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平成12年(行ケ)第418号 審決取消請求事件 (平成17年2月24日口頭
弁論終結)
  判          決
   原      告     アークテクノ株式会社
訴訟代理人弁護士     増田利昭     
   同補佐人 弁理士   瀬谷徹
   被      告   大日本塗料株式会社
   訴訟代理人弁護士   中村稔
   同 熊倉禎男
   同          辻居幸一 
   同    飯田圭
   同          渡辺光
   同    弁理士浅井賢治
   同復代理人弁護士竹内麻子
主          文
   原告の請求を棄却する。
      訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が平成11年審判第35339号事件について平成12年9月12日
にした審決を取り消す。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
   被告は,発明者を被告の従業員であったA,B,C及びD(以下,それぞれ
「A」,「B」,「C」,「D」といい,この4名を「本件発明者ら」という。)
とし,出願人を被告として,昭和62年8月24日に特許出願(以下「本件特許出
願」という。)され,平成3年12月20日に設定登録された,名称を「溶射被膜
の形成方法」とする特許第1628133号発明(以下,その特許を「本件特許」
という。)の特許権者である。
   原告は,平成11年7月5日,本件特許につき無効審判を請求した。特許庁
は,同請求を平成11年審判第35339号事件として審理し,平成12年9月1
2日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年1
0月4日,原告に送達された。
 2 本件特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の特
許請求の範囲第1項記載の発明(以下「本件発明」という。)の要旨
   亜鉛線材,アルミニウム線材,及びこれらの合金線材からなる群から選ばれ
た線材の2本を,減圧内アーク溶射方法により同時に基材上に溶射し,Zn/Al
=90/10~50/50(重量比)の亜鉛・アルミニウム被膜を得ることを特徴
とする溶射被膜の形成方法。
 3 審決の理由
   審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,①本件明細書の特許請求の範囲第
1項及び第2項に係る発明の発明者は,本件発明者らではなく,請求人(注,原
告)の代表者であるEであるところ,被請求人(注,被告)はEから上記発明につ
いて特許を受ける権利を承継することなく,本件特許出願をして本件特許を受けた
ものであるから,上記発明の特許は特許法123条1項6号に該当し,その特許は
無効にされるべきである旨の請求人の主張に対し,②特許請求の範囲第2項に係る
発明は,同第1項に係る発明(本件発明)の実施態様であるから,その特許に関す
る請求人の主張は失当であり,これについては判断する必要を認めない(審決謄本
6頁「5.当審の判断」の項の第1,第2段落),③本件発明については,甲1~
5号証(注,本訴における甲1~5)からは,Eがその真正の発明者であるとする
ことはできないから,Eが本件発明の真正の発明者であることを前提とする請求人
の主張は採用することができない(同8頁の「(6) まとめ」の項)と判断し
て,請求人の主張する理由及び提出した証拠によっては,本件発明の特許を無効と
することはできないとした。
第3 原告主張の審決取消事由
 1 審決は,本件特許が特許法123条1項6号に該当するとするには,まず,
本件発明をEが発明したことが立証されなければならないが,甲1~5からは,E
が本件発明の真正な発明者であるとすることはできないとした。その理由の要旨
は,①三菱商事株式会社〔以下「三菱商事」という。〕高機能化学品部塗料関連企
業チームリーダーF作成の昭和59年12月12日付け書簡(甲1,以下「甲1書
簡」という。)からは,Eが被告の横浜工場を訪問したこと及び同人が代表取締役
をしている株式会社パンアートクラフト(以下「パンアートクラフト社」とい
う。)が常温溶射に関する技術を保有していることを読み取ることはできるが,甲
1書簡は,Eが本件発明を発明したことを立証するに足りるものではない,②パン
アートクラフト社,三菱商事及び被告の三者間で締結された昭和60年(月日記入
なし)付けの「業務提携協定書」(甲2,以下「甲2協定書」という。)によれ
ば,パンアートクラフト社が開発した減圧内アーク溶融溶射技術による「塗装・被
覆方法の防錆・防蝕技術分野及びその他の塗料関連分野における応用利用方法の研
究開発並びにその商品化及び販売方法の確立による事業展開を目的とした業務提携
関係の設定」に関して,パンアートクラフト社,三菱商事及び被告の三者が業務提
携協定(以下「甲2協定」という。)を締結した事実は認められるが,減圧内アー
ク溶融溶射技術がEが開発(発明)したものか否かは不明であり,また,仮にEが
それを開発したとしても,その開発した「減圧内アーク溶融溶射技術」が本件発明
と同一の構成を有するものであるかも不明である,③G作成の平成11年5月16
日付け書簡及びこれに添付された同人作成の「証言 E氏と大日本塗料並びに三菱
商事の関係経緯」と題する文書(甲3,以下まとめて「甲3書簡」という。)に
は,Eの溶射技術が従来技術とはことごとく異なり,特に,高温でなく常温に近い
温度で溶射できる点及び亜鉛とアルミのワイヤーを同時に一つのガンで溶射できる
点で異なることについての記述があるが,本件発明は,「装置」の発明ではなく,
「方法」の発明であって,亜鉛線材,アルミニウム線材の2本を使用して,「減圧
内アーク溶射方法により同時に基材上に溶射し,Zn/Al=90/10~50/
50(重量比)の亜鉛・アルミニウム被膜を得る」点を構成要件としているとこ
ろ,仮に,Eが,上記のとおり,常温に近い温度で溶射することができ,亜鉛とア
ルミのワイヤーを同時に一つのガンで照射することのできる装置を開発していたと
しても,そのような装置は本件方法の発明を実施するのに必要な装置であるとはい
えるが,そのような装置をEが発明したからといって,同人が本件発明である方法
の発明を発明したと認めることはできない,④甲3及びH作成の平成11年5月2
5日付け「証明書」と題する書面(甲4,以下「甲4証明書」という。)には,E
が本件発明を発明した旨の記述があるが,それらは請求人(原告)が証明すべき
「Eが本件発明を発明した」という事実について,単に「その事実がある」と記述
しているにすぎず,このような記述からは,Eが本件発明を発明したという事実を
認めることはできない,⑤特開昭64-52051号公報(甲5,注,本件特許に
係る出願の公開公報)もEが本件発明を発明したことを立証するに足りるものでな
い,というものである。
しかしながら,審決の上記認定判断は,以下の2のとおり,誤りである。
 2 取消事由(冒認出願についての事実誤認)
 (1) そもそも甲2協定は,パンアートクラフト社の減圧内アーク溶射技術を防
錆・防蝕分野へ応用し,製品化するための業務提携であり,本件特許は,その実施
例に示されるように,パンアートクラフト社の製造,販売に係る減圧内アーク溶射
装置を使用することが前提となっている。そして,甲2協定に基づいて被告従業員
らがたびたびパンアートクラフト社を訪れ,研究開発の成果,資料等の提示を受け
ていたことは,関係各証拠から明らかである。そうすると,パンアートクラフト
社,特にその代表者で長年溶射技術の研究開発に従事していたEが,減圧内アーク
溶射装置を使用して亜鉛とアルミニウムの同時溶射をするという本件発明と同一内
容の方法を,甲2協定による業務提携の開始前に発明していたことは,十分に推認
可能なものである。
 (2) 冒認出願に関する事実経過の主張
   ア Eは,昭和52年に,減圧内アーク溶射機の初期モデルの開発に成功し
た。さらに,昭和55年から昭和59年にかけて,同人の設立したパンアートクラ
フト社において,溶射技術によって金型を作成する「マッハモールド溶射金型製作
法」を開発し,これを実施する装置を販売した。昭和60年には,パンアートクラ
フト社が,同社の減圧内アーク溶射機「PA-120」の販売に関して,東洋紡エ
ンジニアリング株式会社(以下「東洋紡エンジニアリング」という。)との間で同
年8月31日付け総代理店契約(甲6)を締結した。
 イ Eは,昭和50年代半ばまでに,減圧内アーク溶射装置による亜鉛とア
ルミニウムの同時溶射の技術を発明しており,これによって基材表面に形成される
亜鉛とアルミニウムの擬合金被膜を「アルジン」と命名した。昭和56年3月10
日東洋総研作成の「試作型・少量生産型の製造方案と採用によるコスト低減・工期
短縮事例研究会」と題する冊子(甲16)には,「アルジン」,「Al,Zn」の
溶射例が記載されており,その当時から既に,溶射材としての「アルジン」の使用
が現実に行われていたことが分かる。また,当時,パンアートクラフト社が扱って
いた,簡易金型製作法の低温溶射装置「マッハモールド」(ないしメタルクラフト
ガン)の資料(甲19~24)からも,当時既に,亜鉛とアルミニウムの同時溶射
が行われていたことが分かる。
   ウ 甲2協定の経緯
   昭和50年代半ばの減圧内アーク溶射装置による亜鉛-アルミニウム擬
合金被膜形成技術の開発により,パンアートクラフト社は,昭和50年代末ころか
ら,上記技術を効果的に販売していくための営業力を持つ取引先を探すようになっ
た。その一つが三菱商事,もう一つが東洋紡エンジニアリングであった。三菱商事
に対しては,昭和58年ころから接触を始め,同社との業務提携の話が進んでい
き,その過程で,三菱グループの重防食分野を担当していた被告も業務提携に加わ
ることになり,昭和60年5月10日,甲2協定が成立した。
   エ Eの発明
Eは,昭和60年時点において,亜鉛線材とアルミニウム線材を,減圧
内アーク溶射法により同時に基材表面に溶射し,亜鉛とアルミニウムの擬合金被膜
を得ることを特徴とする溶射被膜の形成方法の発明を完成していた。このことは,
甲3書簡からも十分に読み取ることができ,また,昭和60年8月31日にPA-
120型溶射装置についてパンアートクラフト社との間で総代理店契約(甲6)を
締結した東洋紡エンジニアリングが,そのころパンアートクラフト社と共に作成し
た,「減圧内アーク溶射による重防錆防蝕被膜加工について」と題する販売用資料
(甲7,以下「甲7資料」という。)の内容からも明らかである。すなわち,同資
料には,「対塩害用重防錆溶射」と題し,「Zn.Al.擬似合金溶射は,減圧内
アーク溶射法の最も有効な被膜加工法といえます。亜鉛,アルミニュウムのそれぞ
れ異なった金属ワイヤーを使用してアーク溶融すると同時に混合粒子を溶射出来ま
す。亜鉛を気化さすことなく,アルミニュウムも溶融し平均に混合粒子の溶射被膜
加工が自由にスプレー出来ます。※アルジン溶射被膜(亜鉛アルミニュウム擬似合
金溶射被膜)は,対塩害用として,大きな防錆防蝕効果が発揮されます。アルミニ
ュウム被膜と異なり封孔処理の必要がなく,加工及びコスト面で最も有効な溶射被
膜加工といえます」(3頁)との記載とともに,アルジンの溶射被膜厚みが100
μ,150μ,200μの場合にそれぞれ平均耐用年数が10年,15年,20年
であることを示す表(同頁)が掲載されている。さらに,昭和61年に作成された
東洋紡エンジニアリングの「防錆防蝕用・減圧内アーク溶射機PA-120」と題
するパンフレット(甲8,以下「甲8パンフレット」という。)には,「使用ワイ
ヤーは1.1mmφ,亜鉛,アルミニウムを使用します」,「下回りには,100
μ亜鉛,アルミニウムの擬似合金被膜をスプレーすることで,海岸,冷寒地域の塩
害腐食を10年間完全に防止できます」と記載されており,これらの記載から,当
時既に,防錆防蝕用,特に塩害腐食の防止のために,亜鉛線材(直径1.1mm)
とアルミニウム線材(直径1.1mm)を使用して,亜鉛及びアルミニウムを同時
溶射する技術が開発されていたことは明らかである。記載された亜鉛及びアルミニ
ウム線材の直径(いずれも1.1mm)に基づいて計算すると,溶射被膜における
亜鉛とアルミニウムの質量比は約73:27となり,本件発明と重複する。なお,
甲8パンフレットは,昭和61年に作成されたものであり,この点については,稲
垣尚美堂の受注台帳(甲9)に,昭和61年11月17日に東洋紡エンジニアリン
グから「PA-120パンフ」2000部のパンフレットを受注したことが記載さ
れている。
   オ 甲2協定に基づくパンアートクラフト社から被告に対する本件発明に関
する資料の提供
     パンアートクラフト社は,被告が甲2協定の4条に基づいて担当する研
究開発等に関して,同協定5条に従い,以下のように技術・ノウハウ,各種試験の
結果等を被告に提供した。
(ア) 昭和61年3月 
      特殊亜鉛線材と通常亜鉛線材のマッハモールド溶射試験をパンアート
クラフト社において実施し,その結果を被告に提供した(甲10)。
(イ) 同年7月
      パンアートクラフト社において,減圧内アーク溶射機「PA-60
0」による溶射実験を実施し,その結果を被告に提供した(甲11,12)。
 なお,甲12(D及びB作成の昭和61年7月14日付け「株式会社
パンアートクラフト御中,低温溶射機PA600実験計画」と題する文書)の1枚
目には,「〔2〕低温溶射の能力とガス溶射に対する優位性の確認」と題する項目
の中に,「(6) 亜鉛-アルミニウムの擬合金溶射膜の評価をする」との記載があ
り,パンアートクラフト社において「亜鉛とアルミニウムの同時溶射」実験を行う
ことが明記されている。
 (ウ) 同年9月
      パンアートクラフト社において,溶射用プライマー塗布板への減圧内
アーク溶射装置による溶射実験を行い,その結果を被告に提供した(甲13,1
4)。
 甲14(被告中央研究所B作成のパンアートクラフト社宛て「溶射用
プライマー塗布材送付の件」と題する昭和61年9月20日付け書面)には,各種
溶射用プライマー塗布板への溶射の依頼とともに,「プライマー溶射板は26枚あ
りますが,全て,亜鉛-アルミニウムの1.1mm線材の疑合金で約150μの溶
射膜厚にしてください」と記載されている。
(エ) 同年10月
 同年10月7日,パンアートクラフト社からE,被告側から被告中央
研究所のBらが出席して被告の東京支店で行われた打合せにおいて,Eは被告に対
し,亜鉛-アルミニウムの減圧内アーク溶射について情報を提供した(甲15)。
 甲15(被告中央研究所B作成の「出張報告 低温溶射用プライマー
の電磁波シールドへの展開について」と題する昭和61年10月13日付け文書)
には,被告側から「耐食性は亜鉛溶射膜よりも亜鉛-アルミ疑合金の方が良好な結
果であるが,亜鉛から一部アルミにすると,コスト的に高くならないか」との質問
が出されたのに対し,Eが,「同一体積では亜鉛とアルミのコスト差は殆どない,
同一膜厚ではコスト差はない」旨回答をしたことが記されている。
   (オ) 以上のことから,甲2協定による業務提携に基づき,パンアートクラ
フト社側から,被告に対して,亜鉛とアルミニウムの同時溶射に関する各種実験結
果が提供されていたことが分かる。
   カ 被告による冒認出願
    被告は,昭和62年8月24日,減圧内アーク溶射技術による亜鉛とア
ルミニウムの同時溶射による亜鉛-アルミニウム擬合金被膜の形成方法を,被告の
従業員である本件発明者らがした発明であると偽って,本件特許出願を行った。し
かし,上記の方法は,そもそもEが発明し,その溶射装置によって実用化段階にあ
ったものであり,被告は甲2協定に基づいて亜鉛とアルミニウムの同時溶射技術に
ついて様々な実験結果をパンアートクラフト社から入手したことを利用し,被告側
で実験して発明した発明であるかのように装って,本件特許出願をしたものであ
る。
   キ 仮に,甲2協定に基づいて実施された各種実験結果により,本件発明に
係る「亜鉛とアルミニウムの同時溶射」技術が発明として完成したものとしても,
その発明は,甲2協定に基づく共同開発により完成されたものであるから,本来,
被告が単独で出願できる性質のものではなく,共同発明者であるE(もしくはパン
アートクラフト社)との共同出願(特許法38条)とされるべきものであった。し
たがって,その点においても,被告による本件特許出願は,冒認出願というべきで
ある。
 (3) 被告の主張に対して
   ア 被告は,本件発明は,被告が行った実験に基づく検討,評価の結果,減
圧内アーク溶射法により形成される特定の範囲の亜鉛-アルミニウム擬合金被膜
が,従来技術における美観やコストの問題を解決し,他の溶射被膜に比べて高い防
錆防蝕性を有するとの知見を得たことに基づき発明したものであると主張する。し
かしながら,本件発明の特許請求の範囲に記載された亜鉛とアルミニウムの重量比
のうちの一部(例えば,Zn/AL=90/10の部分)は実施不可能である。本
件発明のうち,実施可能な部分は,昭和50年代に既にパンアートクラフト社によ
って実施されていた。したがって,当時実施されていた亜鉛とアルミニウムの同時
溶射の技術と本件発明とは,何ら変わるところがなく,本件発明は,本件発明者ら
が発明したものではない。
 イ 被告は,昭和62年6月ころまでに被告において独自に実験したとこ
ろ,亜鉛とアルミニウムの同時溶射に高い防食性があることが判明したと主張し,
4900時間の塩水噴霧試験を行った結果を示すという同月28日付け確認印のあ
る乙40-1を提出している。しかし,この日付けから逆算すると,塩水噴霧試験
の試験開始は昭和61年12月ということになるが,その当時,被告は,減圧内ア
ーク溶射装置を保有していなかった(被告の購入したPA-600は,当時,三菱
重工広島工場に設置されており,また,被告が小型の減圧内アーク溶射装置PA-
100を購入したのは昭和62年2月であると被告自身主張している。)から,被
告独自に減圧内アーク溶射実験を行い,塩水噴霧試験等の試験を行ったということ
は,事実としてあり得ない。
   ウ 以上のとおり,本件発明が本件発明者らによって創作されたとする被告
の主張は,事実に反する。
第4 被告の反論
1審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由は理由がない。
2 取消事由(冒認出願についての事実誤認)について
(1) 本件発明は,本件発明者らが,亜鉛-アルミニウム擬合金被膜の密着性,
耐食性,耐水性,屋外暴露性等について,独自に各種の測定,試験を行い,その検
討,評価の結果,減圧内アーク溶射法により形成される特定の範囲の亜鉛-アルミ
ニウム擬合金被膜が,従来技術における美観やコストの問題を解決し,他の溶射被
膜に比べて高い防錆防蝕性を有するとの知見を得たことに基づき,発明したもので
ある。Eは,本件発明の技術的思想の創作行為に関与していない。
    被告は,パンアートクラフト社に依頼して,亜鉛,アルミニウム,キュプ
ロニッケル(銅-ニッケル合金),亜鉛-アルミニウム合金等の溶射を実施しても
らったことがあるが,Eないしパンアートクラフト社から,従来技術の問題点の指
摘やその具体的な解決手段を提示されたことはなく,また,本件発明そのものに係
る研究開発の成果,資料等の提示を受けたこともない。
 (2) 冒認に関する事実経過の主張について
   ア 被告は,甲2協定の締結前から,防錆防蝕のために金属材料に金属を溶
射する技術を研究し,実際に施工もしており,同技術に関する知識,経験,ノウハ
ウ等を有していた。これに注目した三菱商事が,被告にパンアートクラフト社のE
を紹介し,被告がパンアートクラフト社の減圧内アーク溶射装置を金属材料の防錆
防蝕のために転用することができるかどうかの検討及び評価をすることになった。
このような経緯で,昭和60年6月ころ,甲2協定が締結された。
   イ 被告は,昭和61年2月ころ,パンアートクラフト社の減圧内アーク溶
射装置PA-600を購入したが,自社内の設置場所の問題から,暫定的に同装置
をパンアートクラフト社に設置してもらい,被告が実験等を行うときは,パンアー
トクラフト社において同装置を使用して必要な溶射を行ってもらうことにした。原
告が指摘する溶射実験は,いずれも被告側で各種条件を設定し,作業手順を確定
し,これをパンアートクラフト社に指示して行ったものである。その上で,被告は
独自に,その溶射膜の密着性,耐食性,耐水性,屋外暴露性等の比較,検討,評価
を行ったが,パンアートクラフト社に依頼して行った溶射実験からは,本件発明の
完成に至るような有意な知見を得ることはできなかった。
   ウ 被告は,昭和61年7月ころから,トルコ共和国第2ボスポラス橋につ
いて,防錆防蝕のために,亜鉛溶射等を施工していたが,金属溶射のためのブラス
ト処理面を形成することが困難であることを解決課題として,そのころ,金属溶射
のための粗面形成剤の研究開発を開始した。その結果,被告の中央研究所員であっ
たB,C及びDが粗面形成剤「ブラスノン」を開発した。ブラスノンに関する「金
属溶射被膜の作製方法」の発明の特許出願(昭和62年1月16日出願)は,パン
アートクラフト社の要求を容れて,同社と被告の共同出願としたが(乙7),その
ころから,同社は,いまだ実用開発途上の「ブラスノン#11」等を,被告の承諾
を得ることなく,同社の減圧内アーク溶射PA-120のパンフレットに掲載する
などしたため,被告は,昭和62年3月ころ,甲2協定に基づく業務提携関係を事
実上棚上げすることとした。以後も,被告とパンアートクラフト社との間には,溶
射板の作成を依頼する程度の関係は継続したものの,それ以上の緊密な関係はなか
った。
   エ 一方で,被告は,昭和61年秋ころから,被告の中央研究所において,
改めて,金属材料,ブラスノン等による前処理,溶射線材,溶射条件,溶射膜厚,
研磨処理,上塗り塗装等について,独自に各種の条件を設定し直し,昭和62年2
月に購入したPA-100を使用して各種金属の溶射を行うなどして,その溶射膜
の防錆防蝕性能等の検討,評価をし直した。その結果,同年7月ころ,一定の亜鉛
及びアルミニウムの減圧内アーク溶射によって形成された亜鉛-アルミニウム擬合
金溶射被膜が高い防錆防蝕性を有することが判明し,本件発明の完成に至ったもの
である。
   オ なお,甲2協定は,昭和60年6月1日から昭和61年5月31日まで
を「準備期間」と定めており(3条2項),準備期間満了までに当事者間で事業化
につき合意が成立しないときは,甲2協定は準備期間をもって終了するとされてい
る(10条2項)。当事者間に事業化についての合意は成立しなかったから,甲2
協定は昭和61年5月31日をもって終了している。同日以降も,被告とE及びパ
ンアートクラフト社との間に,上記のとおり,溶射板の作成を依頼するという程度
の関係は継続していたが,共同の目的の下に開発行為を分担するというような緊密
な関係は存在しなかったものである。
第5 当裁判所の判断
 1 原告は,本件発明は,本件発明者らが発明したものではなく,Eが発明した
ものであり,本件特許の出願人である被告は,発明者であるEから本件発明につい
ての特許を受ける権利を承継していないから,本件特許には,「その特許が発明者
でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願
に対してされたとき」(特許法123条1項6号)の無効理由があると主張する。
なお,原告の主張中には,仮にEが本件発明の単独発明者でないとしても,同人
は,本件発明の共同発明者であるから,本件特許出願は,「特許を受ける権利が共
有に係るときは,各共有者は,他の共有者と共同でなければ,特許出願をすること
ができない」と定める同法38条の規定に違反してされたものである旨の主張があ
るが,同法38条違反を理由とする無効理由については,審判において審理判断さ
れておらず,原告の上記主張も,Eが本件発明の共同発明者であれば,同人に対す
る関係において,本件特許出願は共同発明者である者の一部から特許を受ける権利
を承継することなくされたものであるとの主張と解されるから,以下では,Eが本
件発明の技術的思想の創作において共同発明者と評価し得る貢献をしたかという点
も含めて,検討することとする。
 2 まず,本件発明について検討する。
 (1) 本件明細書(以下,引用は本件特許公報〔甲35〕による。)の発明の詳
細な説明欄には,①〔従来の技術〕として,(ア)「鋼板の表面に,亜鉛,アルミニウ
ム,亜鉛・アルミニウム合金等,鉄より卑なる金属を溶射することにより,(溶射
金属の犠牲防食作用を利用して)基材金属を腐食より保護する方法は広く用いられ
ていた。・・・特に,亜鉛・アルミニウム合金からなる溶射被膜は,亜鉛又はアル
ミニウム単独の溶射被膜よりも耐食性の良好なことが知られていた。・・・しかし
ながら亜鉛・アルミニウム合金は,展性に乏しく,そのため線材として使用可能な
合金の組成範囲は極めて限定されていた。・・・従って,現在の溶射用の線材とし
て使用されている組成は,アルミニウムの含有率が13~15重量%程度のものに
限られていた。又,前記合金の場合には,合金化処理と,線材化処理とが必要であ
り,それ故経済的には不利な面があった。加うるに,前記合金を溶射しても,得ら
れる被膜は,塩水を噴霧すると,数日内に金属光沢を失い黒変するため,使用時の
美観上の問題もあった」(1欄最終段落~2欄下から第2段落),(イ)「これらの各
種問題を解決するために,二本の線材,例えば,亜鉛線とアルミニウム線を使用
し,その間にアークを発生させて溶射し,亜鉛とアルミニウムとの混合した溶射被
膜を得ようとする試みがなされている。その様な試みに於ては亜鉛とアルミニウム
の比率を一応かなり自由に変えることができるが,アーク溶射条件としては,融点
の高い方の金属(アルミニウム)に合わせる必要があり,融点の低い方の金属(亜
鉛)は溶射過程で一部揮散しロスとなり,同時に,酸化反応等が進行する傾向があ
り,その結果,溶射線材の組成と得られた溶射被膜の組成が大きく異なるという欠
点があった。また,溶射効率の低下や,作業環境の悪化をまねくという問題点も看
過できないものであった」(2欄最終段落~3欄第1段落)という従来技術の問題
点が指摘され,②〔発明の目的〕として,「本発明(注,本件発明)は,前述の如
き従来の溶射方法における各種問題点を解決もしくは改良することを目的とし,性
能の優れた溶射被膜を,より効率よく形成する方法を提供しようとするものであ
る」(3欄第2段落)と記載され,③〔発明の具体的内容〕として,(ア)「本発明の
方法に使用される『溶射方法』は,・・・減圧内アーク溶射方法である。該溶射方
法は,特公昭47-24859号及び特開昭61-167472号等に開示されて
いる」(4欄第2段落),(イ)「本発明の方法は,前記溶射方法において亜鉛線材,
アルミニウム線材及びそれらの合金線材から選ばれた2本の線材を使用し,これら
を同時に基材上に溶射する方法である」(同第3段落),(ウ)「前記の如く,本発明
の方法において使用される『線材』は,・・・2本の線材であり,これらを種々組
合せて使用することが可能である」(同第4段落),(エ)「線材の組合せ,線材の太
さ,あるいは搬線速度等を変えることにより,溶射被膜中の亜鉛とアルミニウムの
比率を変えることができるが,本発明においては亜鉛とアルミニウムの比率はZn
/Al=90/10~50/50(重量比),特に好ましくは80/20~60/
40の範囲にする必要がある」(同第6段落),(オ)「前記特定範囲を越えた場合に
は,本発明の目的の一つである溶射被膜の防食性能が亜鉛あるいはアルミニウム単
独の金属を溶射した場合と同等もしくはそれ以下に低下するので,いずれの場合も
好ましくない」(同欄第7段落)と記載され,④〔発明の効果〕として,(ア)「本発
明の方法によれば,従来作成の困難であった均一な亜鉛-アルミニウム擬合金被膜
を容易に得ることができる。即ち,低温で溶射が可能なことから,二種の溶射線材
を組合せても低融点側の金属の揮散や酸化を防ぐことが出来,しかも溶射効率や作
業環境の面で従来のものに比して著しく優れており,従って経済性の面からの効果
も大きい」(6欄下から第2段落),(イ)「又,本発明の方法により得られた亜鉛-
アルミニウム擬合金溶射被膜を有する鋼板の防食性は,従来の亜鉛又はアルミニウ
ム溶射鋼板のそれより格段に優れたものであった」(同欄最終段落)と記載されて
いる。
    なお,実施例としては,グリッドブラスト処理を施したSS41鋼板上
に,直径1.1mmの亜鉛線材と直径1.1mmのアルミニウム線材を使用して減
圧内アーク溶射装置PA-100により溶射を行い,厚さ50μm,Zn/Alの
比率が72/28(重量比)の溶射被膜を得た例(実施例1),同様のSS41鋼
板上に,直径1.3mmの亜鉛線材と直径1.1mmのアルミニウム線材を使用し
て減圧内アーク溶射装置PA-100により溶射を行い,厚さ70μm,Zn/A
lの比率が79/21(重量比)の溶射被膜を得た例(実施例2),サンドブラス
ト処理を施した樹脂板上に,直径1.3mmの亜鉛-アルミニウム合金(アルミニ
ウム含有量13重量%)を使用して減圧内アーク溶射装置PA-100により溶射
を行い,厚さ70μm,Zn/Alの比率が60/40(重量比)の溶射被膜を得
た例(実施例3)が記載され,いずれの溶射被膜も優れた密着性及び3000時間
の塩水噴霧試験において優れた耐久性を示したとされている。
 (2) 本件明細書の特許請求の範囲の記載(上記第2の2参照)及び発明の詳細
な説明欄に記載された上記の内容に照らすと,本件発明は,①線材として,亜鉛線
材,アルミニウム線材,亜鉛・アルミニウム合金線材の中から選ばれた線材の2本
を用い,②溶射方法として,減圧内アーク溶射方法を用いて,2本の線材を基板上
に同時に溶射し,③亜鉛とアルミニウムの重量比が特定の範囲(Zn/Al=90
/10~50/50)にある亜鉛-アルミニウム擬合金被膜を基板上に形成するこ
とを特徴とする溶射被膜の形成方法であって,このようにして得た,組成が特定の
範囲にあって均一な亜鉛-アルミニウム擬合金被膜によって,美観や経済性の問題
を解決し,かつ,従来の金属溶射被膜よりも格段に優れた防食性能を達成すること
を技術的思想とするものであると認められる。
 3 次に,減圧内アーク溶射に関する技術の状況,E及び同人が代表者であった
パンアートクラフト社と被告との関係,本件特許の出願に至る経緯等について見る
と,証拠(各項末尾に掲記)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ
る。
 (1) パンアートクラフト社は,Eが昭和55年2月に設立した会社であり,主
として金型製作用に,減圧内アーク溶射装置の製造販売を行うとともに,「マッハ
モールド加工」と名付けた金型製作法の普及活動等を行っていた。同社の減圧内ア
ーク溶射装置を使用することにより,アルミニウム,亜鉛,銅等の金属もしくはそ
れらの合金の線材2本を,従来の溶射法よりも低い温度で材料表面に同時に溶射
し,材料表面上に異種の金属の擬合金被膜を形成することが可能である。Eは,本
件特許出願前に,減圧内アーク溶融溶射法及びその装置について2件の特許を出願
ないし取得している。(甲18~24,26~28,33)
 (2) 被告は,塗料及び塗装に関して専門知識と経験を有する会社として,昭和
40年代後半以降,亜鉛やアルミニウムの溶射と塗料塗装を併用した海上橋の防錆
防蝕工事にかかわった経験があり,防錆防蝕のために,金属材料上に亜鉛,アルミ
ニウム,アルミニウム合金等の金属を溶射する技術に関心を有していた。(乙1)
 (3) 昭和59年に,被告は,三菱商事から,パンアートクラフト社のEを紹介
された。被告は,パンアートクラフト社の減圧内アーク溶射装置を使用した溶射技
術が金属材料の防錆防蝕に有望であると考え,昭和60年5月ころ,パンアートク
ラフト社及び三菱商事と間で,三社間の業務提携に関する協定(甲2協定)を締結
した。甲2協定書の内容は,次のとおりである。
    第1条(協定の趣旨,業務提携の概要)
     甲(注,パンアートクラフト社),乙(注,三菱商事)及び丙(注,被
告)は,甲が開発した・・・減圧内アーク溶融溶射技術(以下本技術という)及び
減圧内溶融溶射装置(以下本装置という)による溶射と丙が開発・製造する塗料と
を組み合わせて併用した塗装・被覆方法(以下本システムという)についての防
錆・防蝕技術分野における応用方法及び利用技術の研究開発,その普及促進方法及
び商品化・販売方法等の検討並びに防錆・防蝕技術分野以外の塗料関連分野におけ
る応用利用方法の研究開発及び関連事業の展開のために相互に協力することを目的
として本協定にて取り決めるところに従い,業務提携関係を設定することに合意し
た。
    第3条(具体的な提携内容の決定)
     1.本協定に基づく各当事者間の業務提携の具体的な推進方法について
は,第10条に規定する有効期間中にわたり都度,甲,乙及び丙が協議の上,決定
する。
     2.前項の規定にかかわらず,昭和60年6月1日より昭和61年5月
31日を開発準備期間(以下準備期間という)とし,甲,乙及び丙は,それぞれ次
条以下に規定するところに従い,業務を分担して,本システムの防錆・防蝕技術分
野における応用方法及び利用技術の研究開発並びにその普及促進方法及び商品化・
販売方法等の検討を行ない,本当事者間における業務提携を通じての事業化の可能
性を検討し,併せて,事業化することとした場合の業務分担,取引方法等につき,
必要な検討を行なう。
     3.(略)
    第4条(準備期間中における乙・丙の研究開発業務)
     乙及び丙は,本システムを利用した防錆・防蝕技術分野における応用方
法及び利用技術の研究開発並びにその普及促進方法及び商品化・販売方法等の検討
を行ない,準備期間中にその結果を取りまとめた上で,その結果に基づき,甲を加
えた全当事者間で業務提携を通じての事業化につき協議し,事業化することとした
ときは,各当事者間における業務分担,取引方法等につき,甲を加えて必要な検討
を行なう。
    第5条(甲の協力義務) 
     1.甲は,本協定の目的に沿って丙の要請するところに従い,その所有
する特許権及び実用新案権の通常実施権を丙に対し許諾し,又はその責任におい
て,・・・E・・・の各権利者をして,これを許諾させ,併せて乙及び丙に対し,
乙及び丙が前条に規定する開発業務に必要とされ,又は有用とされる関連技術のノ
ウハウを提供し,乙及び丙の開発業務に協力する。
     2.(略)
    第9条(工業所有権の取扱い等)
     1.本協定に基づく提携により得られた成果に基づき工業所有権の出願
を行なうときは,各当事者が単独になした成果については,当該当事者が,各当事
者が共同でなした成果については,当該関連当事者が共同して出願する。 
     2.(略)
    第10条(有効期間)
     1.(略) 
     2.前項の規定にかかわらず,準備期間終了時迄に,第3条第2項に規
定する研究開発及び検討の結果に基づき業務提携を通じての事業化の可能性を検討
した結果,本当事者間にてこれを事業化することにつき合意が成立しないときは,
本協定は,準備期間終了時をもって終了する。
     3.(略)                (甲1~4,乙1,4
6)
 (4) 甲2協定の締結後,被告の依頼により,パンアートクラフト社内におい
て,亜鉛,アルミニウム,亜鉛-アルミニウム,銅,キュプロニッケル等の溶射線
材を使用して,減圧内アーク溶射装置により溶射被膜を形成する溶射実験が行われ
た。実験計画の立案及び各種実験条件の設定は,被告の中央研究所の本件発明者ら
が行い,これをパンアートクラフト社に指示したが,溶射実験には被告の担当者が
立ち会うこともあった。これらの溶射実験で作成された溶射被膜について,被告
は,溶射被膜の測定,密着性等の評価を行った。
    昭和61年10月7日には,パンアートクラフト社のE,被告の営業開発
担当者及び中央研究所のBが出席して,被告の東京支店において,「低温溶射用プ
ライマーの電磁波シールドへの展開について」を主要議題とする打合せが持たれ
た。その席上で,Eから,「溶射用プライマー+溶射を薄板鋼板の防錆にも利用で
きれば,用途が非常に拡がる」等の発言がされた。また,被告側からは,「実際
に,鋼板に溶射プライマー+亜鉛溶射を行なって,塩水噴霧試験を始めているが,
試験時間はまだ短いが,犠牲防食作用があるような結果が出ている。耐食性は亜鉛
溶射膜よりも亜鉛-アルミ擬合金の方が良好な結果であるが,亜鉛から一部アルミ
にすると,コスト的に高くならないか」との質問がされ,Eが「同一体積では亜鉛
とアルミのコスト差は殆どない,同一膜厚ではコスト差はない」と回答した。(甲
10~15,乙28,30)
 (5) 被告は,昭和61年7月ころ,防錆防蝕のために金属溶射を行う場合に基
材上にブラスト処理面を形成することが困難であることを解決課題として,金属溶
射のための粗面形成剤の研究開発に着手した。その結果,被告の中央研究所員であ
り,本件発明者らの一員でもあるB,C及びDが,粗面形成剤「ブラスノン」を開
発した。ブラスノンに関する「金属溶射被膜の作製方法」の発明は,その発明者で
あるB,C及びDから被告が特許出願をする権利を承継し,パンアートクラフト社
の要望により,発明者としてEを,共同出願人としてパンアートクラフト社を加え
た上,昭和62年1月16日に特許出願がされた。(乙1,7)
 (6) 本件発明者らは,昭和61年秋ころから,被告の中央研究所において,金
属材料,ブラスノン等による前処理,溶射線材,溶射条件,溶射膜厚,研磨処理,
上塗り塗装等につき各種の条件を設定した上,減圧内アーク溶射装置によって形成
した,亜鉛,アルミニウム,亜鉛-アルミニウム,チタン,キュプロニッケル等各
種金属の溶射被膜について,その耐食性,密着性等の試験による検討,評価を開始
した。その結果に基づき,被告の社内において,昭和62年6月に,「低温溶射複
合膜の耐食性評価結果」等の試験報告書(乙40-1~4)が作成され,さらに,
同年7月に,「ブラスノン+低温溶射について」と題する社内資料(乙41)が作
成された。同資料の「[5]耐食性の評価結果」には,「グリットブラスト処理S
S41への亜鉛-アルミニウム擬似合金溶射膜」について,Zn/Al=1.3/
1.1mmφ,1.1/1.3mmφ,1.1/1.1mmφ及び亜鉛-アルミニ
ウム合金の13%アルジンは,耐食性が良好であるが,Zn/Al=1.6/1.
1mmφのものは,耐食性が良くないとの評価が記載されている。(乙32~3
9,40-1~4,41)
(7) 被告は,本件発明者らから本件発明につき特許を受ける権利を承継して,
昭和62年8月24日,本件特許出願をした。
 4 以上3の(1)及び(4)に認定した事実によれば,パンアートクラフト社は,被
告との間で甲2協定が成立した昭和60年5月ころより前に,同社の開発に係る減
圧内アーク溶射装置を使用して,異種の金属の線材2本を材料表面に同時に溶射
し,擬合金溶射被膜を形成することのできる技術を有していたことがうかがわれ,
また,甲2協定の成立後一定の期間,パンアートクラフト社と被告との間には,パ
ンアートクラフト社において各種金属の線材を減圧内アーク溶射装置で溶射する実
験を行い,その結果を被告に報告したり,溶射したサンプルを被告に提供するなど
の協力関係があったこと,被告がパンアートクラフト社に依頼して行った溶射実験
の中には,亜鉛線材とアルミニウム線材の同時溶射による亜鉛-アルニウム線材擬
合金被膜を形成するものがあったことが認められる。
   しかしながら,本件発明は,上記2(2)のとおり,線材として,亜鉛線材,ア
ルミニウム線材,亜鉛・アルミニウム合金線材の中から選ばれた線材の2本を用
い,溶射方法として減圧内アーク溶射方法を用いて,亜鉛-アルミニウムの擬合金
被膜を形成すること(これは,昭和50年代以降,主として金型製作の分野で既に
公然実施されていたと認められる。甲16,18~24)に加えて,防食性及び耐
久性を向上させるために,この擬合金被膜における亜鉛とアルミニウムの比率を特
定の範囲(Zn/Al=90/10~50/50,重量比)とし,当該特定の範囲
の組成を有する均一な亜鉛-アルミニウム擬合金被膜により,美観と経済性,及び
従来の金属溶射被膜よりも優れた防食性能を達成するという内容のものであるとこ
ろ,これと技術的思想を同じくする発明が,Eないし同人を代表者とするパンアー
トクラフト社において,被告との間の上記協力関係が開始するよりも前に,完成し
ていたことを認めるに足りる証拠はない。
   他方,上記3の(2),(4)ないし(6)に各認定のとおり,被告は,金属溶射被
膜による防錆防蝕技術に関心を有しており,甲2協定に基づくパンアートクラフト
社との協力関係の開始後,本件発明者らが,減圧内アーク溶射により形成した各種
金属溶射被膜について,長期間塩水噴霧試験を行うなどして,被膜の耐食性,密着
性等の検討,評価を行っている。そして,その結果は,本件発明者らが昭和62年
7月に作成した「ブラスノン+低温溶射について」と題する社内資料(乙41)に
まとめられているところ,本件明細書に記載された実施例は,使用した線材の種類
及び線径において,同資料において耐食性が良好と評価された亜鉛-アルミニウム
擬合金のそれと符合している。
   以上の点を総合すると,本件発明は,本件発明者らが,減圧内アーク溶射に
よる亜鉛-アルミニウムの擬合金被膜について,その耐食性等を試験,評価して得
た知見に基づき,本件特許出願前に完成したものと認めるのが相当である。
5 原告は,①甲2協定に基づく業務提携関係の中で,本件発明者らは,パンア
ートクラフト社のEから本件発明を知得し,これを被告が本件発明者らがした発明
であるとして,冒認出願をしたものである,②仮にそうでないとしても,本件発明
は,減圧内アーク溶射法による亜鉛-アルミニウムの同時溶射について,Eが本件
発明者らに提供した技術情報,ノウハウに基づいて完成されたものであるから,E
は,少なくとも本件発明の共同発明者である,などと主張する。
 (1) 上記①の主張について
    原告の上記①の主張は,甲2協定の締結よりも前に,本件発明と同一の技
術的思想の発明がEによって完成されていたことを前提とするものであるが,その
ような事実を認めるに足りる証拠がないことは,上記4に判示したとおりである。
    この点につき,原告は,当時既に,本件発明をEが発明していたことは,
甲3書簡,甲4証明書,甲8パンフレット,甲7資料等から明らかであると主張す
る。しかしながら,原告の主張は,以下のとおり,採用することができない。
   ア 甲3書簡及び甲4証明書について
     甲3書簡に記載された内容は,甲2協定の締結当時,減圧内アーク溶射
方法による亜鉛とアルミニウムの同時溶射技術が既にパンアートクラフト社の実施
するところとなっていたことをうかがわせるものではあるが,亜鉛-アルミニウム
擬合金被膜における亜鉛とアルミニウムの比を特定の範囲として防食性等を向上さ
せるという本件発明の技術内容に即した事実の記述は皆無であり,減圧内アーク溶
射装置による亜鉛-アルミニウムの同時溶射技術と本件発明とを区別することな
く,本件発明はEが発明したとする見解を表明するにとどまっているものであるか
ら,同書簡からは,Eが本件発明を発明した事実を認めることはできない。同様
に,甲4証明書も,被告の従業員Bらがパンアートクラフト社を何度も訪問したと
いう事情を述べて,本件発明が本件発明者らの発明ではないとする見解を表明する
にとどまり,本件発明の技術内容に即して本件発明の創作がどのように行われたか
の具体的事実を述べるものではないから,同証明書によっては,Eが本件発明を発
明した事実を認めることはできない。
   イ 甲8パンフレットについて
     甲8パンフレットには,パンアートクラフト社の減圧内アーク溶射装置
PA-120を使用した減圧内アーク溶射に関して,「特に0.6mm鋼板使用の
自動車ボデーの下地処理として効果を発揮します。下回りには,100μ亜鉛,ア
ルミニウムの擬似合金被膜をスプレーすることで,海岸,冷寒地域の塩害腐食を1
0年間完全に防止できます」と記載されており,これによれば,甲8パンフレット
が作成された時期には,減圧内アーク溶射による亜鉛-アルミニウム擬合金被膜が
自動車ボデーの塩害腐食に有用であるとされていたことを認めることができる。し
かし,甲8パンフレットは,その作成時期自体が明らかでなく(原告は,甲9の受
注台帳から同パンフレットの作成時期は昭和61年11月ころであると主張する
が,甲9に記載された「PA-120パンフ」が甲8パンフレットを指すものか否
かは,証拠上不明というほかない。),仮に,甲8パンフレットが原告主張の時期
に作成されたとしても,本件発明の構成の一つである亜鉛とアルミニウムの割合
(重量比)については何ら記載されていない。また,甲8パンフレットには,確か
に,「下回りには,100μ亜鉛,アルミニウムの擬似合金被膜をスプレーするこ
とで,海岸,冷寒地域の塩害腐食を10年間完全に防止できます」という防食効果
についての記載があることは上記のとおりであるが,別の箇所に「塗装手段のみで
あれば,3年前後の鋼材の保護が通常でありますが,鉄鋼表面に亜鉛,アルミニウ
ムあるいは,亜鉛,アルミニウムの複合体を100μ~200μ溶射することによ
り,10年~25年の長期防錆,防蝕目的が達成されます」と記載されていること
からすると,亜鉛-アルミニウム擬合金被膜の効果に関する記載は,亜鉛又はアル
ミニウムとの比較における亜鉛-アルミニウム擬合金被膜の優れた防食性能を述べ
た趣旨のものとは解されない。したがって,甲8パンフレットからは,その作成当
時,本件発明と同一の技術的思想の発明が既に存在していたと認めることはできな
い。
   ウ 甲7資料について
     甲7資料には,「アルジン溶射被膜(亜鉛アルミニュウム擬似合金溶射
被膜)は,対塩害用として,大きな防錆防蝕効果が発揮されます。アルミニュウム
被膜と異なり封孔処理の必要がなく,加工及びコスト面で最も有効な溶射被膜加工
といえます」(3頁)と記載されている。しかし,同資料は,その作成時期が明ら
かでない上,本件発明の構成要件である亜鉛とアルミニウムの割合(重量比)につ
いては何ら記載がない。したがって,同資料からは,その作成当時に,本件発明と
同一の技術思想の発明が既に存在していたと認めることはできない。
   エ その他,原告の指摘する証拠を検討しても,本件発明と同一の技術的思
想の発明が,昭和60年ころ,既に,Eによって完成されていたと認めることはで
きない。
したがって,本件発明は,本件発明者より先に,Eが発明していたもの
であるとする原告の主張は,採用することができない。
(2) 上記②の主張について
   ア 上記3の(3),(4)認定のとおり,被告とパンアートクラフト社との間に
昭和60年5月ころ,減圧内アーク溶射技術による溶射皮膜と塗料とを併用した塗
装・被覆方法を防錆・防蝕技術分野に応用するための技術開発と商品化等を目的と
する甲2協定が成立し,これを機縁として,両社の間には,パンアートクラフト社
が被告の依頼を受けて減圧内アーク溶射による溶射実験を行い,各種の溶射膜の作
成に協力するなどの協力関係が一定期間継続した。したがって,その間に,パンア
ートクラフト社から被告の開発担当者らに対して,減圧内アーク溶射に関連する様
々な技術情報が提供されたであろうことは推測に難くない。
   イ しかしながら,他方,パンアートクラフト社において実施された溶射実
験は,甲2協定の4条に基づき,被告が3条2項の準備期間中に行うこととされた
研究開発業務の一環として行われたものと認められ,その溶射実験については,被
告側で実験計画を作成し,使用する線材,溶射の各種条件,評価項目等をパンアー
トクラフト社に対して提示した上,必要に応じて被告の技術者が立ち会って実施が
されているから,Eないしパンアートクラフト社が主導的な立場に立って溶射実験
を推進したものとは認め難い。
     また,甲10,12,14及び乙28に記載された実験依頼事項,実験
項目等を見ると,当時行われた溶射実験の主眼は,亜鉛,アルミニウム,亜鉛-ア
ルミニウム,銅,キュプロニッケルなどの各種金属又は合金を,種々の条件で溶射
して,溶射板を作成してみることにあったことがうかがわれる。そうすると,これ
らの溶射実験に関連して,本件発明に直接つながるような課題の提示や,亜鉛-ア
ルミニウム溶射被膜の防食性等に関する有益な知見・技術情報等の提供が,Eから
本件発明者らに対してされたと考えることは困難である。
   ウ 原告は,昭和61年10月7日に行われた打合せにおいて,被告側出席
者(Bを含む。)から出された「耐食性は亜鉛溶射膜よりも亜鉛-アルミ擬合金の
方が良好な結果であるが,亜鉛から一部アルミにすると,コスト的に高くならない
か」との質問に対し,Eが,「同一体積では亜鉛とアルミのコスト差は殆どない,
同一膜厚ではコスト差はない」旨の回答をしたことをもって,当時,Eから被告に
対して,減圧内アーク溶射装置による亜鉛とアルミニウムの同時溶射についての有
益な技術情報,ノウハウの提供がされていたことの証左である旨主張する。しかし
ながら,打合せの内容を記録したものと認められる甲15によれば,打合せの主な
議題は,低温溶射用プライマーの評価及びその電磁波シールド用途への展開であっ
たのであり,その中で,上記のような回答をしたという事実のみをもっては,Eが
被告に対し,原告の主張するような技術情報,ノウハウの提供をした事実があった
ということはできず,また,それらが本件発明の技術的思想の創作において共同発
明者と評価し得る貢献であったとも認めることはできない。むしろ,Eは,この打
合せの中で,「溶射用プライマー+溶射を薄板鋼板の防錆にも利用できれば,用途
が非常に拡がる」と発言しており,この発言も含めて,打合せの内容を全体として
検討すると,当時は,まだ,亜鉛-アルミニウム擬合金被膜の性能,特に,耐食性
について十分な試験,検討は行われていなかったことがうかがわれる。
   エ 以上のとおり,甲2協定に基づく協力関係の中で,Eから本件発明者ら
に対して,本件発明につながる技術的情報,ノウハウが提供され,それに基づいて
本件発明が完成されたという原告の主張は,採用することができない。
6 原告のその他の主張について
   原告は,①本件発明は,特許請求の範囲に記載された亜鉛とアルミニウムの
重量比のうちの一部(例えば,Zn/Al=90/10の部分)は実施不可能であ
り,その実施不可能部分を除けば,Eないしパンアートクラフト社が開発していた
減圧内アーク溶射による亜鉛とアルミニウムの同時溶射技術と同一であるから,E
が発明者である,②被告は,各種溶射板について塩水噴霧試験を行ったとする時期
に,減圧内アーク溶射装置を保有していなかったから,同試験によって亜鉛-アル
ミニウム擬合金皮膜の耐食性についての知見を得たとする被告の主張は事実に反す
る旨主張する。
   しかし,①の点については,仮に,本件発明の特許請求の範囲に記載された
亜鉛とアルミニウムの重量比のうちの一部に実施ができない部分があったとして
も,本件発明自体は,亜鉛とアルミニウムの比の範囲をZn/Al=90/10~
50/50(重量比)と特定することによって,防食性,耐久性の向上を図るとい
う一体の技術的思想と評価すべきものであるから,その一部のみを取り出してこれ
をEの開発に係る減圧内アーク溶射による亜鉛-アルミニウム擬合金被膜形成技術
と同一であるとする原告の主張は,失当というほかない。また,②の点について
は,被告の塩水噴霧試験が具体的にいつ,どのように作成された溶射板を用いて実
施されたか等の詳細については,証拠上,必ずしも明らかではないものの,被告
は,少なくとも,昭和61年中のある時期に減圧内アーク溶射装置PA-600
を,また,昭和62年2月以降,減圧内アーク溶射装置PA-100を保有してい
たと認められるから(乙1,27),被告において,これらの装置を使用して作成
した溶射板について,塩水噴霧試験を含む各種試験を行い,溶射膜の防食性の評価
を行ったと考えても不自然ではない。したがって,耐食試験に関する原告の上記②
の主張も,採用することができない。
 7 以上によれば,本件発明は,本件発明者らがした発明というべきであり,本
件特許は,「発明者でない者であってその発明について特許を受ける権利を承継し
ないものの特許出願に対してされた」ものではないから,これと同旨の審決の判断
に誤りがあるということはできない。
 8 以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がなく,他に審決を取り消す
べき瑕疵は見当たらない。
   よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決
する。
 
     東京高等裁判所知的財産第2部
           裁判長裁判官     篠  原  勝  美
              裁判官     古  城  春  実
              裁判官     岡  本     岳

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弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛