は,平成3年9月,その保有するF放送株式会社(以下「テレビF」
という。)株式3559株,株式会社G放送(以下「G放送」という。)株式15
万株及び現金を出資して,オランダにおいて100%出資の子会社であるD社を設
立し,同社の株式200株の発行を受けた。同社は,持株会社としての活動,融資
,投資等を目的としていたが,事業所や従業員を有しないいわゆるペーパーカンパ
ニーである。
 (2) 財団法人H文化財団は,平成7年2月当時,上告人の発行済株式の49.
6%を保有する筆頭株主であったが,同月13日,オランダにおいて100%出資
の子会社であるEファンド社を設立した。当時,Iは,上告人の取締役相談役,財
団法人H文化財団の理事長,D社の代表取締役及びEファンド社の取締役であり,
Jは,上告人の代表取締役,財団法人H文化財団の評議員,D社の代表取締役及び
Eファンド社の取締役であった。
 (3) D社は,平成7年2月13日,株主総会において,300万ギルダー増資
し,発行する3000株(1株の額面金額1000ギルダー)全部を303万03
03ギルダー(1ギルダー58.17円換算で1億7627万2725円相当)で
Eファンド社に割り当てる旨の決議をし,その払込みを受けて同社に上記3000
株を発行した。これにより,同社は,D社の発行済株式の93.75%を保有する
に至り,一方,上告人のD社に対する持株割合は,100%から6.25%に減少
した。この持株割合の変化は,上記各法人,その役員等が意思を相通じた結果であ
り,上告人は,Eファンド社との合意に基づき,D社の資産につき株主として保有
する持分93.75%を失い,Eファンド社がこれを取得した。これにより,D社
の増資前の資産価値の100%と増資後の資産価値の6.25%との差額が,上告
人からEファンド社に移転したが,その移転について,上告人がEファンド社から
対価を得ることはなかった。
 (4) 平成7年2月当時,G放送は,株式会社Kテレビジョン(以下「Kテレビ」
という。)株式1万0020株及びオランダ法人であるL社の株式200株を保有
し,L社は,Kテレビ株式4500株を保有していた。また,当時,D社,テレビ
F,G放送,L社及びKテレビの各株式は,非上場株式であり,気配相場や独立当
事者間の適当な売買実例がなく,その公開の途上になく,各社と事業の種類や収益
の状況等において類似する法人はなかった。
 (5) 国税庁長官の発出した昭和44年5月1日付け直審(法)25「法人税基
本通達」(平成12年課法2−7による改正前のもの)9−1−14(4)は,「売
買実例のあるもの」,「公開途上にある株式で,当該株式の上場又は登録に際して
株式の公募又は売出しが行われるもの」及び「売買実例のないものでその株式を発
行する法人と事業の種類,規模,収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額が
あるもの」に該当しない非上場株式で気配相場のないものにつき,法人税法(平成
17年法律第21号による改正前のもの)33条2項の規定を適用する場合の事業
年度終了の時における当該株式の価額は,「当該事業年度終了の日又は同日に最も
近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資
産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」によるものとしている。そ
して,同通達9−1−15は,法人が非上場株式で気配相場のないもの(「売買実
例のあるもの」及び「公開途上にある株式で,当該株式の上場又は登録に際して株
式の公募又は売出しが行われるもの」を除く。)について同項の規定を適用する場
合において,事業年度終了の時における当該株式の価額につき,国税庁長官の発出
した昭和39年4月25日付け直資56,直審(資)17「財産評価基本通達」の
178から189−6までの例によって算定した価額によっているときは,課税上
弊害がない限り,所定の条件を付してこれを認めるものとし,この条件の一つとし
て,財産評価基本通達(平成12年課評2−4,課資2−249による改正前のも
の)185本文に定める1株当たりの純資産価額の計算に当たり,当該株式の発行
会社が有する土地を相続税路線価ではなく時価により評価するものとしている。
 (6) 取引相場のない株式の価額について,財産評価基本通達(平成10年課評
2−10,課資2−264による改正前のもの)178本文,179は,評価しよ
うとする株式の発行会社(以下「評価会社」という。)を大会社,中会社及び小会
社に区分し,類似業種比準価額による評価(以下「類似業種比準方式」という。)
,1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)による評価等を
定めているが,同通達178ただし書,財産評価基本通達(平成15年課評2−1
5,課資2−5,課審5−9による改正前のもの)188,財産評価基本通達(平
成12年課評2−4,課資2−249による改正前のもの)188−2は,「同族
株主以外の株主等が取得した株式」については,配当還元価額による評価(以下「
配当還元方式」という。)によるものとしている。
 (7) 財産評価基本通達(平成12年課評2−4,課資2−249による改正前
のもの)185は,上記の1株当たりの純資産価額を,課税時期における各資産を
同通達に定めるところにより評価した価額の合計額から課税時期における各負債の
金額の合計額及び財産評価基本通達(平成10年課評2−5,課資2−240によ
る改正前のもの)186−2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当す
る金額(以下「法人税額等相当額」という。)を控除した金額を課税時期における
発行済株式数で除して計算した金額とすると定めている。そして,同通達186−
2は,法人税額等相当額を,「課税時期における各資産をこの通達に定めるところ
により評価した価額の合計額(中略)から課税時期における各負債の金額の合計額
を控除した金額」から「各資産の帳簿価額の合計額(中略)から課税時期における
各負債の金額の合計額を控除した金額」を控除した残額に51%を乗じて計算した
金額とすると定めている。
 なお,財産評価基本通達(平成11年課評2−12,課資2−271による改正
前のもの)186−3は,評価会社について上記の1株当たりの純資産価額を算定
するに当たって,評価会社が取引相場のない株式を保有する場合には,同株式の1
株当たりの純資産価額の算定において法人税額等相当額を控除しないことを定めて
いる。
 (8) 財産評価基本通達(平成15年課評2−15,課資2−5,課審5−9に
よる改正前のもの)188(1)は,配当還元方式により評価すべき「同族株主以外
の株主等が取得した株式」の一つとして,「同族株主のいる会社の株主のうち,同
族株主以外の株主の取得した株式」を挙げ,この同族株主とは,評価会社の株主の
うち,株主の1人及びその同族関係者(法人税法施行令(平成15年政令第131
号による改正前のもの)4条に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいう。以
下同じ。)の有する株式の合計数がその会社の発行済株式数の30%(評価会社の
株主のうち,株主の1人及びその同族関係者の有する株式の合計数が最も多いグル
ープの有する株式の合計数が,その会社の発行済株式数の50%以上である会社に
あっては,50%)以上である場合におけるその株主及びその同族関係者をいうも
のとしている。
 3 原審は,上記事実関係等の下において,次のとおり本件各処分に違法はない
と判断して,上告人の請求を棄却した。
 (1) 法人税法22条2項にいう取引とは,関係者間の意思の合致に基づいて生
じた法的及び経済的な結果を把握する概念と解される。上告人は,Eファンド社と
の合意に基づき,D社の資産につき株主として有する持分93.75%を喪失し,
Eファンド社がこれを取得したから,上告人とEファンド社との合意により,上告
人の保有するD社株式200株が表章していた資産価値の相当部分(同社の増資前
の資産価値の100%と増資後の資産価値の6.25%との差額)がEファンド社
に移転したものということができる。これは,同項に定める無償による資産の譲渡
又はその他の取引に当たり,上記のとおり移転した資産価値は,上告人の本件事業
年度の益金の額に算入される。
 (2) D社株式は,非上場株式であり,気配相場や独立当事者間の適当な売買実
例がなく,その公開の途上になく,同社と事業の種類や収益の状況等において類似
する法人はなかった。そして,同社は,含み益を有する土地を所有するテレビF及
びG放送の各株式を保有しているから,D社株式の価額を財産評価基本通達に定め
る評価方法の例によって算定することには,課税上弊害がある。したがって,同株
式については,法人税基本通達(平成12年課法2−7による改正前のもの)9−
1−14(4)により,時価純資産価額方式(資産及び負債を時価により評価して純
資産価額を算出し,1株当たりの価額を算出する方法)により評価すべきである(
なお,法人税額等相当額は控除しない。)。
 (3) D社が保有するテレビF株式及びG放送株式,G放送が保有するL社株式
並びにG放送及びL社がそれぞれ保有するKテレビ株式は,非上場株式であり,気
配相場や独立当事者間の適当な売買実例がなく,その公開の途上になく,各社と事
業の種類や収益の状況等において類似する法人はなかった。その評価は,D社株式
と同様,法人税基本通達(平成12年課法2−7による改正前のもの)9−1−1
4(4)に基づき,時価純資産価額方式によるべきである。なお,本件においては,
企業の継続を前提とした客観的交換価値を求めるのであるから,日本法人であるテ
レビF,G放送及びKテレビの各株式の1株当たりの純資産価額の算定においても
,法人税額等相当額を控除しないのが相当である。
 (4) 上記(2)及び(3)の評価方法により評価したD社の純資産価額を基に,上告
人からEファンド社に移転したD社の資産価値を算定すると,255億7926万
6285円となるから,上告人は,本件事業年度において,同額の収益を得るとと
もに,Eファンド社に対する同額の寄附金を支出したものというべきである。
 第2 上告代理人山田二郎の上告受理申立て理由第1について
 論旨は,原審の上記第1の3(1)の判断に法人税法22条2項の解釈適用の誤り
がある旨をいう。
 前記事実関係等によれば,上告人は,D社の唯一の株主であったというのである
から,第三者割当により同社の新株の発行を行うかどうか,だれに対してどのよう
な条件で新株発行を行うかを自由に決定することができる立場にあり,著しく有利
な価額による第三者割当増資を同社に行わせることによって,その保有する同社株
式に表章された同社の資産価値を,同株式から切り離して,対価を得ることなく第
三者に移転させることができたものということができる。そして,上告人が,D社
の唯一の株主の立場において,同社に発行済株式総数の15倍の新株を著しく有利
な価額で発行させたのは,上告人のD社に対する持株割合を100%から6.25
%に減少させ,Eファンド社の持株割合を93.75%とすることによって,D社
株式200株に表章されていた同社の資産価値の相当部分を対価を得ることなくE
ファンド社に移転させることを意図したものということができる。また,前記事実
関係等によれば,上記の新株発行は,上告人,D社,Eファンド社及び財団法人H
文化財団の各役員が意思を相通じて行ったというのであるから,Eファンド社にお
いても,上記の事情を十分に了解した上で,上記の資産価値の移転を受けたものと
いうことができる。
【要旨】以上によれば,上告人の保有するD社株式に表章された同社の資産価値に
ついては,上告人が支配し,処分することができる利益として明確に認めることが
できるところ,上告人は,このような利益を,Eファンド社との合意に基づいて同
社に移転したというべきである。したがって,この資産価値の移転は,上告人の支
配の及ばない外的要因によって生じたものではなく,上告人において意図し,かつ
,Eファンド社において了解したところが実現したものということができるから,
法人税法22条2項にいう取引に当たるというべきである。
 そうすると,上記のとおり移転した資産価値を上告人の本件事業年度の益金の額
に算入すべきものとした原審の判断は,是認することができる。論旨は,採用する
ことができない。
 第3 上告代理人山田二郎の上告受理申立て理由第2について
 1 論旨は,原審の上記第1の3(3)の判断のうちG放送,Kテレビ及びテレビ
Fの各株式の評価方法に関する部分並びに同(4)の判断に法人税法22条2項の解
釈適用の誤りがある旨をいい,① G放送株式については時価純資産価額方式(法
人税額等相当額は控除する。)により評価すべきであること,② Kテレビ株式に
ついては,配当還元方式により評価すべきであり,時価純資産価額方式により評価
するとしても,法人税額等相当額を控除すべきであること,③ テレビF株式につ
いては,配当還元方式又は類似業種比準方式により評価すべきであり,時価純資産
価額方式により評価するとしても,法人税額等相当額を控除すべきであること,以
上を主張する。
 2 D社の保有するG放送株式の評価方法について
法人税基本通達(平成12年課法2−7による改正前のもの)9−1−14(4)は
,法人税法(平成17年法律第21号による改正前のもの)33条2項の規定を適
用して非上場株式で気配相場のないものについて評価損を計上する場合に,当該株
式に売買実例がなく,その公開の途上になく,その発行法人と事業の種類,規模,
収益の状況等が類似する法人がないときは,事業年度終了の時における当該株式の
価額は,当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人
の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引される
と認められる価額による旨を定めている。もっとも,このような一般的,抽象的な
評価方法の定めのみに基づいて株式の価額を算定することは困難であり,他方,財
産評価基本通達の定める非上場株式の評価方法は,相続又は贈与における財産評価
手法として一般的に合理性を有し,課税実務上も定着しているものであるから,こ
れと著しく異なる評価方法を法人税の課税において導入すると,混乱を招くことと
なる。このような観点から,法人税基本通達(平成12年課法2−7による改正前
のもの)9−1−15は,財産評価基本通達の定める非上場株式の評価方法を,原
則として法人税課税においても是認することを明らかにするとともに,この評価方
法を無条件で法人税課税において採用することには弊害があることから,1株当た
りの純資産価額の計算に当たって株式の発行会社の有する土地を相続税路線価では
なく時価で評価するなどの条件を付して採用することとしている。したがって,財
産評価基本通達(平成12年課評2−4,課資2−249による改正前のもの)1
85が定める1株当たりの純資産価額の算定方式を法人税課税においてそのまま採
用すると,相続税や贈与税との性質の違いにより課税上の弊害が生ずる場合には,
これを解消するために修正を加えるべきであるが,このような修正をした上で同通
達所定の1株当たりの純資産価額の算定方式にのっとって算定された価額は,一般
に通常の取引における当事者の合理的意思に合致するものとして,法人税基本通達
(平成12年課法2−7による改正前のもの)9−1−14(4)にいう「1株当た
りの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」に当たるというべ
きである。そして,このように解される同通達9−1−14(4),9−1−15の
定めは,法人の収益の額を算定する前提として株式の価額を評価する場合において
も合理性を有するものとして妥当するというべきである。
 ところで,財産評価基本通達(平成12年課評2−4,課資2−249による改
正前のもの)185が,1株当たりの純資産価額の算定に当たり法人税額等相当額
を控除するものとしているのは,個人が財産を直接所有し,支配している場合と,
個人が当該財産を会社を通じて間接的に所有し,支配している場合との評価の均衡
を図るためであり,評価の対象となる会社が現実に解散されることを前提としてい
ることによるものではない。したがって,営業活動を順調に行って存続している会
社の株式の相続及び贈与に係る相続税及び贈与税の課税においても,法人税額等相
当額を控除して当該会社の1株当たりの純資産価額を算定することは,一般的に合
理性があるものとして,課税実務の取扱いとして定着していたものである。
 法人税基本通達については,平成12年課法2−7による改正により,法人税課
税における1株当たりの純資産価額の評価に当たり法人税額等相当額を控除しない
ことが規定されるに至ったのであって,この改正前の平成7年2月ころに,財産評
価基本通達(平成12年課評2−4,課資2−249による改正前のもの)185
が定める1株当たりの純資産価額の算定方式のうち法人税額等相当額を控除する部
分が,法人税課税における評価に当てはまらないということを関係通達から読み取
ることは,一般の納税義務者にとっては不可能である。取引相場のない株式の取引
は,法人税額等相当額を控除した純資産価額を上回る価額でされることもあり得る
が,一般にその取引の当事者は上記関係通達の定める評価方法に関心を有するもの
であり,その評価方法が取引の実情に影響を与え得るものであったことは否定し難
く,これとかけ離れたところに取引通念があったということはできない。
 したがって,企業の継続を前提とした株式の評価を行う場合であっても,法人税
額等相当額を控除して算定された1株当たりの純資産価額は,平成7年2月当時に
おいて,一般には通常の取引における当事者の合理的意思に合致するものとして,
法人税基本通達(平成12年課法2−7による改正前のもの)9−1−14(4)に
いう「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」に
当たるというべきである。このように解釈される上記「1株当たりの純資産価額等
を参酌して通常取引されると認められる価額」によって株式の価額を評価し,これ
を前提に法人の収益の額を算定することは,法人税法の解釈として合理性を有する
ということができる。
 そうであるとすると,平成7年2月当時におけるG放送の1株当たりの純資産価
額の評価において,企業の継続を前提とした価額を求める場合であることのみを根
拠として,法人税額等相当額を控除することが不合理であって通常の取引における
当事者の合理的意思に合致しないものであるということはできず,他に上記控除が
上記の評価において著しく不合理な結果を生じさせるなど課税上の弊害をもたらす
事情がうかがわれない本件においては,これを控除して1株当たりの純資産価額を
評価すべきである。
 これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反が
ある。G放送株式の評価方法の違法をいう論旨は,この趣旨をいうものとして理由
がある。
 3 G放送及びL社が保有するKテレビ株式の評価方法について
 (1) 法人税基本通達(平成12年課法2−7による改正前のもの)9−1−1
5は,前記のとおり課税上弊害がない限りなどと留保を付した上で,財産評価基本
通達の定める非上場株式の評価方法を法人税課税においても採用している。
 前記事実関係等によれば,平成7年2月当時,Kテレビ株式は,非上場株式であ
り,気配相場や独立当事者間の適当な売買実例がなく,その公開の途上になく,同
社と事業の種類や収益の状況等において類似する法人がなかったというのである。
そして,原審における上告人の主張によれば,そのころのKテレビの株主の持株比
率は,その筆頭株主が51.1%ないし45.6%であり,G放送及びその同族関
係者に当たるL社が合計28.4%であり,したがって,Kテレビに対する関係に
おいて,上記筆頭株主は財産評価基本通達(平成15年課評2−15,課資2−5
,課審5−9による改正前のもの)188(1)にいう同族株主に当たるが,G放送
及びL社は同族株主に当たらないというのである。そうであるとすれば,G放送及
びL社が保有するKテレビ株式は,同通達188(1)にいう「同族株主のいる会社
の株主のうち,同族株主以外の株主の取得した株式」に該当し,同通達188,財
産評価基本通達(平成12年課評2−4,課資2−249による改正前のもの)1
88−2においては配当還元方式により評価すべきこととなる。同通達が,上記株
式の評価を配当還元方式によることとしているのは,少数株主が取得した株式につ
いては,株主は単に配当を期待するにとどまるという実質を考慮したものである。
 もっとも,上告人の主張するG放送及びL社の合計持株比率は,同族株主に該当
するかどうかの基準である30%を下回り,筆頭株主の持株比率に劣るものの,そ
の割合は低いものではないから,事業経営への影響力の実情によっては,G放送及
びL社が単に配当を期待してKテレビ株式を保有していたと評価するのが適当でな
いこともあると考えられ,そうであるとすれば,本件において同株式を配当還元方
式により評価することが著しく不合理な結果を生じさせるなど課税上の弊害をもた
らす場合もあると考えられる。
 ところが,原審は,上記の持株比率や課税上の弊害について何ら審理判断するこ
となく,Kテレビ株式を法人税基本通達(平成12年課法2−7による改正前のも
の)9−1−14(4)に基づき時価純資産価額方式により評価すべきであるという
結論を導いている。
 したがって,原審の上記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反がある。Kテレビ株式の評価方法の違法をいう論旨は,この趣旨をいうものとし
て理由がある。
 (2) 仮にG放送及びL社が保有するKテレビ株式を配当還元方式により評価す
ることに前記の課税上の弊害があるとすれば,法人税基本通達(平成12年課法2
−7による改正前のもの)9−1−14(4)に基づき時価純資産価額方式により評
価すべきことになる。この場合には,財産評価基本通達(平成11年課評2−12
,課資2−271による改正前のもの)186−3の趣旨が妥当するところ,前記
のとおり,G放送の純資産価額の算定において法人税額等相当額を控除するのであ
るから,Kテレビの純資産価額については,重ねて法人税額等相当額を控除するこ
となく算定すべきである。
 4 D社が保有するテレビF株式の評価方法について
 (1) 前記事実関係等によれば,平成7年2月当時,テレビF株式は,非上場株
式であり,気配相場や独立当事者間の適当な売買実例がなく,その公開の途上にな
く,同社と事業の種類や収益の状況等において類似する法人がなかったというので
ある。そして,原審における上告人の主張によれば,そのころのテレビFの株主の
持株比率は,その筆頭株主のグループが38.3%であり,D社及びその同族関係
者が合計21.4%であり,したがって,テレビFに対する関係において,上記グ
ループの株主は財産評価基本通達(平成15年課評2−15,課資2−5,課審5
−9による改正前のもの)188(1)にいう同族株主に当たるが,D社は同族株主
に当たらないというのである。そうであるとすれば,同社が保有するテレビF株式
は,同通達188(1)にいう「同族株主のいる会社の株主のうち,同族株主以外の
株主の取得した株式」に該当し,同通達188,財産評価基本通達(平成12年課
評2−4,課資2−249による改正前のもの)188−2においては配当還元方
式により評価すべきこととなる。
 もっとも,記録によれば,① 上告人は,平成7年3月1日,100%出資の子
会社である株式会社M社メディアを設立したこと,② 上告人は,同月13日,株
式会社M社メディアに対し,テレビF株式1242株を1株当たり540万円で譲
渡したこと,③ 同価額は,上告人が株式会社Nサービスに依頼して評価させた同
月1日時点の同株式の時価純資産価額方式による評価額を基に算定されたこと,④
 上告人の主要株主である財団法人O教育協会は,同月24日,株式会社M社メデ
ィアに対し,テレビF株式335株を1株当たり540万円で譲渡したこと,以上
の事実は当事者間に争いがなく,また,上記評価額は,法人税額等相当額を控除す
ることなく算定されたことがうかがわれる。そうであるとすれば,上記のテレビF
株式の各売買において譲渡価額が1株当たり540万円とされたのが,同株式を時
価よりも高額で売買するという特別の目的によるものでない限り,上記各売買の当
事者は,同株式を配当還元方式により評価するよりも時価純資産価額方式(法人税
額等相当額を控除しない。)による方が適切であること,すなわち,同株式の価額
を単に配当を期待して株式を保有する株主に妥当する配当還元方式によっては適正
に評価することができないことを認識していたものというべきである。そうすると
,上記各売買に近接した時期における上告人の100%出資の子会社であるD社の
認識も同様であった可能性があり,同社の認識がそのようなものであるとすれば,
本件において同社の保有するテレビF株式を配当還元方式により評価することが著
しく不合理な結果を生じさせるなど課税上の弊害をもたらす場合もあると考えられ
る。
 ところが,原審は,上記の持株比率や課税上の弊害について何ら審理判断するこ
となく,テレビF株式を法人税基本通達(平成12年課法2−7による改正前のも
の)9−1−14(4)に基づき時価純資産価額方式により評価すべきであるという
結論を導いている。なお,原審は,テレビFが含み益を有する土地を所有すること
を摘示しているが,このことは,相続税基本通達にのっとり,同土地の相続税路線
価を基に算定した1株当たりの純資産価額によってテレビF株式を評価することを
不合理とする理由とはなるが,配当還元方式による評価を直ちに不合理とするもの
ではない。
 したがって,原審の上記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反がある。テレビF株式の評価方法の違法をいう論旨は,この趣旨をいうものとし
て理由がある。
 (2) 仮にD社が保有するテレビF株式を配当還元方式により評価することに前
記の課税上の弊害があるとすれば,前記のとおり,テレビFと事業の種類や収益の
状況等において類似する法人がなかったというのであるから,同株式を類似業種比
準方式により評価するのは相当でなく,法人税基本通達(平成12年課法2−7に
よる改正前のもの)9−1−14(4)に基づき時価純資産価額方式により評価すべ
きことになる。この場合には,法人税額等相当額を控除することが通常の取引にお
ける当事者の合理的意思に合致しないものであるかどうか,ひいては,前記の課税
上の弊害があるかどうかを判断するために,前記の上告人又はその主要株主と上告
人の子会社との間におけるテレビF株式の各売買からうかがわれる関係者の同株式
の価額についての認識等を審理すべきである。
 第4 結論
 以上によれば,原判決は破棄を免れない。そして,Kテレビ株式及びテレビF株
式の評価方法に関して上記各点を審理するとともに,G放送株式を時価純資産価額
方式(法人税額等相当額は控除する。)により評価し,これらに基づいてD社の純
資産価額,同社の資産価値のうちEファンド社に移転した額及びこれを前提とした
上告人の納付すべき税額を算定させるため,本件を原審に差し戻すこととする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田宙靖 裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三 裁判官 堀籠
幸男)

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