弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A弁護人熊谷誠の上告趣意について。
 被告人Aが所持し又は授与した本件の物件が塩酸コカインであることを同被告人
において知つていたことは、原判決引用の各証拠によつて優にこれを証明すること
ができるのみならず、原判決はその証拠を引用するに当り、証拠とならないものを
証拠としたり、又証拠の趣旨を誤つたような瑕疵は少しもない。所論は畢竟原審の
証拠に対する取捨竝びに判断に関する専権の行使に容喙するものであつて、固より
採用の限りでない。論旨は理由がない。
 被告人Bに対する仙台高等検察庁検事長代理検事山田義篤上告趣意書竝びにこれ
に対する被告人B弁護人三宅正太郎の答弁書は各別紙記載のとおりである。
 按ずるに、本件公訴事実の要旨は、麻薬小売業者としての麻薬取扱者である被告
人Bが、麻薬地方卸売業者以外の者から麻薬(塩酸コカイン)を貸金に対する担保
物件として受取り、これを自宅に隠匿所持していたと云うのである。ところで、麻
薬取扱者が、麻薬を所有又は所持することができることは、麻薬取締規則(昭和二
十一年厚生省令第二十五号)第四十二条の規定するところであつて、しかも、こゝ
に云う所有又は所持については、別に何等の制限も条件も附してないのであるから、
これは一般に、所有又は所持と認められる、凡ての場合を指すものと云わなくては
ならない。惟うに、右規則は麻薬を取扱う者の範囲を限定した上、その取扱者をし
て常に麻薬の所在及び異動を明確にし、いやしくも無籍麻薬なるものゝ存在するこ
とのないように、極めて慎重を期しているにも拘らず、麻薬取扱者たる麻薬小売業
者が麻薬地方卸売業者以外の者から麻薬を買受け又はその他の収受行為をした場合、
これを処断する旨の規定をもうけていないのであるから、右の如き収受行為は同規
則下においては、所詮これを処罰することができないものと断ぜざるを得ない。し
かも、収受行為あればその結果として必ず当然に所有又は所持と云う事実が成立す
るわけであるが、右規則第四十二条が麻薬取扱者に対し、広く、麻薬の所有又は所
持を認めている以上、麻薬小売業者としての麻薬取扱者のした右の如き収受行為の
結果としての所有又は所持も、亦、同条に云う所有又は所持の概念の中に包摂さる
べきものであつて、これを異別に解すべき理拠は毫も見出し得ない。即ち、この場
合の所有又は所持も、許された所有又は所持たるを失わないと云わねばならぬ。し
かし、この場合の所有又は所持の客体たる麻薬も、亦、右規則第二条に規定する麻
薬たる限り、小売業者は同規則第四十六条の命ずる所に従つて、所定の報告書を提
出するに当り、これを数量中に加算し、又同規則第五十四条により当該官吏が検査
をする際には、その検査の対象に供しなければならないことは、敢て、云うを俟た
ないところであろう。けだし、この場合の麻薬をこれら規定の適用外において可な
りとする理由を見出し得ないからである。所論は、同規則第四十二条が麻薬取扱者
に許した麻薬の所有又は所持は、それが業として為される場合のみに限るとするの
であるが、同条に規定する麻薬取扱者の所有又は所持について、何等の制限も条件
も附してないこと、前段説明のとおりであるから、被告人Bの本件麻薬の所持は、
固より罪とならないものと云わねばならぬ。従つて、これと同一の見解の下に、同
被告人に対して無罪の言渡をした原判決は、まことに正当であつて、法の解釈を誤
つた違法の廉はない。それ故、論旨は理由なきものと云わねばならない。
 右の理由により、刑事訴訟法第四百四十六条に則つて主文のとおり判決する。
 この判決は、裁判官の全員一致の意見によるものである。
 検察官 福尾彌太郎関与
  昭和二十三年七月十七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    塚   崎   直   義
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎

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