弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
被告人は無罪。
理由
第1本件公訴事実と争点
本件の公訴事実は「被告人は,平成19年6月12日午後9時ころ,大阪市,
A区Ba丁目b番c号C神社南側路上に停車した普通乗用自動車内において,D
(当時14年)に対し,その手を払いのけ,その両足を無理矢理開いた上,同女
に覆い被さるなどの暴行を加えて,その反抗を抑圧し,強いて同女を姦淫したも
のである」というものであり,検察官は,Dは,性交に同意しておらず,被告。
人は強姦の手段である暴行を加え,強姦の故意を有していたと主張している。
これに対して,弁護人は,被告人が上記日時場所においてDと性交をしたこと
は争わないものの,①被告人はDと同意に基づいて性交をし,②反抗抑圧に足り
る暴行脅迫を用いた強姦行為を行っておらず,③強姦の故意を有していなかった
旨主張し,被告人も公判でこれに沿う供述をしている。
そこで,以下,これらの点について検討する。
第2当裁判所の判断
1証拠上認められる事実
関係証拠(被告人の公判供述,第3回ないし第6回公判調書中の被告人の各供
述部分,第2回公判調書中の証人Dの供述部分,Dの検察官調書〔甲4,5。た
だし,不同意部分除く,実況見分調書〔甲6,11,捜査報告書〔甲7〕な。〕〕
ど)によれば,以下の各事実が認められる。
()犯行前の状況1
①被告人は,本件当時24歳であり,交際相手と同棲していた。Dは,本
件当時14歳の中学生であり,本件以前に男性と交際した経験があり,キ
スをした経験はあった。
②被告人は,平成19年6月11日(以下,平成19年中の出来事につい
ては年号の記載を省略する)午前10時ころ,大阪市E区Fd丁目付近。
路上を車で通行中,学校(G中学)に行くため制服姿で道を歩いていたD
を見かけ,かわいいと思い,声をかけた。
③Dは,被告人に誘われて,被告人運転の車に乗り込み,車内で会話をし
た。会話内容は,Dが中学生であるということ,Dに交際相手がいるかど
うか,被告人がDに金を見せて自慢したことなどであった。被告人は,D
に対して,名前を「H」と名乗り,年齢を18歳,出身中学校を,同区内
のI中学校と偽った。
④車内での会話の中で,被告人が,Dに「付き合おうか」と言ったとこ。
ろ,Dは「1日待って」と答え,互いに携帯電話の番号を教え合い,被。
告人がその日の夜にDに電話をかけることを約束して別れた。Dは,その
際,被告人に対して,嫌な感じを受けなかった。
⑤Dは,その後,被告人と別れ,登校した。
⑥被告人は,その日の晩,Dに電話をかけなかった。
⑦Dは,翌6月12日,学校で,友達に,被告人と会ったことを話し,友
達に「かけてみ,かけてみいや」と言われて,昼ころ,被告人の携帯電,。
話に電話をかけ,なぜ前日に電話をしてこなかったのかを尋ねた。
,,,⑧被告人は仕事中だったことから後で被告人からかけ直すことにして
一度電話を切り,午後6時ないし6時30分ころ,Dの携帯電話に電話を
かけた。
⑨Dは,その日の夕方,友人のJ方に行っていた。被告人は,電話で,D
,,,。に対し会って話そうと誘いDは最初断ったが結局会うことになった
その際,Dが帰宅して化粧をしたり,服を着替えたり,風呂に入りたいと
言ったことから,会う時間について,約1時間後の午後8時と約束した。
⑩その後,被告人は,Dに電話をかけ,用意ができたか聞くとともに,学
校の制服を着てくるように言った。
⑪Jは,被告人がDに制服を着てくるように言ったことを知って,Dに対
して,被告人と会わないように話したが,結局Dは,大丈夫だと言って,
被告人と会うことをやめなかった。
⑫Dは,自宅に戻って風呂に入り,化粧をしたが,制服は着ず,ジャージ
のズボンにTシャツを着て家を出た。
()犯行状況2
①Dは,午後8時過ぎころ,大阪市E区Fe丁目f番所在のK公園で被告
人と待ち合わせ,被告人の車の助手席に乗り込んだ。被告人は,すぐに車
を発車させ,市内付近をドライブした。
②車内で,被告人が,Dに対して,自分と付き合うのかどうか尋ねると,
Dは,付き合うことを承諾した。
③その後,被告人は,現場に行く途中の車内で,Dに対してキスをした。
④被告人は,大阪市A区Ba丁目b番c号C神社南側路上に車を停めた。
同所北側は神社,南側は大阪市A区内の住宅地である。
⑤被告人の車は,座席が3列あるワンボックスタイプのステーションワゴ
ンであった。
⑥被告人は,Dとセックスをしたいと思い,同女に,後部座席に移ろうと
誘った。被告人は,まず後部座席に移動して,2列目と3列目の座席の背
もたれを倒し,その後,Dが後部座席に移動した。
,,,。⑦被告人は座った状態でDと少し話をして寝ころびDとキスをした
Dは,このキスについては,嫌ではなかった。
⑧被告人が,Dのブラジャーのホックを外し,胸をもんでいる際,Dは,
「今日はやめとかへん「早過ぎひん」などと言って被告人の肩ないし。」。
腕を押した。しかし,被告人は「いいんじゃない」などと言って,やめ,。
なかった。
⑨被告人は,Dの下着の中に手を入れて陰部を触り,Dは「今日はやめ,
とかへん」などと言ったが,被告人は「いいやん」などと言って続け。,。
た(Dは,足を閉じようとしたと供述するが,被告人は,口で言っただけ
と供述し,争いがある。また,この際,被告人が「入れるまではせえへん
から」と言ったかどうかについても争いがある。。。)
⑩被告人は,Dのジャージのズボンとパンツを脱がせた(このとき,Dが
足を閉じたり,ジャージを持って脱がされないようにしていたかどうかに
ついては争いがある。。)
⑪被告人が,Dの陰部をなめたかについては,被告人はなめたと供述し,
Dははっきりしないと供述をしている。
,,⑫被告人は前の座席のハンドル下のポケットからコンドームを取り出し
ズボンとパンツを脱ぎ,コンドームをはめ,陰茎を陰部に挿入した(この
とき,Dが「痛い,今日はやめて」などと言ったかどうかについては,。
争いがある。。)
⑬性交前後,Dが涙を流すことはなかった。
()犯行後の状況3
①被告人は,性交後,Dに「大丈夫か」などと聞き,Dは,それに対し,。
て,大丈夫である旨返答した。
②現場を出る前,被告人が,自分の携帯電話に,見知らぬ電話番号から着
信履歴があることに気付いて「だれやろ」などと言うと,Dは,被告人,。
の携帯電話を見た。
,。,,③被告人はDをD方の近くに送っていったDは被告人車を降りたが
すぐには自宅に戻らなかった。
()警察への通報に至る経緯4
①Jは,午後8時10分ころにK公園に着いたとのメールを最後に,Dと
連絡が取れなくなり「おかしい」と考えて,午後8時40分ころ,Dの,。
様子を見にK公園に行ったが,Dの姿はなかった。さらに,Jは,Dの別
の友人LにもK公園に来るよう連絡し,2人でDを捜したが見あたらなか
った。また,Dに電話をかけたがつながらず,Jは,Dは拉致されたと思
い,110番通報した。
②Jは,Dの友人から被告人の携帯電話番号を聞いて,Lが被告人に電話
をかけ「Dをさらったやろう」などと言って問いつめた。,。
③Dは,午後9時30分ころ,Jに「ごめん,今帰っているところ」と,。
,,,「。」いうメールを送りJがDに電話をかけるとDは別に何もなかった
と話した。
,,,④Dの友人MはDが被告人と会ったことを知った上でDに電話をかけ
「。」,,,,犯されたんと聞きDは最初は何もないと言っていたがその後
「うん」と返事をした。。
,,,,,,⑤JはMからDが犯されたと聞いてLにそれを伝えLは電話で
被告人に対して「犯したやろう」などと言って問いつめた。。
⑥被告人は,Dに電話をかけて「何で俺がそんなことを言われなあかん,
ねん。友達に電話するのやめさせ」などと話し,Dの友達からの電話に。
ついて話し合うため,D方の近くで会うことにした。その後,被告人とD
は会ったが,このとき,被告人は「何で犯されたって言ったんや「何,。」
で付き合ったん」などと言い,Dから,別れると言いだし,2人は別れ。
ることになった。被告人とDは,その後,連絡をとっていない。
,,,,⑦Dは警察から携帯電話に今から迎えに行くからという連絡が入り
Lと警察官が一緒に来たので,同日E警察署に行った。
2D及び被告人の争点に関する供述要旨
()D供述1
被告人が,車の後部座席で私にキスをした後,ブラジャーのホックを外し
てきたとき,私は,ブラジャーを押さえ,被告人が陰部に手を伸ばしてきた
とき,足を閉じたりした。被告人には「入れるまではせえへんから」と言,。
われた。私は,足に力を入れていたが,ジャージのズボンとパンツを脱がさ
れ,閉じていた足を開かれて,セックスされた。被告人に陰茎を陰部に押し
,「,。」,,。つけられ痛い今日はやめてと言ったがやめてくれず挿入された
()被告人の捜査段階の供述2
Dのブラジャーのホックを外したところ,Dが私を両手で押すような仕草
をして「今日はやめよう」などと言った。Dには,セックスをするつもり。
はないのかもしれないと思ったが「いいやん,大丈夫やから」などと言っ,。
。,,,て手を払って揉み続けたまたズボンの中に手を入れようとするとDは
手首をつかんで「やめよう」と言ってきたが,多少無理をして続ければ大。
丈夫だろうと思い,ズボンの中に手を入れて陰部を触った。Dが両足に力を
入れて股を閉じていたので触りにくかった。反対の手で無理やり開かせて触
った。私は「ええやん。入れるまではせえへん」と言ってDの頼みを無視,。
。,「。」し続けたズボンとパンツを脱ぎコンドームを付けDが本当にやめよう
といって両手で陰部をかくし足を閉じていたのを,膝を持って両手で足を開
き,覆い被さった。Dが「痛い。やめて」と叫ぶように言ったが,性欲を。
満たすため,陰茎を陰部に押しつけ,挿入した。私は,Dが嫌がっていたの
を分かりながら,無理やりセックスをした。
()被告人の公判供述3
後部座席に来たDにキスをし,服の上から胸と下腹部を触ったが,そのと
きは嫌だとかやめてとか言われていない。その後,胸を触ったときに「今,
日はやめとかへん」と言われて片手で,肩をくっと押された「いいんじゃ。。
ない」などと答えると,Dは黙った。服の中に手を入れて下腹部を触って。
いるとき,また「今日はやめとかへん」と言われた。このとき,手で押す。
。,,。ようなそぶりはなかった私がいいやんというとDは何も答えなかった
ジャージとパンツを脱がせるとき,Dが手でつかんで脱がされないようにし
,。たということはなくDが腰を浮かせたのですんなり脱がせることが出来た
私はDの陰部をなめ,そのときDは嫌がる様子はなかった。私は,途中でコ
,,。ンドームをつけDの陰部に陰茎を挿入したがDが痛がる様子はなかった
3各供述の信用性
()D供述に関する事情1
①積極的に働く事情
Dは,当時14歳の中学生であり,本件以前に性交をした経験があるとi
はうかがわれず,たとえ付き合っている相手でも,性交を求められてこれ
を拒絶しても不自然ではない。被告人とDが性交をした場所は,神社横の
路上に駐車中の車内である上,通行人から容易に見られるおそれがある場
所であり,初めて会ってからまだ2日目で,せいぜい1時間程度前に交際
を決めた被告人との性交を受け入れることに抵抗を覚えるというのは合理
的である。
上記のとおり,Dが,被告人に対して,今日はやめておこうという趣旨ii
の発言をしたことについては争いがなく,この事実は,Dが性交に同意し
ておらず,これを拒んだことと沿うものである。
Dは,本件の直後,友人から「犯されたん」と聞かれて肯定し,そのiii。
日のうちに警察に出向いている。Dが,被告人と別れた後,すぐ家に入ら
なかったという点も,Dが性交を受け入れていなかったことと符合するも
のである。
Dは,捜査段階から,被告人とキスをすることまでは受け入れていたこiv
とを認め,当公判廷においては,弁護人から質問を受けて,被告人に会う
前に身支度を整えたことなども認めており,自己に不利益に働くとみられ
る事実を認めている。
②消極的に働く事情
Dは,後部座席に行くとき,体に触られること,セックスは予想しなかi
ったと供述するが,被告人とは,現場に行くまでの間にもキスをしている
こと,後部座席に行くときには,座席が倒されていて,横になりやすい状
況になっていたこと,被告人に言われてすぐに寝転がったことをDが認め
ていること,キスは任意に受け入れていることを考慮すると,体に触られ
ることを予想していなかったというのは不自然ともみられる。
Dは,通行人から容易に見られうる公道上で,キスをしたりすることまii
では承諾しており,その当時まで,被告人に対し,不快感,嫌悪感は持っ
ておらず,被告人と交際することを承諾していた。
Dは,捜査段階では,当初,後部座席に移動してから被告人が座席を倒iii
していたと供述していたが,その後,被告人が座席を倒してから後部座席
に移動したと供述するようになっており,供述内容に変遷がある。
Dは,親に対して,交際相手がいたことはないと説明しており,また,iv
本件当日は,母親が外出しており,外に出るなと言われていたのにそれに
背いて外出していること,また,友人のJが本件に先立ってDの意向を確
認することなく警察に通報していることなどに照らすと,被告人の行為を
過大に供述する要因があるともみられる。
()被告人の捜査段階の供述に関する事情2
①積極的に働く事情
被告人の検察官調書の内容の中核部分は,Dの供述と符合している。i
検察官調書の内容には,必ずしもDの供述に現れていない事実や,Dのii
供述に沿わない事実も含まれており,同調書が警察官を含む取調官の誘導
の産物であるとはいえない点もみられる。
②消極的に働く事情
警察では,供述が押しつけられた疑いがある(警察官自身,公判で,被i
告人に反省させる意味からも,被告人の供述調書は強めに取っていると供
述している)上,検察官取調べについても,その影響を除去するために。
何らかの措置がとられたと認めることはできない。
当公判廷において現れた被告人に有利な事実が十分に録取されていなii
い。
()被告人の公判供述に関する事情3
①積極的に働く事情
Dが被告人との交際に積極的であり,本件直前に,被告人がDに対して
付き合うかどうか尋ねてDが承諾していること,Dが,車の後部座席で横
になってキスをすることを受け入れていたことに照らせば,Dが,被告人
との性交を最終的に受け入れたとしても不自然ではない。
②消極的に働く事情
Dが被告人に対して,今日は性交はやめておこうという発言をしたことi
自体は争いがなく,それにもかかわらず,Dが性交を受け入れるに至った
原因が十分に説明されていない。
Dが当時14歳の中学生であり,たとえ交際している相手であっても,ii
。,,性交を拒絶して不自然ではない被告人自身Dが男性とキスをしたこと
付き合ったことがあると聞いたとは供述しているが,セックスをしたこと
があると聞いたとまでは供述していない。
()信用性の判断と認定事実4
以上を総合すると,被告人がDの陰部を触ろうとした際に,Dが足を閉じ
たこと,性交の前に,Dが「今日はやめて」と言い,足を閉じていたが,。
被告人は「入れるまではせえへん」と言うなどし,Dの足を開け性交した,。
とのDの供述の信用性は高く,この点に関する被告人の公判供述は採用でき
ない。
他方,その際の被告人の内心に関する被告人の捜査段階の供述の信用性判
断には,慎重な考慮が必要と解される。
(),,以上の点及び前記1証拠上認められる事実によれば本件公訴事実中
被告人が本件現場で,Dに対し,その両足を開いた上,同女に覆い被さり,
同女と性交した事実は認められる。なお,Dの手を払いのけた点は,Dは公
判で供述しておらず,この点についての捜査段階の被告人供述の信用性には
,。慎重な考慮が必要とされることに照らすと証拠上認定することはできない
4争点に対する判断
以上を前提に,強姦の成立について検討する。
()争点①(Dの同意について)1
上記のとおり,Dは,被告人に対して今日は性交をやめておこうという発
言をし,また,足に力を入れて閉じるなど拒絶する態度を示していることが
認められる。Dが14歳の中学生であり,被告人とは本件前日に初めて知り
合い,付き合い始めたのも本件当日であることなどにかんがみれば,Dが性
交に同意していなかったことは認められる。
()争点②(反抗を著しく困難にする程度の暴行について)及び争点③(強2
姦の故意)について
①認定に積極的に働く事情
Dは,性交しようとしていた被告人に対し,本件性交前に「今日はやめi
とかへん」などと言っていた。。
被告人は,Dの陰部に手を伸ばした際,閉じていたDの足を開き,Dがii
足を閉じているにもかかわらず,ジャージのズボンとパンツを脱がせ,D
の閉じている足を開いた。
Dは,本件当時14歳であり,性交が行われた時刻は午後9時ころで,iii
場所は,神社横の路上に停めた自動車内であった。
②認定に消極的に働く事情
Dから,被告人に本件当日の昼に電話をかけ,なぜ前日の夜連絡をしてi
,。こなかったのか尋ねておりDも被告人との交際に対して積極的であった
Dは,本件当日,被告人に会う前に,化粧,着替え及び入浴をして身支ii
度を整えており,被告人もそのことを認識していた。
本件直前,被告人は,車の中で,Dに付き合うか尋ね,Dがこれを承諾iii
しており,性交を受け入れたものと被告人が考えても不自然ではない人的
関係にあった。
,,,iv被告人は本件現場に行くまでの間にDとキスをし本件現場において
後部座席にDを誘い,後部座席を倒した後に,Dは後部座席に移動して,
任意に寝転がり,被告人とキスをしている。そうすると,Dは,被告人と
は,強く抵抗することが困難な関係にはなく,被告人の方も,Dの抵抗に
対して多少強引に迫れば,Dもあきらめ,同意により性交できると期待し
ても不自然ではない。
Dの公判供述によっても「やめて」というのは,被告人に聞こえる程v,。
度の声であり,叫ぶなど強い拒絶の様子を示したとまでは認められない。
その抵抗の態様は,被告人の肩ないし腕を手で押さえたり,上記のとおvi
り,容易に開かれる程度に足を閉じていたと言うに止まる。ジャージのズ
ボンとパンツを脱がされる際も,ズボンを軽く持っていたと言うにとどま
り,パンツを脱がされるときには,パンツを持っていない。
ジャージのズボンとパンツには,脱がされるに際して破れた形跡はなvii
く,D自身「あっさりと私の両足を開き」と供述しており,足を固く閉じ
ていたとまでは認められないし,開かれた後,必死で抵抗したとの状況で
はなかった。
本件自動車を運転し,本件現場に停車した被告人は,本件現場がDと待viii
ち合わせをした場所やDの通う中学校から1キロメートル前後の距離にあ
る,南側は住宅地となっている公道上であることは認識していたとみられ
る。
③結論
前記②によれば,前記①の諸点を考慮しても,被告人がDの足を開く行為
及びDに覆い被さる行為が,反抗を著しく困難にする程度の有形力の行使で
あるとは認めがたい(被告人が性交前にDに「入れるまではせえへん」と。
言ったとしても,それは,Dの抵抗を弱める意味があり,非難されるべき言
動ではあるが,この言葉自体が反抗を著しく困難にする脅迫あるいは,前記
有形力の行使をして反抗を著しく困難にする暴行にまで至らしめるものとは
いえず,上記認定を左右するものではない。被告人は,Dが拒否的な態度。)
を示しつつも,最終的には大きな抵抗もないことから,自己との性交を消極
的ながら受け入れていたと誤信していた疑いは払拭できない。
第3結論
以上によれば,被告人の行為は,前日に知り合ったばかりの14歳の中学生に
公道上に停めた自動車内で性交するという社会的には不相当な行為であり,人間
として深く反省すべき点があるのは明らかであるが,刑法上の強姦罪の成否とい
う観点からは,被告人がDに対してその反抗を著しく困難にする暴行を加えたと
は認められず,また,強姦の故意があったとも認めることはできない。よって,
結局本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから,刑事訴訟法33
6条により被告人に対し無罪の言渡しをする。
(求刑−懲役5年)
平成20年6月27日
大阪地方裁判所第13刑事部
横田信之裁判長裁判官
赤坂宏一裁判官
鮫島寿美子裁判官

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