弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 弁護人石田馨の上告趣意第一について。
(1) しかし刑訴応急措置法第一三条第二項が憲法に違反するものでないことは、
既にしばしば当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第五六号同二三年二月六日大法廷
判決、昭和二二年(れ)第四三号同二三年三月一〇日大法廷判決)に示されている
通りである。
 本件各被告人は、第一審判決に於ては懲役二年六月又は三年に処せられ、第二審
判決に於ては各懲役五年を科せられたこと所論の通りであるが、第二審は第一審と
は別異の覆審であるから、両者の間に刑の量定を異にしたからとて怪しむに足りな
いし、又本件のように検事の控訴があつた場合に、第二審判決の刑が第一審より重
かつたからとて、違法でもない。かような審級間の判断の懸隔を統一するために、
又は各裁判所各部間の判決の不統一を是正するために、刑訴応急措置法第一三条第
二項を憲法違反でないとした判例を改める必要は認められない。
(2) 刑訴応急措置法第一三条第二項の解釈については、所論第二の見解の通り
に、量刑不当が同時に違法を含むと認められる場合には上告理由となり得るのであ
るから、所論の第一の見解を前提とした場合のような憲法違反の問題は生じ得ない。
よつて論旨第一は何れも理由がない。
 同上第二について。
 論旨は各被告人の一身上の事情や環境を説き、又改正少年法を援用して、原判決
の量刑の過重であることを主張している。
 しかし、量刑が甚しく不当であつて違法の因子を含む場合には、これを上告理由
となし得るものとしても、本件の量刑が、所論のように裁判官の恣意を以て国法の
要求する規準を逸脱した違法のものとは認められないから、論旨は採用することが
できない。
 同上第三について。
(1) 公判調書中に契印の脱漏あることは所論の通りであるか、公判調書に契印
が欠けていたからとて、これを無効とする規定はない。且つ所論の第一審第二回公
判調書は、原判決が証拠として採用しているものではないから、同調書の瑕疵は原
判決に何等の影響を及ぼすものでない。
(2) 第二審まで相被告人であつたAの上訴権拠棄申立通知書の中に所論のよう
な誤記があつたからとて、原判決には何等の関係もないことである。
(3) 所論の瑕疵は第一審判決文中のものであるから、本件上告の理由とはなり
得ない。
 右の理由によつて論旨第三は凡て採用することができない。
 なお本件には新刑事訴訟法の適用なく、旧刑事訴訟法及び刑訴応急措置法の適用
せられる事件であるから、量刑不当を理由として職権によつて原判決を破毀するこ
とはできない。
 弁護人菊地養之輔上告趣意第一点について。
 論旨は、原審公判調書の中に相被告人Aの供述として「三人で清酒三升(公判調
書には所論のように三升でなく二升とある)飲みました」「三人共いい気嫌になり
ました」「酒のいきおいで遂にやつて終いました」等の記載あることを援用して、
これは被告人等が心神耗弱の状況にあつたことを主張したものであるというのであ
る。しかし右のような供述をもつて心神耗弱の主張をしたものと解することはでき
ない。なお原審公判調書を調べてみても、その他にも、被告人又は弁護人から、本
件犯行が心神耗弱の状態において行われたものであるとの主張がなされた旨の記載
はない。従つて原判決がこの点に関して何等の判断をも示さなかつたからとて、所
論のような違法あるものということはできない。論旨は理由がない。
 同上第三点について。
 論旨によれば、被告人等が原判決理由(ニ)の(イ)行為直前飲んだ清酒三升(
これは二升の誤りであることは論旨第一点について指摘した通りである)は、各被
告人の酒量を著しく超えているので、被告人等が少くとも心神耗弱の状態にあつた
ことは明かであるというのであるけれども、被告人等が犯行当時前後不覚であつた
というような事実は記録に現われていないのみならず、「夜中の一時や二時頃まで
酔つていたわけではなかつた」というような供述は、却つてその反対の推断の資料
となるものである。それ故に原判決が、被告人等の心神耗弱の状態にあつたことを
認めず、従つて又減刑の法条を適用しなかつたことを以て、経験法則を無視した違
法の裁判ということはできない。論旨は理由がない。
 同上第二点について。
 原審第一回公判調書を調べてみると、菊地弁護人から原判決(ニ)の(イ)犯罪
事実の被害者Bを(弁償関係につき)証人に申請したことが明かである。しかも原
審裁判所はこの申請を却下しながら、右のB提出の盗難届、盗難被害始末書及び盗
難届追加三通を前記犯罪事実の証拠として採用していること所論の通りである。し
かし刑訴応急措置法第一二条第一項の法意は、供述録取書に記載されている供述を
した者を被告人の訊問にさらし、供述の真実性を確めようとすることにあると解せ
られる。ところが、本件で前記の証人に訊問しようとすることは、供述録取書に記
載されている供述の真偽を質すのではなくて、被害の弁償の有無である。してみれ
ば録取書記載の供述の真偽については、被告人等は同証人を喚問する機会を与えら
れることを請求していないものと解される。弁償の立証のための証人申請は、録取
書の供述者以外の第三者を証人に申請した場合と同様に刑訴応急措置法第一二条第
一項による請求とは認められない。そうしてこの条項は、被告人の請求があつたと
きに限り、その供述者を訊問する機会を与えれば足りるという意であること、当裁
判所の判例に示されている通りである。そうだとするならば、原審裁判所が、Bを
証人として喚問することの申請を却下しながら、同人提出の盗難届等を証拠に採用
したことを以て、所論のように刑訴応急措置法第一二条第一項に違反するものとい
うことはできない。論旨は理由がない。
 以上の理由により最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項、旧刑事訴訟法第四
四六条に従い主文の通り判決する。
 この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 柳川真文関与
  昭和二四年七月五日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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