弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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平成20年(む)第51号
主文
本件証拠開示命令の請求を棄却する。
理由
第1本件請求の趣旨及び理由
1本件請求の趣旨及び理由は弁護人作成に係る平成20年4月29日付け証拠開示の裁
定請求書のとおりである。論旨は,弁護人が検察官に対し,Aからの「事情聴取,供
述の録取に当たって作成された検察官及び警察官の備忘録,メモ等(録音録画を含む。
以下これらを併せて「取調メモ等」という。)」について,①それらが刑事訴訟法(以
下「法」という。)316条の15第1項1号所定の「証拠物」にあたること,あるいは,
②法316条の20第1項所定の法316条の17第1項の主張に関連するものと認められ
る証拠(以下「主張関連証拠」ということがある。)にあたることを根拠として開示
を求めたところ,検察官が開示を拒否したので,法316条の26第1項に基づいて,検
察官に証拠の開示を命じることを請求するというものである。
2これに対し,検察官の意見は,平成20年5月14日付け意見書2のとおりである。
論旨は,①Aに関する前記取調メモ等(以下「本件取調メモ等」という。)は,法316
条の15第1項1号の「証拠物」には該当しないから,同条項に基づく証拠開示は認め
られず,②弁護人が法316条の17第1項の主張明示義務に違反していること,弁護人
の主張と本件取調メモ等との間には関連性がないこと,開示の必要性がないことから
すれば,主張関連証拠としての開示も認められないというものである。
第2当裁判所の判断
1本件取調メモ等が法316条の15第1項1号の「証拠物」に該当するか
「証拠物」とは,その存在又は状態が事実認定の資料となる証拠方法をいうものと
解すべきであるところ,弁護人は,本件取調メモ等の開示を求める理由として,「録
取前の質問とそれに対する答えの実態,質問がどのような項目であったか,どのよう
な順序でなされたか,これらに対する答えはどのようであったか,把握する必要があ
る。」などと述べているのであるから,弁護人が本件取調べメモ等をその存在ないし
は状態を事実認定の資料とするためではなく,その記載ないし記録内容を事実認定の
資料として用いるために,本件開示請求に及んでいることは明らかである。よって,
本件取調べメモ等は法316条の15第1項1号の「証拠物」にはあたらず,この点につ
いての弁護人の主張は採用できない。
2本件取調メモ等が主張関連証拠にあたるか
(1)弁護人は,同年4月18月付けの弁護人証明予定事実記載書面(2)において,「A
は(取調時において)虚偽供述をした,あるいは(証人尋問に際して)する可能性
があって,その供述ないし証言は信用できない」旨主張し,さらに同月29日付けの
「弁護人証明予定事実記載書面(2)の補充」と題する書面において,下記の理由か
ら,Aが被害状況について捜査官に対して虚偽供述をしたのであり,今後も証言で
虚偽供述する可能性がある旨主張し,本件取調メモ等はかかる弁護人の主張と関連
する証拠(主張関連証拠)であると主張する。

①Aは,平成▲年▲月▲日ころ,頭から血を流す怪我をし,B病院に搬送された
際に,「内縁の夫に殴られた」と虚偽の申告をした。
②Aの言動には,一貫性がなく矛盾する点が見られ,自らを無理矢理正当化して
被告人を攻撃することに特徴があり,このような傾向は,特に飲酒すると著しく
なり収拾がつかない状態となる。
③基本事件は,Aの被告人に対する長時間にわたる攻撃的言動によって被告人を
追いこんだ結果発生したものであるが,Aがこのような自らの言動によって惹起
させたことを否定し,基本事件における自らの事件誘発性を隠すことの動機があ
る。
④Aは,基本事件の実行行為の直接のきっかけ,被告人がAを刺すと言っていた
か,Aの本件実行行為時の姿勢,犯行後の被告人の言動等重要な事項について虚
偽供述をしており,若しくは今後も証言で虚偽供述をする可能性がある。
(2)しかしながら,一般に取調メモ等は,供述者の供述内容や供述態度のほか,当該
供述内容等に関する取調官の感想,当該供述等との関係において検討すべき別途収
集された証拠の内容等の概要,供述者の供述内容等を踏まえた上で今後必要と思わ
れる捜査の内容等が記載ないし記録されているものと推認することができるとこ
ろ,本件取調メモ等をもって,Aが過去に病院に対して虚偽の申告をしたこと(①),
Aの言動に一貫性がなく矛盾する点がみられ,自己正当化をして被告人を攻撃し,
かかる傾向が飲酒すると著しくなること(②),虚偽の供述をする動機があること
(③),基本事件についての重要事項について虚偽供述をしていること(④)とい
った弁護人主張にかかる前記具体的事実ないし事情を直接認定するための証拠とは
なり難い上,間接的に推認させる事実の認定に資するといえるのかも明らかではな
いというべきである。
してみると,検察官は,本件取調メモ等を開示することによって生じるおそれが
ある弊害の内容及び程度について特段の主張はしていないものの,弁護人の前記主
張と本件取調メモ等とは,関連性が乏しく,開示の必要性が認められないから,開
示をすることが相当であるとは認められない。
(3)従って,本件取調メモ等は,法316条の26第1項所定の「開示をすべき証拠」に
は該当しない。
よって,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・鬼頭清貴,裁判官・安達拓,裁判官・齊藤学)

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